ゲスト
(ka0000)
ダンプアウト・ピーピングトム
マスター:えーてる

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/08/10 22:00
- 完成日
- 2014/08/13 22:49
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
夏といえば海である。海といえば水着だ。
ギラついた日差しに肌を焼かれながら、透き通った美しい海で泳ぎ、騒ぐ。
アウトドアな娯楽の中でも、一二を争う人気レジャーである。
「んーっ! やっぱり海はさいっこーね!」
この日、とあるハンターの女性は友人と共にとある有名な海水浴場へとやってきていた。有名と言ってもそれはリアルブルーの文化を取り入れているという口コミであって、所詮は地域的なものだけれど。
澄み渡る青い海と珊瑚。宝石のような海の輝き。そして小麦色に焼けたイケメン男子。乙女にとってはまさしく絶景であり、ここは彼女にとって天国であった。
「早く行きましょ! せっかく来たんだし遊び倒すわよ! 男と!」
「あ、ちょっと! 抜け駆けする気ー!?」
「フハハハ! 世は並べて早い者勝ちよ!」
飢えた獣、失礼、夢見る乙女であるところの彼女は、誰より早くあの絶景に混じるため、水着に着替えて楽しい男狩り、失礼、水遊びに励むべく更衣室へと走った。
「ふふふ……夏といえば海、海といえばロマンス、つまりひと夏の甘い恋よ! いやひと夏で済ますものですか!」
皮算用は狩人もとい乙女の必須スキルである(と彼女は思っている)。たとえ取らぬ狸であったとしてもだ。取った後の行動を最適化するために。つまりスムーズにお付き合いからテイクアウトへ繋ぐためにだ。
「思い出すのよ私……この日のために重ねてきた地獄の日々を……! 減量、節食、貯金……! 暑い中を走りこんだり涙を呑んでお菓子を断念したあの日々を!」
わりと大したことなさそうだが、自称乙女的にはとても辛かったらしい。彼女は唸りながら服を脱ぎ、アクセサリーを外す。彼女の言う努力の結晶である、艶めかしくくびれた腰つきが露わになる。曲線は女性を美しく見せるのだ。
「思い出すのよ! なんか気が付いたら彼女ができてたあいつらを! 思わず大口を叩いちゃったことを! もう戻れないのよ、男なしでは!」
燃える情熱を瞳に宿し、不退転の決意と共に、自業自得の背水の陣を敷き、彼女は戦装束に身を包む。大枚叩いて買ったリアルブルーの勝負水着だ。下品にならないギリギリまで攻め込んだ黒いホルターネックのビキニ。
磨きあげた体に布の鎧を身につけながら、彼女は決意する。今日、必ず男を捕まえる。この布に隠す素肌は、その男にだけ見せるのだ。
全ては甘い恋と薔薇色の明日のために。
「よし……行くわよ! イケメン! デート! 結婚! オーッ!」
この世で最も欲に塗れた掛け声と共に、彼女は天上を仰ぎ拳を突き上げた。
それでようやく気づくことが出来た。
「私は行き遅れなんかじゃないのよ! それを証明して……やる……」
更衣室の隅、天井に開いた小さな穴。
そこから彼女を見下ろす、ニヤついた視線に――。
「――ッ!!!?」
直後、真夏のビーチに悲鳴と怒声が響いた。
「今回の依頼は、覗き魔の捕縛となります」
結い上げた髪の麗しい眼鏡の受付嬢は、そう切り出した。
「とある海水浴場にて、覗きの被害が頻発しています。先日、ハンターの女性が被害に遭い、捕縛を試みたところ逃走されたとのことです」
依頼者はそのハンターの女性と浴場管理者の二人ですね、と受付嬢は補足する。尚、被害者の女性は泣き寝入りしているらしい。
彼女は眼鏡を押し上げて、海水浴場周辺の地図を提示した。
「被害箇所は更衣室に集中しているようですが、侵入経路や時刻は不明です。天井裏、床下、窓の外から被害報告に上がっています。ここ最近は毎日のように現れているため、客足も遠退きつつあるとのことです」
彼女は目撃証言から起こされた似顔絵を差し出した。ひょろ長いおっさんであった。
付け足された報告書をみつ限り、警備員も何度か逮捕に向かったようだが、何れも失敗している。どうやら逃げ足だけは一般人を凌駕しているようだ。覚醒者ではないとのことだが。
「注意点として、相手にこちらの意図を察知されては意味がありません。依頼内容は覗き魔の捕縛ですので、なるべく一般人を装っての行動を推奨します」
