ゲスト
(ka0000)
無我の鐘が鳴る時、そなたは何を想うか
マスター:大林さゆる

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~7人
- サポート
- 0~14人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/12/14 07:30
- 完成日
- 2015/12/20 02:54
このシナリオは2日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
嗚呼、お母様。
ようやく会えたのに。
何故、そのような顔をするのでしょうか。
私は、そこへ行ってはいけないのでしょうか。
『帰りなさい』
母は、何度も、そう叫んでいた。
●
自由都市同盟、とある小さな村。
山間部の麓にある村には、行商人や旅人が時折、やってきていた。
マクシミリアン・ヴァイス(kz0003)が酒場のカウンターでワインを飲んでいると、一人の少年が駆け込んできた。
「マクシミリアンさん、大変だ! 重体のハンターが三人、この村に運び込まれてきた」
リアルブルー出身の水本 壮(みずもと・そう)だ。
「歪虚の残党がここまで来たか」
そうマクシミリアンが呟くと、壮は慌てたように言った。
「戦場からはかなり離れているけどさ、歪虚がここまで来るなんて、只事じゃないよ」
「……落ち着け。それだけ歪虚の動きが広がっている証拠だろう。ハンターなら、やるべきことは決まっている」
当然とばかりに、マクシミリアンは椅子から立ち上がると、武器の確認をしていた。
「いくらマクシミリアンさんでも、一人で戦うのは無茶だよ。他にも戦えるハンターたちがいれば……」
壮が言った矢先、マクシミリアンは何も言わずに診療所へと向かった。
重体のハンターたちが気になったからだ。
見れば、見覚えのある顔だった。
「笹川三姉妹か。確か三人で旅をしていると聞いていたが、道中で襲われたか」
マクシミリアンはそう言うと、しばらく考え込んでいた。
後から付いてきた壮が、心配そうに言った。
「知り合いっすか。三人とも重体で気絶してるから、目が覚めるまで無理に動かせないよ」
「……水本、おまえは俺と一緒に村の警護だ。歪虚退治は他のハンターに任せた方が良いな」
マクシミリアンの意外な言葉に、壮は少し驚いていた。
「俺とマクシミリアンさんが村の警護?」
「そうだ。この村は崖に囲まれていて、住人たちは別の村まで避難する余裕もない。ましてや、重体のハンターが三人……ここで、放置しておく訳にはいかないだろう」
そう告げるマクシミリアンに、ようやく壮は納得した。
「歪虚たちが村に侵入しないように、俺達で死守するってことか。そうと分かれば、ギルドに連絡するっすよ」
ハンターである壮ならば、ギルドまで行って戻ってくることができた。
道中、偵察してきた壮は、マクシミリアンに敵の動向を報告した。
「緑色の巨人と、オークっぽい歪虚が3体、リザードマンは9匹くらい、見かけたっす。村から2キロ辺りにいて、こっちに向かってきてるみたいだったな。もしかしたら、重体のハンターを狙っているのかも」
「だったら、尚更、後には引けんな。村は絶対に守る……良いか、分かったか?」
マクシミリアンが念を押すと、拳を握りしめる壮。
「了解っす。今までの修行の成果、ここで見せるつもりで、がんばるっすよ」
そう言いつつも、壮は微かに震えていた。
リザードマンならばまだしも、巨人やオークには勝つ自信がなかったからだ。
それでも、重体のハンターたちを放っておくことができなかった。
それだけではない。この村に住む住人たちも守りたいと心底、思っていたのだ。
その想いが、壮を突き動かしていた。
ゆっくりと、歪虚の残党が村に迫ってきていた。
嗚呼、お母様。
ようやく会えたのに。
何故、そのような顔をするのでしょうか。
私は、そこへ行ってはいけないのでしょうか。
『帰りなさい』
母は、何度も、そう叫んでいた。
●
自由都市同盟、とある小さな村。
山間部の麓にある村には、行商人や旅人が時折、やってきていた。
マクシミリアン・ヴァイス(kz0003)が酒場のカウンターでワインを飲んでいると、一人の少年が駆け込んできた。
