• 闇光

【闇光】少年、眠る間にペット走る

マスター:狐野径

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/11/17 07:30
完成日
2015/11/23 00:54

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●眠る少年
 先日受けた傷は大きすぎた。
 プエル(kz0127)は眠る。豪奢な部屋に、天蓋の付いているベッドに眠るはいつも通りのプエルの寝相に、エクエスは溜息を洩らした。
 真っ直ぐで乱れる事のない寝相。
「変わらない……何もかも」
 記憶をたどると一番古いものもプエルは真っ直ぐ寝ている。いや、さすがに少々動きはするが、布団をかけ直してあげる必要はない。
「さて……頼んでいたものが来たのですが、プエル様がいないと意味のない」
 一メートル四方くらいの原材料不明の白い箱二つを見て、エクエスは頭痛がする気がした。以前、同輩に頼んだ道具が来てもしょうがない。
「中くらいは見ておきましょう。くっ、なんだ、これ!」
 開けて見て、硬直した。
「きゅ?」
 プエルのベッドのそばにいたモフリがやってきて、覗き込んだ直後やはり硬直した。
「きゅ、きゅきゅううう?」
「いえ、私が頼んだのはプエル様の人形でした」
 中に入っている物はモフリに見える白いもこもこしたぬいぐるみがみっちり一ダース。もう一つもみっちりと一ダースと、三頭身くらいの抱きかかえるにちょうどいい赤毛の男性の人形が埋もれるように一つ。色合いと服装からとある人物を想像して、エクエスは舌打ちをする。
 エクエスは白くもこもこの方を一つ取り出して、モフリの側に置いてみる。どう見てもモフリだ。
「……頼んだときの状況はどうでしたっけ?」
「きゅ?」
 エクエスは思い出す。
『人形を使いたいので是非』
 と言いながらプエルを道具を作ってくれる人物の前に立たせた。そのプエルは腕にモフリを抱いていた、誇らしげに。拾ったばかりで嬉しかったようで、見せびらかしていたのだった。
「……おいっ! 骨の中の脳みそをどこかに落としてきたんじゃねぇのか!」
 エクエスは怒りとあきれで一杯のつぶやきを漏らした。
「きゅ? きゅ、きゅー」
 モフリは一斉に二ダースのモフリ人形は動き出したのを見た。
「……」
「……」
 エクエスとモフリは黙った。
「ひとまず、侵入する人間がいれば攪乱できるでしょうかね……」
「きゅー」
「頑張ってください」
「きゅ!?」
「これを率いてごまかせるのはあなたしかいません。ほら、私はこのように負傷していますし」
 モフリは正論に黙った。下僕であるプエルは外面は繕っても、中身までは回復していない。
 モフリはいろいろ考える、モフリとして歪虚として生きるには何が一番いいのかと。
 別の下僕や主を探すこともできそうだが、モフリは難しいと考えている。同じ憤怒の歪虚か今の下僕プエルのようにちやほやしてくれるヒトが良かったから。
 ここにいる歪虚たちは高位すぎて取り入りにくい。
 そう、現状ではプエルが一番良い下僕だ。
「きゅ」
 仕方がないので下僕の下僕であるエクエスの言うことを聞いてやることにした。
「ああ、これは是非とも部隊長たるモフリ殿が付けてください」
 鳥かごの形をした中に透明な赤い石が入っているデザインのヘッドがついた首輪だった。モフリは断ることができず、後で燃やしてやろうと内心思いながらつけられる。
 その後、エクエスは大きく息を吐きながら、一つだけ違う人形を手にする。思いっきり壁に叩きつけて踏みつけてやりたいところであるが、いつ目を覚ますか分からないプエルなため、やめておく。
(どうみてもこの人形……レチタティーヴォだよな……これが頼んだ? 動かない所を見ると本当に人形みたいだ)
 毛布をめくってプエルの腕を持ち上げて、その下に人形を置いてやる。
 人形は藍色のボタンの目、ステッチで描かれた口、赤い毛糸の髪の毛……柔らかい布素材のそれを眠るプエルは抱きしめた。その形が何かを知っているはずもないが、苦しそうな表情が和らいだように見えてエクエスは苛立つ。
「レチ……さ……うさぎ……リンゴ……」
 プエルから寝言が洩れた。

