木枯らしが大地を吹き抜け、頬を撫でていく。冬に向かい始めるこの季節、肌寒い風を全身で浴びると、物悲しい気分になる事がある。それどころか、気が滅入る者も少なくないだろう。
　人によっては、この状態を『黒い風が哭いている』と表現するとか、しないとか。
　独特過ぎる形容の賛否は別として。今年の初雪は例年よりも早く、寒気も強い。日に日に寒さが増す中、農夫達は作物の収穫や防寒を急いでいた。
「ったく……今年も冷めた風が吹きやがるな。北狄はゴタゴタしてやがるしよ！」
「厳しい作戦なのは知ってんだろ？　ゴチャゴチャ言ってねぇで、さっさと手ぇ動かせ！」
「わ～ってるよ！　さっさと終わりにして、熱い茶でも飲みたいしな」
　ゾンネンシュトラール帝国の耕作地は他国より少ないが、やるべき事は多い。イモ類の収穫に、冬季保存の準備。山羊を飼っている農家では、小屋の防寒対策や餌の確保も必要になる。
　仕事は山積みだが、木枯らしが吹く日の作業は本当に寒い。焚き火で防寒対策をしているが、そんなモノは焼け石に水。体が芯から冷えるのは、時間の問題である。
　とは言え、風が冷たいくらいで作業を止めるワケにいかない。準備が不十分なら越冬が厳しくなるし、本格的に雪が積もる前に全てを終わらせる必要があるからだ。それに、仕事終わりのお茶が美味しいし、焼き芋という楽しみも待っている。
　農夫の１人が焚き火に枝を投げ入れた瞬間、突風が下から吹き上がった。その勢いで火が消え、灰が宙を舞う。突風は数秒で止んだが……その代わり、小さな異変が起きた。
「おい、アレなんだ？」
　中年農夫が声を上げ、空を指差す。他の農夫達が視線を向けると、空を『黒い影』が移動していた。しかも、１つや２つではなく、大量に。
「あぁ？　鳥じゃねぇの？　越冬の季節だろ、今」
「渡り鳥の群れか。俺もあったけぇ所に行きてぇなぁ～」
　作業を休憩し、空を見上げる農夫達。50羽近い群れが一気に移動するのは、この地域では珍しい。誰もが渡り鳥の動きを目で追っていたが……その中の１人が、ある事に気付いた。
「なぁ……あいつら、何で北に向かってるんだ？」
　一般的に、冬の渡り鳥は寒さを避けるために南下する。帝国の北側には、雪と氷の大地が広がっているからだ。越冬目的なら、寒い地域に向かうのは不自然である。
「あ……！　言われてみれば、確かに」
　ちょっとした疑問の言葉で、疑惑と不信感が一気に膨れあがっていく。と同時に、彼らの疑問は最悪の形で判明する事になった。
　農夫達が見詰める中、黒影の数個が彼らに向かって急降下。その動きに気付いた時、農夫達の間を突風が吹き抜けていた。
　次いで、死臭が鼻を貫き、頬に生暖かい液体が飛び散る。１秒にも満たない一瞬の出来事だったが……彼らの瞳には、しっかりと焼き付いていた。
　ゾンビと化した鷲が、仲間を狩って空に舞い戻る姿が。
「う……うわぁぁぁぁぁぁぁぁ！？」
　恐怖が心を埋め尽くし、悲鳴となって溢れ出す。彼らが目撃した『黒い影』の正体は、死体型雑魔の群れだったのだ。
　奴らの目的はハッキリと分からないが……このまま北上を続けたら、辺境地域を越えて北狄に行き着く。激動の合戦場に雑魔の群れが現れたら、どうなるか……想像に難しくないだろう。
　それ以前に、雑魔達が帝国や辺境地域の一般人を襲う可能性がある。ガタガタ鳴る奥歯を噛み締め、震える脚に力を込め、農夫達は立ち上がった。

●
