ゲスト
(ka0000)
【郷祭】世界でいちばんプロレスしたい?!
マスター:cr

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~7人
- サポート
- 0~7人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/11/14 12:00
- 完成日
- 2015/11/22 22:40
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
「うーん、どうすればいいんだこりゃ?」
人混みの中で、頭一つ飛び出した女性、イバラキはそううんうん唸っていた。
ハンターである彼女の手元には依頼書。内容は、「方法は問わないので村長祭を盛り上げてくれ」という物だった。
ハンターになりたてのイバラキはとにかく何か依頼をこなしたかった。そこですぐさま飛びついたのだが、飛びついたところでどうすればいいのか皆目見当が付かなかったのだ。
●
「モアさんは『そういうときはリゼリオに行くといいですよ』なんて言ってたが、これといったものは無いなぁ……」
そこでモアに相談したイバラキは、彼女のアドバイスに従って冒険都市・リゼリオにやって来たのだが、これといった成果はなかったのだ。
もう少し粘ろうか、諦めて帰ろうか。そう考えていた時だった。
「キミ、いい体してるね~、ちょっとこっち来ない?」
そんなイバラキに話しかける男の声。イバラキはつい最近西方に出てきたばかりである。危機感も薄いまま、そんな言葉にホイホイと乗っかって着いて行ってしまうのだった。
●
「プロレス、ですか?」
「ああ、モアさんの勧めに従ってリゼリオ行ったらさ、リアルブルーの人間に出会ってさ。で、そいつの言うにはプロレスってのがすごく盛り上がるらしいじゃねぇか! それにアタシもこれなら出来そうだからさ!」
次の日、ヴァリオスに戻ってきたイバラキとモアが話をしていた。二人の目の前には6.5m四方の立派なリング。プロレスというものを聞いてきたイバラキが早速作り上げた立派なものである。
「この上で戦うのを見せるわけですね。なるほど。それで誰が戦うんですか?」
「それなんだけどさ、アタシはいいとしてもっと必要だから、依頼にして出してくれないか?」
というわけで、村長祭でプロレスをするという依頼が貼りだされたのである。
「うーん、どうすればいいんだこりゃ?」
人混みの中で、頭一つ飛び出した女性、イバラキはそううんうん唸っていた。
ハンターである彼女の手元には依頼書。内容は、「方法は問わないので村長祭を盛り上げてくれ」という物だった。
ハンターになりたてのイバラキはとにかく何か依頼をこなしたかった。そこですぐさま飛びついたのだが、飛びついたところでどうすればいいのか皆目見当が付かなかったのだ。
●
「モアさんは『そういうときはリゼリオに行くといいですよ』なんて言ってたが、これといったものは無いなぁ……」
そこでモアに相談したイバラキは、彼女のアドバイスに従って冒険都市・リゼリオにやって来たのだが、これといった成果はなかったのだ。
もう少し粘ろうか、諦めて帰ろうか。そう考えていた時だった。
「キミ、いい体してるね~、ちょっとこっち来ない?」
そんなイバラキに話しかける男の声。イバラキはつい最近西方に出てきたばかりである。危機感も薄いまま、そんな言葉にホイホイと乗っかって着いて行ってしまうのだった。
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「プロレス、ですか?」
「ああ、モアさんの勧めに従ってリゼリオ行ったらさ、リアルブルーの人間に出会ってさ。で、そいつの言うにはプロレスってのがすごく盛り上がるらしいじゃねぇか! それにアタシもこれなら出来そうだからさ!」
次の日、ヴァリオスに戻ってきたイバラキとモアが話をしていた。二人の目の前には6.5m四方の立派なリング。プロレスというものを聞いてきたイバラキが早速作り上げた立派なものである。
「この上で戦うのを見せるわけですね。なるほど。それで誰が戦うんですか?」
「それなんだけどさ、アタシはいいとしてもっと必要だから、依頼にして出してくれないか?」
というわけで、村長祭でプロレスをするという依頼が貼りだされたのである。
リプレイ本文
●
「念願のプロレス…くー、燃えるぜ! コレが盛り上がったら今後も興行できっかな!?」
