ゲスト
(ka0000)
パネット―ネを作ろう
マスター:奈華里

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/12/17 07:30
- 完成日
- 2015/12/27 02:37
このシナリオは2日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
クリスマス、それは家族を大切に思う日――。
リブの住む街も職人が多いとあって街中は電飾で飾られ、この時期は賑やかさを増している。
そして彼女の父も、ガラス職人であるからクリスマス用のガラスのツリーやオーナメントの製造に追われ、なかなかに忙しい日々を送っている。そんな父を手伝いながら、リブは密かに計画している事があった。それは…。
(今年は自分で作りたい)
彼女のいる地方でクリスマスに欠かせないもの、それはパネットーネというパンに近いフルーツケーキだ。
リアルブルーにあるようなクリームたっぷりのものではないが、それでも甘く保存が多少利くのが特徴で毎年欠かさず食べている。母がいた頃は母親が手作りしていたが、亡くなってからは親子二人。まだ幼かったリブには作るすべもなく教えてくれる者もいなかっため、市場で買うのが恒例となっていた。けれど、彼女ももう十二歳。父の食事を作れるだけの腕は持っている。
(パパの好きなナッツも入れて…でも、どうやったら美味しく出来るんだろう)
お菓子屋さんに聞いてみたいが、この時期はかき入れ時でもある。彼女自身も店番に出ないといけない為、あまり時間を作れそうにもないし、特訓に付き合ってくれるようなお店が果たしてあるだろうか。
「誰か教えてくれないかなぁ…」
近所の奥さんに聞いてみる? いや、しかしきっと言ったらすぐに父の耳に入ってしまう。
出来れば父を驚かせたい彼女にとって、口の軽い御近所の奥さんは例えレシピを知っていたとしても外すべきだ。
『ナァーオ』
とそこで聞き覚えのある声がして、ふと視線を向ければいつか出会った一匹の野良猫が店の外を歩いていた。
「えっ、船長! どうして…」
別の街で彼女を助けてくれた一匹の猫――
お鬚がくるんとかぎ状になっているからつけた名前を呟いて、彼女は慌てて店の前へと飛び出す。
「ん、どうした? リブ…何か見つけたか?」
丁度その折、配達から戻った来た父に出くわして彼女は追いかける事を決める。
「パパ、ちょっと出てくるね。すぐ戻るからっ!」
あの猫にもう一度会いたい。そう願っていたから、彼女は返事も聞かず駆けてゆく。
程なくして、船長はある場所の前にいた。
「やっと捕まえた」
息を切らして、まだ昼間であるからそこまで寒くはないがそれでも上着なしだと少しばかり冷たさが肌を刺す。
その冷たさを抱き上げた船長の温もりで補いながら、目の前の建物の看板に目をとめる。
「ハンターオフィス…」
主な仕事は歪虚との戦いかもしれないが、何でも屋的要素も兼ね備えている。
彼女も以前二度ほど父の依頼でハンター達に協力を願い、依頼を片付けて貰った事もある。けれど、
「わたしのお小遣いじゃ、報酬なんて出せないもんね…」
出来れば頼みたい。だけど、子供のこんな小さな依頼など取り合って貰える筈がない。
自然と船長を抱く腕に力が入る。
『ナァーオ』
そこで再び船長が鳴いて、ぴょんと飛び出し中の方へと駆けてゆく。
「あっ、待ってよ」
それにつられて飛び込めば、彼女は今まさに受付で依頼を出している一人の話を耳にする。
「あの、教会にくる子供達がクリスマス用のフルーツケーキを作りたいと申しているのですが、うちにいるシスターだけでは目が行き届かないので人を借りることはできますか?」
依頼主は近所の教会のシスターらしかった。親を亡くした貧しい子供や親が仕事で一人になってしまう子供達を受け入れ、勉強やら道徳やらを教えていると聞いた事がある。
「判りました。募集してみましょう」
窓口の男性がその話を聞き、依頼を承認する。
「あの、シスター。私もそのお手伝い…というか、参加してもいいですか?」
聞けば丁度店が休みの日だ。一日かけて習えばきっとそれなりに修得できるに違いない。
突然現れたリブにシスターは驚いた様子であったが、すぐに何かを察したか優しい微笑みで首を縦に振ってくれる。
「有難う御座います♪」
その答えにリブは嬉しくなり、思わず声が大きくなる。
その声で少し注目を浴びてしまって、頬を赤らめる彼女を船長は不愛想な顔のまま静かに見つめていた。
リブの住む街も職人が多いとあって街中は電飾で飾られ、この時期は賑やかさを増している。
