ゲスト
(ka0000)
【闇光】ロッソ露払い。高度150
マスター:馬車猪

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 4日
- 締切
- 2015/12/03 12:00
- 完成日
- 2015/12/06 19:16
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
人類はサルヴァトーレ・ロッソの前線投入を決断した。
たとえ相手が歪虚王2体だろうが、少なくとも負けることだけはないと思われた。
●現実は厳しく
「皆さんのご想像の通りです」
集まったハンターの前で士官が説明を始めていた。顔色は酷く悪い。
「地球の技術の粋を集めた戦艦ではありますが、戦艦でしかないのです」
戦艦すなわち燃料を大量消費する巨大機械。
クリムゾンウェスト風に表現すると、少し動くだけでも貴重なマテリアルを大量消費する最悪燃費超兵器である。
「皆さんにお願いしたいのは進撃路の確保です」
ハンターズソサエティ本部の一室に、畳大の3Dディスプレイが複数浮かび上がった。
1つはロッソの現在地から歪虚王の現在地を含む地図。複数の予定経路候補が赤い線で記されている。
1つは予定経路の1カ所を拡大した詳細地図。小山に近い丘と谷が連続する、ゲリラ戦にはもってこいの地形だ。
そして最後の1つに、地表から百数十メートルに浮かぶ大型歪虚が映っていた。
「通称エアエレメンタルです。回避能力に優れ、装甲が厚く、何より弓でも当てることが難しい高度に浮かんでいるため、これまで人類から攻めることはほとんど無かったそうです」
しかし今は違う。
これを避けて遠回りの経路を選択すると、膨大な量のマテリアルが余計に消費されることになる。最悪、歪虚王との戦闘中にロッソが燃料切れになりかねない。
「CAMを最大8体貸し出します。可能な限り早期に、これら歪虚を撃滅して頂きたい」
画面の中で、汚れた緑の炎が揺れている。
その画像に重なる形で、過去の記録から判明した情報が列記されていく。
不定形の浮遊歪虚。
移動速度は通常時10秒あたり6メートル。最大で10秒あたり36メートル。
攻撃手段は射程50メートルの風属性魔法攻撃のみ。攻撃頻度は平均的な歪虚の倍。威力はCAMの盾で受ければ無効化出来ると思われる。
「極めて厄介な敵です」
ディスプレイの中の歪虚は、風に吹かれるだけでなく自らの意思で巧みに動いていた。
「今回貸し出すCAMであれば、200メートルの距離で50パーセントの弾を目標に届けることができますが」
そのうちの9割を回避されてしまう可能性が高い。
残る1割も表面の守りに威力の大部分を吸収されてしまう可能性が極めて高い。
「もう、どうすればよいのか……。皆さんの腕と頭脳に頼るしかないのが現状です」
額に浮かんだ脂汗を、士官が白いハンカチでぬぐう。
このままでは話が進まないと判断し、部屋に集められたハンターが小声で作戦会議を開始した。
「どうする?」
「複数方向から射撃を浴びせて当て易くするとか……」
「地表近くまで地表近くまで誘き寄せた後、生身の熟練者が突っ込んで仕留める?」
「ねえ、ここ変じゃない?」
1人が指摘し、残る全員がディスプレイの下端を見つめる。
下向きの風が吹く。
エアエレメンタルが地表まで数十メートルまで降下すると、荒れ果てた地面から薄茶色の骸骨が生えた。
1体2体ではない。
風化した骨が散らばる荒野に強力な歪虚が接近した結果、刺激された負のマテリアルが凝って形を為し、骨の軍勢が現れたのだ。
「多い、な」
半径50メートルの円内に、スケルトンが20体以上、1つの意思に統率され動き出していた。
「スケルトンを攻撃したら……多分上に回り込まれて風刃が降ってくる」
「無視して上のエレメンタルを撃てばスケルトンにブースターを狙われかねない、と」
「CAMにしがみつかれても危険だぞ。重量が増えれば回避も飛距離も落ちる」
どうやらリアルタイム映像だったらしい。
士官は生気の失せた顔で目を見開き、ハンター達の了解を得た上で部屋の外へ這いずるように出て行った。
皆無言だ。
新たな、今度は小型の3Dディスプレイが現れる。
そこには通常の依頼より優遇された金銭報酬と、CAMおよびCAM装備を喪失しても参加者に賠償を求めない旨が明記されていた。
たとえ相手が歪虚王2体だろうが、少なくとも負けることだけはないと思われた。
●現実は厳しく
「皆さんのご想像の通りです」
集まったハンターの前で士官が説明を始めていた。顔色は酷く悪い。
「地球の技術の粋を集めた戦艦ではありますが、戦艦でしかないのです」
