ゲスト
(ka0000)
【紅空】Scramble
マスター:蒼かなた

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/12/07 07:30
- 完成日
- 2015/12/15 06:21
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●空からの脅威
クリムゾンウェストの各国の中で一番北に位置する辺境。
数ヵ月前に行われた聖地奪還作戦により大きな被害を受けながらも、長年歪虚に奪われていた地を取り戻すことに成功した。
しかし、歪虚の大部分は退いたとは言え未だに野良歪虚の数も多く、人々が安心して住むにはまだ難しいのが現状だ。
その為にも部族会議の下で結成された討伐部隊が日夜辺境の歪虚討伐を行い、真に失われた土地を取り戻すべく奮闘している。
「囲め! 走り回って攪乱しろ!」
年配の戦士の号令を受け、若い戦士達が一斉に馬を駆る。
今回の目標は巨人1体。それに対してこちらは精鋭の戦士10人だ。これは過剰戦力ではない。覚醒者でもない彼らにとっては寧ろ少ないくらいだ。
しかし彼らは部族の中でも選りすぐりの精鋭だ。巨人を相手にするのもこれが初めてではない。
馬の機動力を活かして巨人を瞬く間に取り囲み、全方位から矢を射かける。それで怯んだところで戦士の数名が接近すると巨人の手足に縄を掛け、馬を走らせる勢いのままにそれを引く。
あとは横転した巨人の首筋に先ほどの年配の戦士が自身の身の丈ほどある斧を振り下ろし、それでお終いだ。
「今回も楽勝だったな!」
「ああ、巨人だろうが何だろうが掛かってこいってんだ!」
帰路の最中で若い戦士達は意気揚々と先ほどの戦闘を振り返り、そして強気な言葉を繰り返している。
ただこの隊を率いる隊長の年配の戦士はただ黙ってそれを聞いていた。
ここはまだ歪虚の出る競合地域だ。警戒を解くわけにはいかない。とは言え、自分も若い頃には彼らと似たようなものだったので、それを諫めるようなことはしなかった。
そして聖地リタ・ティトを有するジグウ連山の傍に走る街道に入ったところで、突然彼らの頭上に影が差す。
隊長も警戒は怠っていなかった。右手に山、左手には草原と見通しは悪くない立地で敵の姿など影も見えていなかった。
ただ想定外だったのだ。まさか敵が空から襲ってくるだなんて。
「ワイバーンだぁ!?」
1人の若い戦士が叫ぶ。それとほぼ同時に上空から落ちてきた真っ赤な炎の塊が地面にぶつかり、地面をえぐりながら周囲のあらゆるものを吹き飛ばす。
空を見上げれば10近い影が空を縦横無尽に飛んでいた。戦士達は弓を構えて矢を射かけるが、その矢は上空へと舞い上がったワイバーンに届く前に失速してそのまま地面へと落ちていく。
そして当たってもいない攻撃へのお返しとばかりに、何発もの火炎球が地上目掛けて降り注いだ。
●緊急事態
開拓地『ホープ』にその報告が届いたのはつい先ほどのことだった。
聖地リタ・ティト周辺の巡回を行っていた部隊によって発見されたのはワイバーンの群れであった。
それも普通のワイバーンではなくフレイムワイバーンと呼ばれる炎を吐く上位種で、地上に降りることなく上空から獲物を丸焼きにしてそれから食事を始めるという厄介な習性を持っている。
飛び道具がなければ太刀打ちできないのは当然として、亜種とは言え竜に数えられるその鱗は非常に硬くただの矢玉では弾かれてしまって効果が薄い。
そういう理由もあり過去にはたった1匹を相手に1つの部族が壊滅したという話もあるほどなのである。それが群れで現れたとなれば一大事だ。
そしてそのワイバーンの群れが今、帰還途中であった歪虚討伐部隊を襲っていることも知らされていた。
報告によると歪虚討伐部隊はひたすら逃げまどっていたらしく、しかし不思議とただその場から離脱はしようとしなかったらしい。
「それはあれですよ。そんなの引き連れて逃げてきたらえらいことになっちゃいますからね」
そんな報告の最中、これまでこの場にいなかったものの声が部屋の中に響いた。
皆がそちらに視線を向ければ、そこにはよれた白衣を着た若い男――トーマスの姿があった。
「練習機を飛ばす前にご挨拶をと思って来たんですけど、何やらお取込み中のようで」
へらりと笑いながらそう言うトーマスにはまるで緊張感がなく、部族会議を取り仕切る上役達もその態度には怪訝な表情を浮かべた。
「ところで君。そのワイバーンは今どこにいるのかな?」
「えっ? あっと、現在はジグウ連山沿いの街道付近……丁度この辺りですが」
トーマスの問いに報告を行っていた戦士は広げられていた地図の一点を指さしながら答えた。
それを確認したトーマスは口元に手を当てながらふむと一つ唸り、それから独り言でも零すように話し出す。
「この場所だと……これから人を集めて一番近い転移門に飛んでから移動しても、まあ間に合わないでしょうね」
「そんなことは分かりきってるんだよ。一体何が言いたいんだい?」
部族会議の上役の1人がトーマスにそう問いかけた。その言葉を待っていたと言わんばかりトーマスは笑みを浮かべると、指を一本立てて見せてこう言った。
「この件、こちらに任せてみませんか?」
●格納庫にて
「諸君、ついに時が来たぞ!」