そして彼女の父も、ガラス職人であるからクリスマス用のガラスのツリーやオーナメントの製造に追われ、なかなかに忙しい日々を送っている。そんな父を手伝いながら、リブは密かに計画している事があった。それは…。
(今年は自分で作りたい)
彼女のいる地方でクリスマスに欠かせないもの、それはパネットーネというパンに近いフルーツケーキだ。
リアルブルーにあるようなクリームたっぷりのものではないが、それでも甘く保存が多少利くのが特徴で毎年欠かさず食べている。母がいた頃は母親が手作りしていたが、亡くなってからは親子二人。まだ幼かったリブには作るすべもなく教えてくれる者もいなかっため、市場で買うのが恒例となっていた。けれど、彼女ももう十二歳。父の食事を作れるだけの腕は持っている。
(パパの好きなナッツも入れて…でも、どうやったら美味しく出来るんだろう)
お菓子屋さんに聞いてみたいが、この時期はかき入れ時でもある。彼女自身も店番に出ないといけない為、あまり時間を作れそうにもないし、特訓に付き合ってくれるようなお店が果たしてあるだろうか。
「誰か教えてくれないかなぁ…」
近所の奥さんに聞いてみる? いや、しかしきっと言ったらすぐに父の耳に入ってしまう。
出来れば父を驚かせたい彼女にとって、口の軽い御近所の奥さんは例えレシピを知っていたとしても外すべきだ。
『ナァーオ』
とそこで聞き覚えのある声がして、ふと視線を向ければいつか出会った一匹の野良猫が店の外を歩いていた。
「えっ、船長! どうして…」
別の街で彼女を助けてくれた一匹の猫――
お鬚がくるんとかぎ状になっているからつけた名前を呟いて、彼女は慌てて店の前へと飛び出す。
「ん、どうした? リブ…何か見つけたか?」
丁度その折、配達から戻った来た父に出くわして彼女は追いかける事を決める。
「パパ、ちょっと出てくるね。すぐ戻るからっ!」
あの猫にもう一度会いたい。そう願っていたから、彼女は返事も聞かず駆けてゆく。
程なくして、船長はある場所の前にいた。
「やっと捕まえた」
息を切らして、まだ昼間であるからそこまで寒くはないがそれでも上着なしだと少しばかり冷たさが肌を刺す。
その冷たさを抱き上げた船長の温もりで補いながら、目の前の建物の看板に目をとめる。
「ハンターオフィス…」
主な仕事は歪虚との戦いかもしれないが、何でも屋的要素も兼ね備えている。
彼女も以前二度ほど父の依頼でハンター達に協力を願い、依頼を片付けて貰った事もある。けれど、
「わたしのお小遣いじゃ、報酬なんて出せないもんね…」
出来れば頼みたい。だけど、子供のこんな小さな依頼など取り合って貰える筈がない。
自然と船長を抱く腕に力が入る。
『ナァーオ』
そこで再び船長が鳴いて、ぴょんと飛び出し中の方へと駆けてゆく。
「あっ、待ってよ」
それにつられて飛び込めば、彼女は今まさに受付で依頼を出している一人の話を耳にする。
「あの、教会にくる子供達がクリスマス用のフルーツケーキを作りたいと申しているのですが、うちにいるシスターだけでは目が行き届かないので人を借りることはできますか?」
依頼主は近所の教会のシスターらしかった。親を亡くした貧しい子供や親が仕事で一人になってしまう子供達を受け入れ、勉強やら道徳やらを教えていると聞いた事がある。
「判りました。募集してみましょう」
窓口の男性がその話を聞き、依頼を承認する。
「あの、シスター。私もそのお手伝い…というか、参加してもいいですか?」
聞けば丁度店が休みの日だ。一日かけて習えばきっとそれなりに修得できるに違いない。
突然現れたリブにシスターは驚いた様子であったが、すぐに何かを察したか優しい微笑みで首を縦に振ってくれる。
「有難う御座います♪」
その答えにリブは嬉しくなり、思わず声が大きくなる。
その声で少し注目を浴びてしまって、頬を赤らめる彼女を船長は不愛想な顔のまま静かに見つめていた。
リプレイ本文
●集合
教会に集まった子供達――今日は待ちに待ったパネットーネの講習日。
とはいえ講習日という言い方は些か不似合だろう。子供達にとって勉強するというよりは大人の真似をしてお菓子が作れるワクワクに満ちた日。面白ければ何でも遊びに変えてしまう彼等であるから、今日のこれもきっと大人の考える程容易くはゆかないだろう。
「あー、ねこさんだぁ♪」
リブの傍にいた船長を見つけて子供達が集まる。
が船長はその声が耳についたのか、しなやかに尻尾を揺らすと教会の屋根の方へと逃げて行ってしまう。
「ごめんね。船長気まぐれで…」
そんな子供達にリブが彼に代って謝罪する。が子供達の興味は既に別へと移っていた。
「こんにちは! 今日お菓子作りを手伝うマーオ(ka5475)と言います。宜しくです」
