ゲスト
(ka0000)
光の全身タイツとガーゴイル
マスター:馬車猪

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 4日
- 締切
- 2014/08/08 22:00
- 完成日
- 2014/08/15 13:22
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「司祭様! これを着てください!」
技術者が差し出したのは全身タイツだった。
リアルブルー出身者の協力を得て素材は極薄。つまり体の線や凹凸がはっきり分かってしまう。
「あの」
決闘で投げつける白手袋の代わりなのでしょうかという言葉を気合で飲み込む。
「どういうことでしょうか?」
困惑するイコニア・カーナボン(kz0040)とは逆に、技術者は気分良く舌を高速回転させる。
「エクラ教に相応しい光属性防具です!」
だから着てくださいと、断られることなど全く考えていない視線がイコニアに突き刺さる。
司祭は恐る恐る指で触れ、その予想以上の薄さに気付いて戦慄する。
他国と比べれば保守的な王国出身、その中でも保守的な貴族階層の出であるイコニアにとって、装着は人間の誇りを投げ捨てるのと同じだった。
「さあさあさあっ」
ずずいと迫る技術者。
結構な腕の覚醒者なのでイコニアも本気にならないと拒絶できない。結構な名声と熱烈な信仰心の持ち主なので覚醒して記憶が消えるまで殴り倒す訳にもいかない。
進退窮まったイコニアは、部屋の隅であくびをしながら寝そべっているキノコに気付いた。
「たすけてっ」
パルムは仕方がないなぁと心底面倒臭そうに腰をあげ、ハンターズソサエティ支部へ向かっていった。
●
様々な依頼が舞い込むハンターを募るギルド本部。
今日もまた新たな依頼が3Dディスプレイに映し出された。
「ちょっ」
「R15じゃねーか」
何人かのハンターが思わず噴き出す。
ディスプレイには、少年誌に載せるには厳しい服装のイコニアが顔にだけモザイクがかかった状態で映し出されていた。
隅っこにこの映像はイメージですと書かれてはいるが気付いていないハンターもいるかもしれない。
そんな騒ぎが起こった場所のちょっと遠くで、別の依頼が新たに表示された。
光属性に偏った雑魔が発見され、その討伐のためハンターを募集中だ。
この雑魔、雑魔としては上の中といえるほどの戦闘力があって危険度がかなり高い。
「あっ」
「依頼の合体だと」
司祭救出依頼(?)と光属性雑魔討伐依頼の3Dディスプレイが近づき、重なり合い、新たな文字群が現れる。
『この装備が使われずに廃棄されると』
必死に抵抗しているらしいイコニアの声が、荒い息と共に中継される。
『色々なひとが困るので使って助』
乱れる音声。しばらくお待ちくださいというプラカードをかかげる3頭身イコニア(全身タイツ)。
『使い捨てになりますが切り貼りしてくださって構いません。だから早く助』
それきり、イコニアの声が届くことはなかった。
●
その雑魔は魔除けの彫像ガーゴイルに似ていた。
ただし似ているのは外見だけで全高は2メートル、全身が黄金色に輝いている。
近くの街の守衛と教会のクルセイダーからなる一団が猛然と襲いかかる。
見た目よりはもろい表面に穴が開き雑魔の動きが鈍っていくが、守衛達が有利だったのはそこまでだった。
ガーゴイルの顔面から太い光の束が突き出され、良好な装備をしているはずのクルセイダーが深手を負う。
「いかん」
すぐさま同僚のクルセイダーが癒す。しかし癒している間ガーゴイルの傷が修復されていく。
このままでは倒しきる前に守衛とクルセイダーのスキルが尽きてしまう。
「ヴォイドの速度は遅い。一旦下がって司祭に助力を願うんだ」
彼等は屈辱に耐え街へ駆け戻る。
先程の一撃は連射はできないようで、ガーゴイルは大重量の体で一歩一歩踏み出し街へと向かう。
雑魔が一歩踏み出すたびに、街道には深く硬い穴が刻まれていった。
技術者が差し出したのは全身タイツだった。
リアルブルー出身者の協力を得て素材は極薄。つまり体の線や凹凸がはっきり分かってしまう。
「あの」
決闘で投げつける白手袋の代わりなのでしょうかという言葉を気合で飲み込む。
「どういうことでしょうか?」
困惑するイコニア・カーナボン(kz0040)とは逆に、技術者は気分良く舌を高速回転させる。
「エクラ教に相応しい光属性防具です!」
だから着てくださいと、断られることなど全く考えていない視線がイコニアに突き刺さる。
司祭は恐る恐る指で触れ、その予想以上の薄さに気付いて戦慄する。
