ゲスト
(ka0000)
ハロウィンの置き忘れ、変身カボチャ現る!
マスター:星群彩佳

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 8日
- 締切
- 2015/12/05 19:00
- 完成日
- 2015/12/18 06:29
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
ハロウィンが終わると、お化けカボチャは処分される。
グラズヘイム王国でもお化けカボチャは処分されるのだが、そのやり方は細かく砕いて家畜の食料にしたり、植物の肥料にすることになっていた。
ウィクトーリア家もお化けカボチャを粉砕機で細かく砕き、麻袋に入れられて倉庫に置いていたのだが……。
深夜、倉庫いっぱいに置かれた麻袋は突如動き出し、そして一気に破裂する。
オレンジ色のカボチャの粉が舞い上がる中、とあるモノが誕生してしまった……。
翌朝、ルサリィ・ウィクトーリア(kz0133)とフェイト・アルテミス(kz0134)は、援助をしている魔術師養成学校から来た使いの者と一緒に、所有している山の麓へ訪れる。
「ちょっ……ちょっとちょっとぉ! 何なのよ、コレはぁ!」
ルサリィは現場に到着するなり、ギョッとした。
所有している山の麓ではカボチャを育てており、毎年ハロウィンの為にオレンジ色のカボチャも育てさせていたのだ。
カボチャはハロウィン前には収穫を終えて、今は土畑になっている……はずだった。
しかし今現在、畑の中心の空中にはオレンジ色のお化けカボチャがプカプカと浮いていた。お化けカボチャの両眼には赤く怪しい光が宿っており、頭から下は黒いマントが風にふかれてヒラヒラと揺れ動いている。
そしてお化けカボチャを取り囲むように、畑の外側には魔術師達が結界を張っていた。
――明らかに、異常事態がここで起きている。
「ああ、ルサリィ様。このたびは……」
「詫びは後でいいわ。とりあえず説明をお願い、ヘスティアー」
ヘスティアーは魔術師養成学校で炎の魔術を教えている女性教師であり、見た目は二十代に見える美女だ。
「はい……。わたくしどもが知らせを受けたのは、今日の早朝のことです」
ウィクトーリア家の私有地には、必ず見回りする者がいる。
特にこの山では魔術師養成学校の生徒達が無断で魔法の練習をしていたせいで、様々な事件が起きてしまった。
その為、教師と見回りの者が組んで、山を毎日調査していたのだ。
そして今朝の見回りで、異変が発見される――。
このカボチャ畑で、オレンジ色のお化けカボチャが浮いているのを見つけたのだ。しかもよく探れば、ただならぬモノの気配がある。
「わたくしどもはすぐに現場へ駆け付け、調査をはじめたのですが……」
若い男性教師が畑に足を踏み入れると、お化けカボチャが襲い掛かってきて、頭にはまってしまった。
すると頭がお化けカボチャになった男性教師は、何故か首から下が人狼になってしまう。
慌てて他の教師達がお化けカボチャに向かって攻撃をすると頭から離れて、体も元に戻ったらしい――。
説明を聞いて、ルサリィは眉間にシワを寄せる。
「首から下が人狼になったって……どういうことなの?」
「体を乗っ取られた者の話では、ハロウィン当日に変身の魔法で人狼の姿になったらしいです。つまりあのお化けカボチャが頭にはまると、首から下の体がハロウィンで仮装した姿そのものになるようです」
「それはつまり……ハロウィンが失敗して、悪い精霊を追い払えなかったということですか?」
フェイトの質問で、ヘスティアーは何とも言えない表情で首を傾げた。
「それも一因でしょうが……。実は生徒達が仮装で使ったお化けカボチャに変身魔法をかけていたことが、そもそもの原因かと……」
ヘスティアーが言うには、生徒達はお化けカボチャに『かぶると想像した姿に変身できる魔法』をかけて、ハロウィンを楽しんだらしい。
「でもその時も後も、生徒達は無事だったのよね?」
「ルサリィ様の仰る通りです。しかし複数の生徒が、複数のお化けカボチャに変身魔法をかけていたのならば、話は違ってきます。子供達の魔力はそう強いモノではありませんが、複数集まれば強大になります」
「……つまり変身魔法がかけられたお化けカボチャが複数集まり、粉砕されて一ヵ所に集まったことにより、アレが誕生してしまったということですか」
フェイトの視線の先には、畑から出たくて飛び回るお化けカボチャがいる。
「結果的にお化けカボチャではなく、変身カボチャになったってことね。でも何でここにいるのよ?」
ルサリィが迷惑そうに変身カボチャを指差すと、ヘスティアーは苦く笑う。
「あのカボチャにとって、この畑は故郷みたいなものですから」
「しかしだからといって、結界を解いて他所に行かれてはたまりませんね」
フェイトも厳しい意見を吐き出す。
魔術師養成学校の教師達の監督不行き届きのせいで、ウィクトーリア家の名に傷が付くのを嫌がっているのだ。
