ゲスト
(ka0000)
【深棲】海の覇者は陸目指し
マスター:四方鴉

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 4日
- 締切
- 2014/08/09 22:00
- 完成日
- 2014/08/20 01:35
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●大海を統べるもの、陸をも統べるか
各地で頻発する歪虚の出現。
この浜辺も、例に漏れずその襲撃を受けていた。
「お、おい……あれって、鮫じゃないのか?」
ゆっくりと、確実にビーチに向かう巨大な背ビレ。
この海辺では滅多に見かけず、仮に現れても小型の鮫ばかりだったのに見える背ビレは超巨大。
泳ぐ速度は遅いものの、かえってそれが海水浴客の恐怖を煽る。
海に居た者は急いで陸上へ避難、パニック状態になりつつも全員が無事戻り、安堵の息をもらしていたがその安らぎは直後に吹き飛ばされていた。
「ん……おい、突っ込んできたぞ……って、ありゃなんだぁ!?」
陸上ならば鮫の脅威は存在しない。
普通ならばそうであろうが、その鮫はあろうことか波間からその巨大な顎を突き出し躊躇う事無く浜辺に突撃。
水飛沫と共に現れたその姿は巨大な鮫ではあったが……見る者の正気を奪う、奇妙な物体が各所に付随。
第一に目を引くのは、胸ビレと腹ビレ、本来そこにあるべき器官の代わりに不気味に生えた人間の腕。
左右対称、合計4本の腕が四肢持つ獣の如く砂浜に突き立てられ陸上移動能力をこの鮫に与えていたのだ。
さらに、背びれの左後方に瘤のように生え出していたのは巨大なクラゲ、その中を電気ウナギが泳ぎ回り激しく放電。
そして、反対側には多量のイソギンチャクが所狭しと張り付き、多数の触手を不気味に揺らしていたのだ。
「お、おい……やべえ、こっちに走ってきた!」
その鮫は、浜辺の人々を完全に駆逐するのか4本の腕で突撃を開始。
滴り落ちる水滴、握りこむように砂を捉えた腕がギュッギュッと擦れた音を立て、その不自然な姿からは想像できないような猛烈な勢いで突進を。
日よけのパラソル、子供が作ったであろう砂山を弾き飛ばすも途中で腕がもつれたのか鮫は途中で体勢を崩し、砂を巻き上げ停止する。
出現時のインパクト、直後のアクシデント。
海水浴客たちが呆気にとられる中、再度身体を起こした鮫の右前腕部、そして両下肢に当たる腕はへし折れ左腕だけで方向転換。
クラゲの中、電気ウナギが暴れまわればクラゲだけでなく全身に帯電し、各所から小さく放電。
大きく開けた口中が紫電に輝き、直後に閃光、走る衝撃。
鮫の口から放たれた光の奔流、それは休憩所として開放されていた海の家的な小屋を一瞬で消し飛ばし、焦げ付いた木々の残骸が散らばるだけの惨状を呈していたのだ。
「……な、なんだよ、あいつは!?」
「うそ……ねぇ、折れてた手が治って……増えてるわよ、どういうことなの!」
圧倒的な破壊力、それを示した鮫ではあったが更なる力を見せ付ける。
そう、それは先ほどの突進でへし折れたはずの腕が再生し……さらには、折れた部分から新たに一本、腕を生やす事で強靭化していくその身体。
こうなれば、浜辺に落ち着きが取り戻される事など無い。
散り散りに逃げ惑い、悲鳴が上がる人々を追い立てるかのように鮫は走り回り、やがて浜辺は静寂を取り戻す。
虚空に一閃、一筋の光が放たれたのは暫しの時が経ってからだった……
●ヤバイ歪虚の駆除依頼
「はーい、みなさん! やっべーのが出ましたよぉ! ってわけで、犠牲者募集中でーっす♪」
危険な歪虚が出たというのに、ノリノリで参加者を募っていた受付嬢。
物凄く嫌な顔をするハンターが居る気がしたが、彼女はそんな事はお構い無しに説明を始めていた。
「今回はバ火力歪虚の駆除作業です。攻撃力はシャレになってない反面、防御面はさほど高くないみたいです。
まあ、でもタフさはワァーシンですからかなりあると思いますし、正直言ってかなり危険なお仕事ですよっと」
敵の能力は攻撃重視、防御面の低さがあるようだが元々がタフさに優れる歪虚である以上、楽観視出来ないのは当然でありハイテンション、軽口を入れつつも受付嬢は注意を促していた。
「見た目は、鮫の胸ビレ、腹ビレのところから人間の腕が生えて、地上で動けるようになった鮫です。
あと、片側にはイソギンチャクが密集して触手で攻撃、反対側にはクラゲと電気ウナギがセットになって生えて、電気を使った攻撃を仕掛けてくるのが確認されてますけど、こっちが危険です」
見た目の不気味さはさておき、攻撃面はかなりのもの。
鮫の噛み付きに加え、イソギンチャクはその触手での打ちつけ、絡みつきと面倒な攻撃で援護。
クラゲと電気ウナギは帯電することで周囲一帯への攻撃手段を持ちつつ、その電気エネルギーを全て回収、鮫が口中より放出する事で直線上の標的を一掃する範囲攻撃を保有しその威力は絶大。
「メインの鮫はこんな感じですね。あと、何か一緒に湧いて来たハエとロブスターが合体した歪虚が海中に確認されてます。
