ゲスト
(ka0000)
お猫様接点迷混
マスター:霜月零

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 3日
- 締切
- 2015/11/09 22:00
- 完成日
- 2015/11/13 06:25
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
山間のどかな、とてものどかな村にも、冬の香りが漂い始めた今日この頃。
村人達は、果樹園の収穫も出荷も終え、のんびりと、温泉に集まっていた。
そんな村人達の周りには、大小さまざまのお猫様がのんびり、気持ち良さそうにくつろいでいる。
ただし、普通のお猫様ではない。
幻獣だ。
お猫様そっくりの幻獣なのである。
中でも一際大きな幻獣大猫さまは、村の守り神的存在として、今日も湯船にみっちりと詰まって、いや、浸かっている。
「今日も良い日ですのぅ」
村長が大猫様と湯船に浸かりながら呟けば、村人もうんうんと頷く。
「空には暗雲が広がってるけど、いい日だべ~」
「かなり黒い雲だけど、きっといい日なのだよ~」
「……なぁ。なんか、風が冷たくないだべか~……?」
みんなして、空を見上げる。
幻獣お猫様たちも、つられて空を見上げる。
ついさっきまで晴天だった空は、いつの間にか分厚い雲に覆われていた。
そして――
ビッシャァアアアアアンンッ!!!
天と地を貫く閃光が奔った。
温泉の湯に濡れた足場から、湯船へ。
高圧電流が迸る!
逃げる間など無かった。
「……う……っ……」
どのくらい時間が経ったのだろう。
意識を取り戻した村長は、ゆっくりと目を開く。
(助かったのかのぅ……?)
ぼうっとする視界が、だんだんと鮮明になってくる。
温泉の中には大小さまざまな幻獣お猫様が見える。
だがおかしい。
目の錯覚だろうか。
「こ、これはどうしたことなのじゃ~?!」
村長は、叫んだ。
幻獣達が変化していたのだ。
3周りぐらい巨大化していたり、二匹の尻尾がくっつきあっていたり。
どう見ても一つの身体に二つの頭があったり。
「お前たちおかしいべ~。お猫様同士がくっついてるべ~」
「んだんだ、お猫様が数匹消えて、お前達たちがくっつきお猫様だべ~」
あちらこちらから聞こえてくる村人の声。
幻獣お猫様たちが明らかにおかしな姿になってしまっているのだ。
極めつけは幻獣大猫様だ。
周囲の幻獣たちを取り込んでしまったのか、もともと巨大だったのがさらに巨大になり、もはや湯船から出られないレベル。
そして辛うじて外に出ていた尻尾には、数匹の幻獣お猫様が生えている。
そう、生えているののだ。
先っぽから、数匹、にゃーんと。
数匹はお互い暴れて幻獣大猫様の尻尾から離れようとするも、しっかり融合して離れない。
(一体、なぜこのような事になったのかのぅ?)
「いま起こった出来事といえば、雷に打たれた事ぐらいじゃしのぅ……まさか」
呟いて、村長ははっとする。
「そうじゃ。雷に打たれて、無事であるはずがないのじゃ。わしらがいま生きていられるのは、幻獣お猫様達のお力に違いないですじゃ」
「お猫様たちが、おらたちを助けてくれたべ~」
「違いねぇべ。お猫様たちに感謝だべ~」
「きっと、助けてくれた拍子に、色々くっついてしまったんだべ~」
口々に、お猫様たちに感謝を述べながら頷く村人達。
そう、幻獣たちがくっついてしまったことなど、これまで一度たりともなかった。
幻獣たちがくっつくなどという噂だって、聞いたことがない。
村人や自分たちの身を守ろうとした結果、稲妻の衝撃も相まってくっついてしまったのだろう。
こんな偶然、故意に起こそうとしても出来るものではないだろうし、今後も、もし起こるとしても、この村の幻獣お猫様たちにだけだろう。
でも。
「これから、どうしたらいいべ?」
まさか一生、お猫様たちは同化して過ごすのか?
