傷ついた幻獣を救え!

マスター:sagitta

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~10人
サポート
0~10人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
7日
締切
2015/11/23 12:00
完成日
2015/12/01 03:26

みんなの思い出

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オープニング

 冒険都市リゼリオにほど近い小さな森の外れ。エルフの集落からも少し離れた、背の高い木々が重なりあうやや薄暗いところに、周囲の木と一体化してしまったような、古びた小屋があった。
 小屋の主はリアルブルー出身の動物行動学者、あらためクリムゾンウェストの「幻獣学者」リン・カーソン博士。分厚いめがねと、丈の長すぎるぼろぼろの白衣がトレードマークの、幼さを残した少女のような外見。
 二年ほど前、リアルブルーからやってきたばかりのリン博士は、「リアルブルーには決して存在しなかった奇妙な生きものたち」、すなわち幻獣が多数生息するこの森を見つけて狂喜した。彼女にとって、まだまだ謎につつまれた幻獣を目の前にして研究ができることは、望外の喜びだった。
 当初は放棄された小屋に「勝手に住み着いた」リン博士であったが、研究の成果とハンターたちの尽力もあり、つい先日、このあたりを治める領主、ベスティア卿から正式に幻獣研究の許可をとりつけた。それだけでなく、領主はこの森の中での幻獣の殺傷・捕獲を禁止する『幻獣保護令』まで出してくれたのだ。それ以来、リン博士は前にも増して、精力的に幻獣の調査に打ち込んでいる。
 そんな小屋の主だが、現在は不在のようだ。リン博士が、小屋を空けることはめずらしくない。暇さえあれば森に出て、フィールドワークに余念がないからだ。
「いた!……カクレトラだ」
 森の奥、茂みの中に身を潜めて様子をうかがっていたリン博士が、興奮したつぶやきを漏らす。
「トラだって? いったいどこにそんなの……」
 不思議そうにつぶやいたのは、リンの隣で身を潜める狩人のゲイツだ。もともとは幻獣を狩りにこの森にやってきたのだが、いつの間にやらリン博士の助手としてベスティア卿から委任された、雇われ狩人となっていた。まったく人生、何が起こるかわからない。だが、実は動物が好きで、狩りをするたびに苦しむ獲物を見て心を痛めていた彼には、今の仕事は天職かもしれなかった。
「カクレトラは、周囲の環境に合わせて毛皮の色を変えることができる。だから、簡単に森の中の風景に溶け込むことができるんだ。ほら、あの木の陰、じっくり目をこらしてみろ」
 リンのアドバイスにしたがって、ゲイツが目をこらし、――息をのむ。
「……ほんとだ。こんなに近くにあんなでっかいトラがいて、気づかないとは……信じられねぇ」
 ゲイツだって仮にも狩人だ。目の良さには自信がある。だが、「保護色」とかいうレベルを超えた、自在に毛皮の色を変える幻獣には、舌を巻くばかりだ。
「見ろ、足下に幼獣がいる――この子は母親か」
 リンがそう言って、目を細める。どちらかと言えば無愛想で、冗談のひとつも言わないリンだが、幻獣が相手のときは別だ。驚くほど穏やかな表情で、ときどきこうして微笑むことさえある。そして、笑顔の彼女は、かなりの美人――というより美少女といった方がいいかもしれないが。
「む……あの幼獣、怪我をしているぞ!」
 リンの緊迫した声に、思わず見とれていたゲイツがはっと我に返った。
 あわてて目をこらすと、母親トラの足下に、普通の猫くらいの大きさの幼獣がいた。確かに、言われてみれば、後ろ足を引きずっているようだ。
「まずいな……傷口が化膿しはじめている。急いで消毒・治療しないと」
 手にした双眼鏡をのぞき込みながら、リンがつぶやく。
「ゲイツ、あの幼獣を、捕獲できるか?」
「……無理だ。母親にやられちまう」
 成体のカクレトラは、体長が人間の身長の2倍近くはある巨大な獣だ。そして、子供を連れた母親というのは、概して気が立っていて、凶暴である。とてもじゃないが、人間がかなう相手ではない。もちろん、遠方から銃を撃ち込めば、対処できないことはないが……。
「母親も子供も、絶対に傷つけずに、だろ?」
「もちろんだ」
 ゲイツの問いに、リンが間髪入れずに答える。
「正直、俺にはお手上げだな」
「わかった」
 ゲイツの言葉に、リンがうなずいた。
「ハンターに依頼しよう」

