ゲスト
(ka0000)
コオロギ歪虚の討伐依頼
マスター:鳴海惣流

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~7人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/12/18 12:00
- 完成日
- 2015/12/23 06:27
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
へへへ、と少年が笑う。手には小さなコオロギがいる。
小さな村に住む少年のイオは、大きな街へ母親と一緒に買物へ出かけていた。
日常の食料品なら生まれ故郷の村でも比較的手に入るが、少し凝った衣服などが欲しいとなれば難しい。
そこでイオの村の人間は、必要があれば馬車で一時間程度の街へ出かけていくのだ。
「イオ、何をしているの?」
馬車から降りて、村まで徒歩で移動中にもかかわらず、足を止めて草むらにしゃがみ込んだ息子に声をかける。
母親の名前はミオ。最愛の夫には先立たれ、女手ひとつで十歳を過ぎたばかりの息子イオを育てている。
村で裁縫の仕事をしており、周囲の人間も優しくしてくれるので食うには困らない。
一ヶ月に一度程度であれば、こうして街まで買い物へ出かける程度の贅沢もできる。
ミオはもちろんだが、普段はあまり遊んでもらえていないイオもお出かけの日を楽しみにしていた。
だからだろうか。草むらでたまたま見つけたコオロギを、楽しそうに追いかけてしまう。
はしゃぎすぎだとイオ自身もわかっていても、何もかもが楽しくてたまらない。
母と息子だけの家族でも、ミオとイオは幸せだった。
「見てよ、お母さん。コオロギがいるよ」
イオが手のひらに乗せているコオロギを見て、ミオはキャっと小さな悲鳴を上げた。
何にでも好奇心を示すイオと違い、母親のミオは昆虫が苦手だった。すぐに自分から遠ざけるように言う。
「どうしてだよ。ほら、よく見てよ」
軽くとはいえ、手で握り締めたコオロギをイオが近づけてくる。
強い口調で叱責するほどの悪戯ではないが、あまり気分のいいものではない。
「駄目よ、イオ。早くコオロギさんを離してあげなさい」
「コオロギさんだって。お母さん、変だよ」
「そんなことはないわ。コオロギさんだって生きているのよ。あんまり虐めていると、あとで仕返しをされてしまうかもしれないわよ」
悪戯をやめさせるための注意とわかっているのか、イオはまったく気にしてない様子で笑った。
「アハハ。コオロギの仕返しなんて怖くないよ。僕は男の子だからね」
得意げに胸を張る際に、イオの手からコオロギが逃げた。
「あ、待てー。家に連れて帰って、飼うんだから」
慌てて逃げたコオロギを追いかけるイオを、ミオもまたすぐに追いかける。
コオロギを飼われたりしたら大変だ。きっとイオは途中で飽きて、最終的にはミオが飼育するはめになる。
昆虫好きならともかく、苦手なミオにとっては拷問にも似た行為だ。なんとか思いとどまらせようとするも、子供でもイオは男性。駆け足はミオよりも速い。
あっという間に姿が見えなくなり、息が切れたミオは膝に手をついて荒い呼吸を繰り返す。半ズボンのイオに対して、ミオはロングスカート。走りやすい服ではなかった。
「まったくあの子ったら、どこに行ったのかしら……」
街へ続く道から少し外れた場所には、小規模ながらも草原みたいな地域があった。村の子供たちが、よく皆でピクニックを行う場所だ。意外にも、ミオは来たのが初めてだった。
「村から多少離れた草原でも、危険はなさそうね。治安が良さそうで何よりだわ」
この場所なら、お弁当を作ってイオと一緒にハイキングをするのも楽しそう。
日常の楽しいシーンを想像して微笑んでいると、ミオの耳に悲鳴が聞こえてきた。イオだ。
「イオ!? どうしたの!」
叫ぶように声を出すと、前方から誰かがこちらへ走ってくるのが見えた。
「お母さんっ!」
泣きそうな顔のイオが、全速力でやってくるなり、ミオに抱きついてきた。
「何かあったの?」
「ご、ごめんなさいっ。ぼ、僕、コオロギさんに謝るっ!」
「謝るって、何……を……?」
見上げた先に、コオロギがいた。
明らかにイオが逃がしたコオロギではない。
ミオの視界に映るコオロギは、あまりに巨大で――。
――あまりに凶悪な光を瞳に宿していた。
「に、逃げるのよ、イオっ! 早く!」
幸い、まだ巨大なコオロギとは距離がある。
ロングスカートだから走りにくいとも言っていられない。
何よりも大事な息子を抱え、ミオはひたすら走った。
