ゲスト
(ka0000)
【深棲】ワレモノにゃんこと街道の旅
マスター:STANZA

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~10人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/08/10 19:00
- 完成日
- 2014/08/21 12:53
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「……ああ、やっぱり……そうですか、わかりましたー」
猫雑貨と花の店フロルの店主、フロル(フロリアス・カヴァーリオ)は、溜息と共に魔法伝話の受話器を置いた。
このところ続いている海の異変のせいで、船の手配が難しくなっている事は知っていた。
だから正直、期待はしていなかったのだ。
期待はしていなかったけれど――
「海路が使える様になるには、どれくらいかかるのでしょうねぇ……」
フロルは手元の黒猫「執事さん」を撫でつつ、壁のカレンダーを見た。
フマーレの商店街で七夕祭りが行われた日の事。
ハンター達の宣伝が功を奏し、祭には遠くの町からも多くの見物人が訪れていた。
スタンプラリーのお陰か、フロルの店も普段の三割増しの売り上げを記録し、日常的に寒い彼の懐も少しは暖まったのだが。
祭の恩恵はそればかりではなかった。
フロルの店を覗きに来た客の中に、多少は名の知れた工芸作家の姿があったのだ。
「なかなか良い店じゃない」
彼女は店内を見渡して言った。
「ねえ、良かったらウチの子も仲間に入れてくれない?」
自分の作品も置いて欲しいというのだ。
彼女の作る猫の置物は可愛いと評判で、勿論フロルもそれを知っていた。
その申し出を一も二もなく受けた事は言うまでもないだろう。
早速いくつかの品を届けて貰う事になったのだが――
彼女の工房はジェオルジの郊外。
そこからフマーレまでは街道も通っているし、普通なら陸路を使う事に問題はない。
だが今回の場合、運ぶのは割れやすい陶器の置物だ。
街道はデコボコ道が多く、盗賊やモンスターに襲われる危険もあるが、そこを守っている筈の陸軍は頼りにならない。
だから、海路の方が安全確実なのだ。
遠回りにはなるが、荷物が壊れてしまっては元も子もないだろう。
仕方がない、大人しく待つしかないか。
「でも、出来る事ならなるべく早く、ここに並べてあげたいですよねぇ」
同意を求める様に、フロルは肩に乗ったふわふわの白猫、メイドさんの頭を撫でる。
よし、決めた。
ハンター達に頼もう。
彼等ならきっと、何があっても無事に届けてくれる。
無事に届けてくれたら、お礼に小さなにゃんこをプレゼントしよう。
「気に入ってくれると良いですねー」
みゃー、白い猫が返事をした。
リプレイ本文
集落の外れにぽつんと建つ小さな工房。
その前に停められた馬車の荷台には、既に荷物が積み込まれていた。
「……大きい馬車だなぁ……」
本体も大きいけれど、車輪も大きい。
その直径はエテ(ka1888)の身長よりも大きかった。
車輪が大きいと、それだけ揺れも吸収し易いという事らしい。
「そういえば箱の中身って何なんだ? ……これは……猫の置物?」
箱を開けてみたリック=ヴァレリー(ka0614)の頬が思わず緩む。
「陶器の猫さん、ですね」
脇からそっと覗き込んだコーネリア・デュラン(ka0504)も、ふわりと微笑む。
「ほう、これはなんとも可愛らしいものじゃな」
シルヴェーヌ=プラン(ka1583)も、思わず目を輝かせていた。
「海の周りだけと思ってたけど、こんなとこにも、えーきょー出てる、です」
八城雪(ka0146)も、実はにゃんこすきー。
表情こそ変わらないが、心は既に可愛いにゃんこ達に鷲掴みされていた。
「女の子って可愛いもの好きだよな」
その様子を見て、リックは自分の帰りを待つ婚約者の顔を思い浮かべる。
「……フフッ、持って帰ったらあいつも喜ぶかな」
無事に届けたら好きなものを持ち帰って良いそうだし――
「これは、頑張らないとな」
彼女へのプレゼントの為に。
そして勿論、待っている人達の為に。
「どんな小さな依頼だろうとこの猫置物を見て笑顔になる人がいるのなら、なんとしても無事に届けて見せるさ」
「無事にお店に並べられるよう、しっかり運ばなければ、です」
コーネリアがこくりと頷く。
「割れ物じゃて、慎重に運ぶ必要があるのぅ」
きっちりと積まれた木箱は崩れる心配はなさそうだが。
「でも念には念をって言うし、もう少し補強した方が良いわね」
わりと低めの声に乗せられたオネェ言葉が響く。
振り向くとそこには、黙っていれば普通に美形のドワーフ青年、日浦・知々田・雄拝(ka2796)の姿があった。
(やだわぁ~こんなに沢山のきゃわうぃうぃ子達と一緒なんてあたしどうしよう!?)
という心の声はひた隠し、雄拝は作業を始めた。
「何も起きないのがいいけど、万が一何かあった時に少し位は耐えれる様にしないとね」
(今のお姉さんっぽかったかしら? やだわー! あたし今凄く輝いてる?)