リプレイ本文


「リン博士、今回も及ばずながら尽力させていただきます……!」
「ソフィ、今回も来てくれたのか。心強いぞ」
 すっかり顔馴染みになったソフィ・アナセン(ka0556)を見つけ、リンが笑みを見せた。
「もちろんです。怪我をした虎の子供だなんて……早く手当てしてあげないと」
 ソフィの言葉に、リンが表情を引き締めてうなずく。
「幻獣かぁ。この目でじっくりと見るのは初めてかも……楽しみだね」
 思わず、といった感じでそう漏らしたのは、霧雨 悠月(ka4130)だ。
「あ、もちろん任務を果たすのが最優先だけど」
 あわてたように付け加えるが、その目は好奇心に満ちている。
「保護対象の子供幻獣とその母親はともかく、猛獣やその他の幻獣も傷つけるのは禁止ですか……これは少し面倒ですね」
 誰に聞かせるでもなくつぶやいているのは、エルバッハ・リオン(ka2434)、通称エルだ。
「まったくだよ」
 大きな声でそれに同意したのは、ネーナ・ドラッケン(ka4376)だ。唇の端を皮肉っぽく歪めて、肩をすくめてみせる。
「凶暴な虎。しかも保護色を使ってほぼ透明レベル。そんなやつの子供が、怪我をしてるから保護をする、だって? しかもしかも、他の生きものには傷をつけないで、なんておまけ付き」
 呆れたように大げさに頭を振ってみせるネーナを、リンがややむっとしたようににらみつけた。
「もちろん……簡単な依頼だとは思っていない。だが、カクレトラの子供を助けるためには、やるしかない。どうか、力を貸してくれないか」
「……悪くない。ああ、実に悪くないね」
 急に満足そうにうなずいたネーナに、リンがぽかん、と不思議そうな表情をむける。
「傷つけるでなく、救う。それを成せる力がある、と信用されている。……なかなかないよ、ここまでやる気の出る仕事は。ボクにやらせてよ、リン博士」
 そう言ってネーナは、屈託ない笑顔を見せた。リンが安心したようにうなずく。
「まぁ、私も、依頼である以上、最善は尽くします」
 ネーナに張り合うように、エルも心なしか大きめの声でつぶやく。
「子幻獣の怪我とかぁ、放って置くワケにはいかないじゃ~ん?」
 一方、緊張感のまったくない様子で、あっけらかんと言い放ったのは、はるな(ka3307)。
「あたしたちは頑張って子幻獣をリンちゃんとこに連れてこないとねぇ~」
「り、リンちゃん……」
 やけに近い距離で、肩なんぞを組んでくるはるなの態度とそのばっちりメイクに、リンは若干たじたじになっている。こう見えてはるなも、便利な魔法を使うこともできるれっきとしたハンターなのだが。
「だって、怪我してる虎ちゃん、かわいそぉだしぃ」
 意外にも情にもろいところがあったりもするのも、はるならしいと言える。
「カクレトラ、っていう幻獣は言葉を理解することはできるのか?」
 冷静にたずねたのは、ビシュタ・ベリー(ka4446)だ。リアルブルーで、熊回しの余興をやっていたこともある彼女にとって、動物とコミュニケーションを取ろうとすることは自然なことだった。まして、総じて知能が高いと言われる幻獣ならば、あるいは。
「カクレトラは確かにかなり高い知能を持っている。人間の言葉は知らないだろうが、多少の意思疎通は可能かもしれない」
 気を取り直したリンが言うと、ビシュタがなるほど、というようにうなずく。
「私の知ってるやり口はずいぶんと荒っぽいから、どこまで穏便にできるかどうか分からないが……なんとか意思の疎通を図ってみよう」
「昔、父さんが妖精探しに行ったときは、言葉が通じないから音楽で意思疎通を図ろうとした、なんて話を聞いたことがあったけど……」
 ビシュタの話を聞いて、思いついたように口を開いたのはカフカ・ブラックウェル(ka0794)。
「音楽か……やってみないと分からないが……もしかしたら音楽を理解できるかもしれない」
 腕を組みながら言ったリンの言葉に、カフカの表情がぱっと明るくなる。
「それなら、チャレンジしてみる価値はありそうだね」
「ドクター・リン、2,3,聞きたいことがあるがよろしいか?」
 そう言って小さく手を挙げつつ、リンに近づいてきたのはマリィア・バルデス(ka5848)だ。
「ああ、何でも聞いてくれ」
「睡眠薬は、手配できるだろうか? あるいは、何か、好きな食べものとかが分かれば……それと、幻獣たちがいやがる匂いとか……」
 矢継ぎ早に質問するマリィアに対し、リンは分厚い日誌をめくりながら調べはじめる。
 こうして幻獣保護の準備が、進められていったのだった。