華蜂院 蜜希(ka5703)は燃えていた。彼女は格闘士としての修行の最中に雑誌経由でプロレスを知り、自らをプロレスラーだと自認していた。そんな彼女にとって、この依頼は願ったりかなったり。
「それじゃもう一本行こうか!」
「ああ、アタシはまだまだ大丈夫だぜ!」
そして再びイバラキと組み合う。村長祭の会場に作られた特設リング、しかしまだ誰も観客は居ない。試合開始までまだまだ時間がある。二人は試合に向けて練習を続けていたのだ。
プロレスは観客に楽しんでもらうことが重要だ。そのためこうやって信頼を高め、試合でそれを全て出す。そんな時だった。
「困りましたね」
入ってきたのはモア・プリマクラッセ。彼女は本日リングアナとレフェリーを務めることになっていた。そんな彼女がいつも通り表情一つ変えずそう言った。
「どうしたんですか?」
身体をほぐしながらそう答えたのはノエル(ka0768)だ。普段と違い青をベースとしたセパレートタイプのコスチュームを身にまといスポーティーな雰囲気だ。
「ええ、エリスさんの相手の方が来られて無くて……」
「えー! それじゃエルちゃんリングに立てないじゃん」
そのことを聞いて、当事者のエリス・ブーリャ(ka3419)が真っ先に不満を口にした。当然だ。
「うーん……済まないけどノエル、代わりに相手を務めてくれないか?」
そこでイバラキはほんの少しだけ考えて、対戦カードの変更を即決した。ピンチをチャンスに変えてこそプロレス。そんな教えが、イバラキの頭でリフレインしていた。
●
「青コーナーよりノエル・ザ・スネグーラチカ選手の入場です」
初めて見る観客に軽くプロレスの説明をした後、いよいよ試合が始まる。軽快な音楽がかかり、入場口からノエルが現れる。静かにリングインしたノエルの姿に観客たちはまだ戸惑っていた。
「赤コーナーよりエリス・プーリャ選手の入場です」
だが、続けてアイドルソングと共にエリスが登場すると雰囲気は一変した。曲に合わせ客席に手を振りつつ踊りながら登場し、リングの前まで来ると高々とジャンプ、空中で一回転してコーナーに着地すると四方の客にポーズを取ってアピール。ド派手な入場はわかりやすく客席を盛り上げたようだ。さらに彼女はアプレワンドを手にすると対角線に向けて宣言する。
「輝かしき勝利のベルトはエルちゃんがいただくのです!」
指を突き付けそう叫ぶエリスの言葉に客席は一層盛り上がる。しかしノエルもすかさず叫び返す。
「ええ、リング上で美しい華を咲かせましょう。そして勝つのはわたくしです」
正統派対アイドル。分かりやすい構図と共に戦いのゴングが鳴った。
まず仕掛けたのはノエルだ。飛びつきながらエルボーを打ち込んで行く。
だが、エリスは素早くしゃがんでかわすと慌てて振りほどき逃げ出す。そんな彼女をノエルは追いかける。
逃げるエリス。追うノエル。回りながらの追いかけっこに、客席からは笑い声が聞こえる。
しかし狭いリング、程なくエリスは追い詰められる。そこに今度こそと走りこんでエルボーを放つ。
その瞬間、エリスはロープに向かって走ると反動を利用してエルボーをかわしつつ左腕を振りぬいた。ラリアット。彼女の腕は見事に喉元を捉える。派手な音と共に一回転してリングに倒されるノエル。
さらにエリスは再びロープに飛ぶと反動を利用したスライディングキック。受けたダメージに頭を振りながら起きようとしたノエルの顔面を蹴り飛ばし、そのままリング下へ落とす。そして三度ロープへ飛ぶとリング下へ向けて飛び込んだ。
場外で起き上がってきたノエルの元に、身体を砲弾に変えたエリスがぶち当たる。トペコンヒーロ。目の前で行われた攻防に観客は一層盛り上がる。
そしてノエルをリングに戻すと、エリスはコーナーに一足で駆け上がり手を突き上げアピールした。
「行くぞー!」
そのままその身を宙に舞わせ、空中で一回転……いや、二回転! リアルブルーでもめったに見られない大技、ダブルムーンサルトプレス。あまりの衝撃にノエルの身体は一度バウンドした後覆いかぶさられた。
すかさずモアがマットを叩く。
「ワン! ツー!」
そして3カウントが叩かれようとしたその時、ノエルは肩を上げた。あと紙一枚の隙間を残してカウントが止まる。
苦しそうな表情ながら身を起こそうとするノエルの姿に、エリスへの声一色だった客席が少しずつ彼女への声援に変わっていく。
だがエリスは攻撃の手を止めない。再びロープの反動をつけたラリアットで倒すと再度ダブルムーンサルトプレスを発射した。
しかしその時だった。宙を舞うエリスの身体がリングに背を向けた時、ノエルは立ち上がると身体をキャッチ。そのまま後ろに引き倒す!