他国と比べれば保守的な王国出身、その中でも保守的な貴族階層の出であるイコニアにとって、装着は人間の誇りを投げ捨てるのと同じだった。
「さあさあさあっ」
ずずいと迫る技術者。
結構な腕の覚醒者なのでイコニアも本気にならないと拒絶できない。結構な名声と熱烈な信仰心の持ち主なので覚醒して記憶が消えるまで殴り倒す訳にもいかない。
進退窮まったイコニアは、部屋の隅であくびをしながら寝そべっているキノコに気付いた。
「たすけてっ」
パルムは仕方がないなぁと心底面倒臭そうに腰をあげ、ハンターズソサエティ支部へ向かっていった。
●
様々な依頼が舞い込むハンターを募るギルド本部。
今日もまた新たな依頼が3Dディスプレイに映し出された。
「ちょっ」
「R15じゃねーか」
何人かのハンターが思わず噴き出す。
ディスプレイには、少年誌に載せるには厳しい服装のイコニアが顔にだけモザイクがかかった状態で映し出されていた。
隅っこにこの映像はイメージですと書かれてはいるが気付いていないハンターもいるかもしれない。
そんな騒ぎが起こった場所のちょっと遠くで、別の依頼が新たに表示された。
光属性に偏った雑魔が発見され、その討伐のためハンターを募集中だ。
この雑魔、雑魔としては上の中といえるほどの戦闘力があって危険度がかなり高い。
「あっ」
「依頼の合体だと」
司祭救出依頼(?)と光属性雑魔討伐依頼の3Dディスプレイが近づき、重なり合い、新たな文字群が現れる。
『この装備が使われずに廃棄されると』
必死に抵抗しているらしいイコニアの声が、荒い息と共に中継される。
『色々なひとが困るので使って助』
乱れる音声。しばらくお待ちくださいというプラカードをかかげる3頭身イコニア(全身タイツ)。
『使い捨てになりますが切り貼りしてくださって構いません。だから早く助』
それきり、イコニアの声が届くことはなかった。
●
その雑魔は魔除けの彫像ガーゴイルに似ていた。
ただし似ているのは外見だけで全高は2メートル、全身が黄金色に輝いている。
近くの街の守衛と教会のクルセイダーからなる一団が猛然と襲いかかる。
見た目よりはもろい表面に穴が開き雑魔の動きが鈍っていくが、守衛達が有利だったのはそこまでだった。
ガーゴイルの顔面から太い光の束が突き出され、良好な装備をしているはずのクルセイダーが深手を負う。
「いかん」
すぐさま同僚のクルセイダーが癒す。しかし癒している間ガーゴイルの傷が修復されていく。
このままでは倒しきる前に守衛とクルセイダーのスキルが尽きてしまう。
「ヴォイドの速度は遅い。一旦下がって司祭に助力を願うんだ」
彼等は屈辱に耐え街へ駆け戻る。
先程の一撃は連射はできないようで、ガーゴイルは大重量の体で一歩一歩踏み出し街へと向かう。
雑魔が一歩踏み出すたびに、街道には深く硬い穴が刻まれていった。
リプレイ本文
その装備は光り輝いていた。
教会の天窓から降り注ぐ光を浴びて、この上なく清らかで美しい。
「ひぅっ」
情けない声で身をすくめているのはエクラ教司祭イコニア・カーナボン(kz0040)。
身につけている体操服は全身タイツを改造したものであり、当然のように非常に薄い。
成長途中のなだらかなラインがくっきりはっきり見えていた。
「どう?」
イコニアの背後で、ユノ(ka0806)はイコニアからローブを引っぺがしたまま停止している。
体操服風レオタードを作ったのはユノ、別の部屋での着替えを勧めたのもユノで、奪いやすいローブを渡したのもユノ。要するに限りなく主犯に近い愉快犯である。
「いやあ、目福だね。」
足立 義次(ka2590)が親指を立てて恥じらいを楽しむ。白い素足がもじもじしているのも実に見応えがある。
「司祭のねーちゃん、下手に隠そうとすっと目立つぜ」
隠さなくても目立ちますっ、と目で反論してきたのを華麗に無視。
「リアルブルーの昔のTVのヒロインやヒーローは、タイツやレオタードだったしよ」
自分の体で見本を見せる。美少年顔とは良い意味で予想外な筋肉が躍動し、別のタイツからつくられたマントがひるがえる。そこには確かに、誰もが幼い日にあこがれるヒーローの気配があった。
「そこに守る人がいて、あんたにしか出来ねえ事があるならよ。下着や真っ裸だろうとタイツだろうと、堂々としていればいージャン」
金色のリーゼントがきらりと光った。
「ほぼ下着は無理です。でも、はい」
素直にうなずいて礼を言った瞬間、義次の後ろの人物に気づいて笑顔が凍った。
「ここにタイツがあるだろ?」
