ゲスト
(ka0000)
【幻森】蝕甚されし玉桂
マスター:鷹羽柊架

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/11/14 07:30
- 完成日
- 2015/11/20 06:24
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
幻獣の森を巡る争いは、『歪虚連合軍』と『幻獣王親衛隊』の激突という形へ発展した。
幻獣を守るべく動き出した親衛隊は歪虚に対して有利な戦いを繰り広げ、敵をヤオト渓谷へ撤退させるまでに至った。
ここで幻獣王チューダは敵の追撃を命じ、幻獣の戦士ツキウサギがこれに従って敵を追撃した。しかし、この撤退が敵の計略だと判明する頃には、ツキウサギら追撃部隊の退路は伏兵によって断たれていた。
敵の計略で形勢が逆転する状況。
危機的状況を招いた王チューダは、頭を掻きながら言い放つ。
「あー。えーっと……後はみんなで何とかすであります」
●
少し時間を巻き戻し、チューダより追撃の許可を得たツキウサギはやる気満々で戦線へと出ていった。
「……待て!」
慌てて止めようとするバタルトゥであるが、ツキウサギは聞いていない。
「バタルトゥさん、ボク達が行く」
彼の名を呼ぶのはスコール族の幼き長、ファリフだ。バタルトゥはファリフが出ることに心配そうに眉をひそめる。
ファリフの実力の心配ではなく、彼女が無事で帰れるか心配なのだ。
「心配するな。俺もいる」
静かに声をかけるのはフェンリルである。ファリフの傍らに腰を落ち着かせてゆっくり尻尾が動いてファリフに巻き付く。
「バタルトゥさんの言うとおりと思う。危険だと思うんだ」
はっきりと、ファリフはバタルトゥに賛同を示す。
「えっと、我輩いるのです……」
「けど、ツキウサギは自分できちんと戦って森を守りたいんじゃないかな」
足下にチューダがいる事に気づいているのかもしれないが、今のファリフにはかまっていられない。
「今まで、見つける度にこっそり守っていたんだと思うんだ。
今回の戦いでしっかりと勝って、二度と手が出せないようにしたいんだと思う」
堰を切ったかのように叫ぶファリフの言葉をバタルトゥは静かに受け止める。
「ボクはツキウサギの思いを確かにしたい、だから行ってくる。ハンターの皆と一緒に……っ!」
自分の想いを分かってほしいが為に言い切ったファリフとバタルトゥの視線がぶつかる。
前は帝国の関与で意見が分かれ、対立にも近い立場であったが、今は違う。
危機に晒されている幻獣達をを守りたいが為に共に戦う仲間でもある。
「……分かった。武運を祈る……」
ゆっくりと瞳を閉じるバタルトゥの言葉にファリフは笑顔を見せた。
「行ってきます!」
「お嬢ちゃんは俺が護る。心配するな」
ファリフがバタルトゥへ手を振り、フェンリルと共にツキウサギを追う。
「だ、大丈夫であります! 下僕たちが行くのでありますから!」
元気に駆けるファリフの背を見送り、えっへんと胸を張るチューダであったが、バタルトゥは静かに無事を祈るしかなかった。
ツキウサギを寸前で止めたファリフ達はハンターと合流して追撃戦へ向かう事となった。
ファリフは敵が一度撤退した事に関して、バタルトゥが罠ではないかという心配をしていることをハンター達に伝えた。
「ボクは君たちを危険に晒すことになると思う。その危険を承知できて欲しい。
ツキウサギを、幻獣達を一緒に守って!」
願いを叫ぶファリフに応えた何人かのハンター達が共に赴く。
ヤオト渓谷は深く険しい地形。
奥に行けば行くほど、道らしい道も見あたらない。
歪虚の支配地域と言われている場所であるのだが、雑魔の姿すら見えない状態。
道を間違えたのかと思案しており、違う道を探そうかと引き返そうとした判断は遅かった。
自分達が引き返そうとした道には狼型歪虚とオークがハンター達を待ち構えている状態。
「いつの間に……!」
ファリフが唇を噛んで武器を構える。
「……罠だったか」
低く唸ったのはフェンリル。
ファリフの背後を守るように見つめる先にはオーガ数体いた。
側面から向こうから少しずつ響き、森の茂みから見え隠れするのはトロルだと察する。
前に狼とオーク、背後にオーガ、側面にトロルという万事休すといわんばかりの状態。
周囲は敵。
その場で力の限り戦うか、逃げるとしても道なき道を駆けるか、その判断はハンター達に委ねられようとしている。
幻獣の森を巡る争いは、『歪虚連合軍』と『幻獣王親衛隊』の激突という形へ発展した。
幻獣を守るべく動き出した親衛隊は歪虚に対して有利な戦いを繰り広げ、敵をヤオト渓谷へ撤退させるまでに至った。