「でもさあ、あの変身カボチャをとっとと魔法で攻撃して、倒せばいいだけの話じゃないの?」
「それがですね、ルサリィ様。これがまたお恥ずかしい話なのですが……」
魔術師養成学校は現在、他校との交流会で生徒も教師もほとんど残っていない。
しかしハロウィンに現れる悪霊や悪い精霊達を追い払うことができるのは炎であり、専門の教師であるヘスティアーが残っていただけ幸運と言えるはずだったのだが……。
「結界を張るのに、魔導具のランプに浄化の炎を宿した物を使っております。アレを倒す武器も、複数作れたのですが……」
「もしかして、それであなた達の魔力は……!」
「……はい。ほぼ切れてしまいました」
不安が的中してしまい、フェイトは険しい表情を浮かべる。
どうやらヘスティアーと他の教師達は結界や武器の製作で、魔力をほとんど使いきってしまったようだ。
魔術師達が戦えないとなると、代わりに戦ってくれる者を呼び出さなければならない。
「ねぇ、ヘスティアー。その魔法武器は誰でも使えるの?」
「そのように作りましたが、相手が相手ですから戦い慣れた者を向かわせた方がよいかと」
「なら変身カボチャと戦うのは、ハンターしかいませんね」
人間相手ならばウィクトーリア家の者でも大丈夫かもしれないが、今回は相手が悪い。
「それじゃあハロウィンの後片付けを、ハンター達に手伝ってもらいましょう」
グラズヘイム王国でもお化けカボチャは処分されるのだが、そのやり方は細かく砕いて家畜の食料にしたり、植物の肥料にすることになっていた。
ウィクトーリア家もお化けカボチャを粉砕機で細かく砕き、麻袋に入れられて倉庫に置いていたのだが……。
深夜、倉庫いっぱいに置かれた麻袋は突如動き出し、そして一気に破裂する。
オレンジ色のカボチャの粉が舞い上がる中、とあるモノが誕生してしまった……。
翌朝、ルサリィ・ウィクトーリア(kz0133)とフェイト・アルテミス(kz0134)は、援助をしている魔術師養成学校から来た使いの者と一緒に、所有している山の麓へ訪れる。
「ちょっ……ちょっとちょっとぉ! 何なのよ、コレはぁ!」
ルサリィは現場に到着するなり、ギョッとした。
所有している山の麓ではカボチャを育てており、毎年ハロウィンの為にオレンジ色のカボチャも育てさせていたのだ。
カボチャはハロウィン前には収穫を終えて、今は土畑になっている……はずだった。
しかし今現在、畑の中心の空中にはオレンジ色のお化けカボチャがプカプカと浮いていた。お化けカボチャの両眼には赤く怪しい光が宿っており、頭から下は黒いマントが風にふかれてヒラヒラと揺れ動いている。
そしてお化けカボチャを取り囲むように、畑の外側には魔術師達が結界を張っていた。
――明らかに、異常事態がここで起きている。
「ああ、ルサリィ様。このたびは……」
「詫びは後でいいわ。とりあえず説明をお願い、ヘスティアー」
ヘスティアーは魔術師養成学校で炎の魔術を教えている女性教師であり、見た目は二十代に見える美女だ。
「はい……。わたくしどもが知らせを受けたのは、今日の早朝のことです」
ウィクトーリア家の私有地には、必ず見回りする者がいる。
特にこの山では魔術師養成学校の生徒達が無断で魔法の練習をしていたせいで、様々な事件が起きてしまった。
その為、教師と見回りの者が組んで、山を毎日調査していたのだ。
そして今朝の見回りで、異変が発見される――。
このカボチャ畑で、オレンジ色のお化けカボチャが浮いているのを見つけたのだ。しかもよく探れば、ただならぬモノの気配がある。
「わたくしどもはすぐに現場へ駆け付け、調査をはじめたのですが……」
若い男性教師が畑に足を踏み入れると、お化けカボチャが襲い掛かってきて、頭にはまってしまった。
すると頭がお化けカボチャになった男性教師は、何故か首から下が人狼になってしまう。
慌てて他の教師達がお化けカボチャに向かって攻撃をすると頭から離れて、体も元に戻ったらしい――。
説明を聞いて、ルサリィは眉間にシワを寄せる。
「首から下が人狼になったって……どういうことなの?」
「体を乗っ取られた者の話では、ハロウィン当日に変身の魔法で人狼の姿になったらしいです。つまりあのお化けカボチャが頭にはまると、首から下の体がハロウィンで仮装した姿そのものになるようです」
「それはつまり……ハロウィンが失敗して、悪い精霊を追い払えなかったということですか?」
フェイトの質問で、ヘスティアーは何とも言えない表情で首を傾げた。
「それも一因でしょうが……。実は生徒達が仮装で使ったお化けカボチャに変身魔法をかけていたことが、そもそもの原因かと……」
ヘスティアーが言うには、生徒達はお化けカボチャに『かぶると想像した姿に変身できる魔法』をかけて、ハロウィンを楽しんだらしい。
「でもその時も後も、生徒達は無事だったのよね?」
「ルサリィ様の仰る通りです。しかし複数の生徒が、複数のお化けカボチャに変身魔法をかけていたのならば、話は違ってきます。子供達の魔力はそう強いモノではありませんが、複数集まれば強大になります」