「マクシミリアンさん、大変だ! 重体のハンターが三人、この村に運び込まれてきた」
リアルブルー出身の水本 壮(みずもと・そう)だ。
「歪虚の残党がここまで来たか」
そうマクシミリアンが呟くと、壮は慌てたように言った。
「戦場からはかなり離れているけどさ、歪虚がここまで来るなんて、只事じゃないよ」
「……落ち着け。それだけ歪虚の動きが広がっている証拠だろう。ハンターなら、やるべきことは決まっている」
当然とばかりに、マクシミリアンは椅子から立ち上がると、武器の確認をしていた。
「いくらマクシミリアンさんでも、一人で戦うのは無茶だよ。他にも戦えるハンターたちがいれば……」
壮が言った矢先、マクシミリアンは何も言わずに診療所へと向かった。
重体のハンターたちが気になったからだ。
見れば、見覚えのある顔だった。
「笹川三姉妹か。確か三人で旅をしていると聞いていたが、道中で襲われたか」
マクシミリアンはそう言うと、しばらく考え込んでいた。
後から付いてきた壮が、心配そうに言った。
「知り合いっすか。三人とも重体で気絶してるから、目が覚めるまで無理に動かせないよ」
「……水本、おまえは俺と一緒に村の警護だ。歪虚退治は他のハンターに任せた方が良いな」
マクシミリアンの意外な言葉に、壮は少し驚いていた。
「俺とマクシミリアンさんが村の警護?」
「そうだ。この村は崖に囲まれていて、住人たちは別の村まで避難する余裕もない。ましてや、重体のハンターが三人……ここで、放置しておく訳にはいかないだろう」
そう告げるマクシミリアンに、ようやく壮は納得した。
「歪虚たちが村に侵入しないように、俺達で死守するってことか。そうと分かれば、ギルドに連絡するっすよ」
ハンターである壮ならば、ギルドまで行って戻ってくることができた。
道中、偵察してきた壮は、マクシミリアンに敵の動向を報告した。
「緑色の巨人と、オークっぽい歪虚が3体、リザードマンは9匹くらい、見かけたっす。村から2キロ辺りにいて、こっちに向かってきてるみたいだったな。もしかしたら、重体のハンターを狙っているのかも」
「だったら、尚更、後には引けんな。村は絶対に守る……良いか、分かったか?」
マクシミリアンが念を押すと、拳を握りしめる壮。
「了解っす。今までの修行の成果、ここで見せるつもりで、がんばるっすよ」
そう言いつつも、壮は微かに震えていた。
リザードマンならばまだしも、巨人やオークには勝つ自信がなかったからだ。
それでも、重体のハンターたちを放っておくことができなかった。
それだけではない。この村に住む住人たちも守りたいと心底、思っていたのだ。
その想いが、壮を突き動かしていた。
ゆっくりと、歪虚の残党が村に迫ってきていた。
リプレイ本文
自由都市同盟。
山間部の麓に小さな村があったが、住人の姿はなく、ハンターたちが依頼を聞きつけてやってきた。
「あの時のような……そんな事だけはさせないっすよ」
無限 馨(ka0544)は、LH044の惨劇を忘れることができなかった。それが時として胸に突き刺さることもある。
だが、VOIDが目の前にいるならば、排除するのみ。
馨は痛切な想いとは裏腹に、軽い笑みを浮かべる。
「ま、やることやって、住人たちを安心させてやりたいっすね」
「怪我したハンターもいるみたいだし、他に逃げ道はない……だったら、前へ向かって道を切り開けば良いってこったろ!」
恐い者知らずの勢いで、岩井崎 旭(ka0234)が言った。
「その通りだな。村の防衛はマクシミリアンと壮に任せて、俺達は先を急ごう」
ヴァイス(ka0364)は罠を設置するための武器や道具も用意していた。
水本 壮(みずもと・そう)と言えば、地下室の入口で警護に専念。住人たちが全員、地下室で待機していたからだ。
「マクシミリアン、地図は依頼が終わったら返すぜ。サンキューな」
柊 真司(ka0705)がそう言うと、マクシミリアン・ヴァイス (kz0003)は動じることもなく答えた。
「なに、礼には及ばない。だが、俺は村から離れるつもりはない。重体のハンターがいるからな」
「んー、そうだよな。だったら、村に接近してくる歪虚がいたら、連絡してくれ」
真司が頼むと、マクシミリアンは無言で承諾した。
「それでは、行きましょう」
夜桜 奏音(ka5754)はゴースロンに騎乗し、央崎 遥華(ka5644)が追撃ポイントを確認して戦馬に乗ると、他のハンターたちも出発していく。