 冬でも葉を落とさない常緑樹がうっそうと茂る、薄暗い森の中。リンと10人のハンターたちが、道なき道を行く。
「カクレトラがどのあたりにいるのか、リン博士には目星がついているのですか?」
 慣れた様子で険しい道を歩きながら、エルフのミオレスカ(ka3496)がリンに尋ねる。
「あまりあてもなく彷徨っていたら、傷ついた子供が、手遅れになってしまいますね」
 心配そうに言ったミオに、リンがしっかりとした口調で答える。
「カクレトラは自分のテリトリーを持ち、そこから離れないのが普通だ。確かに見つけにくいが、いる場所は限られているから、見つけられないわけではない」
「それはよかったです。治療、がんばりましょう」
 そう言ったミオに一瞬だけ視線をむけて、リンはまた真面目な表情で森を進んでいく。
「博士がカクレトラを見つけたのは、こちらの方角で合ってますの?」
 リンの前を進んでいたクリスティン・エリューナク(ka3736)が、後ろを振り返りながら尋ねた。
 若い、というより幼いといった感じのクリスだが、彼女は腕の立つ聖導士。立派なリンの護衛として、先頭を切って森を進んでいる。
「ああ。そのまま進んでくれ……おそらく、もうすぐ見つけられるはずだ」
「それにしても……状況に合わせていろんな色になるのは凄いですの!」
 クリスが周囲を警戒しつつも、興奮した様子で言う。
「実際に見たらもっと驚くと思うぞ。なにせ、本当に光を歪めて文字通り周囲に、『溶けこんで』しまうのだからな」
 そう話すリンはうれしそうだ。幻獣のことを語るときのリンは、饒舌になる。
「けど……まだカクレトラのもとへは行かせてくれなそうだね。ほら、前方の茂み」
 困ったようにつぶやいたのは、ネーナだ。いつの間にか木の上に登って周囲を見回していた彼女が、リン博士の前方にいる何かの存在を警告する。
「マリィアのすすめで獣よけの煙を出しているにもかかわらず……やはり、なにもなしとはいかないか」
 リンがつぶやく。獣よけの煙も、多少は効果があるようだったが、完全に遭遇を避けるというわけにはいかないようだった。
「博士はクリスから離れないようにしてくださいですの」
 そう言ってクリスがリンをかばうようにして立ち、リンに防御力を高める魔法をかける。
「リンちゃんはじっとしててねぇ~」
「私達が守ります」
 はるなとエルがそれぞれの杖を構える。
 がさがさっと音を立てて、茂みから姿をあらわしたのは小型の熊だ。それも二頭。冬眠前の腹ごしらえのためか、この時期は熊が自らのテリトリーを越えて、森のあちらこちらに姿をあらわすのだという。
「がるるるるる」
 たくさんの人間の気配に動転したのか、熊は目を血走らせてこちらに向かってくる。はるなとエルは目くばせをして、同時に魔法を唱えはじめる。
『スリープ・クラウド!』
 効果はてきめんだった。あっという間に二頭の熊はすやすやと寝息を立てはじめる。
「さぁ、今のうちに逃げましょう!」
 エルの言葉にうなずきつつ、リンは思わずつぶやいていた。
「魔法は、便利だな……」