ジョナサン・キャラウェイ(ka1084)が全身タイツに着替えてマントを羽織り、マスクを被る。
「ボディーライン、隠蔽ッ! 顔を隠し羞恥感、消失ッ! もはや僕に恐れるものも憚るものもない!」
ポーズを決めてうははははと高笑いをするジョナサン。下半身から力が抜けて女の子座りでへたり込むイコニア。お嬢様には衝撃的すぎる光景だった。
「ふむ」
オンサ・ラ・マーニョ(ka2329)が平然とした足取りでジョナサンに近づき、視線を少しだけ下げる。
ジョナサンは背が高くオンサは年相応の背丈であり、当然のように股間のふくらみが至近距離だ。
「邪魔そうだが……これは引っ込めたり取り外したり出来ぬのか?」
小さな手が、果物を収穫するが如き躊躇いのない手つきでもぐ真似をする。
「は、はは、冗談だよね?」
オンサの返事は、獲物を前にした肉食獣の微笑みだった。
「もいじゃダメだよ!」
くわっと目を見開いたユノがジョナサンを背中に庇う。
「ソレは大事ナモノだから、もいだらココロと体に痛いんだヨ!」
幼いとはいえ男である。ユノの言葉には非常に強い実感とがこもっていた。
「うぅっ」
床から聞こえる気弱な声に気付き、オンサが素早く振り返る。
「む」
このままでは出発できない。そう判断したオンサは懐から一枚の布を取り出した。
「異邦人の巫女服、降魔(ぶるま)だ。雲導会なる雨乞いの儀式で用いられるとか。貴公に差し上げよう」
「ありがとう……ひく……ございま……えぐっ」
厚めの紺色布地を受け取り座ったまま極薄短パンの上から穿く。
その結果布地が食い込みもっとすごい外見になることに、イコニアは全く気づいていなかった。
「あれがあれば良かったのだが」
リアルブルー産のペンを手に残念そうにつぶやく。
「……これか?」
グライブ・エルケイル(ka1080)が手を差し出す。
分厚く力強く、そしてなにより繊細な機導師の指に引っかかるようにして、白い布地があった。
「光属性か!」
オンサが何度もうなずく。普通の布を縫い付けたら体操服の光属性が無くなるかもしれないが、グライブが探してきた光属性布なら問題なく使える。
「雲導会だったか……このような名札をつけるのが習わしと聞いた」
本部でリアルブルー出身者に書いてもらった文字列を見せる。
いこにあ、と気合満点のひらがな4文字だった。
「あっ」
オンサが布を受け取り器用に縫い付ける。妙な声の出所は当然イコニアだ。
「ひゃ」
豊満ではない胸に押しつける形でひらがな4文字を記入。これでクラシック体操着司祭の完成だ!
「なんて……」
グライブが遠い目をしている。
普段は静謐な空気で満たされているはずの教会が、今では全身タイツやその改造品を装備した男達に侵略されている。
たくましかったり美形だったり筋肉美だったりその全てを兼ね備えているからこそ、本人達は真剣でも喜劇か羞恥プレイにしか見えない。
「むごい」
グライブは沈痛な面持ちで目を伏せる。体操着司祭が妙におどおどしながらこっそり視線を動かしている。年齢的に異性の艶姿に興味津津なのかもしれない。
「見てはいけない」
タイツの端切れで司祭の視界を塞ぐ。目隠し、体操服、ブルマ、司祭という属性多すぎ少女は赤面して項垂れた。
セレナイト・アインツヴァイア(ka0900)が椅子から立ち上がる。騒ぎに加わらずに準備を進めていたため、タイツをどうにかフードつきマントに見える形に加工して装備し、弓も即座に戦闘可能な状態だ。
「イコニアはちゃんとそれ仕立て直していけよ? 妙齢の女の子がそんな格好で戦場にたたれちゃ、こっちがもたねぇからな」
照れもなく真面目な顔で声をかける。司祭の顔は赤くて今にも倒れそうだった。
●襲い来る光の柱
教会にたどりついた覚醒者を最低限治療した後、ハンター達と司祭は新たな装備と共に雑魔の迎撃へ向かう。
「行け」
「マテリアルによる強化完了!」
グライブに防御能力を強化され、ジョナサンに敏捷性を強化された前衛達が雑魔に向かい駆ける。
迎え撃つ雑魔は目に優しくない金色のガーゴイル。重さ、固さ、速度を兼ね備えた強敵だが最もやっかいなのはそれ以外の特殊能力だ。
セレナイトは敵の攻撃を惹きつけるため、あえて覚醒せずに矢を放つ。
鉄と鉄を打ち合うのに似た音が響いてガーゴイルに矢が刺さる。さすがに遠距離にある動く目標の急所を狙うのは無茶なので着弾したのは胸だ。
光の束を躱そうとする。非覚醒時としては最高に近い回避だった。しかし足りない。
3分の1程度しか当たっていないのに、光属性のフードは消し炭となり体の芯まで衝撃が走る。
