ゲスト
(ka0000)
冬の一夜の攻防戦
マスター:KINUTA

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 6日
- 締切
- 2015/12/25 19:00
- 完成日
- 2015/12/30 00:07
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
自由都市同盟とゾンネンシュトラール帝国の国境付近。
そこは、全般的に温暖な自由都市同盟域には珍しく、積雪量の多い山岳地帯である。
街道近くにあるバラン村。いつもは静かなこの場所に、緊急事態が発生した。
狼の群れが出し抜けに現れたのである。群れは夜中じゅう村の中を荒らし回り、外の小屋にいた家畜を襲い、食い散らかして去った。
翌日。怒り心頭の村人たちは武器を携え山狩りを行ったが、不思議なことに、足跡は村の中で途切れ、その先どこへ行ったものやら分からずじまい。
疲労だけを背負って帰宅したその夜、またしても狼の群れが現れ、今度は人のいる家屋に近づいてきた。壁をガリガリ引っ掻き始める。物音からして、かなりの数がいるようだ。
村人たちは狼を追い払おうと、銃を手に、窓の方へ近づいた。
そして知った。外に群れているものが獣ではないことを。
狼には、色というものが全くなかった。耳の先から尻尾の先まで真っ白。牙も爪も鼻の頭も、目も口の中までも真っ白。雪で作られたかのように。
いくら銃弾を浴びせても平気な顔で、一向に効いた様子がない。
村人たちは恐怖の下に一夜を過ごすこととなった。
壁に穴を空けられ、あやうく入ってこられかけた家もあったが、椅子やベッド、タンスといったものを持ち寄り穴を塞ぎ、なんとか一晩しのぎ切った。
夜明け近くになって狼たちは、急に動きを止めた。
冬の曙光が差して来るに従い、1匹また1匹とぼろぼろ崩れ落ち、消える。
それを目にした村人たちは、恐る恐る外に出た。
雪に反射する日光が眩しい。
「なるほどなあ。道理で足跡が消えていたわけだ……」
「感心してる場合じゃねえぞ。あいつら夜になったらまた出て来るに違いねえ。どこの家も壁がボロボロになってる。応急処置するにしても、もう一度同じことをやられたら、防ぎ切れるかどうか。銃もきかねえんだ」
●
緊急依頼を受けたハンターたちは、バラン村に来た。
時刻は既に夕方。日は今にも落ちそうだ。
あたり一面足首までの深さに積もった雪が、冷気を発散している。夜になれば、また一段と気温が下がることだろう。
カチャは、足踏みをする。
「一体どこから湧いてくるんでしょうね。それが分かったなら、やりやすいんですけど」
ひとまず村人たちには今夜一晩、村長の家に集まってもらっている。
分散されるより一カ所に固まってもらうほうが、守る側としてはやりやすい。
「まあな。いっそのことこの界隈をくまなく雪かきすりゃいいのかも知れないが――その時間もないしな」
「これのせいで大事を取って、街道も封鎖されてますし」
「えらくぼやいてたな、峠で待機してる運送ギルドのおっさん達。年末はご贈答が多いから稼ぎ時なのにって」
「ご贈答……もうそんな季節か。何だか最近、時が過ぎるのが早いなあ」
「年寄り臭いこと言わないで」
日が山の端に落ちた。
続く残光もすぐさま宵闇にとって変わる。
空に星が輝き出した。白い地面は星明かりを反射させ、辺りを明るくする。
どこからともなく遠吠えが聞こえてきた。気配が、足音が、息遣いが集まってくる。人間の匂いを嗅ぎ付け、村のあちこちから、村長宅へと。
その数、総勢80匹……。
そこは、全般的に温暖な自由都市同盟域には珍しく、積雪量の多い山岳地帯である。
街道近くにあるバラン村。いつもは静かなこの場所に、緊急事態が発生した。
狼の群れが出し抜けに現れたのである。群れは夜中じゅう村の中を荒らし回り、外の小屋にいた家畜を襲い、食い散らかして去った。
翌日。怒り心頭の村人たちは武器を携え山狩りを行ったが、不思議なことに、足跡は村の中で途切れ、その先どこへ行ったものやら分からずじまい。
疲労だけを背負って帰宅したその夜、またしても狼の群れが現れ、今度は人のいる家屋に近づいてきた。壁をガリガリ引っ掻き始める。物音からして、かなりの数がいるようだ。
村人たちは狼を追い払おうと、銃を手に、窓の方へ近づいた。
そして知った。外に群れているものが獣ではないことを。
狼には、色というものが全くなかった。耳の先から尻尾の先まで真っ白。牙も爪も鼻の頭も、目も口の中までも真っ白。雪で作られたかのように。
いくら銃弾を浴びせても平気な顔で、一向に効いた様子がない。
村人たちは恐怖の下に一夜を過ごすこととなった。
壁に穴を空けられ、あやうく入ってこられかけた家もあったが、椅子やベッド、タンスといったものを持ち寄り穴を塞ぎ、なんとか一晩しのぎ切った。
夜明け近くになって狼たちは、急に動きを止めた。
冬の曙光が差して来るに従い、1匹また1匹とぼろぼろ崩れ落ち、消える。