これといった危険な攻撃手段は無いみたいですけど、鮫の口の中へ自分から突っ込んで食べられて、傷を回復させる能力があるみたいですから面倒っちゃ面倒ですね。
どうも、腕をへし折りすぎると再生じゃなくビームに切り替えるみたいですし、戦い方を考えないと危ないですねー」
単独でも危険、それでいて付随する回復手まで存在。
無為無策に戦って勝てるような相手ではなく、相応の準備が必要と言えるだろう。
「説明はこんなものですね。細かい部分はこっちの資料に纏めてますから後で確認して下さいな。
とってもヤバイ相手ですけど、私、皆さんが無事帰ってきてくれるって信じてます……
だから……パインサラダと、ステーキを用意しておきますね(はぁと)」
「チョットマテコラ、それは死亡フラグってやつだぞお前」
「そんなっ、私は、皆さんを思って……よよよ」
資料を渡すまでは良かった、その後死亡フラグなんてものを盛大に押し付けた受付嬢にツッコミが入り、どう見ても嘘泣きな彼女を放置し依頼を受けるハンターは資料を確認。
顔を抑えた手、指の隙間からチラチラと様子を窺う受付嬢を放置し、一行は危険な歪虚退治へと出発するのであった。
各地で頻発する歪虚の出現。
この浜辺も、例に漏れずその襲撃を受けていた。
「お、おい……あれって、鮫じゃないのか?」
ゆっくりと、確実にビーチに向かう巨大な背ビレ。
この海辺では滅多に見かけず、仮に現れても小型の鮫ばかりだったのに見える背ビレは超巨大。
泳ぐ速度は遅いものの、かえってそれが海水浴客の恐怖を煽る。
海に居た者は急いで陸上へ避難、パニック状態になりつつも全員が無事戻り、安堵の息をもらしていたがその安らぎは直後に吹き飛ばされていた。
「ん……おい、突っ込んできたぞ……って、ありゃなんだぁ!?」
陸上ならば鮫の脅威は存在しない。
普通ならばそうであろうが、その鮫はあろうことか波間からその巨大な顎を突き出し躊躇う事無く浜辺に突撃。
水飛沫と共に現れたその姿は巨大な鮫ではあったが……見る者の正気を奪う、奇妙な物体が各所に付随。
第一に目を引くのは、胸ビレと腹ビレ、本来そこにあるべき器官の代わりに不気味に生えた人間の腕。
左右対称、合計4本の腕が四肢持つ獣の如く砂浜に突き立てられ陸上移動能力をこの鮫に与えていたのだ。
さらに、背びれの左後方に瘤のように生え出していたのは巨大なクラゲ、その中を電気ウナギが泳ぎ回り激しく放電。
そして、反対側には多量のイソギンチャクが所狭しと張り付き、多数の触手を不気味に揺らしていたのだ。
「お、おい……やべえ、こっちに走ってきた!」
その鮫は、浜辺の人々を完全に駆逐するのか4本の腕で突撃を開始。
滴り落ちる水滴、握りこむように砂を捉えた腕がギュッギュッと擦れた音を立て、その不自然な姿からは想像できないような猛烈な勢いで突進を。
日よけのパラソル、子供が作ったであろう砂山を弾き飛ばすも途中で腕がもつれたのか鮫は途中で体勢を崩し、砂を巻き上げ停止する。
出現時のインパクト、直後のアクシデント。
海水浴客たちが呆気にとられる中、再度身体を起こした鮫の右前腕部、そして両下肢に当たる腕はへし折れ左腕だけで方向転換。
クラゲの中、電気ウナギが暴れまわればクラゲだけでなく全身に帯電し、各所から小さく放電。
大きく開けた口中が紫電に輝き、直後に閃光、走る衝撃。
鮫の口から放たれた光の奔流、それは休憩所として開放されていた海の家的な小屋を一瞬で消し飛ばし、焦げ付いた木々の残骸が散らばるだけの惨状を呈していたのだ。
「……な、なんだよ、あいつは!?」
「うそ……ねぇ、折れてた手が治って……増えてるわよ、どういうことなの!」
圧倒的な破壊力、それを示した鮫ではあったが更なる力を見せ付ける。
そう、それは先ほどの突進でへし折れたはずの腕が再生し……さらには、折れた部分から新たに一本、腕を生やす事で強靭化していくその身体。
こうなれば、浜辺に落ち着きが取り戻される事など無い。
散り散りに逃げ惑い、悲鳴が上がる人々を追い立てるかのように鮫は走り回り、やがて浜辺は静寂を取り戻す。
虚空に一閃、一筋の光が放たれたのは暫しの時が経ってからだった……
●ヤバイ歪虚の駆除依頼
「はーい、みなさん! やっべーのが出ましたよぉ! ってわけで、犠牲者募集中でーっす♪」
危険な歪虚が出たというのに、ノリノリで参加者を募っていた受付嬢。
物凄く嫌な顔をするハンターが居る気がしたが、彼女はそんな事はお構い無しに説明を始めていた。
「今回はバ火力歪虚の駆除作業です。攻撃力はシャレになってない反面、防御面はさほど高くないみたいです。
まあ、でもタフさはワァーシンですからかなりあると思いますし、正直言ってかなり危険なお仕事ですよっと」
敵の能力は攻撃重視、防御面の低さがあるようだが元々がタフさに優れる歪虚である以上、楽観視出来ないのは当然でありハイテンション、軽口を入れつつも受付嬢は注意を促していた。
「見た目は、鮫の胸ビレ、腹ビレのところから人間の腕が生えて、地上で動けるようになった鮫です。
あと、片側にはイソギンチャクが密集して触手で攻撃、反対側にはクラゲと電気ウナギがセットになって生えて、電気を使った攻撃を仕掛けてくるのが確認されてますけど、こっちが危険です」