背後から届いてきた巨大コオロギの鳴き声が、なんだか楽しそうな笑い声に聞こえた。
●
翌日――。
ミオとイオが暮らす村から少し離れた大きな街のハンター支部に、ひとつの依頼が届けられた。
受理した受付の若い男性が、興味ありげなハンターたちに事情を説明する。
「こちらの依頼の目的は、巨大コオロギの退治ですね。元々はコオロギがたくさんいた場所なのですが、どういう理由か雑魔化してしまったようです」
発見した母子は怪我もなく無事だったが、放置するのは危険ですと受付は言った。
「第一発見者の母子の報告を受けて、村の自警団の方々が偵察に行ったそうです。雑魔化したと思われる巨大コオロギは、数匹程度いたらしいです。他に雑魔と思われる存在や、裏で何者かが操ってそうな気配もないみ
たいですので、恐らくは雑魔化した巨大コオロギを全滅させれば、周囲の安全は確保されるでしょう。ですが、一体でも逃がすと面倒な事態になるかもしれません。確実にお願いします。覚醒者たるハンターには苦戦する相手ではないかもしれませんが、一般の村人たちには莫大な脅威となります。現場は村の子供たちがよくピクニックをする場所みたいですし、一刻も早く村の人たちを安心させてあげてください」
へへへ、と少年が笑う。手には小さなコオロギがいる。
小さな村に住む少年のイオは、大きな街へ母親と一緒に買物へ出かけていた。
日常の食料品なら生まれ故郷の村でも比較的手に入るが、少し凝った衣服などが欲しいとなれば難しい。
そこでイオの村の人間は、必要があれば馬車で一時間程度の街へ出かけていくのだ。
「イオ、何をしているの?」
馬車から降りて、村まで徒歩で移動中にもかかわらず、足を止めて草むらにしゃがみ込んだ息子に声をかける。
母親の名前はミオ。最愛の夫には先立たれ、女手ひとつで十歳を過ぎたばかりの息子イオを育てている。
村で裁縫の仕事をしており、周囲の人間も優しくしてくれるので食うには困らない。
一ヶ月に一度程度であれば、こうして街まで買い物へ出かける程度の贅沢もできる。
ミオはもちろんだが、普段はあまり遊んでもらえていないイオもお出かけの日を楽しみにしていた。
だからだろうか。草むらでたまたま見つけたコオロギを、楽しそうに追いかけてしまう。
はしゃぎすぎだとイオ自身もわかっていても、何もかもが楽しくてたまらない。
母と息子だけの家族でも、ミオとイオは幸せだった。
「見てよ、お母さん。コオロギがいるよ」
イオが手のひらに乗せているコオロギを見て、ミオはキャっと小さな悲鳴を上げた。
何にでも好奇心を示すイオと違い、母親のミオは昆虫が苦手だった。すぐに自分から遠ざけるように言う。
「どうしてだよ。ほら、よく見てよ」
軽くとはいえ、手で握り締めたコオロギをイオが近づけてくる。
強い口調で叱責するほどの悪戯ではないが、あまり気分のいいものではない。
「駄目よ、イオ。早くコオロギさんを離してあげなさい」
「コオロギさんだって。お母さん、変だよ」
「そんなことはないわ。コオロギさんだって生きているのよ。あんまり虐めていると、あとで仕返しをされてしまうかもしれないわよ」
悪戯をやめさせるための注意とわかっているのか、イオはまったく気にしてない様子で笑った。
「アハハ。コオロギの仕返しなんて怖くないよ。僕は男の子だからね」
得意げに胸を張る際に、イオの手からコオロギが逃げた。
「あ、待てー。家に連れて帰って、飼うんだから」
慌てて逃げたコオロギを追いかけるイオを、ミオもまたすぐに追いかける。
コオロギを飼われたりしたら大変だ。きっとイオは途中で飽きて、最終的にはミオが飼育するはめになる。
昆虫好きならともかく、苦手なミオにとっては拷問にも似た行為だ。なんとか思いとどまらせようとするも、子供でもイオは男性。駆け足はミオよりも速い。
あっという間に姿が見えなくなり、息が切れたミオは膝に手をついて荒い呼吸を繰り返す。半ズボンのイオに対して、ミオはロングスカート。走りやすい服ではなかった。
「まったくあの子ったら、どこに行ったのかしら……」
街へ続く道から少し外れた場所には、小規模ながらも草原みたいな地域があった。村の子供たちが、よく皆でピクニックを行う場所だ。意外にも、ミオは来たのが初めてだった。
「村から多少離れた草原でも、危険はなさそうね。治安が良さそうで何よりだわ」
この場所なら、お弁当を作ってイオと一緒にハイキングをするのも楽しそう。
日常の楽しいシーンを想像して微笑んでいると、ミオの耳に悲鳴が聞こえてきた。イオだ。
「イオ!? どうしたの!」
