ベルテイル先生の安っぽいプライド

マスター:秋風落葉

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/12/15 19:00
完成日
2015/12/20 21:31

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


「はい、今日の授業はここまでです」
 教壇に立つ女性は目の前の少年少女に授業の終了を告げる言葉を発し、本を閉じた。
 彼女の生徒である子供達はそれぞれ伸びをしたり、疲れたと愚痴を言ったりと、途端にリラックスし始める。
 ここはとある街にあるマギステルの為の私塾。
 教鞭を取る先ほどの女性は名をベルテイルという。
 ようやく授業から解放された子供達はすぐにわいわいと騒ぎ始める。普段は口うるさいベルテイルだが、さすがに授業中以外ではそこまで怒ったりはしない。
「やっぱ一番格好いいのはライトニングボルトだよなー!」
「何言ってんだよ、ファイアーボールだろ!?」
 いつものように魔法談義に花を咲かせる子供達。なお、彼らはまだまだそんな高位な魔法は使えない。
 子供達の会話に小さく笑みを浮かべながらも、ベルテイルは自分が授業に用いた道具を鞄に仕舞い始める。
 そんなベルテイルに、生徒の一人が何気なく問いかけた。
「そういやさー。先生ってライトニングボルトは使えるのー?」
 ベルテイルはぴたりと動きを止めた。
 子供らしい無邪気な問いかけ。かつてベルテイルは、今と同じようにファイアーボールは使えるのかと尋ねられたことがある。
 そしてその質問のせいで、ベルテイルは休日を返上してハンターオフィスで依頼を受けることとなった。
 なぜなら、ベルテイルはその頃まだファイアーボールを使えなかったからである。しかし、質問に対してつい「使える」と見栄を張ってしまったのだ。
 幸か不幸か、ハンター達と危険を潜り抜けることで腕を磨いた彼女は見事にファイアーボールを修得し、翌週に子供達に魔法を披露することができたのである。
 そして、現在の自分もまだライトニングボルトが使えない。
 これは、まさにあの時の再現であった。
 ベルテイルはその依頼を受けた時、同行したあるハンターに「教育者として、子供達に見栄をはるのはやめたほうが良い」という忠告を受けていた。
 その言葉がベルテイルの脳裏に思い浮かぶ。
「ええ、もちろん使えますよ」
 しかしベルテイルはあっさりと子供達にそう答えていた。
 そのハンターの言葉を全く意に介さなかった訳ではない……ただ、彼女の肥大化したプライドがその忠告よりもはるかに重かっただけなのだ。
「わあー! さすが先生!」
「見せてよ見せてよー!」
 子供達の目に浮かぶ敬意とあこがれ。
 これがあるから、この仕事はやめられないのである。
「ええ。ですが、ライトニングボルトも危険な魔法です。準備がいりますので、来週まで待ってくださいね?」
「はーい!」
 いつになく聞き分けの良い返事をする子供達。
 ベルテイルは口元にこれ以上ない笑みを浮かべていた。


「ああ、またやってしまった……」
 次の日。
 ベルテイルはかつてのように、ハンターとしての装備を身につけ王都イルダーナにいた。
 なお、さすがにまた大見得を切ってしまった事を少し後悔しているらしい。
「しかし、街一番のマギステルと称されるためには、これくらいの苦労など……」
 ベルテイルは以前くぐったハンターオフィスの扉を再び開ける。見覚えのある受付嬢がベルテイルの顔を見てにっこり微笑んだ。どうやら、あちらもベルテイルのことを覚えていたらしい。
「お久しぶりです! たしかマギステルのベルテイルさん……でしたよね?」
「はい。今回も、何か依頼があれば……」
 カウンターまでやってきたベルテイルに向かって語りかける受付嬢。ベルテイルも頷き、仕事を求めた。
「承知しました。少々お待ちくださいね」
 しばらくして、受付嬢はベルテイルに一枚のファイルを差し出した。
「この村に、全身が氷で出来た巨人らしき魔物が現れたそうです。また、雪だるまのような手下を従えていたとのことで」
「氷で出来た巨人に雪だるま……ですか。水の属性を持つ魔物かもしれませんね」
「ええ。お願いできますか? もちろん他のハンターの方と共同であたっていただくことになりますが」
「……厄介そうな相手ですね……分かりました。お受けしましょう」
「ありがとうございます!」
 受付嬢はにっこりと微笑んだ。