●モフリ部隊長
 戦場もある白い雪景色。
 白いもこもこした集団は走りまわる。一つ目の毛玉の集団は一糸乱れぬ様子で雪煙を上げ走る。
 人間の兵士たちを見つけた。
 撤収作業をしているのか、先に進もうとしているのかは分からない。敵には変わりないし、潤沢とはいえずとも生きているマテリアルを持っている事には間違いない。
「きゅー」
 モフリの号令下、モフリ人形たちが人間に向かっていく。
『モーフーリー』
『モーフッリー』
 低い声でモフリ人形たちは応じた。
 その声を聞いたらしい兵士たちはぎょっとする。見張りもいたが見逃したらしくあわてて戦う準備をする。
 遠くに見える歪虚に比べれば小さいこれらは雑魔に違いない。
 バチバチとモフリ人形は火花を散らした。高圧電流のようなそれを受けて、兵士たちは心臓を止めていく。モフリ人形たちは互いも巻き込んでいるが、気にも留めず人間を襲っていく。
 少し離れた所では自ら炎を上げて、魔法を放っている集団もある。
「きゅ!」
 モフリは死んだ人間に噛みつく。
「きゅー」
 モフリは楽しげに鳴いた。これまでプエルのペットとして可愛がられてきたが、やはりこうした野生に近いこともやりたかったんだと本人は気付いた。
『モーフーリー』
「きゅー」
『モフゥリィ』
「きゅきゅー」
 白い毛玉隊は人間を探しに走り出した。

●キャンプ地
 撤収するのも手順も作法もある。
 ただ逃げるだけなら楽だが、その先が続かないのが戦。
 兵士たちは遠くの戦いに目を凝らし、近くを見つめ疲弊しつつも準備を整える。
「ハンターもいるから少しは安心なのだが」
 それでも気は抜けない。一般の兵士に比べれば強くとも人間であり、休息もいる。それを守って守られて、戦いを生き抜けるのだとこの隊の者は考える。
「なんだあれ……」
 凸凹した白い土地を何かが移動してきているのが見えた。
「……雑魔の群れか? ただちに作業を停止し戦う準備をしろ」
 緊張感が走る――。

リプレイ本文

●白き襲撃者
 見張りによる敵の早期の発見で、ハンターたちも迎撃準備の前に状況を把握する。
 レイオス・アクアウォーカー(ka1990)はこめかみのあたりがピクリと動く。
「東方で逃したあの1匹がこんなに増えたのか?」
 どう迎撃するのがいいのか、思考を巡らす。あの妖怪が増えたのか、別の何かが加わっているのかを考えるよりも、倒すことが先である、何もしなければキャンプ地が踏み荒らされるのは迫っている未来だから。
「下等生物がつぶされに来たのか」
 ステラ・レッドキャップ(ka5434)はぼそりと他人に聞こえない程度につぶやく。東方でプエルが連れ帰った後に遭遇はしているが、交戦してはいない。倒す倒さないはともかく、攻撃をすることができる。
「躾もなっていないペットでは気の毒ですから、私がしつけてあげます」
 にこりと微笑みライフルを握り締める。

 ひた走るモフリとその仲間たち。
「きゅきゅー」
『モーフーリー』
 それらの言葉を人間は分からない。

 リンカ・エルネージュ(ka1840)はそれらの低い声を聞いた瞬間、笑いが込み上げる。
(駄目、笑ったら……油断しないで仕事にかからないと。以前見たのは鳴き声からすると……飾り付いているもこもこよね?)
 リンカは守るべき兵士を見て気を引き締め、状況の把握に努める。
「コピーか何かなのかな、一体くらい解体してみるのも……」
 鵤(ka3319)はリンカのつぶやきを聞いて、苦笑した。近づいてくるのはぬいぐるみみたいなファンタジーの存在。好奇心が強ければ、それが何かどうして動くのかは気にはなる。
「さっさと片付けて酒の一本ものみたいもんだわな」
 へらりと笑って鵤は白いもこもこの集団を眺めた。
 万歳丸(ka5665)はモフリ達を眺め、もやもやするものを腹の底から感じている。
「……なンだ……こりゃァ……小動物? 北伐ってェ言ったら、もっとこう血沸き肉躍る系の戦場じゃねェのか!」
 心の叫びがつぶやきとして表に出る。ここにいる兵士たちを守り戦うのは重要であり、妖怪を討ち倒すのは道理である。口ではああい言ったが、数を見ると闘志が滾る。
「ん? なンだ?」
 万歳丸はモフリの首輪が妙に気になった。
 ティア・ユスティース(ka5635)は走ってくる集団を見て一瞬飲まれた、ハンターとしての経験の浅さや歪虚の数に。
「……兵士たちが撤退できるように支援をするのも大切な役目……」
 一人ではないし、協力してできることをする。互いの協力で歪虚に打ち勝てばいいのだから。
「接敵まで時間はありません、初動はどうしますか?」
 ティアの問いかけに、仲間は雪原と襲撃者の色を指摘した。