戦艦すなわち燃料を大量消費する巨大機械。
クリムゾンウェスト風に表現すると、少し動くだけでも貴重なマテリアルを大量消費する最悪燃費超兵器である。
「皆さんにお願いしたいのは進撃路の確保です」
ハンターズソサエティ本部の一室に、畳大の3Dディスプレイが複数浮かび上がった。
1つはロッソの現在地から歪虚王の現在地を含む地図。複数の予定経路候補が赤い線で記されている。
1つは予定経路の1カ所を拡大した詳細地図。小山に近い丘と谷が連続する、ゲリラ戦にはもってこいの地形だ。
そして最後の1つに、地表から百数十メートルに浮かぶ大型歪虚が映っていた。
「通称エアエレメンタルです。回避能力に優れ、装甲が厚く、何より弓でも当てることが難しい高度に浮かんでいるため、これまで人類から攻めることはほとんど無かったそうです」
しかし今は違う。
これを避けて遠回りの経路を選択すると、膨大な量のマテリアルが余計に消費されることになる。最悪、歪虚王との戦闘中にロッソが燃料切れになりかねない。
「CAMを最大8体貸し出します。可能な限り早期に、これら歪虚を撃滅して頂きたい」
画面の中で、汚れた緑の炎が揺れている。
その画像に重なる形で、過去の記録から判明した情報が列記されていく。
不定形の浮遊歪虚。
移動速度は通常時10秒あたり6メートル。最大で10秒あたり36メートル。
攻撃手段は射程50メートルの風属性魔法攻撃のみ。攻撃頻度は平均的な歪虚の倍。威力はCAMの盾で受ければ無効化出来ると思われる。
「極めて厄介な敵です」
ディスプレイの中の歪虚は、風に吹かれるだけでなく自らの意思で巧みに動いていた。
「今回貸し出すCAMであれば、200メートルの距離で50パーセントの弾を目標に届けることができますが」
そのうちの9割を回避されてしまう可能性が高い。
残る1割も表面の守りに威力の大部分を吸収されてしまう可能性が極めて高い。
「もう、どうすればよいのか……。皆さんの腕と頭脳に頼るしかないのが現状です」
額に浮かんだ脂汗を、士官が白いハンカチでぬぐう。
このままでは話が進まないと判断し、部屋に集められたハンターが小声で作戦会議を開始した。
「どうする?」
「複数方向から射撃を浴びせて当て易くするとか……」
「地表近くまで地表近くまで誘き寄せた後、生身の熟練者が突っ込んで仕留める?」
「ねえ、ここ変じゃない?」
1人が指摘し、残る全員がディスプレイの下端を見つめる。
下向きの風が吹く。
エアエレメンタルが地表まで数十メートルまで降下すると、荒れ果てた地面から薄茶色の骸骨が生えた。
1体2体ではない。
風化した骨が散らばる荒野に強力な歪虚が接近した結果、刺激された負のマテリアルが凝って形を為し、骨の軍勢が現れたのだ。
「多い、な」
半径50メートルの円内に、スケルトンが20体以上、1つの意思に統率され動き出していた。
「スケルトンを攻撃したら……多分上に回り込まれて風刃が降ってくる」
「無視して上のエレメンタルを撃てばスケルトンにブースターを狙われかねない、と」
「CAMにしがみつかれても危険だぞ。重量が増えれば回避も飛距離も落ちる」
どうやらリアルタイム映像だったらしい。
士官は生気の失せた顔で目を見開き、ハンター達の了解を得た上で部屋の外へ這いずるように出て行った。
皆無言だ。
新たな、今度は小型の3Dディスプレイが現れる。
そこには通常の依頼より優遇された金銭報酬と、CAMおよびCAM装備を喪失しても参加者に賠償を求めない旨が明記されていた。
リプレイ本文
●
コクピットでウーナ(ka1439)が覚醒した。
操縦桿を握る白い手に、赤い幾何学模様が走り無機質に光る。
「お待たせ。半年ぶりだね」
鼻より上はヘッドマウントディスプレイで隠されている。
形が整い過ぎ、作り物めいた印象も受ける唇が笑みの形に歪んだ。
『予備弾薬の積み込みを完了しました。いつでも出られます』
外部から通信が届く。
HMD越しに、CAMから離れて行く整備兵が見えた。
「じゃあ、いこうか」
了解を1クリックで伝え、ウーナは後方確認の後ブースターを始動させた。
秒に満たない時間で最高速に到達する。
常人なら視界が薄くぼやけたかもしれない。
しかしウーナはもとよりCAMの適正がある。その上覚醒しハンターとしても鍛えている。
意識を失わないのは当然で思考能力を鈍らせることもなかった。
「まずいな」
ウーナ機の右方10メートル。柊 真司(ka0705)の機体が速度と高度を完全に同期させて飛んでいた。
機導師として鍛えに鍛えた真司にとって、今のCAMは一種の拘束具ですらある。
出撃前に彼と熟練整備兵数人がCAMを彼にあわせようとしたのだが、参考にするデータも少なく調整がろくに出来なかった。