それはそれでかわいいかもしれないが、現実的に生活が困難だ。
うろうろ、おろおろ。
幻獣お猫様たちも何がどうなってしまったのか、困惑を隠せない。
「うおっと!」
白猫二匹が村人に思いっきりぶつかってすっころんだ。
その瞬間、二匹のお猫様が分離した。
「お?」
「おおっ?」
目を見張る村人たち。
今の今まで二匹くっついていた白猫達も目をぱちくり。
「転べば戻れるだべか」
困っている幻獣お猫様たちを抱きかかえて、そうっと転がしてみる。
だがまったく変化なし。
思いっきり転がせばもしやということもあるが、かわいそうでできるはずがない。
いつの間にか、温泉の上に漂っていた暗雲は消えていた。
だが、別の意味の暗雲がどんよりと、村人達の頭上に漂い始めたのだった。
村人達は、果樹園の収穫も出荷も終え、のんびりと、温泉に集まっていた。
そんな村人達の周りには、大小さまざまのお猫様がのんびり、気持ち良さそうにくつろいでいる。
ただし、普通のお猫様ではない。
幻獣だ。
お猫様そっくりの幻獣なのである。
中でも一際大きな幻獣大猫さまは、村の守り神的存在として、今日も湯船にみっちりと詰まって、いや、浸かっている。
「今日も良い日ですのぅ」
村長が大猫様と湯船に浸かりながら呟けば、村人もうんうんと頷く。
「空には暗雲が広がってるけど、いい日だべ~」
「かなり黒い雲だけど、きっといい日なのだよ~」
「……なぁ。なんか、風が冷たくないだべか~……?」
みんなして、空を見上げる。
幻獣お猫様たちも、つられて空を見上げる。
ついさっきまで晴天だった空は、いつの間にか分厚い雲に覆われていた。
そして――
ビッシャァアアアアアンンッ!!!
天と地を貫く閃光が奔った。
温泉の湯に濡れた足場から、湯船へ。
高圧電流が迸る!
逃げる間など無かった。
「……う……っ……」
どのくらい時間が経ったのだろう。
意識を取り戻した村長は、ゆっくりと目を開く。
(助かったのかのぅ……?)
ぼうっとする視界が、だんだんと鮮明になってくる。
温泉の中には大小さまざまな幻獣お猫様が見える。
だがおかしい。
目の錯覚だろうか。
「こ、これはどうしたことなのじゃ~?!」
村長は、叫んだ。
幻獣達が変化していたのだ。
3周りぐらい巨大化していたり、二匹の尻尾がくっつきあっていたり。
どう見ても一つの身体に二つの頭があったり。
「お前たちおかしいべ~。お猫様同士がくっついてるべ~」
「んだんだ、お猫様が数匹消えて、お前達たちがくっつきお猫様だべ~」
あちらこちらから聞こえてくる村人の声。
幻獣お猫様たちが明らかにおかしな姿になってしまっているのだ。
極めつけは幻獣大猫様だ。
周囲の幻獣たちを取り込んでしまったのか、もともと巨大だったのがさらに巨大になり、もはや湯船から出られないレベル。
そして辛うじて外に出ていた尻尾には、数匹の幻獣お猫様が生えている。
そう、生えているののだ。
先っぽから、数匹、にゃーんと。
数匹はお互い暴れて幻獣大猫様の尻尾から離れようとするも、しっかり融合して離れない。
(一体、なぜこのような事になったのかのぅ?)
「いま起こった出来事といえば、雷に打たれた事ぐらいじゃしのぅ……まさか」
呟いて、村長ははっとする。
「そうじゃ。雷に打たれて、無事であるはずがないのじゃ。わしらがいま生きていられるのは、幻獣お猫様達のお力に違いないですじゃ」
「お猫様たちが、おらたちを助けてくれたべ~」
「違いねぇべ。お猫様たちに感謝だべ~」
「きっと、助けてくれた拍子に、色々くっついてしまったんだべ~」
口々に、お猫様たちに感謝を述べながら頷く村人達。
そう、幻獣たちがくっついてしまったことなど、これまで一度たりともなかった。
幻獣たちがくっつくなどという噂だって、聞いたことがない。
村人や自分たちの身を守ろうとした結果、稲妻の衝撃も相まってくっついてしまったのだろう。
こんな偶然、故意に起こそうとしても出来るものではないだろうし、今後も、もし起こるとしても、この村の幻獣お猫様たちにだけだろう。
でも。
「これから、どうしたらいいべ?」
まさか一生、お猫様たちは同化して過ごすのか?
