大きな少女、旅に出る

マスター:春野紅葉

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/12/27 22:00
完成日
2016/01/06 04:58

みんなの思い出

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オープニング

●出立
 少女は考えた。それはもう、うんと考えた。村の中で過ごしてきた13年と少し。覚えている5年間を振り返ってみると、自分はどれだけ世間知らずだったのか。
 ハンターの人達に救われてから、ずっと考えていた。
「お母さん……私、旅に出るよ」
 日が昇り、母の仕事がひと段落した頃合いを見計らって、ユリヤはそう告げた。
「何を言っているの?」
「私、分かったんだ。私は何も知らないんだって」
 実を言うと、一月前、肝試しであの剣を取ろうとしたことを怒られるなんて思ってなかった。泥棒と言われることが驚きだった。
 この村の中ではそういうことを教えてくれる人がいない。命を大事にしろとは教えられるし、命を粗末にする行為をしたら怒られるし、折檻もされる。でも取ってきたことを怒られたりはしなかった。
「ハンターさん達は、私に盗むのはいけないことだって言ってた。ああいうことを盗みだって、村では教えてくれなかった」
 外に仕事に出ている父はきっと頭ごなしに否定するだろうけれど、もう決めていた。元々、ユリヤはいつか外に出たかった。それがちょっと早くなっただけ。
「今まで育ててくれて、ありがとう。お母さん。大好きでした」
 言うや、ユリヤは立ち上がって自分の部屋へと戻った。部屋に置いてある旅のためにまとめた荷物と、最後に叔父が来た時にくれた剣を握る。
 10歳の誕生日にくれたその剣は、あの頃は両手で持たなくてはならなかったのに、今ではとても短く感じられる。
「よし、準備完了……お父さんとお母さんへのお手紙も書いたし、お母さんにも言った……。頑張ろう」
 ぽつりと呟いて、ユリヤは再び部屋を出た。母の姿は見えない。外に出ている父に言いに行っているのだろうか。
 急がなくてはならない。父はきっと、ユリヤを連れ戻してユリヤが初めて旅に出た時のように、ユリヤのことを叱りつけるだろう。もうあの思いはいやだった。
 走り出す。ちらほらと見える人影や、気配から逃れるようにしながら、ユリヤはひたすら村の外へと向かっていった。

●暗躍
 村の中央に位置する村長の家である。中には平伏する男女一組と、それを底冷えのする冷徹なまなこで見下す老人がいた。暖炉の火の揺らめきが、その冷徹さをより一層、おぞましいものに見せる。
「あの小娘、本当に出ていきおったか……もったいない事をしたもんじゃ」
「申し訳ございません!」
 そう言って村長に土下座しているのはユリヤの父である。恐怖だろうか、身体を震わせながら、上ずった声だ。
「あの歳の小娘じゃ。どうせすぐ戻って来るか、さもなければさっさと死ぬじゃろうし……追手は必要なかろうて」
「良いのか? 村長さんよ」
 不意に声がして、影からすっと人が現れた。びくつくユリヤの父を余所に、男らしき影は村長の方へと歩みを進める。
「……村の秘密さえ洩らさなんだら、あの小娘ぐらい放っておいても良かろう。子供ならまだおるしの?」
「そうかい。なら今回は俺のお役目はないってことだな?」
 やれやれと言わんばかりに首をすくめた男は、その場から立ち去ろうとした。
「しかし、そうじゃの。外に見て来てくれんか? あの小娘が死ぬならいい。死なずに外に行くのも良い。じゃが、ハンターを連れてこられるのは遠慮したいからの」
「ハンターと一緒にこっちに来るとなったら?」
「いつも通り、やってくれればええぞい」
「そうかい……おれも恐ろしいところに雇われたもんだ」
 そう言うや否や、男の気配は忽然と消えた。
「ほら、さっさと仕事に戻らんか。死にとうなかろう?」
 未だ平伏するユリヤの父にそう言葉を投げて、老人は部屋の奥へと消えて行った。話はもう終わりという事だろうか。老人の姿が完全に消えた後、ユリヤの父は安堵のため息を漏らし、自らも邸宅を後にする。

