ゲスト
(ka0000)
吹雪の夜に
マスター:鳴海惣流

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~7人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/12/29 15:00
- 完成日
- 2016/01/01 21:23
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
山深い地域に存在する、とある小さな村。
一軒の民家のドアを、ひとりの男が叩く。
家の中から中年の女性が「誰だい?」と声をかける。
「俺だよ、母さん。今、帰った。開けてくれ」
「ああ、トイラスだったのかい。すぐ開けるから、待ってておくれ」
開かれたドアから、愛嬌のある笑顔の女性が顔を出す。
トイラスと呼んだ青年の実の母親、マリーテだった。
礼を言って家の中に入ったトイラスは、コートを脱ぐと真っ先に暖炉へ向かった。
「寒いと思ってたら、雪の降り方が激しくなってきたよ」
「そうなのかい。今夜はこのあたりも吹雪くかもしれないねぇ」
冬になればたくさんの雪が降り、風が強まれば吹雪にもなる。
この村に住んでいれば、さして珍しい天候でもない。
母一人子一人で暮らすマリーテとトイラスも慣れていた。
「その可能性は強そうだ。帰ってきたばかりだけど、今のうちに小屋から薪を持ってきておくよ」
「お願いできるかい? 私はその間にシチューを温めておくよ。今日のは自信作なんだ」
「それは楽しみだ」
心の底からそう思いながら、トイラスは脱いだばかりのコートを着込んだ。
薪が途中でなくなれば、暖炉も使えなくなる。
氷点下になるのが日常茶飯事の冬の夜に、火もなしで過ごすのはかなり厳しい。
トイラスは二十代で、母親のマリーテは四十代。
まだ若い部類に入るかもしれないが、寒さに強いかどうかは別問題だ。
家から出て近くにある小屋へ向かい、両手に薪を持つ。
これだけあれば足りそうだと判断し、家に戻ろうとした時だった。
家の方から悲鳴が聞こえた。マリーテの声だ。
「母さんっ!?」
薪を持ちながらも、全速力で家へ帰る。
そこでトイラスが見たのは、開け放たれたまま風に煽られるドアだった。
「母さんっ!」
家の中を見渡すも、誰もいない。
何があったのかと焦り、家の周囲を調べる。
「これは、猿の足跡? まさか猿が母さんをさらったってのか!? 何のためにだよ!」
家の中にある猟銃を手に持ち、トイラスは足跡を追いかける。
村の裏側にある山まで続いている。
見失ったら最後だと気合を入れるトイラスの視界に、大きな猿の背中が映った。
身長百七十センチメートルのトイラスよりも、ずっと大きく見える。
「あんな巨大な猿、見たことないぞ!」
驚愕するトイラスの耳に、自分の名前を呼ぶ声が届く。
見ると母親のマリーテが、巨大な猿の小脇に抱えられていた。
「トイラスっ!」
「母さん! 待ってて、すぐに助ける」
あれだけ的が大きければと思い、トイラスは巨大な猿の背中を狙って銃を撃った。
確かに命中したはずなのに、巨大な猿は悲鳴も上げずにトイラスをじろりと睨むだけだった。
「当たった……だろ? まさか……歪虚?」
頬に冷や汗を伝わせるトイラスが呟いた直後、強い風が吹いた。
地面に積もる雪が吹き上がり、降り注ぐ雪と合わさって視界が白く染まった。
真っ白な壁を前にしてるような感じで、猿もマリーテも見えなくなる。
「母さんっ!」
トイラスは叫んだ。
反応はない。
一瞬だけ視界が雪がやんだ時には、もう猿の姿はなかった。
再び足跡を辿ろうとしたが、雪が強くなり視界が一気に悪化する。