馨は試作魔導バイク「ナグルファル」に乗り込み、村の入口にいるマクシミリアンに「何かあったら、こっちからも連絡するっすよ」と告げ、バイクを走らせた。
ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)は村の周囲を隈なく観察していたが、侵入できそうな箇所は出入り口にもなっている石の門であることが分かった。念の為、ルンルンは門から少し離れた場所に『地縛符』で結界を作り、準備が整うと魔導二輪「闘走」に乗り、仲間の後を追う。
「とにもかくにも、目的地点までゴーです!」
マクシミリアンは村の警護に徹する。仲間たちとはトランシーバーで連絡を取り合うことにした。
これなら大きな音を鳴らさなくても、村にいる者と連絡が可能だ。
「リザードマンの襲撃には気をつけろ」
真司は試作魔導バイク「ナグルファル」を走らせ、ヴァイスが乗る試作魔導バイク「ナグルファル」と並んだ。バイクが颯爽と走り、旭が戦友として慕うゴースロンのシーザーも勇み足で駆けていく。
「もう少しで目的地だ」
村から800メートル地点まで進むと、その場で降り、ハンターたちは何やら作業は始めていた。
●
地面が唸るように鳴り響く。
ヴァイスが魔導ドリルで道に穴を掘っていたが、行商用として補強されていた道だったため、予想以上に掘るのに時間がかかっていた。
「真司が偵察に行っている間に罠を完成させないとな」
それでも、人の足首ほどの深さまで掘ることができ、奏音がワイヤー代わりに落ちいていた小枝を何本か穴の中に放り込んだ。
ヴァイスは掘った穴の上にテントの布を覆い、四隅は枝を打ち込んで固定。布の上に、掘り起こした土をばら撒いてカモフラージュすることにした。
「ほどよく撒いていきましょう」
遥華と奏音も罠の設置を手伝っていた。
真司は中間地点の距離から敵の動向を見張っていたが、ハイオークやリザードマンたちは地面が鳴り響く音が気になっていたのか、こちらに向ってくるのが見えた。
「巨人の姿が見えないってのは、どういうことだ?」
怪訝な顔で真司は呟くと、すぐさまバイクに乗り、仲間の元へと戻った。
その頃……。
「やはり川から村へ進むルートがあったっすね」
馨は川沿いから進んでくるエルクロプスとリザードマンの集団を発見した。魔導短伝話でマクシミリアンに連絡。
「こちら無限、エルクロプスとリザードマンの集団が村に接近中」
『了解だ。村の警備を固める』
マクシミリアンの声が切れると、馨はバイクから降り、旭の援護に入った。
「さっそく、巨人のお出ましかいっ! 行くぜ!」
旭は川沿いにある木を斧で切り倒し、リザードマンたちの行く手を阻む。エルクロプスは巨体を生かした『突撃』を繰り出し、木々を薙ぎ倒すが、馨と旭は軽い怪我を負いながらも体勢を整えて、次の攻撃に備えた。
「他の仲間が来るまで、時間稼ぎっす」
馨は巨人のターゲットになっていたが、『ドッジダッシュ』で回避すると、旭の隣まで移動した。
「助かるぜ、馨」
旭はギガースアックスで『吹き荒れる塵旋風』を発動させ、巨人だけでなく、リザードマンの群れも薙ぎ倒していく。その場にいたリザードマンは全て消え去ったが、巨人は仁王立ちして、防御に徹していた。
「巨人はそう簡単に倒せないってか」
どうやらエルクロプスは、ハイオークたちと分かれて別のルートから村へと攻め込もうとしていたが、川のルートに気が付いた馨は、旭と連携して、巨人たちと対峙していた。
●
一方、ヴァイスが作った落とし穴にリザードマン2匹が引っかかると、釣られるように他のリザードマンたちが倒れていく。それを見たハイオークたちは憤慨して、テントの布を引き裂き、バラバラに破壊してしまった。
ハンターたちが、その様子を繁みの中で一部始終、見ていた頃、真司が試作型魔導銃「狂乱せしアルコル」で射撃し、バイクで走り込んできた。リザードマンたちは敵が一人しかいないと思ったのか、真司を狙って『強打』を繰り出してきた。
「後ろが、がら空きだぜ?」
敵の攻撃を回避しながら、真司がそう言うと、繁みからルンルンが姿を現した。
「呼ばれちゃったので、出てきちゃいました。ジュゲームリリカルクルクルマジカル…ルンルン忍法ニンジャ力(パワー)」