魔導エンジン搭載型デュミナスの調子自体は素晴らしい。彼の能力を十全に発揮できないという一点を除けば最高と評してもよいほどだ。
「嫌な予感がするぜ」
最大問題は敵味方の状況だ。
ブースターを使うと結構先行していたはずの仲間を追い抜かしてしまう。
そして進行方向の空に漂う大型歪虚が1体、明らかにCAMの接近に気づいた様子で高度を上げつつあった。
「随伴との合流を待たずに仕掛ける」
「了解」
真司機とウーナ機が、前進を続けながら左右に分かれた。
枯れ果てた凸凹の地面を飛んで通過。エアエレメンタルを左右から挟み込む位置の、平坦で安定した地面に着地してスナイパーライフルを構える。
自動での照準はウーナにとっては高速で、真司にとってはじれったくなるほど遅い。
2人が同時に引き金を引く。真司の眉間に深い皺が寄る。
直径数メートルの炎が揺れて、2発の105ミリ弾が左右を掠めて空に消えた。
「今ので外れた?」
ウーナの声に怒りと感情が混じる。
真司には何が起こったか理解出来ていた。
この歪虚、真司の生身時に迫るほど回避が巧い。
「あたしが引きつける。真司は綾瀬とタイミングをあわせて」
ウーナ機がエアエレメンタルの真下近くまで接近した。
ここまでの戦いで己が優位とでも思ったのだろう。歪虚は全力でも低速な速度で高度を下げた。
高度50メートルで風刃による攻撃がはじまる。
狙いは甘い。真司機は見切って回避もせず無傷を躱す。
そしてウーナ機は、真司機より遅く鈍い動きで回避を試み、直撃を受けかけて辛うじてシールドで防いだ。
歪虚の体が舌なめずりをするように揺れた。
命中精度を増すためにさらに速度を落とし、ウーナ機との距離を詰め、今度こそウーナを機体ごと切断しようと風を繰り出した。
「助かったわ」
戦場南端で、白金 綾瀬(ka0774)は安堵の息を吐いていた。
後方から順次送られてくる風速、風向き、地形の情報により狙いをつけ易くなってはいる。
だがウーナが引きつけていなければ当たる確率はせいぜい2割程度だったろう。それほど敵の回避能力は高い。
「ここまでお膳立てされてはね」
操作は半自動とはいえ動作を指示し適切な刻を見極めるのは乗り手の仕事だ。
地球で積み上げた軍人としての経歴と、クリムゾンウェストで磨いた猟撃士としての腕が、CAMには推測もできなかったタイミングを綾瀬に示した。
引き金に触れた指をCAMが感知する。
105ミリの銃口が歪虚の真下を示した瞬間、銃弾が銃身を通過し空へと飛び立った。
ウーナ機がわざとよろめく。真司がガトリングガンで猛射を行い、回避するための空間を奪って歪虚を自発的に降下させる。
105ミリの弾丸が到着する。
移動中かつ攻撃中である、無防備なエレメンタルの側面から反対側までを撃ち抜いた。
「目標の回避能力低下。総攻撃推奨」
全体に通信を飛ばしつつ引き金を引く。
数十年あるいは数百年間ぶりの直撃打が、エアエレメンタルの体以上に精神に深手を負わせた。
故に回避の動きが雑になる。CAM達の咄嗟の射撃でも命中率7割を声、狙い澄ました綾瀬機からの一撃は2発目3発目と全て当たっていく。
「時間との勝負ね」
リロード操作。エレメンタルが退却が移ると判断して予想進路上に向け引き金を引く。
105ミリが吼える。
逃走に移った歪虚に着弾し、これまで以上の打撃を与えて炎の勢いを弱める。
「スキルが使えれば楽なのにね」
「同感だ。運動強化では威力が上がらないからな」
真司機の動きは出発時点より切れがある。30ミリは威力はそのままで命中率が1割程度上がっている。
「機導師って何なのか、良く分からなくなってきたぜ」
着弾する。終わってみれば呆気なく、大型歪虚は薄れてこの世から消えた。
●
スケルトン7体分の骨を宙に舞わせながら、榊 兵庫(ka0010)は東の戦場をちらりと見た。
「次の機会があれば、俺も魔導型の乗り心地を試してみた方が良さそうだな」
CAM対エアエレメンタルの戦いは、思った以上に時間がかかっていた。
かかった時間を有効活用はできている。
南端の歪虚の護衛スケルトンを倒し、魔導バイクへ北へ移動しもう1体が呼び出した護衛を攻撃。
既に半分以上を打ち倒し、エアエレメンタルの頭に相当する部位に血を上らせていた。
バイクのエンジンが軽快な音を出す。
兵庫とバイクが5メートル前に出た直後、無色の刃が寸前まで彼等のいた場所を通過した。
「汚れた精霊もどきよ。どうする?」
人間無骨で自分の肩を叩き、上を見上げてにやりと笑った。
汚れた炎が勢いを増す。
黒々と発光し、冷たく凍えた刃を振りまき、兵庫に確実に当てられる位置へ降下していく。