●そして
 騒々しさに辟易しながら、数人のハンター達がハンターズソサリティの受付に集まっていた。
「いつもありがとうございます。本日皆さんにお願いしますのは、コボルドの討伐です。街道にて餌を欲して現れては商団を襲っているらしいのです。幸い、今のところは護衛のハンターで切り抜けているようですが……」
 そこまで言うと受付嬢が地図を広げる。両脇を森に囲まれた街道のようだ。道幅は広く、戦闘に不自由することはないだろう。
「これ以上放置しておりますと、実害が出てもおかしくありません。出るかどうかは分かりませんが、周辺を巡回して頂ければと思います。この街道の奥には村があるのですが、まだいかないようお願いします。調査を続けておりますので」
 そう言って地図の南東に当たる部分にある村らしき目印を指でなぞる。
「あの、その村は何をしている疑惑があるのですか?」
 ハンターの一人が問いかける。
「詳しいことは分かりません。ですが、あまり良くないモノを祀っている可能性があるのです」
 何も秘密にすることがないのか、受付嬢はそう告げた。
「良くないモノ、ですか」
 不明瞭な返答に、ハンターの一人はそう呟いた。受付嬢はそれ以上言うつもりがないのか、ただ頷くばかりである。
「いってらっしゃいませ。ご武運を」
 話を切って礼をした受付嬢に話を続けようとしたハンターは後ろからの視線を感じて渋々その場を後にしていく。

リプレイ本文

●邂逅
 森を挟んで畦道の街道を進む6人の影があった。
 その中の数人は、街道の向こうにある村に赴いたことがあった。あいにくと、その村には行くことは禁止されているものの、桃色の髪をした少女、アシェ-ル(ka2983)は村で出会った少女の事を思い出していた。また会ってみたいなと、微かに笑む。
「ユリヤちゃん……また探検だなんだと村の外まで出歩いていないといいのですが…」
 火艶 静 (ka5731)は艶やかな風貌を悩ましくゆがめる。村であったユリヤという少女のことを思い出して、少し感傷のようなものを覚えつつ。しかし、2人とも本来の目的であるコボルド退治に意識をうつしていく。
「さっさとコボルドやっつけてお金もらおー」
 濃紺の短髪の間、額から覗く削れた一本角が特徴的な青年、墨城 緋景(ka5753)は楽しそうな笑みを絶やさず、軽い調子で語る。
 街道を進みながら、アティニュス(ka4735)は鋭敏感覚で高めた聴覚を駆使して街道の両脇にある森からの物音を感じ取ろうとし、小紅(ka5734)は地面に残っているかもしれない足跡を探しながら、気配を感じ取ろうとしながら進む。他の面々も同じようにしてコボルドの痕跡を探しながら巡回を進めていく。

 探索を始めてからどれくらい経っただろうか。ふいに、街道右手の森林からかさりと音が鳴る。コボルドかと警戒しながら、アティニュスが木の幹にめがけて小筒「鳴鵺」を放つ。
「きゃあ!?」
 独特な音を立てて放たれたそれが幹に突き立った直後、そんな声が響いた。かわいらしい、まだ若い声色だった。
 転げるようにして草陰から現れたのは、1人の少女。赤毛を揺らす少女を見て、数人が声を上げた。少女の方も尻餅をつきながら6人を認め、数人を見て目を輝かせ、同時に安堵するように表情をほころばせる。
「久しぶりーって家出? それとも何か取ってこいって言われた?」
 微笑を浮かべたまま、まず緋景が語り掛け、少女に近づいて手を差し伸べる。少女はその手を取ると、手を引かれて立ち上がった。立ち上がってみると、少女が女性としてはかなり高い部類に入る身長であることが分かる。
「これから……コボルドの退治に行くのですけど……こんなところでどうなされたのですか?」
 不思議そうに問い掛けたライラ = リューンベリ(ka5507)に対して、少女は少しだけ戸惑ったように表情を曇らせる。
「私……ハンターになりたくて、でも。あの村で私、自分がおかしいって気づかされて」
 事情を知らないライラが不思議そうにしていると、アシェ-ルが少女に近寄っていく。
「ユリヤちゃん、久しぶりだね!」
「はい、お久しぶりです。アシェ-ルさん。皆さんはハンターさん、ですよね? あの、でしたら、お願いします。私にいろいろ教えてください。邪魔にならない様にします。戦闘になったら下がりますから」
 懇願する少女、ユリヤに対して、アティニュスは少し困ったような顔をしながらも、溜め息を吐いた。
「であったものは仕方ありませんし、詳しい話は後にしましょう」
 アティニュスの提案に特に不満はないのか、他の6人は同意し、アシェ-ルは嬉しそうにしつつも、お姉さんらしいところを見せようと気合を入れて顔を引き締めなおす。
 その姿を見た他の全員が少し優しげな表情を見せながらも、後衛であるアシェ-ルがユリヤを護るのに適していることもあって、ユリヤはアシェ-ルの隣で緊張したような表情を浮かべながらも6人に遅れないように歩き出す。