それはそれでかわいいかもしれないが、現実的に生活が困難だ。
うろうろ、おろおろ。
幻獣お猫様たちも何がどうなってしまったのか、困惑を隠せない。
「うおっと!」
白猫二匹が村人に思いっきりぶつかってすっころんだ。
その瞬間、二匹のお猫様が分離した。
「お?」
「おおっ?」
目を見張る村人たち。
今の今まで二匹くっついていた白猫達も目をぱちくり。
「転べば戻れるだべか」
困っている幻獣お猫様たちを抱きかかえて、そうっと転がしてみる。
だがまったく変化なし。
思いっきり転がせばもしやということもあるが、かわいそうでできるはずがない。
いつの間にか、温泉の上に漂っていた暗雲は消えていた。
だが、別の意味の暗雲がどんよりと、村人達の頭上に漂い始めたのだった。
リプレイ本文
●転んでみましょう
「おネコさま、覚悟はいいですか?」
ディーナ・フェルミ(ka5843)は、くっつきあっている幻獣達に確認を取る。
その隣にはティア・ユスティース(ka5635)が自作の猫耳と尻尾をつけていた。
初対面の幻獣お猫様達が、少しでもティアを身近に感じてくれるように配慮したからだ。
普通の猫の2倍の大きさと化したハチ割れ幻獣猫は、ディーナとティアに「にゃ~ん?」と首を傾げた。
(くっ、可愛いのです……この愛らしさを見る為に、急な山道も根性を出して登って、この猫村まで辿りついたの。大好きなの!)
かなり大きくなっていても、基本行動はお猫様な幻獣。
ディーナはその愛らしさにくらくらしつつ、脅かさないように手をかざす。
「……あれ? 光らないの」
ハチ割れ幻獣猫の代わりに、今度はディーナが首を傾げる。
「幻獣お猫様には効果が無いのでしょうか」
ティアがお猫様を撫でながら、よくよく見つめてみる。
くっついているのは色合い的に白猫とハチ割れなのだが、そのどちらの模様も光っていない。
プロテクションの独特の淡い光が視認きないのだ。
「私がクルセイダーに成り立てだからなの?」
あまり多く使えるわけではなかったが、試しにディーナは自分自身にかけてみる。
瞬間、ディーナの身体が淡い光を帯びた。
間違いなく、プロテクションは使えている。
(となると、この村のおネコさま達には使えないのね)
こくり。
ディーナは覚悟を決めた。
「おネコさま、絶対に、痛くしませんから。痛いのは、すべて私が引き受けるの!」
がしっ。
ディーナは思いっきり幻獣を抱きしめた。
「ディーナさん?」
ティアが怪訝そうな顔をする。
しっかりがっちり。
逃げられないように、決して怪我をしないように。
ディーナはぎゅうぅっと手に力をこめる。
そうして。
そうして……。
「とーーーーーーーーーりゃーーーーーーですのーーーーーーー!!!」
お猫様好きの根性と気合で、ディーナはハチ割れ白猫を抱えあげ、そのまま、温泉横の崖に突っ込んだ。
「きゃーーーーーーーーーー、ディーーーーナさーーーーーーんっ?!」
悲鳴を上げるティア。
どこの誰が巨大な猫を抱きしめたまま、崖に突っ込むなどという事態が予想できるのか。
止める間なんてあるはずがなかった。
どっごーーーーーーんっ!
枯れ木がバキバキと音を立てて砕けていき、ディーナが崖下の窪みに顔面から突き刺さった。
崖の上から固唾を呑んで見守るティア。
……むくりっ。
ディーナが地面から頭を抜き出す。
「……おネコさま、分かれ、たの……」
くらくらくら。
顔面から鼻血を出して半分眩暈を起こしつつ。
ディーナは腕の中の二匹を抱きしめる。
二匹に分かれた幻獣お猫様は、ハチ割れと吃驚している白猫だ。
無論、二匹とも無傷だった。
●遊んでみよう
「にゃー」
ネフィリア・レインフォード(ka0444)はとりあえず猫の鳴きまねをしてみた。
じーっと見つめる先にいるのは、キジ虎猫。
尻尾でつながっているのはハチ割れだ。
二匹とも、ネフィリアの鳴きまねに「にゃーん?」と返事を返す。
だがもちろん、それで二匹が離れたりはしない。
ネフィリアは、キジ虎ハチ割れの目の位置まで屈んで、くいっくいっと片手を招いてみる。
その様子はさながら招き猫。
「お? 反応したのだー?」
遊びたがりのキジ虎が、ネフィリアの真似をして、くいっくいっと、前足を上げて手招きする。
「やはり見た目通り、猫に似た性質のようだな」