岩石落とし、バックドロップ。鮮やかな投げ技で叩きつけられうつ伏せにダウンするエリス。ノエルはすかさず背中に乗ると両膝を立てたまま顎を引いて絞り上げた。
強烈なカベルナリアが決まり、苦悶の表情で耐えるエリス。
「エリス! エリス!」
「ノエル! ノエル!」
観客からは両者の名前を呼ぶ声が響く。その声援を背景に、エリスはロープへと手を伸ばし掴んだ。ロープブレイク。仕切りなおして立つ両者。
そしてエリスはもう一度ロープへ飛び、左腕を出した。勝負のラリアット。
しかしノエルの極め技がその切れ味をほんの少し殺していた。ノエルはラリアットを受け止めるとそのまま逆羽交い締めの形で腕を固定、もう片方の腕も固定する。
そして次の瞬間、リングに虹がかかった。
人間風車、ダブルアームスープレックス。柔軟性を活かした芸術品の様な技に観客たちは思わずため息を漏らす。
「ワン! ツー!」
モアがマットを叩く。2カウントまで数えられそして
「スリー!」
その声とともにゴングが乱打され、歓声が大爆発した。
●
「青コーナーよりミスターフォーアイズ選手の入場です」
第2試合、選手がコールされ入場口に現れたのは身長、体重、出身地全て不明、謎の覆面レスラーミスターフォーアイズだった。ミステリアスな雰囲気に特に子供たちが大きな歓声を送っている。
そしてコーナーに上がると同時にマイクを持った。
「どうもお久しぶり……そしてこんにちは! 俺こそが!! ジョノキン川を…そして世界を制するプロレスの神!!! ミスタ~~~~!!フォーアイズ!!!」
マントを翻すその姿に客席は一層盛り上がる。その正体は藤堂研司(ka0569)という噂もあるが、本人は「藤堂はジョノキン川の風になった」と否定した。
「赤コーナーよりゴージャス・ゴスペル選手の入場です」
続いて現れたのはゴージャス・ゴスペルと名乗った久我・御言(ka4137)だった。久我は現れるなり早々
「ふははは! 待たせたな! 私は美しき正義。ゴォォォォジャスッ、ゴスッペル!」
とパフォーマンス。そしていつの間にか用意された怪人型人形を眼から光線を発射して破壊、そのまま
「トゥッ!」
とリングに飛び乗ると自らの鍛えた身体を誇示するようにアピールし、
「ミスタァァァフォーアイズッ! 貴様の命運も今日で終わりだと知れ!」
「ヘイ、トリックスター! 俺はいつ誰の挑戦も受けよう!! ぐわーっはっはっはっはっは!!!」
とフォーアイズが答え宙返りしてリングに着地した、その時だった。
突如としてカラスの鳴き声が響き鎮魂歌が流れる。黒のロングコート、フードを目深に被った謎の人物が現れた。泣き出す子供たちを背景にリングに乱入し二人を制する。
「誰が勝つかの三つ巴。息を呑む展開あってこそじゃねぇと、盛り上がらねぇだろ?」
そう参戦を表明したのは怪奇派レスラー、モルドレッド……を名乗る央崎 枢(ka5153)だった。央崎がフードを取ると両目の周りに黒、左頬には銀十字のペイントが施されていた。
「むっ、貴様何者!」
久我はノリノリで返し
「ふっ……運命とはかくも! 数多の血を望むか! 良かろう! 纏めてかかって来い!」
という訳で急遽この試合は3ウェイマッチになったのである。
鳴り響くゴング。それと同時にフォーアイズは弓を引くようなナックル、央崎はキックを打ち込んでいく。そして二人の攻撃を耐える久我。
耐えきるとゴージャスジェットと名付けた飛び蹴りでフォーアイズを弾き飛ばし、そのままロープへ飛んで央崎にフライングクロスチョップ、名づけてブラッディクロスを叩き込む。
さらに央崎をハンマーロックに捉えるとそのままコーナーへ投げる。だが投げられた方もコーナーを駆け上がるとそのまま宙を舞った。
ひらりと頭上を超え宙返りする、その着地点には吹き飛ばされたフォーアイズ。押しつぶすとそのままフォールへ。
だが3ウェイマッチは決着がつくと残りの一人も負けになる。すかさず久我がカット。助かったフォーアイズは起き上がると、そのまま二人まとめてラリアットでなぎ倒した。
倒れる央崎。だが久我は倒れない。
「そう、クビ。それは我らサラリーマンへの死刑宣告。だが! 私はエリート社員ッ。鍛錬を常に欠かさず、切られる事無き様に首は鍛え続けてきた……私をクビにできるというなら、してみるがいい!」
その時だった。背後で立ち上がった央崎が後頭部へキック。思わず屈む久我をフォーアイズが抱え上げ、とっておきの技、パワーボムで叩きつけた!