現在ホープにおける自分の城、格納庫に戻ってきたトーマスは開口一番にそう言った。
「リーダー、意味が分からないからちゃんと説明しなさいよ」
「おお、助手2号。それについてはこれを読め。そして助手1号とその他作業員諸君、コードAだ!」
トーマスは薄っぺらい紙を1枚、白衣の女性に渡したところで格納庫内にいる全作業員に向けて意味ありげな単語を口にした。
その途端、作業員達は顔を見合せたと思ったら機敏に動き出し格納庫内が俄かに騒がしくなってきた。
「そういう訳だ、ハンター諸君。準備をしてくれたまえ」
トーマスはそこに集まっていたハンター達にも同じように何かの準備をするようにと言ってきた。
今回も飛行機の試作機のテスト飛行を行う為に集められたハンター達としては、その準備なのかとも思ったがどうもそのような雰囲気ではない。
「ちょっと、これ読んでも意味が分からないわよ。部族会議からの歪虚討伐の依頼って、貴方一体何して来たの?」
白衣の女性が改めてトーマスに詰め寄っている。トーマスは相変わらずへらりとした笑みを浮かべながらこう返した。
「実戦の機会が訪れたってことだよ。さあ、緊急発進だ」
クリムゾンウェストの各国の中で一番北に位置する辺境。
数ヵ月前に行われた聖地奪還作戦により大きな被害を受けながらも、長年歪虚に奪われていた地を取り戻すことに成功した。
しかし、歪虚の大部分は退いたとは言え未だに野良歪虚の数も多く、人々が安心して住むにはまだ難しいのが現状だ。
その為にも部族会議の下で結成された討伐部隊が日夜辺境の歪虚討伐を行い、真に失われた土地を取り戻すべく奮闘している。
「囲め! 走り回って攪乱しろ!」
年配の戦士の号令を受け、若い戦士達が一斉に馬を駆る。
今回の目標は巨人1体。それに対してこちらは精鋭の戦士10人だ。これは過剰戦力ではない。覚醒者でもない彼らにとっては寧ろ少ないくらいだ。
しかし彼らは部族の中でも選りすぐりの精鋭だ。巨人を相手にするのもこれが初めてではない。
馬の機動力を活かして巨人を瞬く間に取り囲み、全方位から矢を射かける。それで怯んだところで戦士の数名が接近すると巨人の手足に縄を掛け、馬を走らせる勢いのままにそれを引く。
あとは横転した巨人の首筋に先ほどの年配の戦士が自身の身の丈ほどある斧を振り下ろし、それでお終いだ。
「今回も楽勝だったな!」
「ああ、巨人だろうが何だろうが掛かってこいってんだ!」
帰路の最中で若い戦士達は意気揚々と先ほどの戦闘を振り返り、そして強気な言葉を繰り返している。
ただこの隊を率いる隊長の年配の戦士はただ黙ってそれを聞いていた。
ここはまだ歪虚の出る競合地域だ。警戒を解くわけにはいかない。とは言え、自分も若い頃には彼らと似たようなものだったので、それを諫めるようなことはしなかった。
そして聖地リタ・ティトを有するジグウ連山の傍に走る街道に入ったところで、突然彼らの頭上に影が差す。
隊長も警戒は怠っていなかった。右手に山、左手には草原と見通しは悪くない立地で敵の姿など影も見えていなかった。
ただ想定外だったのだ。まさか敵が空から襲ってくるだなんて。
「ワイバーンだぁ!?」
1人の若い戦士が叫ぶ。それとほぼ同時に上空から落ちてきた真っ赤な炎の塊が地面にぶつかり、地面をえぐりながら周囲のあらゆるものを吹き飛ばす。
空を見上げれば10近い影が空を縦横無尽に飛んでいた。戦士達は弓を構えて矢を射かけるが、その矢は上空へと舞い上がったワイバーンに届く前に失速してそのまま地面へと落ちていく。
そして当たってもいない攻撃へのお返しとばかりに、何発もの火炎球が地上目掛けて降り注いだ。
●緊急事態
開拓地『ホープ』にその報告が届いたのはつい先ほどのことだった。
聖地リタ・ティト周辺の巡回を行っていた部隊によって発見されたのはワイバーンの群れであった。
それも普通のワイバーンではなくフレイムワイバーンと呼ばれる炎を吐く上位種で、地上に降りることなく上空から獲物を丸焼きにしてそれから食事を始めるという厄介な習性を持っている。
飛び道具がなければ太刀打ちできないのは当然として、亜種とは言え竜に数えられるその鱗は非常に硬くただの矢玉では弾かれてしまって効果が薄い。
そういう理由もあり過去にはたった1匹を相手に1つの部族が壊滅したという話もあるほどなのである。それが群れで現れたとなれば一大事だ。
そしてそのワイバーンの群れが今、帰還途中であった歪虚討伐部隊を襲っていることも知らされていた。
報告によると歪虚討伐部隊はひたすら逃げまどっていたらしく、しかし不思議とただその場から離脱はしようとしなかったらしい。
「それはあれですよ。そんなの引き連れて逃げてきたらえらいことになっちゃいますからね」
そんな報告の最中、これまでこの場にいなかったものの声が部屋の中に響いた。
皆がそちらに視線を向ければ、そこにはよれた白衣を着た若い男――トーマスの姿があった。
「練習機を飛ばす前にご挨拶をと思って来たんですけど、何やらお取込み中のようで」
へらりと笑いながらそう言うトーマスにはまるで緊張感がなく、部族会議を取り仕切る上役達もその態度には怪訝な表情を浮かべた。
「ところで君。そのワイバーンは今どこにいるのかな?」