ネフィリアの様子を見ていたシリル・ド・ラ・ガルソニエール(ka3820)が頷く。
その手には、色々と猫のおもちゃが。
「さっき作っていたやつなのだ?」
「そうだ。猫じゃらしは村人達が大量に所持していたから、数本貰ってきた」
「そういえば、温泉の入り口にも置いてあったのだ」
ネフィリアは入り口を振り返り、てててーっと走り出す。
「おい、走ると転ぶぞ。お湯でタイルがかなり濡れている……あーーーーーっ!」
「ぎにゃーーーーーーーーーーっ?!」
つるーーーーーーーーーーーーり♪
シリルが止める側から、思いっきりネフィリアがすっ転んだ。
真似してすっ転びにくるキジ虎さんと、引きずられるようにハチ割れさんがすっ転ぶ。
「おいおいおい、どっちが猫だ。転ばせるのは猫だけだろ」
肩を竦めながら、シリルは片手でネフィリアをひょいっと担ぎ、転んだキジ虎とハチ割れをもう片方の手で撫でてやる。
残念ながら、転んでもこの二匹は離れなかった。
そして二匹は顔を見合わせ、露天の木々に登り始めた。
「あのー?」
シリルの肩の上で、ネフィリアが小首を傾げる。
「なんだ?」
「降ろしてくれないのだ?」
「危なっかしいから、貴殿はここにいろ」
「あややっ」
「ほら、既に落っこちそうだぞ。この猫じゃらしを持って」
シリルに言われるままに、ネフィリアは猫じゃらしを握り締める。
「いいか? 俺がきっちり支えるから、お前は木の上の猫達の気を引いてみろ」
「おおー、丁度いい高さなのだ」
「そうだろうそうだろう。さぁ、早くしろ」
「猫さん猫さん、これで遊ぶのだー♪」
ふりふりふり。
ふりふりふり♪
ネフィリアの動かす猫じゃらしに、二匹の目は釘付け。
右に左に。
ひょいひょいと動かせば、二匹の首もひょいひょいと向く。
ふりふりひょいひょい、ふりふりひょいひょい。
ふりふりふりふり……ぽろりっ。
「おっ」
「やったのだ!」
シリルとネフィリアが同時に反応する。
木の上で、ハチ割れとキジ虎がちゃんと二匹に別れたのだった。
●美味しいご飯をたべようか
村に美味しい匂いが立ち込めたのは、丁度お昼になる時間。
「そろそろ腹が減ったろ?」
ザレム・アズール(ka0878)は村人達から調理器具一式を借り、温泉の側で調理を始めていた。
バーベキューセットが村にあったのは以前猫好きのハンター達から譲り受けたとかで、温泉脇で丁度よく調理を始める事が出来た。
パチパチと音を立てながら、炭が割れ、赤い炎が鉄板を焼く。
その鉄板の上には先ほど村に仕入れられた青魚が、こんがりと狐色に染まっている。
「お昼に間に合ってよかったですよ」
大量の青魚を麓の街まで行って、仕入れて来てくれたエステル・クレティエ(ka3783)がほっとする。
村人にザレムが幻獣猫達の特徴を聞き込みするのと同時に、エステルは必要な材料を調達して来てくれたのだ。
もちろん、資金は村人達から出ている。
パタパタパタパタ。
より一層匂いを引き立てる為に、ザレムが団扇で扇ぐ。
「灰サビさんはこの子だと思います。色の分かれ方から、くっついているのは三毛猫さんでしょうか」
エステルが焼き魚の匂いが好きな灰サビさんと、甘いものが大好きな三毛猫さんがくっついている子を探し出して連れてくる。
抱っこされたまま、すんすんと鼻を鳴らし、ゴロゴロ言い出す灰サビ三毛猫さん。
「匂いだけでいいのか? 食いたいだろ」
ほらほらと、団扇をより一層パタパタさせて、灰サビさんの興味を引くザレム。
だがまだ二匹は離れない。
「よし。くっついているのが三毛猫なら、甘いものが好物だよな」
「そうですね。確か、小麦粉や牛乳、それにバターとフルーツが村にはあるはずです。いろいろもらって来ますね」
「助かるよ。火から目が離せないからな」
エステルは灰サビ三毛猫さんをザレムの側に残し、さくさくと取りに行く。
程なくして戻ってきたエステルは、食材は勿論の事、人数分の小皿も持ってきていた。
「丁度焼きあがったよ。完璧な色合いだろ」
「お腹がすいてきますよね」
ザレムとエステルはテキパキと焼き魚を人数分取り分けて、次ぎのホットケーキに取り掛かる。
魚を焼いた鉄板はもちろんきっちり洗ってある。
「魚の匂いはコレで取れるな」
ザレムは、エステルがもってきてくれた籠の中から蜜柑を取り出す。
エステルが見守る中、手際よく皮を剥き、ザレムは皮で磨くように鉄板をなぞる。
