• 深棲

【深棲】船上の少年少女達

マスター:神宮寺飛鳥

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/08/08 12:00
完成日
2014/08/15 11:26

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 帝国における唯一の軍学校、イルリヒト機関。
「入りなさい」
 校長室の扉を叩く音に、アンゼルム・シュナウダーは静かに声をかけた。
「失礼します!」
 4つの声が重なり、扉が開く。
「こーちょーせんせー、何か用なのか?」
 大きな声で尋ねた少女の頭を、2mほどの巨体に長い黒軍服を引っ掛けた青年が軽く小突く。
「アホ、どんな挨拶だ。エルガー・ウンターゲーエン一等兵、参りました」
「ベルフラウ二等兵、参りましたっ!」
 元気よく背を伸ばしたのは、十五か六かといった歳の頃の長い栗色の髪の少女。
「ゲルト・デーニッツ二等兵、参りました」
 その横で冷静な表情を崩さず口を開いたのは、少女よりも二つ三つ年上の少年であった。
「はーい。ハラーツァイ二等兵、参りました!」
 最後に少女の声が響き渡ったところで、校長アンゼルムは頷いて口を開く。
「錬魔院から、マテリアル観測装置の実験要請が入っている。今回は、この装置による歪虚の探知、その範囲や精度についての確認をしたいとのことだ」
「マテリアル観測装置、ですか? 私達にもちゃんと扱えるのですか?」
 ぱちりと瞬きして問うベルフラウに、校長は大丈夫だと頷いた。
「操作自体は行えないが、起動は錬魔院の職員が行ってくれる。探知については誰にでもわかるように、負のマテリアルの接近とその強度をランプとブザーで知らせる仕組みを組み込んだそうだ。今回は、その機能の実地実験となる」
 そこまで聞いて、ゲルトが真剣な顔で眉を寄せ、眼鏡をくいと上げる。
「そこまでの装置となると、かなりの大きさとなりそうですが」
「その通りだ。だが今回は問題がないようにしている」
 その言葉に首を傾げた生徒達を、校長はゆっくりと見渡して言った。
「今回のマテリアル観測装置は、船に設置してある。今回の演習は、錬魔院からの実地実験と共に、同盟領で発生している狂気の歪虚が紛れ込んでいる可能性の高い、ベルトルード近海の警備も兼ねる」
「そういうことか。歪虚が現れたら、装置を……というか、船を守って戦わなきゃならないんだな?」
 得心したようにエルガーが頷いた。その通りだと校長が首肯する。
「……船沈んだら、魔導装置壊れるべな?」
 割と大きな声で呟いたハラーツァイに、一同がぎょっとした顔を向ける。
 その中で校長は平静にそうだね、と言った。
「精密な装置だそうだから、海水には耐えられないだろう。そもそも重さもかなりあるから、運んで来ることは出来ないだろうね」
「そ、それを4人で警備するんですか!? 大変です、もし装置を壊してしまったら弁償を要求されて借金生活で、それはそれはとってもひもじいことに……」
「落ち着け、ベルフラウ」
 両手で頭を抱えて言い募るベルフラウに、ゲルトが表情を変えぬままツッコミを入れ、エルガーが口を開く。
「もうハンターに依頼を入れてあるんだろう? それが今回の狂気の歪虚に対する帝国の方針だし、ハンターとの協力体制は校長の方針でもある」
「その通り。その推察力を、そろそろ卒業して帝国軍で生かしてもらえると嬉しいんだがね」
 校長の言葉に、エルガーはふいと視線を逸らした。
 既に22歳。卒業試験に通らぬのではない、一度も受けていないのだ。
 そんなエルガーの様子に小さく溜息を洩らした校長は、机の上に置いてあった封書を差し出す。
「これは、帝国ユニオンAPVへの紹介状だ。タングラム女史に渡せば、依頼してあるハンター達と合流させてもらえるだろうし、ハンターズソサエティの転移門を使えるように話を付けてある」
 頷く4人の生徒達を見渡し、校長は再び口を開いた。
「エルガー、それにハラーツァイ。君達とチームを前回までチームを組んでいた2人は、命を取り留めたがまだ回復には遠い。ゆえに、ベルフラウ、ゲルト、今回はこの4人でチームを組んでもらう――では、無事に演習を終え帰還を果たすように。検討を祈る!」
「はい!」
 姿勢を正した4人の声が揃い、校長室に響いた。