●犬群来たり
 コボルドの気配を探して探索を続けて更に幾らか時間が過ぎ、この辺りにはいないのかと諦めかけた時だった。
 再び、森の方から物音がする。アティニュスが再び鳴鵺で矢を放つと、それを合図にしたかのように両脇からコボルドが次々と姿を現わした。ざっと見て、15匹といったところか。
「アシェ-ル君、頼んだよ!」
 緋景がアシェ-ルとユリヤの近くに陣取り、カードバインダーを構え、その少し前でライラが構えた。覚醒したアティニュスの肌が浅黒く、髪が白く染まっていく。小紅、静とそれぞれ武器を構えた頃、遠吠えが響く。それを合図に、両陣営が一気に走り出した。
 まず到達したのはアティニュスだった。電気の爆ぜる音が鳴り、周囲のコボルドを斬り裂く。痛みに鳴くコボルドの声と、僅かに舞った返り血が浅黒い肌を濡らす。
 その近くでは、小紅が拳や足を交えながら、コボルド達を叩きのめしていく。2人が取りこぼす形となったコボルドは、静による素早く踏み出した一閃に裂かれていく。
「ユリヤちゃん、ハンターになるという事は、誰かの命を守るために誰かの命を奪う……そういう仕事もあるのですよ」
 そう、戦闘前にユリヤに語った静の刃は、覚悟を決めた真っ直ぐな物だった。
 前衛であるアティニュスと小紅は、何匹かのコボルドによって背後を取られかけることもあった。しかし、そうやって背後を取ったコボルドに待ち受けていたのは、後衛から飛んできた手裏剣や、蝶にも似た光の弾による攻撃だった。
 コボルドのうち、更に何匹かは中衛すらも越えてユリヤとアシェ-ルのいる場所へと到達しかねない距離にまで近づいて行く。それに対して、放たれたのは炎の槍だった。本来の赤い色とは異なる、可愛らしいという印象も受ける、アシェ-ルの髪と同じ桃色。燃え盛る炎の槍は、炎の光跡を残しながら、着実にコボルドを焼いた。