それを目にした村人たちは、恐る恐る外に出た。
雪に反射する日光が眩しい。
「なるほどなあ。道理で足跡が消えていたわけだ……」
「感心してる場合じゃねえぞ。あいつら夜になったらまた出て来るに違いねえ。どこの家も壁がボロボロになってる。応急処置するにしても、もう一度同じことをやられたら、防ぎ切れるかどうか。銃もきかねえんだ」
●
緊急依頼を受けたハンターたちは、バラン村に来た。
時刻は既に夕方。日は今にも落ちそうだ。
あたり一面足首までの深さに積もった雪が、冷気を発散している。夜になれば、また一段と気温が下がることだろう。
カチャは、足踏みをする。
「一体どこから湧いてくるんでしょうね。それが分かったなら、やりやすいんですけど」
ひとまず村人たちには今夜一晩、村長の家に集まってもらっている。
分散されるより一カ所に固まってもらうほうが、守る側としてはやりやすい。
「まあな。いっそのことこの界隈をくまなく雪かきすりゃいいのかも知れないが――その時間もないしな」
「これのせいで大事を取って、街道も封鎖されてますし」
「えらくぼやいてたな、峠で待機してる運送ギルドのおっさん達。年末はご贈答が多いから稼ぎ時なのにって」
「ご贈答……もうそんな季節か。何だか最近、時が過ぎるのが早いなあ」
「年寄り臭いこと言わないで」
日が山の端に落ちた。
続く残光もすぐさま宵闇にとって変わる。
空に星が輝き出した。白い地面は星明かりを反射させ、辺りを明るくする。
どこからともなく遠吠えが聞こえてきた。気配が、足音が、息遣いが集まってくる。人間の匂いを嗅ぎ付け、村のあちこちから、村長宅へと。
その数、総勢80匹……。
リプレイ本文
村に着いたハンターたちは夜までの間、可能な限り下準備をしておくこととした。
最初にやるべきは雪かきだ。村からそのための道具はもちろん、人手も借りる。
「よっし! さみーから風邪ひく前にさっさと片付けちまおうぜ!」
岩井崎 旭(ka0234)と空(ka5802)は、屋根の雪下ろし担当。
高い場所から周囲を見渡せば、どこも真っ白。
「寒いの、やだね~」
滑らぬ用心として靴に縄を巻き、片端から雪を落として行く空。そして旭。
下にいる辰川 桜子(ka1027)、天竜寺 舞(ka0377)、五黄(ka4688)は、降ってきたそれらを地面の雪と共にかき、一所に積み上げていく。
「年末のこの忙しい時期に厄介な敵もいたものね」
「分かってないな。今がサービス業の稼ぎ時だって言うことが」
「能力も厄介な上に視界も足場も悪い、面倒くせぇことこの上ねぇが……」
その山を、センダン(ka5722)、マシロビ(ka5721)、冷泉 雅緋(ka5949)並びにカチャがせっせと崩しソリに乗せ、離れた場所へ運んで行く。
「今晩は上天気になりそうだな」
「そうですね、センダン様。有り難いことです。せっかく片付けてもまた雪が降ったら、水の泡ですから」
「――ああそうだカチャ。忘れないうちに言っておくよ。とりあえず、御前さんには頼みごとがあるんだが」
「はい、なんですか?」
「さっき皆で、家の守りを表と裏に分担しようかって話したじゃない。あたしは表の班の支援を受け持つから、御前さんには裏の方の支援をしてもらいたいんだよ」
会話だけ聞くとのんびりしているようだが、けしてそうではない。ハンターたちは全員、手伝っている村人たちが唖然とするほどの猛スピードで動いている。
日が山の端へ落ちた行くころには、村長宅を中心にした3メートル四方、きっちり雪が取り払われた。
「よし。じゃあ、俺ちょっと見回りしてくるわ」
旭はゴースロンで村を一巡りした。特に雪の深そうなところをチェックしておこうと。
マシロビは五黄の手を借り、ランタンを軒下に吊るした。敵が来ても飛びかかれない高さに――村人たちの証言によれば、雪狼は本物の狼と変わらない身体能力しか持っていないそうだ。再生してくる、という点を除けば。
桜子と空は村から提供された松明で、村長宅を囲む。類焼しない程度に距離を置き、一定間隔で地面に突き立て固定していく。こうすれば夜間でも、かなり明るくなるはずだ。
除雪した場所だけで戦いが終始しない場合を鑑み、舞と五黄、マシロビは、村人にかんじきを借りたいと申し出た。木の枝と縄で作ったごく簡単なものを。
加えて舞は、もう一つ村人に頼み事をする。
「後は、可能ならあるだけ灰を貰いたいんだけど」
「灰、ですか?」
「うん。そんなにきれいな奴じゃなくていいから。むしろススまじりみたいなものの方がいいんだ」
不得要領な顔をしながら、集められるだけの灰を集める村人たち。
そこに空が、新しい頼み事を持ち込んできた。
「あのね、よかったら今晩一晩お湯を沸かし続けててくれないかなぁ。もう、グラグラするほどあっつい奴を」
「お湯ですか? 構いませんが……ええと、何にお使いで」
「あ、違うよ違うよ。使うのは空たちじゃなくておじさんたちだよ。万一雪狼が来たときばっしゃ~んってすれば、とけちゃうかな~って」
●
