【讐刃】漆黒を討て

マスター:松尾京

シナリオ形態
ショート
難易度
難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
7日
締切
2015/11/18 19:00
完成日
2015/11/24 18:16

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●闇
 外から帰ってきたナハトは、いつものように、洞窟最奥の岩に腰掛けた。
 思いを巡らすのは今日の事だ。一人で森をうろついている覚醒者らしき人間を、試しに襲ってみたのだが……それが全く歯ごたえのない相手だった。
 覚醒者にも質はある。修練を積んでいない、ただの人間と変わらないような者ならば、殺す価値もないと飽きて放り出してきたのだった。
 自分を追ってくるほどの気概のあるハンター。もはや自分を楽しませるのはそれしかないとナハトは思いを強めた。
「……妙に、静かだな」
 そこでナハトは辺りを見る。
 いつもはもっと騒がしい音がするのだが……と考えて、そこでネロリロがいないのに気付く。
 いつからだったかはよくわからない。部下に割く思考などナハトにはないから、当たり前と言えば当たり前だが……。
 そこでナハトは楽しげな表情をした。
「ハンターに殺されたか」
 可能性があるとすれば、それだろう。
 部下を失ったと知って、ナハトは愉快になっていた。

●或る人形
 ナハトは生まれたときから退屈に支配されてきた。自分を満たすものは無いかと探し続けてきた時間、それがナハトの人生であった。
 故に、人間は数知れず殺してきた。それが最もわかりやすい遊びだったのだ。
 だが人間は弱かった。だれも自分に敵わないので、ナハトはある程度まで殺したところで、すぐに飽きてしまった。
 そうして、人を使って人を殺させることを思いついた。
 人間は、人一人を殺すのにも難儀する。苦悩し、血を流し、醜い様を晒す。
 だから人間に力を与えると、途端に不均衡が起こって、水面に波が立つように、しばしの快感を運んだ。そして人が壊れていく様は、求めていた玩具そのものに見えた。
 でも、それにも飽きが来た。
 そのこと自体は恐怖でもあったが、同時に新しい楽しみが生まれていたのだ。
 それが、ハンター。ナハトの人形を退け、人が人を殺す地獄絵図にも決然と割って入る。それはナハトの知る人間とは、少々違ったものだった。

 だから今も、ナハトは悠々としていた。
 もう、人形遊びもしていないし……ハンターが何かを仕掛けてくるのならば、それに付き合うつもりはあった。
「だが、私は死ぬつもりはない」
 不利に陥るならば、逃げる。ハンターが隙を見せれば、殺す。
 向こうの思い通りにさせるつもりは、全くない。これは本気の遊びなのだから。
「だから、私をせいぜい、楽しませろ」

●戦いへ
 山のふもとの村落で、フリッツはハンターを見回していた。
「集まってもらって、ありがとう。そして、すまない、と先に言っておく」
 おそらく、厳しい戦いになるだろうから、とフリッツは言った。
「用件は、説明したとおり。ナハトを倒すために、打って出る――だから、君達がいなければ、どうしても駄目なんだ」
 先のネロリロとの戦いにより得た情報。それを元にナハトのいる地帯を割り出し……その潜伏先をおおよそ特定できたのだ、とフリッツは言った。
「山の詳しい地図を持っていたものに、手伝って貰った。確かに、人の手の入っていない、洞窟地帯が情報と合致するところにあるようだ」
 そこへ攻め込み……ナハトと戦闘する。
 最終目標は、ナハトの撃破。
 そうフリッツは説明した。
「あれから大きな動きもないし、ナハトがここにいる可能性は高いだろう。おそらく、逃げられれば次の居場所の特定は難しいだろうから……何としても、今の内に倒しておきたいんだ」
 とはいえ、弱い相手でないことはわかっているが、とフリッツは続ける。
「……それでも、勝てない敵じゃないと俺は思う」
 用意できる人形歪虚の数に限界がありそうだったことや、一度に複数の手駒を作らなかったことからして、こちらがそれなりの数と戦術を持って挑めば……ナハトは決して強すぎる相手じゃないはずだ、とフリッツは言った。
「もちろん、危険には違いない。それでもいいという者だけ、参加して欲しい。……正直、この、悪の因果を断ち切るのは、このチャンスしかないと思っている。だから、力を貸してくれ」
 フリッツはそう言って、いや、と首を振る。
「俺がそう言うのは、おこがましい。俺は、何もできなかった。だからこれはきっと――君達の戦いなんだ」