ルンルンは符に口付けすると『地脈鳴動』を展開していく。味方の戦闘力を上げる魔法である。
「目覚めて貴方のニンジャ力☆」
オオ、見よ。仲間のパワーが上がっていくではないか。
奏音の放った『風雷陣』が稲妻となり、3匹のリザードマンの脚に命中。攻撃を受けた敵は奇声を発した。
続いて、遥華が『マジックアロー』で攻撃すると、リザードマン1匹がダメージを受けて消滅していく。
さらにヴァイスが『疾風』でバイクを走らせ、『徹刺』で敵の集団を切り裂いていく。一直線の閃光が走る中、攻撃範囲内にいたリザードマンたちは全て塵と化して消滅していく。
「ハイオークにも攻撃は当たったようだが、一撃で倒せる相手ではないか」
「残りが3体なら、これだな」
真司が『デルタレイ』で光の三角形を作り出すと、頂点から光が迸り、3体のハイオークの身体を貫いた。敵の身体に焼けるような痛みが走り、ハイオークたちは勝ち目がないと思ったのか、川沿いの方へと逃げ出した。
「迂回して村まで接近されたら大変です」
遥華がそう言うと、ヴァイスたちはハイオークたちを追いかけて、川沿いへと向かった。
川の流れる音が聴こえてきたが、時折、木が倒れる音も耳に入った。
「こちら柊、ハイオークたちが川沿いに逃げ込んだようだ」
トランシーバーで応対したのは、馨だった。
「巨人は川沿いから村へ進むつもりらしいっす」
「そうか。それで、道の方には巨人がいなかったのか」
真司は事の次第を知ると、同行している仲間たちに告げて、馨たちと合流した。
巨人がいたのは、村から600メートル前後の場所だった。
川を伝って、リザードマンの群れが次々と出現。
「ここは絶対に守り切ります! ジュゲームリリカル…ルンルン忍法土蜘蛛の術! ここで場に伏せたフィールドトラップ発動です! さぁ、みなさん今のうちに」
ルンルンは『地縛符』を発動させ、巨人がいる範囲内に結界をしかけた。ロープで罠を作るより、術を使った方が効率的だと閃いたのだ。彼女の使命は人々の平和と命を守るため、何があってもその信念が揺らぐことはない。
その想いが通じたのか、巨人は身動きが取れなくなり、行動不能になった。
「村に近付くなら、容赦はしません」
奏音の放った『桜幕符』が巨人の視界を遮るように、桜吹雪のような幻影が舞い散った。
巨人の周囲にいるリザードマンに狙いを定め、真司は『ファイアスローワー』を噴射した。範囲内にいた敵が8匹、焼き尽くされて消滅。
だが、川沿いにいたリザードマンの進軍は止まらなかった。
激戦の中、ハンターたちは怪我を負いながらも奮闘していた。
「やはり遊撃隊がいましたね」
遥華は先陣にいるリザードマンに『ファイアアロー』を放った。
それを合図に、ヴァイスが『疾風』と『徹刺』を駆使して、軌道上の敵を貫いていく。
「これほどのリザードマンたちが隠れていたとはな」
川のルートに気が付いていなかったら、どうなっていたことか。
馨は『立体攻撃』で巨人の右腕に飛び乗ったかと思うと、『部位狙い』で巨人の頭部に攻撃をしかけ、敵の額に命中した。
追い打ちをかけるように旭が『吼え猛る爆突風』を巨人に叩きつけた。6Mある巨体は身動きが取れなかったが、旭の攻撃でダメージを受けているのは確かだ。
「俺達の攻撃をくらって、まだ立つ気力があるとはなっ!」
「村には重体の人もいるから、歪虚達はここでやっつけちゃいます! ジュゲームリリカル…ルンルン忍法三雷神の術! 召喚☆めがね、うくれれ、おいーっす」
ルンルンは迫り来るリザードマン3匹に狙いを定めて『風雷陣』を投げつけた。稲妻となった符が、敵の胴体を貫いていく。
真司の『ファイアスローワー』でリザードマンが6匹消え去り、ヴァイスの『疾風』と『徹刺』による攻撃で、リザードマン7匹が串裂きになるように消滅していく。
だが、ハイオークの姿が見当たらないのだ。川沿いに逃げ込んでいる可能性もあるが…。
「何があっても、ここは通さないっすよ」
馨は『立体攻撃』からの『部位狙い』で、巨人の一つ目にダメージを与えることができた。旭が『吼え猛る爆突風』を繰り出すが、巨人はなかなか倒れなかった。
「術で身動きが取れない割には、しつこいヤツだな」
「村の方角に移動しているリザードマンを止めなければ……」
