• 闇光

【闇光】走れ魔導トラック! ご飯のために

マスター:馬車猪

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/12/05 12:00
完成日
2015/12/08 17:26

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 後方もまた戦場だった。
 陸路と海路で各国各地から膨大な量の物資が送り込まれてくる。
 食糧、医薬品、清潔な容器に密封された水に、陣地建設のための木材や麻袋。
 それらは大型の倉庫複数を満たすほど集まり、しかし前線に送り出される量は限られてしまっていた。
「班長、聖堂戦士団から問い合わせが」
 若いエルフが申し訳なさそうに報告する。
「引っ込んでろと伝えろ!」
 作業服が似合う元地球連合軍人は、遠くからでも分かるほど太い青筋を浮かべていた。
「で、ですが、自分で担いで持っていくとまで言われては」
 金壺眼がエルフの青い目を覗き込む。
 秀麗な線を描く頬に、ひと筋の汗が伝った。
「徒歩で運べる量ではどうにもならんと言ってやれ」
 鼻を鳴らして倉庫の出入り口へ向かう。
 エルフは深い安堵のため息をついてから、うんざりた顔でトランシーバーの操作を開始した。
「糞、大型なんて贅沢は言わん。せめて1トントラックが使えれば」
 倉庫から出る。
 コンクリにもアスファルトにも覆われていない平地が遠くまで続き、覚醒者を運んできたらしい馬が数十頭、のんびりと草をはんでいた。
「すみません、責任者の方ですか?」
 上から下までクルセイダーにしか見えない少女が駆け寄ってくる。
「聖堂教会から派遣されたクルセイダー10人の代表です。あの」
 老人の顔に、笑みのはずなのに迫力のありすぎる表情が浮かぶ。
 イコニア・カーナボン(kz0040)が説教から解放されるまで、十数分の時間が必要だった。

●魔導トラック、発進?
 集積所の片隅に人だかりで出来ていた。
 椅子、ハンドル、アクセル、ブレーキ、複数の小型ディスプレイを組み合わせただけの運転シミュレーターだ。
 安っぽいビープ音が響き、見るからに熟練のクルセイダーが1人、肩を落として椅子から立ち上がった。
「こいつも駄目か」
 集積所責任者が鼻を鳴らす。
 イコニアが肩を震わせ半歩離れる。
「少佐、我々が運転を行います」
 班長の同国人らしき軍人が2人駆け寄ってきた。
「儂は民間人だ。ふん、ヴォイドがうろちょろする危険地帯に、CAMも無しに非覚醒者が入り込めば餌になるだけだ」
 金壺眼に凝視され、軍人達は反論できずにうつむいた。
「そもそもお前等、あの妙ちきりんなトラックもどきを運転できるのか」
 節くれ立つ指が示す先には、大部分が地球製パーツなのに妙に古めかしく見えるトラックが停められていた。
 貴重きわまりない化石燃料を大食いするエンジンを取り外し、馬力は劣るが鉱物性マテリアルで動く魔導エンジンを組み込んだ、名付けて魔導トラック。
 魔導エンジンを複数取り付けたため積載可能量が減少し、エンジンの性能が低くて加速性能が低く、実験室段階のエンジンなので熟練者で無い限りエンストが多発する超問題児だ。
「あの、よければ私達が馬で……」
 おそるおそる発言するイコニアに、責任者がスマホ状のディスプレイを突きつける。
 そこには歪虚王の攻勢によってキャンプを追い出された後、安全地帯に逃げずゲリラ戦を続ける人々の現在地が表示されていた。
「最低でも水と食糧、可能なら毛布とテント、熱い食い物を届けてやれたら最高だな?」
 確認できるだけでも60人。
 これだけ多いと、馬を使った輸送では間に合わない。
 イコニアは、額に汗を浮かべて一歩下がってしまった。
 どうしても運転手を確保できず、ハンターズソサエティに依頼がされるのはそれから1時間後のことであった。

