• 闇光

【闇光】少年、歌と死を贈る

マスター:狐野径

シナリオ形態
ショート
難易度
難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2015/12/15 07:30
完成日
2015/12/20 21:52

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●嫌悪
 エクエスは無垢な顔で眠るプエル(kz0127)を見つめ苛立ちを募らす。
「こうなったのもアレのせいであり……」
 エクエスは嫌悪に満ちた顔でプエルの首に手を伸ばす。
 布団から顔をのぞかせているレチタティーヴォを模した布製の人形が、ボタンの目でじっと見ている。ただの人形にも関わらず、心を見透かしているようで気持ちが悪かった。
「ちっ」
 首を絞めてみようとしたのをやめて、少し前の出来事を思い返す。
 夢幻城に到着したプエルをレチタティーヴォは迎えた。エクエスからしてみれば、レチタティーヴォらしくない行動であり、らしい行動でもある。
 演出の為、確認の為、プエルが望むだろうことをレチタティーヴォはした、それだけのこと。
 レチタティーヴォに会った瞬間、プエルは安堵と恐怖という相反する表情をしていた。なお、プエルはレチタティーヴォに会ったことすら記憶していないし、頭を撫でられたなどもっと知らない。
「このガキのせいで……すべてがめちゃくちゃだ」
 エクエスはすやすやと眠るプエルに怒りをぶつけるのをためらった。愛らしい寝顔は心を和ませるが、怒りも一緒に連れてくる。
 レチタティーヴォ人形を殴り飛ばそうと思ってプエルから取り上げようとしたが、人形にしがみついているプエルが邪魔でできなかった。

●恐怖
 目を覚ましたプエルはベッドの上に座り、毛布をかぶって震える。
「プエル様、それでは何も解決しませんよ?」
「……怖い物は怖いんだっ! 痛いのは大嫌いだっ!」
「あのお方は特に何もおっしゃっていませんが……人間を追い立てに向われるそうですよ?」
「……ううっ!」
 エクエスが言ったことはプエルも知っている。だからこそ、自分も何かしないといけないのも理解している。
 きちんとした部屋をもらえたのもレチタティーヴォのお蔭であり、なんとしても役に立たないといけないと考えている。
 一方で人間に手ひどくやられたことが怒りと恐怖につながる。
 人間を殺さないといけないと考えつつも、もっと遊びたいと考えるとハンターに遭いたくはない。
「モフリがいなくなったのは僕のせい。僕が頑張れば、モフリは出かけなかったんだよね」
 事実誤認もあるがエクエスは何も言わず、じっとしている。
 実際は手違いの荷物をもらい、エクエスがモフリに促したのだから。モフリは抵抗せず、出かけて行ったのは間違いない。
「怖いんだよ」
 レチタティーヴォを模したと思われる布で来た人形を抱きしめ、プエルは毛布の間から顔だけ出す。その顔に浮かぶのは泣き出しそうな表情で、不安と何かにすがりつきたいと言う思いが伝わる。少女めいている整った顔の為に、妖しい雰囲気が漂う。
 エクエスはプエルの顔を見て唇を噛み、表情を変えない努力をする。ベッドに座り、プエルの方を向く。
「エクエスは僕の側にいてくれる?」
「もちろんですよ」
 エクエスが頭をなでるとプエルは嬉しそうな声を上げる。プエルは毛布ごとエクエスの胸に飛び込んだ。
「さすがにこのままはまずいでしょう? あなたはあなたのなせることをしましょう?」
「でも……」
「幸いなことに……手を貸していただけていますので、あなたが『死の演出』をして差し上げればいいのです」
 エクエスが自信ありげに告げるが、プエルは良くわからなかった。何かさせてくれる、怖いことはないと力説されてうなずいた。