「この天候の中、あとを追うのは俺じゃ不可能だ。助けを呼ばないと」
急いで村へ引き返したトイラスは、長老の家へ向かおうとする。
「よお、トイラスじゃないか。マリーテは元気か?」
途中で出会ったのは、マリーテの友人で、幼少時にはトイラスがよく遊んでもらった近所に住む中年男性だった。
「時間があるなら宿屋へ寄って行けよ。今、ハンターたちが来てるんだ。色々と面白い話をしてくれてるぜ。マリーテを誘ってきても、いいかもしれないな」
事情を知らない中年男性が笑う。
親切心で言ってくれてるのだろうし、怒るつもりはない。それよりも、確認すべき重要な点がある。
「宿屋にハンターの人たちが来てるんですか!?」
「あ、ああ。そんなに慌てて、どうした」
「すいません。事情はあとで説明します!」
トイラスはそれだけ言うと、中年男性に背を向けた。
目的地を長老の家から宿屋に変え、自宅のよりもやや重いドアを力任せに開ける。
「ハンターの人たちが来てると聞きました! お願いです、助けてください! 母さんが……母さんが歪虚らしき猿にさらわれたんですっ!」
山深い地域に存在する、とある小さな村。
一軒の民家のドアを、ひとりの男が叩く。
家の中から中年の女性が「誰だい?」と声をかける。
「俺だよ、母さん。今、帰った。開けてくれ」
「ああ、トイラスだったのかい。すぐ開けるから、待ってておくれ」
開かれたドアから、愛嬌のある笑顔の女性が顔を出す。
トイラスと呼んだ青年の実の母親、マリーテだった。
礼を言って家の中に入ったトイラスは、コートを脱ぐと真っ先に暖炉へ向かった。
「寒いと思ってたら、雪の降り方が激しくなってきたよ」
「そうなのかい。今夜はこのあたりも吹雪くかもしれないねぇ」
冬になればたくさんの雪が降り、風が強まれば吹雪にもなる。
この村に住んでいれば、さして珍しい天候でもない。
母一人子一人で暮らすマリーテとトイラスも慣れていた。
「その可能性は強そうだ。帰ってきたばかりだけど、今のうちに小屋から薪を持ってきておくよ」
「お願いできるかい? 私はその間にシチューを温めておくよ。今日のは自信作なんだ」
「それは楽しみだ」
心の底からそう思いながら、トイラスは脱いだばかりのコートを着込んだ。
薪が途中でなくなれば、暖炉も使えなくなる。
氷点下になるのが日常茶飯事の冬の夜に、火もなしで過ごすのはかなり厳しい。
トイラスは二十代で、母親のマリーテは四十代。
まだ若い部類に入るかもしれないが、寒さに強いかどうかは別問題だ。
家から出て近くにある小屋へ向かい、両手に薪を持つ。
これだけあれば足りそうだと判断し、家に戻ろうとした時だった。
家の方から悲鳴が聞こえた。マリーテの声だ。
「母さんっ!?」
薪を持ちながらも、全速力で家へ帰る。
そこでトイラスが見たのは、開け放たれたまま風に煽られるドアだった。
「母さんっ!」
家の中を見渡すも、誰もいない。
何があったのかと焦り、家の周囲を調べる。
「これは、猿の足跡? まさか猿が母さんをさらったってのか!? 何のためにだよ!」
家の中にある猟銃を手に持ち、トイラスは足跡を追いかける。
村の裏側にある山まで続いている。
見失ったら最後だと気合を入れるトイラスの視界に、大きな猿の背中が映った。
身長百七十センチメートルのトイラスよりも、ずっと大きく見える。
「あんな巨大な猿、見たことないぞ!」
驚愕するトイラスの耳に、自分の名前を呼ぶ声が届く。
見ると母親のマリーテが、巨大な猿の小脇に抱えられていた。
「トイラスっ!」
「母さん! 待ってて、すぐに助ける」
あれだけ的が大きければと思い、トイラスは巨大な猿の背中を狙って銃を撃った。