教会の入り口、早速やって来た助っ人の持参した籠に気付いたらしい。香ばしく薫る彼自前のクッキーが子供達を引き付ける。
「ねーねー、それクッキーだよね?」
今度は彼の周りに人だかりが出来てリブは苦笑し、続いてやって来たヴァイス(ka0364)はその人気に目を丸くする。
「あぁ、押さないでっ。皆の分をちゃんと用意してきていますから」
殺到する子供達を宥めて、彼は皆にクッキーを配る。
そのクッキーには今日使うドライフルーツも入っているようでシンプルなプレーン生地に彩りを添えている。
「おいしい…これホントにおにいちゃんが作ったの?」
少女が早速口にして彼に問う。
「はい。慣れれば君にもできますよ」
昔の自分と同じ目を見て、彼はそう言葉を返す。
彼は幼き頃、甘いお菓子食べたさに台所に立っていた。そして、何度も何度も失敗を繰り返してやっと今のレベルに到達。更なる高みも目指してみたいとも思わなくもない。
「さぁ今日はパネットーネですが、僕のクッキーよりもっと美味しいものを作りましょう♪」
彼の言葉が子供達の心を煽る。
男の子は闘争心を、女の子は母性を刺激してやればスタートダッシュは成功だ。
「全く、凄いな…俺にはああいう芸当できん」
その光景を前にヴァイスがぽつりと呟く。
彼とて子供が嫌いという訳ではないが、強面の容姿が些か邪魔をしてペットを連れていても警戒される事の方が多いらしい。
(まあ、今日は友達感覚で接して貰えるよう努力しよう)
そこでそんな緩めの目標を密かに立てて、彼は材料入りの木箱を運ぶ。
「そこのあなた、こちらもお願いするわね」
そんな彼を見つけてマリィア・バルデス(ka5848)が荷物を頼む。
「あ、それとこれ。今日作るパネットーネのレシピだから目を通しておいて」
軍の習慣かはたまた彼女の性格か。手渡された紙には細かな分量と手順が記されている。
「これなら私達の出る幕はなさそうですね」
その細かさに同席するシスター達は講師役を彼女に委ねる事にして、調理場の後方に椅子を置き、見守る構えを見せている。
「リブ、久し振り。船長も…また会えて嬉しい」
そんな折、ナツキ(ka2481)は以前見知ったリブに御挨拶。
「こちらこそ、こんにちは。猫のお姉さんも来てるなんて心強いです!」
リブはそう言って、少し年上の彼女の手を取る。
その温かさにナツキは歪虚の襲撃で失った家族の温もりを感じ心を揺らす。けれど、
(お父さんもお母さんも…お姉ちゃんもいないけど、そのぶん、ともだちをいっぱいつくる)
失った過去より未来の希望――友から教わった事だ。その為にも今日はリブと共に頑張ろうと思う。
「もうこんなに集まっているのか。賑やかになりそうだな」
一人の青年が言う。手に横笛とトランプを携えて…彼の名は鞍馬 真(ka5819)と言った。
●開始
講師・マリィアの指導の下、まずは下準備だ。
「刃物は危ないから二班に分かれて作業をしましょ」
中に入れる果物や木の実を刻む班と粉類の計量班。
子供にとっては包丁を扱う方が花形のように見えるようで、まだ幼い少女が隣りを羨ましげに見つめている。
そんな彼女を見つけて、ヴァイスは怯えさせないよう注意し隣りで一言。
「ああ見えてあっちは切るだけだが、こっちは生地の出来を左右する大事な役目を担っているんだぜ?」
「だいじっ? 本当?」
その言葉にハッとして、少女が彼の腕を掴む。
「ああ、嘘じゃない。だってほら」
そこで彼は赤字になっている分量部分が書かれたレシピを彼女に見せる。
「そっか。じゃあやるぅ」
それで彼女も納得したらしい。彼が踏み台に乗せてやると、真剣な眼差しで小麦粉の量を計り始める。
「ね、ちょっと? あと、すこし?」
「おう、後これ位だ」
手で量を教えつつ彼は根気よく対応する。
そんな彼の優しさが伝わったのか、気付けば彼の元には列が出来ていた。
一方注意が必要な包丁班であるが、教え方のちょっとした工夫が功を奏す。
「包丁はこうやって持つ。切るときは、こっちを猫の手の形にして…」
猫の手にゃん。そう名付けて、ナツキがシロップ漬けのフルーツを軽快に刻む。
「そうか、猫の手だったら危なくないんだっ」
リブと同い年位だろうかナツキの言葉に成程と頷く。
「何切る時も、猫の手大事」
ナツキが招き猫のポーズを真似て、顔の横で猫の手をして見せる。
するとそれに倣ってその場にいた皆がやったものだから、思わず互いに微笑みが零れる。
「ナッツは硬いから猫の手でも危険かも。だから、こうするのが一番だよ」
マーオはそう言って、更なる方法を伝授する。その方法とは包丁の先を軸にして押さえて刻むテクニック。こうすれば刃は常に下を向いているからうっかり手を怪我する事はない。
「すっげー、どこかのマシーンみたいだ」