きゃっ☆
という心の声は以下略で、木箱の下に滑り止めを敷き、更に箱の間には綿を詰めて固定。
外から荷物が見えない様に、かつ突然の雨でも荷物が濡れない様にシートをかければ完璧だ。
その上に、トラ猫とペルシャ猫が身軽に飛び乗り、置き物の様にきちんとお座り。
「うちの子は陶器じゃないけどね」
彼等が座っていられる速度で走れば、荷物が壊れる事もないだろう。
(猫の可愛さにノックアウトかしら?)
という心のk(ry
「準備はいいか、パーティ気分で道中気を緩めたりするなよ?」
伊勢 渚(ka2038)が、一足先に街道へ馬を乗り入れる。
やはり馬に乗ったリックと共に前方の警戒に当たるのが彼の役目だ。
ちょっとした旅気分を味わえる気楽な仕事とは言え、道中では何があるかわからない。
と、言っているそばから居眠りを始めた猛者もいる様だが。
「今回はのんびりだらだらやらせてもらうとしよう」
ヒースクリフ(ka1686)は荷台の空いたスペースにハンカチを敷いて座り込む。
「それじゃ、敵が来たら起こしてくれ……Zzz」
後ろの荷物にもたれかかり、三秒で夢の中。
残る仲間達もそれぞれに気に入った場所を確保すると、馬車はゆっくりと動き出す。
「では、行って参ります」
アリス・ナイトレイ(ka0202)が、見送りに出た工房の主人に小さく手を振った。
「ゆったりのんびり旅になりそうだけど、荷物はしっかり運ばないと」
白金 綾瀬(ka0774)は周りの景色を楽しみながらも、いつでも撃てる様に猟銃を傍に立てかけておく。
「かいどーとーってくんで、そー危険もねーと思うけど、です」
雪も念の為に大斧を手の届く所に。
聞く所によれば陸軍は仕事をしないらしいし、油断は禁物だ。
「にゃんこぱりーんは、阻止、です」
慎重すぎるほどゆっくりと、馬車は街道を進んで行く。
「色んな景色、みられるといいな!」
広がる景色が良く見えそうな荷台の後部に陣取り、エテは柵にもたれかかった。
「どんな所を通るのかな、ずっと良い景色が続くと良いな!」
時折、後ろから来た馬車が猛スピードで追い抜いて行く。
車体が大きく弾んだ拍子に、その荷台から幾つかのイモが転がり落ちた。
「あ、落とし物です……!」
荷台から飛び降りたコーネリアが、それを拾い集める。
しかし顔を上げた時にはもう、落とし主は遥か遠くへ走り去っていた。
「次の宿場でお返し出来るでしょうか?」
「それはまず無理であろうのぅ」
荷台に戻るコーネリアに手を貸しつつ、シルヴェーヌが言った。
「あのスピードでは、わしらが宿に着く頃には二つ三つ先まで行っておることじゃろう」
落とし物は遠慮なく頂いてしまえば良い。
「この先にも、もっと落ちてるかもしれないですね!」
景色だけではなく、地面も見ておいた方が良いだろうかとエテ。
「もしかしたら、拾い物だけで一食分のおかずが出来てしまうかもしれません」
アリスが小さく笑みを漏らした。
そうしてゴトゴト、荷馬車は進む。
単調な揺れが心地よい眠りを誘い――
「いけない、このままだと皆で寝てしまうわ!」
はっと我に返った雄拝は、パンパンと手を叩いて皆の注意を引いた。
「はい注目、ここに取り出したハンカチ一枚、種も仕掛けもないわよ!」
でも、あら不思議。
こうして丸めて、もう一度広げれば――お菓子の包みがポンッと!
「はい、どうぞ♪」
目を丸くして見つめるエテに、雄拝はそれを差し出した。
「今回はよろしくね。良かったら食べる?」
「ぁ、ありがとうございます!」
「まだまだあるわよ、ほら☆」
今度は雪の手に乗せる。
「おまえ、いーヤツだな、です」
食べ物をくれる人は良い人、というのが彼女の持論である様だ。
「ぃ、今のは何じゃ! 何がどうなっておる!」
魔法か、魔法なのか。
シルヴェーヌは目を輝かせる。
「そんな魔法、わしは知らぬぞ!」
「魔法とは違うわね。もう一回やって見せましょうか?」
雄拝は色々な場所からお菓子を取り出しては皆に配っていった。
(こうして然りげ無く気遣えるあたしの女子力!)