確かに命中したはずなのに、巨大な猿は悲鳴も上げずにトイラスをじろりと睨むだけだった。
「当たった……だろ? まさか……歪虚?」
頬に冷や汗を伝わせるトイラスが呟いた直後、強い風が吹いた。
地面に積もる雪が吹き上がり、降り注ぐ雪と合わさって視界が白く染まった。
真っ白な壁を前にしてるような感じで、猿もマリーテも見えなくなる。
「母さんっ!」
トイラスは叫んだ。
反応はない。
一瞬だけ視界が雪がやんだ時には、もう猿の姿はなかった。
再び足跡を辿ろうとしたが、雪が強くなり視界が一気に悪化する。
「この天候の中、あとを追うのは俺じゃ不可能だ。助けを呼ばないと」
急いで村へ引き返したトイラスは、長老の家へ向かおうとする。
「よお、トイラスじゃないか。マリーテは元気か?」
途中で出会ったのは、マリーテの友人で、幼少時にはトイラスがよく遊んでもらった近所に住む中年男性だった。
「時間があるなら宿屋へ寄って行けよ。今、ハンターたちが来てるんだ。色々と面白い話をしてくれてるぜ。マリーテを誘ってきても、いいかもしれないな」
事情を知らない中年男性が笑う。
親切心で言ってくれてるのだろうし、怒るつもりはない。それよりも、確認すべき重要な点がある。
「宿屋にハンターの人たちが来てるんですか!?」
「あ、ああ。そんなに慌てて、どうした」
「すいません。事情はあとで説明します!」
トイラスはそれだけ言うと、中年男性に背を向けた。
目的地を長老の家から宿屋に変え、自宅のよりもやや重いドアを力任せに開ける。
「ハンターの人たちが来てると聞きました! お願いです、助けてください! 母さんが……母さんが歪虚らしき猿にさらわれたんですっ!」
リプレイ本文
●
降り続く雪は激しさを増し、山まで行かなくとも前が見え辛い状況だ。
トイラスの依頼を承諾したハンターたちは、彼の案内でマリーテが連れ去られた山へと向かう。
徐々に深くなる雪にブーツを沈ませながら、星野 ハナ(ka5852)が移動中に手早くタロットでマリーテの居場所を占う。
「マリーテさんを見つけられる方角、私が幸せになる方角はどっちですぅ……?」
ハナの占う様子を、側にいた鞍馬 真(ka5819)が覗き込む。
「占いか。連れ去られたというマリーテさんの居場所が特定できればいいんだが」
「当たるも八卦当たらぬも八卦ですけどぉ、迷ったらここから見て大ざっぱに北西方面を探したらいいかもしれません~」
到着した山の入口。ハンターの足手まといにならないよう、トイラスはこの場で帰りを待つと言った。
ハンターの家で待ってて構わないという言葉に、首を縦に振らない。よほど母を心配しているのだろう。
雪の中、腰に両手を当てて、ディアドラ・ド・デイソルクス(ka0271)が堂々と立つ。民衆の希望となるのはもちろんだが、まずはマリーテを助け、トイラスの希望になるつもりだった。
「雑魔共の分際で身の程をわきまえないとは。母親の事なら安心するが良いぞ。大王たるこのボクが助けに行くのだからな。視界がやや悪いが、まあ問題はないだろう」
お願いしますと頭を下げたトイラスの応援を含んだ視線を背に受けながら、ハンターたちはさらに雪深い山へと歩を進めていく。
「う~、さぶ。とっとと助けて鍋でもするっす」
自分自身を温めるように、神楽(ka2032)が手のひらで腕を撫で摩る。
「この寒い中、捜索をするのも大変だ……。何せ、この吹雪では周りが見え難い」
真っ直ぐ前を見るネーヴェ=T.K.(ka5479)が、顔面に向かってくる雪の激しさにたまらず目を細める。
防寒具を着ていても、結構な寒さなのがわかる。着の身着のままでさらわれたマリーテは明らかに危険だ。