「あれが、カクレトラ……本当に、毛皮の色が変化している……」
 感嘆の声を上げたのは、ソフィだ。一瞬、任務も忘れて見とれてしまう。
 ハンターたちが隠れている茂みの向こうに、カクレトラがいた。母親は、見上げるほど大きい。ここからの距離はせいぜい10メートル程度。それでもふと気を抜くと見失ってしまいそうになる。毛皮が映す色は、周囲の風景そのものだった。カクレトラが歩くごとに、移動した場所に合わせてまた毛皮が変化していく。
「かなり、痛そうですね……」
 苦しそうに、ミオがつぶやく。彼女の視線の先には、母トラから数メートル離れたあたりに、大きめの猫くらいの大きさの子供の姿。怪我をしているぶん、保護色を維持するのが難しいのだろうか。母親にくらべると若干隠れられていないようにも見える。そしてやはり、明らかに右側の後ろ足を引きずっていた。
「頭を撫でて懐いてもらって……というのは、ちょっと無理そうでしょうか……」
 明らかに警戒しているし、子供に近づいたりすれば、母親トラが一瞬で数メートルを飛んで、襲いかかってくるだろう。
「では私が……スリープクラウド!」
 早速ソフィが、母トラにむけて魔法を放った。手ににぎったワンドから、青白い雲が生まれ、カクレトラを包み込む。――しかし。
「……ダメですね。効かないみたいだ」
 残念そうにつぶやく。カクレトラを覆っていた雲はゆっくりと晴れていくが、カクレトラの方には変化がないようだ。
「ふむ……もしかしたら、魔法への耐性があるのかもしれないな。そういう幻獣は多い」
「冷静な分析もいいけど博士、今ので親に気づかれたみたい……こうなったら僕が体を張って守るからね」
 そう言って悠月がリンの前に一歩踏み出す。重い鎧に身を固めた彼は、いざとなれば一切手出しをせずにされるがままに時間稼ぎに専念するつもりだった。それに霊闘士たる彼は、多少の傷ならば自分で癒やすことができる。
「いちかばちか、音楽でのコミュニケーションを試してみよう」
 そう言ってカフカがフルートを取り出す。
「いいねえ、私も参加するよ」
 ビシュタも太鼓を地面に置き、ゆったりとした音を刻みはじめる。
 カフカの奏でるメロディーが、それに重なる。ネーナは、カフカと母トラの間に立って、いざというときにいつでもカフカをかばえるように気を張り詰めていた。
「あたしもぉ、優しい音色とか、奏でてみよっかなぁ……。少しでも母幻獣を落ち着けられたらラッキーって感じぃ?」
 そう言いつつ、はるなもハープをかき鳴らして演奏に加わる。
 ゆったりとした旋律が、森の中に響き渡る。
(この曲は、子供のころに母さんが歌ってくれた子守歌の曲。「子を想う母の気持ち」が、この幻獣にも伝わってくれたら……)
 カフカが笛の音に、想いを込める。
「私たちはあんたの子供の、ケガを治したいだけなんだ。な、わかってくれないか?」
 まっすぐな言葉づかいで、ビシュタが母トラに話しかける。カクレトラに人間の言葉は分からないようだが、その真摯な気持ちが伝わったのかもしれない。じっと奏でられる音楽に耳をかたむけていたようだった母トラが、じょじょに落ち着いていき――ついに、安心したようにその場に座り込んでしまった。
「やった、今です!」
 ずっと機会をうかがっていたミオとソフィが、思い切って子供のトラのもとに駆け寄った。
「がるっ!」
 子供のトラが、驚いたような声を上げる。とっさに逃げようとするが、足がもつれたのか、その場で転んでしまう。
「おっと、大丈夫か……うっ!」
 とっさに子供のトラに対して手をさしのべようとしたマリィアが、腕を押さえてくぐもった声を上げた。
「マリィア!」
 あわてたリンが駆け寄ろうとする。
「ドクター・リン、私のことはいいから、治療を!」
「し、しかし」
「大丈夫、かすり傷よ。それに……獣の相手をするときには、腕の一本はなくす覚悟で臨んでいるわ。それにくらべればたったこれくらい……傷のうちに入らない」
 きっぱりと言い切る。マリィアの覚悟は、本物だ。
「ありがとう」
 リンが言う。
「ちょっとだけがまんして……!」
 ミオレスカが子供のトラのもとに駆け寄り、手にマントを巻いてかみつかせた。そこに後ろから近づいたソフィが、自分のマントでトラの子供をすっぽりとくるんでしまう。
「がるるがるう」
 観念したのか、それとも敵意がないことを理解したのか、カクレトラの子供はすっかりとおとなしくなっていた。母トラは、そんなハンターたちと子供の様子を、はらはらした様子で見守っているようだ。
「私たちがおさえていますから、リン博士、治療をお願いします」
 ミオレスカがそう言い、ソフィがうなずく。駆けつけたリンは、もっていた手術道具を広げて、手際よくカクレトラの子供のあしを消毒し、治療しはじめた。
「……よし、これでもう大丈夫だ」
 数分後。リンが額の汗をぬぐいながらそう言った。周囲で息をのみながら見守っていたハンターたちが、ほっと息を吐く。
「そうだ……マリィア、大丈夫か!」
 リンが心配そうに駆け寄る。マリィアは首を横にふった。
「大丈夫、ただのかすり傷さ。……私も、あなたと同じでこの世界にしかいない者たちに興味があってここに来た。だが私は、ハンドガンでしか何事も解決できない人間だ。だから、こうやって体を張るしかないだろう?」
「……しかし!」
 なおも心配するリンに、マリィアは不敵な笑みを浮かべて見せた。
「ドクター、私と彼はじゃれ合っただけだ……ただのスキンシップだよ」
 これにはリンも思わず微笑み、ゆっくりとうなずいた。
「本当に、音楽と思いが、通じたんだな」
 カフカがうれしそうに言う。
「救うことができた……うん、悪くないね」
 ネーナもカフカと顔を見合わせて微笑んだ。
 母親トラはすっかりリンたちを信用したようで、あしに包帯を巻き付けた子供に近寄ったかと思うと、その場に座り込んで、子供の毛並みを優しく舐めはじめた。
「さっきは驚かせてごめんなさい、よくがんばったね。はい、ごほうびです」
 そう言ってミオレスカがツナ缶を差し出すと、子供の方が、大喜びで缶に頭を突っ込んで食べはじめた。
「あれ? 毛の色が……」
 エルが驚いたようにつぶやく。見れば、子供のカクレトラの毛皮が、あざやかな金色に染まっている。
「カクレトラの毛皮は、保護色になるだけではなく、感情も表しているらしいんだ。ちなみに、金色はうれしいときの色で、銀色が安心しているときの色だ」
 リンが説明する。ふと振り向くと、母親の毛皮はうつくしい銀色だった。
「へぇ。不思議なもんだねぇ。今回は、めずらしいモンも見られたし、いい退屈しのぎになったね」
 ビシュタがあざやかなカクレトラの親子を見ながらつぶやく。
「子幻獣……早く怪我が治るといいですの」
 金色の毛皮を撫でながらそう言ったのはクリスだ。
「ぎりぎりまだ化膿もしていなかったし、傷自体はほとんどふさがっているようだったから、きっとすぐにまともに歩けるようになる」
 リンがほっとした様子でクリスに答える。
「早くよくなって、お母さんと一緒に駆け回れるようになるといいね」
 悠月も目を細めてそう言った。
「リ~ンちゃん、ホントによかったねぇ~」
「はるな、そ、そのリンちゃん、っていうのは……」
「もう、照れちゃってリンちゃんかわいぃ~」
 からかうはるなと、顔を赤らめて目をそらしたリンの声とが、森の空に溶けていった。