ここで幻獣王チューダは敵の追撃を命じ、幻獣の戦士ツキウサギがこれに従って敵を追撃した。しかし、この撤退が敵の計略だと判明する頃には、ツキウサギら追撃部隊の退路は伏兵によって断たれていた。
敵の計略で形勢が逆転する状況。
危機的状況を招いた王チューダは、頭を掻きながら言い放つ。
「あー。えーっと……後はみんなで何とかすであります」
●
少し時間を巻き戻し、チューダより追撃の許可を得たツキウサギはやる気満々で戦線へと出ていった。
「……待て!」
慌てて止めようとするバタルトゥであるが、ツキウサギは聞いていない。
「バタルトゥさん、ボク達が行く」
彼の名を呼ぶのはスコール族の幼き長、ファリフだ。バタルトゥはファリフが出ることに心配そうに眉をひそめる。
ファリフの実力の心配ではなく、彼女が無事で帰れるか心配なのだ。
「心配するな。俺もいる」
静かに声をかけるのはフェンリルである。ファリフの傍らに腰を落ち着かせてゆっくり尻尾が動いてファリフに巻き付く。
「バタルトゥさんの言うとおりと思う。危険だと思うんだ」
はっきりと、ファリフはバタルトゥに賛同を示す。
「えっと、我輩いるのです……」
「けど、ツキウサギは自分できちんと戦って森を守りたいんじゃないかな」
足下にチューダがいる事に気づいているのかもしれないが、今のファリフにはかまっていられない。
「今まで、見つける度にこっそり守っていたんだと思うんだ。
今回の戦いでしっかりと勝って、二度と手が出せないようにしたいんだと思う」
堰を切ったかのように叫ぶファリフの言葉をバタルトゥは静かに受け止める。
「ボクはツキウサギの思いを確かにしたい、だから行ってくる。ハンターの皆と一緒に……っ!」
自分の想いを分かってほしいが為に言い切ったファリフとバタルトゥの視線がぶつかる。
前は帝国の関与で意見が分かれ、対立にも近い立場であったが、今は違う。
危機に晒されている幻獣達をを守りたいが為に共に戦う仲間でもある。
「……分かった。武運を祈る……」
ゆっくりと瞳を閉じるバタルトゥの言葉にファリフは笑顔を見せた。
「行ってきます!」
「お嬢ちゃんは俺が護る。心配するな」
ファリフがバタルトゥへ手を振り、フェンリルと共にツキウサギを追う。
「だ、大丈夫であります! 下僕たちが行くのでありますから!」
元気に駆けるファリフの背を見送り、えっへんと胸を張るチューダであったが、バタルトゥは静かに無事を祈るしかなかった。
ツキウサギを寸前で止めたファリフ達はハンターと合流して追撃戦へ向かう事となった。
ファリフは敵が一度撤退した事に関して、バタルトゥが罠ではないかという心配をしていることをハンター達に伝えた。
「ボクは君たちを危険に晒すことになると思う。その危険を承知できて欲しい。
ツキウサギを、幻獣達を一緒に守って!」
願いを叫ぶファリフに応えた何人かのハンター達が共に赴く。
ヤオト渓谷は深く険しい地形。
奥に行けば行くほど、道らしい道も見あたらない。
歪虚の支配地域と言われている場所であるのだが、雑魔の姿すら見えない状態。
道を間違えたのかと思案しており、違う道を探そうかと引き返そうとした判断は遅かった。
自分達が引き返そうとした道には狼型歪虚とオークがハンター達を待ち構えている状態。
「いつの間に……!」
ファリフが唇を噛んで武器を構える。
「……罠だったか」
低く唸ったのはフェンリル。
ファリフの背後を守るように見つめる先にはオーガ数体いた。
側面から向こうから少しずつ響き、森の茂みから見え隠れするのはトロルだと察する。
前に狼とオーク、背後にオーガ、側面にトロルという万事休すといわんばかりの状態。
周囲は敵。
その場で力の限り戦うか、逃げるとしても道なき道を駆けるか、その判断はハンター達に委ねられようとしている。
リプレイ本文
「釣り野伏っ!?」
敵の姿を見て八島 陽(ka1442)が声を上げる。
「……やっぱり、罠だったんだね……」
信頼が出来るハンター達を危険に追いやってしまった気持ちに捕らわれたファリフは悔しそうに唇を噛む。
「この事態は想定済みです。焦ることはございませんよ」
微笑むメリル・E・ベッドフォード(ka2399)にファリフは「うん」と素直に返事を返す。
「今回の追撃があの可愛いチューダの失敗と思うと、怒る気にも……」
「確かに」
むーん、と腕を組むルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)にアリア ウィンスレッド(ka4531)がくすくすと笑う。
「ピンチこそ結束の時ですよ♪」
茶目っ気まじりにアリアの言葉に八雲 奏(ka4074)が頷いた。
「ファリフさん達をこんな所で死なせるわけにはいきませんから」
「そうですね。生きて帰りましょう」