●疲労する最前線
 銃声が連続して響き、デュラハンの胸、腹、膝に弾痕が刻まれた。
 腹の穴の1つの奥が鈍く光る。
「そこか!」
 東方出身の舞刀士が刀を突き入る。硝子が割れるときに似た音が聞こえ、デュラハンの全身が急速に薄れて消えていった。
「隠れ家まで撤退するぞ」
「なあ、今日の飯は……」
「板きれっぽいパンに臭ぇ水1杯だ」
 猟撃士と舞刀士が顔を見合わせ、同時に深いため息をついた。
 双方熟練ハンター級の凄腕ではあるのだが、無補給で戦っていると肉体以上に精神が疲労する。
「酒飲みたい」
「俺は甘ったるい菓子がいいな」
 2人してとぼとぼ歩き始める。
「急いでこの場から離れるわよそこの馬鹿2人」
 女性魔術師が水筒を投げつける。
「ああもう埃っぽい。風呂なんて贅沢言わないからタオルで体拭きたいわ」
 戦友の尻を蹴るようにして、数キロ先にある蛸壺へ慎重に移動していった。

リプレイ本文


 エンジン始動から1分でマニュアル操作に切り替えた。
 未舗装で荒れ放題の土地はトラックに優しくない。
 運転席では、エルバッハ・リオン(ka2434)が小刻みにハンドルを動かしアクセルの踏み込みを目まぐるしく変えている。
 出来るだけ平たい土地を選んで少しでも荷台の揺れを減らすための運転であり、リアルブルーのトラック乗りが見たら絶賛したはずだ。
 回避しようのない幅数十メートルの段差に達し、エルバッハの豊かな胸と車体が大きく揺れた。
 ふにゃ、ぐへっ、という呻きが荷台から聞こえてくる。イコニア・カーナボン(kz0040)を含む教会から着た聖導士は安全ベルトも何も無い状態で詰め込まれているので、軽い打ち身で済めば幸運かもしれない。
 そんな魔導トラックに並走する馬の上で、ボルディア・コンフラムス(ka0796)が眼を細めて遠くを見ていた。
「見えねぇな」
 目的地には何もないように見える。
 余程うまく擬装しているのか、あるいは予想以上に酷い状況なのか。
 迷いは近づいてくるスケルトンを見つけて消えた。
「荷物の悲鳴に釣られてきたか? ハッ、俺が綺麗に掃除してやるよ」
 馬に前進を命じ、冷静な戦士の瞳で騎馬のセリス・アルマーズ(ka1079)に合図を送る。
 セリスもボルディア同様熟練のハンターだ。言葉を交わすこともなくそれぞれの役割を理解し、駆け出した。
 スケルトンの数は15。
 目立つトラックに気づいた小集団がボルディアに集められたからだろう。隊列も組めずに中途半端に密集し、一部は彼女を迂回しトラックを目指そうとしている。
「今更びびるか!」
 前進して振り下ろす。
 桁外れの膂力でハルバードが高速移動。分厚い頭蓋を粉砕し胸部の骨全てを盛大に潰す。
 だがまだ14体残っている。
 数体はトラックに向かい、残る10と少しがボルディアの前と左右と斜め後ろから襲いかかる。
「引っかかってくれて」
 ボルディアが朗らかに笑う。発達した白い犬歯が日差しに照らされ禍々しく輝く。
「ありがとうよ」
 マテリアルの飛沫が炎の如く得物と彼女を覆う。
 旋回するハルバードはまさに暴風。あるスケルトンは肩から反対側の腰までで切断され、またあるスケルトンは半身を潰され地面に転がった。
「右後ろからも来る。2体」
 エルバッハがサイドミラーを見て警告する。
 ファイアーボール1発でオーバーキル出来る相手ではあるけれど、今ブレーキを踏むとタイヤが地面を捉え損ねて車体が横転しかねない。
「任せなさい」
 セリスの馬が踵を返してスケルトンのペアの前に立ちふさがり。
「快適生活のお届け、邪魔させないわよ!」
 彼女を中心に光の幕が広がり、触れた骸骨が破片も残さず消滅した。
「こっちは俺が処理すっから速度を上げていいぜ」
 ボルディアは気楽に声をかけてから1体ずつ丁寧にスケルトンを粉砕した。