●死神の歌
 撤退を行う人間のキャンプ地。
 負傷した者もいる為、簡単にはことが運ばない。
 戦えないが動けるとしても、戦況は希望を奪い、寒さは気力を凍らせていく。
 幸いなことにまだ食料はあるし、暖を取るすべは残っている。これらのお蔭で、逃げ切り温かい家に戻れると言う夢を見ることができた。幾人か集まれば、当たり障りのない話から噂話まで出る。
「なあ訊いたか?」
 撤退中の行列かキャンプ地かで多くの人間が死んだと言う。
「すべてが死んだわけではなく、生き延びた人間もいて目撃者がいるんだ」
「あれか? 死者を呼ぶ歌」
「そうそれ」
「なんだそれ?」
「見回りもいるんだが、突然歌が聞こえてくるんだそうだ。白い服を来た十代半ばくらいの子が現れるんだ、もちろんその子が歌っているんだよ」
 歌声は澄んでおり、慰問を兼ねて戦場を回っているエクラ教信徒か司祭かと思われている。歌い方が声楽のようなそれであり、歌もまた子が歌うような合唱の曲だと言うこともあり、慰問者が来たという認識だった。
 危険地帯であっても来るその子供に、疑問もあるが心身共に疲れている者たちにとっては天使のように見えたようだった。
 声を聞いた重傷の者は一時痛みを忘れてうっとりしていた、と看護をしていた者は見たと言う。
 しばらくすると楽器の音が響く、弦楽器の美しい音色が。
 ここからが地獄の始まりだという。
 現れた楽団は人間の大人等身大の陶器の人形であり、白い楽器を奏でる姿は人間ではありえない。
 歌う子が人間と思われるため、守るために引き寄せようとした者は赤いマントを羽織った騎士のような者に殺された。フードを目深にかぶっているためそれが何か良くわからないが、人間と判断した。
 また、歪虚に対して攻撃をしたり、子どもに近づこうとした者はことごとく殺されていく。目撃した者によると、土の壁に阻まれ攻撃できなかったり、細い糸で斬り裂かれたり、広範囲の炎の魔法や直線に走る電撃を見たという。
「つまり、歪虚に利用されている子がいるってことかい?」
「らしいぞ?」
「で、それで終わりか?」
「それと、ラッパを吹くスケルトンのようなものが来て、スケルトンが湧きだしたと言うのも聞いた」
「……ハンターもいたよな?」
「もちろん。ただ、ハンターが近づいてきた時点で彼らは離脱してしまった」
「……頭いいよな」
「まあな」
 実際それがある事なのか、噂話をしていただけだ。
 戦場であり、何があるかなど分からない。これが真実だろうと虚構だろうとも、混沌とする戦場で油断はできないと言う教訓である。
 このキャンプ地は夜が明ける時間になれば、撤収を始める。

●悦楽
 プエルはこの作戦が気に入っていた。
 人前で存分に歌い、怪我をしないで済むなんて嬉しい限りだ。
「ふふっ、楽しい」
 プエルは白いローブをひらひらさせくるりと回り、小走りに走る。首にかけてあるペンダントのヘッドが移動し、シャラシャラと音を立てる。
「これ、何なのかなぁ」
 モフリがしていたのはどうしてなのかよくわからない鳥かごの細工のペンダントヘッド。中に入っている石は赤い。
 難しいことは考えない。
 人間を殺すことが正しいのだ。そして、重要なのは自分が楽しいこと。
「ふふっ、次はここだね?」
 白い布をすっぽりかぶり、プエルはキャンプ地に近づいた。

リプレイ本文

●用心
 リンカ・エルネージュ(ka1840)とレイオス・アクアウォーカー(ka1990)は重傷者がいるテントの中にいた。
 リンカは護衛も兼ねて看護の手伝をし、レイオスは兵士コートを纏い兵士に混っている。彼は噂通りの歪虚が来たらぎりぎりまでひきつけられるだろうとも考える。
「何も出なければ一番いいよね?」
「そうだな……どんな敵か?」
 リンカとレイオスはテントの外を見た。

 瀬織 怜皇(ka0684)とUisca Amhran(ka0754)は兵士のコートを羽織り、見回りに加わる。
「音楽で人に危害を加えるとは許せない」
 噂を聞いたUiscaはつぶやく。
「イスカの怒りはもっともだよ」
 Uiscaを愛称で呼び、怜皇は同情を示す。
「怒りもあるけど悲しいの、レオ」
 音楽が悪と思われるかもしれないから。
「でも、噂で終わるかもしれないわ」
「この見回りが無駄?」
「ならないわ……ここの人達を守ることになるもの」
「分かってる」
 二人は見つめ合って微笑んだ。