　丘陵地の多いゾンネンシュトラール帝国には、耕作に適さない土地が数多く存在する。気候や風土も理由の１つだが、根本的に土壌が痩せているのだろう。農耕地が少なく、手付かずの原野が広がっている。
　逆に言えば、『周囲への被害を気にせず戦える場所が多い』という意味でもある。帝国に出現した、鷲の死体型雑魔を討伐するため、ハンター達は北部の平野に集まっていた。
「農家さんを襲うなんて許せないんだよ！　おいしいごはんが食べられなくなったら、どうしてくれるのだ！」
　誰よりも闘志を燃やしているのは、リュミア・ルクス(ka5783)。『雑魔を許せない』という気持ちは全員同じだが……彼女の行動目的は、仲間達と若干違ったりする。
　農家の人数が減ったら、作物の収穫量も減少してしまう。そうなったら、食欲を満たすのは難しいだろう。自分の欲求に忠実なリュミアにとって、由々しき事態なのだ。
「人を食べるなら放っておけないよね！　ぐーぱんちだね！」
　リュミアに同意しつつ、リューリ・ハルマ(ka0502)は拳を強く握った。彼女も食べる事は好きだが、ハンターになったのは、敵と戦うため。エルフ女性にしては珍しく、大型武器や格闘系の技を使う事が多い。
　そんな彼女のモットーは『敵には問答無用で、ぐーぱんち！』である。
「盛り上がってるトコ悪いんだけどよ……まずは敵を探そうぜ？　鷲型ゾンビ、居ねーじゃん」
　双眼鏡を片手に、ケンジ・ヴィルター(ka4938)が声を掛ける。依頼主や目撃者の情報から、雑魔の進路を予測して先回りする事は出来た。この平野で敵を迎え撃つなら、索敵も必要だろう。
「では、私は林の樹上から敵を探します。皆さんも、どうかお気を付けて」
　穏やかな口調で話しながら、ウィ=ガ(ka3596)も双眼鏡を取り出した。戦場に身を置きながらも、彼を取り巻く空気は柔らかい。眼帯で右目は隠れているが、左の青眼は落ち着いた光を宿している。
　ウィの言葉に、全員が静かに頷いた。今回ハンター達が陣取っているのは、平野の南端。その東部には、広い範囲に針葉樹林が茂っている。ウィは踵を返し、東に向かって歩き出した。
「あ……あの！」
　直後。
　少女の声が周囲に響く。誰もが反射的に視線を向けると、そこにはディーナ・フェルミ(ka5843)の姿があった。
「ライナスさん、リューリさん、ウィ=ガさん、ケンジさん。敵を、押し付ける事になっちゃうかもしれないけど、ごめんなさい……よろしくお願いしますなの」
　そう言って、深々と頭を下げる。彼女の動きに合わせ、銀色の長髪が大きく揺れた。
　事前の作戦会議で、ある程度は互いの行動を理解している。彼女が名を呼んだ４人は、自身を囮にしてでも敵の注意を引こうとしていた。その事を、ディーナは申し訳なく思っているのだろう。
　謝罪する彼女に対し、ライナス・ブラッドリー(ka0360)はタバコを咥えたまま腕を伸ばした。そのゴツゴツした手が、ディーナの頭を優しく撫でる。
「気にするな。これも『仕事』だ。お前は、自分の役目を果たせば良い」
　無愛想で厳つい容姿とは裏腹に、彼の口から出た言葉は優しい。元来、彼は面倒見の良い性格をしている。人生の先輩として、倍近く歳の離れた若者に気を遣ったのかもしれない。
　ライナスの言動で気分が落ち着いたのか、ディーナは顔を上げて明るい笑みを返した。ライナスは表情を変える事なく頷き、空を見上げて白煙を吐き出す。それが単なる照れ隠しなのか、一足先に索敵を始めたのか、どちらなのかは分からないが。