「……つまり変身魔法がかけられたお化けカボチャが複数集まり、粉砕されて一ヵ所に集まったことにより、アレが誕生してしまったということですか」
フェイトの視線の先には、畑から出たくて飛び回るお化けカボチャがいる。
「結果的にお化けカボチャではなく、変身カボチャになったってことね。でも何でここにいるのよ?」
ルサリィが迷惑そうに変身カボチャを指差すと、ヘスティアーは苦く笑う。
「あのカボチャにとって、この畑は故郷みたいなものですから」
「しかしだからといって、結界を解いて他所に行かれてはたまりませんね」
フェイトも厳しい意見を吐き出す。
魔術師養成学校の教師達の監督不行き届きのせいで、ウィクトーリア家の名に傷が付くのを嫌がっているのだ。
「でもさあ、あの変身カボチャをとっとと魔法で攻撃して、倒せばいいだけの話じゃないの?」
「それがですね、ルサリィ様。これがまたお恥ずかしい話なのですが……」
魔術師養成学校は現在、他校との交流会で生徒も教師もほとんど残っていない。
しかしハロウィンに現れる悪霊や悪い精霊達を追い払うことができるのは炎であり、専門の教師であるヘスティアーが残っていただけ幸運と言えるはずだったのだが……。
「結界を張るのに、魔導具のランプに浄化の炎を宿した物を使っております。アレを倒す武器も、複数作れたのですが……」
「もしかして、それであなた達の魔力は……!」
「……はい。ほぼ切れてしまいました」
不安が的中してしまい、フェイトは険しい表情を浮かべる。
どうやらヘスティアーと他の教師達は結界や武器の製作で、魔力をほとんど使いきってしまったようだ。
魔術師達が戦えないとなると、代わりに戦ってくれる者を呼び出さなければならない。
「ねぇ、ヘスティアー。その魔法武器は誰でも使えるの?」
「そのように作りましたが、相手が相手ですから戦い慣れた者を向かわせた方がよいかと」
「なら変身カボチャと戦うのは、ハンターしかいませんね」
人間相手ならばウィクトーリア家の者でも大丈夫かもしれないが、今回は相手が悪い。
「それじゃあハロウィンの後片付けを、ハンター達に手伝ってもらいましょう」
リプレイ本文
○ハンターVS変身カボチャの対決!
浄化の炎の力を宿した武器をそれぞれ持って、ハンター達は結界の中へ飛び込んだ。
そして炎の鞭を持った鳳凰院ひりょ(ka3744)と、炎の槍を担いだ阿部 透馬(ka5823)が変身カボチャの元へ走って行く。
「弓矢班、フォローをよろしく頼む!」
「やれやれ。近距離と中距離の武器は、相手に近付かないといけねーのが面倒だな」
二人が近付いてくるのを感じ取ったのか、変身カボチャがピクリと反応する。
だが気をそらさせるように、弓矢班のクオン・サガラ(ka0018)が炎の矢を放つ。
「はあ……。場所が作物収穫後の畑でなければ、魔導バイクを走らせて戦うことも可能だったんですけどね。それにしてもあんな存在が生み出されるとは、この世界は面白いと言いますか奇妙と言いますか……」
「こういう依頼も楽しみましょうよ。私は猟撃士だけど、まさか『炎の弓矢を使って、変身カボチャを射る依頼』があるとは今まで想像もできなかったわ。でも今回の依頼で魔術についてもいろいろと新たに知ることができたし、とりあえずあの頭を狙っていきましょう。カボチャの弱い部分はどこら辺だったかしら?」
クオンの隣でマリィア・バルデス(ka5848)は話しながらも、次々と矢を射る。
「でもさあ、この事件の一因である悪い精霊がまだ帰れていないことも問題だね。しばらく遊んで、楽しませてあげるのはどうかな?」
道化師の恰好をしている大友 映美(ka5684)は笑みを浮かべながらも、変身カボチャへ矢先を向けた。
「そうですよ! 身体を乗っ取るなんて、きっと『まだ遊び足りない』と思っている証拠です! 少しの間でも、遊びに付き合ってあげた方が良いと思います!」
弓と矢を握りしめながら、ミリア=シャートラウム(ka5766)は必死の形相で叫ぶ。
背中でミリアの声を聞きながら、ひりょは呆れ顔でため息を吐く。
「戦闘中に何を叫んでいるんだよ。さて、『スキルや武器の攻撃は通じない』と言われたけれど、どの程度ダメージを与えられるかは知りたいね」
ひりょは日本刀を引き抜き、アクティブスキルのヒッティングを発動しながら変身カボチャに斬りかかった。
「はあっ!」
しかし変身カボチャはヒラリッと身を翻し、そのままの動きでスッポンとひりょの身体を乗っ取ってしまう。そして炎の鞭を嫌がり、土畑にポイッと捨てた。
「きゃあああっ! ひりょ様が変身カボチャに身体を乗っ取られてしまいましたー!」
絶叫を上げるミリアの目の前で、ひりょの頭はお化けカボチャになり、黒いマントに覆われた身体は次の瞬間、吸血鬼の姿になる。
『ううっ……! トマト……、真っ赤に熟したトマトが欲しいよぉ!』
しかも早速、思考が仮装した姿の意識に染まりつつあった。