 クラクションが激しくなった。
「Hey! Good Boy! アイスクリームトラックの到着だ!」
 ハンドルとマイクを握ってご機嫌なのはlol U mad ?(ka3514)。
 伴奏はトラックの天上に立つPetra Rodenwald(ka5833)の銃撃だ。
「無茶な依頼よね」
 凝った装飾のドレスを風に揺らしながら、Petraは慣れた手つきで弾倉に補給する。
 頻繁にスケルトンが出現する少し離れればデュラハンまで徘徊している危険地帯に、一瞬ハンドル操作を失敗しただけで大事故必至の試作トラック。
 そんな過酷な依頼でも皆明るかった。
「Wassup?」
 前方数十メートルの地表から光の線が空へ延びる。
 死角から急降下してきたワイバーンが、錬金術で強化された銃火によって数割削られる。
 強力な歪虚相手に凄まじい攻撃と戦果だ。だがそれを為した男女は傷だらけで流血しているものすらいる。
「天使よりも一足先にお迎えだ。喜べ、コッチの天使は白衣も着くぜ!」
 lolは軽い言動を崩さない。
 ブレーキを絶妙に操作してハンドルを切って、車体を安定させたままドリフトを決め、塹壕の手前1メートルで見事に停車した。
 トラック後部から白衣の少年少女が降り立ち目を回してその場にうずくまる。
 塹壕から飛び出した老軍人複数が確保し安全地帯に運び込み、若年聖導士が吐き気を堪えて友軍にヒールをかける。
「ああもう……」
 敵も味方も行き当たりばったりだ。
 守りの堅い場所に不用意に突っ込んで来る敵、新しい技術を理解していない地元に地元の兵を理解出来ていない地球の軍。
「ビールもってこーい」
 Petraはとりあえず悩みを脇に置いて引き金を引く。
 ばらまかれた銃弾はワイバーンの鼻先と左右を掠めて回避のための空間を潰す。某警察の暴徒鎮圧用射撃法の応用だ。
「やるなぁねーちゃん!」
「どこの軍……えっ、ドレス? ウェイトレス? メイド?」
 薄汚れた男女が大型歪虚を銃弾で墜として剣で止めを刺した。一部Petraを見て戸惑っているような気もする。
「風呂だ、飯もあるぞ!」
 lolが操縦席から飛び降り荷台の防水シーツを外す。
 湯煙をあげる特大ビニールプールと、沸騰するほど熱せられた鍋3つから立ち上る煙3筋が、渾然一体となり戦場へ広がっていった。
 Petraはトラックの上に立ったままだ。彼女が警戒することで元からの人員を警戒の任務と緊張から解放させるため、地味で過酷な見張りを受け持っていた。
「責任者は?」
 ルシェン・グライシス(ka5745)が重装馬を降りて呼びかけると、ワイバーンの首を落とした重武装騎士が手を振った。
「私です。協力に感謝し……」
 本人は隠そうとしているのに明らかに隠せていない視線を自分の胸に感じる。ルシェンは淑やかに微笑んで、人肌に温められたミネラルウォーター入りペットボトルを投げ渡した。
「先程の連絡から変化がないなら休憩に入りなさい。意地を張る場所は考えなくてはね?」
 危地で剥き出しになった本能を強く感じる。目の前の騎士だけではなく元からこの場にいた全員からだ。
「間に合わせかもしれませんが」
 特大鍋を荷台から下ろしていく。傷病者向けの1つは負傷者担当の少年少女に任せ、ルシェンは残る2つを器用に下ろして運んで地面に置いた。
「少しでも食べて栄養を取って下さい」
 皿を渡してお玉で中身を注ぐ。
 比較的余裕がある面々には濃い味付けのジャガ芋とお肉満載スープ、消耗が激しい面々にはあっさり味だけれど精のつくポタージュだ。
「責任者じゃなきゃあんたを押し……んんっ、口説いてたぜ」
 人心地ついた騎士が軽口を叩き、改めてルシェンを見て初な少年であるかのように赤面した。
 若い貴婦人であると同時に女性として完成された肢体。浮かべた表情は聖導士に相応しいのに魔性に近い妖艶な雰囲気がある。
 騎士1人の性癖を変えたことを自覚しつつ、ルシェンは疲れた男女を癒すために水と食料を振る舞い続けた。