ハンターが指示を出すまでもなくイコニアが癒しの技を使い、重傷直前かつ気絶寸前のセレナイトが覚醒する。傷は完全に癒されても金ガーゴイルの強烈な破壊力は忘れられそうにない。
「一旦下がって……って狙いは僕かよ!」
2度目の光の束がジョナサン目指して突き進む。ジョナサンは相変わらず剽げたままだ。当たれば激痛に苛まれることが分かっている。最悪の場合一撃で倒れる事も重々承知だ。承知の上で己を保てるほど彼の心は強い。
「やられたー!」
両手をあげて吹き飛ぶ。見栄えは良くても試作品でしかないタイツは一部が破れ、ひらりと待って切れ端が司祭の頭に載った。
「っ」
イコニアは赤い顔でジョナサンを癒す。彼に比べるとまだまだ精進が足りないようだ。
「強いよあの雑魔☆」
ひゃあ、ユノは楽しげに笑いながら極度の集中を経て水球を撃ち出す。
初撃は命中。2発目、3発目が当たって4発目が外れ、5発目が当たると同時に光の束が向かってきた。
「痛」
半瞬に満たない時間意識が途絶えた。頭を振って見下ろすと、前掛け風のまともなデザインだった光属性防具が消し炭に変わっている。
「耐久性低っ」
ユノの加工技術は玄人はだしであり、そのため元タイツの防具は明らかに効果を発揮していた。発揮してこの威力なのだがら元タイツ抜きで戦うのは極めて危険だ。
頑張って雑魔の射程外へ走りセレナイトがいる場所へ後退。セレナイトは雑魔の射程外で弓を放つ。
ハンターが使う弓の有効射程は素晴らしい。前衛に足止めされたガーゴイルに2本目以降の矢が突き立つ。ハンター相手ならとうに決着がついているだろうが相手はヴォイドの一種である。まだまだ倒れる気配はなかった。
「……撃ち抜け」
グライブのデバイスから光が飛ぶ。
雑魔の頭部に直撃。しかし雑魔の体力は豊富で未だに動きにきれがある。
「ヒール残り1回です」
「射程外まで下がれ」
雑魔に視線を向けたまま指示を出す。イコニアは荒い息をつきながら後退。グライブは躱しきれないと判断して即防御姿勢をとる。
「ぬ」
並みの痛みなら無表情で通せる彼がうめいてしまうほどの威力だ。下着では効果は不十分だったようだ。
イコニアのヒールによって回復していく。グライブは礼の言葉を言う時間を惜しみ支援と攻撃を続けていた。
●金ぴか決戦
金色の粉雪が舞う。
その全てが雑魔の表面が砕けたもので、筋や骨にあたる部分は混じっていない。
「ちっ」
雑魔の拳の下をくぐるように回避、そのまま義次が銃口を押し当てた。
「これなら効くだろ」
ショートソードでつけた切り傷へ発砲する。めしりと音がしてガーゴイル型雑魔の腹にひびが入った。
「硬ぇ」
地面を蹴って雑魔から離れる。雑魔の口に光が集まり、義次の肩を掠めて後衛のハンターへ飛んでいく。
雑魔の攻撃は取らない。握り込まれた拳が義次の腹にぶつかる寸前、サントール・アスカ(ka2820)が鮮やかな動きで駆け寄り手首に刃を叩き込んだ。
急所への直撃は避けられた。がは、と苦しげな息は漏れたが重傷ではない。
義次は目だけで礼を言い一旦下がり、アスカが代わりにガーゴイルの至近距離へ踏み込んだ。
「長くは持たない」
弱音ではなく冷静な判断だった。
雑魔の口から広がる光を伏せるようにしてかわす。装備にかすらせすらしない完璧な回避だが、連続して完全回避できるほどの技量差がないことはアスカが一番欲理解していた。
マテリアルで体の動きを効率化しショートソードで斬り込む。
金の粉雪が舞い雑魔の体に小さな傷が刻まれる。
反撃の雑魔の拳をなんとか受けて被害を抑え、倦まずにショートソードで雑魔の腕に切りつけた。
それでアスカを脅威と判断したのだろう。雑魔はハンター後衛から目の前のアスカに狙いを移し光の束を撃ち出した。
光。皮膚が焼かれ筋が熱せられ、しかしタイツによって威力が減じているため骨にダメージはない。
「そろそろ」
光の羽織を揺らして榊 兵庫(ka0010)が仕掛ける。雑魔の死角と判断した方向から、ガーゴイルの意識がアスカ達に意識が向いているタイミングで距離を詰める。
気配に気づいた金色ガーゴイルが振り返る。アスカのショートソードで脇腹を貫通されても止まらず裏拳が兵庫を襲う。
「倒れたらどうだ」
足から適度に力を抜く。ガーゴイルの拳が兵庫の一歩先を虚しく通過する。
兵庫の足、腰、胸、腕、そして薙刀は見事にかみ合った動きで薙刀の先端を雑魔の頭部にめり込ませた。
「次、遠距離が」
兵庫の眉間に皺が寄る。薙刀がガーゴイルの頬から離れ、頬から禍々しい光があふれ出した。
白色スクール水着が水平に跳んだ。光属性タイツを白スクにしか見えない何かに加工しその上から戦闘用装備を身につけたオンサが、赤い日本刀を構えてガーゴイルへ突撃した。