洗っても染み付いていた独特の臭みが、すぅっと消えていくのが分かる。
「せっかくのスイーツに匂いがつくのはごめんだからな」
「職人ですね」
ふふっと頷くエステル。
灰サビ三毛猫さんもうんうんと頷いたように見えた。
●ほかほかお風呂
貧血を起こしていたディーナを休憩室で休ませ、ティアはサビ猫と見つめ合っていた。
「サビ猫さんと、黒猫さんでしょうか。見事にくっついてますね」
にこにこ、にこにこ。
ティアはサビ黒猫に語りかけながら、そうっと撫でてみる。
ゴロゴロと喉を鳴らすサビ黒猫は、警戒心皆無。
ティアが身につけている猫耳と肉球グローブが親近感を増していた。
「そうですね。これなら大丈夫でしょうか」
ディーナのように、ティアはサビ黒猫を抱っこする。
「おい、まさか」
シリルが気づいてはっとする。
そんな彼に、ティアはふふっと首を振る。
「大丈夫ですよ。飛び降りたりはしませんから」
「飛び降りるのは危険なのだー」
シリルの肩の上にまだ抱っこされたままのネフィリアが、うんうんと頷く。
ティアは幻獣大猫様が詰まっている温泉に、サビ黒猫を連れて行く。
「大猫さま、少し、失礼させて頂きます」
丁寧にお辞儀をして、ティアは抱っこしていたサビ黒猫をそっと温泉につけてみる。
お猫様二匹分の大きさになっているサビ黒猫は、ティアの腕に抱きついたまま、そうっと湯船の底に足を伸ばす。
「お湯は心地よいですか? 怖くはありませんか」
ティアの問いかけに、サビ黒猫は「にゃぅん」と答える。
雰囲気的に、幸せそうだ。
そうして、どのくらい時間が経っただろう?
お昼はとうに回り、そろそろおやつが気になる頃。
ふっと。
二匹の姿がぶれて見え、次の瞬間、ティアの腕にはサビ猫と黒猫がぶら下がっていた。
「お風呂が気持ちよかったのですね」
改めて二匹を抱っこするティアに、「「にゃーん」」と二匹が頷いた。
●最後はみんなで、夜空を見よう♪
すべてのお猫様が解れたのは、もうすっかり日が落ちた頃。
「いい湯だな。眺めもいい」
温泉に浸かりながら、ザレムはほぅっと息をつく。
彼の腕の中では、三毛猫がくつろいでいる。
甘いものが大好きな三毛猫は、ザレムの作るホットケーキで即座に分離した。
「明日もまた作ってやるからな」
お湯に浸かってもその毛がふわふわなのは、幻獣ならでは。
ザレムの指先を、三毛猫はぺろりと舐める。
きっと、美味しい香りがするのだろう。
「とりあえず、貴殿はこれを身につけておけ」
湯船の外で、シリルはネフィリアから目をそらしながらタオルを渡す。
渡されたネフィリアは「うにゃー?」と首を傾げる。
わかっていないのだ。
ここには異性もいるということが。
「なんでもいいから、いうことを聞け。猫達の為だ」
説明しても無理だと判断したシリルは、そう言い切る。
「わかったのだ、猫たちのためなら、何でもするのだ」
にこーっと笑うネフィリアを、シリルはぐるっぐるにタオルで巻いて肩に担ぐ。
危なっかしくて、放っておけなかった。
「ディーナさん、もうお加減はよろしいのですか?」
「はいですの。意外とみんな、早く分かれてくれてよかったですの」
ふわっと笑うディーナの鼻には、村人が貼ってくれた大き目の絆創膏がペタリ。
鼻血もだが、思いっきり顔面をすりむいていたのだ。
ディーナ自身のマテリアルヒーリングと、ティアのヒールで傷は癒えているのだが、ここは村人の意向を汲んで、明日までつけておくらしい。
「みなさん、果実のお飲み物を作りましたよ」
エステルが人数分のコップと瓶をトレイに並べて、皆を呼ぶ。
村の果樹園から採れた柑橘類は、果実汁にもぴったりだった。
皆で飲みながら、空を見上げる。
満天の星空は、お猫様のように輝いていた。
「おネコさま、覚悟はいいですか?」
ディーナ・フェルミ(ka5843)は、くっつきあっている幻獣達に確認を取る。
その隣にはティア・ユスティース(ka5635)が自作の猫耳と尻尾をつけていた。
初対面の幻獣お猫様達が、少しでもティアを身近に感じてくれるように配慮したからだ。
普通の猫の2倍の大きさと化したハチ割れ幻獣猫は、ディーナとティアに「にゃ~ん?」と首を傾げた。
(くっ、可愛いのです……この愛らしさを見る為に、急な山道も根性を出して登って、この猫村まで辿りついたの。大好きなの!)