その動きに男の子は何処かの機械を思い出したようだ。
「ナッツは注意と」
そんな中、リブはハンター達の教えをメモし次の工程に移る。
「さあ、覚悟は良いわね。有り余ってる力発揮する時よ」
その煽り文句と共に始まるのは勿論捏ねの作業だった。
ボールの材料が一つに纏まってきたら後は体力勝負。多少玉が出来ていても捏ねるから気にしない。それに今回の助っ人には料理経験者が多く、そんな心配もない。纏まった生地を打ち粉をふった台の上に乗せて、いざ。
「何処のグループが一番早く滑らかに出来るか競争しましょ」
その言葉が引き金となった。競争と聞けば、やはり勝ちたいのが常だ。男の子のグループは我先にと生地をこねくり回し始める。けれど、この捏ねにはコツがあって。
「ん~、それだとなかなか難しいと思うな」
真が彼らの引っ張り合いになりつつある生地を見てお手本披露。
『おおっーー!』
その動きに喚声が上がった。
パン屋の職人宜しく生地を抱えると台目掛けて力強く叩き付ける。そしてまたそれを手に収めると、今度は体重をかけるようにして両手の甲で軽く捏ねてはまた叩き付けるを繰り返す。
『かっけぇ…』
その姿に思わず男の子達がが言葉を漏らす。
(ふふっ、流石ね)
その様子にマリィアはいつぞのピザ作りを思い出した。
彼も彼女も担当は違えど少し前に仕事を同じくしていたのだ。生地は彼女の担当だったが…彼もそこそこ出来るらしい。彼の実演が済むと、その後はどのグループも見様見真似でばったんばったんといい音を響かせ始める。
「うん、いい感じね。バターを揉み込み始めていいわよ」
子供の手であるから時間はかかったが、数十分を過ぎる頃には二段階目の捏ねに入り、果てその更に数十分後には伸ばした生地が透けるようになり、フルーツを入れて発酵に入るグループが増え始める。
「うぇ~~、マジきついって…」
いつも何気なく食べていたものがこれ程の手間がかかっていたとは。少年達は疲労感を隠しもせず、弱音を吐く。そんな彼らにはマリィアの少し意地悪な言葉が効果的。
「だらしないわねぇ。それでも男の子なの?」
要領が良い女子に比べて、遅れをとっている男子達。しかし、どんな場所でもいい所はみせたいものだ。
「けっ、ちょっ、ちょっと休んでただけだよぉ~だ」
そう言って再び手を動かして、ここまで来たらやっと一段落だ。
一次発酵――一時間半~二時間の休憩タイム。
疲れた子供達はおいといて、まだ元気のある子供をどう繋ぎ止めるかがハンター達の腕の見せ所であったが、それは彼等も心得ていたようでシスターらの心配は杞憂となる。
●休憩
笛の音が木霊する。石作りのこの場所に澄んだ音色…。
少し早いが奏でているのはクリスマスソング。
その音の出所に視線を移せば、そこには目を閉じで演奏を続ける真の姿がある。
「お兄ちゃん、笛が吹けるんだぁ」
愛想がいいとは決して言えない彼であったが、その演奏が子供達の好感度を押し上げる。
「趣味でやっていた程度だがな。何かリクエストはあるか?」
リアルブルーの出身であるからこちらの曲をそれ程知っている訳ではない。しかし、楽譜があれば奏でる事は可能だ。そう告げると子供達はシスターに楽譜集を持ってきて欲しいとせがむ。
「あらあら、困ったわねぇ」
そんな希望に答えて、シスターがオルガンのある本館へと移動する。
その時だった。次の工程で使うカップを取りに行こうとしたヴァイスとシスターが同時に扉へと手を伸ばして…重なる手。伝わる温もり…はっとお互いが顔を見合わせる。
「あ、いや…その…あの、これは…」
ヴァイスの顔が赤くなる。心なしか動作もぎこちなくなりながら数歩下がる。
「あの、ヴァイスさん?」
その動作に首を傾げたシスターだったが、すぐに状況を察して「先にいきますね」と告げ、パタパタ出ていく。が残った彼は未だうまく動けなくて、
「あんた真っ赤だぜー」
「もしかしてシスターに惚れたとか?」
ませた男子の戯言にも大人な対応が出来なくて…。
「なっ、何言ってんだッ馬鹿野郎めぇ!」
緊張と恥ずかしさの余り言葉までおかしくなる彼であった。
一度目の発酵を終えて、成形した後の二度目の発酵の際はマリィアが凌ぐ。
彼女も実はマーオ同様、事前準備を施してきた一人だ。
「ジンジャーブレッドの生地よ。よかったら、こっちも作ってみない?」
昨日のうちに仕込んで来た生地。ブレッドと名がつくが、実際はクッキーと言っていい。
寝かせてきた生地を麺棒で伸ばして、後は型を抜きアイシングするだけだから至って簡単。小さな子供にも出来るから、班分けする必要もない。
「人型以外にもいくつか持ってきたからみんな好きなのを選んでね」
手際よく型皆に配りながら料理が楽しくなってきた子供達はこちらで時間を潰す。