視界が白く染まる。
盾に貼り付けていた元タイツが半秒ももたずに燃え尽きる。洒落にならないダメージを負ってもオンサの動きは止まらず、右頬が避けたガーゴイルの左頬を破壊することに成功した。
「ゲームボスの最終形態かよっ」
光の束より1桁威力が弱いとはいえ決して生ぬるくはない光を突っ切り、斬撃を浴びせる義次。
「ここで決めるぞ。出し惜しみはなし、だ」
被弾を覚悟して薙刀を振り下ろす兵庫。全力で、何度も、徹底してガーゴイルを打つ。肉が砕けて骨が曲がっていく。だが雑魔の生命力にあたるものは豊富にありすぎて削り切れない。
ガーゴイルは深手に混乱し、体を使った受け防御を忘れている。兵庫を含むハンターの猛攻で皮が破れ筋が削れ骨まで見え始め、けれどまだ戦闘力を保ったまま動く。
アスカが極端な猫背の姿勢から急加速。加工しないままタイツは光の霧に触れても形を保っていて、彼の鍛え抜いた体をヴォイドの脅威から守っている。
猛獣よりも獰猛なうなりがアスカの喉から聞こえ、急激に膨張した筋肉がショートソードを加速させた。
ガーゴイルの脇腹に開いた穴から刃を突き入れ、心臓にあたる器官を粉砕する。
断末魔が大気を揺るがす。雑魔の中にあった力が暴走し始める。
が、光が爆発するより後方から飛来した矢と光が命中する方がずっとずっと早かった。
ガーゴイルの頭部が半回転して首が折れる。それがとどめとなり、雑魔の姿が薄れ、地面に倒れる前に消えてしまった。
「助かった」
覚醒を解除し感情が戻って来たセレナイトが弓を構えたまま言う。隣では力尽きて目をまわしているジョナサンがイコニアに介抱されている。
機導術で援護したグライブは気にするなと身振りで応え、いきなり片足をあげる。彼の靴の下を2匹のネコが通り過ぎ、急停止し、全力で飛んで主人の足下へ駆け寄る。その首には万一に備えるため端布で作ったスカーフが巻かれていた。
大きな手でわしゃわしゃと猫を撫でるグライブは、表情があまり変わらないのにとても機嫌良さそうに見えた。
「司祭様ー!」
街の方角から非覚醒状態の魔術師が全力疾走してくる。
イコニアは自分の服装のことを思い出し、顔を白くして兵庫の後ろに隠れた。
「お前か」
兵庫の目には嫌悪も好意もない。
「どんなに性能が良くても、使用する側が納得しない限り使われぬ事も十分にありうる」
兵庫の背後ではイコニアが曖昧な表情だ。個人的には兵庫を全面肯定したくても立場上表に出さないのだろう。
「使用する側の意見もきちんと聞いた上で開発すべきじゃないのか?」
実際に使った結果、その言葉には強い説得力があった。
「好評そうですが」
魔術師が真面目な顔で応えた。
ショックを受けて打ち上げられた魚のように口を開閉するイコニアの視線の先では、アスカがタイツを着たまま警戒と帰還準備を進めていた。
「教会で着替えて返却すればいいのか?」
光タイツを普通の装備と認識しているとしか思えない自然体だ。
「はい。デザインは完璧ですが」
ユノが噴き出し、イコニアが動揺した。
鎧や服の裏地や普通の下着や水着にすることを思いつかず、技術的にはより高度なタイツにしてしまうなんて、方向性と手段を間違えてるタイプにしか見えない。
「頑張れ。タイツという発想がアレだっただけで、発明自体はほんと、凄い事だしな」
セレナイトは勇気づけるようにイコニアの肩をたたき、街に向かって悠然と歩く。続いて去っていくハンターを、魔術師が笑顔で、司祭が半泣きで見送っていた。
教会の天窓から降り注ぐ光を浴びて、この上なく清らかで美しい。
「ひぅっ」
情けない声で身をすくめているのはエクラ教司祭イコニア・カーナボン(kz0040)。
身につけている体操服は全身タイツを改造したものであり、当然のように非常に薄い。
成長途中のなだらかなラインがくっきりはっきり見えていた。
「どう?」
イコニアの背後で、ユノ(ka0806)はイコニアからローブを引っぺがしたまま停止している。
体操服風レオタードを作ったのはユノ、別の部屋での着替えを勧めたのもユノで、奪いやすいローブを渡したのもユノ。要するに限りなく主犯に近い愉快犯である。
「いやあ、目福だね。」
足立 義次(ka2590)が親指を立てて恥じらいを楽しむ。白い素足がもじもじしているのも実に見応えがある。
「司祭のねーちゃん、下手に隠そうとすっと目立つぜ」
隠さなくても目立ちますっ、と目で反論してきたのを華麗に無視。
「リアルブルーの昔のTVのヒロインやヒーローは、タイツやレオタードだったしよ」