 リーラ・ウルズアイ(ka4343)はトラックの天井に腰掛けワンドを弄んでいる。
 一見さぼっているように見えるが実際はその逆だ。高所から警戒し、今別の地点にいるPetraと同じように皆を緊張から解放している。
 だからだろう。
 女性魔術師と少年舞刀士が、いちゃいちゃしながら風呂が設置されたテントへ入っていった。
「面白いわね」
 手間をかけずに短時間で設置および加熱可能なお風呂に、種類豊富で不味くないレーション、その他色々珍しい物多数が運び込まれている。里から出てきた甲斐があった。
「お酒が豊富なら完璧なんだけど」
 冗談か本気か分からない飄々とした態度でつぶやき、振り向いた。
「どうしたの?」
 イコニアが挙動不審だった。
「あ、はい、いえ……」
 物資の一覧が書かれた書類とペンを手にしているのに何も書き込めていない。
「男女のあれこれに興味が湧きましたか」
 エルバッハがリーラに目礼してイコニアに近づき、リーラはイコニアを任せて警戒を再開した。
「あの、ええっと」
 エルバッハが一覧表に書き込んでいる間も様子が変わらない。
 イコニアが動かない間に仕事を片付けて、エルバッハは改めてイコニアに向き直った。
「慌ただしくて挨拶も出来ませんでしたね。お久しぶりです、イコニアさん。お会いするのは、去年の教会での合コン依頼の時以来でしょうか」
 イコニアの表情が引き締まり、綺麗な姿勢で頭を下げた。
「あのときはお世話になりました。聖堂教会だけだと確実に失敗したでしょう」
 当時を当時を思い出すと懐かしさと冷や汗が同時に浮かんでしまう。
「本当に……」
 イコニアがまたそわそわし出す。
 エルバッハが視線を追ってみると、危険地帯でセリスが暴れている所だった。
 立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花、戦う様はウォーモンガー。
 人形の方がよほど感情がある瞳で周囲を見渡し、歪虚を見つけると機敏に反応して殺しにかかる。
 骸骨を範囲攻撃でまとめて排除し守りの堅さと回復力を活かしてデュラハンを食い止めるさまは、極まった聖堂戦士でも見なかった振りをするほど獰猛だ。
 特に、虚ろな瞳と「紅茶……コウチャ……」とときおり呟く様は、可及的速やかに記憶から消したい。
「元気そう」
 エルバッハの端的なコメント。
「元気そうじゃないです! うわ、うわぁ」
 元々この場にいた覚醒者がデュラハンの背後から刺して戦闘自体は終了した。
 が、セリスの様子は相変わらずでイコニアの混乱も相変わらずだ。
 エルバッハは肩をすくめてリーラと位置を交代。連絡用のトランシーバーを起動し双眼鏡を使って警戒を引き継いだ。
 セリスがいる方向から見て反対に、薄汚れた白と黄色を複数見つけた。
 スケルトンが匍匐前進している。
「油断できませんね」
 リーラが見逃したのは不運故、エルバッハが見つけたのは少し運と道具のおかげだ。
 気づかないふりをして術の射程まで誘き寄せ、彼女は火球1つでスケルトン隊1つの処理を完了する。
「セリスさん、お酒でも切れたのじゃない?」
 リーラは焼酎の封を開けて振ってみる。
 テントから出てきた、体の芯から温まった男女と目が会う。
 渡すとものすごく感謝された。風呂と酒と人との触れ合いは戦いで疲弊した心によく効くらしい。
「違います! セリスさんは素晴らしい方です。きっと大変な事情が……」
 リーラは聞き流しつつ暖かな飲み物をつくる。
 熱い紅茶のブランデーを垂らすのではなく、度数50近い酒に紅茶の風味をつけただけの逸品だ。
 戦場から悲鳴が上がった。
 驚愕する戦友を放置してセリスが猛加速し、リーラが差し出すグラスを抱え込んで口をつけた。
「セリスさん、きついお酒体に悪いですっ」
 体力のない司祭にセリスを止められるはずがなかった。
「まあまあ。セリスさんもお酒が飲める年齢だし」
 普通の紅茶を勧めると、力尽きた司祭は素直にティーカップを受け取った。
「そういえば、合コンを主催したんだって? 若いのに積極的だね。コイバナで面白い話があったら酒の肴にきかせてくれない?」
 イコニアの口から紅茶が噴き出した。正気が回復したセリスがもったないとつぶやく。
「興味は、あ、ありますけど」
 リーラが清潔なハンカチで口を拭ってくれたのにも気づかない。
「いいなと思ったひとくらいいるんじゃない?」
 塹壕に運び込まれる物資とこの場で消費される物資をメモしながら、リーゼは面白い玩具をいじる。
 物資は過不足なく消費されている。少々遊んでも全く問題ない。
「そ、そうですね、ええっと」
 イコニアが記憶を探り始めた。
 昨日も仕事、先週も仕事だ。色気づいたのは確か、合コンのときだけだった。
「わ、私、仕事で婚期を逃すタイプ?」
 粘り着く汗が、イコニアの顔をじっとりと濡らしていた