 星輝 Amhran(ka0724)は黒い着物を生かして隠れ、キャンプ地の様子をうかがう。
「イスカとレオは二人、わしは独り行動じゃのう、寂しいのう」
 星輝はけろりとした顔でつぶやき、妹とその恋人の事を考える。
「敵がどこから出るかわからないかの?」
 星輝は暗がりにうずくまる、テントが幾つも並ぶ間に挟まれるように。

 高瀬 未悠(ka3199)と町田紀子(ka5895)はキャンプの中央のにあるたき火側にいた。テントではなくここで夜を明かしている兵士もそれなりに多い。
 未悠は兵士のコートを羽織り、周囲を見る。
「緊張しているの?」
 未悠が尋ねると紀子はうなずく。
「兵士の格好してもばれそうだし……もちろん、救援活動は人一倍するし……弱いおとり役のハンターなら……」
「そう、でも、ここにいるのよね? 仲間はいる。兵士の人達だって覚醒者ではないというだけよ?」
 兵士もある程度訓練されて派遣されているはずだった。
 誰もが不安。不安は伝播し、悪い噂は広まっていく。
「ヒーローとしてやれることをやる」
 紀子の固いながらも微笑み決心する。
 未悠はうなずきながら、自分も同じだと内心つぶやき、笑み返した。

 ステラ・レッドキャップ(ka5434)はこのキャンプの指揮官のテントに入る。
 噂の事を考えると、重傷者をまとめておく等の進言はしていた。それよりも彼が警戒しているのは指揮官が敵の術にはまる事だった。
「あと少しで撤退もできる……噂が本当ではないことを祈りたい」
 指揮官は毅然として見えるが、疲労もうかがえる。
「用心するに越したことはない……噂が広まるのはそれだけ士気が低いってことだし」
 可愛らしい外見に合わせて少女のふりをする事が多いステラだが、今回は率直な行動を選んだ。時間が惜しいというのが第一理由、それ以外なかった。

 噂が噂であればいいが、歪虚がどこにいてもおかしくはない場所だった。

●微睡と悪夢
 夜が明ける時間。
 舞う白い布は雪のよう。雪を踏む音が風にまぎれる。

 星輝は視界に何か近づいている感覚を得た。より一層意識して隠れうかがい、トランシーバーで連絡を入れるタイミングを待った。
 見回りをしていた怜皇は違和感に気付きUiscaを止める。仲間に連絡を入れると、何事もなかったかのように二人で見回りをしつつキャンプ地の中央に戻る。
 連絡を受けて、いつでも動けるようにとレイオスとリンカは待機する。どんな敵かを見極め、兵士たちを逃がす必要も脳裏に描く。
 ステラは指揮官のテントを視野に入れ、様子を見る。すぐに動くと敵に違和感を与えて警戒をさせるかもしれないから。
 紀子は周囲に気を配りじっとする。兵士を逃がしたいという気持ちが強いが、どう敵が来るか分からないため下手に動けないため、もどかしかった。
 未悠は兵士のふりで雑談もないのも不自然かもしれないと考えるが、敵を警戒する方に力を注いだ。

●接敵
 少年の歌声が響く。
 気付いたらそれはそこにいた。否、気付きにくかった、人間に近い外見、色や気配などが溶け込んでいたために。
 初めは聞き惚れた兵士たちは噂を思いだし、恐慌に陥る者も出てくる。
 一番近くにいる未悠と紀子は落ち着くように兵士に声を掛け、比較的冷静な兵士たちと逃げるための行動をとる。仲間が来て覚醒状態になるまでは兵士に混じる。
 怜皇とUiscaがたき火があるここにやってきて、状況を確認する。
 テントの中から見ているレイオスは首をひねった。
「この声、聞き覚えがある」
「そう? 私も知っているかな?」
「プエル……」
「え? ええっ? あの子だよね?」
 リンカは初めて聞いたプエルの歌声に驚く。
 二人はプエルと面識があるため、攻撃するタイミングをテントの中で計った。
 星輝は仲間からの連絡や自分が見たもの、聞こえる歌声からそろそろと考える。
「気をつけなければのう」