一次発酵に時間がかかっていた班はこの間に遅いお昼をとっている子もいる。
「わぁ、クッキーって僕大好きなんです! だから僕も手伝わせて下さい!」
マーオがその生地の仕上がりに興味を抱いて、その中に交ざる。
「ねぇねぇ、ヴァイスはトランプしよ?」
一方、作るのに疲れた子はゲームに興じる。
「だったら、わたしもまぜて欲しいです」
そこへナツキとリブもやって来た。メモを取り終え、息抜きのつもりらしい。
「よっしゃ、じゃあいっちょやるか」
そんな子達を集めて、真のトランプを借りするのは比較的頭を使わないババ抜きだ。
「だったら、負けられんな」
そこへ袖を捲り上げた真が加わろうとする。だがしかし、
「おにーちゃんは駄目だよぉ。この曲、吹いてよっ。私歌うから~」
笛のお兄さんの需要高し。いつもオルガンばかりであるから物珍しく新鮮な様で、合間の時間はずーーーーっと演奏をする羽目になる真。正直言えば大変であるが、笑顔を見せて貰えるなら頑張る他ない。
(この殺伐とした世の中に子供達の笑顔があるのは喜ばしいものだからな)
いつになく真面目にそんな事を思い、彼は言われるままに笛を取る。
その音は子供達のみならず酵母菌をも刺激する。
●完成
最後の工程でクープでバッテンの切り込みを入れると、バターを乗せてオーブンへ。
二回の発酵と一度のベンチタイムにより育っていった酵母菌は、熱が加わる事によりその真価を発揮する。
『おおっー』
備え付けの小窓から覗いて、焼き上がり膨らんでゆく生地に子供達の期待は高まる。
「うまくできますように…」
その様子を祈るように見つめながらリブが言う。
彼女は本当に今日の講習にかけているようだった。誰よりも熱心にメモを取り、捏ねの作業にしても人一倍頑張っていたように思える。
「大丈夫。今日のは練習だけど、きっとうまくいく」
そんな彼女の傍に終始いたナツキが彼女を励ます。
「焼き加減っていうのははなかなか難しい所だけど…家でやる時はあまりきつくし過ぎないようにすれば、後で調整もきくし失敗しにくいと思います」
そう言うのはマーオだ。経験談からくる助言は何よりも頼もしい。
パチパチと燃え熱された石窯オーブン――教会の子供達皆の食事を賄う為、個人の家にあるものよりは遥かに大きい。その中で皆が作ったパネットーネが焼き上がってゆく。
「さぁ、みんな完成したわよ」
出来上がり取り出されていく子供達のパネットーネ。多少のばらつきはあるものの、膨らまなかったり焦げ過ぎたという失敗作は見当たらない。少し傾いたものや一部焦げているものはあるが、それはまた御愛嬌。子供達がそれぞれに違うように、出来上がったケーキにも個性が出たに違いない。それに見た目はどうあれ味がよければ全て良しだ。
「うまーーい」
「超美味しいですぅ」
「俺って天才だよなぁ」
口々に零れる嬉しい感想に手伝った面子もホッとする。
追加で作られたジンジャーブレッドも焼き上がり、表情の違う人型クッキーは増してそれぞれの個性が出ている。
「お菓子作りって楽しいねー」
「私、大きくなったパティシエになるんだ」
そんな夢を決意して――僅かな時間であったが、子供達は大満足のようだ。
そして彼女も、
「これが本番でもできたらいいなっ」
ふんわりと膨らんだ生地にたっぷり練り込まれたドライフルーツ。リブの父の好みに合わせて、アーモンドが多いのが特徴的だ。甘過ぎない生地であるから朝食にもなる。
それを今度は一人で作らねばならないのだ。今日とは違う条件に少しの不安が過ったのか、彼女の表情が硬くなる。それを見逃さなかった真が彼女に一言。
「大丈夫。君が作ったものなら、お父さんも必ず喜ぶ筈だ」
料理は見た目ではない。確かに見た目も大事ではあるが、一番は気持ちなのだ。
「有難う御座います。私、頑張ります…」
彼女が不安を振り払う様にして言う。その横でちゃっかりおこぼれを預かる猫一匹。
「船長、リブのぱとねっと…ぱっとーね……とにかく、見守ってあげてね」
ナツキは船長にそうお願いする。それに無言を返す船長…いつもの事だ。
そうして迎えたクリスマスーー
「出来たよ、パパ♪」
リブの明るい声がする。その声が彼女のパネットーネの出来を物語っていた。
教会に集まった子供達――今日は待ちに待ったパネットーネの講習日。
とはいえ講習日という言い方は些か不似合だろう。子供達にとって勉強するというよりは大人の真似をしてお菓子が作れるワクワクに満ちた日。面白ければ何でも遊びに変えてしまう彼等であるから、今日のこれもきっと大人の考える程容易くはゆかないだろう。
「あー、ねこさんだぁ♪」
リブの傍にいた船長を見つけて子供達が集まる。
が船長はその声が耳についたのか、しなやかに尻尾を揺らすと教会の屋根の方へと逃げて行ってしまう。