 ベルトルードは帝国の南東の端にある、自由都市同盟との貿易拠点ともなっている港町である。
 今回の任務は、その近海の警備でもあった。
 依頼を請けたハンター達と4人のイルリヒト生徒達が乗った船は、平穏に海を進んでいる。
「ふむ、まだ装置に動きはないか……」
 興味深げに装置を覗き込むハンター達と共に、ゲルトが装置のランプを確かめて呟く。
「あー、にしてもこの辺はやっぱあっちーなぁ……」
 船べりでは、シャツの襟元をぱたぱた煽いで風を入れるハラーツァイ。
「……ところでベルフラウ、なぜ水着なんだ」
「え? 水中戦に特化した装備と聞きましたので! え、というか私、また水に入らないんですか!?」
「わからん。出会う歪虚次第だろうな」
 そう言いながら腕組みをしたエルガーは、長袖の黒軍服の下に黒の防具を着けている。
 ベルフラウが再び口を開きかけたところで――突如、けたたましい警報と共にランプが光り輝く!
「うわっ!?」
 思わず一番近くにいたハンター達とゲルトが、一瞬耳を塞ぐ。
「かなり大きい反応だ。大きさか、数か……」
 そう呟いた瞬間、水中からいくつもの半透明の影が飛び出した。
「あれはっ……」
「くらげ?」
 緊迫感に満ちたハンター達の声に、ぽへっとしたハラーツァイの声が重なる。
 海水を滴らせながらふわふわと空中を漂う――確かに見た目は非常にクラゲである。
「数が多いな……1体の強さはわからんが」
「あの」
「やるしかないよね」
「あの……」
「ベルフラウ、戦闘だ」
「あ、はい。あの……えっと……」
「どうした?」
 ようやくベルフラウの訴えに耳を傾けたハンターに、ぱっと顔を輝かせたベルフラウが慌てて海の下を指す。
「たぶん、下にもいます! 大きいのが!」
「!?」
 船べりにいたハンター達が、下を覗き込む。――いた。
 直径8mほどのクラゲが、ふわぁりふわぁりとゆらめき――徐々に、海面に近付いてくる!
「あれ、ぶつかったら船やばいんじゃ?」
「まずいな」
 そう言った瞬間、海中から海面を貫き空へと駆け抜ける閃光。
 発生源は明らかであった。水中のクラゲの触手の一本が、まだバチバチと光を放っている。
「……ぶつからなくてもやばいです?」
「そう、だな」
 思わず顔を見合わせる全員。
 ハンターの一人が、口を開く。
「……二手に分かれよう。半数は浮いてるクラゲからの船の防衛、半数は下の大クラゲを戦闘で引き付け、倒す」
「あっじゃあ私行きま」
「俺とハラーツァイが下に行こう。ベルフラウとゲルトは水中では武器の特性が殺される」
 海に飛び込む二人を横目にゲルトは得物を取り出し手の中でくるりと回し構える。
「装置を防衛する。ベルフラウ、教練の成果を示せ」
 聖機剣を展開させるベルフラウ。水中から飛び出した無数のクラゲ目指し、二人は同時に駆けだした。