「えっ? あっと、現在はジグウ連山沿いの街道付近……丁度この辺りですが」
トーマスの問いに報告を行っていた戦士は広げられていた地図の一点を指さしながら答えた。
それを確認したトーマスは口元に手を当てながらふむと一つ唸り、それから独り言でも零すように話し出す。
「この場所だと……これから人を集めて一番近い転移門に飛んでから移動しても、まあ間に合わないでしょうね」
「そんなことは分かりきってるんだよ。一体何が言いたいんだい?」
部族会議の上役の1人がトーマスにそう問いかけた。その言葉を待っていたと言わんばかりトーマスは笑みを浮かべると、指を一本立てて見せてこう言った。
「この件、こちらに任せてみませんか?」
●格納庫にて
「諸君、ついに時が来たぞ!」
現在ホープにおける自分の城、格納庫に戻ってきたトーマスは開口一番にそう言った。
「リーダー、意味が分からないからちゃんと説明しなさいよ」
「おお、助手2号。それについてはこれを読め。そして助手1号とその他作業員諸君、コードAだ!」
トーマスは薄っぺらい紙を1枚、白衣の女性に渡したところで格納庫内にいる全作業員に向けて意味ありげな単語を口にした。
その途端、作業員達は顔を見合せたと思ったら機敏に動き出し格納庫内が俄かに騒がしくなってきた。
「そういう訳だ、ハンター諸君。準備をしてくれたまえ」
トーマスはそこに集まっていたハンター達にも同じように何かの準備をするようにと言ってきた。
今回も飛行機の試作機のテスト飛行を行う為に集められたハンター達としては、その準備なのかとも思ったがどうもそのような雰囲気ではない。
「ちょっと、これ読んでも意味が分からないわよ。部族会議からの歪虚討伐の依頼って、貴方一体何して来たの?」
白衣の女性が改めてトーマスに詰め寄っている。トーマスは相変わらずへらりとした笑みを浮かべながらこう返した。
「実戦の機会が訪れたってことだよ。さあ、緊急発進だ」
リプレイ本文
●空戦開始
開拓地『ホープ』から飛び立った6機のテスト用試作機「アース・ホープ」はジグウ連山に向けてまっすぐと進んでいた。
「ふああ! 本当に飛んでます! すごい!」
カリン(ka5456)はやや興奮気味なテンションで今の心境を正直に口にした。
彼女自身リアルブルーの技術には興味津々だったこともあり、いざ自分がその技術に触れて空まで飛ぶことが出来たことに感動を禁じえなかったようだ。
そんなカリンの乗る機体は複座型で、その後部座席にはエリス・ブーリャ(ka3419)も乗っていた。
「これが青の世界の飛行機って奴か。制式化させる為にもこのお仕事はしっかりこなしたいねー」
カリンと同じく飛行機に触れるのは初めてなエリスも、風防ガラスの外に広がるいつもより少しだけ近くなった空を眺めながらそんな言葉を零した。
『こちらロベリア。はしゃぐのはいいけど、その所為で操縦ミスはしないようにね』
そんな2人の機体の通信機からロベリア・李(ka4206)の声が聞こえてきた。声色から察するに戒めているというより、冗句のつもりでいったセリフなのだろう。
『勿論だ。仲間を助けるっていうのに、ヘマして自分で落ちる訳にはいかねぇよな』
そして何故かそれに答えたのはロベリアが乗る複座機のパイロットであるグリムバルド・グリーンウッド(ka4409)であった。
会話が全て無線のみで行われるという航空戦ならではの環境にまだ慣れてないせいもあってか、無線から聞こえる声が誰に向けられたのかは非常に分かりづらい為によくある話である。
『そうでありますね! 自分も気を付けるであります!』
『そうねぇ。キスするなら地面じゃなくて素敵な人とがいいわぁ』
それに同調したのかクラヴィ・グレイディ(ka4687)と沢城 葵(ka3114)も無線越しに返事を返してきた。
『無駄に元気な人達ね』
そしてぽつりと烏丸 涼子 (ka5728)の声が続く。彼女は独り言を言ったつもりなのだろうが、それもやはり無線機で拾われていた。
『皆、そろそろ指示されたポイントに着くの。戦闘準備なの』
そして最後に、佐藤 絢音(ka0552)が皆に作戦空域に入ったことを皆に伝える。
『いよいよだな……燃えてきたぜ!』
『本当に燃え尽きちゃダメよぉ』
皆は一様に思考を切り替え、これから始まる戦闘に意識を集中させていく。
そして数十秒としないうちに眼下に広がっていた岩だらけの荒野は草原へと変わり、前方左側には急斜面となっている山が見えてきた。
そしてここにきて低空を飛びながら地面を走る小さな何かを追う赤褐色の翼を持つ化け物、フレイムワイバーンの姿も視認することが出来た。
追われているのは歪虚討伐部隊の戦士達だろう。かなり追い散らされているらしく、草原の至る所に広がっておりそれに釣られてワイバーンも草原の広い範囲で飛び回っている。
『ワイバーンはまだこっちに気づいてないの。先制攻撃のチャンスなの』
『それじゃあ頭上から奇襲するよ。皆、作戦通りにね』
ハンター達の機体は3機2班で左右に分かれ高度を取り、ワイバーンの頭上に到達したところで機種を下へと向けて降下を開始する。
「前方に1匹。やっちゃえカリンちゃん!」
「はい! 攻撃開始です!」
エリスの指示の下、カリンは手元のトリガーを引く。すると機体前方の2門の機関銃が軽快な銃声を響かせながら鉛弾を大量に吐き出した。