「ごめんね。船長気まぐれで…」
そんな子供達にリブが彼に代って謝罪する。が子供達の興味は既に別へと移っていた。
「こんにちは! 今日お菓子作りを手伝うマーオ(ka5475)と言います。宜しくです」
教会の入り口、早速やって来た助っ人の持参した籠に気付いたらしい。香ばしく薫る彼自前のクッキーが子供達を引き付ける。
「ねーねー、それクッキーだよね?」
今度は彼の周りに人だかりが出来てリブは苦笑し、続いてやって来たヴァイス(ka0364)はその人気に目を丸くする。
「あぁ、押さないでっ。皆の分をちゃんと用意してきていますから」
殺到する子供達を宥めて、彼は皆にクッキーを配る。
そのクッキーには今日使うドライフルーツも入っているようでシンプルなプレーン生地に彩りを添えている。
「おいしい…これホントにおにいちゃんが作ったの?」
少女が早速口にして彼に問う。
「はい。慣れれば君にもできますよ」
昔の自分と同じ目を見て、彼はそう言葉を返す。
彼は幼き頃、甘いお菓子食べたさに台所に立っていた。そして、何度も何度も失敗を繰り返してやっと今のレベルに到達。更なる高みも目指してみたいとも思わなくもない。
「さぁ今日はパネットーネですが、僕のクッキーよりもっと美味しいものを作りましょう♪」
彼の言葉が子供達の心を煽る。
男の子は闘争心を、女の子は母性を刺激してやればスタートダッシュは成功だ。
「全く、凄いな…俺にはああいう芸当できん」
その光景を前にヴァイスがぽつりと呟く。
彼とて子供が嫌いという訳ではないが、強面の容姿が些か邪魔をしてペットを連れていても警戒される事の方が多いらしい。
(まあ、今日は友達感覚で接して貰えるよう努力しよう)
そこでそんな緩めの目標を密かに立てて、彼は材料入りの木箱を運ぶ。
「そこのあなた、こちらもお願いするわね」
そんな彼を見つけてマリィア・バルデス(ka5848)が荷物を頼む。
「あ、それとこれ。今日作るパネットーネのレシピだから目を通しておいて」
軍の習慣かはたまた彼女の性格か。手渡された紙には細かな分量と手順が記されている。
「これなら私達の出る幕はなさそうですね」
その細かさに同席するシスター達は講師役を彼女に委ねる事にして、調理場の後方に椅子を置き、見守る構えを見せている。
「リブ、久し振り。船長も…また会えて嬉しい」
そんな折、ナツキ(ka2481)は以前見知ったリブに御挨拶。
「こちらこそ、こんにちは。猫のお姉さんも来てるなんて心強いです!」
リブはそう言って、少し年上の彼女の手を取る。
その温かさにナツキは歪虚の襲撃で失った家族の温もりを感じ心を揺らす。けれど、
(お父さんもお母さんも…お姉ちゃんもいないけど、そのぶん、ともだちをいっぱいつくる)
失った過去より未来の希望――友から教わった事だ。その為にも今日はリブと共に頑張ろうと思う。
「もうこんなに集まっているのか。賑やかになりそうだな」
一人の青年が言う。手に横笛とトランプを携えて…彼の名は鞍馬 真(ka5819)と言った。
●開始
講師・マリィアの指導の下、まずは下準備だ。
「刃物は危ないから二班に分かれて作業をしましょ」
中に入れる果物や木の実を刻む班と粉類の計量班。
子供にとっては包丁を扱う方が花形のように見えるようで、まだ幼い少女が隣りを羨ましげに見つめている。
そんな彼女を見つけて、ヴァイスは怯えさせないよう注意し隣りで一言。
「ああ見えてあっちは切るだけだが、こっちは生地の出来を左右する大事な役目を担っているんだぜ?」
「だいじっ? 本当?」
その言葉にハッとして、少女が彼の腕を掴む。
「ああ、嘘じゃない。だってほら」
そこで彼は赤字になっている分量部分が書かれたレシピを彼女に見せる。
「そっか。じゃあやるぅ」
それで彼女も納得したらしい。彼が踏み台に乗せてやると、真剣な眼差しで小麦粉の量を計り始める。
「ね、ちょっと? あと、すこし?」
「おう、後これ位だ」
手で量を教えつつ彼は根気よく対応する。
そんな彼の優しさが伝わったのか、気付けば彼の元には列が出来ていた。
一方注意が必要な包丁班であるが、教え方のちょっとした工夫が功を奏す。
「包丁はこうやって持つ。切るときは、こっちを猫の手の形にして…」
猫の手にゃん。そう名付けて、ナツキがシロップ漬けのフルーツを軽快に刻む。
「そうか、猫の手だったら危なくないんだっ」
リブと同い年位だろうかナツキの言葉に成程と頷く。
「何切る時も、猫の手大事」
ナツキが招き猫のポーズを真似て、顔の横で猫の手をして見せる。
するとそれに倣ってその場にいた皆がやったものだから、思わず互いに微笑みが零れる。