気ぜわしく準備を整えている間に、残光も消えた。村人たちは村長の家に入り堅く扉を閉ざす。松明に火がつけられる。カンテラが灯される。
ハンターたちは家の表側と裏側に分かれた。
表側を守るのが舞、空、雅緋。センダンもそちらへつく。正味囲まれたらどちら側にいようがあまり変わりないだろうな、など思いながら。
「二手に分かれて表っ側……表ってどっちだ」
裏側を守るのは旭、桜子、五黄、マシロビ、カチャ。
覚醒した旭は上半身の羽毛を膨らませ暖を取り、五黄は虎の尾をゆったり揺らす。鋭敏な彼らの耳には、早くも遠吠えが聞こえてきている。
ほどなくしてそれは、他の者の耳にも聞こえ始めた。
接近してくる足音や唸り声にそわそわするカチャへ、舞が声をかける。
「支援よろしく!」
「はいっ! 力の限り頑張りますので! そちらもお気をつけて!」
●
旭は馬上から雪狼たちの姿を、あますことなく補足した。
桜子も動きを目で追うが、雪狼は全身真っ白であるだけに白い背景へすぐ溶け込んでしまい、位置が把握しづらい。
気配から察するに、50は下らない頭数が結集していると思われるが……。
「ともかく数が多いわね、一体ずつにあまり時間は取れなさそう」
徐々に家を取り囲む輪が狭まってきた。
五黄は笑う。
「みんなで襲えば怖くないってとこか。逃げもしなけりゃ数もいる、ってのは上等だ。相手してやるぜ犬っころども」
輪のうちから数頭が抜け出て、じりじり接近してきた。上唇をめくり返らせ、首筋の毛を逆立て、恐ろしい形相だ。
恐らく斥候役であろう。
村人たちのいる家屋には近づけず始末したい。そう思ったマシロビは、射程距離ギリギリのところから、火焔符を飛ばした。
顔を溶かされた雪狼は、大急ぎで雪のある場所へ後退する。溶けた顔に地面の雪が吸い上げられ、再び形をとった。
この一戦で均衡状態が崩れた。雪狼たちが輪を崩し、一斉に襲いかかってくる。
旭はゴースロンを雪狼の群れへ飛び込ませた。猛り狂うハルバード。旋風が雪狼の体を引き裂き、跳ね飛ばす。
彼は見る。体の半分を失った雪狼が、回復する事なくただの雪に戻り、崩れ去っていくのを。
……どうやらある程度以上のダメージを受けてしまうと、再生出来なくなるらしい。
「細かくなりゃあ狼に戻れねーのか! だったら!! 片っ端からかき氷にしてやる!」
桜子はハンマーを雪狼の胴体目がけ振り下ろした。体の一部分がそがれてしまった雪狼は、しかし特別苦しがる様子もなく、欠けた体のままで引き続き動いている。
そこに五黄の旋棍が一撃を加えた。彼は相手が崩れ落ちるのを見届けず、腕に食いついた別の雪狼の顔面を粉砕する。
カチャは援護。味方の隙を伺う雪狼を、竹刀で突きまわし、しばきたおし。
そうこうしているうち、竹刀を噛まれた。
「うっ!? 離せ離しなさいっ! 離せーっ!」
力の限り振り回し引き剥がす。そこを桜子が、めった打ちにする。
「カチャさん、気をつけて!」
●
雅緋が呟く。
「雪狼ってまた風流なんだかどうなんだか。まぁでも、害になるってんなら狩りきるしかないねぇ」
センダンは松明の向こうを睨んだ。
「何匹来るか分からねぇけど、こっちの方が多いと嬉しいねェ」
暗闇に蠢いている雪狼が、数を増し近づいてきた。ひたひたと揺れる炎に照らされた空間へ入り込んできた。鼻にしわを寄せ、低い唸りを上げながら。
雅緋は指を組み腕を伸ばし、息を吸い込む。
「さぁ、一つ潰しにいくか」
舞は腰につけたライトを点灯した。手には炭の入った袋がある。
「どうせなら雪兎がぴょんぴょん飛んでくれば可愛いのに。なんで狼かなぁ」
愚痴りながら皆に一歩先んじ前に出た彼女は、雪狼に近づき、腰をかがめ、口笛を吹いて手招き。犬にするように。
「ほらほら、おいでおいで。来たらエサあげるよエサ」
雪狼たちは姿勢を低くし、袋を振る相手に近づいた。
次の瞬間舞は袋の口を開き、思い切り振り回した。
炭が盛大にぶちまけられ、真っ白だった雪狼の体に汚れが付いた。
格段に存在を捕らえやすくなる。
空は、俄然張り切った。
「よ~っし、ばーんしちゃうぞ~!」
七節棍をぐるりと回し振り下ろす。雪狼の頭部が勢いよく弾けとんだ。
「あたまなくなったら、聞こえないし、噛み付くのもできないよね~」
束になって押し寄せてくる雪狼たちを、センダンが斬った。
真ん中からきれいに切断された雪狼は、右と左にずれていく体を持ちこたえさせようと、不自然な形に踏ん張る。
そこに蹴りが入った。再生を阻止された体が、ばらばらに崩れ去る。
「ところでよぉ……雪の狼ってのは、生きてんのか? 生きてんだか生きてねぇんだかわからねぇもん斬ったって、気がわかねぇなァ……面白くもねえ」
台詞と裏腹に彼は楽しそうだった。右から左から度々食いつかれるのも気にせず、嵐のように走り回る。
雪狼は雪のない地面に倒されると、再生が効かない。なので空は、なるべく除雪済みの地面へ弾き飛ばすよう心掛けた。
「よいしょっと! ばーん!!」
舞もまた、攻撃を始める。
(初めて使うけど大丈夫かな?)