「これはまた、予想以上に変身が早いです」
「身体を乗っ取られると、あっと言う間なのね。厄介だわ」
「ひりょ君はハロウィンに吸血鬼になったんだね。うんうん、良く似合っているな!」
クオン、マリィア、映美はそれぞれ思ったことを口に出しながらも、頭部のお化けカボチャを狙って矢を次々と放つ。
しかし空中に浮いているひりょは、身軽な動きでヒョイヒョイと避けてしまう。
「くうっ……! ひりょ様には戦闘前に、『俺が身体を乗っ取られて変身してしまったら、迷わず攻撃しろ』と言われました。なので遠慮なく、炎の矢にアクティブスキルのエイミングをかけて撃たせてもらいます。例え炎の矢がこめかみに突き刺さったとしても、私は決してひりょ様のことを笑ったりはしません!」
真剣な顔つきのミリアは炎の矢を素早く数多く、ひりょ目掛けて撃っていく。
「のわぁっ! いくら『ハンターの身には安全』と言われても、炎の矢が雨のように降ってくるのはおっかねー!」
弓矢班は変身カボチャを狙っているのだが、的の近くにいる透馬は気が気じゃない。
「長い付き合いがあるひりょ様を狙い撃つなんて、心が痛みます……。ですがハンターとして成長したところを見ていただかなくては!」
「ミリアさんの言葉は感情的ですが、命中率はかなり良いですね」
クオンの言う通り、避けられ続けている三人に比べて、ミリアが撃つ矢はよくひりょに当たっている。
「そうね。頭や衣類に矢が当たっているし、良い腕しているわ」
マリィアは仮装姿のひりょがボロボロになっていくのを見て、苦く笑う。
「ちなみにひりょ君は今、心の中でどう思っているんだろう?」
映美は身体を乗っ取られたひりょのことを思い、首を傾げる。
ひりょは自分の身体の動きをコントロールすることができないらしく、ミリアが「セイッ、セイッ、セイッ!」と矢を撃つと、『ハッ、ハッ、ハァ!』と日本刀を振るっては矢を精確に斬り落としていた。
その様子を間近で見ていた透馬は、何とも言えない微妙な表情を浮かべる。
「……まあ見ている分には楽しいと言っちゃあ楽しいけどよ。流石に身体を乗っ取られ続けるのは可哀想だし、とりあえず変身カボチャを引き離すか」
透馬は地面に槍を置くと、バトルグローブにアクティブスキルの震撃をかけた。そして走って飛び上がり、ひりょの頭を覆っているお化けカボチャを殴打する。
突然の至近距離攻撃に驚いたのか、ひりょの身体は体勢を崩す。
「やっぱこの攻撃方法じゃあ傷一つつけられねーか。だが打撃は与えられる!」
これを好機と、透馬は続いてアクティブスキルの螺旋突でお化けカボチャを攻撃した。
するとブルブルッとひりょの身体が痙攣を起こし、スッポン!と頭からお化けカボチャが離れる。
変身カボチャから解放されたひりょは、透馬に身体を支えられながら地面に着地した。
「大丈夫か?」
「……ああ、すまない。乗っ取られても意識はあったんだが、身体の方がどうにも……。……それにしてもミリアは凄まじい攻撃をしてきたな。付き合いは長いけど、新たな一面を見た気がするよ」
ひりょは疲労のため息を吐きながら、体勢を整える。
「肉体のダメージは? おかしく感じるところはあるか?」
「いや、特には無いよ。……でもやっぱりと言うか、身体を乗っ取られてもあまり悪意を感じなかったな。元々あの存在には子供が関わっているし、純粋な存在なのかもしれない」
再び宙に浮いた変身カボチャを見上げながら、ひりょは眼を細めた。
ひりょの隣に立つ透馬は、腕を組んで唸る。
「う~ん。まあ悪いヤツだとは思わねぇけど、いつまでもこの世にいさせるワケにもいかねえからな。……よしっ! ここはいっちょワザと乗っ取られてみるか」
「えっ? いや、透馬、待てっ!」
透馬はひりょが止めるのを聞かず、無防備に変身カボチャへ近付いて行く。
「ひりょさんが解放されたのは良いんですけど……、何で透馬さんは炎の武器を持たずに敵に近付いて行くんでしょう?」
透馬の様子がおかしいことに気付いたクオンは、矢を射る手を止める。
続いてマリィアと映美も、矢を下ろす。
「もしかして透馬は、わざと身体を乗っ取られるつもりかしら?」
「透馬君の性格を考えると、その可能性はアリだね。でも確か彼は格闘士だったはずだけど、身体を乗っ取られた後、こっちに攻撃してこないかな?」
弓矢班の三人はふと、ミリアの意見がないことに気付いて、姿を目で探す。
するとミリアは、元の姿に戻ったひりょの所へ走って行っていた。
「ひりょ様、ご無事で何よりです!」
「うん。でも精神的なダメージが……まあいいか。それより早く、炎の鞭を拾わないと。変身カボチャに身体を乗っ取られた透馬を、解放することができないからね」
自ら変身カボチャに乗っ取られた透馬は、頭はお化けカボチャ、身体は衣類を着た猿になった。
変身した透馬を見たミリアは青ざめた顔で、咄嗟にひりょの背後に隠れる。
「ひっひりょ様、化け猿が誕生しましたよ! 新種のキメラみたいです! アレ、結界の外に出たら、ハンターに攻撃される対象になりますよ!」