リプレイ本文

「海中より敵多数接近! 総員戦闘配置!」
 慌ただしく配置に着く帝国兵達の中、十六夜(ka0172)は怪訝な表情を浮かべる。ふわふわと宙に浮かぶクラゲが船の周囲に浮かび上がってきたからだ。
「クラゲのもどき……? スライムと同じで斬り甲斐が無さそうよね~。何で狂気の眷属ってこんなのばっかりなのよ~」
 多分切ってもぷるんってなるだけな気がする。ため息交じりの声にベルフラウは嬉しそうに。
「でも、なんだか美味しそうだし、ちょっとかわいいですよ!」
「それを言うならベルちゃんの方がかわいいし……美味しそうだよね!」
 水着のベルフラウの胸元を見つめるオキクルミ(ka1947)。ベルフラウは高速振動していたので、恐らく正しい意味では通じていない。
「想定はしていましたが船上での戦闘が起きるとは……。平地での戦闘とはまた違った状況ですし、何時も以上に気を入れて行かねばなりませんね」
「船は船でもサルヴァトーレ・ロッソでの戦いとはわけが違いますからね。まー、なるようになるでしょう」
 米本 剛(ka0320)に笑いかけるレイフェン=ランパード(ka0536)。同じ元軍属と言う事もあり、二人は顔見知りの仲だった。
「慣れない場所での防衛戦、油断は禁物ですよ?」
「わかってますよ。それに米本さんだって楽しそうじゃないですか」
 指摘され目を丸くする剛。確かに内心このシチュエーションに燃えていたのは事実。苦笑を浮かべ、気持ちを切り替えていく。
「マテリアル観測装置……あれを防衛すれば良いのですね?」
「ああ。クラゲ程度に装置の価値が理解できるとは思えない。奴らも積極的に狙う事はないだろうが、攻撃が向かないように留意しろ」
 ノエル・ヴァンディルス(ka2146)の質問に応じるゲルト。竜潜 神楽(ka1498)は装置を横目に眺め。
「新しい装置ですか。性能の方は気になりますが……」
「部外者の装置への接触は禁じられている」
「……つれないですね」
 かくりと肩を落とす神楽。ゲルトのマジレス具合から察するに、装置調べるのは諦めるしかないようだ。
「ベルちゃんとデーニッツ君には装置の直衛をお願いしたいんだけど、出来るかな?」
「妥当な提案だ。あんた達が装置をどこまで防衛出来るか分からない以上、俺とベルフラウが担当するべきだろう」
 眼鏡を光らせ十六夜に応じるゲルト。ベルフラウも特に異論はないようだ。
「一つ言って置く。俺達はともかく、帝国兵と連携しようとは思わない事だ。船員の大半はこの任務を快く思っていない」
「まだ話もしていないのにですか?」
「この部隊はイルリヒト機関という厄介者とハンターを同時に抱えて苛立っている。俺達もあんた達も嫌われ者だという事だ」
「ゲルトさんも同じ帝国兵さんではないのでしょうか?」
「イルリヒトと帝国軍は組織的に別物だ。まだ俺達は正式な国軍の一員ではない」
 納得したようなしないような表情の神楽。要はハンターもイルリヒト生も、軍人からすれば厄介者という事らしい。
「信用がないのは仕方ないよね、実績がないんだから。むしろはなから当てにするよりは正しい判断と思うよ」
 レイフェンの言葉にゲルトは頷く。
「話が早くて助かる。もし帝国兵と連携するつもりなら、まずは力を示せ。そして協力せざるを得ない状況を作れ。それが嫌われ者からのアドバイスだ」
「合わせてもらうんじゃなくてこっちから合わせろって事だね。ゲル君は協力してくれるの?」
「それはまだ判断できない。俺はあんた達を知らないからな」
 オキクルミにそっけなく返事をすると話は終わりと言わんばかりにゲルトはそっぽを向いた。
「見た感じ帝国兵も自分の仕事はするようだし……危険そうなら助けてあげればいいんじゃないかな?」
「そうですね。帝国兵さんの持ち場が崩れるようではこちらの負担も増えますし」
 レイフェンと神楽の言葉で大体話はまとまった。浮かび上がった多数のクラゲ達が船目がけ接近してくる。
「装置を防衛する。ベルフラウ、教練の成果を示せ」