勝ち誇るフォーアイズ。カウントが入る。だが2のタイミングでその腕に飛びついてくる人の影、央崎だ!
飛びつくと旋回して倒し腕を極める。これぞ必殺技、ジャッジメントデイ!
「ギブアップ?」
尋ねるモアと首を振るフォーアイズ。久我はダメージでリングに倒れている。このまま勝負は決まるのか?
だがそうは行かなかった。腕を極めている間、密かに久我はダメージを回復していた。密かに二人に近づくと、やおら逆立ちして央崎にキック!
さらに両足を伸ばして首元へ絡みつかせ、そのまま振り子のように回転し股の間を抜けてマットへ叩きつける!
「名づけて、ミコト式シュタイナー!」
めまぐるしく変わる攻防からの大技に爆発したように盛り上がる客席、そしてミコトって誰なんだ? と盛り上がる客席。そんな客席が更に盛り上がる。なぜならコーナーにフォーアイズが登っていたからだ。
「これが俺の……筋肉だ!!」
たっぷりとアピールした後、二人の元へ飛び込みまとめて押しつぶしカバー。
「ワン! ツー! …スリー!」
ゴングが打ち鳴らされ、勝ち誇るフォーアイズ。そこにゴージャス・ゴスペルは握手を求める。二人はガッチリと握手をし、その光景に客席から拍手が送られる。
二人はモルドレッドにも握手を求めたが、怪奇派レスラーらしく拒否して去っていった。そんな戻るレッドは後でも子供たちを怖がらせていたようだ。
●
いよいよメインイベント。入場してきた両者の雰囲気は、今までとはまた違うものだった。
先ほどの男性陣と引けをとらない体格の蜜希とイバラキがリング中央で睨み合う。両者の視線にリングは急速に緊張感に包まれ、客席も固唾を飲んでその様子を見つめる。
そして両者がコーナーに分けられゴング。それと同時に蜜希が突っ込む。高く飛び上がり両足を揃えてキック! 顔面をまともに打ちぬかれ吹き飛ばされるイバラキ。
さらに蜜希はそれを追いかけ、キックを連打する。ドスッ、ドスッという音とともに何発も蹴りつける。
だがイバラキは一ダース蹴りを受けきると、歯を食い絞って耐えキックでお返しする。負けず劣らずの衝撃音。耐える蜜希。
さらに蜜希はキックを打ち返し、耐えたイバラキはキックを返す。何十発というキックが両者の間を飛び交い、二人の腹部は変色していた。その互いの意地と意地、肉体と肉体がぶつかり合うド迫力のキック合戦に客席のボルテージは急上昇。
ここで埒があかないと蜜希はロープに飛び、反動を使ってキックを打ち込む。だが、イバラキはその蹴り足を捉えるとそのまま後ろに反り投げた
キャプチュードが炸裂し、マットに叩きつけられ頭を押さえる蜜希。そこにイバラキは腕を伸ばし、首と腕を同時に極める。
ドラゴンスリーパーを決められ苦悶の表情を浮かべ耐えていた蜜希も、やがて瞼が閉じ腕が力なく垂れる。モアはすかさずその腕を持ち上げ意識を確認する。
2回そのまま落ち、3回目を持ち上げる。これが落ちればレフェリーストップで試合終了だ。だが、その腕は途中で止まり、そのまま強烈なバックエルボーをイバラキの顔面に叩き込んだ。
怯むイバラキ。そこを蜜希はすかさずファイアーマンズキャリーで担ぎ上げる。ここから落とす得意技、デスバレーボム!
だがイバラキも譲らなかった。担ぎあげられた所で首に腕を回して抱え込むと、自分の体を振って回転しながら倒れこみ、蜜希の身体を脳天からマットへ突き刺した。スイングDDTだ!