奏の決意にセツナ・ウリヤノヴァ(ka5645)も同意見。
「私も生きて帰りますよ! カードのデュエルだってやりたりてないし、恋だってしたい! ここで死んだら何も出来なくなるんですから。きっと、白馬の王子様が迎えに来ます!」
燃えるルンルンの最後の言葉にメリルが思案する。
「どうかしましたか?」
セツナがメリルに問うと、「私の場合は姉の言いつけで愚弟が迎えに来るような気がしました」と答えた。
「いい弟さんですね!」
「あの愚弟がここまで来れるか考えてしまいます」
輝く笑顔のルンルンにメリルは栄光の手を持って腕を組み、可愛らしい顔立ちに反した厳しいコメントを投下した。
「やれやれ、女は三人いれば姦しいというが、今回は倍だな」
「あ、うん……」
フェンリルが敵の様子を伺いつつ、呟くと、陽は今回、男子は自分ひとりであることに気付く。
撤退戦を決めたハンター達は臨戦態勢をとるにあたり、まずはルンルンが符を取り出した。
「ジュゲームリリカル……ルンルン忍法花占い☆」
符に集中しているルンルンが呪文を唱えると、符が淡い光を帯びる。
「こんなの出ました、明日の天気もおフランス晴れです!」
吉となるだろう方向をルンルンは符を指に挟んで指し示す。
敵の距離を確認したメリルが荷物から毛布を取り出して酒を振り掛けしみこませる。強いアルコール臭が鼻につくが今は気にしてられない。
松明を取り出して火を灯す。向かってきた狼へ火を向けると、狼は怯んだが、その勢いは落とさなかった。
ゆっくりと松明の火を酒がしみこんだ毛布へ落した。
青白い火が毛布へ広がり、徐々に赤い火と共に煙が上がって行く。
早く仲間が気付いてくれる事を誰もが祈った。
「戦いの狼煙……でもありますね」
煙を見上げた奏が呟く。
「友達が一緒ならへっちゃらだよね♪」
アリアが明るい声音で言えば、二人はお互いを見合って頷いた。
「それじゃぁ、行くっすよー!」
ツキウサギの声駆けに奏、アリア、ファリフ、フェンリルが応え、後方のオーガやトロルへと向かった。
後方組が動けば突破組と目されるハンター達も臨戦態勢となる。
「行くか」
「助太刀に参ります」
陽が前に立つと、セツナが横に並ぶ。
「皆様の連携が必要です。何卒、お願いします」
陽達の数歩後ろに立つメリルが仲間達に声をかける。
「皆で一気にやっちゃいましょう☆」
「いつでもいける」
ルンルンと陽がメリルの言葉に同意すると、集中していた「参ります」とセツナが声をあげた。
剣を抜いたセツナが足と神経にマテリアルを巡らし、駆けだして狼の群へと向かう。
「先手必勝!」
気合いと共に放たれた一撃は速く、セツナを襲いかかろうと飛び込んできた一体の狼を捕らえた。
空気を斬る甲高い音は狼の目を斬り、視界を奪う。
不安定な地場で即座に体勢を整えたセツナは次の狼を狙わんとしている。狼達はセツナへと標的を向けて走り出した。
セツナの確認した狼の数は五体。
視界にとらえきれないところにもいるかもしれないが、その数が自身を標的として駆けてくる。
符がルンルンの呼びかけに応え、アフロの雷神の姿が一瞬現れるなり、雷を呼び起こす雷鳴が響く。
魔導短伝話を取り出した陽はマテリアルの循環に集中すると、光の三角形が彼の前に現れた。
栄光の手を掲げたメリルが呼び起こしたのは炎だ。
先ほど、松明につけた火とは違う、マテリアルでもって作られた炎が凝縮して火球の姿をとる。
ギリギリまで引きつけたセツナは振り向く。メリルの青い瞳と目が合った。
「離れてください!」
言われるままにセツナが横へ飛ぶと、一体の狼もセツナへ噛みつく。
「く……っ」
跳躍の状態で受け流したが、噛みつかれなかったものの、狼はセツナの片足に牙を引っかけるように傷つけた。
セツナに吹き飛ばされた狼が更に追いすがろうとするが、三人からもたされた一瞬の輝きが速かった。
陽のデルタレイで撃たれた一条の光がセツナを追いすがる狼の頭を打ち抜く。
虚空より狼達の頭上より赤と緑と黒の稲妻が走っていき、光が弾いた。
更に奥より追いかけてきた狼達の背後を狙ったメリルのファイアーボールは一体の狼に着火し、そのまま爆発して狼の身体を吹き飛ばした。
その爆発は大きく、更に遠方にいる狼やオーガの毛に引火し、燃やしていく。
爆発音と巻き起こる爆風にハンター達は耳を塞いだり、足を踏ん張る。
風が落ち着いても突破口はまだ開かず、立ちふさがるようにオーク達、更に追ってきた狼達がハンターに迫ってきていた。
轟音を背にオーガと対応していたのは奏とファリフ。
ツキウサギは進んでトロルへと駆けていき、杵を振り、トロルの動きを誘導している。それに伴い、フェンリルがオーガの一体に噛みつき、前足の鋭い爪で噛みついた傷口を抉り、爪で引っかけたオーガの身体を誘導するべき方向へと投げ捨てる。