 まずハンター達は八名の人員を二名ずつのペアに分割した。ペアで行動する事で連携密度と対応力を底上げする作戦だ。
「八百万の神々よ……聖なる光を!」
 切っ先から光の弾丸を放つ剛。ペアを組むノエルは船の淵へと走る。
「あちらには行かせません。こちらで私の相手をしていただけないでしょうか?」」
 前に出る事で注意を引き付けるノエル。クラゲは空中からレーザーを放つが、ノエルはそれを盾で弾き飛ばす。
「この程度の攻撃なら問題ありません」
「やりますな、ヴァンディルスさん。自分も負けてはいられませんね」
 盾を前にしっかりと構えたノエルへレーザーが次々に放たれるが、これを物ともせずに耐える。その隙に剛がホーリーライトを放ちクラゲを撃ち落していく。
 一方、神楽は猟銃でクラゲを狙っていた。友人のアドバイス通り偏差撃ちでクラゲを撃墜する。
「十六夜さん、私はここから援護しますので、前衛を宜しくお願いしますね」
「任されましたよ~!」
 接近するクラゲを前に構える十六夜。腰に差した刀の鍔を弾き、抜刀と同時にクラゲを両断する。その一撃はかなりの正確さでクラゲを一刀両断にした。
「確かに動きは読み辛いけど、斬れないものでもないね」
 潮風に髪を揺らしながら周囲を眺める神楽。友人も言っていた通り、この船はゆっくりだが動き続けている。
「という事は、クラゲも移動してついて来ているのですね」
「じゃあ、船を動かして突破するのは無理かな?」
 拳銃でクラゲを狙う別ペアのオキクルミが首を傾げる。船を動かしてクラゲの位置を制限できれば防衛が楽になると思ったのだが。
「船を止める事も、現場から離れすぎる事も危険だ。水中では別働隊が戦っている。彼らを見捨てる事は出来ない」
「あれ? 意外と優しいんだね、ゲル君?」
「兵士として当然の判断だ」
「まー、そりゃそうだね。何もかも助けるべきだとは言わないけど、あえて見殺しにする意味もないし」
 オキクルミとペアのレイフェンが軽く肩を竦め笑う。そして首から提げたペンダントに触れ、鋭い顔つきに変貌し銃を構える。
「必要な役割として殺せる敵は殺し守るものは守る。さて……道具の時間を始めるか」
 遠距離攻撃で迎撃してきたハンター達だが、数が多くクラゲは船に取りつきつつあった。船上ではあちこちでクラゲとの接近戦が始まっている。
「囲まれちゃってる! ボク達が走り回るから数を揃えて弾幕をお願い!」
「言われなくてもやってる! お前達は自分の仕事をしてろ!」
「ボクの出来る事は全力でやる、だから皆も助けて欲しい。奴等が敵だって事は共通でしょ?」
「勘違いするな。俺達はここまでお前達とエリート様を乗せて来ただけだ。自分の命と船さえ守れればそれでいいんだよ」
 あまりにも冷たい兵士の態度にほっぺたを膨らませるオキクルミ。
「この間の兵士はもうちょっと愛想良かったんだけどなぁ!」
「今回は俺達もいるからな」
 ゲルトはガントンファーで銃撃し、ベルフラウはホーリーライトでクラゲを攻撃する。どうやら兵士が苛立っているはイルリヒト生とも関係があるようだ。
 とはいえ船員の練度は高いのか、放っていても問題なさそうな様子だ。協力出来ないのならそれはそれで自分の戦いに集中すれば良い。
 ふわふわと動き回るクラゲは素早く、攻撃が外れる事も多い。ノエルの剣をかわし電撃で襲い掛かるクラゲ。だがノエルも防御は得意、敵を引き付け盾で時間を稼いでいる。
「自分も行きますか」
 刀を手にクラゲの集団へ襲い掛かる剛。反撃にと電流を流してくるが、剛はけろりとしている。
「この程度ならばかすり傷ですな」