「ナッツは硬いから猫の手でも危険かも。だから、こうするのが一番だよ」
マーオはそう言って、更なる方法を伝授する。その方法とは包丁の先を軸にして押さえて刻むテクニック。こうすれば刃は常に下を向いているからうっかり手を怪我する事はない。
「すっげー、どこかのマシーンみたいだ」
その動きに男の子は何処かの機械を思い出したようだ。
「ナッツは注意と」
そんな中、リブはハンター達の教えをメモし次の工程に移る。
「さあ、覚悟は良いわね。有り余ってる力発揮する時よ」
その煽り文句と共に始まるのは勿論捏ねの作業だった。
ボールの材料が一つに纏まってきたら後は体力勝負。多少玉が出来ていても捏ねるから気にしない。それに今回の助っ人には料理経験者が多く、そんな心配もない。纏まった生地を打ち粉をふった台の上に乗せて、いざ。
「何処のグループが一番早く滑らかに出来るか競争しましょ」
その言葉が引き金となった。競争と聞けば、やはり勝ちたいのが常だ。男の子のグループは我先にと生地をこねくり回し始める。けれど、この捏ねにはコツがあって。
「ん~、それだとなかなか難しいと思うな」
真が彼らの引っ張り合いになりつつある生地を見てお手本披露。
『おおっーー!』
その動きに喚声が上がった。
パン屋の職人宜しく生地を抱えると台目掛けて力強く叩き付ける。そしてまたそれを手に収めると、今度は体重をかけるようにして両手の甲で軽く捏ねてはまた叩き付けるを繰り返す。
『かっけぇ…』
その姿に思わず男の子達がが言葉を漏らす。
(ふふっ、流石ね)
その様子にマリィアはいつぞのピザ作りを思い出した。
彼も彼女も担当は違えど少し前に仕事を同じくしていたのだ。生地は彼女の担当だったが…彼もそこそこ出来るらしい。彼の実演が済むと、その後はどのグループも見様見真似でばったんばったんといい音を響かせ始める。
「うん、いい感じね。バターを揉み込み始めていいわよ」
子供の手であるから時間はかかったが、数十分を過ぎる頃には二段階目の捏ねに入り、果てその更に数十分後には伸ばした生地が透けるようになり、フルーツを入れて発酵に入るグループが増え始める。
「うぇ~~、マジきついって…」
いつも何気なく食べていたものがこれ程の手間がかかっていたとは。少年達は疲労感を隠しもせず、弱音を吐く。そんな彼らにはマリィアの少し意地悪な言葉が効果的。
「だらしないわねぇ。それでも男の子なの?」
要領が良い女子に比べて、遅れをとっている男子達。しかし、どんな場所でもいい所はみせたいものだ。
「けっ、ちょっ、ちょっと休んでただけだよぉ~だ」
そう言って再び手を動かして、ここまで来たらやっと一段落だ。
一次発酵――一時間半~二時間の休憩タイム。
疲れた子供達はおいといて、まだ元気のある子供をどう繋ぎ止めるかがハンター達の腕の見せ所であったが、それは彼等も心得ていたようでシスターらの心配は杞憂となる。
●休憩
笛の音が木霊する。石作りのこの場所に澄んだ音色…。
少し早いが奏でているのはクリスマスソング。
その音の出所に視線を移せば、そこには目を閉じで演奏を続ける真の姿がある。
「お兄ちゃん、笛が吹けるんだぁ」
愛想がいいとは決して言えない彼であったが、その演奏が子供達の好感度を押し上げる。
「趣味でやっていた程度だがな。何かリクエストはあるか?」
リアルブルーの出身であるからこちらの曲をそれ程知っている訳ではない。しかし、楽譜があれば奏でる事は可能だ。そう告げると子供達はシスターに楽譜集を持ってきて欲しいとせがむ。
「あらあら、困ったわねぇ」
そんな希望に答えて、シスターがオルガンのある本館へと移動する。
その時だった。次の工程で使うカップを取りに行こうとしたヴァイスとシスターが同時に扉へと手を伸ばして…重なる手。伝わる温もり…はっとお互いが顔を見合わせる。
「あ、いや…その…あの、これは…」
ヴァイスの顔が赤くなる。心なしか動作もぎこちなくなりながら数歩下がる。
「あの、ヴァイスさん?」
その動作に首を傾げたシスターだったが、すぐに状況を察して「先にいきますね」と告げ、パタパタ出ていく。が残った彼は未だうまく動けなくて、
「あんた真っ赤だぜー」
「もしかしてシスターに惚れたとか?」
ませた男子の戯言にも大人な対応が出来なくて…。
「なっ、何言ってんだッ馬鹿野郎めぇ!」
緊張と恥ずかしさの余り言葉までおかしくなる彼であった。
一度目の発酵を終えて、成形した後の二度目の発酵の際はマリィアが凌ぐ。
彼女も実はマーオ同様、事前準備を施してきた一人だ。
「ジンジャーブレッドの生地よ。よかったら、こっちも作ってみない?」
昨日のうちに仕込んで来た生地。ブレッドと名がつくが、実際はクッキーと言っていい。