叫ぶように声を出すと、前方から誰かがこちらへ走ってくるのが見えた。
「お母さんっ!」
泣きそうな顔のイオが、全速力でやってくるなり、ミオに抱きついてきた。
「何かあったの?」
「ご、ごめんなさいっ。ぼ、僕、コオロギさんに謝るっ!」
「謝るって、何……を……?」
見上げた先に、コオロギがいた。
明らかにイオが逃がしたコオロギではない。
ミオの視界に映るコオロギは、あまりに巨大で――。
――あまりに凶悪な光を瞳に宿していた。
「に、逃げるのよ、イオっ! 早く!」
幸い、まだ巨大なコオロギとは距離がある。
ロングスカートだから走りにくいとも言っていられない。
何よりも大事な息子を抱え、ミオはひたすら走った。
背後から届いてきた巨大コオロギの鳴き声が、なんだか楽しそうな笑い声に聞こえた。
●
翌日――。
ミオとイオが暮らす村から少し離れた大きな街のハンター支部に、ひとつの依頼が届けられた。
受理した受付の若い男性が、興味ありげなハンターたちに事情を説明する。
「こちらの依頼の目的は、巨大コオロギの退治ですね。元々はコオロギがたくさんいた場所なのですが、どういう理由か雑魔化してしまったようです」
発見した母子は怪我もなく無事だったが、放置するのは危険ですと受付は言った。
「第一発見者の母子の報告を受けて、村の自警団の方々が偵察に行ったそうです。雑魔化したと思われる巨大コオロギは、数匹程度いたらしいです。他に雑魔と思われる存在や、裏で何者かが操ってそうな気配もないみ
たいですので、恐らくは雑魔化した巨大コオロギを全滅させれば、周囲の安全は確保されるでしょう。ですが、一体でも逃がすと面倒な事態になるかもしれません。確実にお願いします。覚醒者たるハンターには苦戦する相手ではないかもしれませんが、一般の村人たちには莫大な脅威となります。現場は村の子供たちがよくピクニックをする場所みたいですし、一刻も早く村の人たちを安心させてあげてください」
リプレイ本文
●
見晴らしも良く、ピクニックをするには最適な場所。
草原に到着したハンターの誰もが、似たような感想を抱いた。
住民の憩いの場となるべき草原なのだが、今は不似合いな存在に占拠されてしまっている。
退治してほしいと依頼された巨大なコオロギ歪虚だ。
「被害が出なくって何よりだけど、もしかしたら……だもんね。急いで片付けて、クリスマスの準備をしよう?」
草原にて数体のコオロギ歪虚を肉眼で確認後、ステラ=ライムライト(ka5122)が葛音 水月(ka1895)をチラリと見ながら言った。
「僕も早くしたいけどステラさんの練習にだし、こっちも大事ですからねー?」
諭すように言いつつも、水月もどこかクリスマスに浮かれているみたいだった。
「逃げられて第三者に被害が出ないように此処できっちり殲滅させないとな。まずは直に逃げそうな位置にいる奴を倒したら後は他の人を援護しつつ、逃げそうな奴から倒していくとしようか」
魔導バイクに跨る柊 真司(ka0705)は、コオロギ歪虚の位置を把握しながら頭の中で綿密に作戦を組み立てているみたいだった。
その真司の近く。草原に不似合いなほど大きくなったコオロギを、サトコ・ロロブリジーダ(ka2475)がまるで凝視するかのように見ている。
「ふつうのコオロギなら飼うのもいいんだけどなー。ここまで大きくなっちゃうと、ちょーっと難しいかな。村の人たちのためにも、頑張ってやっつけなくっちゃね!」
見せる明朗快活ぶりとは対照的に、心の内にドス黒いものを秘めているサトコは、声に出さず悪態をつきまくる。
「(ケッ、雑魚歪虚退治なんざ、まったくくだらねえったらありゃしねえが……魔術の実験相手としちゃー適当だしな。身の安全を担保した上で戦える機会もそうは無し。いいぜ、特別につきあってやるよ)」
表面上と心の中で別の顔を使い分けるサトコの側には、ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)もいた。ご先祖様は大ニンジャだという符術師である。
「カードの力とルンルン忍法を駆使して、コオロギ雑魔をやっつけちゃいます! こんな大きなコオロギが暴れ回ったら大変だもの……それに、鳴いたら絶対煩くて仕方ないんだから!」
確かにそのとおりだと他のハンターも頷く。
人里からやや離れた草原を、雑魔が根城としたのは不幸中の幸いだったのかもしれない。
「カマキリに蜘蛛にムカデやらって、コオロギは天敵もたくさんいるからネ。モチーフに準えるなら、ぴょんぴょんトンズラこく脳みそも詰まってるンじゃないかい?