●地を黒く
 兵士に頼んだ、暖を取っていた大きな火にある炭を敵に向けて投げつけることを。敵か地面に色を付けることで、見えづらさをカバーしようと考えたのだ。
 遠くにいる分には攻撃がしづらいだけだが、近寄って来たのを見落とした場合致命的になりかねない。キャンプ地を囲っている柵は簡易的な存在でしかないから。
 飲み物で使えそうなワインも利用することを考えるが、食品は次善策だ。
 鵤は布に炭を載せ、軽く結わき矢に付けた。
「こうしてやってくれ」
 兵士にお手本として一撃放つ。緩い曲線を描いた矢は地面に落ち、雪を黒く染めた。
 兵士たちも行う。手前に落ちても何でも少しでも雪が染まれば見え方が変わる。
「プエルもエクエスもいない……別行動なのか?」
 おなじく矢に炭を付けて射かけながらレイオスは眉をひそめた。
「あの二人は結構ボロボロだったよね?」
 リンカはいくつか炭入りの布を作りつつ言った。嫉妬の歪虚二体と共にいたとき、モフリは全く動いていなかったから元気なのかもしれない。
「見落とさないで済むようになりますね」
 ティアも兵士とともに炭を撒きながら周囲を見る。兵士たちの士気は高いまま維持されている、歪虚の群れは恐ろしいだろうが懸命に行動している。
「そろそろ出撃しませんか?」
 ステラが出入り口となっているところで声を上げた。
 出入り口となっている部分は門がないため、突破される可能性がある。
「盾を置いてひとまずはしのぐしかねェな」
 万歳丸が兵士の物資から見つけた大きな盾を並べる前にハンターは外で攻撃タイミングを計った。

●赤い石
 レイオスが魔導バイクで飛び出した。
 その援護をするようにステラがライフルを構え、近づいたモフリ人形をかく乱させるために万歳丸は距離を詰めていく。
 距離の攻撃も行えるリンカと鵤が柵の側で待機する。
 回復魔法等使えるティアが盾を持ち入口付近に控える。魔法攻撃に備え、レイオス、万歳丸という順に【レジスト】をかけていく。何事も用心が大事だ。

「水の力を秘めたサーベルだっ。そんな弱火でどうにかできると思うなよ!」
 接敵したレイオスはマテリアルを活性化し、力を込めて薙ぎ払った。何体かに当たった手ごたえがある。
「きゅ!」
『モフリ』
 炎が見え隠れする者たちはレイオスを避けて走り去る。
「撃ってから移動ですね」
 援護射撃をしてステラは戦場の真ん中になる可能性もある中央くらいに移動する、ライフルからナイフとリボルバーに持ち替えながら。
 万歳丸はマテリアルを活性化し、攻撃を受けたときのために身体能力の底上げをして走る。
 ひきつけてからか今か、リンカと鵤は魔法を練っていく。近づきすぎれば防御が崩れる為、後少しと待つ。
 ティアは回復魔法を考え、少しだけ前に出ながら注意喚起をする。
「意外と速いみたいです!」
 モフリ達の接敵は迫っていた。

「きゅきゅきゅー」
 モフリは柵には近づきすぎない所で立ち止まり、臨戦態勢になった上で何か指示を出した。
 近寄ってくる万歳丸に身に炎を纏ったモフリ人形が魔法を放った。ジグザグに進む彼はあっさりと避ける。
 別の炎を纏った人形や一部の雷を発している物たちはそのまま柵に向かう。
 雷を発している個体がステラに魔法を放った。
「ぐっ」
 ステラは避けもしたが、防具で受けた物もある。
 レイオスは足止めしたのかされたのか、雷を纏った個体に囲まれている。攻撃もされるが防具で防ぎきれるらしく大したことはなかった。そのまま技を返す。手ごたえは十分ある。
 ステラはモフリに対してナイフを投げつける。マテリアルが込められたそれはモフリの毛をむしり取って傷つけた。
 鵤とリンカからそれぞれ炎の魔法を放つ、近づいてきた雷を発する人形を狙って。
 ティアは少し近づきステラに傷をいやす魔法を使う。