●逃げよ
 プエルの側に現れた人形の楽団による音楽が響き、一瞬ここがどこか忘れるほど聞き惚れる。
 全ての音を斬り裂くようにラッパの無意味な音が響き渡り、中心と通路をふさぐようにスケルトンが湧いた。
「スケルトンが現れているなら、そちらに私は向かう」
「私は少しでも逃がせるように行動する」
 未悠と紀子は互いにうなずき合い、まずは兵士たちを逃がす。これは仲間を楽団に通りやすくする行動でもあった。

「やろっ!」
 テントを飛び出したレイオスはプエルと思われる人物に和弓を引き絞り矢を放とうとしたが、急きょ回避行動をとる。赤い布が目の前を横切り、剣で攻撃をしてきたのだ。
 リンカはとっさに武器を振るい赤い布の人物を斬りつける。手ごたえはあったが、鎧なのか固いモノにはじかれた。
 切れたフードの下に薄く笑う、見知った歪虚の顔があった。

 Uiscaはプエルに対抗するように、歪虚たちの行動を阻害するために『レクイエム』を使う。
 しかし「効かないよ」と言うように、白い布の陰で赤い唇が笑みを浮かべたようだった。
「イスカ、行くよ」
 怜皇は楽団との距離を詰めるために走り、それにUiscaが続いた。

 ステラの不安は指揮官が魅了されたり動けなくなることであり、テントの中に入り確認をした。
「杞憂だった?」
 まだ危機は去っていない、時間が経ってから影響がでたり、武力をもって害するかもしれないから。

 星輝は武器を構える。
 ラッパを持つ、青いマントをまとったスケルトンはそこにいる。その場にスケルトンが10体現れたのだ。
「予測済みじゃ」
 仲間に連絡をした直後、素早く近寄りラッパを狙う。十分攻撃が通じるという手ごたえがあった。

●死を
 プエルはレクイエムを聞いた瞬間、集中が続かず歌をやめていた。気分を害したためUiscaに向かって、魔法の矢を放った。
 Uiscaが避けたため、矢ははじけて消えた。
「撤退しますよ、分が悪いです」
 エクエスは声を上げる。前にいるレイオスに一太刀浴びせかけるが避けられ、眉間にしわがよる。
 楽団はプエルを守るための行動を起こす。
 バイオリンを持つ物はプエルの側で控え、ビオラとチェロは弦を震わせ魔法を放つ。それは一直線に走る電撃であり、一つは一点で破裂する炎の玉だった。兵士の幾人かと怜皇とUiscaが巻き込まれる。
 Uiscaはかろうじて避けたが、犠牲に柳眉を曇らせた。
 コントラバスの弦が震え、土壁が現れた。

 Uiscaは祈った、歪虚を打ち滅ぼす力を願い。
 カッと白く鋭い光が広がり、楽団の一部とプエルを巻き込む。
「うわああ」
 プエルが悲鳴を上げる。
「蹴散らします、よ」
 怜皇がデルタレイを放つ。作られた壁がUiscaの魔法で壊されたこともあり、あっさり楽団を狙えた。

「毛玉の敵討ちもしないのかよ? ハンターから逃げているって噂もあるし、レチタなんとかも見限るだろうよ!」
 レイオスは声を張り上げつつ、目の前のエクエスを攻撃する。鋭い一撃だったがかわされる。
 プエルの反応は見ることができないが、エクエスがレイオスに対して腹を立てているのを感じ取れた。
 リンカは兵士たちを守るためにアースウォールを作る。まだ逃げ切れていない人がおり、紀子が連れていくのが見えたからだ。
「遊軍っていうのが一番よね? あの子、追いこむとどうなるか分からないし」
 ただの癇癪ならいいが、歪虚としての特殊な何かを持っているなら危険極まりない。