それに続くように絢音機と葵機も同じワイバーンに向けて一斉に射撃を開始する。
地上に気を取られていたワイバーンは完全に虚を突かれ、何が起こったのかを知る間もなくその全身を撃ち抜かれた。
しかし想像以上のタフさを見せたワイバーンはそれだけで殺し切ることはできなかった。だが翼膜を酷くやられたようでワイバーンは何とか飛ぼうと翼を羽ばたかせるも、そのまま高度を落とし地面へと降りていく。
別班の方も同じ状況なようで、ワイバーンを地面へと叩き落すことには成功したものの殺し切れてはいないようだ。
『おい! あんた達何者だ。味方なんだよな。それなら応答してくれ!』
そこで通信機から聞き慣れない声が聞こえてきた。恐らく地上の歪虚討伐部隊からの通信のようだ。
その声はかなり切羽詰まったもので、見慣れぬ戦闘機の姿にも半信半疑のようだ。
『ハロー! ハロー! こちらアースホープ部隊! 撤退を支援するであります!』
『良かった! 歪虚じゃないんだな。なんだか知らんが助かる!』
クラヴィの返事に通信相手からは歓喜の声が上がった。
『地上に落ちたワイバーンはそちらにお任せするのであります』
『そうか、分かった! 隊長にもそう伝える!』
地上を見れば、これまでバラバラに走り回っていた戦士達が草原の中央の方へと集まっていくのが見える。ただそれを追うようにしてワイバーンもまた中央の方へと集まりつつあった。
「仲間はやらせないのであります」
まだこちらに意識を向けていないワイバーン達を見ながら、再度高度を取ったクラヴィはその内の1匹に狙いを定めて再び急降下攻撃を開始した。
●空の善戦、地上の苦戦
「ようやく3匹目が落ちたの」
絢音は地上へと墜落していくワイバーンを視界の隅に捉えながら、他のワイバーンがこちらを追ってきていないのを確かめると機首を斜め上に挙げて緩やかに180度のターンを加えながら高度を上げていく。
戦闘開始から数分が経過し、ワイバーンもこちらを脅威とみなして攻撃を仕掛けてくるようになった。しかししつこく追ってくることはなく依然として目標は地上にいる戦士達に向いているようだ。
とにかく、敵の意識をこちらに向けさせるという目的が果たせていないのは事実であった。
さらにもう一つ問題があり、これは想定外であったと言うしかないがワイバーンがかなりタフなことである。その鱗は機銃の弾では貫くことが出来ず、特に背中部分はかなり分厚い鱗に覆われているようで弾が完全に弾かれてしまっている場合もあった。
「とにかくもっと攻撃してこっちに意識を向けさせるの」
絢音は地上の戦士達に火炎球を放っているワイバーンに目をつけ、こちらへと意識を向けさせるべく再度攻撃を開始した。
「まいったね。思ったよりこっちに食いついてこない」
ロベリアもまたワイバーンの食いつきの悪さに眉を顰めていた。
一撃離脱戦法は空対空戦ではかなり有利に働いてはいるのだが、即逃げるのが悪いのかワイバーンは手頃な地上にいる戦士達を狙い続けてしまう。
「どうするロベリア。このままだと地上の奴らがやられるのも時間の問題だぜ?」
操縦席にいるグリムバルドも今の状況は拙いと思っているらしく、いくら攻撃しても平然と空を飛び続けるワイバーンに険しい表情を作らざるを得なかった。
『翼膜を狙うのはどうかしら? 少し難しいけど』
そこでグリムバルド達の機体の後ろに付いていた涼子機から通信が入った。
頭部から尻尾にかけては頑丈な鱗の所為で銃撃の効果は薄いが、最初の突入時で確認した通り翼膜を破壊すれば倒せなくとも地上へと落とすことは出来た。
「そうだね。第一目標は友軍を無事に撤退させること。倒すよりも仲間を逃がすことを優先させるよ」
方針は決まった。ロベリアの指示の下、グリムバルド機と涼子機は滑空して地上の戦士を追うワイバーンに急降下攻撃を仕掛ける。
狙うのは滑空しているために広げたままになっているその翼膜。2機の銃撃がそれぞれ左右の翼膜に向けて降り注ぐ。
ばらまかれた弾丸はいくらかは外れたものの、翼膜に当たった弾丸は鱗よりは柔らかいその部位を傷つけ、ワイバーンもそれを嫌がったのか地上の戦士を追うのを止めて空を舞う戦闘機へとその長い首を向けてくる。
「回避!」
「任せろぉ!」
ロベリアの声とほぼ同時にグリムバルドは機体を左へと傾ける。ワイバーンから放たれた火炎球はグリムバルド機の腹を焦がしながら通り過ぎていく。
「危ねぇ! 機体燃えてないよな?」
「大丈夫だよ。次、右旋回!」
とにかく当初の予定通り敵の気を引くことは出来た。しかし放たれる火炎球は木造布張りのこの機体では相性は最悪であり、当たり所が悪いと一発で爆発四散なんて未来も否定できない。
『私が囮になるわ。その間に攻撃して』
そこで涼子機がグリムバルド機とワイバーンの間に割り込んだ。ワイバーンのほうも急に視界を塞いできた涼子機に意識を向けたのかそちらに向けて火炎球を放ってくる。
涼子は機体を左右に振りながら回避行動を取り続け、少しずつ減速していく。ワイバーンもそこで追いつけると判断したのか涼子機の上を取ると両足の爪を使いその機体を引き裂こうと突っ込んできた。
『そうはさせないのであります!』
無線機からそんな叫びが聞こえてきたのと同時にワイバーンの頭に複数の弾丸が命中した。そして涼子機とワイバーンとすれ違うようにしてクラヴィ機がその側面を飛び去って行く。