見た目の不気味さはさておき、攻撃面はかなりのもの。
鮫の噛み付きに加え、イソギンチャクはその触手での打ちつけ、絡みつきと面倒な攻撃で援護。
クラゲと電気ウナギは帯電することで周囲一帯への攻撃手段を持ちつつ、その電気エネルギーを全て回収、鮫が口中より放出する事で直線上の標的を一掃する範囲攻撃を保有しその威力は絶大。
「メインの鮫はこんな感じですね。あと、何か一緒に湧いて来たハエとロブスターが合体した歪虚が海中に確認されてます。
これといった危険な攻撃手段は無いみたいですけど、鮫の口の中へ自分から突っ込んで食べられて、傷を回復させる能力があるみたいですから面倒っちゃ面倒ですね。
どうも、腕をへし折りすぎると再生じゃなくビームに切り替えるみたいですし、戦い方を考えないと危ないですねー」
単独でも危険、それでいて付随する回復手まで存在。
無為無策に戦って勝てるような相手ではなく、相応の準備が必要と言えるだろう。
「説明はこんなものですね。細かい部分はこっちの資料に纏めてますから後で確認して下さいな。
とってもヤバイ相手ですけど、私、皆さんが無事帰ってきてくれるって信じてます……
だから……パインサラダと、ステーキを用意しておきますね(はぁと)」
「チョットマテコラ、それは死亡フラグってやつだぞお前」
「そんなっ、私は、皆さんを思って……よよよ」
資料を渡すまでは良かった、その後死亡フラグなんてものを盛大に押し付けた受付嬢にツッコミが入り、どう見ても嘘泣きな彼女を放置し依頼を受けるハンターは資料を確認。
顔を抑えた手、指の隙間からチラチラと様子を窺う受付嬢を放置し、一行は危険な歪虚退治へと出発するのであった。
リプレイ本文
●浜辺の制圧者
心地良い浜風が頬を撫でるが、そこに安穏は存在しない。
居るのは巨大な体躯を持ち我が物顔で動き回る鮫型歪虚、ワァーシン・キメラシャークと配下であるフライロブスター、そしてそれを討伐すべく集まった8人のハンターだけである。
「……なんじゃありゃ。出鱈目生物の万国驚愕ショーかよ」
「ま、なんつーか……あからさまなほどに分かり易い見た目だな」
「ふざけた見た目、ですが強敵か……心が躍る、が。慎重にいかねばこちらがやられるか」
ハンター達を見る事無く、悠然と砂浜を進むキメラシャークを眺めザレム・アズール(ka0878)が驚嘆すればガルシア・ペレイロ(ka0213)が辟易しつつ言葉を返す。
異様な外見、其れが目を引く相手であるが油断は禁物と2人に続きティアナ・アナスタシア(ka0546)も言葉を発し、強敵を前に警戒を続けていた。
「それにしても、ん~っ、ずいぶん楽しそうに、しっちゃかめっちゃか壊してくれたみたいね」
「そうね、大分気持ち悪い鮫だけどこれ食べれるのかしら? ま、どっちでも良いわね」
破壊された小屋の残骸、散らばるパラソル等を眺めつつ夢路 まよい(ka1328)が挑発的に呟き、どうせ解体する相手だ、と切って捨てるエリシャ・カンナヴィ(ka0140)。
遊びに向かうような気楽さ、強者を前にしても崩れぬ余裕を持ちつつ2人は進み、徐々に敵との距離が縮まっていく。
「さて、かかろうか」
「はい、少佐、行きましょう」
ゴム手袋を嵌めなおしヤーコフ・ズダーノフスキー(ka2364)が動けば、彼に続きセレスティア・アオヤギ(ka2625)も歩を進める。
少佐はよせ、と呟くヤーコフであったが昔の上司、部下の関係。
言い方は変わらないだろうという事を彼は理解しており、互いの信頼関係を示すには十分すぎる光景であった。
それぞれが覚醒を終え、キメラシャークもハンターを視認。
人気の無くなった浜辺を舞台に、激しい戦いが始まろうとしていた……
――ところ変わって、ここはハンターズソサエティ。
一行がキメラシャークの討伐に赴く前の出来事である。
「そういえば上司の方が怖い顔で呼んでましたよ。14番の部屋で待ってる、との事でした」
「そんなわけないじゃないですか、何言ってるんですか。まあ、いってらっしゃーい♪」
カトレア(ka1585)が受付嬢に言伝を。
そんな危険な気配漂う場所になんか、呼び出しされても行くわけ無いとシカトを決め込む受付嬢、しかしそうは問屋が卸さない。
「何処へ行こうというのかね? 私は14番に来るように言ったのだが……?」
「ちょ、ま!? いやーっ、死亡確定はいやーっ!?」
「諸悪の根源とか思われてるんだぞ、日頃の態度で。こいっ!」
妙な歪虚討伐依頼ばかり引き寄せる受付嬢、運が悪いか諸悪の根源か、なんて感想をセレスティアが言っていたのを上司が聞きつけ日頃の妄言に対してのお説教。
拒絶虚しく、14番相談室へと連行される光景がそこにはあったという。
●紫電の脅威
「先ずはクラゲウナギからだな」
「守りは高めた、前線は任せた」
後方、イソギンチャクの射程外からマテリアルを仲間へと注ぎ込むザレムとティアナ。
ザレムから流れ込むエネルギーは最前線、キメラシャークに接近していくエリシャの攻撃力を高め、ティアナが生み出した光はセレスティアを包み込みその防御を高めていく。
だが、初手から作戦の綻びは生じつつあった。