「そうだね。そして恐ろしいことに、透馬は接近戦を得意としている。とりあえず距離を取るよ!」
「はいぃ!」
二人は同時に別方向へと走り出し、ひりょは途中で落とした炎の鞭を拾う。
ひりょとミリアを逃がす為にクオン、マリィア、映美が炎の矢で透馬を狙い撃つ。
しかし透馬はいきなり土畑を強く蹴り上げて、土埃で三人の視界を封じる。
「おっと。危ないですね」
「ヤダ、何も見えなくなったわ」
「服が汚れるのは勘弁だね」
三人は素早く土埃を避けたものの、その表情には険しさが滲み出ていた。
「どうやら身体を乗っ取られると、浄化の作用がある武器を毛嫌いするようですね。嫌なモノからすぐに逃げたがるなんて、子供の本能そのものです」
クオンはすぐに体勢を直すと、再び矢を放つ。
だが透馬は猿の姿になったせいなのか、先程変身したひりょよりも素早い動きで矢を避ける。
「アララ? もしかして変身した姿によって、身体能力も変わるのかしら?」
まるで踊るように矢の攻撃を避け続ける透馬の姿を見て、マリィアは眼を丸くした。
「ある意味、あの恰好であの動きをするのは羨ましいね」
心底羨ましそうに映美は、透馬の動きに感心する。
『バナナはどこだぁ! バナナが食いたいっ!』
透馬は意識が猿そのものになってきているようで、その場でドタバタと暴れだす。
「すっかり本能が猿になったみたいだね。それじゃあコレをあげてみようかな?」
映美はいつの間にか、サツマイモを一本手に持っていた。
クオンとマリィアは、映美が持つサツマイモを凝視する。
「それ、どこから持ってきたんですか?」
「もしかして、オヤツ用に買ってきたの?」
「いや。仕事をはじめる前に通りかかった倉庫の中に、サツマイモが置かれているのをたまたま見かけてね。フェイト君に聞いたら、ウィクトーリア家が雇っている農家の人が作っているんだって。美味しそうだと言ったら、くれたんだよ」
映美はニッコリ微笑むと弓矢をその場に置いて、サツマイモを手に持ったまま透馬に近付く。
「ホラ、猿の透馬君。サツマイモはどうかな?」
『サツマイモでも可』
深く頷いた透馬は映美からサツマイモを受け取ると、その場で食べ始める。
映美は透馬がサツマイモに夢中になっていることを確認すると、クオンとマリィアへ向けてウィンクをして見せた。
二人がゆっくりと静かに気配を消しながら弓矢を構えるのを見た映美は、こっそり透馬から離れる。
そしてクオンとマリィアは、一斉に矢を放った。
『ぐうっ!?』
するとお化けカボチャに二本の矢が当たり、欠ける。
「――ようやく矢が当たりました」
「食欲に負けるなんて、ホーント動物的ね」
二人は攻撃が当たったことに、内心ホッとした。
「その身体から、離れてもらおう。キミはそろそろ元いた場所へ帰る時間だよ」
ひっそりと近付いたひりょは炎の鞭を振るい、透馬の頭と身体を同時に打った。
そして透馬と変身カボチャが分離する。
「おっとっと……。世話かけたな」
透馬が人間の姿に戻って体勢を直すと、映美は炎の槍を拾い上げて投げた。
「そらっ! 透馬君、とどめは頼んだよ!」
「あいよっ!」
透馬は空中で槍を受け取り、変身カボチャへ矛先を向ける。
攻撃を立て続けに受けた変身カボチャの頭部は欠けたりヒビが入っており、そのせいで動きがフラフラと弱々しい。
「さぁて、変身カボチャよ。もう充分遊んで暴れて、満足しただろう? そろそろ元の世界に戻れ。そしてまた来年、遊びに来いよ!」
力を込めた炎の槍は、刃の部分が五十センチほどの大きさになる。
そして透馬は槍を構えて、変身カボチャの頭に炎の刃を突き刺した――。
「ふう……、変身カボチャは砂のように崩れ散ったな。何だか夕暮れ時と相まって、少し寂しい最期だぜ」
夕日を見ながら歩いている透馬は、物悲しそうにため息を吐く。
「けれどあの存在は、ようやくいるべき場所へと帰ることができたんだ。今頃、仲間達と再会を喜んでいるよ」
「そうだね。やっぱり仲間がいる場所が、一番安心すると思うな」
肩を並べながら歩いているひりょと映美は、透馬を励ますように明るく言った。
三人がクオンとマリィアの所へ行くと、二人は労いの言葉をかける。
「お疲れさまでした。ひりょさんと透馬さんの変身した姿、なかなか見ものでしたよ」
「そうね。でもいつもとあんまり変わっていなかったような気もするけど」
マリィアは二人が変身した姿を思い出すと、クスクスと笑う。
反対に、透馬とひりょは複雑な表情を浮かべる。
「俺はそんなに猿っぽいか?」
「言ってくれるね、マリィア。……ん? ミリアはどこにいるのかな?」
ひりょはミリアがこの場にいないことに気付いた。
四人も今気付いたようで、慌てて周囲を見回す。
「……おや? あそこで走り回っているのは、ミリアさんじゃないですか?」
クオンが指さした場所に、四人は視線を向ける。
「いやーん! こっちに来ないでくださぁい!」
ミリアが走り回っている姿を見て、映美は首を傾げた。
「もしかして、変身カボチャの最期は静かだったから、倒したことに気付いていないのかな?」