警備員が夜明けから張り込んだり、厳重に警備した日には現れなかったようだ。残念なことに、件の海水浴場にはそれを続けるだけの人員も金銭もなかった。
目撃証言を聞く限りでは武装は特に無いようだから、少なくとも命の危険はないと彼女は言う。その後の処理は地元の警察機構が行うから、警備員に引き渡せばいいそうだ。
「浴場の管理者様から、退治に成功した場合は無料で浴場施設を使用して良いとの許可を得ています。ご友人と海水浴を満喫するのもよいでしょう。依頼の説明は以上です」
無表情で有名な受付嬢の彼女は、逆立った柳眉を隠すようにして眼鏡のフレームを押し上げた。
「一人の女性としましても、許しがたい行いです。早急な事件解決を望みます」
ギラついた日差しに肌を焼かれながら、透き通った美しい海で泳ぎ、騒ぐ。
アウトドアな娯楽の中でも、一二を争う人気レジャーである。
「んーっ! やっぱり海はさいっこーね!」
この日、とあるハンターの女性は友人と共にとある有名な海水浴場へとやってきていた。有名と言ってもそれはリアルブルーの文化を取り入れているという口コミであって、所詮は地域的なものだけれど。
澄み渡る青い海と珊瑚。宝石のような海の輝き。そして小麦色に焼けたイケメン男子。乙女にとってはまさしく絶景であり、ここは彼女にとって天国であった。
「早く行きましょ! せっかく来たんだし遊び倒すわよ! 男と!」
「あ、ちょっと! 抜け駆けする気ー!?」
「フハハハ! 世は並べて早い者勝ちよ!」
飢えた獣、失礼、夢見る乙女であるところの彼女は、誰より早くあの絶景に混じるため、水着に着替えて楽しい男狩り、失礼、水遊びに励むべく更衣室へと走った。
「ふふふ……夏といえば海、海といえばロマンス、つまりひと夏の甘い恋よ! いやひと夏で済ますものですか!」
皮算用は狩人もとい乙女の必須スキルである(と彼女は思っている)。たとえ取らぬ狸であったとしてもだ。取った後の行動を最適化するために。つまりスムーズにお付き合いからテイクアウトへ繋ぐためにだ。
「思い出すのよ私……この日のために重ねてきた地獄の日々を……! 減量、節食、貯金……! 暑い中を走りこんだり涙を呑んでお菓子を断念したあの日々を!」
わりと大したことなさそうだが、自称乙女的にはとても辛かったらしい。彼女は唸りながら服を脱ぎ、アクセサリーを外す。彼女の言う努力の結晶である、艶めかしくくびれた腰つきが露わになる。曲線は女性を美しく見せるのだ。
「思い出すのよ! なんか気が付いたら彼女ができてたあいつらを! 思わず大口を叩いちゃったことを! もう戻れないのよ、男なしでは!」
燃える情熱を瞳に宿し、不退転の決意と共に、自業自得の背水の陣を敷き、彼女は戦装束に身を包む。大枚叩いて買ったリアルブルーの勝負水着だ。下品にならないギリギリまで攻め込んだ黒いホルターネックのビキニ。
磨きあげた体に布の鎧を身につけながら、彼女は決意する。今日、必ず男を捕まえる。この布に隠す素肌は、その男にだけ見せるのだ。
全ては甘い恋と薔薇色の明日のために。
「よし……行くわよ! イケメン! デート! 結婚! オーッ!」
この世で最も欲に塗れた掛け声と共に、彼女は天上を仰ぎ拳を突き上げた。
それでようやく気づくことが出来た。
「私は行き遅れなんかじゃないのよ! それを証明して……やる……」
更衣室の隅、天井に開いた小さな穴。
そこから彼女を見下ろす、ニヤついた視線に――。
「――ッ!!!?」
直後、真夏のビーチに悲鳴と怒声が響いた。
「今回の依頼は、覗き魔の捕縛となります」
結い上げた髪の麗しい眼鏡の受付嬢は、そう切り出した。
「とある海水浴場にて、覗きの被害が頻発しています。先日、ハンターの女性が被害に遭い、捕縛を試みたところ逃走されたとのことです」
依頼者はそのハンターの女性と浴場管理者の二人ですね、と受付嬢は補足する。尚、被害者の女性は泣き寝入りしているらしい。
彼女は眼鏡を押し上げて、海水浴場周辺の地図を提示した。
「被害箇所は更衣室に集中しているようですが、侵入経路や時刻は不明です。天井裏、床下、窓の外から被害報告に上がっています。ここ最近は毎日のように現れているため、客足も遠退きつつあるとのことです」
彼女は目撃証言から起こされた似顔絵を差し出した。ひょろ長いおっさんであった。
付け足された報告書をみつ限り、警備員も何度か逮捕に向かったようだが、何れも失敗している。どうやら逃げ足だけは一般人を凌駕しているようだ。覚醒者ではないとのことだが。