 笑みを浮かべ、すかさず刀を振るう。あまり防御する事を意識しなくて良いのなら当てる事に集中できる。ノエルの場合は盾の防御に専念するので反撃に意識を割り振るのは難しいが、二人なら大量のクラゲを抑える事が出来た。
「あちこちに放電してるクラゲが居て、まるで地雷原だね」
 レーザーをかわして走る十六夜。船の上では特に何をするでもなく放電だけしているようなクラゲも見受けられるが、これがかなり邪魔だ。回避運動を制限されて当たってしまったり、クラゲに激突したりしてしまう。
 刀でクラゲを切り払う十六夜、そこへ接近する敵を神楽が猟銃で狙撃する。敵の回避能力は高いが、十六夜狙いの相手なら狙撃しやすい。
「ふふ、十六夜さんは頼りになって助かりますね」
 そんな神楽に襲い掛かるクラゲの電撃を身を挺して庇うベルフラウ。直後、ゲルトがトンファーで薙ぎ払った。
「しびびび……」
「あら? 帝国兵のお二人もありがとうございます」
「あんた達が倒れたら俺達の負担が増える」
「勿論、一カ所でも突破させる気はないですよ」
 振り返り銃を放つ神楽。あまり班にこだわり過ぎず、場合によっては別班の支援も重要だ。
「ここはボクの間合いだ。祖霊よ、導きを!」
 バトルアックスを思い切り振りぬき帝国兵狙いのクラゲを纏めて吹き飛ばすオキクルミ。逃れた個体もレイフェンが銃で撃破していく。
「お礼の一言くらいあってもいいと思うんだけどなぁ」
「仕方ないさ。それで兵士達が万全で敵を減らしてくれるなら十分ってことで」
 観測装置を背に囲むようにして戦うハンター達。装置は未だ無傷で守られていたが、やがてクラゲ達の一部が船から引き返し始めた。
「あれ? なんで戻ってくんだろう?」
 首を傾げるベルフラウ。ゲルトはハンターの間を抜けて船の淵に駆け寄ると銃撃でクラゲを撃ち落していく。
「……撃ち漏らしたか。こいつらは水中の本体の言わば子機だ。本体が劣勢になれば援護しに戻る筈。撤退する敵の追撃も意識してくれ」
 ゲルト一人では逃げるクラゲ全ては倒せなかった。水中に逃れた敵は恐らく別働隊に襲い掛かるだろう。
「逃げる相手は追撃ね。了解したよ」
 正直、逃げようとする相手を後ろから撃つ方が楽と言えば楽だ。レイフェンの銃弾を避ける事も出来ずクラゲは空中で霧散する。
「という事は、本体が倒れるまで持ちこたえればいいのね」
 刀を振るう十六夜だが、レーザー攻撃に撃ち抜かれ傷を負ってしまう。そこへ背後からベルフラウがヒールを施した。
「ありがとう~、ベルちゃん」
「回復だけは得意なんです! どんどんヒールしますね!」
「流石に数が多いと厳しいですね……」
 銃を降ろし、機導砲でクラゲを焼き払う神楽。攻撃は後衛にまで及び、神楽もダメージを受け始めていた。
「しかし敵の数も減ってきました。恐らく水中での戦闘が決着しつつあるのでしょう」
 クラゲに剣を突き刺し、引き抜きながら語るノエル。無尽蔵に思えた増援も減りはじめ、逃げようとする敵も多くなってきた。
「銃は苦手なんだけどなぁ……そうも言ってられないか」
 船から逃れようとするクラゲに照準を合わせるオキクルミ。
「古の盟約により歪虚滅ぼすべし、梟の目からは逃げられないよ」
 銃が苦手でも精霊の力があれば追撃に問題はない。真っ直ぐ逃げ帰るだけの相手に命中させるのはさほど労せず。
 ベルフラウは回復ばかりしているので、直衛はほぼゲルト一人が担当していた。ゲルトは傷を負いつつも果敢に戦い、クラゲを次々に撃破していく。
「中々の腕前ですな、デーニッツさん」
 ゲルトを回復しつつ笑いかける剛。特にゲルトは視線も向けず、小さく頭を下げた。