流石に頭に銃弾を食らったワイバーンは怯み、涼子機への攻撃を止めてその場で一時ホバリングしてから頭を振る動作をして、今度は今攻撃してきたクラヴィ機へと狙いを変えたのかその首をそちらへと向ける。
「戦場で棒立ちは良い的だぜ!」
だがそこに旋回して戻ってきたグリムバルドが再び翼を狙って銃弾の雨を降らせた。その弾丸がついに翼膜を破り、片翼となって飛びづらそうにふらふらとしだしたワイバーンは誰もいない山間部の方へと向けて飛び去って行く。
「深追いは禁物。さあ、次に行くよ」
ようやくこのワイバーンの攻略法を見つけ、手ごたえを感じ始めたハンター達は次の標的に向けて攻撃を開始した。
●撤退開始
ワイバーン達の撃退数が半分に届くかというところで、戦闘機の操縦を続けていたハンター達も僅かな疲れを覚え始めていた。
「飛行機を飛ばすのって、思ってたより疲れるのねぇ」
「マテリアルの消費的にもそろそろ限界が近いのかもしれないの」
試作機ということもあって『アース・ホープ』の燃料効率はお世辞にも良いとは言えない。そのために操縦者のマテリアルは湯水の如く消費されていく。
「飛んでる敵さんも半分以下になったし。今が退き時って奴じゃないかなー?」
無線を聞くに地上の戦士達も地上に落ちたワイバーン1匹を倒したものの、それだけで半数が戦闘続行不可能な怪我を負ったらしく、今はまた逃げ回って囮になっていてくれている状態だ。
空陸共にこれ以上の戦闘は難しいだろう。それ故に、ハンター達はここで撤退を決意することになった。
「敵を引き連れていかないためにも、私達がここでアイツらを食い止める」
「それで地上の奴らが退いたら、あとは全速力で逃げて引き離すってわけだ」
撤退時の作戦ももう決まっている。ハンター達はこれまでの一撃離脱の戦法を止め、ワイバーンを完全にこちらに引き付ける為に空中での接近戦を仕掛けることになった。
戦場に残っているワイバーンの数は全部で7匹。その内3匹は翼を撃ち抜かれて地上に落ちているので、実質足止めしないといけないのは4匹ということになる。
「1班につき2匹でありますか。それなら何とかなりそうであります!」
「地上に落ちた奴もしつこく火炎球を吐いてくるから注意は必要だけどね」
そして撤退が始まった。
『では俺達は退却する。本当に助かった。すまないが後は任せたぜ!』
無線機から戦士の最後の通信が入る。次に会話することがあればそれは開拓地『ホープ』に戻ってからであろう。
「わわわ、危ない! でもちゃんと着いてきてくれないと困るのです!」
2匹のワイバーンに追われるカリンは後ろを取られながらも右に左に上へ下へととにかく狙いを絞らせないために機体を旋回そして上昇と下降を繰り返してひたすら逃げ続けている。
「エリスちゃん次はどっち!」
「もう少しそのままでー……よし、ここで上昇!」
複座で後方からついてくるワイバーン達の動きを確認していたエリスは、その内の1匹のワイバーンが口を開きその口内に赤い炎が灯ったのを確認したところでカリンに指示を出す。
カリンはその指示通りに機体を上昇させるが、ワイバーンの頭はそれを追うようにして上を向きそのまま火炎球を放ってくる。
「今だ、急降下!」
「ひゃうー! 忙しすぎます!」
迫ってきた火炎弾はそのままカリン機の尾翼を掠める。その瞬間、直撃ではなかったが火炎球は爆発を起こし半径数メートルに炎と衝撃を放つ。
「ふぅー、今のは危なかったねー。エルちゃんナイス判断」
エリスは自画自賛しながら握っていた白い機杖で自分の胸元を叩いた。
今あの瞬間、エリスは火炎球が爆発する寸前に覚醒し障壁を発生させたことで迫りくる炎と衝撃から機体を守ったのだ。
全てを防ぎきれたわけではないので尾翼部分の布が一部破けてしまったが、引火せずに済んだのは今の障壁があったおかげであろう。
「さぁて、悪い子はさっさとお家にお帰りなさい」
撤退を前提にしているとはいえ攻撃を止めるわけではない。そんなカリン機を攻撃しているワイバーンを今度は葵機がその後ろを取り機銃で攻撃を加える。
放たれた銃弾は硬い鱗に防がれるも、衝撃と痛みはあるのかワイバーンはその射線から逃げるようにして離脱すると、旋回してきて今度は葵機目掛けて火炎球で攻撃してくる。
「それだけ分かりやすい動きをしてくれれば狙いやすいの」
だが今度はその動きを読んでいた絢音がワイバーンの背後を取り銃撃を浴びせていく。
「そろそろ良さそうだ。皆、全力でこの空域から離脱するよ!」
ロベリアは街道から撤退した戦士達が肉眼では捉えられない距離まで逃げたのを確認して、通信機を使い全員に向けて指示を飛ばした。
「了解。全力で飛ばすぜ!」
グリムバルドはワイバーンの攻撃を避けながら機体を南方へと向けると、マテリアルを魔導エンジンに注ぎ込みプロペラの回転速度を限界まで引き上げる。
他の機体も同じように機首を合わせ、全機一斉にその空域から撤退を始めた。
ワイバーンも最初はそれを追ってこようとしたようだが、最高速度ではアース・ホープのほうが上な為にあっという間に引き離されてすぐに諦めたようだった。
「無事離脱っと。これで依頼も完了か?」