飄々と話すフォークス(ka0570)に、贔屓の店でよく一緒するという水月が声をかける。
「フォークスさん、銃の腕頼りにしてますよー」
「ああ。虫ってのは柔い生き物さ。中途半端に攻撃を当てても、深手を負ったらビビッて逃げちゃうかもしれないねェ? ココはひとつ、芝居でも打って調子付かせてみるってのはどうだい? あたいが餌になってもいいヨ」
コオロギ歪虚が一体でも逃げたら、他で繁殖して面倒な事態にもなりかねない。
確実に殲滅するため、ハンターたちはコの字型に存在する木々を虫かご代わりにして、そこへコオロギ歪虚を追い込むことにした。
●
「ジュゲームリリカルクルクルマジカル……ルンルン忍法ニンジャパワー」
ドローした符に口づけし、秋桜が投擲する。
「目覚めて貴方のニンジャパワー☆」
本格的に戦闘を行う前に、秋桜は自分と近距離攻撃をする味方の真司、ステラ、水月に地脈鳴動をかけた。
秋桜の援護で戦闘力が上昇したのを受け、真司が乗っているバイクを稼働させる。
「作戦は了解した。だが、逃げられる可能性が高い個体は先に仕留める」
高い機動力を活かし、比較的離れた位置にいるコオロギを狙って全速力で移動する。
自らを囮役と決めたフォークスは単独で行動し、まずは手当たり次第に敵へ攻撃を飛ばしていく。
攻撃されたと知覚させるため、あえて当てずに掠めさせる。
「自分は体力満タン、獲物は単独な上に攻撃を当てる腕もないと思わせれば、あたいの勝ちだ。釣り餌はいかにも美味そうじゃなきゃダメなのさ」
銃を放っては移動を繰り返すフォークスからやや離れた後方で、サトコはコオロギの位置をチェックして、およそ何体いるのかを見極める。
「草むらの中にいると昆虫って意外と視認し辛いからね。急にジャンプしてこられたらビクってしちゃうかも。まずは歪虚がどのあたりにいるのか、把握するところからはじめたいかな」
バイクで行動を開始していたステラは、見えている敵の少し前で飛び降りる。
コオロギ歪虚は即座にステラを敵だと判断し、押し潰そうと飛び跳ねる。
素早く回避したステラは、コオロギが着地した隙を狙い一撃を入れる。
「隙ありだよ! さあ、こっちに注意を向けてよね!」
絶命させるまでには至らなかったコオロギがステラをギロリと睨んだ瞬間、水月がランアウトで一気に外側へ回り込んで攻撃する。コの字型の林の中へ誘導する狙いがあった。
「そうそう、そっちですよー。囲んで後は潰すだけ。簡単なお仕事ですねー?」
ハンターの存在に気づいたコオロギたちが、それぞれに行動を開始する。
●
リーダーがいるわけではなく、本能に忠実に動くので各個体で勝手にハンターを狙う。
バイクで距離を詰めていた真司に、一体のコオロギが襲い掛かる。
かなりの跳躍力で宙を舞うコオロギの巨体を、バイクを操作してなんとか回避する。
攻撃をかわされて焦るコオロギの動きを冷静に目で追い、アンティキティラによるファイアスローワーで地面にねじ伏せる。
可能であれば他の敵もまとめて炎の力を持った破壊エネルギーで倒すつもりだったが、生憎とターゲットにできたのは一体だけだった。
標的を倒したあとは、逃げようとしてる敵がいないか周囲を確認する。
「敵が密集してたら威力重視でまとめてぶっ飛ばすんだがな。まあ、いい。仮にファイアスローワーを使い切っても、他の攻撃で戦闘続行するぜ」
真司が敵の一体を仕留めた頃、秋桜は他の仲間と連携して雑魔を誘い込むように動いていた。
地形を利用する為に、真っ直ぐ木で囲まれてる地点方向にキラキラ目立つ様な動きを披露し、雑魔の目を引いて秋桜の方へ来るように仕向ける。
「ルンルン忍法こっちの水は甘いの術! 私の魅力に雑魔もメロメロです☆」
雑魔――しかもコオロギに人間の美的感覚がわかるかは不明だが、敵の一体は懸命に秋桜を追いかける。
フォークスやステラ、それに水月もコの字型の林へ敵を誘い込む。
「ほらほら、こっちこっち」
コオロギの攻撃をステップで回避しながら、ステラは敵の誘導を続ける。
「他の人はどうなってるかな。なるべくタイミングを合わせないと」
周囲の様子をステラが確認していると、それまで後方でタイミングを窺っていたサトコが動き出したところだった。
「(油断する必要はねえし、慎重になりすぎる必要もねえ。昆虫型を相手にするときゃ淡々と狩るのが一番だ。一匹たりとも見逃さねーためにも、クールに動くぜ)」
続々とコの字型の林へ誘い込まれるコオロギを見据えて、サトコは狙いを定める。
「逃げられたら面倒っていうか、絶対に避けたいところだよね。スリープクラウドで、敵を眠らせるよ」
相変わらず表面上では明るい笑顔を浮かべ、元気いっぱいなサトコだった。
なるべく多くの個体を巻き込めるように、複数のコオロギにえいっとスリープクラウドを放つ。
一体のコオロギには抵抗されたが、もう一体は夢の世界へといざなわれた。
力なく倒れたコオロギを、状況を見守っていたステラが剣心一如からの疾風剣で沈めにかかる。