さらにダメージに上半身を起こした所で止まった蜜希を、イバラキは何発も蹴りつける。
ボコボコに蹴り飛ばされフラフラになる蜜希。もはや意識は飛びかけていた。だが、それでも本能でか立ち向かおうとするその姿に、客席は
「蜜希! 蜜希! 蜜希!」
精一杯の蜜希コールで後押しする。
「決めてやるよ!」
しかしそこに容赦なくイバラキが襲いかかる。ロープに飛び、反動を活かしてのスピアーを狙う。彼女の巨体でぶち当てられたら万事休すだ。
迫るイバラキ。だが蜜希の目は死んでいなかった。当たる直前息を吹き返し、そのまま肩と股下に腕を回して勢いを利用してマットに叩きつける!
鮮やかなパワースラムで切り返すとそこから体制を変え顔を、腕を、肋骨をまとめて締め上げる。ストレッチプラムだ。
身を捩りロープに手を伸ばすイバラキ。もう少しで届く、そこで蜜希はあえて技を解く。だがそれで終わりではなかった。ここで体勢を変え、腕で相手の両足を絡ませて極める。
蜜希式四葉固め、変形のテキサスクローバーホールドで痛めつけると、そのまま立ち上がり、力を込めてイバラキの身体を上下逆さまに抱え上げた。
「っしゃおら! いっくぜぇ!」
そのまま腕をロックすると飛び上がり、体を捻って真横に倒れこんだ。抱え上げられたイバラキの頭は真っ直ぐマットへ落ち、マットへ突き刺さる。
そこに蜜希が倒れこむようにカバーする。
「ワン! ツー! ……スリー!」
3カウントと同時に客席の熱量はこの日最高潮に達した。だが、リングの上では精も根も尽き果てた両者が歓声を浴びながら倒れこんでいた。その姿に、観客たちは拍手を送り、両者の名をコールしながらいつまでも健闘を湛えていた。
試合後、村長は今日戦ったレスラーの元へ来て次回の開催を打診していた。この事はまた別の話である。
「念願のプロレス…くー、燃えるぜ! コレが盛り上がったら今後も興行できっかな!?」
華蜂院 蜜希(ka5703)は燃えていた。彼女は格闘士としての修行の最中に雑誌経由でプロレスを知り、自らをプロレスラーだと自認していた。そんな彼女にとって、この依頼は願ったりかなったり。
「それじゃもう一本行こうか!」
「ああ、アタシはまだまだ大丈夫だぜ!」
そして再びイバラキと組み合う。村長祭の会場に作られた特設リング、しかしまだ誰も観客は居ない。試合開始までまだまだ時間がある。二人は試合に向けて練習を続けていたのだ。
プロレスは観客に楽しんでもらうことが重要だ。そのためこうやって信頼を高め、試合でそれを全て出す。そんな時だった。
「困りましたね」
入ってきたのはモア・プリマクラッセ。彼女は本日リングアナとレフェリーを務めることになっていた。そんな彼女がいつも通り表情一つ変えずそう言った。
「どうしたんですか?」
身体をほぐしながらそう答えたのはノエル(ka0768)だ。普段と違い青をベースとしたセパレートタイプのコスチュームを身にまといスポーティーな雰囲気だ。
「ええ、エリスさんの相手の方が来られて無くて……」
「えー! それじゃエルちゃんリングに立てないじゃん」
そのことを聞いて、当事者のエリス・ブーリャ(ka3419)が真っ先に不満を口にした。当然だ。
「うーん……済まないけどノエル、代わりに相手を務めてくれないか?」
そこでイバラキはほんの少しだけ考えて、対戦カードの変更を即決した。ピンチをチャンスに変えてこそプロレス。そんな教えが、イバラキの頭でリフレインしていた。
●
「青コーナーよりノエル・ザ・スネグーラチカ選手の入場です」
初めて見る観客に軽くプロレスの説明をした後、いよいよ試合が始まる。軽快な音楽がかかり、入場口からノエルが現れる。静かにリングインしたノエルの姿に観客たちはまだ戸惑っていた。
「赤コーナーよりエリス・プーリャ選手の入場です」