自分の体で見本を見せる。美少年顔とは良い意味で予想外な筋肉が躍動し、別のタイツからつくられたマントがひるがえる。そこには確かに、誰もが幼い日にあこがれるヒーローの気配があった。
「そこに守る人がいて、あんたにしか出来ねえ事があるならよ。下着や真っ裸だろうとタイツだろうと、堂々としていればいージャン」
金色のリーゼントがきらりと光った。
「ほぼ下着は無理です。でも、はい」
素直にうなずいて礼を言った瞬間、義次の後ろの人物に気づいて笑顔が凍った。
「ここにタイツがあるだろ?」
ジョナサン・キャラウェイ(ka1084)が全身タイツに着替えてマントを羽織り、マスクを被る。
「ボディーライン、隠蔽ッ! 顔を隠し羞恥感、消失ッ! もはや僕に恐れるものも憚るものもない!」
ポーズを決めてうははははと高笑いをするジョナサン。下半身から力が抜けて女の子座りでへたり込むイコニア。お嬢様には衝撃的すぎる光景だった。
「ふむ」
オンサ・ラ・マーニョ(ka2329)が平然とした足取りでジョナサンに近づき、視線を少しだけ下げる。
ジョナサンは背が高くオンサは年相応の背丈であり、当然のように股間のふくらみが至近距離だ。
「邪魔そうだが……これは引っ込めたり取り外したり出来ぬのか?」
小さな手が、果物を収穫するが如き躊躇いのない手つきでもぐ真似をする。
「は、はは、冗談だよね?」
オンサの返事は、獲物を前にした肉食獣の微笑みだった。
「もいじゃダメだよ!」
くわっと目を見開いたユノがジョナサンを背中に庇う。
「ソレは大事ナモノだから、もいだらココロと体に痛いんだヨ!」
幼いとはいえ男である。ユノの言葉には非常に強い実感とがこもっていた。
「うぅっ」
床から聞こえる気弱な声に気付き、オンサが素早く振り返る。
「む」
このままでは出発できない。そう判断したオンサは懐から一枚の布を取り出した。
「異邦人の巫女服、降魔(ぶるま)だ。雲導会なる雨乞いの儀式で用いられるとか。貴公に差し上げよう」
「ありがとう……ひく……ございま……えぐっ」
厚めの紺色布地を受け取り座ったまま極薄短パンの上から穿く。
その結果布地が食い込みもっとすごい外見になることに、イコニアは全く気づいていなかった。
「あれがあれば良かったのだが」
リアルブルー産のペンを手に残念そうにつぶやく。
「……これか?」
グライブ・エルケイル(ka1080)が手を差し出す。
分厚く力強く、そしてなにより繊細な機導師の指に引っかかるようにして、白い布地があった。
「光属性か!」
オンサが何度もうなずく。普通の布を縫い付けたら体操服の光属性が無くなるかもしれないが、グライブが探してきた光属性布なら問題なく使える。
「雲導会だったか……このような名札をつけるのが習わしと聞いた」
本部でリアルブルー出身者に書いてもらった文字列を見せる。
いこにあ、と気合満点のひらがな4文字だった。
「あっ」
オンサが布を受け取り器用に縫い付ける。妙な声の出所は当然イコニアだ。
「ひゃ」
豊満ではない胸に押しつける形でひらがな4文字を記入。これでクラシック体操着司祭の完成だ!
「なんて……」
グライブが遠い目をしている。
普段は静謐な空気で満たされているはずの教会が、今では全身タイツやその改造品を装備した男達に侵略されている。
たくましかったり美形だったり筋肉美だったりその全てを兼ね備えているからこそ、本人達は真剣でも喜劇か羞恥プレイにしか見えない。
「むごい」
グライブは沈痛な面持ちで目を伏せる。体操着司祭が妙におどおどしながらこっそり視線を動かしている。年齢的に異性の艶姿に興味津津なのかもしれない。
「見てはいけない」
タイツの端切れで司祭の視界を塞ぐ。目隠し、体操服、ブルマ、司祭という属性多すぎ少女は赤面して項垂れた。
セレナイト・アインツヴァイア(ka0900)が椅子から立ち上がる。騒ぎに加わらずに準備を進めていたため、タイツをどうにかフードつきマントに見える形に加工して装備し、弓も即座に戦闘可能な状態だ。
「イコニアはちゃんとそれ仕立て直していけよ? 妙齢の女の子がそんな格好で戦場にたたれちゃ、こっちがもたねぇからな」
照れもなく真面目な顔で声をかける。司祭の顔は赤くて今にも倒れそうだった。
●襲い来る光の柱
教会にたどりついた覚醒者を最低限治療した後、ハンター達と司祭は新たな装備と共に雑魔の迎撃へ向かう。
「行け」
「マテリアルによる強化完了!」
グライブに防御能力を強化され、ジョナサンに敏捷性を強化された前衛達が雑魔に向かい駆ける。
迎え撃つ雑魔は目に優しくない金色のガーゴイル。重さ、固さ、速度を兼ね備えた強敵だが最もやっかいなのはそれ以外の特殊能力だ。