「一撃で沈んでくれないなら、二発、三発と確実に決めていくよ!」
精神を統一し、呼吸を整えたステラは一気に間合いを詰め、水平に構えた武器で敵を貫き斬る。
確かな手応えを感じ喜ぶステラだったが、わずかにできた隙を狙って死角から別のコオロギが襲い掛かる。
ステラの行動を気にして、比較的近くで戦っていた水月が瞬時に気づいた。
最高到達地点から速度をつけて落下してくるコオロギを、ステラの頭上へ到着する前に刀で別方向へ叩き落とした。
「残念ですけど、そうはさせません。おとなしく落ちてくださいねー」
「水月くん、ありがとう!」
お礼を言うステラに「いえいえー」と応じてから、水月は言葉を続ける。
「作戦通りに、敵を上手く追い込めそうですねー。あとは逃がさないように、林の出入口を塞ぐ位置を取りますよー?」
水月とステラが移動するのを待ってたかのように、コの字型の林の奥まで敵を誘い込んだフォークスが本格的な応戦を開始する。
「我ながら見事な大根役者っぷりだヨ。ま、丁度いい腕カナ、ゴミ虫相手にはさ」
反転し、外側から追い込んできた他の仲間と合流。そのまま、エア・スティーラーの強烈な一撃をコオロギの一体に命中させる。
一気に劣勢に立たされたコオロギたちが逃げられなくなるように、秋桜は敵の背後に地縛符を仕掛けていく。
「シュゲームリリカル……ルンルン忍法土蜘蛛の術!」
その際に近寄られそうになると、急いで逆手持ちしている武器で応戦する。
距離を稼ぎ、敵の攻撃がひと段落するのを狙って反撃に移る。
「シュゲームリリカル……ルンルン忍法五星花!」
素早いコオロギへ確実に攻撃を当てるため、五色光符陣でまとめて仕留めにかかる。
●
誘い込むような動きが大半だったハンターたちの、突然の攻勢にコオロギの雑魔は戸惑う。
「ふふ、うまく来てくれたね……でも残念。これでチェックメイト、だよ!」
誘導後、林の出口側に移動していたステラが剣心一如と疾風剣のコンビネーションでコオロギ歪虚を沈めていく。
数を減らされ続けるコオロギ歪虚の中で、敵を倒したい衝動よりもついに恐れが上回る。
結果、コオロギ歪虚たちは揃って逃走を開始した。
それを見ていたサトコが敵の動きを封じるべく、新たにスリープクラウドを放つ。
「(ガンガン攻撃していってもいいんだがな。万が一にもこんなところで失敗したら、俺の経歴に傷がつく。ここは確実性をとって、他の連中が立ち回りやすいように支援に回るか)」
首尾よく眠らせたコオロギは、近接攻撃をする仲間が一気に仕留める。
遠距離からはフォークスが逃げる敵を優先的に狙う。
「食えない虫は生ゴミ同然。纏めてFuck'em all!」
過激な発言で威嚇射撃を行い、逃げようとするコオロギの動きを封じる。
包囲網から突破しようとする敵には、足の速さと瞬発力を活かした水月が対処する。
「その脚、面倒くさいですねー」
逃げるコオロギの左右の後ろ足を連続で狙い、機動力をごっそりと奪う。
「攻撃を避けると敵に逃げ出されそうなら、わざと攻撃を受け止めるのもありですねー」
にっこり笑う水月の側では、ステラも懸命に刀を振るい続けていた。
「そんな動きはお見通しだもの……ここでフィールドトラップ発動! これがチャンピオンのカードテクニックです」
不利を悟って逃げ出そうとしていたコオロギの一体が、秋桜の仕掛けていた地縛符に移動を強く阻害された。
コオロギの足が止まれば、追いついて攻撃するのも簡単だ。
刀で敵を仕留めたあと、秋桜はふうと軽く息を吐いた。
「おっと! お前らの攻撃が、容易く俺に通用すると思うなよ」
逃げる道に立ち塞がった真司に、コオロギが退けとばかりに攻撃をしかけた。
それを手に持つ杖で防いだ真司は、強引に力でコオロギをその場にひっくり返した。
無防備になったコオロギにファイアスローワーでとどめを刺せば、また一体敵の数が減る。
「悪いが、たったの一体も逃がすつもりはないぜ。近隣の村に被害が出たら困るんでな」
向かってくれば撃退し、恐れをなして逃げ出しても追いかけて仕留める。
逃走させないように計画を練っていたハンターたちの包囲網を、コオロギ歪虚は最後まで突破できなかった。
足止めするような形になれば、銃を得意とするフォークスが狙いを定めるのは簡単だった。
最後の一体に、フォークスが二発の弾丸を命中させる。
遠距離から見事に仕留め、コオロギ歪虚の消滅を確認して殲滅作戦は終了した。
●
依頼を無事に達成させてくれた愛銃を肩に担ぎながら、フォークスは立ったままで煙草に火をつけた。
「歪虚じゃなきゃご馳走なんだケドねェ。ま、今はモクで十分か」
紫煙をくゆらせ、空腹を誤魔化すようにフォークスはひとり笑った。
そこへ水月がお疲れ様でしたーとやってくる。ステラも一緒だ。
「依頼も無事に達成できたし、これでクリスマスの準備ができますねー」
水月の言葉に、満面の笑みを浮かべたステラが頷く。
「うんっ。楽しみだね……って、柊さんは何をしてるのかな?」