思いながらヒートソードを、雪狼の上に振り下ろす。赤熱を帯びた刃に切り裂かれた雪狼は水蒸気を上げ、たちまち溶けてしまった。
雪であるなら熱に弱かろうと思っていたが、これは予想以上の効果。
満足の笑みを浮かべた彼女は、村長宅に近づいて行くものから排除して行く。
「じゃんじゃん溶かすよ! 覚悟しな!」
遅れをとらじと空も奮闘。跳躍してくる相手の顔のど真ん中を穿つ。
「こっちこっち~。わるい子は、ぜんぶばーんしちゃうよ~」
雅緋は、戦いに高揚したセンダンがどんどん敵中に入り込んで行くのを見とがめ、声をかけた。
「センダン、一人で突出し過ぎだ! 援護が届かなくなる! 戻ってくるんだ!」
センダンは腕も足も止めず、言い返す。
「援護だのなんだのは頼んでねえぞ」
「頼む頼まないの問題じゃない! 猪突猛進ばかりが戦いじゃないだろう!」
「……勝手にしろ。俺には敵殺すくらいしかできる事もねぇだろ」
とはいえ彼も、あまり突出し過ぎているとは感じていた。
食いついた雪狼を逆手にした刃で突き離しながら、後退していく。
●
桜子が癇癪を起こした。
「ああもう! あと何匹いるのよ!」
一匹一匹の戦闘力はけして高くないのだが、数が数。守る側は休む暇が無い。正味疲れてきた。
しかしながら敵も、ハンターたちが獲物として不適当だと理解してきた。正面を避け、警護が手隙な箇所を狙うようになってくる。
五黄はそれらの動きを聞き取り、随時仲間に知らせる。
「右に5、6匹回り込んだぞ!」
ゴースロンに乗った旭が素早く走り込み、一群をなぎ払った。
「日が昇るまでに、いるだけ全部倒しちまおーぜ!」
マシロビは回り込もうとする雪狼たちへ、牽制の火焔符を放った。あまり家の近くまで火がいかないよう、気をつけて。
カチャは変わらず支援を続け、仲間たちの戦力維持を図る。
「皆さん頑張ってくださーい! 敵の動きが鈍ってきましたよー!」
その言葉を受け、桜子はハンマーを握り直した。
もうすぐ終わるのだと己を奮い立たせ、凝り固まった疲労感を押しのける。
「さあ、もういっちょう!」
数を減らせて気弱になってきたか、家屋を取り囲んでいた雪狼の輪が広がり始めた。好戦的な声を上げつつも、後退している。浮足立ってきたのは明らかだ。
空は屋根に上がり、状況を確認した。
「おおかみさん、どこかな~? あっちかな~?」
包囲網は格段に薄くなっており、一部はこそこそ逃げて行こうとしている……本物の狼であるなら見逃してもいいところだが、歪虚である以上そうはいかない。最後の1匹まで殲滅しておかなくては。
「おーい、そっちの後ろ逃げてきそうだよー!」
仲間が逃げて行くのを見て、他の雪狼たちも動揺した。来たときと同じように、群れになって――といってももう10匹いるかいないかだが――我先に退散していく。
旭はゴースロンを走らせた。
「逃がすか!」
雅緋とセンダン、桜子、五黄がその後を追う。
カチャ、空、舞、マシロビは家屋の警護のため、場に残った。狼が逃げ散ったとはいっても油断はならない。全員が追跡に回るのは危険だ、と考えて。
●
雪狼たちは村外れの雪溜まりと逃げて行く。
そこへ旭が追いついた。
重い旋風が叩きつけられる一瞬前に、揃って雪の中へ飛び込み、姿をくらましてしまう。
「おっ……おいこら、まだ夜だろうが! 出て来い! 起きろ!」
怒鳴っても反応なし。後から追いついた面々が刀を突き刺してみても、ハンマーを叩きつけてみても、旋棍を叩きつけてみても、一向に手ごたえがない。
桜子は苦り切った声を出す。
「……これ、完全に雪と同化しちゃってるわよ」
手ごたえのないものをいかに始末するか。
その問題に対し雅緋が、名案を思いついた。
「ここ一帯の雪と同化しているのは間違いないんだよねぇ? だったら――」
●
村長宅の庭先には、村民たちの手により、焚き火が行われていた。
焚き火には暖炉から持ってきた大鍋が吊るされており、湯が沸騰している。その一部を舞が、ポットに入れた。
「う~、暖かい飲み物が欲しいね~」
旭のゴースロンがソリを引いてきた。それには、雪狼が消えた場所から根こそぎ取ってきた雪が積まれている。
雪ごと溶かし、始末する。それが雅緋の考えた案なのだ。
五黄と空は雪をシャベルで掬い、次々熱湯へ投入していく。