「そうだね。何かと学ぶことも多かったし、試作機としても良いデータが取れたんじゃないかな」
ロベリアはPDAの録音がちゃんと機能しているのを確認し、次に活かせるかなと僅かに笑みを浮かべた。
『まだ目がぐーるぐるするです……』
『さぁて、帰ったら壊れたところの修理手伝わないとだ』
『やっぱり機銃だけじゃなくてロケット弾も積めるようにしたいの』
他の皆もそれぞれの心情を口にしながら開拓地『ホープ』へと帰っていった。
開拓地『ホープ』から飛び立った6機のテスト用試作機「アース・ホープ」はジグウ連山に向けてまっすぐと進んでいた。
「ふああ! 本当に飛んでます! すごい!」
カリン(ka5456)はやや興奮気味なテンションで今の心境を正直に口にした。
彼女自身リアルブルーの技術には興味津々だったこともあり、いざ自分がその技術に触れて空まで飛ぶことが出来たことに感動を禁じえなかったようだ。
そんなカリンの乗る機体は複座型で、その後部座席にはエリス・ブーリャ(ka3419)も乗っていた。
「これが青の世界の飛行機って奴か。制式化させる為にもこのお仕事はしっかりこなしたいねー」
カリンと同じく飛行機に触れるのは初めてなエリスも、風防ガラスの外に広がるいつもより少しだけ近くなった空を眺めながらそんな言葉を零した。
『こちらロベリア。はしゃぐのはいいけど、その所為で操縦ミスはしないようにね』
そんな2人の機体の通信機からロベリア・李(ka4206)の声が聞こえてきた。声色から察するに戒めているというより、冗句のつもりでいったセリフなのだろう。
『勿論だ。仲間を助けるっていうのに、ヘマして自分で落ちる訳にはいかねぇよな』
そして何故かそれに答えたのはロベリアが乗る複座機のパイロットであるグリムバルド・グリーンウッド(ka4409)であった。
会話が全て無線のみで行われるという航空戦ならではの環境にまだ慣れてないせいもあってか、無線から聞こえる声が誰に向けられたのかは非常に分かりづらい為によくある話である。
『そうでありますね! 自分も気を付けるであります!』
『そうねぇ。キスするなら地面じゃなくて素敵な人とがいいわぁ』
それに同調したのかクラヴィ・グレイディ(ka4687)と沢城 葵(ka3114)も無線越しに返事を返してきた。
『無駄に元気な人達ね』
そしてぽつりと烏丸 涼子 (ka5728)の声が続く。彼女は独り言を言ったつもりなのだろうが、それもやはり無線機で拾われていた。
『皆、そろそろ指示されたポイントに着くの。戦闘準備なの』
そして最後に、佐藤 絢音(ka0552)が皆に作戦空域に入ったことを皆に伝える。
『いよいよだな……燃えてきたぜ!』
『本当に燃え尽きちゃダメよぉ』
皆は一様に思考を切り替え、これから始まる戦闘に意識を集中させていく。
そして数十秒としないうちに眼下に広がっていた岩だらけの荒野は草原へと変わり、前方左側には急斜面となっている山が見えてきた。
そしてここにきて低空を飛びながら地面を走る小さな何かを追う赤褐色の翼を持つ化け物、フレイムワイバーンの姿も視認することが出来た。
追われているのは歪虚討伐部隊の戦士達だろう。かなり追い散らされているらしく、草原の至る所に広がっておりそれに釣られてワイバーンも草原の広い範囲で飛び回っている。
『ワイバーンはまだこっちに気づいてないの。先制攻撃のチャンスなの』
『それじゃあ頭上から奇襲するよ。皆、作戦通りにね』
ハンター達の機体は3機2班で左右に分かれ高度を取り、ワイバーンの頭上に到達したところで機種を下へと向けて降下を開始する。
「前方に1匹。やっちゃえカリンちゃん!」
「はい! 攻撃開始です!」
エリスの指示の下、カリンは手元のトリガーを引く。すると機体前方の2門の機関銃が軽快な銃声を響かせながら鉛弾を大量に吐き出した。
それに続くように絢音機と葵機も同じワイバーンに向けて一斉に射撃を開始する。
地上に気を取られていたワイバーンは完全に虚を突かれ、何が起こったのかを知る間もなくその全身を撃ち抜かれた。
しかし想像以上のタフさを見せたワイバーンはそれだけで殺し切ることはできなかった。だが翼膜を酷くやられたようでワイバーンは何とか飛ぼうと翼を羽ばたかせるも、そのまま高度を落とし地面へと降りていく。
別班の方も同じ状況なようで、ワイバーンを地面へと叩き落すことには成功したものの殺し切れてはいないようだ。
『おい! あんた達何者だ。味方なんだよな。それなら応答してくれ!』
そこで通信機から聞き慣れない声が聞こえてきた。恐らく地上の歪虚討伐部隊からの通信のようだ。
その声はかなり切羽詰まったもので、見慣れぬ戦闘機の姿にも半信半疑のようだ。
『ハロー! ハロー! こちらアースホープ部隊! 撤退を支援するであります!』
『良かった! 歪虚じゃないんだな。なんだか知らんが助かる!』
クラヴィの返事に通信相手からは歓喜の声が上がった。
『地上に落ちたワイバーンはそちらにお任せするのであります』
『そうか、分かった! 隊長にもそう伝える!』
地上を見れば、これまでバラバラに走り回っていた戦士達が草原の中央の方へと集まっていくのが見える。ただそれを追うようにしてワイバーンもまた中央の方へと集まりつつあった。
「仲間はやらせないのであります」