だが、続けてアイドルソングと共にエリスが登場すると雰囲気は一変した。曲に合わせ客席に手を振りつつ踊りながら登場し、リングの前まで来ると高々とジャンプ、空中で一回転してコーナーに着地すると四方の客にポーズを取ってアピール。ド派手な入場はわかりやすく客席を盛り上げたようだ。さらに彼女はアプレワンドを手にすると対角線に向けて宣言する。
「輝かしき勝利のベルトはエルちゃんがいただくのです!」
指を突き付けそう叫ぶエリスの言葉に客席は一層盛り上がる。しかしノエルもすかさず叫び返す。
「ええ、リング上で美しい華を咲かせましょう。そして勝つのはわたくしです」
正統派対アイドル。分かりやすい構図と共に戦いのゴングが鳴った。
まず仕掛けたのはノエルだ。飛びつきながらエルボーを打ち込んで行く。
だが、エリスは素早くしゃがんでかわすと慌てて振りほどき逃げ出す。そんな彼女をノエルは追いかける。
逃げるエリス。追うノエル。回りながらの追いかけっこに、客席からは笑い声が聞こえる。
しかし狭いリング、程なくエリスは追い詰められる。そこに今度こそと走りこんでエルボーを放つ。
その瞬間、エリスはロープに向かって走ると反動を利用してエルボーをかわしつつ左腕を振りぬいた。ラリアット。彼女の腕は見事に喉元を捉える。派手な音と共に一回転してリングに倒されるノエル。
さらにエリスは再びロープに飛ぶと反動を利用したスライディングキック。受けたダメージに頭を振りながら起きようとしたノエルの顔面を蹴り飛ばし、そのままリング下へ落とす。そして三度ロープへ飛ぶとリング下へ向けて飛び込んだ。
場外で起き上がってきたノエルの元に、身体を砲弾に変えたエリスがぶち当たる。トペコンヒーロ。目の前で行われた攻防に観客は一層盛り上がる。
そしてノエルをリングに戻すと、エリスはコーナーに一足で駆け上がり手を突き上げアピールした。
「行くぞー!」
そのままその身を宙に舞わせ、空中で一回転……いや、二回転! リアルブルーでもめったに見られない大技、ダブルムーンサルトプレス。あまりの衝撃にノエルの身体は一度バウンドした後覆いかぶさられた。
すかさずモアがマットを叩く。
「ワン! ツー!」
そして3カウントが叩かれようとしたその時、ノエルは肩を上げた。あと紙一枚の隙間を残してカウントが止まる。
苦しそうな表情ながら身を起こそうとするノエルの姿に、エリスへの声一色だった客席が少しずつ彼女への声援に変わっていく。
だがエリスは攻撃の手を止めない。再びロープの反動をつけたラリアットで倒すと再度ダブルムーンサルトプレスを発射した。
しかしその時だった。宙を舞うエリスの身体がリングに背を向けた時、ノエルは立ち上がると身体をキャッチ。そのまま後ろに引き倒す!
岩石落とし、バックドロップ。鮮やかな投げ技で叩きつけられうつ伏せにダウンするエリス。ノエルはすかさず背中に乗ると両膝を立てたまま顎を引いて絞り上げた。
強烈なカベルナリアが決まり、苦悶の表情で耐えるエリス。
「エリス! エリス!」
「ノエル! ノエル!」
観客からは両者の名前を呼ぶ声が響く。その声援を背景に、エリスはロープへと手を伸ばし掴んだ。ロープブレイク。仕切りなおして立つ両者。
そしてエリスはもう一度ロープへ飛び、左腕を出した。勝負のラリアット。
しかしノエルの極め技がその切れ味をほんの少し殺していた。ノエルはラリアットを受け止めるとそのまま逆羽交い締めの形で腕を固定、もう片方の腕も固定する。
そして次の瞬間、リングに虹がかかった。
人間風車、ダブルアームスープレックス。柔軟性を活かした芸術品の様な技に観客たちは思わずため息を漏らす。
「ワン! ツー!」
モアがマットを叩く。2カウントまで数えられそして
「スリー!」
その声とともにゴングが乱打され、歓声が大爆発した。
●
「青コーナーよりミスターフォーアイズ選手の入場です」