そのうちに初対面から来る緊張もほぐれ、荷台の上はすっかり賑やかな女子会の雰囲気に。
中心になって話を回しているのは雄拝だが、女子力の高さに物理的な性別は関係ないのだ、多分。
「たまには、こーゆー仕事も、悪くねー、です」
会話の勢いに少し圧倒されながらも、雪がまんざらでもない様子で頷いた。
そんな中でも任務第一と、綾瀬は真面目に周囲を見張っていた。
(あんまり喋るのも得意じゃないし……)
話しかけられても気の利いた答えを返せる自信はない。
が、かといって話に興味がない訳ではなかった。
目は前に、耳は後ろに。
だって気になるじゃない。
「楽しそうで何よりだな」
後ろを振り向いた渚は、すっかりピクニック気分ではしゃいでいる女性達の姿に目を細めた。
「混ざりたい?」
しかし隣で馬を進めるリックの問いには肩を竦める。
「いや、遠慮しておこう」
あそこに首を突っ込んだら、恐らく無事では済むまい。
狼の群れに投げ込まれた子羊の様な目に遭うと、何処かで聞いた気もするし。
約一名、一緒になってきゃっきゃしている男性の姿も見えるが、あれはきっと例外に違いない。
「ところで、もう少しペース上げた方が良くないか?」
手元の地図を見ながら、リックが少し心配そうに言った。
「このままだと宿場に着く前に陽が暮れそうだ」
とは言え、速度を上げれば荷物が心配だ。
「オレは野宿でも構わないが」
ここは、お嬢さんがたに訊いてみるのが良いだろうか。
しかし答えは聞くまでもなかった。
にゃんこぱりーんは阻止、それ以外の選択肢など有り得ない。
というわけで。
日暮れ前に適当な場所を見付けた一行は、その場で野宿する事になった。
まずは火を熾し、食事の支度にかかる。
食事係を買って出た雄拝は、道に転がっていた各種の「落とし物」を有難く頂戴してスープや炒め物を手早く作り上げた。
「お口に合うと良いのだけれど」
と言いつつ実は腕に自信アリ。
(なんて女子力の高いあたし! これで胃袋も鷲掴みね!)
というk(ry
「案外こういうのは、野盗どもの方が面倒な動きをしてくるからのぅ……」
食後、最初の見張りに立ったのはシルヴェーヌとコーネリアの二人だ。
まだ夜も早いし、仲間達も周囲で雑談などを楽しんでいる。
見張りと言っても、そう緊張を強いられるものではなかった。
「それは何と言う歌じゃ?」
小声で歌を口ずさむコーネリアに、シルヴェーヌが訊ねる。
「故郷の森で、よく皆が歌っていたものです」
作者も題名もわからない、伝承歌のひとつだ。
「ふむ、わしの故郷にも似た様な歌があった気がするのぅ」
エルフの社会は意外な所で繋がっているのかもしれない。
お喋りをしながら、シルヴェーヌは馬車で習った手品を繰り返し練習しているが――本物の魔術とは違って、なかなか上手くいかない様だ。
次はアリスとエテの番だ。
「綺麗な星空ですね」
「ほんと、素敵です!」
二人は並んで空を見上げる。
勿論ちゃんと警戒もしながら、ね。
「エテさんは星がお好きなんですか?」
「綺麗なものは何でも好き!」
絵を描く事と、歌う事も。
「アリスさんは何が好きですか?」
「私は――」
交代の時間が来てもすぐには眠らず、二人は首が痛くなるまで星空を眺めていた。
そしてエテは星に願う。
「……良い旅になることを」
続いて見張りに立った雪と綾瀬の番が終わると、時刻はもう真夜中に近かった。
「私はこのまま残って見張りを続けるわ」
綾瀬が申し出る。
だが、ヒースクリフがそれを止めた。
「俺は昼間たっぷり寝かせて貰ったんでね」
あの騒がしさの中でもぐっすり眠れるとは大したものだ。
「夜が明けるまでは見ててやるよ、だりぃけどな」
だが流石に一人での見張りは危険だと、残る男性三人が一人ずつ相棒を務める事になった。
見張りの成果か、或いは星に願いが通じたのか。
無事に朝を迎えた一行は、きちんと火の始末をしてから再び街道に出た。
「今日はきちんとペース配分を考えて行こうぜ」
先頭を馬で行くリックは手元の地図でルートを確認、初日に走った距離を元に次の宿を決める。
今日はずっと平坦な道が続く様だ。
馬車の面々は昨日喋り過ぎたのか、それとも野宿の疲れか、今日はだいぶ静かだった。
「しかし……ここは見晴らしが良いのぅ!」
風に吹かれながら、シルヴェーヌがのんびりと呟く。
「故郷が山間部だったゆえ、ちと懐かしいのじゃ!」
行く手には低い山々が横たわっていた。
「明日あたり、あの山を越える事になるのでしょうか」
アリスが目を懲らすが、今から心配しても仕方がないと、今は景色を楽しむ事に決めた。
エテは移りゆく景色をスケッチし、コーネリアは思い付いた歌を即興で口ずさむ。
「ぁ、向こうに雲……」
筆を止めたエテが行く手の空を見上げた。
「悪天候になりそうな場合は、少しお馬さんに急いでいただかないと、です」
だが荷物は防水シートをかけてある。
自分達が濡れる事さえ厭わなければ、急ぐ必要もないだろう。
幸いな事に、雨雲は追っては来なかった。
早めに宿に入った一行はそこで荷物を降ろし、それぞれに明日からの山越えに備える。
雄拝は食料(主にお菓子)を調達し、見張りの必要がないヒースクリフはひたずら寝溜め、リックは荷物の番、雪は宿の主人に次の町までの距離や途中の休憩場所、それに観光名所などを訊き――