「敵さんこちら、遊んであげるわっ!」
キメラシャークの側面に回りこんだエリシャ、それを敵と認識したキメラシャークから数多の触手が伸びるが飛び上がることで回避。
続けざまに噛み付こうとした攻撃を予測、虚空を彷徨う触手を蹴り飛ばす反動で軌道を逸らせば、虚しく空切る鮫の牙。
さらにクラゲウナギが放つ電撃までもを飛び退く事で避け、相手の攻撃を完全に封殺したものの、最前線は彼女1人。
敵の目を引きつけるという目的は達したものの、一気に敵との距離を詰める事を優先したが故に残る前衛との距離が開いてしまったのだ。
「まずいな、ビームの準備に入ったようだ。纏まらないように散開を」
エリシャへの猛攻、その際に折れた腕を再生させること無く次の攻撃態勢に入ったキメラシャークを確認し、ヤーコフが警戒を促す。
その声に反応、敵との距離を詰めていた面々は散会しつつ接近するが全員は攻撃に移れない。
「我の閃光の一撃受けてみよ! ホーリーライト!」
最後列からティアナが光弾を放つが、その攻撃は伸びた触手に防がれる。
ならばとヤーコフが白銀に輝くリボルバー、その銃弾にてクラゲウナギを狙うがこちらも伸びた触手がガード。
「まよい、合わせていくわよっ」
「任せて、エリシャ様」
クラゲウナギを狙い、エリシャの太刀が振るわれるがその攻撃までもを触手が防御、しかし直後に飛来したまよいの魔法、石のつぶてたるアースバレットまでは防げない。
被弾し、生じた穴からクラゲの体液がどろりと零れる好機を逃さず接近するセレスティア。
脆くなった部位へとダガーを突き立て、その穴を広げていくもそれだけで壊れる歪虚ではない。
「狙いはこちら……ッ!?」
尾びれを用いて方向転換、セレスティアの方を向いたキメラシャーク。
手近な相手、そして自分の体に有効打を与えた存在として彼女を認識、近くに居たエリシャは攻撃が当たり難いと判断しての選択であろう。
身体をくねらせ狙いを定め、大口を開く歪虚。
次の瞬間、輝く光の奔流がセレスティアの身体を飲み込んでいた。
●消耗戦
意識を失いかけつつ、踏み止まったセレスティア。
絶縁体を用いて通電を防ぎ、ダメージを押さえ込んではいたもののそれはあくまで電気を防いだにすぎず、小屋を消し飛ばした強烈な衝撃までは減じる事が出来なかったのだ。
「一旦下がるわ、回復お願い」
自らもマテリアルを活性化、受けた衝撃を回復しつつ後退するセレスティア。
忌々しげにキメラシャークを見つめる先で8本の腕が敵から生えるが、無理は出来ない。
「癒しの風よ、我の盟友に安らぎを……!」
「回復役は回復がお仕事です」
イソギンチャクの射程から後退、確認次第即座に癒しの光によってセレスティアを治療するティアナとカトレア。
3人分の回復を重ねたが、全快までは届かず更なる回復は必要だろう。
「こっちを見やがれ、化け物が!」
同刻真正面、上段から思い切りツヴァイハンダーを叩き付けるガルシア。
自分に注意を引きつけ、後方への進軍を阻止する立ち回り。
叩きつけられた大剣は鮫本体を守ろうと伸びた触手を断ち切り、イソギンチャクにダメージが蓄積される。
「ロブスターか、あれは私が始末しよう」
「お願い、こっちは攻撃を続けるわ」
鮫の部位、クラゲウナギに穴が空き、イソギンチャクの触手が切り落とされた事を察知、海上彷徨うフライロブスターが猛烈な勢いで戦線に乱入を。
しかし、それは警戒された行動、ヤーコフがマテリアルを込めることで射程を延ばした銃弾を放ち、その間にエリシャがクラゲウナギを狙い再度の斬撃。
木っ端微塵に飛び散ったフライロブスターの残骸が地面に落ちれば、空を舞うのはクラゲを守り、切り離された触手が1本。
「隙だらけよ、そこっ」
そのチャンス、逃さず攻撃を仕掛けるまよい。
守りの為に生じた触手、それが斬られた隙間を射抜く、魔力を高めたアースバレット。
先の攻防、その間にザレムが彼女を強化、その恩恵を併せた魔法の一撃は大きく、クラゲに保護されたウナギの身体までもを傷つけていた。
「シャァァァァ!」
各部のダメージ、それを受け咆哮するキメラシャーク。
手近な相手と認めたガルシア、その身体を噛み千切らんと猛進、強引に噛み付くがガルシアは大剣を翳し牙を防御。
上顎の牙を完全に押し止め、その威力を大いに減ずる事に成功していたが、次なる脅威は迫りつつある。
「また、腕の再生を放棄したか。ビームがくるようだ」
ハンターからの攻撃、そして自身の移動に合わせて折れた腕。
再生行動を放棄したキメラシャークの行動は、再度の電撃ビームのチャージであり、それを察知したヤーコフが再度、警戒を促せば前衛は散開。
複数名が巻き込まれぬ位置取りを維持しつつ、攻撃は継続されていくのであった。
●電撃の封印と代償
「こっちだ、後ろには行かせないぜ」
ガルシアがツヴァイハンダーを振り回し、切っ先がキメラシャークの顔面に深い傷を刻んでいく。
多少の被弾は覚悟の上、完全に相手の注意を引きつけるガルシアの奮戦により歪虚の狙いは前衛に絞られ、後衛は攻撃と回復に徹する事が出来ていた。
だが、そのバランスは薄氷の上を進むが如し、崩壊は容易く訪れていた。