リプレイ本文

●突入
 三つの洞窟の内の、東側。
 その入口は、静寂に包まれていた。
「こうして見る限り、普通の洞窟ッスね」
 息を潜め、待機する高円寺 義経(ka4362)が言う。刀を取り、それに応えるのは、火椎 帝(ka5027)。
「だけど、確実に敵がいる。最大限の警戒をもって、突入しよう」
 義経は頷き、伝話に囁く。
「……準備はいいッスか?」

「いつでも大丈夫、なのよっ」
 西側の洞窟。モニカ(ka1736)は、小さく伝話に返した。
 既に北側との連絡も取れている。モニカと頷き合い、秋桜(ka4378)も洞窟を見据えた。
「では、絶対に逃さないようにしましょう……!」
 その言葉を最後に、モニカが突入を告げると……同行の聖導士も、動き出す。
 明かりを頼りに、洞窟に飛び込みながら……ブラウ(ka4809)は慌てるでもなく、呟いていた。
「……どんな香りが、するのかしらね」

 その中は暗闇だった。
 東側。義経と帝は同行のハンター二人を連れ、連絡と同時に洞窟内部に潜入していた。
 明かりを縦横に走らせ、物陰と見れば、義経が手裏剣を飛ばし、罠を警戒するが……。
「……罠はない、みたいッスね」
 ただ、視線は休まずに、異常を探している。すると帝が、闇に動くそれに気付いた。
「義経! 敵だ!」
 瞬間、敵影が暗闇の奥から、一気に接近してきた。
 それは体当たりに等しい。だが、義経は斜めに跳躍。紙一重でそれを躱していた。
 翻りざま、ウィップで敵影を打つ。乾いた音と共に、敵影が壁に叩きつけられた。
「この人形、顔がのっぺらぼうだよ」
 帝が確認して言うと、義経も頷く。
「強くもないし、これがダミーッスね……!」
 洞窟は浅く、そこには他の敵影もない。二人は即、離脱を決めた。
 ダミーと洞窟爆破を同行のハンターに任せ、外で馬へ跳び乗る。帝はその方向を、見据えた。
「後は、戦うだけ……! ここまで追い詰めてくれた皆の為にも、ここで捕まえる!」

「敵がいたなのよっ!」
 西側。こちらも洞窟へ突入していた四人だが……内部で、ほどなくモニカが敵影を見つけていた。
 闇から突撃してくる人形の影。しかし、ターゲットとなったブラウは、体をずらすだけでそれを回避した。単純な攻撃に、ブラウはすぐにその力量に当たりを付ける。
「偽物を掴まされた様ね」
 事態を理解すると、モニカも素速く伝話で情報を共有した。
 ダミー人形が、今度はそちらに狙いを定めるが……モニカ自身が、既に弓を引いていた。
「おとなしくしてて、なのよっ」
 七色に光った矢が、人形を足止めすると……すぐに一行は、洞窟から退避する。
 秋桜も後退しつつ……人形が大きく傷ついているのを見ると、腕を伸ばす。
「禍根は、断っておきますっ!」
 そこからライトニングボルトを弾けさせ、人形を貫いた。人形は消滅。それを確認すると、秋桜は外へ走り、ブラウの馬へと相乗りする。
「すみませんっ! 行きましょう!」
「ええ。……香りが消えちゃう前に、急ぎましょ」
 静かに言うブラウ。モニカも後ろにハンターを乗せ、急ぐ。
 その、方向は。

 北側の洞窟。こちらもフリッツ含め、四人で探索に入っていた。
「罠はないな。監視も、見あたらない、と」
 龍崎・カズマ(ka0178)はランタンで照らしながら、周囲を注視。最も陽光の入りにくい位置の洞窟を選んだことで、おそらく、という気は既にあった。
「普通の洞窟……不自然な程、何もないですね」
 八代 遥(ka4481)も、呟きながらも足元の警戒を欠かさない。
 確かに、そこにあるのは岩に囲まれた闇ばかりだった。それでもそれは、濃厚な闇の気配だ。
 クルス(ka3922)は奥を見た。
「ただ、罠以上の何かはありそうだぜ」
 言った瞬間。最奥に、闇に佇む漆黒の影があった。
 刹那、地を蹴ったのは、カズマだった。マテリアルを込め、一瞬のうちに影に肉迫。神槍の一刺をたたき込んだ。
 鳴ったのは甲高い音。
 嫉妬の歪虚……ナハトが、針で槍を受け止めていた。