リザードマンの注意を自分に引き付けるため、奏音は最大射程の位置から『風雷陣』を投げつけた。攻撃は命中し、3匹のリザードマンの腕が斬り裂かれていく。遥華は敵の遊撃を警戒して『マジックアロー』を放ち、ダメージを受けたリザードマンが一匹消えていく。
「川から迂回してくる敵には要注意です。皆さん……」
遥華がそう言いかけた時、崖の陰からハイオークたちが襲いかかってきた。背後から攻め込まれ、奏音と遥華は回避しようとしたが間に合わず、武器で受けを試みたが、ハイオークたちは『乱刃』で攻撃を繰り出し、二人は地面に倒れ込んだ。
「奏音、遥華、しっかりしろ!」
ヴァイスが駆け寄り、二人を庇うように試作振動刀「オートMURAMASA」でハイオークの攻撃を受け流した。
「ふざけやがって!」
さすがの真司も、怒りを顕にした。
「貴様らに相応しい世界へ誘ってやる」
ハイオークの居場所を特定できた真司は、『デルタレイ』を解き放つ。3体のハイオークは光に貫かれ、その衝撃で身体が拡散するように消え去った。
「VOIDだけあって、卑怯を通り越してるっすよ」
馨は『立体攻撃』で巨人の肩に飛び乗り、『部位狙い』で敵の顔面を小太刀「芙蓉」で突き刺した。巨人は眉間を傷つけられ、咆哮をあげた。
「てめぇら、ぜってー、ゆるさねぇぞ」
旭は巨人の前に立ち、『叩き付ける下降噴流』で上段から地へと斧を叩き付けた。重い一撃が、巨人の胴部に叩きつけられた。
「女性を傷つけるとは、まさに愚の骨頂だな」
ヴァイスは『疾風』からの『剛』を繰り出し、巨人を地面に叩き込んだ。
それぞれの強烈な一撃が炸裂し、エルクロプスは大地に溶け込むように消え去った。
「……ヴァイスさん」
遥華と奏音は自力で起き上がることができたが、しばらくスキルが使えないほどの重い傷を負ってしまった。
「遥華、奏音、ありがとう」
ヴァイスは二人をそれぞれの馬に乗せて、礼を言った。
「……」
遥華は何を言えば良いのかと少し迷っていた。
その様子に、真司がふと言った。
「遥華と奏音のおかげで、ハイオークを見つけ出すことができた。ありがとな」
「……歪虚は全て、退治できたのでしょうか」
奏音は自分のことよりも、村を守れたのかどうかが気になっていた。
「VOIDは全て倒せたはずっすよ」
馨が受け答えると、奏音は安堵していた。
「それでは、村に戻ってマクシミリアンさんに報告しましょう」
「そうだな。んじゃ、行くか」
旭がそう言うと、遥華が別の場所を指差した。
「旭さん、村は東ですよ」
「おっと、そうだったな。すまねぇ」
旭は方向音痴だったのだが、そのおかげで巨人と出くわしたのは、まさに運であった。
●
村に辿り着いたハンターたちは、マクシミリアンに報告することにした。
歪虚たちを撃墜した位置を地図で確認すると、村から500メートルほど離れた場所だった。
「今回は助かった。遥華と奏音は無理するな」
マクシミリアンがそう言うと、奏音が応えた。
「歪虚の脅威は取り除くことができました。これで住人たちも、元の生活に戻れますよね」
「ああ、皆のおかげだ」
ハンターたちの顔を見ながら、マクシミリアンが呟くように言った。
「魔術に機導術に符術、遠距離攻撃も互いに連携すると強いよな!」
旭の言うことは尤もなことだ。
だからこそ、依頼を達成することができたのだ。
山間部の麓に小さな村があったが、住人の姿はなく、ハンターたちが依頼を聞きつけてやってきた。
「あの時のような……そんな事だけはさせないっすよ」
無限 馨(ka0544)は、LH044の惨劇を忘れることができなかった。それが時として胸に突き刺さることもある。
だが、VOIDが目の前にいるならば、排除するのみ。
馨は痛切な想いとは裏腹に、軽い笑みを浮かべる。
「ま、やることやって、住人たちを安心させてやりたいっすね」
「怪我したハンターもいるみたいだし、他に逃げ道はない……だったら、前へ向かって道を切り開けば良いってこったろ!」
恐い者知らずの勢いで、岩井崎 旭(ka0234)が言った。
「その通りだな。村の防衛はマクシミリアンと壮に任せて、俺達は先を急ごう」
ヴァイス(ka0364)は罠を設置するための武器や道具も用意していた。
水本 壮(みずもと・そう)と言えば、地下室の入口で警護に専念。住人たちが全員、地下室で待機していたからだ。
「マクシミリアン、地図は依頼が終わったら返すぜ。サンキューな」