吹き上がる蒸気の中から断末魔が上がった。
「おおかみさーんさようならー」
手を振る空。
センダンはぶつくさ零す。
「雪になって消えちまったら、何匹殺したのかもわかんねぇや」
旭はマシュマロを枝に刺し、火に炙りながら言った。
「一匹残らず退治したってことで、いいじゃないか。朝んなったら、なんかあったけーもんでも食わせてもらおうぜ」
舞はカップに注いだ紅茶を、仲間たちに手渡して行く。村人が好意でくれた蜂蜜を、たっぷり入れた奴を。
「ま、ひとまず飲んで体を温めて。まだやることがあるんだから」
カチャが怪訝な顔をした。
「え? 雪狼は退治し終わったんじゃ……」
「何言ってんの。この後村の破壊された家の修理とかするんだよね? ここまで来たら最後まで付き合うよ」
紅茶をすすり一息ついたマシロビが、暖かい息を吐く。
「せっかくですから手伝えたらと、私も思います。この寒い季節、穴が開いた家では快適に過ごせないでしょうから」
五黄も言った。
「この寒空に壁に穴が開いただの、家財道具を動かしただの色々大変だったみてぇだしな」
桜子は最後の一滴を名残惜しそうに飲み干す。
「それもそれで必要なことだけど、早く街道の方に歪虚排除完了の一報を伝えた方がいいんじゃない? 封鎖されたっきりだよねぇ、まだ」
旭は溶けたマシュマロをクッキーに載せ頬ばる。
「あ、それなら俺が行ってくる。ゴースロンの足ならすぐだからな」
手をはたきクッキーの粉を落とし、馬の背に飛び乗る。
カップの温もりを楽しんでいた空は、ふと夜空を見上げた。
「あっ。皆見て見て!」
皆が一体何事かと夜空へ顔を向けると、凍った黒を背景にし、幾つもの流星が過ぎて行くところだった。
片付けの終わる朝を待たず、街道封鎖は解除された。
村人たちからシチューを振る舞ってもらった帰りハンターたちは、街道をごった返す車馬の列を見ることとなる。
最初にやるべきは雪かきだ。村からそのための道具はもちろん、人手も借りる。
「よっし! さみーから風邪ひく前にさっさと片付けちまおうぜ!」
岩井崎 旭(ka0234)と空(ka5802)は、屋根の雪下ろし担当。
高い場所から周囲を見渡せば、どこも真っ白。
「寒いの、やだね~」
滑らぬ用心として靴に縄を巻き、片端から雪を落として行く空。そして旭。
下にいる辰川 桜子(ka1027)、天竜寺 舞(ka0377)、五黄(ka4688)は、降ってきたそれらを地面の雪と共にかき、一所に積み上げていく。
「年末のこの忙しい時期に厄介な敵もいたものね」
「分かってないな。今がサービス業の稼ぎ時だって言うことが」
「能力も厄介な上に視界も足場も悪い、面倒くせぇことこの上ねぇが……」
その山を、センダン(ka5722)、マシロビ(ka5721)、冷泉 雅緋(ka5949)並びにカチャがせっせと崩しソリに乗せ、離れた場所へ運んで行く。
「今晩は上天気になりそうだな」
「そうですね、センダン様。有り難いことです。せっかく片付けてもまた雪が降ったら、水の泡ですから」
「――ああそうだカチャ。忘れないうちに言っておくよ。とりあえず、御前さんには頼みごとがあるんだが」
「はい、なんですか?」
「さっき皆で、家の守りを表と裏に分担しようかって話したじゃない。あたしは表の班の支援を受け持つから、御前さんには裏の方の支援をしてもらいたいんだよ」
会話だけ聞くとのんびりしているようだが、けしてそうではない。ハンターたちは全員、手伝っている村人たちが唖然とするほどの猛スピードで動いている。
日が山の端へ落ちた行くころには、村長宅を中心にした3メートル四方、きっちり雪が取り払われた。
「よし。じゃあ、俺ちょっと見回りしてくるわ」
旭はゴースロンで村を一巡りした。特に雪の深そうなところをチェックしておこうと。
マシロビは五黄の手を借り、ランタンを軒下に吊るした。敵が来ても飛びかかれない高さに――村人たちの証言によれば、雪狼は本物の狼と変わらない身体能力しか持っていないそうだ。再生してくる、という点を除けば。
桜子と空は村から提供された松明で、村長宅を囲む。類焼しない程度に距離を置き、一定間隔で地面に突き立て固定していく。こうすれば夜間でも、かなり明るくなるはずだ。