「途中にすげー滝とか、あるらしー、です」
「それは楽しみだ」
渚は地元の名物だという川魚のゼリー寄せを酒で流し込みつつ頷いた。
この口に残る何とも言えない魚臭さは、後で煙草に消して貰おう……
「が、崖、崖、隣が崖……!」
荷台の上で身を縮めたエテが呪文の様に唱える。
翌日の出発早々、一行は険しい崖道に差し掛かっていた。
右も左も隣は崖。
と言っても道幅は広く、転落の心配はなさそうだが、コーネリアは念の為に馬車を降りて補助に付いた。
車輪が道を外れない様に、崖っぷちを歩く。
「落石とか、当たったら洒落なんねー、です」
やはり馬車を降りて警戒に当たる雪が、崖の上に注意を向けた。
「敵にも注意ですね」
怪しいものはいないかと、アリスがじっと目を懲らす。
「こんな所で襲われたら危ないなんてものではありません」
と、その時。
「おい、あそこ見ろよ、何か見えないか?」
渚が行く手を指差す。
近付いてみると、それは轟々と音を立てて流れる大きな滝だった。
「これが例の名物か」
だが、道はそこで途切れている様に見えた。
「道を間違えた訳じゃないよな?」
リックが問う。
が、間違いではなかった。
道は何と、滝の裏側を通っていたのだ。
防水シートを確認し、馬車はそろそろと水飛沫の中に入っていく。
濡れて滑りやすくなった道ではシルヴェーヌも馬車を降りて、揺れやスリップを出来るだけ抑えようと誘導を試みた。
馬も人も、立ち上る霧にしっとりと濡れる。
「これはこれでいいものだな……」
裏側からの景色を眺めながら、渚が満足げに頷いた。
最初の難関は無事にクリア、しかしその先には木々が鬱蒼と茂る深い森が待ち構えていた。
「す、すごい獣道……」
草むらの中に轍の跡だけが残る様な道に、エテは思わずぽかんと口を開ける。
「これ……街、道……?」
蒼の世界には酷道というものがあるそうだが、するとこれは怪道とでも呼ぶべきか。
そして大方の予想通り、そこにはゴブリンの集団が隠れていた。
警戒し、目を光らせていた彼等は素早く反応、戦闘態勢に入る。
「第一に荷馬車に近づかせない事が重要、ですよね?」
「ああ、馬を脅かしたくはないからな」
エテの言葉にリックが頷き、馬車の陰に寄せて馬を下りた。
そこから踏み込んで、近寄って来た敵を追い払う様にエストックの突きを繰り出す。
「作家さんが心を籠めて作った陶器の猫ちゃん達を、それを運んでくれるお馬さんを、傷つける訳にはいきませんので!」
エテは遠い間合いからマジックアローを遠慮なく。
「オレと出会った事を後悔させてやるぜ」
渚は馬に乗ったまま、その機動力を生かしてゴブリン達を歌散らしていった。
「ゴブリンね。はぁ……余り戦闘とか好きじゃないのよね」
と言いつつ、雄拝は剣を振るう。
(ここで蝶の様に舞うあたしにきゃわうぃうぃ子達はきっと骨抜きね!)
調子に乗る連中にはオシオキだ。
「おい……てめぇらあんま調子に乗って狩り尽くすぞ? ゴラァ」
野太い声で言い放ち、避ける隙も与えずに斬る。
「馬車には手出しさせません」
コーネリアは馬車に近い相手から斬り付け、こっそり近付くものには一気に間合いを詰めて進路を塞ぎつつ、フェイントを織り交ぜながら迎撃。
シルヴェーヌはファイアアローの全力アタックを足元へ。
それでビビって逃げ出せば良し、さもなくば――
「次は、手が滑ってそちらの顔に当てるかもしれんのぅ?」
掌の上で炎が怪しく揺れる。
一匹が逃げ出すと、近くにいたものも一緒に逃げて行った。
「そうそう、それで良いのじゃ」
だが全てが思い通りという訳にはいかなかった。
「リーダーが逃げれば全員が後に続くと思うのですが」
アリスが見る限り、統率する個体がいる様には思えなかった。
ならば近付くものから各個撃破と、ファイアアローを放つ。
友の想いを乗せた炎は、いつもより激しく燃え上がった。
「ふつーなら、構ってやっても、いーけど、今は、にゃんこ優先、です」
雪はグレートアックスぶん回して威嚇していたが、逃げないと見て本気モードに切り替える。
「狙い撃つわ」
綾瀬は手近な敵に狙いを定め猟銃の引き金を引いた。
その一撃で小さな身体が吹っ飛んだのは、縁を結んだ誰かが力を貸してくれた為だろう。
「だりぃ……」
ゆらりと立ち上がったヒースクリフはしかし、いざ戦いが始まると別人の様に活き活きと魔導ドリルで敵の身体を抉り始める。
が、全て片付いたと見るやすぐさま馬車に戻って――
「Zzz……」
その後の旅は順調に進み、4日目の夕方に馬車は無事フロルの店に辿り着いた。
「お澄ましした、美人さん、です」
すらっとした黒にゃんこを掌に乗せ、雪はご満悦。
家の猫達も気に入ってくれるだろう。
アリスは丸くなった黒猫を、コーネリアは靴下猫、シルヴェーヌはふにゅあ~と寝そべった緩い表情の子猫を。
「これを書庫に飾れば……、きっと親友のあやつも喜びそうじゃ」
皆それぞれに好きな子を貰い、渚はただ帰るのも勿体ないと店の奥で一休み。
「これでも動物は好きなんでな、犬猫どっちも甲乙つけがたいが……」
生憎、店には白黒にゃんこしかいないけれど。
そして皆が帰った後。
綾瀬はこっそり猫雑貨を買い漁っていた。
「だって一匹じゃ可哀想じゃない」
皆には内緒だよ?