リプレイ本文


「おうおうおう。久しいなあ、ベルテイル。いつぞやのスライム退治以来か。また魔術の研鑽かえ?」
「も、もちろんですとも!」
 エルディラ(ka3982)が何気なく尋ねた言葉に一瞬口ごもったベルテイル。
「先生さん、よろしく……なんやけど、またどうしてハンターオフィスの依頼なんか受けたん?」
 ベルテイルがマギステルの私塾を開いていることを聞いた真龍寺 凱(ka4153)が軽い口調で質問する。なぜか、目を泳がせるベルテイル。
「き、決まっているではないですか。私のマギステルとしての能力を活かしたいと思い……」
 そんな彼女の反応を見て、エルディラは内心ため息をついた。
(……あやつめの反応を見るに、聞くまでもなく前回の繰り返しであろうがな。二度も三度も説教を口にするつもりはない。どうなっても我は知らん。勝手にせい)
 以前、ベルテイルに忠告をした本人であるエルディラ。一度くらいは痛い目を見るべきだと考えているのか、詳しく問い正すことは無かった。
 しかし、逆に黙って済ます気はないと考える者がいた。
「……ベルテイル、単刀直入に聞かせてもらう。今度は何を使えないのに使えると見栄を張って来たんじゃ?」
 エルディラと同じように、以前の依頼でベルテイルに同行していたクラリッサ=W・ソルシエール(ka0659)だ。
 まさに刀を突きつけられたかのように顔を引きつらせ、明後日の方を見るベルテイルだったが……やがて観念したのかぽつりと呟いた。
「……ライトニングボルトです」
 クラリッサはやはりと頷き、下を向く。
「……こんな人が子供達の先生って大丈夫なのかしら……いや、子供達の同じ視線に立てる、という意味では適任……?」
 素の口調で小さく呟くクラリッサ。ややあってごほんと咳払いし、正面に向き直った。
「まあ、良い……言いたい事は後で言わせてもらうとしてじゃ。今回もたまたまライトニングボルトを活性化しておるし参考にはなるじゃろう」
 ベルテイルはその言葉に瞳を輝かせた。実戦であの魔法が拝めるのは、これ以上ない見取り稽古となるはずである。
 事情を察した凱も小さく笑う。
「……まあ、俺も教師やからさ。分からんでも無いんやけどねぇ……?」
 そんな会話をしているところに割って入った一人のハンター。
「あ? 教え子の為に強くなりてェのか、アンタ」
 話を聞いていた万歳丸(ka5665)がずい、とベルテイルに近づく。
「良いじゃねェか。餓鬼は大人の姿を見て育つモンだ。俺ァアンタのことえれェ立派だと思うぜ!」
 バンバンとベルテイルの背中を叩く万歳丸。鬼である彼の膂力は大きく、ベルテイルは痛みに顔をしかめていたが、悪意がないことが分かるので何も言えない。
 ようやく彼女の背を叩き終わった万歳丸は、ベルテイルに属性について質問した。今回の敵は水属性を帯びている可能性が高く、それに対する答えを知りたいのだ。東方出身の彼は、西方で入手した様々な武器防具をやや持て余しているらしい。
「得物は土。受けるのは水。で……良いンだよな?」
「そうですね。敵が水の属性の魔物なら……それで優位に立つことが出来るでしょう」
 私塾で子供達に教鞭を取っている時のように、神妙な顔で答えるベルテイル。万歳丸はその答えに満足気に頷いた。