エアエレメンタルが激しく揺れた。
わずかに遅れて重い音が大気を震わせる。
「ナイスショット」
兵庫が通信機越しに賛辞を送る。
「へへっ。兵庫さんもナイス誘導だよ」
小高い丘の陰に陣取るデュミナスの中で、ロイ・J・ラコリエス(ka0620)が得意げに笑っていた。
エレメンタルの体積が急速に減り、その分密度が急激に上がっていく。
「見え見えっ」
シールド、と印字されたボタンを思い切り押す。
デュミナスの盾の扱いは甘く見て並程度だけれども、右の操縦桿で向きを、左の操縦桿で機体の位置を調節することで、武術家に相応しい動きを獲得する。
色のない刃が吹きつけ盾の前に蹴散らされた。
ブースターが起動する。
CAMはすぐには動けない。接近するスケルトンは兵庫が槍を振って蹴散らし、空からの風刃はシールドを巧みに操り寄せ付けない。
「いくよ!」
デュミナスが飛ぶ。体が揺れてシートに押しつけられる。
揺れから飛行途中に射撃は出来ないと判断し、ロイは飛行途中にスナイパーライフルからアサルトライフルに持ち替えさせる。
「追いかけっこなら得意だもんね」
歪虚の脇をすり抜け180度反転して着地。
歪虚は限界まで密度を増し、刃の如き体となってロイに向かおうとした。
そんな攻め一辺倒の隙だらけの動きを見逃すほどハンターは甘くはない。
南から真司と綾瀬の弾丸が飛来し確実に歪虚の体を削った。
「発射ぁ!」
向きと発射のタイミングは完璧だった。
しかし非覚醒者用プログラムはロイの速さに追いつけず、30ミリ弾を歪虚の頭上にばらまいて終わる。
「銃と投げナイフは流石に違うかー、ちょっと難しい?」
CAMの練られたインターフェースとロイの柔軟な頭脳はようやくかみ合う。
機体が軽くステップを踏んで後退し、怒りと威力増し増しの風刃を回避した。
「やれやれ。歪虚にここまで舐められるとはね」
兵庫がアクセルを踏む。
エンジンが猛り、非舗装の大地をタイヤがしっかり踏み締める。
形の良い岩に速度を落とさず近づき、岩をジャンプ台として利用し飛び出した。
「そら!」
兵庫が槍を繰り出す。
兵庫ほどの武人にしては狙いの甘い振りだけれども、頭に血が上り動きが単純になった歪虚には十分過ぎる。
高速で槍が旋回する。
歪虚の巨体が仇となる。横と奥行きがそれぞれ2メートルはある傷が出来た。
エアエレメンタルが震え、力が抜けて薄く広がる。
「とどめ!」
ロイ機がライフルを突き出し引き金を引いて、30ミリの豪雨が汚れた炎を吹き消すのだった。
●
エルフの少女がアサルトライフルを構えた。
銃の全長と少女の身長差は20センチしか無く、構えるだけで精一杯、撃てば転倒し大怪我確定だと思われた。
風が吹く。
刃が風を裂く音は風にかき消されて聞こえず、回避困難な風刃が少女の細い首に迫る。
星輝 Amhran(ka0724)は片手を離して鉄扇を取り出し、広げて風の刃を真芯で捉えた。
逞しい木の幹を断てるはずの刃が、完全に粉砕され呪力の飛沫と共に飛び散った。
なお、鉄製扇子という重量物を振っているのにライフルは髪の毛1本分すら動かない。
「今回は珍しくあさるとを持ち出したのじゃ。降りてくるまでいつまでも待ってやるぞ?」
鉄扇で口元を隠し上品に笑う。
彼女を乗せるゴースロン種、Amhranに成金と名付けられた勇壮な馬が、地上より迫るスケルトン隊との距離を慎重に測っていた。
銃声が鋭く響く。バイクの音が急速に近づいてくる。
「いい馬持ってるじゃねぇか。上の汚ぇのは任せていいか?」
少し遅れて到着したシガレット=ウナギパイ(ka2884)が、純白の魔導拳銃を周囲に向け歯を剥き出し笑った。
「上のものは不調法のようでの。妙な風が飛んできたら避けるか防ぐかするのじゃぞ」
言葉も声も上品に、歪虚に対する侮辱を込める。
「丁度いい。敵がスケルトンだけなら退屈で欠伸が出るからなァ」
軽くアクセルを踏む。身の軽いスケルトンの全力移動より襲い。だがバイクに追いつく前に頭蓋を撃って一撃で仕留めるので問題ない。
撃ち尽くすと素早く再装填。数メートルの距離にまで迫った骸骨の背骨に当てて消滅させる。
「戦慣れしてんのか?」
スケルトンが固まっていればセイクリッドフラッシュで一網打尽に出来る。
しかしスケルトンは1体ずつばらばらに襲ってくるので、スキル温存のため銃を使うことになっていた。
「すぐに来るんだが……どうしたもんかね」
彼がスケルトンを牽制して足止めし、エルフ少女が挑発に専念して歪虚を地表40メートルまで誘き寄せたとき、南の空の一点が眩しく輝いた。
傷も汚れもない装甲が煌めく。
「一度のったことはあるが……いつ見ても壮観で美しい外形じゃのぅ♪」