更に突進してきたオーガをギリギリまで引きつけて横に飛び跳ねたフェンリルが投げつけたオークの方向へ体当たりをして首に全体重を乗せてファリフの方へと戻る。
「さー、撤退戦といこっかー♪」
明るい声音のアリアがオーガ達へと指先を向ければ蒼いオーラが煙のように立ち昇る。
仲間がやられた姿を見たオーガ達が追いかけだし、距離を確認したアリアが指を振るうと、蒼いオーラが指揮棒のように揺らめく。
彼女が奏でるレクイエムの歌声が響く。
たおやかなアリアの声はオークやトロルの動きを絡みとるように動きを阻害し、緩慢にしていった。
レイクイムの効果を確認した奏は振動刀「オートMURAMASA」を抜き放つ。
「死線こそ我が故郷なれば」
オーガやトロルがレクイエムの効果に苦しみ、呻く声の中、奏が囁く。
振動刀が低く震え、奏の周囲に風に散り行く緋桜の花びらのようなオーラが舞う。
「――存分に舞うと致しましょう」
宣言した奏がオーガへと駆け出した。
先に狙うのはレイクイエムの効果に嵌ったオーガ。皮のアーマーを着こんでいるが、自身の目的を考えれば皮のアーマーならば問題はない。
刺突を狙う構えを取った奏は躊躇う事もなく、オーガの腰と足の繋ぎ目を狙う。
振動刀がオーガの足を突き、刀を引くと同時に骨に到達するように筋肉を斬りつけた。
醜い悲鳴が奏の鼓膜を劈くも彼女は気に止めず、アリアを狙おうとするオーガへ走り出す。目的のオーガは長い棍棒を持っていて腕を振り上げようとしている。
奏とは違う方向から走ってくるのはファリフだ。大斧を振り上げて棍棒をへし切り、オーガの気を反らす。
ファリフの動きを察した奏がオーガを斬りつけるも、オーガの巨体は堪えようとしたが、アリアの銃撃に頭の半分を吹き飛ばされ、倒れた。
目に見えるオーガは倒れただろうが、まだ増えるやもしれない。
ハンター達は一度、退路を振り向いたが、まだ交戦中だ。
「くい止めないとね」
アリアの呟きは皆が思うこと。
「やるっきゃないっすー!」
ツキウサギがキネを振るい、空気の抵抗を受けて低い音を出して思いっきり跳躍した。
狙う先はトロルであり、思いっきり振りかぶったキネで横から腿を打ち付ける。キネの衝撃はトロルの上体を下げるには十分な攻撃。
奏が刀を上段に構えて跳躍し、トロルの首を切り落とそうとするも、骨と刀がかち合う振動が奏の身体を走り抜ける。
「く……っ!」
顔を顰める奏は後悔のある戦いはしたくないと思っている。
思いっきり戦い、守り抜き、生きたい。
奏は即座に刀の向きを変えて骨に沿わせて首下から肩の筋肉をそぎ落として刀をトロルより引き斬った。
トロルの再生能力は早いが、今は少しでも足止めが必要。
この攻撃でも十分な足止めになると感じた奏が気配を察知したとき、振りかぶったオーガの棍棒が視界に入る。
「奏!」
アリアの呼び声も空しく、奏は肩から側面にかけて棍棒の衝撃をくらってしまう。
悲鳴をあげる余裕もない衝撃に奏は地に伏す。
オーガがまだ動く奏に気付き、更に棍棒を振り上げる姿を確認したアリアが駆け出した。盾を構え、オーガの攻撃を防ぐも、盾から伝わる攻撃は振動となってアリアを襲う。
「アリアさん、引いて!」
ファリフが奏を連れて一度後退する。アリアに攻撃を加えたオーガはフェンリルが相手をし、気をそらしている。
「オッケー。盾が無かったらヤバヤバだったね」
大きく息を吐くアリアも後退し、奏にヒーリングスフィアを発動させた。柔らかい光に傷が包まれたものの、その傷は深く……重い。
ツキウサギは奏の治療を行っていることを確認した上でトロルとオーガと複数の敵と対峙していた。
跳躍し、キネを振りかぶってトロルへ殴打していく。殴打したトロルを踏み台にして軌道を変えてオーガへと飛んでいく。
戦いで周囲が見えなくなっていたのか、ツキウサギは別の方向からトロルが振り落とす石の棒にきづかなかった。
「ツキウサギ!」
大きな音を立ててツキウサギが地に叩きつけられた。更に他のオーガがツキウサギを踏みつけようとする。
アリアが施術を中段してオーガの目に銃を撃ちこみ、怯んだ隙にフェンリルがツキウサギを食み咥えて離脱する。
「アリア……出ます」
奏が起き上がると少しよろけながらも敵へと向かう。アリアは今の状態を理解した上で「援護するよ」と応えた。
更に間合を詰めようとする敵達に向かい、奏はゆっくり深呼吸をし、刀を構える。
「守るべき未来が背にあらば臆す理由などありはしません……」
再び舞い上がる緋桜のオーラを吹かし、奏はオーガの腕を斬りおとした。
突破組もまた、苦戦を強いられている状態だ。
マテリアルヒーリングで回復を試みたセツナであるが、足の傷は治りきっておらず、敵……主に狼の集中攻撃を受けている。
「ルンルン忍法桜吹雪☆」