かなり大きくなっていても、基本行動はお猫様な幻獣。
ディーナはその愛らしさにくらくらしつつ、脅かさないように手をかざす。
「……あれ? 光らないの」
ハチ割れ幻獣猫の代わりに、今度はディーナが首を傾げる。
「幻獣お猫様には効果が無いのでしょうか」
ティアがお猫様を撫でながら、よくよく見つめてみる。
くっついているのは色合い的に白猫とハチ割れなのだが、そのどちらの模様も光っていない。
プロテクションの独特の淡い光が視認きないのだ。
「私がクルセイダーに成り立てだからなの?」
あまり多く使えるわけではなかったが、試しにディーナは自分自身にかけてみる。
瞬間、ディーナの身体が淡い光を帯びた。
間違いなく、プロテクションは使えている。
(となると、この村のおネコさま達には使えないのね)
こくり。
ディーナは覚悟を決めた。
「おネコさま、絶対に、痛くしませんから。痛いのは、すべて私が引き受けるの!」
がしっ。
ディーナは思いっきり幻獣を抱きしめた。
「ディーナさん?」
ティアが怪訝そうな顔をする。
しっかりがっちり。
逃げられないように、決して怪我をしないように。
ディーナはぎゅうぅっと手に力をこめる。
そうして。
そうして……。
「とーーーーーーーーーりゃーーーーーーですのーーーーーーー!!!」
お猫様好きの根性と気合で、ディーナはハチ割れ白猫を抱えあげ、そのまま、温泉横の崖に突っ込んだ。
「きゃーーーーーーーーーー、ディーーーーナさーーーーーーんっ?!」
悲鳴を上げるティア。
どこの誰が巨大な猫を抱きしめたまま、崖に突っ込むなどという事態が予想できるのか。
止める間なんてあるはずがなかった。
どっごーーーーーーんっ!
枯れ木がバキバキと音を立てて砕けていき、ディーナが崖下の窪みに顔面から突き刺さった。
崖の上から固唾を呑んで見守るティア。
……むくりっ。
ディーナが地面から頭を抜き出す。
「……おネコさま、分かれ、たの……」
くらくらくら。
顔面から鼻血を出して半分眩暈を起こしつつ。
ディーナは腕の中の二匹を抱きしめる。
二匹に分かれた幻獣お猫様は、ハチ割れと吃驚している白猫だ。
無論、二匹とも無傷だった。
●遊んでみよう
「にゃー」
ネフィリア・レインフォード(ka0444)はとりあえず猫の鳴きまねをしてみた。
じーっと見つめる先にいるのは、キジ虎猫。
尻尾でつながっているのはハチ割れだ。
二匹とも、ネフィリアの鳴きまねに「にゃーん?」と返事を返す。
だがもちろん、それで二匹が離れたりはしない。
ネフィリアは、キジ虎ハチ割れの目の位置まで屈んで、くいっくいっと片手を招いてみる。
その様子はさながら招き猫。
「お? 反応したのだー?」
遊びたがりのキジ虎が、ネフィリアの真似をして、くいっくいっと、前足を上げて手招きする。
「やはり見た目通り、猫に似た性質のようだな」
ネフィリアの様子を見ていたシリル・ド・ラ・ガルソニエール(ka3820)が頷く。
その手には、色々と猫のおもちゃが。
「さっき作っていたやつなのだ?」
「そうだ。猫じゃらしは村人達が大量に所持していたから、数本貰ってきた」
「そういえば、温泉の入り口にも置いてあったのだ」
ネフィリアは入り口を振り返り、てててーっと走り出す。
「おい、走ると転ぶぞ。お湯でタイルがかなり濡れている……あーーーーーっ!」
「ぎにゃーーーーーーーーーーっ?!」
つるーーーーーーーーーーーーり♪
シリルが止める側から、思いっきりネフィリアがすっ転んだ。
真似してすっ転びにくるキジ虎さんと、引きずられるようにハチ割れさんがすっ転ぶ。
「おいおいおい、どっちが猫だ。転ばせるのは猫だけだろ」
肩を竦めながら、シリルは片手でネフィリアをひょいっと担ぎ、転んだキジ虎とハチ割れをもう片方の手で撫でてやる。
残念ながら、転んでもこの二匹は離れなかった。