除雪した場所だけで戦いが終始しない場合を鑑み、舞と五黄、マシロビは、村人にかんじきを借りたいと申し出た。木の枝と縄で作ったごく簡単なものを。
加えて舞は、もう一つ村人に頼み事をする。
「後は、可能ならあるだけ灰を貰いたいんだけど」
「灰、ですか?」
「うん。そんなにきれいな奴じゃなくていいから。むしろススまじりみたいなものの方がいいんだ」
不得要領な顔をしながら、集められるだけの灰を集める村人たち。
そこに空が、新しい頼み事を持ち込んできた。
「あのね、よかったら今晩一晩お湯を沸かし続けててくれないかなぁ。もう、グラグラするほどあっつい奴を」
「お湯ですか? 構いませんが……ええと、何にお使いで」
「あ、違うよ違うよ。使うのは空たちじゃなくておじさんたちだよ。万一雪狼が来たときばっしゃ~んってすれば、とけちゃうかな~って」
●
気ぜわしく準備を整えている間に、残光も消えた。村人たちは村長の家に入り堅く扉を閉ざす。松明に火がつけられる。カンテラが灯される。
ハンターたちは家の表側と裏側に分かれた。
表側を守るのが舞、空、雅緋。センダンもそちらへつく。正味囲まれたらどちら側にいようがあまり変わりないだろうな、など思いながら。
「二手に分かれて表っ側……表ってどっちだ」
裏側を守るのは旭、桜子、五黄、マシロビ、カチャ。
覚醒した旭は上半身の羽毛を膨らませ暖を取り、五黄は虎の尾をゆったり揺らす。鋭敏な彼らの耳には、早くも遠吠えが聞こえてきている。
ほどなくしてそれは、他の者の耳にも聞こえ始めた。
接近してくる足音や唸り声にそわそわするカチャへ、舞が声をかける。
「支援よろしく!」
「はいっ! 力の限り頑張りますので! そちらもお気をつけて!」
●
旭は馬上から雪狼たちの姿を、あますことなく補足した。
桜子も動きを目で追うが、雪狼は全身真っ白であるだけに白い背景へすぐ溶け込んでしまい、位置が把握しづらい。
気配から察するに、50は下らない頭数が結集していると思われるが……。
「ともかく数が多いわね、一体ずつにあまり時間は取れなさそう」
徐々に家を取り囲む輪が狭まってきた。
五黄は笑う。
「みんなで襲えば怖くないってとこか。逃げもしなけりゃ数もいる、ってのは上等だ。相手してやるぜ犬っころども」
輪のうちから数頭が抜け出て、じりじり接近してきた。上唇をめくり返らせ、首筋の毛を逆立て、恐ろしい形相だ。
恐らく斥候役であろう。
村人たちのいる家屋には近づけず始末したい。そう思ったマシロビは、射程距離ギリギリのところから、火焔符を飛ばした。
顔を溶かされた雪狼は、大急ぎで雪のある場所へ後退する。溶けた顔に地面の雪が吸い上げられ、再び形をとった。
この一戦で均衡状態が崩れた。雪狼たちが輪を崩し、一斉に襲いかかってくる。
旭はゴースロンを雪狼の群れへ飛び込ませた。猛り狂うハルバード。旋風が雪狼の体を引き裂き、跳ね飛ばす。
彼は見る。体の半分を失った雪狼が、回復する事なくただの雪に戻り、崩れ去っていくのを。
……どうやらある程度以上のダメージを受けてしまうと、再生出来なくなるらしい。
「細かくなりゃあ狼に戻れねーのか! だったら!! 片っ端からかき氷にしてやる!」
桜子はハンマーを雪狼の胴体目がけ振り下ろした。体の一部分がそがれてしまった雪狼は、しかし特別苦しがる様子もなく、欠けた体のままで引き続き動いている。
そこに五黄の旋棍が一撃を加えた。彼は相手が崩れ落ちるのを見届けず、腕に食いついた別の雪狼の顔面を粉砕する。
カチャは援護。味方の隙を伺う雪狼を、竹刀で突きまわし、しばきたおし。
そうこうしているうち、竹刀を噛まれた。
「うっ!? 離せ離しなさいっ! 離せーっ!」
力の限り振り回し引き剥がす。そこを桜子が、めった打ちにする。
「カチャさん、気をつけて!」
●
雅緋が呟く。
「雪狼ってまた風流なんだかどうなんだか。まぁでも、害になるってんなら狩りきるしかないねぇ」
センダンは松明の向こうを睨んだ。
「何匹来るか分からねぇけど、こっちの方が多いと嬉しいねェ」
暗闇に蠢いている雪狼が、数を増し近づいてきた。ひたひたと揺れる炎に照らされた空間へ入り込んできた。鼻にしわを寄せ、低い唸りを上げながら。
雅緋は指を組み腕を伸ばし、息を吸い込む。
「さぁ、一つ潰しにいくか」
舞は腰につけたライトを点灯した。手には炭の入った袋がある。