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  • ふわもふマニア
    ソフィ・アナセンka0556
  • 師岬の未来をつなぐ
    ミオレスカka3496
  • ベゴニアを君に
    マリィア・バルデスka5848

重体一覧

参加者一覧

  • ふわもふマニア
    ソフィ・アナセン(ka0556
    人間(蒼)|26才|女性|魔術師
  • 月氷のトルバドゥール
    カフカ・ブラックウェル(ka0794
    人間(紅)|17才|男性|魔術師
  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオン(ka2434
    エルフ|12才|女性|魔術師
  • 恋愛導師
    はるな(ka3307
    人間(蒼)|18才|女性|魔術師
  • 師岬の未来をつなぐ
    ミオレスカ(ka3496
    エルフ|18才|女性|猟撃士

  • クリスティン・エリューナク(ka3736
    人間(蒼)|10才|女性|聖導士
  • 感謝のうた
    霧雨 悠月(ka4130
    人間(蒼)|15才|男性|霊闘士
  • 光森の舞手
    ネーナ・ドラッケン(ka4376
    エルフ|18才|女性|疾影士
  • 熊回しのジプシー
    ビシュタ・ベリー(ka4446
    人間(蒼)|19才|女性|霊闘士
  • ベゴニアを君に
    マリィア・バルデス(ka5848
    人間(蒼)|24才|女性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 【相談】幻獣治療作戦
ミオレスカ(ka3496
エルフ|18才|女性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2015/11/23 11:33:21
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/11/22 19:03:25