そして二匹は顔を見合わせ、露天の木々に登り始めた。
「あのー?」
シリルの肩の上で、ネフィリアが小首を傾げる。
「なんだ?」
「降ろしてくれないのだ?」
「危なっかしいから、貴殿はここにいろ」
「あややっ」
「ほら、既に落っこちそうだぞ。この猫じゃらしを持って」
シリルに言われるままに、ネフィリアは猫じゃらしを握り締める。
「いいか? 俺がきっちり支えるから、お前は木の上の猫達の気を引いてみろ」
「おおー、丁度いい高さなのだ」
「そうだろうそうだろう。さぁ、早くしろ」
「猫さん猫さん、これで遊ぶのだー♪」
ふりふりふり。
ふりふりふり♪
ネフィリアの動かす猫じゃらしに、二匹の目は釘付け。
右に左に。
ひょいひょいと動かせば、二匹の首もひょいひょいと向く。
ふりふりひょいひょい、ふりふりひょいひょい。
ふりふりふりふり……ぽろりっ。
「おっ」
「やったのだ!」
シリルとネフィリアが同時に反応する。
木の上で、ハチ割れとキジ虎がちゃんと二匹に別れたのだった。
●美味しいご飯をたべようか
村に美味しい匂いが立ち込めたのは、丁度お昼になる時間。
「そろそろ腹が減ったろ?」
ザレム・アズール(ka0878)は村人達から調理器具一式を借り、温泉の側で調理を始めていた。
バーベキューセットが村にあったのは以前猫好きのハンター達から譲り受けたとかで、温泉脇で丁度よく調理を始める事が出来た。
パチパチと音を立てながら、炭が割れ、赤い炎が鉄板を焼く。
その鉄板の上には先ほど村に仕入れられた青魚が、こんがりと狐色に染まっている。
「お昼に間に合ってよかったですよ」
大量の青魚を麓の街まで行って、仕入れて来てくれたエステル・クレティエ(ka3783)がほっとする。
村人にザレムが幻獣猫達の特徴を聞き込みするのと同時に、エステルは必要な材料を調達して来てくれたのだ。
もちろん、資金は村人達から出ている。
パタパタパタパタ。
より一層匂いを引き立てる為に、ザレムが団扇で扇ぐ。
「灰サビさんはこの子だと思います。色の分かれ方から、くっついているのは三毛猫さんでしょうか」
エステルが焼き魚の匂いが好きな灰サビさんと、甘いものが大好きな三毛猫さんがくっついている子を探し出して連れてくる。
抱っこされたまま、すんすんと鼻を鳴らし、ゴロゴロ言い出す灰サビ三毛猫さん。
「匂いだけでいいのか? 食いたいだろ」
ほらほらと、団扇をより一層パタパタさせて、灰サビさんの興味を引くザレム。
だがまだ二匹は離れない。
「よし。くっついているのが三毛猫なら、甘いものが好物だよな」
「そうですね。確か、小麦粉や牛乳、それにバターとフルーツが村にはあるはずです。いろいろもらって来ますね」
「助かるよ。火から目が離せないからな」
エステルは灰サビ三毛猫さんをザレムの側に残し、さくさくと取りに行く。
程なくして戻ってきたエステルは、食材は勿論の事、人数分の小皿も持ってきていた。
「丁度焼きあがったよ。完璧な色合いだろ」
「お腹がすいてきますよね」
ザレムとエステルはテキパキと焼き魚を人数分取り分けて、次ぎのホットケーキに取り掛かる。
魚を焼いた鉄板はもちろんきっちり洗ってある。
「魚の匂いはコレで取れるな」
ザレムは、エステルがもってきてくれた籠の中から蜜柑を取り出す。
エステルが見守る中、手際よく皮を剥き、ザレムは皮で磨くように鉄板をなぞる。
洗っても染み付いていた独特の臭みが、すぅっと消えていくのが分かる。
「せっかくのスイーツに匂いがつくのはごめんだからな」
「職人ですね」
ふふっと頷くエステル。
灰サビ三毛猫さんもうんうんと頷いたように見えた。
●ほかほかお風呂
貧血を起こしていたディーナを休憩室で休ませ、ティアはサビ猫と見つめ合っていた。
「サビ猫さんと、黒猫さんでしょうか。見事にくっついてますね」