「あー……、映美の言う通りだと思うよ。さて、どうやって止めよう?」
ひりょが困り顔になるのを見て、クオンとマリィアは弓矢を持ち上げる。
「何なら攻撃して、足を止めましょうか?」
「大丈夫よ。身体には当てないから」
ニッコリと二人が微笑むのを見て、ひりょは背筋が凍るのを感じた。
「ミリアッ! 戦いは終わったんだ! もういい加減落ち着かないと、強制的に落ち着かされるよ!」
急いでミリアの元へ走って行くひりょを見て、クオンとマリィアは心外だという顔で肩を落とす。
「軽い冗談だったんですけどね」
「ちょっとブラックすぎたかしら?」
「……あんたらの場合、ブラックじゃなくてダークに聞こえるんだ」
「本気と冗談の区別がつきにくいんだよね」
透馬と映美は、二人から離れるように一歩後ろに下がった。
<終わり>
浄化の炎の力を宿した武器をそれぞれ持って、ハンター達は結界の中へ飛び込んだ。
そして炎の鞭を持った鳳凰院ひりょ(ka3744)と、炎の槍を担いだ阿部 透馬(ka5823)が変身カボチャの元へ走って行く。
「弓矢班、フォローをよろしく頼む!」
「やれやれ。近距離と中距離の武器は、相手に近付かないといけねーのが面倒だな」
二人が近付いてくるのを感じ取ったのか、変身カボチャがピクリと反応する。
だが気をそらさせるように、弓矢班のクオン・サガラ(ka0018)が炎の矢を放つ。
「はあ……。場所が作物収穫後の畑でなければ、魔導バイクを走らせて戦うことも可能だったんですけどね。それにしてもあんな存在が生み出されるとは、この世界は面白いと言いますか奇妙と言いますか……」
「こういう依頼も楽しみましょうよ。私は猟撃士だけど、まさか『炎の弓矢を使って、変身カボチャを射る依頼』があるとは今まで想像もできなかったわ。でも今回の依頼で魔術についてもいろいろと新たに知ることができたし、とりあえずあの頭を狙っていきましょう。カボチャの弱い部分はどこら辺だったかしら?」
クオンの隣でマリィア・バルデス(ka5848)は話しながらも、次々と矢を射る。
「でもさあ、この事件の一因である悪い精霊がまだ帰れていないことも問題だね。しばらく遊んで、楽しませてあげるのはどうかな?」
道化師の恰好をしている大友 映美(ka5684)は笑みを浮かべながらも、変身カボチャへ矢先を向けた。
「そうですよ! 身体を乗っ取るなんて、きっと『まだ遊び足りない』と思っている証拠です! 少しの間でも、遊びに付き合ってあげた方が良いと思います!」
弓と矢を握りしめながら、ミリア=シャートラウム(ka5766)は必死の形相で叫ぶ。
背中でミリアの声を聞きながら、ひりょは呆れ顔でため息を吐く。
「戦闘中に何を叫んでいるんだよ。さて、『スキルや武器の攻撃は通じない』と言われたけれど、どの程度ダメージを与えられるかは知りたいね」
ひりょは日本刀を引き抜き、アクティブスキルのヒッティングを発動しながら変身カボチャに斬りかかった。
「はあっ!」
しかし変身カボチャはヒラリッと身を翻し、そのままの動きでスッポンとひりょの身体を乗っ取ってしまう。そして炎の鞭を嫌がり、土畑にポイッと捨てた。
「きゃあああっ! ひりょ様が変身カボチャに身体を乗っ取られてしまいましたー!」
絶叫を上げるミリアの目の前で、ひりょの頭はお化けカボチャになり、黒いマントに覆われた身体は次の瞬間、吸血鬼の姿になる。
『ううっ……! トマト……、真っ赤に熟したトマトが欲しいよぉ!』
しかも早速、思考が仮装した姿の意識に染まりつつあった。
「これはまた、予想以上に変身が早いです」
「身体を乗っ取られると、あっと言う間なのね。厄介だわ」
「ひりょ君はハロウィンに吸血鬼になったんだね。うんうん、良く似合っているな!」
クオン、マリィア、映美はそれぞれ思ったことを口に出しながらも、頭部のお化けカボチャを狙って矢を次々と放つ。
しかし空中に浮いているひりょは、身軽な動きでヒョイヒョイと避けてしまう。
「くうっ……! ひりょ様には戦闘前に、『俺が身体を乗っ取られて変身してしまったら、迷わず攻撃しろ』と言われました。なので遠慮なく、炎の矢にアクティブスキルのエイミングをかけて撃たせてもらいます。例え炎の矢がこめかみに突き刺さったとしても、私は決してひりょ様のことを笑ったりはしません!」
真剣な顔つきのミリアは炎の矢を素早く数多く、ひりょ目掛けて撃っていく。
「のわぁっ! いくら『ハンターの身には安全』と言われても、炎の矢が雨のように降ってくるのはおっかねー!」
弓矢班は変身カボチャを狙っているのだが、的の近くにいる透馬は気が気じゃない。
「長い付き合いがあるひりょ様を狙い撃つなんて、心が痛みます……。ですがハンターとして成長したところを見ていただかなくては!」
「ミリアさんの言葉は感情的ですが、命中率はかなり良いですね」
クオンの言う通り、避けられ続けている三人に比べて、ミリアが撃つ矢はよくひりょに当たっている。