ステラの声が聞こえた真司は、周辺を調べてみるつもりだと返した。
「コオロギを雑魔化させた原因が、見つかるかもしれないからな。直感も駆使するから、何かあればわかるだろう」
それならと他の仲間も一緒になって調べてみたが、雑魔化したコオロギがいなくなった草原は平和そのものだった。
新たな敵の気配も感じられない。この分なら、村の人間がまたピクニックを楽しむようになっても問題ないだろう。
雑魔化させた原因が何もないのであれば、それにこしたことはない。
ハンターたちは調査を切り上げ、依頼達成の報告をしに行こうと決めた。
コオロギ歪虚の殲滅の知らせを聞けば、依頼者の親子もきっと笑顔になってくれるはずだ。
達成感を胸に、爽やかな風に吹かれながら、ハンターたちはその場をあとにするのだった。
見晴らしも良く、ピクニックをするには最適な場所。
草原に到着したハンターの誰もが、似たような感想を抱いた。
住民の憩いの場となるべき草原なのだが、今は不似合いな存在に占拠されてしまっている。
退治してほしいと依頼された巨大なコオロギ歪虚だ。
「被害が出なくって何よりだけど、もしかしたら……だもんね。急いで片付けて、クリスマスの準備をしよう?」
草原にて数体のコオロギ歪虚を肉眼で確認後、ステラ=ライムライト(ka5122)が葛音 水月(ka1895)をチラリと見ながら言った。
「僕も早くしたいけどステラさんの練習にだし、こっちも大事ですからねー?」
諭すように言いつつも、水月もどこかクリスマスに浮かれているみたいだった。
「逃げられて第三者に被害が出ないように此処できっちり殲滅させないとな。まずは直に逃げそうな位置にいる奴を倒したら後は他の人を援護しつつ、逃げそうな奴から倒していくとしようか」
魔導バイクに跨る柊 真司(ka0705)は、コオロギ歪虚の位置を把握しながら頭の中で綿密に作戦を組み立てているみたいだった。
その真司の近く。草原に不似合いなほど大きくなったコオロギを、サトコ・ロロブリジーダ(ka2475)がまるで凝視するかのように見ている。
「ふつうのコオロギなら飼うのもいいんだけどなー。ここまで大きくなっちゃうと、ちょーっと難しいかな。村の人たちのためにも、頑張ってやっつけなくっちゃね!」
見せる明朗快活ぶりとは対照的に、心の内にドス黒いものを秘めているサトコは、声に出さず悪態をつきまくる。
「(ケッ、雑魚歪虚退治なんざ、まったくくだらねえったらありゃしねえが……魔術の実験相手としちゃー適当だしな。身の安全を担保した上で戦える機会もそうは無し。いいぜ、特別につきあってやるよ)」
表面上と心の中で別の顔を使い分けるサトコの側には、ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)もいた。ご先祖様は大ニンジャだという符術師である。
「カードの力とルンルン忍法を駆使して、コオロギ雑魔をやっつけちゃいます! こんな大きなコオロギが暴れ回ったら大変だもの……それに、鳴いたら絶対煩くて仕方ないんだから!」
確かにそのとおりだと他のハンターも頷く。
人里からやや離れた草原を、雑魔が根城としたのは不幸中の幸いだったのかもしれない。
「カマキリに蜘蛛にムカデやらって、コオロギは天敵もたくさんいるからネ。モチーフに準えるなら、ぴょんぴょんトンズラこく脳みそも詰まってるンじゃないかい?
飄々と話すフォークス(ka0570)に、贔屓の店でよく一緒するという水月が声をかける。
「フォークスさん、銃の腕頼りにしてますよー」
「ああ。虫ってのは柔い生き物さ。中途半端に攻撃を当てても、深手を負ったらビビッて逃げちゃうかもしれないねェ? ココはひとつ、芝居でも打って調子付かせてみるってのはどうだい? あたいが餌になってもいいヨ」
コオロギ歪虚が一体でも逃げたら、他で繁殖して面倒な事態にもなりかねない。
確実に殲滅するため、ハンターたちはコの字型に存在する木々を虫かご代わりにして、そこへコオロギ歪虚を追い込むことにした。
●
「ジュゲームリリカルクルクルマジカル……ルンルン忍法ニンジャパワー」
ドローした符に口づけし、秋桜が投擲する。
「目覚めて貴方のニンジャパワー☆」
本格的に戦闘を行う前に、秋桜は自分と近距離攻撃をする味方の真司、ステラ、水月に地脈鳴動をかけた。
秋桜の援護で戦闘力が上昇したのを受け、真司が乗っているバイクを稼働させる。
「作戦は了解した。だが、逃げられる可能性が高い個体は先に仕留める」
高い機動力を活かし、比較的離れた位置にいるコオロギを狙って全速力で移動する。
自らを囮役と決めたフォークスは単独で行動し、まずは手当たり次第に敵へ攻撃を飛ばしていく。
攻撃されたと知覚させるため、あえて当てずに掠めさせる。
「自分は体力満タン、獲物は単独な上に攻撃を当てる腕もないと思わせれば、あたいの勝ちだ。釣り餌はいかにも美味そうじゃなきゃダメなのさ」