お土産を貰ったハンター達の口コミ効果か、猫達は瞬く間に売り切れ、数日後には再び、新たな運搬依頼がオフィスに届けられたという――
その前に停められた馬車の荷台には、既に荷物が積み込まれていた。
「……大きい馬車だなぁ……」
本体も大きいけれど、車輪も大きい。
その直径はエテ(ka1888)の身長よりも大きかった。
車輪が大きいと、それだけ揺れも吸収し易いという事らしい。
「そういえば箱の中身って何なんだ? ……これは……猫の置物?」
箱を開けてみたリック=ヴァレリー(ka0614)の頬が思わず緩む。
「陶器の猫さん、ですね」
脇からそっと覗き込んだコーネリア・デュラン(ka0504)も、ふわりと微笑む。
「ほう、これはなんとも可愛らしいものじゃな」
シルヴェーヌ=プラン(ka1583)も、思わず目を輝かせていた。
「海の周りだけと思ってたけど、こんなとこにも、えーきょー出てる、です」
八城雪(ka0146)も、実はにゃんこすきー。
表情こそ変わらないが、心は既に可愛いにゃんこ達に鷲掴みされていた。
「女の子って可愛いもの好きだよな」
その様子を見て、リックは自分の帰りを待つ婚約者の顔を思い浮かべる。
「……フフッ、持って帰ったらあいつも喜ぶかな」
無事に届けたら好きなものを持ち帰って良いそうだし――
「これは、頑張らないとな」
彼女へのプレゼントの為に。
そして勿論、待っている人達の為に。
「どんな小さな依頼だろうとこの猫置物を見て笑顔になる人がいるのなら、なんとしても無事に届けて見せるさ」
「無事にお店に並べられるよう、しっかり運ばなければ、です」
コーネリアがこくりと頷く。
「割れ物じゃて、慎重に運ぶ必要があるのぅ」
きっちりと積まれた木箱は崩れる心配はなさそうだが。
「でも念には念をって言うし、もう少し補強した方が良いわね」
わりと低めの声に乗せられたオネェ言葉が響く。
振り向くとそこには、黙っていれば普通に美形のドワーフ青年、日浦・知々田・雄拝(ka2796)の姿があった。
(やだわぁ~こんなに沢山のきゃわうぃうぃ子達と一緒なんてあたしどうしよう!?)
という心の声はひた隠し、雄拝は作業を始めた。
「何も起きないのがいいけど、万が一何かあった時に少し位は耐えれる様にしないとね」
(今のお姉さんっぽかったかしら? やだわー! あたし今凄く輝いてる?)
きゃっ☆
という心の声は以下略で、木箱の下に滑り止めを敷き、更に箱の間には綿を詰めて固定。
外から荷物が見えない様に、かつ突然の雨でも荷物が濡れない様にシートをかければ完璧だ。
その上に、トラ猫とペルシャ猫が身軽に飛び乗り、置き物の様にきちんとお座り。
「うちの子は陶器じゃないけどね」
彼等が座っていられる速度で走れば、荷物が壊れる事もないだろう。
(猫の可愛さにノックアウトかしら?)