まだこちらに意識を向けていないワイバーン達を見ながら、再度高度を取ったクラヴィはその内の1匹に狙いを定めて再び急降下攻撃を開始した。
●空の善戦、地上の苦戦
「ようやく3匹目が落ちたの」
絢音は地上へと墜落していくワイバーンを視界の隅に捉えながら、他のワイバーンがこちらを追ってきていないのを確かめると機首を斜め上に挙げて緩やかに180度のターンを加えながら高度を上げていく。
戦闘開始から数分が経過し、ワイバーンもこちらを脅威とみなして攻撃を仕掛けてくるようになった。しかししつこく追ってくることはなく依然として目標は地上にいる戦士達に向いているようだ。
とにかく、敵の意識をこちらに向けさせるという目的が果たせていないのは事実であった。
さらにもう一つ問題があり、これは想定外であったと言うしかないがワイバーンがかなりタフなことである。その鱗は機銃の弾では貫くことが出来ず、特に背中部分はかなり分厚い鱗に覆われているようで弾が完全に弾かれてしまっている場合もあった。
「とにかくもっと攻撃してこっちに意識を向けさせるの」
絢音は地上の戦士達に火炎球を放っているワイバーンに目をつけ、こちらへと意識を向けさせるべく再度攻撃を開始した。
「まいったね。思ったよりこっちに食いついてこない」
ロベリアもまたワイバーンの食いつきの悪さに眉を顰めていた。
一撃離脱戦法は空対空戦ではかなり有利に働いてはいるのだが、即逃げるのが悪いのかワイバーンは手頃な地上にいる戦士達を狙い続けてしまう。
「どうするロベリア。このままだと地上の奴らがやられるのも時間の問題だぜ?」
操縦席にいるグリムバルドも今の状況は拙いと思っているらしく、いくら攻撃しても平然と空を飛び続けるワイバーンに険しい表情を作らざるを得なかった。
『翼膜を狙うのはどうかしら? 少し難しいけど』
そこでグリムバルド達の機体の後ろに付いていた涼子機から通信が入った。
頭部から尻尾にかけては頑丈な鱗の所為で銃撃の効果は薄いが、最初の突入時で確認した通り翼膜を破壊すれば倒せなくとも地上へと落とすことは出来た。
「そうだね。第一目標は友軍を無事に撤退させること。倒すよりも仲間を逃がすことを優先させるよ」
方針は決まった。ロベリアの指示の下、グリムバルド機と涼子機は滑空して地上の戦士を追うワイバーンに急降下攻撃を仕掛ける。
狙うのは滑空しているために広げたままになっているその翼膜。2機の銃撃がそれぞれ左右の翼膜に向けて降り注ぐ。
ばらまかれた弾丸はいくらかは外れたものの、翼膜に当たった弾丸は鱗よりは柔らかいその部位を傷つけ、ワイバーンもそれを嫌がったのか地上の戦士を追うのを止めて空を舞う戦闘機へとその長い首を向けてくる。
「回避!」
「任せろぉ!」
ロベリアの声とほぼ同時にグリムバルドは機体を左へと傾ける。ワイバーンから放たれた火炎球はグリムバルド機の腹を焦がしながら通り過ぎていく。
「危ねぇ! 機体燃えてないよな?」
「大丈夫だよ。次、右旋回!」
とにかく当初の予定通り敵の気を引くことは出来た。しかし放たれる火炎球は木造布張りのこの機体では相性は最悪であり、当たり所が悪いと一発で爆発四散なんて未来も否定できない。
『私が囮になるわ。その間に攻撃して』
そこで涼子機がグリムバルド機とワイバーンの間に割り込んだ。ワイバーンのほうも急に視界を塞いできた涼子機に意識を向けたのかそちらに向けて火炎球を放ってくる。
涼子は機体を左右に振りながら回避行動を取り続け、少しずつ減速していく。ワイバーンもそこで追いつけると判断したのか涼子機の上を取ると両足の爪を使いその機体を引き裂こうと突っ込んできた。
『そうはさせないのであります!』
無線機からそんな叫びが聞こえてきたのと同時にワイバーンの頭に複数の弾丸が命中した。そして涼子機とワイバーンとすれ違うようにしてクラヴィ機がその側面を飛び去って行く。
流石に頭に銃弾を食らったワイバーンは怯み、涼子機への攻撃を止めてその場で一時ホバリングしてから頭を振る動作をして、今度は今攻撃してきたクラヴィ機へと狙いを変えたのかその首をそちらへと向ける。
「戦場で棒立ちは良い的だぜ!」
だがそこに旋回して戻ってきたグリムバルドが再び翼を狙って銃弾の雨を降らせた。その弾丸がついに翼膜を破り、片翼となって飛びづらそうにふらふらとしだしたワイバーンは誰もいない山間部の方へと向けて飛び去って行く。
「深追いは禁物。さあ、次に行くよ」
ようやくこのワイバーンの攻略法を見つけ、手ごたえを感じ始めたハンター達は次の標的に向けて攻撃を開始した。
●撤退開始
ワイバーン達の撃退数が半分に届くかというところで、戦闘機の操縦を続けていたハンター達も僅かな疲れを覚え始めていた。
「飛行機を飛ばすのって、思ってたより疲れるのねぇ」
「マテリアルの消費的にもそろそろ限界が近いのかもしれないの」
試作機ということもあって『アース・ホープ』の燃料効率はお世辞にも良いとは言えない。そのために操縦者のマテリアルは湯水の如く消費されていく。
「飛んでる敵さんも半分以下になったし。今が退き時って奴じゃないかなー?」
無線を聞くに地上の戦士達も地上に落ちたワイバーン1匹を倒したものの、それだけで半数が戦闘続行不可能な怪我を負ったらしく、今はまた逃げ回って囮になっていてくれている状態だ。