第2試合、選手がコールされ入場口に現れたのは身長、体重、出身地全て不明、謎の覆面レスラーミスターフォーアイズだった。ミステリアスな雰囲気に特に子供たちが大きな歓声を送っている。
そしてコーナーに上がると同時にマイクを持った。
「どうもお久しぶり……そしてこんにちは! 俺こそが!! ジョノキン川を…そして世界を制するプロレスの神!!! ミスタ~~~~!!フォーアイズ!!!」
マントを翻すその姿に客席は一層盛り上がる。その正体は藤堂研司(ka0569)という噂もあるが、本人は「藤堂はジョノキン川の風になった」と否定した。
「赤コーナーよりゴージャス・ゴスペル選手の入場です」
続いて現れたのはゴージャス・ゴスペルと名乗った久我・御言(ka4137)だった。久我は現れるなり早々
「ふははは! 待たせたな! 私は美しき正義。ゴォォォォジャスッ、ゴスッペル!」
とパフォーマンス。そしていつの間にか用意された怪人型人形を眼から光線を発射して破壊、そのまま
「トゥッ!」
とリングに飛び乗ると自らの鍛えた身体を誇示するようにアピールし、
「ミスタァァァフォーアイズッ! 貴様の命運も今日で終わりだと知れ!」
「ヘイ、トリックスター! 俺はいつ誰の挑戦も受けよう!! ぐわーっはっはっはっはっは!!!」
とフォーアイズが答え宙返りしてリングに着地した、その時だった。
突如としてカラスの鳴き声が響き鎮魂歌が流れる。黒のロングコート、フードを目深に被った謎の人物が現れた。泣き出す子供たちを背景にリングに乱入し二人を制する。
「誰が勝つかの三つ巴。息を呑む展開あってこそじゃねぇと、盛り上がらねぇだろ?」
そう参戦を表明したのは怪奇派レスラー、モルドレッド……を名乗る央崎 枢(ka5153)だった。央崎がフードを取ると両目の周りに黒、左頬には銀十字のペイントが施されていた。
「むっ、貴様何者!」
久我はノリノリで返し
「ふっ……運命とはかくも! 数多の血を望むか! 良かろう! 纏めてかかって来い!」
という訳で急遽この試合は3ウェイマッチになったのである。
鳴り響くゴング。それと同時にフォーアイズは弓を引くようなナックル、央崎はキックを打ち込んでいく。そして二人の攻撃を耐える久我。
耐えきるとゴージャスジェットと名付けた飛び蹴りでフォーアイズを弾き飛ばし、そのままロープへ飛んで央崎にフライングクロスチョップ、名づけてブラッディクロスを叩き込む。
さらに央崎をハンマーロックに捉えるとそのままコーナーへ投げる。だが投げられた方もコーナーを駆け上がるとそのまま宙を舞った。
ひらりと頭上を超え宙返りする、その着地点には吹き飛ばされたフォーアイズ。押しつぶすとそのままフォールへ。
だが3ウェイマッチは決着がつくと残りの一人も負けになる。すかさず久我がカット。助かったフォーアイズは起き上がると、そのまま二人まとめてラリアットでなぎ倒した。
倒れる央崎。だが久我は倒れない。
「そう、クビ。それは我らサラリーマンへの死刑宣告。だが! 私はエリート社員ッ。鍛錬を常に欠かさず、切られる事無き様に首は鍛え続けてきた……私をクビにできるというなら、してみるがいい!」
その時だった。背後で立ち上がった央崎が後頭部へキック。思わず屈む久我をフォーアイズが抱え上げ、とっておきの技、パワーボムで叩きつけた!
勝ち誇るフォーアイズ。カウントが入る。だが2のタイミングでその腕に飛びついてくる人の影、央崎だ!
飛びつくと旋回して倒し腕を極める。これぞ必殺技、ジャッジメントデイ!
「ギブアップ?」
尋ねるモアと首を振るフォーアイズ。久我はダメージでリングに倒れている。このまま勝負は決まるのか?
だがそうは行かなかった。腕を極めている間、密かに久我はダメージを回復していた。密かに二人に近づくと、やおら逆立ちして央崎にキック!
さらに両足を伸ばして首元へ絡みつかせ、そのまま振り子のように回転し股の間を抜けてマットへ叩きつける!