「しまっ……!」
キメラシャークの噛み付き、そこからの投げ飛ばし。
空中を舞い、砂浜に叩きつけられたセレスティアはその時点で意識を失い、戦闘不能に陥っていた。
「クソッ、逸らしきれなかった……」
アルケミストタクトを翳しつつ、ザレムが苦々しげにキメラシャークを睨みつける。
噛み付き攻撃、その軌道を逸らそうと構えていた彼ではあったが見てからの反応では対応しきれず、機導砲での妨害はキメラシャークの頭部を焼き焦がすダメージを与える結果を出すに止まっていた。
だが、前衛の損耗は仕方ない事。
後衛が常に攻撃出来る様、被弾すれば交代し真正面で攻撃を引きつけていたセレスティアとガルシアの消耗は激しく、自己回復とヒーラーの回復を重ねても補いきれなかったのだ。
しかし、その間に生じた時間は大きな効果を生んでいた。
それは、フライロブスターの完全消費である。
「回復は打ち止めって奴ね」
飛来するフライロブスターを叩き切り、エリシャがキメラシャークの側面へ移動する。
飛来と同時に潰されるならばと複数体をまとめて召集、ハンターの対応が追いつかない間に1度、回復を果たしはしたが代償は残る全ての回復を失う事。
だが、それでもあと一発、電撃ビームを放つだけの体力を残すには十分。
次々に飛来する銃弾、石のつぶてや斬撃を触手で凌ぎ、チャージを完了した鮫が方向転換、狙い定めた相手はガルシア。
回避が間に合わず、咄嗟に大剣を構える事で顔、胸部への直撃は防ぐも全身を飲み込む光の奔流、その衝撃を殺しきるには到底足りない。
「誰だ、犠牲者募集なんて言った奴は、クソッ……!」
砂浜へ剣を突き立て、悪態を付きつつガルシアは膝を付く。
私です! なんて受付嬢が空の彼方でいい笑顔を浮かべる幻影を見たガルシアの意識はそこで途絶え、2人目の行動不能者が発生していた。
「回復足りず、押し切られはしたがここからが正念場だ……!」
戦闘不能者を出しつつも、ハンター側の心は折れず。
序盤から回復をし続けた結果、ヒールを使い切っていたティアナが攻撃にシフト、光弾を放てば触手がガード。
しかし、続けて放たれたヤーコフの銃弾、そしてザレムの機導砲を凌いだ事で触手のガードがなくなれば、無防備なクラゲウナギに猛攻が。
「いい加減、電流はやめてもらうわ」
「エリシャ様、続かせてもらうわ」
地面から、掬い上げる形で振るわれたエリシャの太刀。
白き軌跡を残しつつクラゲの表皮を引き裂けば、暴れ狂うウナギへまよいの生み出す石片が飛来、その頭部を吹き飛ばす。
これまでのダメージも相まって、ここでようやくクラゲウナギはその機能を停止していたのだ。
●掃討戦
「前衛の真似事、ぐらいはさせてもらおうか」
攻勢を受け、電撃を封じられたキメラシャーク。
攻撃を受け付けず、当てれない上チマチマと回り込んで攻撃するだけのエリシャとやりあうよりも、後方から攻撃を当て続ける相手を倒さんと猛進する歪虚であったが立ちはだかったヤーコフがナイフを一閃。
後衛への進軍を止める、壁の役割をここで果たしていたのだ。
止む無く停止、イソギンチャクの触手にてヤーコフを撃ち据えるキメラシャーク、しかしながらその程度で倒す事は出来ず、即座にカトレアがヒールで癒す。
「まだ、ヒールは残っていますよ?」
ニコリと微笑むカトレア、序盤から回復に徹してもなお余力を残す回復源は、火力を減じた相手にとって押し切るのは至難の業。
こうなれば防御に難のある歪虚、押し返す火力を失った今、ハンター側が負ける要素はほぼ無くなったといえるだろう。
「ツッ、ちょっと予想外だわ」
自身を無視、強行突撃を仕掛けた歪虚を後方から攻撃しようと進むエリシャを触手が迎撃。
まぐれ当たりが一発入るも、目に見えぬ何かが彼女を守りダメージはごく僅か。
斬りつけられればイソギンチャクも、これまでのカバーリングが災いしその生命力を完全に失い、鮫の体から脱落する。
攻め手を2つ失い、そして猛攻にさらされる鮫。
射撃スキルを撃ちつくし、前線に出たザレムに大口を開けて噛み付くが、その攻撃すら有効打とはなっていない。
「ぐおっ!? だが、顔面ががら空きだ!」
誰かが自分の無事を祈る、そんな気配を感じつつザレムは光の剣をその手に生み出し、噛み付かれたまま鮫の目へと突き立てる。
走る激痛、失われる視界。
顎の力が減じ、ザレムに抜け出されたキメラシャークの最後に見た光景は。
まよいとティアナ、両者が放った光弾と光の矢。
形状の違う、二種の光が自身に迫る死を連想させる光景であった。
「ガルシアさん、アオヤギさん、大丈夫ですか?」
意識を失っていた2人にカトレアが声をかけ、応急処置を施していく。
火力特化の相手ではあるが、この苦戦はどうしてか。
それは、小さなミスが重なったが故の結果でしかない。
特定部位を早期に狙うはずが強化に手を取られた事、敵の注意を引きつける工夫が足りず特定の者が集中して狙われた事。
初手こそ肝心な相手であったにも関わらず、それが乱れてしまった事。
しかし、小さなミスであればこそ、個々人の奮戦があれば補う事も出来たはず。
祈りの力もあり、押し返す可能性は十分にあったがそれが出来なかったのは何故か?