Amhranは大胆にも大型歪虚に背を向けCAMを眺めていた。
歪虚が不気味に発光、強烈な力を込めてエルフ少女の背中に風刃を放つ。
「きゃぁ♪」
楽しげな声だ。成金が予め主に指示されていた通りに歩いて刃を躱す。
「怖いのぅ」
可愛らしく震えて見せると、空の歪虚が憎悪と憤怒を撒き散らしながらAmhran目がけて一直線に直進した。
シガレットの確保した土地にCAMが着地する。
ガトリングガンを腰だめに構えるまで1秒もかからない。
「頼むぞ、相棒」
須磨井 礼二(ka4575)が引き金を引く。
ガトリングによる近距離高頻度射撃は敵に逃れる余裕を与えず、そもそも目標はエルフ少女に気をとられているので回避も防御も難しい。
だから、歪虚が反応したのは単なる不運によるものだ。
汚れた炎が正六面体に自らを縮める。30ミリ弾の雨が偶然に平面を掠めて虚空に消える。
反撃が来る。エアエレメンタルは怒りに震え、CAMの足下を守るシガレット目がけて風の刃を連発した。
CAMがシールドを構えて腰を落とす。
シガレットの姿を巨大な盾が隠す。風刃がシールド表面を1ミリ削って粉砕された。
「借りが出来たな」
スケルトン隊が一斉に動き出す。CAMごと囲んで叩くか押し包んで足止めするつもりだ。
「即刻返してやらァ!」
シガレットが神罰銃「パニッシュメント」を高々と掲げる。
心を燃やし続ける炎の一部を、法具でもある銃を通して捧げ光の爆発を引き起こす。
骸骨の下半身が消え地面に落ちる。
骸骨の右半分が消え地面に転がる。
面での攻撃は避けづらい。残存20のうち生き残ったのはたった3体だった。
「魅せてくれるのぅ」
成金が大型歪虚の周囲を駆ける。歪虚を挟んでCAMの反対側に達したところでAmhranの気配が増す。
濃いマテリアルが黒龍の幻影を映し出し、その幻影に紛れ込む形で黒々とした極細線が延び、エアエレメンタルにまで到達した。
歪虚が下がる。当たれば核の位置を探られかねないという判断故の行動だった。
「シガレットさんよ、骨は任した」
CAM用ガトリングガンは対単体に特化しているため弾幕でまとめて薙ぎ払うのは難しい。
だから礼二はシガレットを信じてエアエレメンタルのみに集中する。
地表から1メートルまで追い込まれた炎に対し、成金とその主に当てないよう角度を調整した上で弾をばらまき始める。
外れる。外れる。当たってもかすり傷程度。また外れ反撃の風刃が来てシールドで受ける。
地味で苛酷な戦いだ。もっともLH044戦時と比べれば遊技に等しい苛酷さでしかない。
「着弾今!」
ウーナ機の105ミリが歪虚の中心近くに直撃。汚れた炎が密度を維持できずに大きく広がる。
礼二は脚部をより安定している地面へ移動し、銃口の向きをより当たり易い向きへ微修正し、力み無く引き金を引き続ける。
薄れた炎を30ミリ弾が削る。
削れ削れて、濃度が半分になったところで唐突に炎が消えた。
歪んだ宝珠の外見の何かが落ちて、地面に当たって粉微塵に果てた。
いつの間にか、歪虚の気配が完全に消えていた。
●
「もう出た? 無茶をする……」
兵庫は軍用通信機片手に溜息をついていた。
彼が所有するトランシーバーでは後方どころか戦場の端にも届かないので、一時的に貸し出された高価かつ大型の機材だ。
「分かった。バイクや騎馬から後退を開始する。CAMの受け入れ準備を進めてくれ」
通信機をバイクに固定し直してエンジンをかける。
そんな彼の背後を守る位置に、礼二のCAMが戦闘状態を維持して立っている。
HMDに、地平線近くを飛ぶ船が拡大表示された。
「疾くゆけ、紅の救世主!」
サルヴァトーレ・ロッソを見送った後、礼二はマテリアル消費を抑えるためブースターを使わず帰路についた。
コクピットでウーナ(ka1439)が覚醒した。
操縦桿を握る白い手に、赤い幾何学模様が走り無機質に光る。
「お待たせ。半年ぶりだね」
鼻より上はヘッドマウントディスプレイで隠されている。
形が整い過ぎ、作り物めいた印象も受ける唇が笑みの形に歪んだ。
『予備弾薬の積み込みを完了しました。いつでも出られます』
外部から通信が届く。
HMD越しに、CAMから離れて行く整備兵が見えた。
「じゃあ、いこうか」
了解を1クリックで伝え、ウーナは後方確認の後ブースターを始動させた。
秒に満たない時間で最高速に到達する。
常人なら視界が薄くぼやけたかもしれない。
しかしウーナはもとよりCAMの適正がある。その上覚醒しハンターとしても鍛えている。
意識を失わないのは当然で思考能力を鈍らせることもなかった。
「まずいな」
ウーナ機の右方10メートル。柊 真司(ka0705)の機体が速度と高度を完全に同期させて飛んでいた。