「注意点として、相手にこちらの意図を察知されては意味がありません。依頼内容は覗き魔の捕縛ですので、なるべく一般人を装っての行動を推奨します」
警備員が夜明けから張り込んだり、厳重に警備した日には現れなかったようだ。残念なことに、件の海水浴場にはそれを続けるだけの人員も金銭もなかった。
目撃証言を聞く限りでは武装は特に無いようだから、少なくとも命の危険はないと彼女は言う。その後の処理は地元の警察機構が行うから、警備員に引き渡せばいいそうだ。
「浴場の管理者様から、退治に成功した場合は無料で浴場施設を使用して良いとの許可を得ています。ご友人と海水浴を満喫するのもよいでしょう。依頼の説明は以上です」
無表情で有名な受付嬢の彼女は、逆立った柳眉を隠すようにして眼鏡のフレームを押し上げた。
「一人の女性としましても、許しがたい行いです。早急な事件解決を望みます」
リプレイ本文
●
海である。
真夏の日差しがギラギラと照りつける。輝く海が、砂浜の照り返しが、一行の目と肌をじりじり焼いた。
温暖で美しい海に珊瑚礁。広い砂浜。これだけ美しいリゾートビーチだから、人も多い。九十から百はいるだろう。が、砂浜の広さ故にかどこか閑散とした印象も受けた。
「しかし、犯罪者として捕まるかもしれないのに見たいものですかね、女性の裸。お金を稼いで、好きなだけ見れるお店にでも行った方がまだ良いと思いますが」
エルバッハ・リオン(ka2434)のごもっともな呟きに、メープル・マラカイト(ka0347)は少し考えて答えた。
「お金を払いたくなかったんじゃないですか?」
どこかズレた解答に、彼女はなるほどと頷いた。
バレル・ブラウリィ(ka1228)はかけたサングラスを片手で押さえた。
「アホな依頼だ……でも契約しちまったからなぁ……」
一応はプロであり、一応はビジネスだ。やらざるを得ない。
一方時音 ざくろ(ka1250)は憤慨していた。
「事故でもないのに女の人の着替えを覗くなんて、男として許しておけないもん!」
バレルはその言葉に違和感を覚えて視線を向けた。
「はわわ、じっ、事故ならいいって言ってる訳じゃ」
突然赤くなるざくろから視線を切った。バレルは白いワンピースにリボン付きの帽子を乗せた彼が「男として」と言うのに違和感を覚えただけである。
「覗きは何処の世界でもいるもんだね……やれやれ」
「不意打ちとはいえ、ハンターの女性から一般人が逃げきるとは、油断出来ない足の速さだね」
Charlotte・V・K(ka0468)の言葉に、如月 紅葉(ka2360)は頷いた。
シャルロッテは考える。件のハンターの女性は羞恥に蹲りでもしたのだろうか。考えるが、何れにしろ。
「まぁ、これだけのハンターが揃っていれば問題はないだろう」
と結論づけた。
「海は久しぶりじゃのぅ~?」
そう呟いてから、星輝 Amhran(ka0724)は嫌な過去を思い出して身震いした。
「カイスイヨク? 私、初めて……」
一方、妹のUisca Amhran(ka0754)は初めての海に目を輝かせていた。
「でも楽しい海岸に覗き魔がいるなんて……全力で退治します!」
ウィスカの意気込みに、めいめいが反応を返した。作戦開始である。
●
「イヒヒッ」
男はとても興奮していた。先日の逃走劇以降かなり客入りが悪く、ここもそろそろ潮時かと思っていた矢先の彼女たちだ。
今しがた更衣室に向かった集団は非常に外見レベルが高い。リアルブルーの言い回しでめちゃシコである。自分が七人いないことを悔やむほどだ。
この中から選り好みしなければならない苦しみ……幸せな苦しみに、男は悶えた。
悶えつつも、彼は自称プロとして即座に行動を開始した。
「見つからぬの……」
星輝はぐるりと更衣室付近を巡ってみたが、覗き穴に類するものは見当たらなかった。マスタードでも塗りこんでやろうと思ってマスタード大盛りのフランクフルトを買ってきたのだが。
連れてきた犬も屋根上まで登らせるのは無理だったので、窓下に配置した。彼女はフランクフルトをぱくつくと、一行と合流した。
「今日は晴れて良かったよ。何があったか知らないけど人も少ないし、沢山泳げそうだね」
和服を着崩して肩まで露出した紅葉。その後ろを、ざくろがおどおどとついていく。彼女、いや彼も囮役である。女子更衣室が個室でなければ不可能だったろう。
(はっ、恥ずかしいけど…ちゃんと女の子に見えてるかな?)