「どうせなら雪兎がぴょんぴょん飛んでくれば可愛いのに。なんで狼かなぁ」
愚痴りながら皆に一歩先んじ前に出た彼女は、雪狼に近づき、腰をかがめ、口笛を吹いて手招き。犬にするように。
「ほらほら、おいでおいで。来たらエサあげるよエサ」
雪狼たちは姿勢を低くし、袋を振る相手に近づいた。
次の瞬間舞は袋の口を開き、思い切り振り回した。
炭が盛大にぶちまけられ、真っ白だった雪狼の体に汚れが付いた。
格段に存在を捕らえやすくなる。
空は、俄然張り切った。
「よ~っし、ばーんしちゃうぞ~!」
七節棍をぐるりと回し振り下ろす。雪狼の頭部が勢いよく弾けとんだ。
「あたまなくなったら、聞こえないし、噛み付くのもできないよね~」
束になって押し寄せてくる雪狼たちを、センダンが斬った。
真ん中からきれいに切断された雪狼は、右と左にずれていく体を持ちこたえさせようと、不自然な形に踏ん張る。
そこに蹴りが入った。再生を阻止された体が、ばらばらに崩れ去る。
「ところでよぉ……雪の狼ってのは、生きてんのか? 生きてんだか生きてねぇんだかわからねぇもん斬ったって、気がわかねぇなァ……面白くもねえ」
台詞と裏腹に彼は楽しそうだった。右から左から度々食いつかれるのも気にせず、嵐のように走り回る。
雪狼は雪のない地面に倒されると、再生が効かない。なので空は、なるべく除雪済みの地面へ弾き飛ばすよう心掛けた。
「よいしょっと! ばーん!!」
舞もまた、攻撃を始める。
(初めて使うけど大丈夫かな?)
思いながらヒートソードを、雪狼の上に振り下ろす。赤熱を帯びた刃に切り裂かれた雪狼は水蒸気を上げ、たちまち溶けてしまった。
雪であるなら熱に弱かろうと思っていたが、これは予想以上の効果。
満足の笑みを浮かべた彼女は、村長宅に近づいて行くものから排除して行く。
「じゃんじゃん溶かすよ! 覚悟しな!」
遅れをとらじと空も奮闘。跳躍してくる相手の顔のど真ん中を穿つ。
「こっちこっち~。わるい子は、ぜんぶばーんしちゃうよ~」
雅緋は、戦いに高揚したセンダンがどんどん敵中に入り込んで行くのを見とがめ、声をかけた。
「センダン、一人で突出し過ぎだ! 援護が届かなくなる! 戻ってくるんだ!」
センダンは腕も足も止めず、言い返す。
「援護だのなんだのは頼んでねえぞ」
「頼む頼まないの問題じゃない! 猪突猛進ばかりが戦いじゃないだろう!」
「……勝手にしろ。俺には敵殺すくらいしかできる事もねぇだろ」
とはいえ彼も、あまり突出し過ぎているとは感じていた。
食いついた雪狼を逆手にした刃で突き離しながら、後退していく。
●
桜子が癇癪を起こした。
「ああもう! あと何匹いるのよ!」
一匹一匹の戦闘力はけして高くないのだが、数が数。守る側は休む暇が無い。正味疲れてきた。
しかしながら敵も、ハンターたちが獲物として不適当だと理解してきた。正面を避け、警護が手隙な箇所を狙うようになってくる。
五黄はそれらの動きを聞き取り、随時仲間に知らせる。
「右に5、6匹回り込んだぞ!」
ゴースロンに乗った旭が素早く走り込み、一群をなぎ払った。
「日が昇るまでに、いるだけ全部倒しちまおーぜ!」
マシロビは回り込もうとする雪狼たちへ、牽制の火焔符を放った。あまり家の近くまで火がいかないよう、気をつけて。
カチャは変わらず支援を続け、仲間たちの戦力維持を図る。
「皆さん頑張ってくださーい! 敵の動きが鈍ってきましたよー!」
その言葉を受け、桜子はハンマーを握り直した。
もうすぐ終わるのだと己を奮い立たせ、凝り固まった疲労感を押しのける。
「さあ、もういっちょう!」
数を減らせて気弱になってきたか、家屋を取り囲んでいた雪狼の輪が広がり始めた。好戦的な声を上げつつも、後退している。浮足立ってきたのは明らかだ。
空は屋根に上がり、状況を確認した。
「おおかみさん、どこかな~? あっちかな~?」
包囲網は格段に薄くなっており、一部はこそこそ逃げて行こうとしている……本物の狼であるなら見逃してもいいところだが、歪虚である以上そうはいかない。最後の1匹まで殲滅しておかなくては。
「おーい、そっちの後ろ逃げてきそうだよー!」
仲間が逃げて行くのを見て、他の雪狼たちも動揺した。来たときと同じように、群れになって――といってももう10匹いるかいないかだが――我先に退散していく。