符を飛ばしたルンルンがセツナを庇う。
苦い表情を浮かべた陽がオークの頭部を狙い、銃を撃っている。
数は減っては来ているが、まだ突破口は見えてない。
こちらにいるハンター達は突破口の向こうから聞こえる喧騒と轟音に気づいていた。
もしかしたら、救援部隊かもしれないが、他の部隊の戦う音かもしれない。
皆、消耗しており、いつ倒れてもおかしくは無い。
皆で帰るという想いだけで皆、戦っている。
「メリルさん!」
思案していたメリルにファリフの声が背後から聞こえ、振り向いた彼女が見たのは傷ついたツキウサギをくわえたフェンリルだ。
深く傷ついたツキウサギの姿にハンター達が言葉を失う。
メリルは即座にアースウォールを発動させて、敵の間合いを阻害した。
「……フェンリル。頼みがある。俺たちがもう一度、突破口を開く。ファリフとツキウサギを乗せて脱出してくれ」
「陽さん!」
叫ぶファリフは抗議の感情が交じっている。
「お前達はどうする」
フェンリルの問いにメリルが口を開いた。
「私たちはその後を追います。私のアースウォールとルンルン様の桜幕符で敵を避けます」
「その隙に私達も脱出します☆」
ルンルンが言えば、ファリフは何かを言いたそうであったが、ファリフは承諾した。
「皆、ファリフ様達を守りたいのです」
「セツナお姉さん」
セツナの言葉にファリフは決意した。
「ナーランギにツキウサギを返そう。勇敢に戦っていたことを、ハンターを守ったことを伝えるよ。皆と一緒に伝えに行こう」
ファリフの言葉にハンター達が微笑む。
「二人が危ないな」
陽が駆けだし、奏とアリアの方へと向かっていき、敵を退けつつ、二人を誘導する。
ハンター達が固まったのは死を覚悟したわけではない。
活路を手にするためだ。
スリープクラウドを展開したメリルの青白いガスに倒れる敵が確認された。
アリアが奏の腕を自身の肩に回し、進むべき道を見据える。
レクイエムの歌声を紡ぐアリアの声が周囲のオークやオーガ、トロルを巻き込み、動きを鈍くしていく。
「もう一度出番です!」
ルンルンが符で三体の雷様の幻影をを呼びだした。
緊迫した事態であるが、マイペースな様子を見せている。
陽の方は集中してデルタレイを展開している。光の三角の頂がそれぞれ輝き出すとき、陽は銃を構え、オークへと狙いを定めた。
ツキウサギをフェンリルに乗せたセツナ。
想いを込めた言葉を、ツキウサギに声をかける。
「生きて帰りましょう」
「はいっす……」
帰るのだ。
家族の仲間のもとへ。
メリルは火球を呼び起こした。マテリアルを更に凝縮されたように小さく火花を散らして影を作っている。
「いつでも行けるよ!」
ファリフの声が宣言となり、動きが鈍くなった敵達へと攻撃が飛んでいった。
メリルの火球が爆発する際に黒い炎となってオーク達を襲う。
フェンリルがファリフとツキウサギを乗せて、尚も燃える敵の中へ飛び込んでいく。
「危険です!」
ハンターの誰かが叫んだが、フェンリルは止まる事をしなかった。
ファリフとツキウサギが不安定なフェンリルの背の上で武器を構え、まだ動いているだろう敵をなぎ倒し、ハンター達へ道を作っていた。
ハンター達は陽をしんがりにその道を走っていくが、トロルと戦っていた陽のすぐ後ろに土壁が現れた。
「足並みそろえて下さいとお願いしましたから」
メリルの言葉に陽は頷いて、仲間達を追った。
フェンリル達が作った道を敵が塞ごうとしたが、ハンター達はなんとか凌ぎ、仲間と肩を組み合い、走っていく。
土壁を壊したトロルとオーガが武器を振り、追いかけてきた。
陽がトロルの気配に気づき、しんがりを守るためにトロルの殴打を受ける。
向こうから獣の突進音が聞こえたハンター達は敵の増援かと思ったが、それは違った。
フェンリルと似た狼に乗ったハンター達だ。気づいたメリルが陽を守るように叫ぶ。
救出に走った仲間が陽をトロルから引き剥がす。
無事とはいえないが、全員失うことなくヤオト渓谷から脱出していった。
敵の姿を見て八島 陽(ka1442)が声を上げる。
「……やっぱり、罠だったんだね……」
信頼が出来るハンター達を危険に追いやってしまった気持ちに捕らわれたファリフは悔しそうに唇を噛む。
「この事態は想定済みです。焦ることはございませんよ」
微笑むメリル・E・ベッドフォード(ka2399)にファリフは「うん」と素直に返事を返す。
「今回の追撃があの可愛いチューダの失敗と思うと、怒る気にも……」
「確かに」
むーん、と腕を組むルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)にアリア ウィンスレッド(ka4531)がくすくすと笑う。
「ピンチこそ結束の時ですよ♪」