　細かい事は気にせず、索敵と戦闘の準備を始めるハンター達。少しずつ緊張感が高まる中、倉敷　相馬(ka5950)はゆっくりと周囲を見渡した。
　初めて参加した依頼。初めて感じる戦場の空気。普通なら緊張でガチガチになりそうだが、陽気で楽天家な彼は違っていた。
（初めての依頼だけど、下手に緊張しても仕方ないし気楽にいくかな。なるようになるだろ）
　軽く深呼吸し、銃を握り直す。気負う様子もなく、怯えているワケでもなく、あくまでも自然体で。相馬の『ハンター初仕事』が、静かに幕を上げた。

●
　冬特有の冷たい風か、頬を撫でて平野を駆け抜けていく。鳥は風と共に現れるとも言うが……奇しくも、今回の雑魔は同じ習性を持っていたようだ。
「現れたか……数が数だけに、厄介だな」
　軍馬に乗ったまま空を見上げ、苦々しい表情を浮べるクルス(ka3922)。茶色の双眸が見詰める先……南方の空に、鳥の群れが見えてきた。正確な数は不明だが、50羽を超える大群が。
　上空を飛んでいるため普通の鳥にも見えるが、渡り鳥にしては時期が遅過ぎる。それに、寒い北に向かっているのも不自然である。
「ごはんの敵、発見！　みんな、害鳥駆除の準備は良い！？」　
　叫ぶや否や、リュミアは人差し指と中指を揃えて鳥の群れに向けた。指先にマテリアルが一瞬で集まり、風が渦を巻く。それが真空の刃と化し、敵の群れに放たれた。
　相手は遥か前方の、しかも空中に居るため、直線距離は30m近い。が、リュミアの『食べ物の恨み』を込めた一撃は高速で飛来。群れの先頭に命中し、鋭い風が全身を切り裂いて地に落とした。
　次いで、針葉樹林の方向から１筋の光が奔る。その正体は、ウィが放った弓撃。弓と矢の双方にマテリアルを込め、飛距離と命中精度を上げている。
　樹上から狙ったのは、飛行する鳥の翼。正確無比な一矢が両翼を貫通し、穴を穿って飛行能力を奪った。
　バランスを失って落下する敵に向かって、クルスが光弾を放つ。直撃と同時に衝撃が全身を駆け抜け、敵を死骸に還した。
　仲間を倒された事で覚醒者の存在に気付いたのか、敵の一部が速度を上げて急降下。約10羽の鷲型ゾンビが、ハンター達に迫る。
「ゾロゾロ来やがったな……よっしゃ、気合入れて討伐すんぜー！」
　ケンジの気合に呼応し、茶色の右目に薄青色の燐光が宿った。日本刀を強く握ると、その燐光が刀身を包んでいく。ケンジは呼吸を整えて意識を集中し、敵を見据えた。
　鷲の翼が風を切り裂き、鋭い爪が自身に迫る。ケンジは敵の軌道を読み、最小限の動きで横に回避。爪が頬を浅く裂いたが、同時に刀を振り上げて斬撃を放った。太刀筋が光の軌道を描き、雑魔を斬り裂く。
　その隣では、リューリが敵の出鼻を挫くように鉤爪を投げ放った。ワイヤーで繋がった鉄爪が鷲の頭部に喰い込み、そのまま引き千切って命を奪う。
　が、倒れた敵の陰から次の鷲が突撃。爪がリューリの腕を裂き、鮮血が溢れた。
　迫り来る敵に、、刻まれる傷跡。ディーナは、群れに囲まれて戦うのが怖かった。その場から逃げ出したいくらいに。本当は、殴り合いをせずに治癒に専念したいと思っている。
（怖いけど……逃げちゃ、駄目なの！）
　だが……前に仲間達から言われて気が付いた。ハンターになった以上、恐怖から逃げては駄目だと。
　彼女の強い決意が、光の弾となって具現化。それを敵の正面から叩き付けると、衝撃が一気に押し寄せて光の粒子を散らした。