●暗中激突
「賭けには当たったみたいだな」
「来たな……ハンターよ!」
 金眼で睨むカズマに、ナハトは陶器の顔をかすかに動かした。それは喜色。
 だが神槍の光を近づけまいと、強烈な腕力で、カズマを振り払った。
 着地しながらも、押し戻されるカズマ。しかし、その直後……炎が揺らめく。遥がファイアーボールを放ち爆破で攻撃していた。
 その間にも遥は連絡し、声を上げる。
「すぐに、皆もこっちに向かうと!」
「よし、その間……食い止めるぞ」
 クルスも魔法を発動。セイクリッドフラッシュで目映いまでの光を放った。眩しげに一瞬停止するナハトへ目を向ける。
「よう、ナハト。潜んでる所まで面倒な奴だったな、本当に」
 すると、ナハトはようやく何かに気付いたように、笑った。
「……なるほど。ダミーを同時に叩くとは、分かっているな。面白い!」
 瞬間、下がると同時にマントを翻し、大きな針を投擲する。
 狙いは、遥……だが、素速く入り込んだカズマが、遥を庇う。そして血を流しながらも、斬牙を打ち込んだ。
 光る穂先に体をかすかに削られながらも、ナハトは歓喜を表す。
「やはり、貴様らは他の者とは違う」
 そして高く跳ぶと、複数の針を広角投射した。一瞬の差で避けられず、針を喰らったカズマは、膝をつく。
 だが、そこにまた光。クルスの治癒魔法が、カズマを癒していた。
「そうでなくてはな。本気で私を潰しに来たか。ならば私も……全力で遊ぼう」
「遊び……それがあなたの全てですか」
 遥が言うと、クルスもナハトを睨む。
「その遊びで死んだ者は、どうなる?」
「それこそが遊びだよ。変化が楽しみを、生むのだ」
「話すだけ無駄って事だな。奴は歪虚だ」
 カズマが槍を向けた。ナハトは小さく肩をすくめてみせる。
「貴様は既に傷ついている。それでは私を殺せない」
 だがカズマは視線を逸らさない。
「俺達だけならな」
 その音は既に聞こえている。

 義経と帝が、草木を縫い、洞窟へ疾駆していた。
 そしてほどなく、二人の馬は入口を突破、闇へと突入する。
 ナハトの姿を捉えると同時、義経は……馬から跳んでいた。
「暗兵、高円寺 義経、推して参る!」
 それは、遥のウォーターシュートをナハトが避けた瞬間。
 義経の放った手裏剣が、違わずナハトの体に突き刺さった。
「大丈夫ッスか!」
 義経の言葉に皆は頷く。同時、帝もナハトに肉迫していた。
「ナハトみーっけ、っと!」
 そのまま一之太刀の構えから、振動刀を振り下ろす。ナハトは針で受けるが、帝は退かずに切り結んだ。
「ぬぅ……ッ?」
「予想通り、強い……なら力比べだ、ナハト……ッ」
 さらに踏み込む帝。ナハトは一度下がって、猛烈な威力で帝の肩を突き刺す……だが、帝も同時に強烈な斬撃をお見舞いしていた。
「この威力……ダミーの相手は捨て駒ではなかったということか」
「そっちの部下と違って、俺達は仲間全員、弱くないッスよ」
 義経はあえて挑発的な口調で言う。だが、それにはナハトは小さく肩を揺らすだけだ。
「私は挑発には応じない」
「そうッスか。なら……倒すだけッスよ!」
 そのタイミングで、横合いからカズマの槍が突き出される。防御したナハトだが、そこを帝の刀が襲った。次いで唸る義経のウィップも、確実にナハトの胴へ命中していた。

●漆黒を
「……いいだろう。こちらも力を、出してやる」
 体の破片を散らしながらも、ナハトの動きは未だ速い。影に入り込むと、糸を伴った針を射出した。
 カズマと義経は跳んで回避、帝は盾でうまく受け流す。が、クルスと遥、フリッツもそれに拘束された。
「しばらくは動けまい。また人数が減ったぞ」
 ナハトの笑いに……しかし帝は刀を取っていた。
「そうかな……ッ」
 その刃を、拘束された三人に振り下ろす。魔法の糸が、断ち切られた。
「それに、人数はまだ増えるッスよ」
 義経が、言う。仲間の気配が、すぐそこに近づいていた。