 ステラは指揮官のテントから出て周囲を見る。歪虚を見て何者がいるのか理解し、エクエスを狙おうとするが角度が悪かった。
「それなら、でっかい奴だろうな」
 コントラバスに向かった大弓を引き絞った。

「敵はこっちに来ないから」
 紀子は兵士を励ます。マテリアルを活性化させ肉体の増強を行い、倒れている兵士を運び、別の者に肩をかして進む。
 敵の目はただの兵士に行かないだろうが、範囲魔法による巻き添えが恐ろしかった。

 未悠は星輝が示した場所に急いだ。途中で会う兵士たちはテントに逃げるべきかキャンプ地の外に逃げるか惑っている。
「しっかりして! 歪虚とは私たちが戦うわ。あなた方はテントで待機して、何かあれば逃げる準備を」
 叱咤して走り抜ける。

 スケルトンたちは星輝に対して骨を投げて攻撃をしてきた。
 バラバラと飛んでくる11本の骨を全て避けることはむずかしく、一部当たったが何ともなかった。
「痛くはなかったが、いい気はせぬのう」
 再びラッパを狙い、銃弾はラッパを粉々につぶした。予想通りならこれ以上スケルトンは来ないはずだ、召喚のための道具ならば。
「あっけない……」
 スケルトンはまだここにおり、終わってはいない。

●怒りと悲しみと
「モフリを殺したの? レチタティーヴォ様は僕を……」
 レイオスの言葉を聞き取ったプエルはペンダントヘッドを握り締め小刻みに震える。
「プエル様っ! プエル様!」
 エクエスは切羽詰まった声を上げて武器をしまい、レイオスの前から一気に離れる。
 レイオスはそれを黙って見送りはせず、追う。
「レイオス、気を付けてっ!」
 リンカはエクエスのあわてぶりがおかしいと感じ、声を掛ける。
 プエルの側に控えていたバイオリンを持つ二体は、近づくレイオスに攻撃を加える。弦がほどけ、無数の刃となる。
 レイオスは避けられず両方とも食らうが、鎧で一部は止まった。
 残りの楽団の攻撃は怜皇とUiscaに向かう、炎と雷の魔法で。
「レイっ」
「このくらいはまだ……」
 Uiscaは一般の兵士の怪我人もいると気付き、祈りをささげた。
「歌とは本来、こうして人を癒す物です」

 レイオスは追い付くのが精いっぱいで、声を張り上げる。
 ちらりと見えたプエルのペンダントの飾りは、先日彼のペットが付けていたものと同じだった。
「プエルのペンダントを攻撃しろ」
「え、ええ? いいよね、まとめてやっちゃえば」
 リンカが困惑の声を上げる、そこからは見えないから。魔法を紡ぎ電撃を放つ、薔薇の花びらのような白いマテリアルを散らして。
 命中はしているはずだったが、バイオリンを持つ一体がプエルを突き飛ばしてしまった。
 よろめいたプエルはペンダントヘッドから手を離す。
 怜皇は距離を詰め、プエルを巻きこむようにデルタレイを放つ。命中し、プエルが弾かれるまま地面に倒れた。
「うう、なんで? 余にこんなひどいことをするんだ? 余は歌っているだけなのに? 人間はどうして余にひどいことをするんだ!」
 プエルの言葉は、甘えるような困惑のように紡がれる。
「壁が邪魔なんだよっ!」
 ステラは銃に持ち替えてペンダント狙おうとしたが、敵が再び作ったアースウォールが邪魔だった。まずはそれを破壊する。

 紀子は運んだ怪我人をテント内の兵士に託し、どうすべきか考える。
 有利不利もない混沌とした戦場に見えた。
「助けが必要な人……」
 紀子は走った、混沌とした戦場の中心に戻るように。