「似合ってるよ、そんなに顔を赤くしなさんな」
帽子のつばを押さえながらうろたえるざくろに、紅葉はくすりと笑いかけた。照れ屋な女の子と言えば誰もが納得するだろう。
「ゴムボート、楽しみです!」
「そうですね、珊瑚礁などもあるようですし。泳ぐのも気持ちいいですよ」
「わぁ、楽しみ!」
うきうきとしたウィスカと外見相応の演技する星輝を連れて、メープルも更衣室へ消えていった。
「……さて」
バレルはそれを見送ると、更衣室の周囲をそれとなくうろつき始めた。露天や海の家をひやかしながら、更衣室へ急行できるように位置取りをする。
ぶっちゃけ暇だが、すぐに本番が始まることを考えれば、あまり気を抜いてはいられなかった。
それとなく買ったラムネが妙においしく、それを片手に女性陣を待つことにした。
●
さて。
作戦上最も重要な部分、更衣室での着替えである。
まずは色っぽい若女将こと紅葉の様子を見てみよう。
紅葉はちらりと視線を天井に向け、壁に向けた。別段不審な点は見当たらない。通路から足と顔が見える程度のサイズの押し開きのドア。荷物置きと衣類を入れる籠と小さな窓だ。
彼女は隠すべき部分を入念に隠した。裏には既に水着を着ているけれど、それでもだ。
するりと帯を解き、着物の前をゆっくりと開く。ブラジャーを外すと、彼女はわざとらしくドアにそれを掛けた。皺にならぬように着物を畳み、荷物にしまい、体にぴったりフィットする黒地のビキニを外気に晒した。
気配なし。安堵する所か否か測りかねたが、ともあれ彼女は出撃準備完了である。
隣のシャルロッテの様子はどうだろうか。
「……まぁ、男らしいとか、性格は男とか、散々な事を言われはしてきたが……」
一応などというけれど、彼女も十分女性的だ。大きな胸と、背中から尻にかけての美しい曲線。それを黒いチューブトップのビキニで飾るのだから、男の目を集めること必至である。
こぼれんばかりの胸元を両手でぐいっと布地に収めて、腰紐をしっかりと結び、布をくいっと広げて尻を包む。フォックススタイル(つるの付け根が釣り上がった形)のサングラスをかけて、完成だ。それらしき気配がないことを確認して、シャルロッテはバックパックを背負い直した。
さて、問題のざくろである。彼女、失礼、彼が女子更衣室にいるのはかなり危ない橋だが、見た目的にはむしろ男子更衣室の方が危ないので、多分セーフだ。
警戒は怠らぬものの、なるべく気づかないふりをしてざくろは服を脱ぎだした。
果たして彼が男性であると人は気づくだろうか? 艶やかな長い黒髪。肌も白くすべすべである。胸や腰や骨盤はよく見れば男っぽいが、有り余る女性らしさがそれを覆い隠していた。
女装用に持ってきたワンピース水着を着用し、お尻の辺りを少し直して、ざくろは一息ついた。どうやら覗かれなかったらしい。思わずほっと息をついた。
「キララちゃん、この布切れ邪魔……。とっていい?」
などと爆弾発言をしたのはウィスカである。
「ダメに決まっと……決まってるよ、イスカ!」
つい素が出かけて星輝は慌てて言い直した。窘められて渋々ウィスカは水着を着用する。エルフは自然志向なので肌の露出は気にしないのだと彼女は言うが、非常に怪しい情報だった。
リアルブルーのエルフ像に合った細身の体を包むのは、オレンジと赤のボーダーが健康的なビキニだ。ウィスカはしきりに水着を弄っているが、姉の言い分には従った。繊細な指先が腰紐をつまみ、胸元をなぞり、肩紐を引いたりと落ち着かない。
一方、姉の星輝はワンピースタイプのものを着用した。かなり背の低い彼女が着ると、最早子供にしか見えない。彼女も外では外見相応のキャラを作って遊ぶようだし、その方が都合はいいのだが。未成熟な胸の膨らみや腰つきが、健康的なワンピース水着に包まれて可愛らしい。
二人の所に覗き魔は現れなかった。
リオンは全裸であった。意識的に全裸でいるようにしていた。