寝かせてきた生地を麺棒で伸ばして、後は型を抜きアイシングするだけだから至って簡単。小さな子供にも出来るから、班分けする必要もない。
「人型以外にもいくつか持ってきたからみんな好きなのを選んでね」
手際よく型皆に配りながら料理が楽しくなってきた子供達はこちらで時間を潰す。
一次発酵に時間がかかっていた班はこの間に遅いお昼をとっている子もいる。
「わぁ、クッキーって僕大好きなんです! だから僕も手伝わせて下さい!」
マーオがその生地の仕上がりに興味を抱いて、その中に交ざる。
「ねぇねぇ、ヴァイスはトランプしよ?」
一方、作るのに疲れた子はゲームに興じる。
「だったら、わたしもまぜて欲しいです」
そこへナツキとリブもやって来た。メモを取り終え、息抜きのつもりらしい。
「よっしゃ、じゃあいっちょやるか」
そんな子達を集めて、真のトランプを借りするのは比較的頭を使わないババ抜きだ。
「だったら、負けられんな」
そこへ袖を捲り上げた真が加わろうとする。だがしかし、
「おにーちゃんは駄目だよぉ。この曲、吹いてよっ。私歌うから~」
笛のお兄さんの需要高し。いつもオルガンばかりであるから物珍しく新鮮な様で、合間の時間はずーーーーっと演奏をする羽目になる真。正直言えば大変であるが、笑顔を見せて貰えるなら頑張る他ない。
(この殺伐とした世の中に子供達の笑顔があるのは喜ばしいものだからな)
いつになく真面目にそんな事を思い、彼は言われるままに笛を取る。
その音は子供達のみならず酵母菌をも刺激する。
●完成
最後の工程でクープでバッテンの切り込みを入れると、バターを乗せてオーブンへ。
二回の発酵と一度のベンチタイムにより育っていった酵母菌は、熱が加わる事によりその真価を発揮する。
『おおっー』
備え付けの小窓から覗いて、焼き上がり膨らんでゆく生地に子供達の期待は高まる。
「うまくできますように…」
その様子を祈るように見つめながらリブが言う。
彼女は本当に今日の講習にかけているようだった。誰よりも熱心にメモを取り、捏ねの作業にしても人一倍頑張っていたように思える。
「大丈夫。今日のは練習だけど、きっとうまくいく」
そんな彼女の傍に終始いたナツキが彼女を励ます。
「焼き加減っていうのははなかなか難しい所だけど…家でやる時はあまりきつくし過ぎないようにすれば、後で調整もきくし失敗しにくいと思います」
そう言うのはマーオだ。経験談からくる助言は何よりも頼もしい。
パチパチと燃え熱された石窯オーブン――教会の子供達皆の食事を賄う為、個人の家にあるものよりは遥かに大きい。その中で皆が作ったパネットーネが焼き上がってゆく。
「さぁ、みんな完成したわよ」
出来上がり取り出されていく子供達のパネットーネ。多少のばらつきはあるものの、膨らまなかったり焦げ過ぎたという失敗作は見当たらない。少し傾いたものや一部焦げているものはあるが、それはまた御愛嬌。子供達がそれぞれに違うように、出来上がったケーキにも個性が出たに違いない。それに見た目はどうあれ味がよければ全て良しだ。
「うまーーい」
「超美味しいですぅ」
「俺って天才だよなぁ」
口々に零れる嬉しい感想に手伝った面子もホッとする。
追加で作られたジンジャーブレッドも焼き上がり、表情の違う人型クッキーは増してそれぞれの個性が出ている。
「お菓子作りって楽しいねー」
「私、大きくなったパティシエになるんだ」
そんな夢を決意して――僅かな時間であったが、子供達は大満足のようだ。
そして彼女も、
「これが本番でもできたらいいなっ」
ふんわりと膨らんだ生地にたっぷり練り込まれたドライフルーツ。リブの父の好みに合わせて、アーモンドが多いのが特徴的だ。甘過ぎない生地であるから朝食にもなる。
それを今度は一人で作らねばならないのだ。今日とは違う条件に少しの不安が過ったのか、彼女の表情が硬くなる。それを見逃さなかった真が彼女に一言。
「大丈夫。君が作ったものなら、お父さんも必ず喜ぶ筈だ」
料理は見た目ではない。確かに見た目も大事ではあるが、一番は気持ちなのだ。
「有難う御座います。私、頑張ります…」
彼女が不安を振り払う様にして言う。その横でちゃっかりおこぼれを預かる猫一匹。
「船長、リブのぱとねっと…ぱっとーね……とにかく、見守ってあげてね」
ナツキは船長にそうお願いする。それに無言を返す船長…いつもの事だ。
そうして迎えたクリスマスーー
「出来たよ、パパ♪」
リブの明るい声がする。その声が彼女のパネットーネの出来を物語っていた。
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/12/16 18:24:42 |