にこにこ、にこにこ。
ティアはサビ黒猫に語りかけながら、そうっと撫でてみる。
ゴロゴロと喉を鳴らすサビ黒猫は、警戒心皆無。
ティアが身につけている猫耳と肉球グローブが親近感を増していた。
「そうですね。これなら大丈夫でしょうか」
ディーナのように、ティアはサビ黒猫を抱っこする。
「おい、まさか」
シリルが気づいてはっとする。
そんな彼に、ティアはふふっと首を振る。
「大丈夫ですよ。飛び降りたりはしませんから」
「飛び降りるのは危険なのだー」
シリルの肩の上にまだ抱っこされたままのネフィリアが、うんうんと頷く。
ティアは幻獣大猫様が詰まっている温泉に、サビ黒猫を連れて行く。
「大猫さま、少し、失礼させて頂きます」
丁寧にお辞儀をして、ティアは抱っこしていたサビ黒猫をそっと温泉につけてみる。
お猫様二匹分の大きさになっているサビ黒猫は、ティアの腕に抱きついたまま、そうっと湯船の底に足を伸ばす。
「お湯は心地よいですか? 怖くはありませんか」
ティアの問いかけに、サビ黒猫は「にゃぅん」と答える。
雰囲気的に、幸せそうだ。
そうして、どのくらい時間が経っただろう?
お昼はとうに回り、そろそろおやつが気になる頃。
ふっと。
二匹の姿がぶれて見え、次の瞬間、ティアの腕にはサビ猫と黒猫がぶら下がっていた。
「お風呂が気持ちよかったのですね」
改めて二匹を抱っこするティアに、「「にゃーん」」と二匹が頷いた。
●最後はみんなで、夜空を見よう♪
すべてのお猫様が解れたのは、もうすっかり日が落ちた頃。
「いい湯だな。眺めもいい」
温泉に浸かりながら、ザレムはほぅっと息をつく。
彼の腕の中では、三毛猫がくつろいでいる。
甘いものが大好きな三毛猫は、ザレムの作るホットケーキで即座に分離した。
「明日もまた作ってやるからな」
お湯に浸かってもその毛がふわふわなのは、幻獣ならでは。
ザレムの指先を、三毛猫はぺろりと舐める。
きっと、美味しい香りがするのだろう。
「とりあえず、貴殿はこれを身につけておけ」
湯船の外で、シリルはネフィリアから目をそらしながらタオルを渡す。
渡されたネフィリアは「うにゃー?」と首を傾げる。
わかっていないのだ。
ここには異性もいるということが。
「なんでもいいから、いうことを聞け。猫達の為だ」
説明しても無理だと判断したシリルは、そう言い切る。
「わかったのだ、猫たちのためなら、何でもするのだ」
にこーっと笑うネフィリアを、シリルはぐるっぐるにタオルで巻いて肩に担ぐ。
危なっかしくて、放っておけなかった。
「ディーナさん、もうお加減はよろしいのですか?」
「はいですの。意外とみんな、早く分かれてくれてよかったですの」
ふわっと笑うディーナの鼻には、村人が貼ってくれた大き目の絆創膏がペタリ。
鼻血もだが、思いっきり顔面をすりむいていたのだ。
ディーナ自身のマテリアルヒーリングと、ティアのヒールで傷は癒えているのだが、ここは村人の意向を汲んで、明日までつけておくらしい。
「みなさん、果実のお飲み物を作りましたよ」
エステルが人数分のコップと瓶をトレイに並べて、皆を呼ぶ。
村の果樹園から採れた柑橘類は、果実汁にもぴったりだった。
皆で飲みながら、空を見上げる。
満天の星空は、お猫様のように輝いていた。
依頼結果
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相談卓 エステル・クレティエ(ka3783) 人間(クリムゾンウェスト)|17才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2015/11/09 20:39:49 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/11/09 20:36:45 |