「きゅ!」
 モフリは近くにいる上に、攻撃もしてきたステラに対して噛みついてきた。
「なっ、こいつ自発的に動くのかよ!」
 ステラは素の言葉がこぼれる。噛みつかれただけでなく、体にまとっている炎まで直接焼いてくる。意識がもうろうとし、倒れるのではと思った。まずいと感じ、キャンプ地に後退する。
「ステラさんっ」
 ティアはあわてて傷を癒してほしいと、神に祈りをささげる。
 魔法を使える個体たちは万歳丸とリンカに炎の矢を飛ばした。リンカはよけきれず一部食らった。
 柵に到達した人形が体当たりをしている。
「雷よね? 【ファイアーボール】」
「だな、こんがり焼いてやろう」
 リンカと鵤の魔法が再び放たれる。範囲内に味方がいないため、容赦なくたたきこまれる炎。
 万歳丸はモフリに近寄り掴んだ。モフリは回避できずにつかまる。
「きゅー」
「てめェが大将首か……」
 首輪に付いている飾りに触れる。外そうにも炎にまかれての作業は簡単ではなさそうだ。

 モフリの尋常ではない鳴き声の後、レイオスは接敵しているモフリに似ているモノたちが動揺したように見えた。レイオスは攻撃をした後、ちらりと後方を見た。
「万歳丸、よけろっ!」
 見たときには、炎を上げているモフリの人形のようなそれらは、万歳丸に向けて炎の矢を放とうとしていた。
 レイオスの叫びと同時に、万歳丸は驚異的な反射神経で炎の矢を避けるが、大量のそれを完全に避けることはできなかった。食らった拍子にモフリを落とした。
「躾のしがいがありますねっ」
 ステラは怒気含んだ言葉と共にマテリアルを込めた弾丸を、地面に落ちたモフリめがけて放った。当たれば凍りつき、行動を指せない可能性もあったが、人形が一体割り込んでそれを食らって倒れた。
「逃がすかッ」
 万歳丸が再びモフリを掴もうとしたが、コロコロと転がったそれはくぼみを上手い具合に使い逃げた。
 リンカはウォーターボールで炎を纏う人形に攻撃をし、鵤はジェットブーツで近づきデルタレイを使用する。
 ティアは仲間に回復魔法をかけるので忙しい。それでも突破されないよう周囲に目を光らせながら。
「きゅうぅう」
 地面に転がりながら素早く起き上がったモフリは撤退を始めた。生き残っている人形たちが付いていく。
 レイオスは周りにいた人形を打倒した。キャンプ地の方に向き直ると、うまい具合にモフリ達がやってくる。
 ステラはライフルに切り替えて、一匹でも減らそうと引き金を絞っていく。
 リンカや鵤はそれぞれの移動手段により追いかけ、魔法を使う。
「おい、首輪を取れ」
 レイオスは万歳丸の声にうなずいた。
 炎の魔法を使う人形は行く手を遮るレイオスに攻撃する。炎の方が威力があるのか、防具をそろえていたにもかかわらず、若干痛みがあった。

 レイオスはモフリにサーベルを振るうが避けられる。
 避けたモフリはレイオスに噛みついた。
「ぐっ!」
 レイオスの口から食いしばる声が漏れる。モフリの攻撃は鋭く、防具の薄い所を貫き、身にまとった炎も彼の身を焼いた。
 この足止めの間に、ハンターたちは人形を減らしていく。
 モフリを弾丸が貫き、弾かれて地面に倒れる。
「きゅう」
 倒れたモフリの目は半開きで辛そうな雰囲気が漂う。
『モーフーリー』
「きゅう!」
『モ、フ、リ』
「きゅきゅ……」
 モフリと作れらたと見られるそれらは何か会話していた。ハンターが攻撃態勢と整えたときには、それらの行動が一斉に起こった。
 モフリの形をした人形たちはハンターたちに向かって来た、魔法ではなく炎の体で体当たりであった。
 この間にモフリは走り去った、雪の中に、傷つき消えてしまいそうな体で。