という心のk(ry
「準備はいいか、パーティ気分で道中気を緩めたりするなよ?」
伊勢 渚(ka2038)が、一足先に街道へ馬を乗り入れる。
やはり馬に乗ったリックと共に前方の警戒に当たるのが彼の役目だ。
ちょっとした旅気分を味わえる気楽な仕事とは言え、道中では何があるかわからない。
と、言っているそばから居眠りを始めた猛者もいる様だが。
「今回はのんびりだらだらやらせてもらうとしよう」
ヒースクリフ(ka1686)は荷台の空いたスペースにハンカチを敷いて座り込む。
「それじゃ、敵が来たら起こしてくれ……Zzz」
後ろの荷物にもたれかかり、三秒で夢の中。
残る仲間達もそれぞれに気に入った場所を確保すると、馬車はゆっくりと動き出す。
「では、行って参ります」
アリス・ナイトレイ(ka0202)が、見送りに出た工房の主人に小さく手を振った。
「ゆったりのんびり旅になりそうだけど、荷物はしっかり運ばないと」
白金 綾瀬(ka0774)は周りの景色を楽しみながらも、いつでも撃てる様に猟銃を傍に立てかけておく。
「かいどーとーってくんで、そー危険もねーと思うけど、です」
雪も念の為に大斧を手の届く所に。
聞く所によれば陸軍は仕事をしないらしいし、油断は禁物だ。
「にゃんこぱりーんは、阻止、です」
慎重すぎるほどゆっくりと、馬車は街道を進んで行く。
「色んな景色、みられるといいな!」
広がる景色が良く見えそうな荷台の後部に陣取り、エテは柵にもたれかかった。
「どんな所を通るのかな、ずっと良い景色が続くと良いな!」
時折、後ろから来た馬車が猛スピードで追い抜いて行く。
車体が大きく弾んだ拍子に、その荷台から幾つかのイモが転がり落ちた。
「あ、落とし物です……!」
荷台から飛び降りたコーネリアが、それを拾い集める。
しかし顔を上げた時にはもう、落とし主は遥か遠くへ走り去っていた。
「次の宿場でお返し出来るでしょうか?」
「それはまず無理であろうのぅ」
荷台に戻るコーネリアに手を貸しつつ、シルヴェーヌが言った。
「あのスピードでは、わしらが宿に着く頃には二つ三つ先まで行っておることじゃろう」
落とし物は遠慮なく頂いてしまえば良い。
「この先にも、もっと落ちてるかもしれないですね!」
景色だけではなく、地面も見ておいた方が良いだろうかとエテ。
「もしかしたら、拾い物だけで一食分のおかずが出来てしまうかもしれません」
アリスが小さく笑みを漏らした。
そうしてゴトゴト、荷馬車は進む。
単調な揺れが心地よい眠りを誘い――
「いけない、このままだと皆で寝てしまうわ!」
はっと我に返った雄拝は、パンパンと手を叩いて皆の注意を引いた。
「はい注目、ここに取り出したハンカチ一枚、種も仕掛けもないわよ!」
でも、あら不思議。
こうして丸めて、もう一度広げれば――お菓子の包みがポンッと!
「はい、どうぞ♪」
目を丸くして見つめるエテに、雄拝はそれを差し出した。
「今回はよろしくね。良かったら食べる?」
「ぁ、ありがとうございます!」
「まだまだあるわよ、ほら☆」
今度は雪の手に乗せる。
「おまえ、いーヤツだな、です」
食べ物をくれる人は良い人、というのが彼女の持論である様だ。
「ぃ、今のは何じゃ! 何がどうなっておる!」
魔法か、魔法なのか。
シルヴェーヌは目を輝かせる。
「そんな魔法、わしは知らぬぞ!」
「魔法とは違うわね。もう一回やって見せましょうか?」
雄拝は色々な場所からお菓子を取り出しては皆に配っていった。
(こうして然りげ無く気遣えるあたしの女子力!)
そのうちに初対面から来る緊張もほぐれ、荷台の上はすっかり賑やかな女子会の雰囲気に。
中心になって話を回しているのは雄拝だが、女子力の高さに物理的な性別は関係ないのだ、多分。
「たまには、こーゆー仕事も、悪くねー、です」
会話の勢いに少し圧倒されながらも、雪がまんざらでもない様子で頷いた。
そんな中でも任務第一と、綾瀬は真面目に周囲を見張っていた。
(あんまり喋るのも得意じゃないし……)
話しかけられても気の利いた答えを返せる自信はない。
が、かといって話に興味がない訳ではなかった。
目は前に、耳は後ろに。
だって気になるじゃない。
「楽しそうで何よりだな」
後ろを振り向いた渚は、すっかりピクニック気分ではしゃいでいる女性達の姿に目を細めた。
「混ざりたい?」
しかし隣で馬を進めるリックの問いには肩を竦める。
「いや、遠慮しておこう」
あそこに首を突っ込んだら、恐らく無事では済むまい。
狼の群れに投げ込まれた子羊の様な目に遭うと、何処かで聞いた気もするし。
約一名、一緒になってきゃっきゃしている男性の姿も見えるが、あれはきっと例外に違いない。
「ところで、もう少しペース上げた方が良くないか?」
手元の地図を見ながら、リックが少し心配そうに言った。
「このままだと宿場に着く前に陽が暮れそうだ」
とは言え、速度を上げれば荷物が心配だ。
「オレは野宿でも構わないが」
ここは、お嬢さんがたに訊いてみるのが良いだろうか。
しかし答えは聞くまでもなかった。
にゃんこぱりーんは阻止、それ以外の選択肢など有り得ない。
というわけで。
日暮れ前に適当な場所を見付けた一行は、その場で野宿する事になった。
まずは火を熾し、食事の支度にかかる。
食事係を買って出た雄拝は、道に転がっていた各種の「落とし物」を有難く頂戴してスープや炒め物を手早く作り上げた。
「お口に合うと良いのだけれど」
と言いつつ実は腕に自信アリ。
(なんて女子力の高いあたし! これで胃袋も鷲掴みね!)