空陸共にこれ以上の戦闘は難しいだろう。それ故に、ハンター達はここで撤退を決意することになった。
「敵を引き連れていかないためにも、私達がここでアイツらを食い止める」
「それで地上の奴らが退いたら、あとは全速力で逃げて引き離すってわけだ」
撤退時の作戦ももう決まっている。ハンター達はこれまでの一撃離脱の戦法を止め、ワイバーンを完全にこちらに引き付ける為に空中での接近戦を仕掛けることになった。
戦場に残っているワイバーンの数は全部で7匹。その内3匹は翼を撃ち抜かれて地上に落ちているので、実質足止めしないといけないのは4匹ということになる。
「1班につき2匹でありますか。それなら何とかなりそうであります!」
「地上に落ちた奴もしつこく火炎球を吐いてくるから注意は必要だけどね」
そして撤退が始まった。
『では俺達は退却する。本当に助かった。すまないが後は任せたぜ!』
無線機から戦士の最後の通信が入る。次に会話することがあればそれは開拓地『ホープ』に戻ってからであろう。
「わわわ、危ない! でもちゃんと着いてきてくれないと困るのです!」
2匹のワイバーンに追われるカリンは後ろを取られながらも右に左に上へ下へととにかく狙いを絞らせないために機体を旋回そして上昇と下降を繰り返してひたすら逃げ続けている。
「エリスちゃん次はどっち!」
「もう少しそのままでー……よし、ここで上昇!」
複座で後方からついてくるワイバーン達の動きを確認していたエリスは、その内の1匹のワイバーンが口を開きその口内に赤い炎が灯ったのを確認したところでカリンに指示を出す。
カリンはその指示通りに機体を上昇させるが、ワイバーンの頭はそれを追うようにして上を向きそのまま火炎球を放ってくる。
「今だ、急降下!」
「ひゃうー! 忙しすぎます!」
迫ってきた火炎弾はそのままカリン機の尾翼を掠める。その瞬間、直撃ではなかったが火炎球は爆発を起こし半径数メートルに炎と衝撃を放つ。
「ふぅー、今のは危なかったねー。エルちゃんナイス判断」
エリスは自画自賛しながら握っていた白い機杖で自分の胸元を叩いた。
今あの瞬間、エリスは火炎球が爆発する寸前に覚醒し障壁を発生させたことで迫りくる炎と衝撃から機体を守ったのだ。
全てを防ぎきれたわけではないので尾翼部分の布が一部破けてしまったが、引火せずに済んだのは今の障壁があったおかげであろう。
「さぁて、悪い子はさっさとお家にお帰りなさい」
撤退を前提にしているとはいえ攻撃を止めるわけではない。そんなカリン機を攻撃しているワイバーンを今度は葵機がその後ろを取り機銃で攻撃を加える。
放たれた銃弾は硬い鱗に防がれるも、衝撃と痛みはあるのかワイバーンはその射線から逃げるようにして離脱すると、旋回してきて今度は葵機目掛けて火炎球で攻撃してくる。
「それだけ分かりやすい動きをしてくれれば狙いやすいの」
だが今度はその動きを読んでいた絢音がワイバーンの背後を取り銃撃を浴びせていく。
「そろそろ良さそうだ。皆、全力でこの空域から離脱するよ!」
ロベリアは街道から撤退した戦士達が肉眼では捉えられない距離まで逃げたのを確認して、通信機を使い全員に向けて指示を飛ばした。
「了解。全力で飛ばすぜ!」
グリムバルドはワイバーンの攻撃を避けながら機体を南方へと向けると、マテリアルを魔導エンジンに注ぎ込みプロペラの回転速度を限界まで引き上げる。
他の機体も同じように機首を合わせ、全機一斉にその空域から撤退を始めた。
ワイバーンも最初はそれを追ってこようとしたようだが、最高速度ではアース・ホープのほうが上な為にあっという間に引き離されてすぐに諦めたようだった。
「無事離脱っと。これで依頼も完了か?」
「そうだね。何かと学ぶことも多かったし、試作機としても良いデータが取れたんじゃないかな」
ロベリアはPDAの録音がちゃんと機能しているのを確認し、次に活かせるかなと僅かに笑みを浮かべた。
『まだ目がぐーるぐるするです……』
『さぁて、帰ったら壊れたところの修理手伝わないとだ』
『やっぱり機銃だけじゃなくてロケット弾も積めるようにしたいの』
他の皆もそれぞれの心情を口にしながら開拓地『ホープ』へと帰っていった。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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質問卓 ロベリア・李(ka4206) 人間(リアルブルー)|38才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2015/12/05 22:15:57 |
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相談卓 ロベリア・李(ka4206) 人間(リアルブルー)|38才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2015/12/07 00:03:35 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/12/03 01:02:12 |