「やっと終わったか」
 小さく息を吐き銃をホルスターに収めるレイフェン。装置は無事に防衛出来た。敵の姿もなくなり、水中で戦っていた別働隊を回収に向かう。
「無事乗り切ったようだな」
 トンファーを腰に収め歩み寄るゲルト。レイフェンは地球式の敬礼をしつつ。
「お互い無事で何よりだね。友軍の協力に感謝します」
「俺とベルフラウだけでは装置を守り切れなかっただろう。こちらこそ感謝する」
 ゲルトはくすりとも笑わなかったが、嘘を吐いているようには見えない。その仏頂面の感謝の言葉にレイフェンは肩を竦めた。
「ベルちゃんもありがとうなのね~!」
「あっ、十六夜君ずるい! ボクもボクも!」
 左右から十六夜とオキクルミに抱き付かれ高速振動するベルフラウ。多分、食べられると思っている。
「イルリヒト機関の学生さんの実力、この目で確かめさせていただきました。流石はエリート、という所ですかな?」
「イルリヒトは錬魔院直下の特殊機関だ。それが急に師団に士官待遇で配属される。末端の兵士は良く思わないだろうな」
 剛の言葉に目を瞑り答えるゲルト。そして小さく頭を下げ。
「俺が居なければあんた達ももう少し楽に戦えただろう。身内の不手際を謝罪させてくれ」
「事情は諸所あるでしょうが、折角こうして仲間同士になれたのです。野暮は言いっこなしにしましょう」
 笑みを浮かべ、首を横に振る剛。ノエルはゲルトの手を取り、破けた服の下から覗く傷口を指差し。
「怪我をしているようですね。診せてください」
「いや、特に世話になるような事でもないが……」
 治療をするというノエルに大人しく座り込むゲルト。神楽はそこへ歩み寄り、腰を少し下ろしつつ。
「ところで、私達の実力は信用して頂けたのでしょうか?」
「ああ」
「では、装置の方を少しばかり拝見しても……」
「それとこれとは話が別だ」
 きっぱり断られ、ふてくされた顔を扇子で隠す神楽。そんな二人の様子にノエルが手を止めて笑った。
「ふああああ! 私は食べても美味しくないですよー! お腹を壊してしまいますよー!」
「え? そういう意味じゃ……」
 震えるベルフラウ。そこでオキクルミと十六夜は顔を見合わせ、僅かな間。
「……食べちゃうのよー!」
「がおー!」
「ひぃいいいいっ!」
 二人してベルフラウをいじめるのであった。
「……っと、別働隊が戻ってきたみたいだねー」
「迎えに行きましょうか」
 レイフェンの声に頷く剛。泣きながら逃げ回るベルフラウとそれを追いかける十六夜とオキクルミ。まだ何か話しているゲルトと神楽、そして治療を終えて立ち上がるノエル。
 こうして船上での戦いは終わり、水中から戻った仲間たちを迎える為、ハンター達は船の淵へ向かい歩き始めた。

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重体一覧

参加者一覧


  • 十六夜(ka0172
    人間(蒼)|20才|女性|闘狩人
  • 王国騎士団“黒の騎士”
    米本 剛(ka0320
    人間(蒼)|30才|男性|聖導士

  • レイフェン=ランパード(ka0536
    人間(蒼)|22才|男性|闘狩人

  • 竜潜 神楽(ka1498
    エルフ|12才|女性|機導師
  • 答の継承者
    オキクルミ(ka1947
    エルフ|16才|女性|霊闘士

  • ノエル・ヴァンディルス(ka2146
    人間(紅)|23才|女性|闘狩人

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依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/08/02 23:55:29
アイコン 相談卓
米本 剛(ka0320
人間(リアルブルー)|30才|男性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2014/08/08 00:43:46