 蹄の音が上がる。
 聖導士を乗せたモニカ、そしてブラウとそれに同乗する秋桜が……洞窟へ到着、走り込んで来ていた。
「遅れたなのよっ。平気? なのよっ」
「ええ、助かります!」
 遥の答えに、皆の無事を確認すると、モニカは……そのまま、接近する前に弓を絞っている。
「すぐに、援護するなのよっ」
 周囲へ氷の花の幻影を開花させ、矢を放つ。
 凍花。ナハトの脚部を、凍らせていった。
「何……まだ、こんな戦力が……ッ」
 ナハトが表情を変える。それを、爆ぜる雷撃が、照らしていた。
 秋桜のライトニングボルトだ。
「ここで、決着をつけさせてもらいますよっ!」
 秋桜が一直線に飛ばしたそれが、動きの鈍ったナハトに直撃する。
 かすかに後退したナハトの前には、ブラウが降り立っていた。
「あなたがナハトね。血は、流れないのかしら」
 二振りの刀を握るブラウは、スカートの裾から四本の手の様な幻影を蠢かせると同時、壱式「宵闇・隠刀」の型から抜刀している。
「その体を破壊してみれば、分かるかしらね」
 そして二連続の斬撃を繰り出し、ナハトの胴に深い傷を抉り込んでいった。
 クルスは聖導士と共に治癒魔法を展開、遥やカズマを柔らかい光で包み込みながら……ナハトを見ている。
「これだけの人数に囲まれれば、どうだ?」
「そうです。まだ余裕でいられますか……っ!」
 秋桜の言葉にも……しかしナハトの態度は、変わらない。
「ようやく、本物の遊びになるところだ!」
 言いながら、暗い箇所へ向けて跳躍した。だが、そこへカズマが追いすがっている。
「遊びかどうか、最後までやってみれば、わかるさ」
 カズマは重心、関節の動き、全てを連動させた重い刺突を加える。
 そこへ義経が手裏剣を投擲。ナハトの腕の関節を穿った。
「八代さんっ!」
「ええ!」
 義経の呼びかけに呼応し、遥のウォーターシュートが風を切る。同じく関節部に命中、破片を散らせた。
「まだ浅い。人間共よ、勝つのは私だ」
 それでもナハトは未だ健常、針を出し、反対側へと飛ぶそぶりを見せる。
 だが、モニカがそこを狙っている。
 モニカはこの戦いでも、ただの一人の犠牲者も出すつもりは、なかった。
(これ以上、モニカみたいなひとを増やしたら、駄目だから)
「だから……モニカが止める、なのよっ」
 放たれるのは嚇花。赤黒い花の幻影と共に穿つと、ナハトの動きが止まった。
「何……ッ」
「私達は、甘くありませんよっ!」
 そこへ秋桜が再び魔法を発射。ナハトを雷撃で包み込んでいく。
「今ですっ! 攻撃を!」
 秋桜の声と同時、ブラウが音もなく肉迫していた。素速い居合いの構えから、抜刀。削れていた関節に、痛打を与える。
「まだよ。香りが、足りないわ」
 ブラウは間断を作らず、さらにもう一刀。その斬撃が、関節を分断、腕を宙へ飛ばした。
 ぐらついたナハトに帝の刀が深々と入る。
「綺麗な肌を傷つけるのは、勿体ないけど、な!」
 その一撃は、胴部を大きくきしませながら、ナハトの体を吹き飛ばした。