 4発目の爆発が荒野を明るく照らした。
「まだ動くか」
 ヴィルマ・ネーベル(ka2549)は疾走するトラックの上で麗しくも力強く立っている。
 爆風が薄れて巨大な人型が現れる。
 威圧感はCAMに近いほどある大型デュラハンが、一歩進むごとに地面に大穴を開けこちらに向かって来る。
「っと」
 トラックが横に滑って停車。
 遠景が高速で動いて平衡感覚がわずかに乱れた。
「トラックとは、なかなかスリルのある乗り物じゃな」
 透き通る水色の髪には汚れ一つなく、実用的かつ淑女の相応しい装備にも乱れはない。
「それともロルの運転がアクロバティックすぎるのかえ?」
 マテリアルが静かに勢いを増す。
 膨れあがる気配に前髪が押し上げられ、歪虚による古傷と強烈な光を湛えた蒼眼が露わになる。
「ここで消えるが良い。逃げても1匹残らず消滅させるだけじゃがの」
 五度目の爆発が両胸腰腹太股の装甲を粉砕する。
 装甲の内側は空洞だ。こぶし大の濁った宝玉が1つ、何も無い空間をゆっくりと行き来していた。
「あれね」
 Petraはバイクを停めブレーキをかける。
 デュラハン退治の方法は既に理解している。復活を防ぐためには存在の核を破壊するしか無い。
「制限時間有りの射的なんてね」
 全身のマテリアルを五感に集中する。
 この状態では危なっかしくて移動できないが、その分鋭敏になった知覚が命中精度を引き上げる。
「これでどう?」
 引き金にそっと触れた。
 3つの弾丸が直進する。2つが逸れて鎧の背中部分にめり込み、最後の1発が玉にめり込み無数の亀裂を生じさせた。
 澄んだ音が響く。デュラハンの巨体と玉が同時に薄れ、同時に消えた。
「夢と希望をいっぱいつめて拠点にお届けじゃな」
 ヴィルマが運転席の上で警戒を続けつつリモコンを操作。
 荷台の覆いが引き上げられて、大量の矢弾と予備の武器がぎらりと光った。
 さっぱりした身なりの男女が手際よく下ろして複数の塹壕へ運び込んでいく。
「持ってきた物資が少しでも役に立てば幸いじゃ」
 真面目な顔でコメントする間も警戒は怠らない。
 ワイバーンの姿は遠く、デュラハン率いるスケルトン隊も到着には時間がある。
「ありがとよねーちゃん!」
「戦果を期待してね」
 皆、頼もしい笑顔を残してそれぞれの持ち場へ戻っていった。
「これが最終便です。あなたも乗り込んで」
 ルシェンが傷だらけの闘狩人を引きずりトラックの後ろまで連れてきた。
「私はっ」
「体を治してから考えなさい」
 荷台のクルセイダーが闘狩人を引きずり上げた。
「あーあー、ゴ乗車になりましてありがとーございマスってか? くっへへへ♪ 乗り心地は最悪だぜ、しっかり捕まってな!」
 残った兵の思いも下がらざるを得ない兵の思いも理解して、その上で軽快にアクセルを踏む。
「元気でな!」
 トラックと入れ替わりで陸空から歪虚が襲来し、ハンターにより回復強化された拠点群が猛烈に反撃して歪虚に消耗を強いる。
 数日経っても歪虚の攻勢は終わらず、激しい戦が続いている。

依頼結果

依頼成功度成功
面白かった! 5
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧


  • リーラ・ウルズアイka4343

重体一覧

参加者一覧

  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムス(ka0796
    人間(紅)|23才|女性|霊闘士
  • 歪虚滅ぶべし
    セリス・アルマーズ(ka1079
    人間(紅)|20才|女性|聖導士
  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオン(ka2434
    エルフ|12才|女性|魔術師
  • 其の霧に、籠め給ひしは
    ヴィルマ・レーヴェシュタイン(ka2549
    人間(紅)|23才|女性|魔術師
  • Two Hand
    lol U mad ?(ka3514
    人間(蒼)|19才|男性|猟撃士

  • リーラ・ウルズアイ(ka4343
    エルフ|15才|女性|魔術師
  • 最狂の信仰を
    ルシェン・グライシス(ka5745
    エルフ|22才|女性|聖導士
  • 缶ビールマイスター
    Petra Rodenwald(ka5833
    人間(蒼)|18才|女性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談用スレッド
エルバッハ・リオン(ka2434
エルフ|12才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2015/12/05 10:14:43
アイコン 質問卓
ボルディア・コンフラムス(ka0796
人間(クリムゾンウェスト)|23才|女性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2015/12/04 09:29:05
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/12/01 06:20:40