 ベルテイルを入れて九人のハンターは、依頼の現場にやって来ていた。マテリアルバランスが崩れているせいか、ただの季節的なものか、雪がちらつき、地面は白く染まっていた。村の中もすっかり雪化粧をしている。
 依頼を受けるに当たって、なるべく村への損害を出さないで欲しいと頼まれていた彼らは、まず魔物を開けた場所まで誘導する算段であった。
 敵をおびき寄せるため、三人のハンターが先行する。
 やがて、彼らの視界に入って来たのは村の中を徘徊する雪だるまの群れだ。胴体と同じ白い腕がにょきりと両脇から生えている。しかし足はなく、移動はジャンプで行っている。
 ファンシーな光景であるが、その正体はおそらく雑魔であろう。
「雪だるまらしき反応発見、巨人は……」
 魔物達をおびき出すため、先行しているハンターのメンバーの一人である、リアン・カーネイ(ka0267)。
 そんな彼の目に、雪だるま達を従えるようにそびえる大きな影が見える。話に聞いていた大物、氷の巨人だ。
 リアンはデリンジャーを引き抜き、巨人目掛けて発砲する。射程距離のせいもあってか、弾は有効打にはならなかった。しかし巨人の注意がリアンの方へと向く。
「いい子だ歪虚の割に!」
 リアンはそう軽口を叩きながらも、巨人の一挙手一投足から目を逸らさない。吹雪を吐くなどの遠距離への攻撃手段を持っているという話を聞いていたからだ。
 初月 賢四郎(ka1046)も敵の群れへとアサルトライフルのトリガーを引いた。銃口から飛び出した弾丸が一体の雪だるまの頭部を穿つ。しかし絶命にはいたらず、襲撃者の存在を求めて頭をめぐらせた。
「下手に一発を貰ったら拙い……出来る事を出来る限りやるだけだ」
 賢四郎はそう言いつつ、リアンと共にすばやく後退を始める。目的は敵を誘いだすこと。決して殲滅ではない。
 リアン、賢四郎の後を追うように巨人と雪だるまが続々と追いかけてきた。
 巨人は雪原を大股で駆けながらその手に巨大な氷の塊を生み出す。すぐに氷の玉がハンター目掛けて放り投げられる。
 逃げる二人を押しつぶそうと飛んできたそれに、盾を構えたハンターが割って入った。
 すさまじい衝撃音が響き、大地を揺るがしたが……。
「何てこたァねェ。行こうぜ」
 ハンター――万歳丸はややよろけながらも倒れることもなく、そう豪語してのけた。
 巨人と雪だるまはそんな彼らへと殺到する。
 リアン、賢四郎が応戦をしつつ後退し、雪だるまが放つ雪の塊を万歳丸が防ぐ。それが繰り返される中、雑魔らはハンター達をその魔手に捕らえたように見えたが……。
 事実はその逆だった。
 ハンター達の意図にも気付かず、まんまと村の離れへとおびき出された雑魔達へ、隠れていた者達が一斉に行動を開始した。