忘れ物をしたふりをして、屈んで荷物をあさっている。覗きなどをやるくらいだ、裸でいれば反応があったり凝視して動かなかったりするだろうと考えたからである。彼女も裸を見られることに特に羞恥はないようだった。ウィスカの言説が真実味を帯び始めている。
小柄で背も低い子供の体だが、リオンは胸だけはかなり発育していた。彼女はそれに自覚的であった。悪女か。
荷物を漁る間にそれとなく天井や窓や床などを見回すが、ついぞ覗き魔は現れなかった。
リオンは演技をやめ、ビキニを着て外へ出た。
メープルは一番端の更衣室に入った。直感で、端に現れるような気がしたのだ。
敵が出たら声を上げて味方に連絡。とこの後のことを思い返しながら、彼女も服を脱ぎ捨てた。
細身だが背は高く、出るところの出た体だ。リアルブルーで言うところのモデル系である。ビキニの後ろ紐を心なしかしっかりと結ぶ。ふわりとした髪が肩紐に挟まったのを、彼女は両手で払いのけて、ふと上を向いた。
目が合った。
「え」
「イヒッ」
ある程度覚悟はしていたが、予想以上に男はキモかった。粘着くようないやらしい視線が、バレたのにも関わらず彼女の胸や足や背中を往復していた。
流石の彼女も悲鳴を上げた。
●
わりと切羽詰まった合図に、即座に反応したのは紅葉だった。
「さあ……覗きはここまでだね。狩りの時間だよ……!」
ドアを蹴破る勢いで開けて彼女は飛び出した。引っ掛けていたブラはちゃんと回収した。
「狩るのは私達で狩られるのは貴様だ……!」
ロープを手に獰猛に笑う彼女の気迫に、流石の変態も逃走し始める。
屋根のすぐ下、排気口と思しき部分がパカっと外れて、そこからシャカシャカとキモい動きで男が這い出てくる。
「ワオンッ!」
そこめがけて番犬よろしく何かが吠えた。窓近くに待機していた、星輝の柴太(柴犬)とプー太郎(プードル)だ。
「ヒイッ!」
変態はビビってさっさか撤退を始めるが、そこに立ちはだかる男が一人。
「悪いが、こっちは通行止めだ」
待機していたバレルである。覗き魔は即座に踵を返し、バレルも走りだした。
「下僕共よ、狩りの時間じゃあ!」
遅れて囮組が飛び出してくる。星輝の号令で、犬たちが更に行く手を塞いだ。覗き魔は海の方へと走らざるを得なくなる。
作戦はこうだ。泳げないらしい情報を元に、全員で囲んで海へ追い詰める。
ハンターも驚きの速度で逃げ出す覗き魔を、メープルも全力疾走で追いかけた。
「水着で全力疾走なんて初めてしましたけど……ビキニだと予想以上に揺れて走りにくいです……」
彼女に限らず出るとこ出ている組はとても揺れていた。浜辺の男たちの視線を鷲掴みである。
「は、恥ずかしいですね……」
メープル女史は恥ずかしい思いをさせられっぱなしであった。
追いついたざくろが回りこんで行く手を塞ぐ。八方塞がりの形となった。
「ん? 逃げんのか?」
にやっと笑いながら星輝がにじり寄る。決死の形相で走りだした先ではウィスカが待ち構え、光源の魔法で目眩ましをした。自分も相当眩しいが効果はあった。果敢にも飛びかかったパルムはあっさり避けられたが。
「でかした!」
目が眩んだ一瞬でバレルが転ばせ、シャルロッテが関節を極めて締めあげた。あっさり捕縛完了である。
男は背中に当たる胸の感触に興奮していた。
「……こいつ、喜んでねぇか」
「これは気持ち悪いですね……」
侮蔑の眼差しが突き刺さる。
「さて」
ロープで縛られ這いつくばる男に、迫るお仕置きの影。
「罪を償って心を入れ替えると誓うか、それともこの場で男性として再起不能になるか。どちらがいいですか?」
「見られる苦しみを貴様にも味わってもらおうか……」
リオンが何かを握りつぶすジェスチャーをし、紅葉がポキポキと指を鳴らし、星輝が屈みこんで愉悦の笑みを浮かべ――。
身柄を引取りに着た警備員は、「この者覗き犯につきお仕置き中」「私が覗き魔です」などという札を掛けられ、木に吊るされる無残な男を目にしたという。