茶目っ気まじりにアリアの言葉に八雲 奏(ka4074)が頷いた。
「ファリフさん達をこんな所で死なせるわけにはいきませんから」
「そうですね。生きて帰りましょう」
奏の決意にセツナ・ウリヤノヴァ(ka5645)も同意見。
「私も生きて帰りますよ! カードのデュエルだってやりたりてないし、恋だってしたい! ここで死んだら何も出来なくなるんですから。きっと、白馬の王子様が迎えに来ます!」
燃えるルンルンの最後の言葉にメリルが思案する。
「どうかしましたか?」
セツナがメリルに問うと、「私の場合は姉の言いつけで愚弟が迎えに来るような気がしました」と答えた。
「いい弟さんですね!」
「あの愚弟がここまで来れるか考えてしまいます」
輝く笑顔のルンルンにメリルは栄光の手を持って腕を組み、可愛らしい顔立ちに反した厳しいコメントを投下した。
「やれやれ、女は三人いれば姦しいというが、今回は倍だな」
「あ、うん……」
フェンリルが敵の様子を伺いつつ、呟くと、陽は今回、男子は自分ひとりであることに気付く。
撤退戦を決めたハンター達は臨戦態勢をとるにあたり、まずはルンルンが符を取り出した。
「ジュゲームリリカル……ルンルン忍法花占い☆」
符に集中しているルンルンが呪文を唱えると、符が淡い光を帯びる。
「こんなの出ました、明日の天気もおフランス晴れです!」
吉となるだろう方向をルンルンは符を指に挟んで指し示す。
敵の距離を確認したメリルが荷物から毛布を取り出して酒を振り掛けしみこませる。強いアルコール臭が鼻につくが今は気にしてられない。
松明を取り出して火を灯す。向かってきた狼へ火を向けると、狼は怯んだが、その勢いは落とさなかった。
ゆっくりと松明の火を酒がしみこんだ毛布へ落した。
青白い火が毛布へ広がり、徐々に赤い火と共に煙が上がって行く。
早く仲間が気付いてくれる事を誰もが祈った。
「戦いの狼煙……でもありますね」
煙を見上げた奏が呟く。
「友達が一緒ならへっちゃらだよね♪」
アリアが明るい声音で言えば、二人はお互いを見合って頷いた。
「それじゃぁ、行くっすよー!」
ツキウサギの声駆けに奏、アリア、ファリフ、フェンリルが応え、後方のオーガやトロルへと向かった。
後方組が動けば突破組と目されるハンター達も臨戦態勢となる。
「行くか」
「助太刀に参ります」
陽が前に立つと、セツナが横に並ぶ。
「皆様の連携が必要です。何卒、お願いします」
陽達の数歩後ろに立つメリルが仲間達に声をかける。
「皆で一気にやっちゃいましょう☆」
「いつでもいける」
ルンルンと陽がメリルの言葉に同意すると、集中していた「参ります」とセツナが声をあげた。
剣を抜いたセツナが足と神経にマテリアルを巡らし、駆けだして狼の群へと向かう。
「先手必勝!」
気合いと共に放たれた一撃は速く、セツナを襲いかかろうと飛び込んできた一体の狼を捕らえた。
空気を斬る甲高い音は狼の目を斬り、視界を奪う。
不安定な地場で即座に体勢を整えたセツナは次の狼を狙わんとしている。狼達はセツナへと標的を向けて走り出した。
セツナの確認した狼の数は五体。
視界にとらえきれないところにもいるかもしれないが、その数が自身を標的として駆けてくる。
符がルンルンの呼びかけに応え、アフロの雷神の姿が一瞬現れるなり、雷を呼び起こす雷鳴が響く。
魔導短伝話を取り出した陽はマテリアルの循環に集中すると、光の三角形が彼の前に現れた。
栄光の手を掲げたメリルが呼び起こしたのは炎だ。
先ほど、松明につけた火とは違う、マテリアルでもって作られた炎が凝縮して火球の姿をとる。
ギリギリまで引きつけたセツナは振り向く。メリルの青い瞳と目が合った。
「離れてください!」
言われるままにセツナが横へ飛ぶと、一体の狼もセツナへ噛みつく。
「く……っ」
跳躍の状態で受け流したが、噛みつかれなかったものの、狼はセツナの片足に牙を引っかけるように傷つけた。
セツナに吹き飛ばされた狼が更に追いすがろうとするが、三人からもたされた一瞬の輝きが速かった。
陽のデルタレイで撃たれた一条の光がセツナを追いすがる狼の頭を打ち抜く。
虚空より狼達の頭上より赤と緑と黒の稲妻が走っていき、光が弾いた。
更に奥より追いかけてきた狼達の背後を狙ったメリルのファイアーボールは一体の狼に着火し、そのまま爆発して狼の身体を吹き飛ばした。
その爆発は大きく、更に遠方にいる狼やオーガの毛に引火し、燃やしていく。
爆発音と巻き起こる爆風にハンター達は耳を塞いだり、足を踏ん張る。
風が落ち着いても突破口はまだ開かず、立ちふさがるようにオーク達、更に追ってきた狼達がハンターに迫ってきていた。
轟音を背にオーガと対応していたのは奏とファリフ。