●戦いは終わらず
 数の多さもあって、疲労と僅かな傷を残しながらもハンター達はコボルドをたしかに倒していく。逃亡しようとした何匹かを、次が無いようにと緋景の放った符が倒し、戦闘は沈静化していく。全てを倒し終えてコボルドの遺骸を街道の端へと退け、戦闘は一段落しようとしていた。
 ユリヤが終わりかとアシェ-ルに問い掛けた時だった。
「誰か来るようだ」
 鋭敏感覚で取りこぼしを探そうとしていたアティニュスが街道の右の森、ユリヤが来たのと同じ方向に視線を向けた。
 木の上から飛ぶようにして出てきたのは、一人の男だった。軽薄な面はとても信頼できるようには思えない。
「どなたですか? 私たちはコボルドを退治しに来たんですけど」
「コボルド退治、ね。じゃあ、その嬢ちゃんはこっちに渡してくれねーか? 村のモンなんでね」
「ねーユリヤ、あの人友達? お父さんじゃないよね、ストーカーとか?」
 緋景は以前に村に訪れた時、見た覚えのない男を警戒しつつ、男を煽るようにユリヤに問い掛けた。対して、ユリヤは露骨に青ざめながら顔を振って否定の意を表した。
「やれやれ……煽るねぇ。しかし、渡してくれないなら……しゃーねーか」
 おもむろに拳銃を取り出した男は、何の躊躇もなく、ユリヤの額めがけて弾丸を放つ。ライラが咄嗟に動き、ユリヤを抱えるようにして横へ跳んだ。
 小紅とアティニュスが速やかに距離を詰め、先に小紅の腕が相手の動きを崩そうとするも、男はギリギリで耐える。その直後、凄まじい速度で稲妻の爆ぜる音を伴った一閃が、男を裂いた。
「うおう!? ……こりゃあ、失敗したかもしれねーな」
 呟きつつ後退した男は、どうやら後ろ腰に収めていたらしいナイフも取り出した。
「こっちも高い金がかかってるんでね、嬢ちゃんの命、頂かねぇとな」
 言うや否や、男は再びユリヤに向けて弾丸を放つ。しかし、そのまえにアシェ-ルによって掛けられたストーンアーマーが弾丸を打ち消していく。
 仕返しとばかりに飛んできた符が着弾するとともに爆発し、手裏剣が男の掌に突き立つ。痛みに唸る男の前に、凄まじい速度で接近した静の剣が舞う。肩口をすっぱりと裂かれ、後退すべく足を動かしたところで、小紅が再び動いた。
「うおっ!?」
 防ぐ機を逃し、男の身体が地面にしたたかに打ち付けられた。
「失敗したねこりゃ……コボルド倒した直後だからいけると思ったんだがね」
 縄で縛られながら、男は諦めたのか、油断を誘おうというのか、そんなことを口走り、溜め息を吐いた。
「いきなり攻撃してきて何が目的なんですか?」
「あの秘密主義な村長の指示?」
 ライラの問い掛けに続くようにして、少しだけ不快そうに緋景が言う。その双眸はいつもの笑みとは異なり、開かれていた。
「目的? そんなのさっきも言っただろ。嬢ちゃんの命さ。そっちのあんちゃんが言うとおり、村長の指示だよ。……ったく、損な仕事を引き受けたな、こりゃ」
 いつの間にかアシェ-ルに護られるようにして男を囲むように立つハンターから遠ざけられ、静によって視界からも隠されたユリヤの方を見て、まるで後悔や反省を見せることなく男が笑う。
「仮にも請け負った仕事なのに、軽く口を割るのですね」
 いつの間にか覚醒を解いたアティニュスが続くと、男はからりと笑い、肩をすくめた。
「命あっての依頼ってもんだ。どうせ退いたら殺されちまうからな。殺されるよか、このままリゼリオまで連れてかれた方がマシってもんだ」
 自分が持っている情報は、ハンター達にとっては有益だと理解しているのだろう。男は不敵に笑みを漏らす。
「まぁ、あんたらが何をするにせよ、あの村にはおれ以外にも2人ぐらいは覚醒者が雇われてたはずだぜ。金さえ貰えれば何でもするやつらさ。さぁ、おれをどうする?」
「ギルドに連れて行こう。ボク達だけじゃ流石に難しいかもしれない」
 事前の打ち合わせ通りではあるものの、緋景が言うと、他の3人が同意する。
「そりゃありがたい。ここで殺されるのは勘弁願いたかったからな」
 ケタケタとどこまでもおちょくっているように男は笑っていた。