 スケルトンに囲まれた星輝は次々と棍棒のようなもので殴られる。単調すぎるが、数が多いのは辛く、回避しきれず当たった攻撃もあった。
「ほほう、わしがラッパを壊したのが癪に障ったのかの?」
 青いマントのスケルトンの攻撃が腕に当たり小さな傷を作った。
 星輝は反撃とばかりに大量の投擲武器を天に無造作に投げつけた。それはマテリアルによりコントロールされ、スケルトンたちに突き刺さる。
 星輝はスケルトンと距離を置くために飛び退って、状況を確認した。
 残ったのは青いマントのスケルトンともう一体だけ。
 やってきた未悠は拍子抜けするが、このスケルトンが何か隠し玉を持っていないとは限らないと木を引き締める。
「助太刀いらなかったかしら?」
 未悠は剣の形にしたユナイテッド・ドライブソードを構える。
「いや、まだおるし、逃がせぬからのう」
 星輝は淡々と告げた。

●決着
 レイオスは一気に間合いを詰めプエルのペンダントを狙うが、人形によって阻止される。
「子守りから引退したらどうだ、優男」
「ははっ、ここで抜けるつもりはありませんよ?」
 エクエスはプエルを抱え起こすと、即座に立ち去る。
「待て!」
 ハンターたちは逃がさまいと攻撃を仕掛けるが、人形がことごとく守りに入ってしまいそれらを破壊するだけにとどまった。

 スケルトンと対峙していた星輝と未悠。撃破直後に、嫉妬の歪虚二体がすり抜けるのを感知したが、攻撃する間がなかった。
「このスケルトンどもは退路の為いたのかのう?」
「攻撃された場合、非覚醒者なら十分脅威になりうるのでは?」
 星輝と未悠は周りに敵がいないことを確認後、仲間の所に戻る。

「大丈夫? 今手当てするから」
 紀子は息のある兵士を抱き起し、応急手当てを始める。
 魔法の直撃を受けた者は即死だったが、外れいていた者は破片を食らう等で怪我はしていた。
「祈りの力でも!」
 Uiscaは傷ついた仲間や重い傷に見える者を含め祈りをささげる。
「イスカ……」
 怜皇はUiscaの辛そうな雰囲気を感じ、そっと抱きしめた。

「なんか変」
「何がですか?」
 リンカは首をかしげ、近くにやってきたステラは溜息をもらす。
「あのプエルがプルプルってなった時のエクエスのあわてぶり」
「うーん?」
「ほら、追い込まれると結構、妙な雰囲気になるかなって。でも、今回は守ってくれるヒトがいるからか……」
「追い込み切れなかったと考えています?」
 リンカはうなるが、結論は出なかった。

●憂い
「僕、弱くなったの?」
 嫌だった、恐かった。人間を殺せなければ、レチタティーヴォのためになることをできないと考えるから。
「これは何?」
「それは、いずれプエル様のお役にたちますよ」
 ペンダントを握りしめ、プエルは震えた。エクエスにしがみつき、ほっと息をついた。
「もう、帰りたいな……」
 目閉じると、どこかわからない優しい景色が広がった。

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MVP一覧

  • 【魔装】の監視者
    星輝 Amhranka0724
  • 青炎と銀氷の魔術師
    リンカ・エルネージュka1840
  • Rot Jaeger
    ステラ・レッドキャップka5434

重体一覧

参加者一覧

  • 聖なる焔預かりし者
    瀬織 怜皇(ka0684
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • 【魔装】の監視者
    星輝 Amhran(ka0724
    エルフ|10才|女性|疾影士
  • 緑龍の巫女
    Uisca=S=Amhran(ka0754
    エルフ|17才|女性|聖導士
  • 青炎と銀氷の魔術師
    リンカ・エルネージュ(ka1840
    人間(紅)|17才|女性|魔術師
  • 王国騎士団“黒の騎士”
    レイオス・アクアウォーカー(ka1990
    人間(蒼)|20才|男性|闘狩人
  • シグルドと共に
    未悠(ka3199
    人間(蒼)|21才|女性|霊闘士
  • Rot Jaeger
    ステラ・レッドキャップ(ka5434
    人間(紅)|14才|男性|猟撃士

  • 町田紀子(ka5895
    人間(蒼)|19才|女性|格闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 噂をすれば影がさす【相談卓】
ステラ・レッドキャップ(ka5434
人間(クリムゾンウェスト)|14才|男性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2015/12/15 05:24:36
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/12/12 06:32:47