というk(ry
「案外こういうのは、野盗どもの方が面倒な動きをしてくるからのぅ……」
食後、最初の見張りに立ったのはシルヴェーヌとコーネリアの二人だ。
まだ夜も早いし、仲間達も周囲で雑談などを楽しんでいる。
見張りと言っても、そう緊張を強いられるものではなかった。
「それは何と言う歌じゃ?」
小声で歌を口ずさむコーネリアに、シルヴェーヌが訊ねる。
「故郷の森で、よく皆が歌っていたものです」
作者も題名もわからない、伝承歌のひとつだ。
「ふむ、わしの故郷にも似た様な歌があった気がするのぅ」
エルフの社会は意外な所で繋がっているのかもしれない。
お喋りをしながら、シルヴェーヌは馬車で習った手品を繰り返し練習しているが――本物の魔術とは違って、なかなか上手くいかない様だ。
次はアリスとエテの番だ。
「綺麗な星空ですね」
「ほんと、素敵です!」
二人は並んで空を見上げる。
勿論ちゃんと警戒もしながら、ね。
「エテさんは星がお好きなんですか?」
「綺麗なものは何でも好き!」
絵を描く事と、歌う事も。
「アリスさんは何が好きですか?」
「私は――」
交代の時間が来てもすぐには眠らず、二人は首が痛くなるまで星空を眺めていた。
そしてエテは星に願う。
「……良い旅になることを」
続いて見張りに立った雪と綾瀬の番が終わると、時刻はもう真夜中に近かった。
「私はこのまま残って見張りを続けるわ」
綾瀬が申し出る。
だが、ヒースクリフがそれを止めた。
「俺は昼間たっぷり寝かせて貰ったんでね」
あの騒がしさの中でもぐっすり眠れるとは大したものだ。
「夜が明けるまでは見ててやるよ、だりぃけどな」
だが流石に一人での見張りは危険だと、残る男性三人が一人ずつ相棒を務める事になった。
見張りの成果か、或いは星に願いが通じたのか。
無事に朝を迎えた一行は、きちんと火の始末をしてから再び街道に出た。
「今日はきちんとペース配分を考えて行こうぜ」
先頭を馬で行くリックは手元の地図でルートを確認、初日に走った距離を元に次の宿を決める。
今日はずっと平坦な道が続く様だ。
馬車の面々は昨日喋り過ぎたのか、それとも野宿の疲れか、今日はだいぶ静かだった。
「しかし……ここは見晴らしが良いのぅ!」
風に吹かれながら、シルヴェーヌがのんびりと呟く。
「故郷が山間部だったゆえ、ちと懐かしいのじゃ!」
行く手には低い山々が横たわっていた。
「明日あたり、あの山を越える事になるのでしょうか」
アリスが目を懲らすが、今から心配しても仕方がないと、今は景色を楽しむ事に決めた。
エテは移りゆく景色をスケッチし、コーネリアは思い付いた歌を即興で口ずさむ。
「ぁ、向こうに雲……」
筆を止めたエテが行く手の空を見上げた。
「悪天候になりそうな場合は、少しお馬さんに急いでいただかないと、です」
だが荷物は防水シートをかけてある。
自分達が濡れる事さえ厭わなければ、急ぐ必要もないだろう。
幸いな事に、雨雲は追っては来なかった。
早めに宿に入った一行はそこで荷物を降ろし、それぞれに明日からの山越えに備える。
雄拝は食料(主にお菓子)を調達し、見張りの必要がないヒースクリフはひたずら寝溜め、リックは荷物の番、雪は宿の主人に次の町までの距離や途中の休憩場所、それに観光名所などを訊き――
「途中にすげー滝とか、あるらしー、です」
「それは楽しみだ」
渚は地元の名物だという川魚のゼリー寄せを酒で流し込みつつ頷いた。
この口に残る何とも言えない魚臭さは、後で煙草に消して貰おう……
「が、崖、崖、隣が崖……!」
荷台の上で身を縮めたエテが呪文の様に唱える。
翌日の出発早々、一行は険しい崖道に差し掛かっていた。
右も左も隣は崖。
と言っても道幅は広く、転落の心配はなさそうだが、コーネリアは念の為に馬車を降りて補助に付いた。
車輪が道を外れない様に、崖っぷちを歩く。
「落石とか、当たったら洒落なんねー、です」
やはり馬車を降りて警戒に当たる雪が、崖の上に注意を向けた。
「敵にも注意ですね」
怪しいものはいないかと、アリスがじっと目を懲らす。
「こんな所で襲われたら危ないなんてものではありません」
と、その時。
「おい、あそこ見ろよ、何か見えないか?」
渚が行く手を指差す。
近付いてみると、それは轟々と音を立てて流れる大きな滝だった。
「これが例の名物か」
だが、道はそこで途切れている様に見えた。
「道を間違えた訳じゃないよな?」
リックが問う。
が、間違いではなかった。
道は何と、滝の裏側を通っていたのだ。
防水シートを確認し、馬車はそろそろと水飛沫の中に入っていく。
濡れて滑りやすくなった道ではシルヴェーヌも馬車を降りて、揺れやスリップを出来るだけ抑えようと誘導を試みた。
馬も人も、立ち上る霧にしっとりと濡れる。
「これはこれでいいものだな……」