柊 真司(ka0705)がそう言うと、マクシミリアン・ヴァイス (kz0003)は動じることもなく答えた。
「なに、礼には及ばない。だが、俺は村から離れるつもりはない。重体のハンターがいるからな」
「んー、そうだよな。だったら、村に接近してくる歪虚がいたら、連絡してくれ」
真司が頼むと、マクシミリアンは無言で承諾した。
「それでは、行きましょう」
夜桜 奏音(ka5754)はゴースロンに騎乗し、央崎 遥華(ka5644)が追撃ポイントを確認して戦馬に乗ると、他のハンターたちも出発していく。
馨は試作魔導バイク「ナグルファル」に乗り込み、村の入口にいるマクシミリアンに「何かあったら、こっちからも連絡するっすよ」と告げ、バイクを走らせた。
ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)は村の周囲を隈なく観察していたが、侵入できそうな箇所は出入り口にもなっている石の門であることが分かった。念の為、ルンルンは門から少し離れた場所に『地縛符』で結界を作り、準備が整うと魔導二輪「闘走」に乗り、仲間の後を追う。
「とにもかくにも、目的地点までゴーです!」
マクシミリアンは村の警護に徹する。仲間たちとはトランシーバーで連絡を取り合うことにした。
これなら大きな音を鳴らさなくても、村にいる者と連絡が可能だ。
「リザードマンの襲撃には気をつけろ」
真司は試作魔導バイク「ナグルファル」を走らせ、ヴァイスが乗る試作魔導バイク「ナグルファル」と並んだ。バイクが颯爽と走り、旭が戦友として慕うゴースロンのシーザーも勇み足で駆けていく。
「もう少しで目的地だ」
村から800メートル地点まで進むと、その場で降り、ハンターたちは何やら作業は始めていた。
●
地面が唸るように鳴り響く。
ヴァイスが魔導ドリルで道に穴を掘っていたが、行商用として補強されていた道だったため、予想以上に掘るのに時間がかかっていた。
「真司が偵察に行っている間に罠を完成させないとな」
それでも、人の足首ほどの深さまで掘ることができ、奏音がワイヤー代わりに落ちいていた小枝を何本か穴の中に放り込んだ。
ヴァイスは掘った穴の上にテントの布を覆い、四隅は枝を打ち込んで固定。布の上に、掘り起こした土をばら撒いてカモフラージュすることにした。
「ほどよく撒いていきましょう」
遥華と奏音も罠の設置を手伝っていた。
真司は中間地点の距離から敵の動向を見張っていたが、ハイオークやリザードマンたちは地面が鳴り響く音が気になっていたのか、こちらに向ってくるのが見えた。
「巨人の姿が見えないってのは、どういうことだ?」
怪訝な顔で真司は呟くと、すぐさまバイクに乗り、仲間の元へと戻った。
その頃……。
「やはり川から村へ進むルートがあったっすね」
馨は川沿いから進んでくるエルクロプスとリザードマンの集団を発見した。魔導短伝話でマクシミリアンに連絡。
「こちら無限、エルクロプスとリザードマンの集団が村に接近中」
『了解だ。村の警備を固める』
マクシミリアンの声が切れると、馨はバイクから降り、旭の援護に入った。
「さっそく、巨人のお出ましかいっ! 行くぜ!」
旭は川沿いにある木を斧で切り倒し、リザードマンたちの行く手を阻む。エルクロプスは巨体を生かした『突撃』を繰り出し、木々を薙ぎ倒すが、馨と旭は軽い怪我を負いながらも体勢を整えて、次の攻撃に備えた。
「他の仲間が来るまで、時間稼ぎっす」
馨は巨人のターゲットになっていたが、『ドッジダッシュ』で回避すると、旭の隣まで移動した。
「助かるぜ、馨」
旭はギガースアックスで『吹き荒れる塵旋風』を発動させ、巨人だけでなく、リザードマンの群れも薙ぎ倒していく。その場にいたリザードマンは全て消え去ったが、巨人は仁王立ちして、防御に徹していた。
「巨人はそう簡単に倒せないってか」
どうやらエルクロプスは、ハイオークたちと分かれて別のルートから村へと攻め込もうとしていたが、川のルートに気が付いた馨は、旭と連携して、巨人たちと対峙していた。
●
一方、ヴァイスが作った落とし穴にリザードマン2匹が引っかかると、釣られるように他のリザードマンたちが倒れていく。それを見たハイオークたちは憤慨して、テントの布を引き裂き、バラバラに破壊してしまった。