「そうね。頭や衣類に矢が当たっているし、良い腕しているわ」
マリィアは仮装姿のひりょがボロボロになっていくのを見て、苦く笑う。
「ちなみにひりょ君は今、心の中でどう思っているんだろう?」
映美は身体を乗っ取られたひりょのことを思い、首を傾げる。
ひりょは自分の身体の動きをコントロールすることができないらしく、ミリアが「セイッ、セイッ、セイッ!」と矢を撃つと、『ハッ、ハッ、ハァ!』と日本刀を振るっては矢を精確に斬り落としていた。
その様子を間近で見ていた透馬は、何とも言えない微妙な表情を浮かべる。
「……まあ見ている分には楽しいと言っちゃあ楽しいけどよ。流石に身体を乗っ取られ続けるのは可哀想だし、とりあえず変身カボチャを引き離すか」
透馬は地面に槍を置くと、バトルグローブにアクティブスキルの震撃をかけた。そして走って飛び上がり、ひりょの頭を覆っているお化けカボチャを殴打する。
突然の至近距離攻撃に驚いたのか、ひりょの身体は体勢を崩す。
「やっぱこの攻撃方法じゃあ傷一つつけられねーか。だが打撃は与えられる!」
これを好機と、透馬は続いてアクティブスキルの螺旋突でお化けカボチャを攻撃した。
するとブルブルッとひりょの身体が痙攣を起こし、スッポン!と頭からお化けカボチャが離れる。
変身カボチャから解放されたひりょは、透馬に身体を支えられながら地面に着地した。
「大丈夫か?」
「……ああ、すまない。乗っ取られても意識はあったんだが、身体の方がどうにも……。……それにしてもミリアは凄まじい攻撃をしてきたな。付き合いは長いけど、新たな一面を見た気がするよ」
ひりょは疲労のため息を吐きながら、体勢を整える。
「肉体のダメージは? おかしく感じるところはあるか?」
「いや、特には無いよ。……でもやっぱりと言うか、身体を乗っ取られてもあまり悪意を感じなかったな。元々あの存在には子供が関わっているし、純粋な存在なのかもしれない」
再び宙に浮いた変身カボチャを見上げながら、ひりょは眼を細めた。
ひりょの隣に立つ透馬は、腕を組んで唸る。
「う~ん。まあ悪いヤツだとは思わねぇけど、いつまでもこの世にいさせるワケにもいかねえからな。……よしっ! ここはいっちょワザと乗っ取られてみるか」
「えっ? いや、透馬、待てっ!」
透馬はひりょが止めるのを聞かず、無防備に変身カボチャへ近付いて行く。
「ひりょさんが解放されたのは良いんですけど……、何で透馬さんは炎の武器を持たずに敵に近付いて行くんでしょう?」
透馬の様子がおかしいことに気付いたクオンは、矢を射る手を止める。
続いてマリィアと映美も、矢を下ろす。
「もしかして透馬は、わざと身体を乗っ取られるつもりかしら?」
「透馬君の性格を考えると、その可能性はアリだね。でも確か彼は格闘士だったはずだけど、身体を乗っ取られた後、こっちに攻撃してこないかな?」
弓矢班の三人はふと、ミリアの意見がないことに気付いて、姿を目で探す。
するとミリアは、元の姿に戻ったひりょの所へ走って行っていた。
「ひりょ様、ご無事で何よりです!」
「うん。でも精神的なダメージが……まあいいか。それより早く、炎の鞭を拾わないと。変身カボチャに身体を乗っ取られた透馬を、解放することができないからね」
自ら変身カボチャに乗っ取られた透馬は、頭はお化けカボチャ、身体は衣類を着た猿になった。
変身した透馬を見たミリアは青ざめた顔で、咄嗟にひりょの背後に隠れる。
「ひっひりょ様、化け猿が誕生しましたよ! 新種のキメラみたいです! アレ、結界の外に出たら、ハンターに攻撃される対象になりますよ!」
「そうだね。そして恐ろしいことに、透馬は接近戦を得意としている。とりあえず距離を取るよ!」
「はいぃ!」
二人は同時に別方向へと走り出し、ひりょは途中で落とした炎の鞭を拾う。
ひりょとミリアを逃がす為にクオン、マリィア、映美が炎の矢で透馬を狙い撃つ。
しかし透馬はいきなり土畑を強く蹴り上げて、土埃で三人の視界を封じる。
「おっと。危ないですね」
「ヤダ、何も見えなくなったわ」
「服が汚れるのは勘弁だね」
三人は素早く土埃を避けたものの、その表情には険しさが滲み出ていた。
「どうやら身体を乗っ取られると、浄化の作用がある武器を毛嫌いするようですね。嫌なモノからすぐに逃げたがるなんて、子供の本能そのものです」
クオンはすぐに体勢を直すと、再び矢を放つ。
だが透馬は猿の姿になったせいなのか、先程変身したひりょよりも素早い動きで矢を避ける。
「アララ? もしかして変身した姿によって、身体能力も変わるのかしら?」
まるで踊るように矢の攻撃を避け続ける透馬の姿を見て、マリィアは眼を丸くした。
「ある意味、あの恰好であの動きをするのは羨ましいね」
心底羨ましそうに映美は、透馬の動きに感心する。
『バナナはどこだぁ! バナナが食いたいっ!』
透馬は意識が猿そのものになってきているようで、その場でドタバタと暴れだす。
「すっかり本能が猿になったみたいだね。それじゃあコレをあげてみようかな?」