「名づけて、ミコト式シュタイナー!」
めまぐるしく変わる攻防からの大技に爆発したように盛り上がる客席、そしてミコトって誰なんだ? と盛り上がる客席。そんな客席が更に盛り上がる。なぜならコーナーにフォーアイズが登っていたからだ。
「これが俺の……筋肉だ!!」
たっぷりとアピールした後、二人の元へ飛び込みまとめて押しつぶしカバー。
「ワン! ツー! …スリー!」
ゴングが打ち鳴らされ、勝ち誇るフォーアイズ。そこにゴージャス・ゴスペルは握手を求める。二人はガッチリと握手をし、その光景に客席から拍手が送られる。
二人はモルドレッドにも握手を求めたが、怪奇派レスラーらしく拒否して去っていった。そんな戻るレッドは後でも子供たちを怖がらせていたようだ。
●
いよいよメインイベント。入場してきた両者の雰囲気は、今までとはまた違うものだった。
先ほどの男性陣と引けをとらない体格の蜜希とイバラキがリング中央で睨み合う。両者の視線にリングは急速に緊張感に包まれ、客席も固唾を飲んでその様子を見つめる。
そして両者がコーナーに分けられゴング。それと同時に蜜希が突っ込む。高く飛び上がり両足を揃えてキック! 顔面をまともに打ちぬかれ吹き飛ばされるイバラキ。
さらに蜜希はそれを追いかけ、キックを連打する。ドスッ、ドスッという音とともに何発も蹴りつける。
だがイバラキは一ダース蹴りを受けきると、歯を食い絞って耐えキックでお返しする。負けず劣らずの衝撃音。耐える蜜希。
さらに蜜希はキックを打ち返し、耐えたイバラキはキックを返す。何十発というキックが両者の間を飛び交い、二人の腹部は変色していた。その互いの意地と意地、肉体と肉体がぶつかり合うド迫力のキック合戦に客席のボルテージは急上昇。
ここで埒があかないと蜜希はロープに飛び、反動を使ってキックを打ち込む。だが、イバラキはその蹴り足を捉えるとそのまま後ろに反り投げた
キャプチュードが炸裂し、マットに叩きつけられ頭を押さえる蜜希。そこにイバラキは腕を伸ばし、首と腕を同時に極める。
ドラゴンスリーパーを決められ苦悶の表情を浮かべ耐えていた蜜希も、やがて瞼が閉じ腕が力なく垂れる。モアはすかさずその腕を持ち上げ意識を確認する。
2回そのまま落ち、3回目を持ち上げる。これが落ちればレフェリーストップで試合終了だ。だが、その腕は途中で止まり、そのまま強烈なバックエルボーをイバラキの顔面に叩き込んだ。
怯むイバラキ。そこを蜜希はすかさずファイアーマンズキャリーで担ぎ上げる。ここから落とす得意技、デスバレーボム!
だがイバラキも譲らなかった。担ぎあげられた所で首に腕を回して抱え込むと、自分の体を振って回転しながら倒れこみ、蜜希の身体を脳天からマットへ突き刺した。スイングDDTだ!
さらにダメージに上半身を起こした所で止まった蜜希を、イバラキは何発も蹴りつける。
ボコボコに蹴り飛ばされフラフラになる蜜希。もはや意識は飛びかけていた。だが、それでも本能でか立ち向かおうとするその姿に、客席は
「蜜希! 蜜希! 蜜希!」
精一杯の蜜希コールで後押しする。
「決めてやるよ!」
しかしそこに容赦なくイバラキが襲いかかる。ロープに飛び、反動を活かしてのスピアーを狙う。彼女の巨体でぶち当てられたら万事休すだ。
迫るイバラキ。だが蜜希の目は死んでいなかった。当たる直前息を吹き返し、そのまま肩と股下に腕を回して勢いを利用してマットに叩きつける!
鮮やかなパワースラムで切り返すとそこから体制を変え顔を、腕を、肋骨をまとめて締め上げる。ストレッチプラムだ。
身を捩りロープに手を伸ばすイバラキ。もう少しで届く、そこで蜜希はあえて技を解く。だがそれで終わりではなかった。ここで体勢を変え、腕で相手の両足を絡ませて極める。
蜜希式四葉固め、変形のテキサスクローバーホールドで痛めつけると、そのまま立ち上がり、力を込めてイバラキの身体を上下逆さまに抱え上げた。
「っしゃおら! いっくぜぇ!」
そのまま腕をロックすると飛び上がり、体を捻って真横に倒れこんだ。抱え上げられたイバラキの頭は真っ直ぐマットへ落ち、マットへ突き刺さる。
そこに蜜希が倒れこむようにカバーする。
「ワン! ツー! ……スリー!」
3カウントと同時に客席の熱量はこの日最高潮に達した。だが、リングの上では精も根も尽き果てた両者が歓声を浴びながら倒れこんでいた。その姿に、観客たちは拍手を送り、両者の名をコールしながらいつまでも健闘を湛えていた。
試合後、村長は今日戦ったレスラーの元へ来て次回の開催を打診していた。この事はまた別の話である。
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楽しいプロレス打ち合わせ! 藤堂研司(ka0569) 人間(リアルブルー)|26才|男性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2015/11/14 11:39:22 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/11/13 04:39:39 |