●
そして、ようやくのバカンスタイムだ。
「わーい、海だよーっ」
メープルのゴムボートに乗り込み、ウィスカは海へ出ていた。色とりどりの海の魚を前に、彼女は目を輝かせていた。
ゴムボートに繋がれた浮き輪の上で、星輝はジュースを片手に空を眺めている。
「ぷはーっ」
「姉さま、こっちこっち!」
とウィスカが示す先では、メープルとシャルロッテがシュノーケリングをしていた。
海中からでも外の景色がくっきりと見える。わずかに和らいだ太陽にメープルは目を細めた。
ふとシャルロッテに肩を叩かれ、メープルが視線を巡らせると、そこでは魚の一群がヴェールのように連なって泳いでいた。
「わぁ……」
思わず声が漏れる。こぽっ、と泡がこぼれて、水面へ消えた。
彼女たちが海岸に戻ると、パラソルの下ではバレルがビーチチェアに背を預けて読書をしていた。
「戻りました。他の皆さんは?」
「向こうで泳いでる」
バレルが指差す方には、人々に混じって紅葉たちの姿が見えた。
「むふふ、よぉし。……イスカ、あっちいこー!」
「はいねえさ、じゃなくてキララちゃん。メープルさんもどうですか?」
「折角ですし、ご一緒しますね」
無邪気キャラを装って、星輝は妹の手を引いてかけ出した。メープルもそれに続く。
「隣借りるよ」
「好きにしろ」
シャルロッテはビールを片手にビーチチェアに腰掛けた。
三人と入れ違いになる形で、ざくろが戻ってきた。変装用ではなく私物の水着に着替えていた。
「ちょうどいい所に。時音くん、日焼け止め塗ってくれないかい?」
「えぇっ……でもざくろ、男ですよ!? 誰かに見られたら……」
シャルロッテは顔を赤くして拒否する彼の姿を見回した。縞パン風の水着にパレオ付き、セーラー服っぽいパーカーだ。
「むしろさっきより可愛らしいくらいだ。さぁ」
「えっ? えっ? だってお店の叔父さん、ざくろに似合う水着って」
赤い顔を更に赤くして、ざくろは俯いた。
「そういうのは他所でやってくれ……」
バレルは呻いた。
リオンは熱心に泳いでいた。純粋に泳ぐのが楽しいらしい。が、水着が際どすぎて不埒な男たちの視線を一身に集めていた。
半ばそれを追い払う形で、紅葉も合わせて泳いでいた。彼女が水面に上がると、ちょうどウィスカたちがやってきた所だった。
「お、こっちに来たのか。あんたたちもどうだい?」
「私はちょっと疲れましたから」
「そうかい?」
「私も泳ぎます!」
「わし……私も!」
姉妹が海に飛び込むのを他所に、メープルはゴムボートに寝そべって浮かんでいた。ひたすら泳いでいるリオンが、ゴムボートの下をくぐっていった。
紅葉は姉妹が寄ってくるのを見て、もうひと泳ぎするかと息を大きく吸った。
「あれ、水着が何かに引っ掛かって……」
「おおっと手が」
わざとらしく言い訳しつつ、星輝は両手ですっと指を引っ掛けた。
紅葉とウィスカ、二人のビキニがはらりと解けた。
「あら」
「……っ!!? み……見るなぁぁぁ!」
ばっと胸を隠して、紅葉は悲鳴を上げた。
依頼結果
依頼成功度 | 普通 |
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面白かった! | 7人 |
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MVP一覧
- Pun Pun ぷー
メープル・マラカイト(ka0347)
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/08/05 00:30:16 |
|
![]() |
【相談卓】覗き、絶対ダメ! Uisca=S=Amhran(ka0754) エルフ|17才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2014/08/09 23:29:58 |