 あらかじめ屋根の上に潜んでいたクオン・サガラ(ka0018)のデルタレイが雪だるまを狙って放たれた。三本の光線が雑魔を撃つ。
 雪だるまの体に穴が開き、雑魔は新たな敵を探してきょろきょろと顔を動かす。その反対側の物陰から姿をあらわしたのはエルディラだ。
 少女は詠う。
「大地の聖霊よ。我が求めに応じ、その大いなる力を貸し与えたまえ。生み出す子らは鋭く重く。世を喰らわんとする邪悪の悉くを貫き砕け」
 水属性の敵だと予測をつけていたエルディラの五式「舞飛礫」による石つぶてが空を舞い、雑魔の背を激しく打った。
 エルディラの目論見通り、属性で優位に立つ彼女の魔法は通常以上の威力を発揮し、ついに一体の雪だるまは倒れ、無へと帰す。
 囲まれていることに気付いた雑魔達であったが、もう襲い。雑魔の退路を断つように、一人の男が得物を手に家屋の裏から現れる。
「ま、風でも無いよりはマシやろ。さあて……久々にやろうかねぇ?」
 大薙刀「岩融」から巻き起こる風をまといながら、凱は雑魔の群れを前に闘いの構えをとった。
 ぐるりと振り向いた雪だるまが、雪の塊を作りだし、彼目掛けて打ち出した。しかしそれは凱に届くよりも早く、横から飛んできた光輝く鳥によってその力を奪われる。
 威力をそがれた雪の塊を、凱はなんなく切り払ってみせた。
 首を傾け、横合いから邪魔した相手を見やる雪だるま。
 そこにいたのは符術師の大友 映美(ka5684)。
 先ほど雑魔の攻撃を阻害したのは彼女が放った瑞鳥符だ。
 映美は続けて火炎符を放つ。
 火の精霊力を帯びたトランプ――に偽装した符――は狙い過たず雑魔を捉え、白い胴体を赤く焼いた。
 続いて動いたはクラリッサ。
「よく見ておくのじゃよ、ベルテイル?」
 クラリッサがかざした魔杖「スキールニル」から一直線の雷撃がほとばしった。もちろんライトニングボルトである。
 直前に使用していたエクステンドレンジの効果によって、本来の有効射程よりも遠くまで届いたそれは雑魔を数体串刺しにした。
 ベルテイルは自分がその身に宿したい力に一瞬心を奪われたが、すぐに負けじと一帯へとファイアーボールを撃ち込んだ。数体の雑魔が巻き込まれ、衝撃によろめく。
 凱がそれを機に敵陣へと踏み込んだ。
「そら、吹き飛んどけ?」
 薙刀が袈裟懸けに切り下ろされる。雪だるまは跳躍しようとしたものの、斬撃をかわすにはあきらかに遅い反応であった。凱は得物を振りぬきつつ確かな手ごたえを感じる。
 胴体を切り裂かれた雑魔だったが、しかしまだ生命は尽きていないらしい。お返しとばかりに体当たりを繰り出してきたが、凱は薙刀で受け止めて衝撃を軽減した。
 巨人は口から吹雪を吐き出し、目に付いた周囲のハンターを凍えさせようと目論む。
 映美は素早く結界術を行使し、彼女を中心として薄い光の壁が空間を包む。しかし、巨人が生み出した吹雪はその加護をあっさり消し飛ばしてしまうほどの威力があった。
 巻き込まれたハンター達は皆、その痛みと寒さに歯を食いしばって耐えるも、数人は苦痛のあまりに片膝をつき、あるいは自分が陣取る屋根の上にしがみ付いた。
 しかし、巨人が攻撃に専念している隙を突き、万歳丸が一気に距離を詰める。
「俺ァ怪力無双、万歳丸だ! 鬼に金棒とはこの事よ!」
 巨大な棍棒――クラブ「インベイジョン」で螺旋突を繰り出す万歳丸。右足を強打された巨人は痛みに口を閉ざし、憤怒の視線で自分の足元を見た。
 そこにリアンも息を併せ、スピア「ベーレイニガン」を巨人のもう片方の足へ突き刺した。
「ほらどうした!」
 氷の巨人を見上げ、挑発するリアン。
 怒り狂う巨人は両手を思い切り地面へと叩きつける。二人はそれぞれ跳んで直撃をさけたものの、吹き飛んだ氷雪の欠片が彼らを傷つけた。
 クオンは魔導銃「シルバーバレット」で巨人の頭部を狙い撃つ。巨人はうるさそうに視線を向けるが、自分が新たなターゲットになったことに気付いたクオンは陣取っていた屋根の上から素早く降り、一旦身をくらませる。
 怒りの覚めやらない巨人は氷の塊を作り、目の前にいる別のハンターへと投げつけた。お供の雪だるまたちもそろって雪の塊を生み出し、一斉にハンター達目掛けて解き放つ。
 賢四郎はアサルトライフルで味方を支援しつつ、飛んできた雪の塊はムーバブルシールドで受けて被害を軽減する。
 雪だるま達の攻撃を受けたハンター達はもちろん無傷ではないが、幸い巨人が投げてきた氷塊をまともに食らった者はいない。
 敵の攻勢がゆるんだ隙に、ハンター達は反撃の狼煙をあげる。
 映美の火炎符が雪だるまへと飛翔し、その身を焼く。クオンのファイアスローワーも数体の雑魔を包み込む。
 やがてリアンの槍が最後の雪だるまの頭を貫いた。残るは氷の巨人のみだ。
「我一人では到底倒しきれぬ相手じゃ。味方との協力や連携は惜しまぬぞ。なに、こちとらロクな肩書もない魔術師なのでな。誇りもヘッタクレもあるものか」
 エルディラの詠唱に導かれ、宙に石のつぶてが顕現する。
「しかして貴様ら塵芥は気に入らん。身の程知らずの屑は残らず失せるがよいわ!」
 彼女の怒号とともにつぶては巨人へと飛翔し、その氷の肢体を抉る。
 クラリッサとベルテイルも同じ様にそれぞれ石のつぶてを生み出し、氷の巨人へと放った。痛みに悶える氷の巨人。
 これでとどめとばかりに攻めの構えに切り替えた凱が、上段から渾身の一撃を叩き込む。
 ついにそれが致命打となったか、氷の巨人はゆっくりと倒れていった。