ツキウサギは進んでトロルへと駆けていき、杵を振り、トロルの動きを誘導している。それに伴い、フェンリルがオーガの一体に噛みつき、前足の鋭い爪で噛みついた傷口を抉り、爪で引っかけたオーガの身体を誘導するべき方向へと投げ捨てる。
更に突進してきたオーガをギリギリまで引きつけて横に飛び跳ねたフェンリルが投げつけたオークの方向へ体当たりをして首に全体重を乗せてファリフの方へと戻る。
「さー、撤退戦といこっかー♪」
明るい声音のアリアがオーガ達へと指先を向ければ蒼いオーラが煙のように立ち昇る。
仲間がやられた姿を見たオーガ達が追いかけだし、距離を確認したアリアが指を振るうと、蒼いオーラが指揮棒のように揺らめく。
彼女が奏でるレクイエムの歌声が響く。
たおやかなアリアの声はオークやトロルの動きを絡みとるように動きを阻害し、緩慢にしていった。
レイクイムの効果を確認した奏は振動刀「オートMURAMASA」を抜き放つ。
「死線こそ我が故郷なれば」
オーガやトロルがレクイエムの効果に苦しみ、呻く声の中、奏が囁く。
振動刀が低く震え、奏の周囲に風に散り行く緋桜の花びらのようなオーラが舞う。
「――存分に舞うと致しましょう」
宣言した奏がオーガへと駆け出した。
先に狙うのはレイクイエムの効果に嵌ったオーガ。皮のアーマーを着こんでいるが、自身の目的を考えれば皮のアーマーならば問題はない。
刺突を狙う構えを取った奏は躊躇う事もなく、オーガの腰と足の繋ぎ目を狙う。
振動刀がオーガの足を突き、刀を引くと同時に骨に到達するように筋肉を斬りつけた。
醜い悲鳴が奏の鼓膜を劈くも彼女は気に止めず、アリアを狙おうとするオーガへ走り出す。目的のオーガは長い棍棒を持っていて腕を振り上げようとしている。
奏とは違う方向から走ってくるのはファリフだ。大斧を振り上げて棍棒をへし切り、オーガの気を反らす。
ファリフの動きを察した奏がオーガを斬りつけるも、オーガの巨体は堪えようとしたが、アリアの銃撃に頭の半分を吹き飛ばされ、倒れた。
目に見えるオーガは倒れただろうが、まだ増えるやもしれない。
ハンター達は一度、退路を振り向いたが、まだ交戦中だ。
「くい止めないとね」
アリアの呟きは皆が思うこと。
「やるっきゃないっすー!」
ツキウサギがキネを振るい、空気の抵抗を受けて低い音を出して思いっきり跳躍した。
狙う先はトロルであり、思いっきり振りかぶったキネで横から腿を打ち付ける。キネの衝撃はトロルの上体を下げるには十分な攻撃。
奏が刀を上段に構えて跳躍し、トロルの首を切り落とそうとするも、骨と刀がかち合う振動が奏の身体を走り抜ける。
「く……っ!」
顔を顰める奏は後悔のある戦いはしたくないと思っている。
思いっきり戦い、守り抜き、生きたい。
奏は即座に刀の向きを変えて骨に沿わせて首下から肩の筋肉をそぎ落として刀をトロルより引き斬った。
トロルの再生能力は早いが、今は少しでも足止めが必要。
この攻撃でも十分な足止めになると感じた奏が気配を察知したとき、振りかぶったオーガの棍棒が視界に入る。
「奏!」
アリアの呼び声も空しく、奏は肩から側面にかけて棍棒の衝撃をくらってしまう。
悲鳴をあげる余裕もない衝撃に奏は地に伏す。
オーガがまだ動く奏に気付き、更に棍棒を振り上げる姿を確認したアリアが駆け出した。盾を構え、オーガの攻撃を防ぐも、盾から伝わる攻撃は振動となってアリアを襲う。
「アリアさん、引いて!」
ファリフが奏を連れて一度後退する。アリアに攻撃を加えたオーガはフェンリルが相手をし、気をそらしている。
「オッケー。盾が無かったらヤバヤバだったね」
大きく息を吐くアリアも後退し、奏にヒーリングスフィアを発動させた。柔らかい光に傷が包まれたものの、その傷は深く……重い。
ツキウサギは奏の治療を行っていることを確認した上でトロルとオーガと複数の敵と対峙していた。
跳躍し、キネを振りかぶってトロルへ殴打していく。殴打したトロルを踏み台にして軌道を変えてオーガへと飛んでいく。
戦いで周囲が見えなくなっていたのか、ツキウサギは別の方向からトロルが振り落とす石の棒にきづかなかった。
「ツキウサギ!」
大きな音を立ててツキウサギが地に叩きつけられた。更に他のオーガがツキウサギを踏みつけようとする。
アリアが施術を中段してオーガの目に銃を撃ちこみ、怯んだ隙にフェンリルがツキウサギを食み咥えて離脱する。
「アリア……出ます」
奏が起き上がると少しよろけながらも敵へと向かう。アリアは今の状態を理解した上で「援護するよ」と応えた。
更に間合を詰めようとする敵達に向かい、奏はゆっくり深呼吸をし、刀を構える。
「守るべき未来が背にあらば臆す理由などありはしません……」
再び舞い上がる緋桜のオーラを吹かし、奏はオーガの腕を斬りおとした。