　輝く粒が消えるより早く、相馬のオートマチック拳銃が火を吹く。放たれた弾丸が一直線に敵を撃ち抜き、深々と風穴を穿った。
　降下してきた敵の一部は倒せたが、残っている数の方が多い。無傷の鷲達がハンターの体に傷を残し、再び空に舞い上がっていく。
　敵の動きを観察しながら、戦馬に騎乗したライナスは弓を構えた。狙いは、直上の空に残っている雑魔。このまま放置して逃げられるのを防ぐため、群れの端を狙って矢を放った。
　鋭い弓撃が天高く昇り、敵の翼に突き刺さる。その一撃でライナスの存在に気付いたのか、雑魔の一部が彼を狙って急降下してきた。
「掛かったか。行く手を阻むのが、俺の『仕事』だ……」
　接近してくる敵は、５羽。ライナスは武器をオートマチック拳銃に持ち替え、双眸にマテリアルを込めた。緑色の瞳が輝きを増し、敵の動きを捉える。相手を全て射程に収め、ライナスは素早く引金を引いた。
　連続した銃撃が弾幕となり、敵の動きを空中で止める。それだけでは終わらず、弾丸が敵を次々に貫通。瞬く間に銃創が全身に広がっていく。ほんの数秒で、５羽の雑魔は全て地に墜ちた。
　敵の撃破には成功したが……銃声は大きい上に良く響く。その音に注意を引かれた鷲達が、ライナスに向かって殺到した。倒した数の、倍以上の敵が。
　雑魔の一斉移動に気付き、ウィは矢にマテリアルを込めて番えた。素早く弓を引き絞り、狙いを定めて弦を弾く。風を切る矢が鷲の横面から突き刺さり、その動きを完全に止めた。
　ウィの援護に続くように、クルスが軍馬で駆け寄る。その口から紡がれているのは、鎮魂の歌。穏やかな旋律が広範囲に響き渡り、不死者の動きを鈍らせていく。
　クルスの鎮魂歌を聞き、強襲してきたうちの５羽は空中で停滞。残り４羽は歌を振り切り、ライナスの腕や肩を切り裂いて天高く舞い上がった。
「独りで頑張り過ぎだ。少し、手を貸してやる」
　さっきまで鎮魂歌を歌っていたとは思えない、乱暴な口調のクルス。言葉は少々雑だが、根は悪い男ではないようだ。２人は一瞬だけ視線を合わせ、停滞している６羽に向き直った。


●
　ライナスに敵が殺到したのと、ほぼ同時刻。クルス以外の仲間達も援護に駆け付けようとしたが、敵の急降下によって阻まれていた。
　不意討ち気味の襲撃に、手傷を負うハンター達。約15羽の雑魔が入り乱れ、爪が、嘴が、赤い線を描いていく。
　何とか体勢を立て直し、リューリは全身のマテリアルを活性化。長い金髪の毛先が紫に染まり、耳が猫のような毛に覆われてモフモフになっていく。覚醒状態で拳に祖霊の力を込め、渾身の『ぐーぱんち』を放った。
　攻撃してきた敵に対する、強烈なカウンター。アッパー気味の拳撃を喰らい、鷲の体が高々と打ち上げられる。衝撃で全身が崩れ落ち、数秒後には骨まで粉々に砕け散った。
　更に、拳の届く距離に入ってきた敵に対し、ぐーぱんちを繰り出す。その勢いに押されたのか、雑魔達が一斉に舞い上がった。
　その動きを見逃さず、リュミアはマテリアルを燃焼させて燃え盛る火球を生成。敵が固まっている位置を目掛け、全力で投げ放った。
「ふふーんだ。みーんな焼き鳥にしちゃうんだから！」
　腐った肉は焼いても喰えないが、火球が密集地で炸裂し、爆炎が溢れ出す。それが７羽の鷲を飲み込み、衝撃と共に全身を焦がした。
　炎自体は数秒で消えたが、雑魔の数匹は焼き鳥どころか、消し炭と化している。火傷を負った敵は、４羽。リュミアが追撃するより早く、ケンジと相馬が動いた。
「これでも喰らいやがれ！」