セレナイトは敵の攻撃を惹きつけるため、あえて覚醒せずに矢を放つ。
鉄と鉄を打ち合うのに似た音が響いてガーゴイルに矢が刺さる。さすがに遠距離にある動く目標の急所を狙うのは無茶なので着弾したのは胸だ。
光の束を躱そうとする。非覚醒時としては最高に近い回避だった。しかし足りない。
3分の1程度しか当たっていないのに、光属性のフードは消し炭となり体の芯まで衝撃が走る。
ハンターが指示を出すまでもなくイコニアが癒しの技を使い、重傷直前かつ気絶寸前のセレナイトが覚醒する。傷は完全に癒されても金ガーゴイルの強烈な破壊力は忘れられそうにない。
「一旦下がって……って狙いは僕かよ!」
2度目の光の束がジョナサン目指して突き進む。ジョナサンは相変わらず剽げたままだ。当たれば激痛に苛まれることが分かっている。最悪の場合一撃で倒れる事も重々承知だ。承知の上で己を保てるほど彼の心は強い。
「やられたー!」
両手をあげて吹き飛ぶ。見栄えは良くても試作品でしかないタイツは一部が破れ、ひらりと待って切れ端が司祭の頭に載った。
「っ」
イコニアは赤い顔でジョナサンを癒す。彼に比べるとまだまだ精進が足りないようだ。
「強いよあの雑魔☆」
ひゃあ、ユノは楽しげに笑いながら極度の集中を経て水球を撃ち出す。
初撃は命中。2発目、3発目が当たって4発目が外れ、5発目が当たると同時に光の束が向かってきた。
「痛」
半瞬に満たない時間意識が途絶えた。頭を振って見下ろすと、前掛け風のまともなデザインだった光属性防具が消し炭に変わっている。
「耐久性低っ」
ユノの加工技術は玄人はだしであり、そのため元タイツの防具は明らかに効果を発揮していた。発揮してこの威力なのだがら元タイツ抜きで戦うのは極めて危険だ。
頑張って雑魔の射程外へ走りセレナイトがいる場所へ後退。セレナイトは雑魔の射程外で弓を放つ。
ハンターが使う弓の有効射程は素晴らしい。前衛に足止めされたガーゴイルに2本目以降の矢が突き立つ。ハンター相手ならとうに決着がついているだろうが相手はヴォイドの一種である。まだまだ倒れる気配はなかった。
「……撃ち抜け」
グライブのデバイスから光が飛ぶ。
雑魔の頭部に直撃。しかし雑魔の体力は豊富で未だに動きにきれがある。
「ヒール残り1回です」
「射程外まで下がれ」
雑魔に視線を向けたまま指示を出す。イコニアは荒い息をつきながら後退。グライブは躱しきれないと判断して即防御姿勢をとる。
「ぬ」
並みの痛みなら無表情で通せる彼がうめいてしまうほどの威力だ。下着では効果は不十分だったようだ。
イコニアのヒールによって回復していく。グライブは礼の言葉を言う時間を惜しみ支援と攻撃を続けていた。
●金ぴか決戦
金色の粉雪が舞う。
その全てが雑魔の表面が砕けたもので、筋や骨にあたる部分は混じっていない。
「ちっ」
雑魔の拳の下をくぐるように回避、そのまま義次が銃口を押し当てた。
「これなら効くだろ」
ショートソードでつけた切り傷へ発砲する。めしりと音がしてガーゴイル型雑魔の腹にひびが入った。
「硬ぇ」
地面を蹴って雑魔から離れる。雑魔の口に光が集まり、義次の肩を掠めて後衛のハンターへ飛んでいく。
雑魔の攻撃は取らない。握り込まれた拳が義次の腹にぶつかる寸前、サントール・アスカ(ka2820)が鮮やかな動きで駆け寄り手首に刃を叩き込んだ。
急所への直撃は避けられた。がは、と苦しげな息は漏れたが重傷ではない。
義次は目だけで礼を言い一旦下がり、アスカが代わりにガーゴイルの至近距離へ踏み込んだ。
「長くは持たない」
弱音ではなく冷静な判断だった。
雑魔の口から広がる光を伏せるようにしてかわす。装備にかすらせすらしない完璧な回避だが、連続して完全回避できるほどの技量差がないことはアスカが一番欲理解していた。
マテリアルで体の動きを効率化しショートソードで斬り込む。
金の粉雪が舞い雑魔の体に小さな傷が刻まれる。
反撃の雑魔の拳をなんとか受けて被害を抑え、倦まずにショートソードで雑魔の腕に切りつけた。
それでアスカを脅威と判断したのだろう。雑魔はハンター後衛から目の前のアスカに狙いを移し光の束を撃ち出した。
光。皮膚が焼かれ筋が熱せられ、しかしタイツによって威力が減じているため骨にダメージはない。
「そろそろ」
光の羽織を揺らして榊 兵庫(ka0010)が仕掛ける。雑魔の死角と判断した方向から、ガーゴイルの意識がアスカ達に意識が向いているタイミングで距離を詰める。
気配に気づいた金色ガーゴイルが振り返る。アスカのショートソードで脇腹を貫通されても止まらず裏拳が兵庫を襲う。