それは、人からの祈りを受け、宿し振るうからこその力なのだ。
祈られただけでは意味はなく、行動と重なる事によって初めて大きな力を示すのだ。
反省すべき点は幾つか有ったが勝利は勝利、いまはただ、身体を休めることが必要だ。
「当分ロブスターは食いたく……いや、折角だから食うのもありか」
安堵の息とともにザレムが呟き、残る面々も撤収準備を完了。
浜辺を制圧、陸上にまで手を伸ばそうとした歪虚はハンターの手により討伐され、戦いの痕跡を残しつつ、浜辺は平穏を取り戻す。
――深棲から迫る狂気たちが祓われるのも近い……
心地良い浜風が頬を撫でるが、そこに安穏は存在しない。
居るのは巨大な体躯を持ち我が物顔で動き回る鮫型歪虚、ワァーシン・キメラシャークと配下であるフライロブスター、そしてそれを討伐すべく集まった8人のハンターだけである。
「……なんじゃありゃ。出鱈目生物の万国驚愕ショーかよ」
「ま、なんつーか……あからさまなほどに分かり易い見た目だな」
「ふざけた見た目、ですが強敵か……心が躍る、が。慎重にいかねばこちらがやられるか」
ハンター達を見る事無く、悠然と砂浜を進むキメラシャークを眺めザレム・アズール(ka0878)が驚嘆すればガルシア・ペレイロ(ka0213)が辟易しつつ言葉を返す。
異様な外見、其れが目を引く相手であるが油断は禁物と2人に続きティアナ・アナスタシア(ka0546)も言葉を発し、強敵を前に警戒を続けていた。
「それにしても、ん~っ、ずいぶん楽しそうに、しっちゃかめっちゃか壊してくれたみたいね」
「そうね、大分気持ち悪い鮫だけどこれ食べれるのかしら? ま、どっちでも良いわね」
破壊された小屋の残骸、散らばるパラソル等を眺めつつ夢路 まよい(ka1328)が挑発的に呟き、どうせ解体する相手だ、と切って捨てるエリシャ・カンナヴィ(ka0140)。
遊びに向かうような気楽さ、強者を前にしても崩れぬ余裕を持ちつつ2人は進み、徐々に敵との距離が縮まっていく。
「さて、かかろうか」
「はい、少佐、行きましょう」
ゴム手袋を嵌めなおしヤーコフ・ズダーノフスキー(ka2364)が動けば、彼に続きセレスティア・アオヤギ(ka2625)も歩を進める。
少佐はよせ、と呟くヤーコフであったが昔の上司、部下の関係。
言い方は変わらないだろうという事を彼は理解しており、互いの信頼関係を示すには十分すぎる光景であった。
それぞれが覚醒を終え、キメラシャークもハンターを視認。
人気の無くなった浜辺を舞台に、激しい戦いが始まろうとしていた……
――ところ変わって、ここはハンターズソサエティ。
一行がキメラシャークの討伐に赴く前の出来事である。
「そういえば上司の方が怖い顔で呼んでましたよ。14番の部屋で待ってる、との事でした」
「そんなわけないじゃないですか、何言ってるんですか。まあ、いってらっしゃーい♪」
カトレア(ka1585)が受付嬢に言伝を。
そんな危険な気配漂う場所になんか、呼び出しされても行くわけ無いとシカトを決め込む受付嬢、しかしそうは問屋が卸さない。
「何処へ行こうというのかね? 私は14番に来るように言ったのだが……?」
「ちょ、ま!? いやーっ、死亡確定はいやーっ!?」
「諸悪の根源とか思われてるんだぞ、日頃の態度で。こいっ!」
妙な歪虚討伐依頼ばかり引き寄せる受付嬢、運が悪いか諸悪の根源か、なんて感想をセレスティアが言っていたのを上司が聞きつけ日頃の妄言に対してのお説教。
拒絶虚しく、14番相談室へと連行される光景がそこにはあったという。
●紫電の脅威
「先ずはクラゲウナギからだな」
「守りは高めた、前線は任せた」
後方、イソギンチャクの射程外からマテリアルを仲間へと注ぎ込むザレムとティアナ。
ザレムから流れ込むエネルギーは最前線、キメラシャークに接近していくエリシャの攻撃力を高め、ティアナが生み出した光はセレスティアを包み込みその防御を高めていく。
だが、初手から作戦の綻びは生じつつあった。
「敵さんこちら、遊んであげるわっ!」
キメラシャークの側面に回りこんだエリシャ、それを敵と認識したキメラシャークから数多の触手が伸びるが飛び上がることで回避。
続けざまに噛み付こうとした攻撃を予測、虚空を彷徨う触手を蹴り飛ばす反動で軌道を逸らせば、虚しく空切る鮫の牙。
さらにクラゲウナギが放つ電撃までもを飛び退く事で避け、相手の攻撃を完全に封殺したものの、最前線は彼女1人。
敵の目を引きつけるという目的は達したものの、一気に敵との距離を詰める事を優先したが故に残る前衛との距離が開いてしまったのだ。
「まずいな、ビームの準備に入ったようだ。纏まらないように散開を」
エリシャへの猛攻、その際に折れた腕を再生させること無く次の攻撃態勢に入ったキメラシャークを確認し、ヤーコフが警戒を促す。
その声に反応、敵との距離を詰めていた面々は散会しつつ接近するが全員は攻撃に移れない。
「我の閃光の一撃受けてみよ! ホーリーライト!」
最後列からティアナが光弾を放つが、その攻撃は伸びた触手に防がれる。
ならばとヤーコフが白銀に輝くリボルバー、その銃弾にてクラゲウナギを狙うがこちらも伸びた触手がガード。