 一方、男への尋問が繰り広げられていた頃、アシェ-ルはユリヤの知識を男から背けるためにも彼女に語り掛けていた。
「ユリヤちゃんが楽しめるか分からないけど……」
 そう言って、話したのは今迄に行ったことのある依頼の中から思いついた幾つかのお話だった。
「ユリヤちゃんとは少し違うけど……幽霊屋敷に忍びこんだ子供を助けに行ったら、でっかい蜘蛛の雑魔がいて! あっ、雑魔っていうのは、ユリヤちゃんが洞窟であったスケルトンみたいなものの事で」
 身振り手振りを駆使しながらその時の光景を説明するアシェ-ルに、ユリヤは目を輝かせながら聞き入っている。時折、首を傾げて不思議そうにするのは、聞いたことがない事なのだろうか。
「私は魔術師のはしくれなんだから、大活躍ですよ!」
 少し見栄を張ってみたり。ユリヤは素直にそれを聞いて益々目を輝かせていた。
「あと、王国の貴族令嬢と一緒にお祭りに参加して踊ったり、東方の偉い人と知り合ったり!」
 大興奮のアシェ-ルの話を聞いて、ユリヤは夢中でその話に聞き入っていた。そうやって話していると、不意に、アシェ-ルは我に返った。
「話してばっかりでごめんなさい。でも、ユリヤちゃん。それだけ私にとって、外の世界って新鮮なんです」
 昔の事を思い出して、少し俯いたアシェ-ルにユリヤは不思議そうに見つめて来る。
「……私、実は、つい最近まで、ずっと、引き籠っていたから……」
「そうなんですか……私も、村の外にでれたことなかったから。これからアシェ-ルみたいに、色々と経験したいです」
 ユリヤは期待と羨望と、それから少しの恐怖を滲ませながら笑った。ユリヤにとって、叔父が来なくなってからの3年間は少なくとも引き籠っていたような物だった。村の外には出ていたし、遊ぶ人もいたし、両親もいた。けれどどうしようもなく、あの村の景色は叔父から聞いていた外に比べたら、何処までも褪せていた。
 暗くなりかけた空気だったが、男への尋問が終わったらしい他のメンバーから、声を掛けられて、振り返る。
「ユリヤちゃんも一緒にギルドに来てくれるかしら? あの男の言う話だと、1人にさせられないわ」
 小紅が言うと、ユリヤはゆっくりと頬をほころばせて笑い、嬉しそうに返事を返す。そうして、アシェ-ルのほうへと振り返った。
「私、やっぱりハンターになりたいです」
 満面の笑顔で、ユリヤはアシェ-ルへ手を伸ばした。

●終わりは始まり
 男を連れてギルドに帰りながら、ハンター達はユリヤからの質問攻めを喰らっていた。
 仕事の話や、普段どんなことをしているのかなどなど、子供のように問いかけ続けるユリヤに、小紅は優しく答えていく。
 ライラも問われるままに自身の経験を語って聞かせる。
「私はその村での常識を知らないので、分かりませんが……私はお屋敷でお嬢様にお仕えしてる時が一番楽しいですね」
「お屋敷……聞いた話ではすごくたくさん部屋が有ってお庭も広いって」
 ユリヤの村では屋敷と言えるほど大きな建物などないため、召使を抱えるほどの家などなかった。眼を輝かせてライラを見る様子は、まるで小動物のようだ。
 屋敷で有った出来事を、当たり障りのないように話すと、ユリヤは半ば夢物語でも聞いているかのような表情を浮かべる。
「怖いものは無いかな。でもボクら(鬼)を歪虚と一緒にされるのは少し嫌って位。ユリヤもボクの角、怖い?」
 緋景が問い掛けると、ユリヤはきょとんとした。
「特にそのような事は……だって、皆さんもですけど、緋景さんは私を助けてくれましたから!」
 英雄でも見てるかのように、ユリヤは目を輝かせる。
 そうやって、道すがらの暇つぶしを兼ねた語り合いも終盤になった頃、どこか意を決したようにして、ユリヤは問いかけた。それは自分がなりたい理由が、弱く感じられてしまうからか。
「どうして、ハンターになろうと思われたのですか?」
「大義名分ってこと? ボクはお金が欲しくてハンターになったから特にないかな」
 いつも通り楽しげに笑いながら緋景が言うと、ユリヤが驚いたように目を見開いた。
「そんな感じでもいいんですか」
 いいんじゃない?と、緋景が返すと、ユリヤは不思議そうにしながら、呆然としていた。そして、何か納得したように頷くと、開き直ったのかどこか晴れ晴れとした表情を見せた。

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重体一覧

参加者一覧

  • 東方帝の正室
    アシェ-ル(ka2983
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • 世界に示す名
    アティニュス(ka4735
    人間(蒼)|16才|女性|舞刀士
  • 【魔装】猫香の侍女
    ライラ = リューンベリ(ka5507
    人間(紅)|15才|女性|疾影士
  • 森の主を討ち果たせし者
    火艶 静 (ka5731
    人間(紅)|35才|女性|舞刀士

  • 小紅(ka5734
    人間(紅)|20才|男性|格闘士
  • 凶悪カエル討伐隊
    墨城 緋景(ka5753
    鬼|20才|男性|符術師

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依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/12/24 05:03:05
アイコン 少女のために
墨城 緋景(ka5753
鬼|20才|男性|符術師(カードマスター)
最終発言
2015/12/27 21:43:38