 大きな地響きと共に地に転がった氷の魔物は、やがて虚空へと消滅していき、その巨体の痕跡すら残さなかった。
 幸い、懸念されていた村の家屋等の被害もそこまでは出ておらず、ハンター達は笑顔で仲間達とハイタッチを交わす。
「ふぅ……良い汗かいたわぁ。やっぱ定期的に暴れとかんなねぇ」
 依頼を終えて上機嫌な様子の凱。
「さて、ベルテイル?」
 クラリッサがベルテイルの名を呼びながらその顔を正面から見据える。
「プライドを抱くのも大事じゃが、出来ない事は素直に出来ないと言うべきじゃ。教育者だというのなら尚更、じゃ。妾が生徒の立場ならそう思うからのう」
 クラリッサに続き、凱も口を開く。
「先生さん。見栄張るんも良いけど、教えることは何も魔法のことだけやないやろ? 訓戒やないけど……教えるんならキッチリやらんとねぇ?」
 凱は元教師なこともあって、ベルテイルのことを諭しつつも一定の理解を示してはいるようだ。
 リアンも頷き、言葉を添える。
「虚勢の結果、貴女に万一があれば子供はどう感じます? 不可能を認め、それ故助け合う勇気を実践し教えて下さいませ」
「そう……ですね……」
 俯く彼女の側に近づいてきたのは賢四郎だ。
「補給ってのは裏付けの無い見込みでやったらとんでもない事になるんですよ。歴史を紐解けば、裏付けも無い目算で餓死者まで出した愚にも付かない戦史もあったりね……」
 眼鏡をクイっとしながら言葉を続ける賢四郎。
「逆に巧くいけばいったで、故に省みる機会も失われ、いつか致命的な歪みが出る。人を教え導く教育者がそうなれば、生徒はどうなるんでしょうな……」
「気、気をつけます……」
 今回のベルテイルのことを『補給』という行為に見立てて責めているらしい賢四郎。その勢いに押され、ベルテイルはそう言うのだけがやっとだった。
「……で。首尾はどうじゃ、街一番の魔術師殿?」
 とベルテイルに尋ねたのはエルディラだ。彼女の言葉にベルテイルは己の手の平を見た。先ほどの戦いの最中、その目に焼き付けた雷撃。今の自分なら、きっとあの力を物に出来る。その確信がベルテイルにはある。
「万が一おぬしの個人的な目標が達成できておらぬのなら、修行でも何でも付き合うぞ。勘違いするなよ。おぬしの矜持の為ではない。子供らにがっかりした顔なぞ似合わぬであろうが」
 当初は我関せず、のつもりだったはずのエルディラの言葉。本当に子供たちの為なのか、それともベルテイルの為なのか、それは定かではないが。
「幸い手ごたえはあります……でも、ありがとうございます」
 ベルテイルは深ぶかと頭を下げた。
 今回、呆れられても仕方ないことをベルテイルはやっているが、生徒も含めて自分のことを心配してくれるハンター達に、彼女は柄にもなく感無量であった。
「帰ったら餓鬼どもに見せてやンのか? いいねェ。誰かの為に強くなる、っつーのは、形はどうあれ善い事だ。精進しような、センセイ!」
 万歳丸が出会った時と同じように彼女の背中をバンバンと叩く。
 ベルテイルは痛みに小さく涙を浮かべながらも、笑顔で皆を見つめ返した。

依頼結果

依頼成功度成功
面白かった! 4
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 課せられた罰の先に
    クオン・サガラ(ka0018
    人間(蒼)|25才|男性|機導師
  • 海の戦士
    リアン・カーネイ(ka0267
    人間(紅)|20才|男性|闘狩人
  • 風の紡ぎ手
    クラリッサ=W・ソルシエール(ka0659
    人間(蒼)|20才|女性|魔術師
  • 矛盾に向かう理知への敬意
    初月 賢四郎(ka1046
    人間(蒼)|29才|男性|機導師
  • 今を歌う
    エルディラ(ka3982
    ドワーフ|12才|女性|魔術師
  • 金色の闘将
    真龍寺 凱(ka4153
    人間(蒼)|22才|男性|闘狩人
  • パティの相棒
    万歳丸(ka5665
    鬼|17才|男性|格闘士

  • 大友 映美(ka5684
    人間(蒼)|19才|女性|符術師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
クラリッサ=W・ソルシエール(ka0659
人間(リアルブルー)|20才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2015/12/15 00:09:05
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/12/12 22:35:12