●青空
 だが、ナハトは、それでもゆらりと起き上がる。
「……確かに、貴様らは強い。だが私は、不出来な人間とは違う。腕を失った位で、変わるものはない!」
 そこから、大きく跳んだ。天井で体を翻すと……全員に向け、無数の針の雨を降らせてくる。
 一本一本が死へと誘う攻撃、それは確かに熾烈なものだった。
 だが、ハンターの勝利の意志が、悪のつぶてを防ぐこともある。
 文字通り、雨を縫うように、カズマは針を躱した。クルスは盾で、遥ごと針を凌ぐ。義経は身のこなしでかすめるに留め……帝も盾で衝撃を殺していた。モニカ、秋桜、ブラウの三人はぎりぎりで躱すには至らない、だが、体力を保っていたために倒れることはなかった。
「皆、大丈夫かッ!」
 瞬間、クルスがヒーリングスフィアを行使、全員を回復の光で照らした。同行の聖導士は膝をついていたが、息はある。フリッツは、既にナハトに切り結んでいた。
 それでもフリッツはすぐに弾き返され、体力の大部分を失うが……。
「よくやったよフリッツ。後は俺達に任せとけばいいさ」
 カズマが盾になるように、前に出ていた。
 義経は刀を取ると……表情を歪めているナハトへ、跳んだ。
「そうッス、ここで絶対に、終わらせるッス……ッ!」
 振り下ろした刀は、ナハトのもう片腕の関節を破壊する。
 帝がそこへ追撃し……その腕を斬り落とした。
「確かに、人間は不出来かもね。でも、お前の思い通りには、ならないよ!」
 剣戟と共に飛び散る血。
 そこにかすかな興奮を覚えながら……ブラウは、再び壱式の構えを取っている。
「……また、血の香りで包まれるのね……素晴らしいわ」
 言いつつも、抜いた刀はナハトの脚部を打ち、体勢を崩していく。
「ぐぉ……ッ! 私が、玩具に、やられるなど……ッ!」
「人は、玩具じゃありませんよ。それが分からないのなら……勝てるはずは、ありませんっ!」
 秋桜が広げた掌から、雷撃を飛ばす。それは爆発と共に、ナハトの片脚を吹き飛ばした。
 うめくナハトは……そこで動きを変える。外を窺うのは、逃げるそぶりをしているからだ。
 だが動き始めた瞬間に、残った足へ、矢が飛んだ。
「……誰が、逃げていいと言った、なのよ」
 モニカの撃った、嚇花。生まれた花が縫い止めるように、ナハトは動けなくなる。
 そこへ飛び込んだカズマが、神槍で胸を突いた。
 光る穂先が、ナハトの体にひびを生む。
「これがお前の最期だよ。どうだ、これでも、遊びだったか」
「……貴様達に……力を、やろう」
「こんな場面で命乞いか? 悪いが」
 と流すと、カズマは飛び退く。
「八代、遠慮なく、ぶちこめ!」
「はいっ! ナハト……この因縁も、終わりです!」
 遥が放った、ファイアーボール。それが全てを焼き尽くし……嫉妬歪虚ナハトを、死滅させた。


 同行者にも死者は出ず、ダミーも含め、ナハトを完全に撃破。
 それがもたらされた結果だった。
 漆黒は、潰えた。
「ありがとう」
 事件による犠牲者、その内の一部が眠るという墓地の前で……フリッツは、ハンター達に頭を下げた。
 最後に、墓参りをしたいのだとフリッツは言っていた。ハンターと共に。
「君達のおかげだ。きっと浮かばれる、と言うのは、望みすぎかも知れないが」
「そんなこと、ないッスよ……きっと」
「フリッツ、お前が無事だっただけでも、良かったろうさ」
 義経とカズマが言えば、またありがとう、とフリッツは返した。
 ハンター達も、墓の前に佇んでいた。
 死んだ者は生き返らない。墓地はその証明のようで、かすかにだけ物寂しい。
 でも、そこに差す陽は明るかった。
「いい天気ですね」
 遥が言うと、そこに、ばさっ、と白い翼が見えた。
「あ、鳥。綺麗ですね」
 秋桜が指差す先……透き通った青空の中。
 どこからともなく現れたその鳥達が、皆の上を、舞っているかのようだった。

(【讐刃】 終)

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MVP一覧

  • 虹の橋へ
    龍崎・カズマka0178
  • 王国騎士団非常勤救護班
    クルスka3922

重体一覧

参加者一覧

  • 虹の橋へ
    龍崎・カズマ(ka0178
    人間(蒼)|20才|男性|疾影士
  • 【騎突】芽出射手
    モニカ(ka1736
    エルフ|12才|女性|猟撃士
  • 王国騎士団非常勤救護班
    クルス(ka3922
    人間(紅)|17才|男性|聖導士
  • 現代っ子
    高円寺 義経(ka4362
    人間(蒼)|16才|男性|疾影士
  • ブリリアント♪
    秋桜(ka4378
    人間(蒼)|17才|女性|魔術師
  • 猛炎の奏者
    八代 遥(ka4481
    人間(蒼)|16才|女性|魔術師
  • 背徳の馨香
    ブラウ(ka4809
    ドワーフ|11才|女性|舞刀士
  • ブリーダー
    火椎 帝(ka5027
    人間(蒼)|19才|男性|舞刀士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/11/12 20:19:04
アイコン 作戦相談卓
高円寺 義経(ka4362
人間(リアルブルー)|16才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2015/11/18 17:10:47