「まよい、合わせていくわよっ」
「任せて、エリシャ様」
クラゲウナギを狙い、エリシャの太刀が振るわれるがその攻撃までもを触手が防御、しかし直後に飛来したまよいの魔法、石のつぶてたるアースバレットまでは防げない。
被弾し、生じた穴からクラゲの体液がどろりと零れる好機を逃さず接近するセレスティア。
脆くなった部位へとダガーを突き立て、その穴を広げていくもそれだけで壊れる歪虚ではない。
「狙いはこちら……ッ!?」
尾びれを用いて方向転換、セレスティアの方を向いたキメラシャーク。
手近な相手、そして自分の体に有効打を与えた存在として彼女を認識、近くに居たエリシャは攻撃が当たり難いと判断しての選択であろう。
身体をくねらせ狙いを定め、大口を開く歪虚。
次の瞬間、輝く光の奔流がセレスティアの身体を飲み込んでいた。
●消耗戦
意識を失いかけつつ、踏み止まったセレスティア。
絶縁体を用いて通電を防ぎ、ダメージを押さえ込んではいたもののそれはあくまで電気を防いだにすぎず、小屋を消し飛ばした強烈な衝撃までは減じる事が出来なかったのだ。
「一旦下がるわ、回復お願い」
自らもマテリアルを活性化、受けた衝撃を回復しつつ後退するセレスティア。
忌々しげにキメラシャークを見つめる先で8本の腕が敵から生えるが、無理は出来ない。
「癒しの風よ、我の盟友に安らぎを……!」
「回復役は回復がお仕事です」
イソギンチャクの射程から後退、確認次第即座に癒しの光によってセレスティアを治療するティアナとカトレア。
3人分の回復を重ねたが、全快までは届かず更なる回復は必要だろう。
「こっちを見やがれ、化け物が!」
同刻真正面、上段から思い切りツヴァイハンダーを叩き付けるガルシア。
自分に注意を引きつけ、後方への進軍を阻止する立ち回り。
叩きつけられた大剣は鮫本体を守ろうと伸びた触手を断ち切り、イソギンチャクにダメージが蓄積される。
「ロブスターか、あれは私が始末しよう」
「お願い、こっちは攻撃を続けるわ」
鮫の部位、クラゲウナギに穴が空き、イソギンチャクの触手が切り落とされた事を察知、海上彷徨うフライロブスターが猛烈な勢いで戦線に乱入を。
しかし、それは警戒された行動、ヤーコフがマテリアルを込めることで射程を延ばした銃弾を放ち、その間にエリシャがクラゲウナギを狙い再度の斬撃。
木っ端微塵に飛び散ったフライロブスターの残骸が地面に落ちれば、空を舞うのはクラゲを守り、切り離された触手が1本。
「隙だらけよ、そこっ」
そのチャンス、逃さず攻撃を仕掛けるまよい。
守りの為に生じた触手、それが斬られた隙間を射抜く、魔力を高めたアースバレット。
先の攻防、その間にザレムが彼女を強化、その恩恵を併せた魔法の一撃は大きく、クラゲに保護されたウナギの身体までもを傷つけていた。
「シャァァァァ!」
各部のダメージ、それを受け咆哮するキメラシャーク。
手近な相手と認めたガルシア、その身体を噛み千切らんと猛進、強引に噛み付くがガルシアは大剣を翳し牙を防御。
上顎の牙を完全に押し止め、その威力を大いに減ずる事に成功していたが、次なる脅威は迫りつつある。
「また、腕の再生を放棄したか。ビームがくるようだ」
ハンターからの攻撃、そして自身の移動に合わせて折れた腕。
再生行動を放棄したキメラシャークの行動は、再度の電撃ビームのチャージであり、それを察知したヤーコフが再度、警戒を促せば前衛は散開。
複数名が巻き込まれぬ位置取りを維持しつつ、攻撃は継続されていくのであった。
●電撃の封印と代償
「こっちだ、後ろには行かせないぜ」
ガルシアがツヴァイハンダーを振り回し、切っ先がキメラシャークの顔面に深い傷を刻んでいく。
多少の被弾は覚悟の上、完全に相手の注意を引きつけるガルシアの奮戦により歪虚の狙いは前衛に絞られ、後衛は攻撃と回復に徹する事が出来ていた。
だが、そのバランスは薄氷の上を進むが如し、崩壊は容易く訪れていた。
「しまっ……!」
キメラシャークの噛み付き、そこからの投げ飛ばし。
空中を舞い、砂浜に叩きつけられたセレスティアはその時点で意識を失い、戦闘不能に陥っていた。
「クソッ、逸らしきれなかった……」
アルケミストタクトを翳しつつ、ザレムが苦々しげにキメラシャークを睨みつける。
噛み付き攻撃、その軌道を逸らそうと構えていた彼ではあったが見てからの反応では対応しきれず、機導砲での妨害はキメラシャークの頭部を焼き焦がすダメージを与える結果を出すに止まっていた。
だが、前衛の損耗は仕方ない事。
後衛が常に攻撃出来る様、被弾すれば交代し真正面で攻撃を引きつけていたセレスティアとガルシアの消耗は激しく、自己回復とヒーラーの回復を重ねても補いきれなかったのだ。
しかし、その間に生じた時間は大きな効果を生んでいた。
それは、フライロブスターの完全消費である。
「回復は打ち止めって奴ね」
飛来するフライロブスターを叩き切り、エリシャがキメラシャークの側面へ移動する。
飛来と同時に潰されるならばと複数体をまとめて召集、ハンターの対応が追いつかない間に1度、回復を果たしはしたが代償は残る全ての回復を失う事。
だが、それでもあと一発、電撃ビームを放つだけの体力を残すには十分。