「倒れたらどうだ」
足から適度に力を抜く。ガーゴイルの拳が兵庫の一歩先を虚しく通過する。
兵庫の足、腰、胸、腕、そして薙刀は見事にかみ合った動きで薙刀の先端を雑魔の頭部にめり込ませた。
「次、遠距離が」
兵庫の眉間に皺が寄る。薙刀がガーゴイルの頬から離れ、頬から禍々しい光があふれ出した。
白色スクール水着が水平に跳んだ。光属性タイツを白スクにしか見えない何かに加工しその上から戦闘用装備を身につけたオンサが、赤い日本刀を構えてガーゴイルへ突撃した。
視界が白く染まる。
盾に貼り付けていた元タイツが半秒ももたずに燃え尽きる。洒落にならないダメージを負ってもオンサの動きは止まらず、右頬が避けたガーゴイルの左頬を破壊することに成功した。
「ゲームボスの最終形態かよっ」
光の束より1桁威力が弱いとはいえ決して生ぬるくはない光を突っ切り、斬撃を浴びせる義次。
「ここで決めるぞ。出し惜しみはなし、だ」
被弾を覚悟して薙刀を振り下ろす兵庫。全力で、何度も、徹底してガーゴイルを打つ。肉が砕けて骨が曲がっていく。だが雑魔の生命力にあたるものは豊富にありすぎて削り切れない。
ガーゴイルは深手に混乱し、体を使った受け防御を忘れている。兵庫を含むハンターの猛攻で皮が破れ筋が削れ骨まで見え始め、けれどまだ戦闘力を保ったまま動く。
アスカが極端な猫背の姿勢から急加速。加工しないままタイツは光の霧に触れても形を保っていて、彼の鍛え抜いた体をヴォイドの脅威から守っている。
猛獣よりも獰猛なうなりがアスカの喉から聞こえ、急激に膨張した筋肉がショートソードを加速させた。
ガーゴイルの脇腹に開いた穴から刃を突き入れ、心臓にあたる器官を粉砕する。
断末魔が大気を揺るがす。雑魔の中にあった力が暴走し始める。
が、光が爆発するより後方から飛来した矢と光が命中する方がずっとずっと早かった。
ガーゴイルの頭部が半回転して首が折れる。それがとどめとなり、雑魔の姿が薄れ、地面に倒れる前に消えてしまった。
「助かった」
覚醒を解除し感情が戻って来たセレナイトが弓を構えたまま言う。隣では力尽きて目をまわしているジョナサンがイコニアに介抱されている。
機導術で援護したグライブは気にするなと身振りで応え、いきなり片足をあげる。彼の靴の下を2匹のネコが通り過ぎ、急停止し、全力で飛んで主人の足下へ駆け寄る。その首には万一に備えるため端布で作ったスカーフが巻かれていた。
大きな手でわしゃわしゃと猫を撫でるグライブは、表情があまり変わらないのにとても機嫌良さそうに見えた。
「司祭様ー!」
街の方角から非覚醒状態の魔術師が全力疾走してくる。
イコニアは自分の服装のことを思い出し、顔を白くして兵庫の後ろに隠れた。
「お前か」
兵庫の目には嫌悪も好意もない。
「どんなに性能が良くても、使用する側が納得しない限り使われぬ事も十分にありうる」
兵庫の背後ではイコニアが曖昧な表情だ。個人的には兵庫を全面肯定したくても立場上表に出さないのだろう。
「使用する側の意見もきちんと聞いた上で開発すべきじゃないのか?」
実際に使った結果、その言葉には強い説得力があった。
「好評そうですが」
魔術師が真面目な顔で応えた。
ショックを受けて打ち上げられた魚のように口を開閉するイコニアの視線の先では、アスカがタイツを着たまま警戒と帰還準備を進めていた。
「教会で着替えて返却すればいいのか?」
光タイツを普通の装備と認識しているとしか思えない自然体だ。
「はい。デザインは完璧ですが」
ユノが噴き出し、イコニアが動揺した。
鎧や服の裏地や普通の下着や水着にすることを思いつかず、技術的にはより高度なタイツにしてしまうなんて、方向性と手段を間違えてるタイプにしか見えない。
「頑張れ。タイツという発想がアレだっただけで、発明自体はほんと、凄い事だしな」
セレナイトは勇気づけるようにイコニアの肩をたたき、街に向かって悠然と歩く。続いて去っていくハンターを、魔術師が笑顔で、司祭が半泣きで見送っていた。
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作戦相談用スレッド ジョナサン・キャラウェイ(ka1084) 人間(リアルブルー)|28才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2014/08/08 21:16:21 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/08/04 22:29:43 |