旭はゴースロンを走らせた。
「逃がすか!」
雅緋とセンダン、桜子、五黄がその後を追う。
カチャ、空、舞、マシロビは家屋の警護のため、場に残った。狼が逃げ散ったとはいっても油断はならない。全員が追跡に回るのは危険だ、と考えて。
●
雪狼たちは村外れの雪溜まりと逃げて行く。
そこへ旭が追いついた。
重い旋風が叩きつけられる一瞬前に、揃って雪の中へ飛び込み、姿をくらましてしまう。
「おっ……おいこら、まだ夜だろうが! 出て来い! 起きろ!」
怒鳴っても反応なし。後から追いついた面々が刀を突き刺してみても、ハンマーを叩きつけてみても、旋棍を叩きつけてみても、一向に手ごたえがない。
桜子は苦り切った声を出す。
「……これ、完全に雪と同化しちゃってるわよ」
手ごたえのないものをいかに始末するか。
その問題に対し雅緋が、名案を思いついた。
「ここ一帯の雪と同化しているのは間違いないんだよねぇ? だったら――」
●
村長宅の庭先には、村民たちの手により、焚き火が行われていた。
焚き火には暖炉から持ってきた大鍋が吊るされており、湯が沸騰している。その一部を舞が、ポットに入れた。
「う~、暖かい飲み物が欲しいね~」
旭のゴースロンがソリを引いてきた。それには、雪狼が消えた場所から根こそぎ取ってきた雪が積まれている。
雪ごと溶かし、始末する。それが雅緋の考えた案なのだ。
五黄と空は雪をシャベルで掬い、次々熱湯へ投入していく。
吹き上がる蒸気の中から断末魔が上がった。
「おおかみさーんさようならー」
手を振る空。
センダンはぶつくさ零す。
「雪になって消えちまったら、何匹殺したのかもわかんねぇや」
旭はマシュマロを枝に刺し、火に炙りながら言った。
「一匹残らず退治したってことで、いいじゃないか。朝んなったら、なんかあったけーもんでも食わせてもらおうぜ」
舞はカップに注いだ紅茶を、仲間たちに手渡して行く。村人が好意でくれた蜂蜜を、たっぷり入れた奴を。
「ま、ひとまず飲んで体を温めて。まだやることがあるんだから」
カチャが怪訝な顔をした。
「え? 雪狼は退治し終わったんじゃ……」
「何言ってんの。この後村の破壊された家の修理とかするんだよね? ここまで来たら最後まで付き合うよ」
紅茶をすすり一息ついたマシロビが、暖かい息を吐く。
「せっかくですから手伝えたらと、私も思います。この寒い季節、穴が開いた家では快適に過ごせないでしょうから」
五黄も言った。
「この寒空に壁に穴が開いただの、家財道具を動かしただの色々大変だったみてぇだしな」
桜子は最後の一滴を名残惜しそうに飲み干す。
「それもそれで必要なことだけど、早く街道の方に歪虚排除完了の一報を伝えた方がいいんじゃない? 封鎖されたっきりだよねぇ、まだ」
旭は溶けたマシュマロをクッキーに載せ頬ばる。
「あ、それなら俺が行ってくる。ゴースロンの足ならすぐだからな」
手をはたきクッキーの粉を落とし、馬の背に飛び乗る。
カップの温もりを楽しんでいた空は、ふと夜空を見上げた。
「あっ。皆見て見て!」
皆が一体何事かと夜空へ顔を向けると、凍った黒を背景にし、幾つもの流星が過ぎて行くところだった。
片付けの終わる朝を待たず、街道封鎖は解除された。
村人たちからシチューを振る舞ってもらった帰りハンターたちは、街道をごった返す車馬の列を見ることとなる。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
カチャに質問! 岩井崎 旭(ka0234) 人間(リアルブルー)|20才|男性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2015/12/24 00:52:57 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/12/22 23:42:31 |
|
![]() |
相談卓 冷泉 雅緋(ka5949) 人間(リアルブルー)|28才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2015/12/25 17:58:23 |