突破組もまた、苦戦を強いられている状態だ。
マテリアルヒーリングで回復を試みたセツナであるが、足の傷は治りきっておらず、敵……主に狼の集中攻撃を受けている。
「ルンルン忍法桜吹雪☆」
符を飛ばしたルンルンがセツナを庇う。
苦い表情を浮かべた陽がオークの頭部を狙い、銃を撃っている。
数は減っては来ているが、まだ突破口は見えてない。
こちらにいるハンター達は突破口の向こうから聞こえる喧騒と轟音に気づいていた。
もしかしたら、救援部隊かもしれないが、他の部隊の戦う音かもしれない。
皆、消耗しており、いつ倒れてもおかしくは無い。
皆で帰るという想いだけで皆、戦っている。
「メリルさん!」
思案していたメリルにファリフの声が背後から聞こえ、振り向いた彼女が見たのは傷ついたツキウサギをくわえたフェンリルだ。
深く傷ついたツキウサギの姿にハンター達が言葉を失う。
メリルは即座にアースウォールを発動させて、敵の間合いを阻害した。
「……フェンリル。頼みがある。俺たちがもう一度、突破口を開く。ファリフとツキウサギを乗せて脱出してくれ」
「陽さん!」
叫ぶファリフは抗議の感情が交じっている。
「お前達はどうする」
フェンリルの問いにメリルが口を開いた。
「私たちはその後を追います。私のアースウォールとルンルン様の桜幕符で敵を避けます」
「その隙に私達も脱出します☆」
ルンルンが言えば、ファリフは何かを言いたそうであったが、ファリフは承諾した。
「皆、ファリフ様達を守りたいのです」
「セツナお姉さん」
セツナの言葉にファリフは決意した。
「ナーランギにツキウサギを返そう。勇敢に戦っていたことを、ハンターを守ったことを伝えるよ。皆と一緒に伝えに行こう」
ファリフの言葉にハンター達が微笑む。
「二人が危ないな」
陽が駆けだし、奏とアリアの方へと向かっていき、敵を退けつつ、二人を誘導する。
ハンター達が固まったのは死を覚悟したわけではない。
活路を手にするためだ。
スリープクラウドを展開したメリルの青白いガスに倒れる敵が確認された。
アリアが奏の腕を自身の肩に回し、進むべき道を見据える。
レクイエムの歌声を紡ぐアリアの声が周囲のオークやオーガ、トロルを巻き込み、動きを鈍くしていく。
「もう一度出番です!」
ルンルンが符で三体の雷様の幻影をを呼びだした。
緊迫した事態であるが、マイペースな様子を見せている。
陽の方は集中してデルタレイを展開している。光の三角の頂がそれぞれ輝き出すとき、陽は銃を構え、オークへと狙いを定めた。
ツキウサギをフェンリルに乗せたセツナ。
想いを込めた言葉を、ツキウサギに声をかける。
「生きて帰りましょう」
「はいっす……」
帰るのだ。
家族の仲間のもとへ。
メリルは火球を呼び起こした。マテリアルを更に凝縮されたように小さく火花を散らして影を作っている。
「いつでも行けるよ!」
ファリフの声が宣言となり、動きが鈍くなった敵達へと攻撃が飛んでいった。
メリルの火球が爆発する際に黒い炎となってオーク達を襲う。
フェンリルがファリフとツキウサギを乗せて、尚も燃える敵の中へ飛び込んでいく。
「危険です!」
ハンターの誰かが叫んだが、フェンリルは止まる事をしなかった。
ファリフとツキウサギが不安定なフェンリルの背の上で武器を構え、まだ動いているだろう敵をなぎ倒し、ハンター達へ道を作っていた。
ハンター達は陽をしんがりにその道を走っていくが、トロルと戦っていた陽のすぐ後ろに土壁が現れた。
「足並みそろえて下さいとお願いしましたから」
メリルの言葉に陽は頷いて、仲間達を追った。
フェンリル達が作った道を敵が塞ごうとしたが、ハンター達はなんとか凌ぎ、仲間と肩を組み合い、走っていく。
土壁を壊したトロルとオーガが武器を振り、追いかけてきた。
陽がトロルの気配に気づき、しんがりを守るためにトロルの殴打を受ける。
向こうから獣の突進音が聞こえたハンター達は敵の増援かと思ったが、それは違った。
フェンリルと似た狼に乗ったハンター達だ。気づいたメリルが陽を守るように叫ぶ。
救出に走った仲間が陽をトロルから引き剥がす。
無事とはいえないが、全員失うことなくヤオト渓谷から脱出していった。
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耐久戦のご相談 メリル・E・ベッドフォード(ka2399) 人間(クリムゾンウェスト)|23才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2015/11/14 02:09:43 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/11/10 23:52:59 |