ハンターたちが、その様子を繁みの中で一部始終、見ていた頃、真司が試作型魔導銃「狂乱せしアルコル」で射撃し、バイクで走り込んできた。リザードマンたちは敵が一人しかいないと思ったのか、真司を狙って『強打』を繰り出してきた。
「後ろが、がら空きだぜ?」
敵の攻撃を回避しながら、真司がそう言うと、繁みからルンルンが姿を現した。
「呼ばれちゃったので、出てきちゃいました。ジュゲームリリカルクルクルマジカル…ルンルン忍法ニンジャ力(パワー)」
ルンルンは符に口付けすると『地脈鳴動』を展開していく。味方の戦闘力を上げる魔法である。
「目覚めて貴方のニンジャ力☆」
オオ、見よ。仲間のパワーが上がっていくではないか。
奏音の放った『風雷陣』が稲妻となり、3匹のリザードマンの脚に命中。攻撃を受けた敵は奇声を発した。
続いて、遥華が『マジックアロー』で攻撃すると、リザードマン1匹がダメージを受けて消滅していく。
さらにヴァイスが『疾風』でバイクを走らせ、『徹刺』で敵の集団を切り裂いていく。一直線の閃光が走る中、攻撃範囲内にいたリザードマンたちは全て塵と化して消滅していく。
「ハイオークにも攻撃は当たったようだが、一撃で倒せる相手ではないか」
「残りが3体なら、これだな」
真司が『デルタレイ』で光の三角形を作り出すと、頂点から光が迸り、3体のハイオークの身体を貫いた。敵の身体に焼けるような痛みが走り、ハイオークたちは勝ち目がないと思ったのか、川沿いの方へと逃げ出した。
「迂回して村まで接近されたら大変です」
遥華がそう言うと、ヴァイスたちはハイオークたちを追いかけて、川沿いへと向かった。
川の流れる音が聴こえてきたが、時折、木が倒れる音も耳に入った。
「こちら柊、ハイオークたちが川沿いに逃げ込んだようだ」
トランシーバーで応対したのは、馨だった。
「巨人は川沿いから村へ進むつもりらしいっす」
「そうか。それで、道の方には巨人がいなかったのか」
真司は事の次第を知ると、同行している仲間たちに告げて、馨たちと合流した。
巨人がいたのは、村から600メートル前後の場所だった。
川を伝って、リザードマンの群れが次々と出現。
「ここは絶対に守り切ります! ジュゲームリリカル…ルンルン忍法土蜘蛛の術! ここで場に伏せたフィールドトラップ発動です! さぁ、みなさん今のうちに」
ルンルンは『地縛符』を発動させ、巨人がいる範囲内に結界をしかけた。ロープで罠を作るより、術を使った方が効率的だと閃いたのだ。彼女の使命は人々の平和と命を守るため、何があってもその信念が揺らぐことはない。
その想いが通じたのか、巨人は身動きが取れなくなり、行動不能になった。
「村に近付くなら、容赦はしません」
奏音の放った『桜幕符』が巨人の視界を遮るように、桜吹雪のような幻影が舞い散った。
巨人の周囲にいるリザードマンに狙いを定め、真司は『ファイアスローワー』を噴射した。範囲内にいた敵が8匹、焼き尽くされて消滅。
だが、川沿いにいたリザードマンの進軍は止まらなかった。
激戦の中、ハンターたちは怪我を負いながらも奮闘していた。
「やはり遊撃隊がいましたね」
遥華は先陣にいるリザードマンに『ファイアアロー』を放った。
それを合図に、ヴァイスが『疾風』と『徹刺』を駆使して、軌道上の敵を貫いていく。
「これほどのリザードマンたちが隠れていたとはな」
川のルートに気が付いていなかったら、どうなっていたことか。
馨は『立体攻撃』で巨人の右腕に飛び乗ったかと思うと、『部位狙い』で巨人の頭部に攻撃をしかけ、敵の額に命中した。
追い打ちをかけるように旭が『吼え猛る爆突風』を巨人に叩きつけた。6Mある巨体は身動きが取れなかったが、旭の攻撃でダメージを受けているのは確かだ。
「俺達の攻撃をくらって、まだ立つ気力があるとはなっ!」
「村には重体の人もいるから、歪虚達はここでやっつけちゃいます! ジュゲームリリカル…ルンルン忍法三雷神の術! 召喚☆めがね、うくれれ、おいーっす」
ルンルンは迫り来るリザードマン3匹に狙いを定めて『風雷陣』を投げつけた。稲妻となった符が、敵の胴体を貫いていく。
真司の『ファイアスローワー』でリザードマンが6匹消え去り、ヴァイスの『疾風』と『徹刺』による攻撃で、リザードマン7匹が串裂きになるように消滅していく。
だが、ハイオークの姿が見当たらないのだ。川沿いに逃げ込んでいる可能性もあるが…。