機導師として鍛えに鍛えた真司にとって、今のCAMは一種の拘束具ですらある。
出撃前に彼と熟練整備兵数人がCAMを彼にあわせようとしたのだが、参考にするデータも少なく調整がろくに出来なかった。
魔導エンジン搭載型デュミナスの調子自体は素晴らしい。彼の能力を十全に発揮できないという一点を除けば最高と評してもよいほどだ。
「嫌な予感がするぜ」
最大問題は敵味方の状況だ。
ブースターを使うと結構先行していたはずの仲間を追い抜かしてしまう。
そして進行方向の空に漂う大型歪虚が1体、明らかにCAMの接近に気づいた様子で高度を上げつつあった。
「随伴との合流を待たずに仕掛ける」
「了解」
真司機とウーナ機が、前進を続けながら左右に分かれた。
枯れ果てた凸凹の地面を飛んで通過。エアエレメンタルを左右から挟み込む位置の、平坦で安定した地面に着地してスナイパーライフルを構える。
自動での照準はウーナにとっては高速で、真司にとってはじれったくなるほど遅い。
2人が同時に引き金を引く。真司の眉間に深い皺が寄る。
直径数メートルの炎が揺れて、2発の105ミリ弾が左右を掠めて空に消えた。
「今ので外れた?」
ウーナの声に怒りと感情が混じる。
真司には何が起こったか理解出来ていた。
この歪虚、真司の生身時に迫るほど回避が巧い。
「あたしが引きつける。真司は綾瀬とタイミングをあわせて」
ウーナ機がエアエレメンタルの真下近くまで接近した。
ここまでの戦いで己が優位とでも思ったのだろう。歪虚は全力でも低速な速度で高度を下げた。
高度50メートルで風刃による攻撃がはじまる。
狙いは甘い。真司機は見切って回避もせず無傷を躱す。
そしてウーナ機は、真司機より遅く鈍い動きで回避を試み、直撃を受けかけて辛うじてシールドで防いだ。
歪虚の体が舌なめずりをするように揺れた。
命中精度を増すためにさらに速度を落とし、ウーナ機との距離を詰め、今度こそウーナを機体ごと切断しようと風を繰り出した。
「助かったわ」
戦場南端で、白金 綾瀬(ka0774)は安堵の息を吐いていた。
後方から順次送られてくる風速、風向き、地形の情報により狙いをつけ易くなってはいる。
だがウーナが引きつけていなければ当たる確率はせいぜい2割程度だったろう。それほど敵の回避能力は高い。
「ここまでお膳立てされてはね」
操作は半自動とはいえ動作を指示し適切な刻を見極めるのは乗り手の仕事だ。
地球で積み上げた軍人としての経歴と、クリムゾンウェストで磨いた猟撃士としての腕が、CAMには推測もできなかったタイミングを綾瀬に示した。
引き金に触れた指をCAMが感知する。
105ミリの銃口が歪虚の真下を示した瞬間、銃弾が銃身を通過し空へと飛び立った。
ウーナ機がわざとよろめく。真司がガトリングガンで猛射を行い、回避するための空間を奪って歪虚を自発的に降下させる。
105ミリの弾丸が到着する。
移動中かつ攻撃中である、無防備なエレメンタルの側面から反対側までを撃ち抜いた。
「目標の回避能力低下。総攻撃推奨」
全体に通信を飛ばしつつ引き金を引く。
数十年あるいは数百年間ぶりの直撃打が、エアエレメンタルの体以上に精神に深手を負わせた。
故に回避の動きが雑になる。CAM達の咄嗟の射撃でも命中率7割を声、狙い澄ました綾瀬機からの一撃は2発目3発目と全て当たっていく。
「時間との勝負ね」
リロード操作。エレメンタルが退却が移ると判断して予想進路上に向け引き金を引く。
105ミリが吼える。
逃走に移った歪虚に着弾し、これまで以上の打撃を与えて炎の勢いを弱める。
「スキルが使えれば楽なのにね」
「同感だ。運動強化では威力が上がらないからな」
真司機の動きは出発時点より切れがある。30ミリは威力はそのままで命中率が1割程度上がっている。
「機導師って何なのか、良く分からなくなってきたぜ」
着弾する。終わってみれば呆気なく、大型歪虚は薄れてこの世から消えた。
●
スケルトン7体分の骨を宙に舞わせながら、榊 兵庫(ka0010)は東の戦場をちらりと見た。
「次の機会があれば、俺も魔導型の乗り心地を試してみた方が良さそうだな」
CAM対エアエレメンタルの戦いは、思った以上に時間がかかっていた。
かかった時間を有効活用はできている。
南端の歪虚の護衛スケルトンを倒し、魔導バイクへ北へ移動しもう1体が呼び出した護衛を攻撃。
既に半分以上を打ち倒し、エアエレメンタルの頭に相当する部位に血を上らせていた。
バイクのエンジンが軽快な音を出す。
兵庫とバイクが5メートル前に出た直後、無色の刃が寸前まで彼等のいた場所を通過した。
「汚れた精霊もどきよ。どうする?」