　素早く銃を構えて狙いを定め、相馬が吼える。裂帛の気合を込めて、拳銃を連続発射。銀色の銃身から放たれた弾丸が２体に命中し、止めを刺して死骸に還した。
　ケンジは地面を蹴り、敵との距離を一気に詰める。刀身が宙を奔り抜け、薄青い光が手負いの敵を両断。新たな死骸が２つ、大地に転がった。
「ディーナさん、後ろ！」
　リューリの紫眼が、視界の隅に敵の姿を捉える。ハンター達の隙を突くように、１羽の雑魔が音もなくディーナに迫っていたのだ。
　仲間の声に反応し、ディーナは振り向きながら拳を握った。敵の位置を素早く確認し、手甲の殴打を繰り出す。雑魔の爪が頬を裂いたが、彼女の拳撃は敵を直撃。そのまま殴り飛ばし、雑魔の命を打ち砕いた。
（恐らく残りは10匹前後。可能なら殲滅してしまいたいですね……）
　敵の数を確認しつつ、弓を構えるウィ。雑魔を１羽も逃がさずに倒すため、マテリアルを込めて矢を射ち放った。弓撃が閃光のように奔り、敵を貫通。それが止めとなり、１羽の雑魔が天から地に墜ちた。
　残った敵が少ないなら、逃げる隙を与えず攻め続けた方が倒せる可能性が高い。クルスは雑魔との距離を目で測り、視線をディーナに向けた。
「おい、おまえ。残った敵の注意を引き付けるぞ。出来るな？」
「はいです！　私も頑張るの！」
　言葉を返しながら、ディーナはロザリオを強く握った。クルスは杖を握り、マテリアルを集中。２人の頭上に光が集まり、輝く光弾が生まれた。
　それを、上空の敵に向かって撃ち放つ。２つの光が螺旋を描きながら上昇し、２匹の雑魔を直撃。光と衝撃が一気に溢れ出し、骨ごと全身を砕いた。
　ハンター達の攻撃は、まだ終わらない。相馬は銃を構え、上空に向けて引金を引いた。銃口から放たれた弾丸が、野獣の牙のように鷲に突き刺さる。穿たれた穴が心臓に達し、腐血が周囲に散った。
　雑魔の血肉を吹き飛ばすように、リュミアが鋭い風を射ち出す。真空の刃が鷲の背後から迫り、翼ごと全身を斜めに両断。残骸が地面に落下した瞬間、大量の血液が地表に広がった。
　ここに至ってようやく自分達の不利を悟ったのか、残った３羽の雑魔が翼を広げて風に乗った。このまま北風に吹かれ、どこかに逃げるつもりなのだろう。
「悪ィな。お前らを北まで渡らせるワケにはいかねーんだわ！」
　敵が逃げる事は、最初から想定済みである。ケンジは神木製の魔導バイクに飛び乗り、大地を疾走。逃げる敵を追って距離を詰め、下から苦無を投げ放った。
　小さな投擲武器が鷲の翼に突き刺さり、バランスを崩して高度が下がる。ケンジはバイクの座席を蹴り、大きく跳躍。落下してくる敵を下から斬り上げ、全身を両断した。
「そういう事！　北がどっちか分からないけど、逃がさないよ！」
　ケンジ同様、戦馬で敵を追うリューリ。若干問題発言が聞こえたが、気にしないでおこう。
　一気に距離を詰め、デリンジャーで雑魔を狙い撃つ。弾丸が翼を掠め、敵の頭部を貫通。そのまま力無く地面に落下し、２度と動く事は無かった。
　ライナスは戦馬を走らせながら、敵の１点を狙っていた。飛行の要とも言える、風切り羽。乾いた銃声が周囲に響き、弾丸が翼を貫通して羽根が舞い散る。そのまま、雑魔は真っ逆さまに落花し、地面に激突した。
「地に墜ちた鳥……何もする事は叶うまい？ 大人しく其の儘、地に還るといい」
　静かに言い放ち、止めに細身の剣を突き刺すライナス。その瞬間、全ての雑魔が力尽き、ハンター達の戦いは勝利で幕を閉じた。