映美はいつの間にか、サツマイモを一本手に持っていた。
クオンとマリィアは、映美が持つサツマイモを凝視する。
「それ、どこから持ってきたんですか?」
「もしかして、オヤツ用に買ってきたの?」
「いや。仕事をはじめる前に通りかかった倉庫の中に、サツマイモが置かれているのをたまたま見かけてね。フェイト君に聞いたら、ウィクトーリア家が雇っている農家の人が作っているんだって。美味しそうだと言ったら、くれたんだよ」
映美はニッコリ微笑むと弓矢をその場に置いて、サツマイモを手に持ったまま透馬に近付く。
「ホラ、猿の透馬君。サツマイモはどうかな?」
『サツマイモでも可』
深く頷いた透馬は映美からサツマイモを受け取ると、その場で食べ始める。
映美は透馬がサツマイモに夢中になっていることを確認すると、クオンとマリィアへ向けてウィンクをして見せた。
二人がゆっくりと静かに気配を消しながら弓矢を構えるのを見た映美は、こっそり透馬から離れる。
そしてクオンとマリィアは、一斉に矢を放った。
『ぐうっ!?』
するとお化けカボチャに二本の矢が当たり、欠ける。
「――ようやく矢が当たりました」
「食欲に負けるなんて、ホーント動物的ね」
二人は攻撃が当たったことに、内心ホッとした。
「その身体から、離れてもらおう。キミはそろそろ元いた場所へ帰る時間だよ」
ひっそりと近付いたひりょは炎の鞭を振るい、透馬の頭と身体を同時に打った。
そして透馬と変身カボチャが分離する。
「おっとっと……。世話かけたな」
透馬が人間の姿に戻って体勢を直すと、映美は炎の槍を拾い上げて投げた。
「そらっ! 透馬君、とどめは頼んだよ!」
「あいよっ!」
透馬は空中で槍を受け取り、変身カボチャへ矛先を向ける。
攻撃を立て続けに受けた変身カボチャの頭部は欠けたりヒビが入っており、そのせいで動きがフラフラと弱々しい。
「さぁて、変身カボチャよ。もう充分遊んで暴れて、満足しただろう? そろそろ元の世界に戻れ。そしてまた来年、遊びに来いよ!」
力を込めた炎の槍は、刃の部分が五十センチほどの大きさになる。
そして透馬は槍を構えて、変身カボチャの頭に炎の刃を突き刺した――。
「ふう……、変身カボチャは砂のように崩れ散ったな。何だか夕暮れ時と相まって、少し寂しい最期だぜ」
夕日を見ながら歩いている透馬は、物悲しそうにため息を吐く。
「けれどあの存在は、ようやくいるべき場所へと帰ることができたんだ。今頃、仲間達と再会を喜んでいるよ」
「そうだね。やっぱり仲間がいる場所が、一番安心すると思うな」
肩を並べながら歩いているひりょと映美は、透馬を励ますように明るく言った。
三人がクオンとマリィアの所へ行くと、二人は労いの言葉をかける。
「お疲れさまでした。ひりょさんと透馬さんの変身した姿、なかなか見ものでしたよ」
「そうね。でもいつもとあんまり変わっていなかったような気もするけど」
マリィアは二人が変身した姿を思い出すと、クスクスと笑う。
反対に、透馬とひりょは複雑な表情を浮かべる。
「俺はそんなに猿っぽいか?」
「言ってくれるね、マリィア。……ん? ミリアはどこにいるのかな?」
ひりょはミリアがこの場にいないことに気付いた。
四人も今気付いたようで、慌てて周囲を見回す。
「……おや? あそこで走り回っているのは、ミリアさんじゃないですか?」
クオンが指さした場所に、四人は視線を向ける。
「いやーん! こっちに来ないでくださぁい!」
ミリアが走り回っている姿を見て、映美は首を傾げた。
「もしかして、変身カボチャの最期は静かだったから、倒したことに気付いていないのかな?」
「あー……、映美の言う通りだと思うよ。さて、どうやって止めよう?」
ひりょが困り顔になるのを見て、クオンとマリィアは弓矢を持ち上げる。
「何なら攻撃して、足を止めましょうか?」
「大丈夫よ。身体には当てないから」
ニッコリと二人が微笑むのを見て、ひりょは背筋が凍るのを感じた。
「ミリアッ! 戦いは終わったんだ! もういい加減落ち着かないと、強制的に落ち着かされるよ!」
急いでミリアの元へ走って行くひりょを見て、クオンとマリィアは心外だという顔で肩を落とす。
「軽い冗談だったんですけどね」
「ちょっとブラックすぎたかしら?」
「……あんたらの場合、ブラックじゃなくてダークに聞こえるんだ」
「本気と冗談の区別がつきにくいんだよね」
透馬と映美は、二人から離れるように一歩後ろに下がった。
<終わり>
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/11/28 21:42:10 |
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化けカボチャをぶっ飛ばせ! 阿部 透馬(ka5823) 人間(リアルブルー)|24才|男性|格闘士(マスターアームズ) |
最終発言 2015/12/01 23:17:46 |