銃を放っては移動を繰り返すフォークスからやや離れた後方で、サトコはコオロギの位置をチェックして、およそ何体いるのかを見極める。
「草むらの中にいると昆虫って意外と視認し辛いからね。急にジャンプしてこられたらビクってしちゃうかも。まずは歪虚がどのあたりにいるのか、把握するところからはじめたいかな」
バイクで行動を開始していたステラは、見えている敵の少し前で飛び降りる。
コオロギ歪虚は即座にステラを敵だと判断し、押し潰そうと飛び跳ねる。
素早く回避したステラは、コオロギが着地した隙を狙い一撃を入れる。
「隙ありだよ! さあ、こっちに注意を向けてよね!」
絶命させるまでには至らなかったコオロギがステラをギロリと睨んだ瞬間、水月がランアウトで一気に外側へ回り込んで攻撃する。コの字型の林の中へ誘導する狙いがあった。
「そうそう、そっちですよー。囲んで後は潰すだけ。簡単なお仕事ですねー?」
ハンターの存在に気づいたコオロギたちが、それぞれに行動を開始する。
●
リーダーがいるわけではなく、本能に忠実に動くので各個体で勝手にハンターを狙う。
バイクで距離を詰めていた真司に、一体のコオロギが襲い掛かる。
かなりの跳躍力で宙を舞うコオロギの巨体を、バイクを操作してなんとか回避する。
攻撃をかわされて焦るコオロギの動きを冷静に目で追い、アンティキティラによるファイアスローワーで地面にねじ伏せる。
可能であれば他の敵もまとめて炎の力を持った破壊エネルギーで倒すつもりだったが、生憎とターゲットにできたのは一体だけだった。
標的を倒したあとは、逃げようとしてる敵がいないか周囲を確認する。
「敵が密集してたら威力重視でまとめてぶっ飛ばすんだがな。まあ、いい。仮にファイアスローワーを使い切っても、他の攻撃で戦闘続行するぜ」
真司が敵の一体を仕留めた頃、秋桜は他の仲間と連携して雑魔を誘い込むように動いていた。
地形を利用する為に、真っ直ぐ木で囲まれてる地点方向にキラキラ目立つ様な動きを披露し、雑魔の目を引いて秋桜の方へ来るように仕向ける。
「ルンルン忍法こっちの水は甘いの術! 私の魅力に雑魔もメロメロです☆」
雑魔――しかもコオロギに人間の美的感覚がわかるかは不明だが、敵の一体は懸命に秋桜を追いかける。
フォークスやステラ、それに水月もコの字型の林へ敵を誘い込む。
「ほらほら、こっちこっち」
コオロギの攻撃をステップで回避しながら、ステラは敵の誘導を続ける。
「他の人はどうなってるかな。なるべくタイミングを合わせないと」
周囲の様子をステラが確認していると、それまで後方でタイミングを窺っていたサトコが動き出したところだった。
「(油断する必要はねえし、慎重になりすぎる必要もねえ。昆虫型を相手にするときゃ淡々と狩るのが一番だ。一匹たりとも見逃さねーためにも、クールに動くぜ)」
続々とコの字型の林へ誘い込まれるコオロギを見据えて、サトコは狙いを定める。
「逃げられたら面倒っていうか、絶対に避けたいところだよね。スリープクラウドで、敵を眠らせるよ」
相変わらず表面上では明るい笑顔を浮かべ、元気いっぱいなサトコだった。
なるべく多くの個体を巻き込めるように、複数のコオロギにえいっとスリープクラウドを放つ。
一体のコオロギには抵抗されたが、もう一体は夢の世界へといざなわれた。
力なく倒れたコオロギを、状況を見守っていたステラが剣心一如からの疾風剣で沈めにかかる。
「一撃で沈んでくれないなら、二発、三発と確実に決めていくよ!」
精神を統一し、呼吸を整えたステラは一気に間合いを詰め、水平に構えた武器で敵を貫き斬る。
確かな手応えを感じ喜ぶステラだったが、わずかにできた隙を狙って死角から別のコオロギが襲い掛かる。
ステラの行動を気にして、比較的近くで戦っていた水月が瞬時に気づいた。
最高到達地点から速度をつけて落下してくるコオロギを、ステラの頭上へ到着する前に刀で別方向へ叩き落とした。
「残念ですけど、そうはさせません。おとなしく落ちてくださいねー」
「水月くん、ありがとう!」
お礼を言うステラに「いえいえー」と応じてから、水月は言葉を続ける。
「作戦通りに、敵を上手く追い込めそうですねー。あとは逃がさないように、林の出入口を塞ぐ位置を取りますよー?」
水月とステラが移動するのを待ってたかのように、コの字型の林の奥まで敵を誘い込んだフォークスが本格的な応戦を開始する。
「我ながら見事な大根役者っぷりだヨ。ま、丁度いい腕カナ、ゴミ虫相手にはさ」
反転し、外側から追い込んできた他の仲間と合流。そのまま、エア・スティーラーの強烈な一撃をコオロギの一体に命中させる。
一気に劣勢に立たされたコオロギたちが逃げられなくなるように、秋桜は敵の背後に地縛符を仕掛けていく。
「シュゲームリリカル……ルンルン忍法土蜘蛛の術!」
その際に近寄られそうになると、急いで逆手持ちしている武器で応戦する。
距離を稼ぎ、敵の攻撃がひと段落するのを狙って反撃に移る。