裏側からの景色を眺めながら、渚が満足げに頷いた。
最初の難関は無事にクリア、しかしその先には木々が鬱蒼と茂る深い森が待ち構えていた。
「す、すごい獣道……」
草むらの中に轍の跡だけが残る様な道に、エテは思わずぽかんと口を開ける。
「これ……街、道……?」
蒼の世界には酷道というものがあるそうだが、するとこれは怪道とでも呼ぶべきか。
そして大方の予想通り、そこにはゴブリンの集団が隠れていた。
警戒し、目を光らせていた彼等は素早く反応、戦闘態勢に入る。
「第一に荷馬車に近づかせない事が重要、ですよね?」
「ああ、馬を脅かしたくはないからな」
エテの言葉にリックが頷き、馬車の陰に寄せて馬を下りた。
そこから踏み込んで、近寄って来た敵を追い払う様にエストックの突きを繰り出す。
「作家さんが心を籠めて作った陶器の猫ちゃん達を、それを運んでくれるお馬さんを、傷つける訳にはいきませんので!」
エテは遠い間合いからマジックアローを遠慮なく。
「オレと出会った事を後悔させてやるぜ」
渚は馬に乗ったまま、その機動力を生かしてゴブリン達を歌散らしていった。
「ゴブリンね。はぁ……余り戦闘とか好きじゃないのよね」
と言いつつ、雄拝は剣を振るう。
(ここで蝶の様に舞うあたしにきゃわうぃうぃ子達はきっと骨抜きね!)
調子に乗る連中にはオシオキだ。
「おい……てめぇらあんま調子に乗って狩り尽くすぞ? ゴラァ」
野太い声で言い放ち、避ける隙も与えずに斬る。
「馬車には手出しさせません」
コーネリアは馬車に近い相手から斬り付け、こっそり近付くものには一気に間合いを詰めて進路を塞ぎつつ、フェイントを織り交ぜながら迎撃。
シルヴェーヌはファイアアローの全力アタックを足元へ。
それでビビって逃げ出せば良し、さもなくば――
「次は、手が滑ってそちらの顔に当てるかもしれんのぅ?」
掌の上で炎が怪しく揺れる。
一匹が逃げ出すと、近くにいたものも一緒に逃げて行った。
「そうそう、それで良いのじゃ」
だが全てが思い通りという訳にはいかなかった。
「リーダーが逃げれば全員が後に続くと思うのですが」
アリスが見る限り、統率する個体がいる様には思えなかった。
ならば近付くものから各個撃破と、ファイアアローを放つ。
友の想いを乗せた炎は、いつもより激しく燃え上がった。
「ふつーなら、構ってやっても、いーけど、今は、にゃんこ優先、です」
雪はグレートアックスぶん回して威嚇していたが、逃げないと見て本気モードに切り替える。
「狙い撃つわ」
綾瀬は手近な敵に狙いを定め猟銃の引き金を引いた。
その一撃で小さな身体が吹っ飛んだのは、縁を結んだ誰かが力を貸してくれた為だろう。
「だりぃ……」
ゆらりと立ち上がったヒースクリフはしかし、いざ戦いが始まると別人の様に活き活きと魔導ドリルで敵の身体を抉り始める。
が、全て片付いたと見るやすぐさま馬車に戻って――
「Zzz……」
その後の旅は順調に進み、4日目の夕方に馬車は無事フロルの店に辿り着いた。
「お澄ましした、美人さん、です」
すらっとした黒にゃんこを掌に乗せ、雪はご満悦。
家の猫達も気に入ってくれるだろう。
アリスは丸くなった黒猫を、コーネリアは靴下猫、シルヴェーヌはふにゅあ~と寝そべった緩い表情の子猫を。
「これを書庫に飾れば……、きっと親友のあやつも喜びそうじゃ」
皆それぞれに好きな子を貰い、渚はただ帰るのも勿体ないと店の奥で一休み。
「これでも動物は好きなんでな、犬猫どっちも甲乙つけがたいが……」
生憎、店には白黒にゃんこしかいないけれど。
そして皆が帰った後。
綾瀬はこっそり猫雑貨を買い漁っていた。
「だって一匹じゃ可哀想じゃない」
皆には内緒だよ?
お土産を貰ったハンター達の口コミ効果か、猫達は瞬く間に売り切れ、数日後には再び、新たな運搬依頼がオフィスに届けられたという――
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
---|
面白かった! | 10人 |
---|
ポイントがありませんので、拍手できません
現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!
MVP一覧
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
相談卓 シルヴェーヌ=プラン(ka1583) 人間(クリムゾンウェスト)|15才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2014/08/10 12:56:54 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/08/07 19:29:18 |