「何があっても、ここは通さないっすよ」
馨は『立体攻撃』からの『部位狙い』で、巨人の一つ目にダメージを与えることができた。旭が『吼え猛る爆突風』を繰り出すが、巨人はなかなか倒れなかった。
「術で身動きが取れない割には、しつこいヤツだな」
「村の方角に移動しているリザードマンを止めなければ……」
リザードマンの注意を自分に引き付けるため、奏音は最大射程の位置から『風雷陣』を投げつけた。攻撃は命中し、3匹のリザードマンの腕が斬り裂かれていく。遥華は敵の遊撃を警戒して『マジックアロー』を放ち、ダメージを受けたリザードマンが一匹消えていく。
「川から迂回してくる敵には要注意です。皆さん……」
遥華がそう言いかけた時、崖の陰からハイオークたちが襲いかかってきた。背後から攻め込まれ、奏音と遥華は回避しようとしたが間に合わず、武器で受けを試みたが、ハイオークたちは『乱刃』で攻撃を繰り出し、二人は地面に倒れ込んだ。
「奏音、遥華、しっかりしろ!」
ヴァイスが駆け寄り、二人を庇うように試作振動刀「オートMURAMASA」でハイオークの攻撃を受け流した。
「ふざけやがって!」
さすがの真司も、怒りを顕にした。
「貴様らに相応しい世界へ誘ってやる」
ハイオークの居場所を特定できた真司は、『デルタレイ』を解き放つ。3体のハイオークは光に貫かれ、その衝撃で身体が拡散するように消え去った。
「VOIDだけあって、卑怯を通り越してるっすよ」
馨は『立体攻撃』で巨人の肩に飛び乗り、『部位狙い』で敵の顔面を小太刀「芙蓉」で突き刺した。巨人は眉間を傷つけられ、咆哮をあげた。
「てめぇら、ぜってー、ゆるさねぇぞ」
旭は巨人の前に立ち、『叩き付ける下降噴流』で上段から地へと斧を叩き付けた。重い一撃が、巨人の胴部に叩きつけられた。
「女性を傷つけるとは、まさに愚の骨頂だな」
ヴァイスは『疾風』からの『剛』を繰り出し、巨人を地面に叩き込んだ。
それぞれの強烈な一撃が炸裂し、エルクロプスは大地に溶け込むように消え去った。
「……ヴァイスさん」
遥華と奏音は自力で起き上がることができたが、しばらくスキルが使えないほどの重い傷を負ってしまった。
「遥華、奏音、ありがとう」
ヴァイスは二人をそれぞれの馬に乗せて、礼を言った。
「……」
遥華は何を言えば良いのかと少し迷っていた。
その様子に、真司がふと言った。
「遥華と奏音のおかげで、ハイオークを見つけ出すことができた。ありがとな」
「……歪虚は全て、退治できたのでしょうか」
奏音は自分のことよりも、村を守れたのかどうかが気になっていた。
「VOIDは全て倒せたはずっすよ」
馨が受け答えると、奏音は安堵していた。
「それでは、村に戻ってマクシミリアンさんに報告しましょう」
「そうだな。んじゃ、行くか」
旭がそう言うと、遥華が別の場所を指差した。
「旭さん、村は東ですよ」
「おっと、そうだったな。すまねぇ」
旭は方向音痴だったのだが、そのおかげで巨人と出くわしたのは、まさに運であった。
●
村に辿り着いたハンターたちは、マクシミリアンに報告することにした。
歪虚たちを撃墜した位置を地図で確認すると、村から500メートルほど離れた場所だった。
「今回は助かった。遥華と奏音は無理するな」
マクシミリアンがそう言うと、奏音が応えた。
「歪虚の脅威は取り除くことができました。これで住人たちも、元の生活に戻れますよね」
「ああ、皆のおかげだ」
ハンターたちの顔を見ながら、マクシミリアンが呟くように言った。
「魔術に機導術に符術、遠距離攻撃も互いに連携すると強いよな!」
旭の言うことは尤もなことだ。
だからこそ、依頼を達成することができたのだ。
依頼結果
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マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 柊 真司(ka0705) 人間(リアルブルー)|20才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2015/12/13 20:42:29 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/12/13 00:16:38 |