●灰色の解剖
 モフリに似たそれらを倒した後、ハンターたちは目を皿のようにして残っている物がいないか、伏兵がいないか確認する。
「死体が残っている……」
 ためしにリンカは触ってみる。
「動いたら危ないですよ」
 ティアが心配して声をかけた。
「確認よ。人形だと思うけれど、何か気になるのよ」
 毛は毛だった。めくってみると動物の形があるようには見えない。丸い肉団子に顔をつけ、外見上は先ほどのモフリに似せているだけのようだ。もっとも、モフリの毛の中もどういう形をしているか、飼い主でもない限り確認できないだろうが。
「……何の肉だろう」
 解剖するか否か。そもそも道具がないため、剣で斬り裂いてみる程度しかできないだろう。
「あー、動物か何かかねぇ?」
 鵤はいつもと変わらぬ様子で声をかける。
 人形たちは死体から作り上げたのは容易に推測はできるが、考えるのも気持ちいい物ではない。歪虚が作ったのだろうこれらは、ひとまずは役目を終えたからここに再び死体として彼の前に横たわっている。
「さっさと片付けて、熱い酒もいいねぇ」
 寒い所にいると温かい物が恋しくなる。
「前見たときはあんな首輪していなかったぞ」
 レイオスはモフリの首元の飾りを指摘する。
「話を聞くに妖怪だ、ロクなモンじゃねぇだろうとは思ったんだがなぁ」
 捕まえて外してどうしていいのかも万歳丸は分からなかった、直感でしかない。
「あのペットには丁重な躾ができたでしょうか」
 跳ねた炭や自分の血で汚れたステラが疲れたように言う。
「できたんじゃねェの?」
 万歳丸の目から見て、モフリは這う這うの体であったし、無に還っていてもおかしくないと感じる。
「キャンプ地は無傷です。撤収準備しませんか?」
「そうだな、また襲撃があるかもしれねぇし……」
 ティアにレイオスはうなずき、ハンターたちは分担して撤収の手伝いをする。
 分からないことは胸にしまい、目の前の事実を片づけて行かないとならない。

●紫の瞳
 プエルはムクリと起きる。腕に抱いている人形を見て首をかしげつつも、その姿を見てパッと顔を明るくして抱きしめた。
 見知らぬ部屋に驚く。なぜこうなったのかを思い出そうとして、恐怖と怒りで震える。
 エクエスを呼ぼうとしたが、扉が開く音がしたために警戒をした。音がする方を恐る恐る見ると、ボロボロになったモフリがいた。
「モフリっ」
 プエルは人形をベッドに放り、白い寝間着を翻してモフリを抱き起す。
「きゅっ」
 抱き起された直後、モフリは塵となって消えた。
「モ、モフリ? モフリ? なんで、どうしてっ、うわあああああ」
 泣き叫ぶプエルの様子を見ていたエクエスは笑いたくなる。必死に気の毒そうな表情を作ってから話しかけた。
「そうですねぇ、人間からマテリアルを奪うと意気込んで行かれたのですが……」
「僕のせい? 僕が弱いからモフリは」
 エクエスは鎖を用意し、モフリの首輪に付いていたペンダントヘッドを付け、プエルの首にかける。
「これをお持ちください。いずれあなたの役に立つでしょう」
 鳥かご細工に入っている赤い石を見て、プエルはなぜか怖いと思った。

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MVP一覧

  • 青炎と銀氷の魔術師
    リンカ・エルネージュka1840
  • パティの相棒
    万歳丸ka5665

重体一覧

参加者一覧

  • 青炎と銀氷の魔術師
    リンカ・エルネージュ(ka1840
    人間(紅)|17才|女性|魔術師
  • 王国騎士団“黒の騎士”
    レイオス・アクアウォーカー(ka1990
    人間(蒼)|20才|男性|闘狩人
  • は た ら け
    鵤(ka3319
    人間(蒼)|44才|男性|機導師
  • Rot Jaeger
    ステラ・レッドキャップ(ka5434
    人間(紅)|14才|男性|猟撃士
  • 過去の教訓
    ティア・ユスティース(ka5635
    人間(紅)|30才|女性|聖導士
  • パティの相棒
    万歳丸(ka5665
    鬼|17才|男性|格闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
鵤(ka3319
人間(リアルブルー)|44才|男性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2015/11/17 02:36:50
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/11/16 02:55:39