人間無骨で自分の肩を叩き、上を見上げてにやりと笑った。
汚れた炎が勢いを増す。
黒々と発光し、冷たく凍えた刃を振りまき、兵庫に確実に当てられる位置へ降下していく。
エアエレメンタルが激しく揺れた。
わずかに遅れて重い音が大気を震わせる。
「ナイスショット」
兵庫が通信機越しに賛辞を送る。
「へへっ。兵庫さんもナイス誘導だよ」
小高い丘の陰に陣取るデュミナスの中で、ロイ・J・ラコリエス(ka0620)が得意げに笑っていた。
エレメンタルの体積が急速に減り、その分密度が急激に上がっていく。
「見え見えっ」
シールド、と印字されたボタンを思い切り押す。
デュミナスの盾の扱いは甘く見て並程度だけれども、右の操縦桿で向きを、左の操縦桿で機体の位置を調節することで、武術家に相応しい動きを獲得する。
色のない刃が吹きつけ盾の前に蹴散らされた。
ブースターが起動する。
CAMはすぐには動けない。接近するスケルトンは兵庫が槍を振って蹴散らし、空からの風刃はシールドを巧みに操り寄せ付けない。
「いくよ!」
デュミナスが飛ぶ。体が揺れてシートに押しつけられる。
揺れから飛行途中に射撃は出来ないと判断し、ロイは飛行途中にスナイパーライフルからアサルトライフルに持ち替えさせる。
「追いかけっこなら得意だもんね」
歪虚の脇をすり抜け180度反転して着地。
歪虚は限界まで密度を増し、刃の如き体となってロイに向かおうとした。
そんな攻め一辺倒の隙だらけの動きを見逃すほどハンターは甘くはない。
南から真司と綾瀬の弾丸が飛来し確実に歪虚の体を削った。
「発射ぁ!」
向きと発射のタイミングは完璧だった。
しかし非覚醒者用プログラムはロイの速さに追いつけず、30ミリ弾を歪虚の頭上にばらまいて終わる。
「銃と投げナイフは流石に違うかー、ちょっと難しい?」
CAMの練られたインターフェースとロイの柔軟な頭脳はようやくかみ合う。
機体が軽くステップを踏んで後退し、怒りと威力増し増しの風刃を回避した。
「やれやれ。歪虚にここまで舐められるとはね」
兵庫がアクセルを踏む。
エンジンが猛り、非舗装の大地をタイヤがしっかり踏み締める。
形の良い岩に速度を落とさず近づき、岩をジャンプ台として利用し飛び出した。
「そら!」
兵庫が槍を繰り出す。
兵庫ほどの武人にしては狙いの甘い振りだけれども、頭に血が上り動きが単純になった歪虚には十分過ぎる。
高速で槍が旋回する。
歪虚の巨体が仇となる。横と奥行きがそれぞれ2メートルはある傷が出来た。
エアエレメンタルが震え、力が抜けて薄く広がる。
「とどめ!」
ロイ機がライフルを突き出し引き金を引いて、30ミリの豪雨が汚れた炎を吹き消すのだった。
●
エルフの少女がアサルトライフルを構えた。
銃の全長と少女の身長差は20センチしか無く、構えるだけで精一杯、撃てば転倒し大怪我確定だと思われた。
風が吹く。
刃が風を裂く音は風にかき消されて聞こえず、回避困難な風刃が少女の細い首に迫る。
星輝 Amhran(ka0724)は片手を離して鉄扇を取り出し、広げて風の刃を真芯で捉えた。
逞しい木の幹を断てるはずの刃が、完全に粉砕され呪力の飛沫と共に飛び散った。
なお、鉄製扇子という重量物を振っているのにライフルは髪の毛1本分すら動かない。
「今回は珍しくあさるとを持ち出したのじゃ。降りてくるまでいつまでも待ってやるぞ?」
鉄扇で口元を隠し上品に笑う。
彼女を乗せるゴースロン種、Amhranに成金と名付けられた勇壮な馬が、地上より迫るスケルトン隊との距離を慎重に測っていた。
銃声が鋭く響く。バイクの音が急速に近づいてくる。
「いい馬持ってるじゃねぇか。上の汚ぇのは任せていいか?」
少し遅れて到着したシガレット=ウナギパイ(ka2884)が、純白の魔導拳銃を周囲に向け歯を剥き出し笑った。
「上のものは不調法のようでの。妙な風が飛んできたら避けるか防ぐかするのじゃぞ」
言葉も声も上品に、歪虚に対する侮辱を込める。
「丁度いい。敵がスケルトンだけなら退屈で欠伸が出るからなァ」
軽くアクセルを踏む。身の軽いスケルトンの全力移動より襲い。だがバイクに追いつく前に頭蓋を撃って一撃で仕留めるので問題ない。
撃ち尽くすと素早く再装填。数メートルの距離にまで迫った骸骨の背骨に当てて消滅させる。
「戦慣れしてんのか?」
スケルトンが固まっていればセイクリッドフラッシュで一網打尽に出来る。
しかしスケルトンは1体ずつばらばらに襲ってくるので、スキル温存のため銃を使うことになっていた。
「すぐに来るんだが……どうしたもんかね」
彼がスケルトンを牽制して足止めし、エルフ少女が挑発に専念して歪虚を地表40メートルまで誘き寄せたとき、南の空の一点が眩しく輝いた。