「シュゲームリリカル……ルンルン忍法五星花!」
素早いコオロギへ確実に攻撃を当てるため、五色光符陣でまとめて仕留めにかかる。
●
誘い込むような動きが大半だったハンターたちの、突然の攻勢にコオロギの雑魔は戸惑う。
「ふふ、うまく来てくれたね……でも残念。これでチェックメイト、だよ!」
誘導後、林の出口側に移動していたステラが剣心一如と疾風剣のコンビネーションでコオロギ歪虚を沈めていく。
数を減らされ続けるコオロギ歪虚の中で、敵を倒したい衝動よりもついに恐れが上回る。
結果、コオロギ歪虚たちは揃って逃走を開始した。
それを見ていたサトコが敵の動きを封じるべく、新たにスリープクラウドを放つ。
「(ガンガン攻撃していってもいいんだがな。万が一にもこんなところで失敗したら、俺の経歴に傷がつく。ここは確実性をとって、他の連中が立ち回りやすいように支援に回るか)」
首尾よく眠らせたコオロギは、近接攻撃をする仲間が一気に仕留める。
遠距離からはフォークスが逃げる敵を優先的に狙う。
「食えない虫は生ゴミ同然。纏めてFuck'em all!」
過激な発言で威嚇射撃を行い、逃げようとするコオロギの動きを封じる。
包囲網から突破しようとする敵には、足の速さと瞬発力を活かした水月が対処する。
「その脚、面倒くさいですねー」
逃げるコオロギの左右の後ろ足を連続で狙い、機動力をごっそりと奪う。
「攻撃を避けると敵に逃げ出されそうなら、わざと攻撃を受け止めるのもありですねー」
にっこり笑う水月の側では、ステラも懸命に刀を振るい続けていた。
「そんな動きはお見通しだもの……ここでフィールドトラップ発動! これがチャンピオンのカードテクニックです」
不利を悟って逃げ出そうとしていたコオロギの一体が、秋桜の仕掛けていた地縛符に移動を強く阻害された。
コオロギの足が止まれば、追いついて攻撃するのも簡単だ。
刀で敵を仕留めたあと、秋桜はふうと軽く息を吐いた。
「おっと! お前らの攻撃が、容易く俺に通用すると思うなよ」
逃げる道に立ち塞がった真司に、コオロギが退けとばかりに攻撃をしかけた。
それを手に持つ杖で防いだ真司は、強引に力でコオロギをその場にひっくり返した。
無防備になったコオロギにファイアスローワーでとどめを刺せば、また一体敵の数が減る。
「悪いが、たったの一体も逃がすつもりはないぜ。近隣の村に被害が出たら困るんでな」
向かってくれば撃退し、恐れをなして逃げ出しても追いかけて仕留める。
逃走させないように計画を練っていたハンターたちの包囲網を、コオロギ歪虚は最後まで突破できなかった。
足止めするような形になれば、銃を得意とするフォークスが狙いを定めるのは簡単だった。
最後の一体に、フォークスが二発の弾丸を命中させる。
遠距離から見事に仕留め、コオロギ歪虚の消滅を確認して殲滅作戦は終了した。
●
依頼を無事に達成させてくれた愛銃を肩に担ぎながら、フォークスは立ったままで煙草に火をつけた。
「歪虚じゃなきゃご馳走なんだケドねェ。ま、今はモクで十分か」
紫煙をくゆらせ、空腹を誤魔化すようにフォークスはひとり笑った。
そこへ水月がお疲れ様でしたーとやってくる。ステラも一緒だ。
「依頼も無事に達成できたし、これでクリスマスの準備ができますねー」
水月の言葉に、満面の笑みを浮かべたステラが頷く。
「うんっ。楽しみだね……って、柊さんは何をしてるのかな?」
ステラの声が聞こえた真司は、周辺を調べてみるつもりだと返した。
「コオロギを雑魔化させた原因が、見つかるかもしれないからな。直感も駆使するから、何かあればわかるだろう」
それならと他の仲間も一緒になって調べてみたが、雑魔化したコオロギがいなくなった草原は平和そのものだった。
新たな敵の気配も感じられない。この分なら、村の人間がまたピクニックを楽しむようになっても問題ないだろう。
雑魔化させた原因が何もないのであれば、それにこしたことはない。
ハンターたちは調査を切り上げ、依頼達成の報告をしに行こうと決めた。
コオロギ歪虚の殲滅の知らせを聞けば、依頼者の親子もきっと笑顔になってくれるはずだ。
達成感を胸に、爽やかな風に吹かれながら、ハンターたちはその場をあとにするのだった。
依頼結果
依頼成功度 | 成功 |
---|
面白かった! | 4人 |
---|
ポイントがありませんので、拍手できません
現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!
MVP一覧
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/12/15 23:56:07 |
|
![]() |
【相談】コオロギ退治 葛音 ステラ(ka5122) 人間(リアルブルー)|19才|女性|舞刀士(ソードダンサー) |
最終発言 2015/12/17 22:00:09 |