次々に飛来する銃弾、石のつぶてや斬撃を触手で凌ぎ、チャージを完了した鮫が方向転換、狙い定めた相手はガルシア。
回避が間に合わず、咄嗟に大剣を構える事で顔、胸部への直撃は防ぐも全身を飲み込む光の奔流、その衝撃を殺しきるには到底足りない。
「誰だ、犠牲者募集なんて言った奴は、クソッ……!」
砂浜へ剣を突き立て、悪態を付きつつガルシアは膝を付く。
私です! なんて受付嬢が空の彼方でいい笑顔を浮かべる幻影を見たガルシアの意識はそこで途絶え、2人目の行動不能者が発生していた。
「回復足りず、押し切られはしたがここからが正念場だ……!」
戦闘不能者を出しつつも、ハンター側の心は折れず。
序盤から回復をし続けた結果、ヒールを使い切っていたティアナが攻撃にシフト、光弾を放てば触手がガード。
しかし、続けて放たれたヤーコフの銃弾、そしてザレムの機導砲を凌いだ事で触手のガードがなくなれば、無防備なクラゲウナギに猛攻が。
「いい加減、電流はやめてもらうわ」
「エリシャ様、続かせてもらうわ」
地面から、掬い上げる形で振るわれたエリシャの太刀。
白き軌跡を残しつつクラゲの表皮を引き裂けば、暴れ狂うウナギへまよいの生み出す石片が飛来、その頭部を吹き飛ばす。
これまでのダメージも相まって、ここでようやくクラゲウナギはその機能を停止していたのだ。
●掃討戦
「前衛の真似事、ぐらいはさせてもらおうか」
攻勢を受け、電撃を封じられたキメラシャーク。
攻撃を受け付けず、当てれない上チマチマと回り込んで攻撃するだけのエリシャとやりあうよりも、後方から攻撃を当て続ける相手を倒さんと猛進する歪虚であったが立ちはだかったヤーコフがナイフを一閃。
後衛への進軍を止める、壁の役割をここで果たしていたのだ。
止む無く停止、イソギンチャクの触手にてヤーコフを撃ち据えるキメラシャーク、しかしながらその程度で倒す事は出来ず、即座にカトレアがヒールで癒す。
「まだ、ヒールは残っていますよ?」
ニコリと微笑むカトレア、序盤から回復に徹してもなお余力を残す回復源は、火力を減じた相手にとって押し切るのは至難の業。
こうなれば防御に難のある歪虚、押し返す火力を失った今、ハンター側が負ける要素はほぼ無くなったといえるだろう。
「ツッ、ちょっと予想外だわ」
自身を無視、強行突撃を仕掛けた歪虚を後方から攻撃しようと進むエリシャを触手が迎撃。
まぐれ当たりが一発入るも、目に見えぬ何かが彼女を守りダメージはごく僅か。
斬りつけられればイソギンチャクも、これまでのカバーリングが災いしその生命力を完全に失い、鮫の体から脱落する。
攻め手を2つ失い、そして猛攻にさらされる鮫。
射撃スキルを撃ちつくし、前線に出たザレムに大口を開けて噛み付くが、その攻撃すら有効打とはなっていない。
「ぐおっ!? だが、顔面ががら空きだ!」
誰かが自分の無事を祈る、そんな気配を感じつつザレムは光の剣をその手に生み出し、噛み付かれたまま鮫の目へと突き立てる。
走る激痛、失われる視界。
顎の力が減じ、ザレムに抜け出されたキメラシャークの最後に見た光景は。
まよいとティアナ、両者が放った光弾と光の矢。
形状の違う、二種の光が自身に迫る死を連想させる光景であった。
「ガルシアさん、アオヤギさん、大丈夫ですか?」
意識を失っていた2人にカトレアが声をかけ、応急処置を施していく。
火力特化の相手ではあるが、この苦戦はどうしてか。
それは、小さなミスが重なったが故の結果でしかない。
特定部位を早期に狙うはずが強化に手を取られた事、敵の注意を引きつける工夫が足りず特定の者が集中して狙われた事。
初手こそ肝心な相手であったにも関わらず、それが乱れてしまった事。
しかし、小さなミスであればこそ、個々人の奮戦があれば補う事も出来たはず。
祈りの力もあり、押し返す可能性は十分にあったがそれが出来なかったのは何故か?
それは、人からの祈りを受け、宿し振るうからこその力なのだ。
祈られただけでは意味はなく、行動と重なる事によって初めて大きな力を示すのだ。
反省すべき点は幾つか有ったが勝利は勝利、いまはただ、身体を休めることが必要だ。
「当分ロブスターは食いたく……いや、折角だから食うのもありか」
安堵の息とともにザレムが呟き、残る面々も撤収準備を完了。
浜辺を制圧、陸上にまで手を伸ばそうとした歪虚はハンターの手により討伐され、戦いの痕跡を残しつつ、浜辺は平穏を取り戻す。
――深棲から迫る狂気たちが祓われるのも近い……
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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作戦相談卓 夢路 まよい(ka1328) 人間(リアルブルー)|15才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2014/08/09 19:21:09 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/08/05 00:58:19 |