傷も汚れもない装甲が煌めく。
「一度のったことはあるが……いつ見ても壮観で美しい外形じゃのぅ♪」
Amhranは大胆にも大型歪虚に背を向けCAMを眺めていた。
歪虚が不気味に発光、強烈な力を込めてエルフ少女の背中に風刃を放つ。
「きゃぁ♪」
楽しげな声だ。成金が予め主に指示されていた通りに歩いて刃を躱す。
「怖いのぅ」
可愛らしく震えて見せると、空の歪虚が憎悪と憤怒を撒き散らしながらAmhran目がけて一直線に直進した。
シガレットの確保した土地にCAMが着地する。
ガトリングガンを腰だめに構えるまで1秒もかからない。
「頼むぞ、相棒」
須磨井 礼二(ka4575)が引き金を引く。
ガトリングによる近距離高頻度射撃は敵に逃れる余裕を与えず、そもそも目標はエルフ少女に気をとられているので回避も防御も難しい。
だから、歪虚が反応したのは単なる不運によるものだ。
汚れた炎が正六面体に自らを縮める。30ミリ弾の雨が偶然に平面を掠めて虚空に消える。
反撃が来る。エアエレメンタルは怒りに震え、CAMの足下を守るシガレット目がけて風の刃を連発した。
CAMがシールドを構えて腰を落とす。
シガレットの姿を巨大な盾が隠す。風刃がシールド表面を1ミリ削って粉砕された。
「借りが出来たな」
スケルトン隊が一斉に動き出す。CAMごと囲んで叩くか押し包んで足止めするつもりだ。
「即刻返してやらァ!」
シガレットが神罰銃「パニッシュメント」を高々と掲げる。
心を燃やし続ける炎の一部を、法具でもある銃を通して捧げ光の爆発を引き起こす。
骸骨の下半身が消え地面に落ちる。
骸骨の右半分が消え地面に転がる。
面での攻撃は避けづらい。残存20のうち生き残ったのはたった3体だった。
「魅せてくれるのぅ」
成金が大型歪虚の周囲を駆ける。歪虚を挟んでCAMの反対側に達したところでAmhranの気配が増す。
濃いマテリアルが黒龍の幻影を映し出し、その幻影に紛れ込む形で黒々とした極細線が延び、エアエレメンタルにまで到達した。
歪虚が下がる。当たれば核の位置を探られかねないという判断故の行動だった。
「シガレットさんよ、骨は任した」
CAM用ガトリングガンは対単体に特化しているため弾幕でまとめて薙ぎ払うのは難しい。
だから礼二はシガレットを信じてエアエレメンタルのみに集中する。
地表から1メートルまで追い込まれた炎に対し、成金とその主に当てないよう角度を調整した上で弾をばらまき始める。
外れる。外れる。当たってもかすり傷程度。また外れ反撃の風刃が来てシールドで受ける。
地味で苛酷な戦いだ。もっともLH044戦時と比べれば遊技に等しい苛酷さでしかない。
「着弾今!」
ウーナ機の105ミリが歪虚の中心近くに直撃。汚れた炎が密度を維持できずに大きく広がる。
礼二は脚部をより安定している地面へ移動し、銃口の向きをより当たり易い向きへ微修正し、力み無く引き金を引き続ける。
薄れた炎を30ミリ弾が削る。
削れ削れて、濃度が半分になったところで唐突に炎が消えた。
歪んだ宝珠の外見の何かが落ちて、地面に当たって粉微塵に果てた。
いつの間にか、歪虚の気配が完全に消えていた。
●
「もう出た? 無茶をする……」
兵庫は軍用通信機片手に溜息をついていた。
彼が所有するトランシーバーでは後方どころか戦場の端にも届かないので、一時的に貸し出された高価かつ大型の機材だ。
「分かった。バイクや騎馬から後退を開始する。CAMの受け入れ準備を進めてくれ」
通信機をバイクに固定し直してエンジンをかける。
そんな彼の背後を守る位置に、礼二のCAMが戦闘状態を維持して立っている。
HMDに、地平線近くを飛ぶ船が拡大表示された。
「疾くゆけ、紅の救世主!」
サルヴァトーレ・ロッソを見送った後、礼二はマテリアル消費を抑えるためブースターを使わず帰路についた。
依頼結果
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MVP一覧
- 青竜紅刃流師範
ウーナ(ka1439)
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/11/29 15:02:00 |
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相談卓 シガレット=ウナギパイ(ka2884) 人間(クリムゾンウェスト)|32才|男性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2015/12/03 04:37:30 |