「部屋に籠って冬眠したいくらいの寒さだが、仕方ない、これも仕事だ。早く見つけ出さねば」
「要救助者のことを考えたら、時間を掛ける訳にはいかないわね……出来るだけ早く、焦らず行きましょうか」
ネーヴェに同意し、そう言ったのはフィルメリア・クリスティア(ka3380)だ。透き通ったフロスティブルーの髪が、真っ白な雪の中でも美しさを保って揺れている。
「捜索にあたって先行役とそれに続く役が2班の合計3班編成で行くぞ。先行役はこの場からまっすぐ進んで捜索を行い、あとに続く2班はそれぞれ左右を探していく形になるな」
移動中に話し合いがなされていたのもあり、ディアドラの言葉に異を唱える者はいなかった。
「フィルメリアさんと俺がここから真っ直ぐ北上しつつ、声を上げてマリーテさんに呼びかけながら捜索するっす。発見したり何かあれば無線で連絡を取り合い合流するって流れで」
無限 馨(ka0544)が、持っているトランシーバーを軽く振って見せる。ぱっと見は軽薄でお調子者な印象を受ける優男な感じだが、根は真面目だったりする。
打ち合わせどおりに、ハンターたちは3班に分かれる。
正面から北上する先行班に馨とフィルメリア。
正面左方から北上するのをA班とし、ディアドラ、ネーヴェ、ハナが担当する。
正面右方から北上するのをB班とし、神楽と真が班員となる。
「手遅れになる前に、急がねばな……」
マリーテ用にと、予備の防寒具も持ってきた真が呟くように言った。
●
おさまる気配を微塵も見せず、吹雪の勢いは猛烈になる一方だった。
降り積もる雪に足を取られそうになるのも構わず、フィルメリアと馨は全力で前を目指す。
強い風が積もった雪を舞い上げ、降り続く雪と合わさって真っ白な壁を形成する。そこへ二人は恐れもせずに突っ込む。
見通しは悪く、マリーテの姿どころか少し先も見えない。
そのせいで、二人は接近するまで敵の存在に気づけなかった。
吹雪の中でも平気なように発達したのか、厚い毛皮を身に纏った猿が目の前で笑う。
フィルメリアは素早く視線を周囲に向けるも、マリーテらしき女性の姿はない。
「救助対象が見つかる迄は、構っている暇はないわね……」
フィルメリアも、マリーテ用に予備のコートを持ち込んでいる。早く防寒対策を施さなければ危険だと、十分すぎるほど理解しているからだ。
「ここは俺が引き受けるんで、先行ってください。適当にあしらったら、すぐあと追うんで」
「……わかりました。では、この場はよろしくお願いします」
馨が猿を引き受けている隙に、フィルメリアが先行する。彼女が十分に離れたら、ドッジダッシュで敵との距離を取って後を追うつもりだった。
「こちら無限、報告より小型の猿に遭遇したっす。敵は複数いるみたいなんで、気を付けるっすよ!」
トランシーバーで各班に連絡したあと、馨は猿と正面から対峙する。
「せっかくっすから、一発位は殴っておくっすかね」
●
A班が北上を開始する地点に到達した時、先行班の馨から敵と遭遇したという連絡が入った。
トランシーバーを持つネーヴェが情報を受け取り、すぐに前衛を担うディアドラとハナへ報告する。
「先行班が敵と遭遇し、戦闘を開始したようだ」
「そうか。特に今回は視界も悪く、相手の奇襲を受けやすい環境下だからな。相手からの不意をついた攻撃を避ける意味でも、盾をうまく使っていかなければな」
応じながら、雪を踏みしめて進むディアドラ。すぐ隣にはハナもいる。
「この吹雪では馬も使えない。機動力にやや不安が残るが、やむを得まい。マントがあるから、寒さも当面はしのげるであろう。母親のことを考えればこの程度、大した負担にはならないからな」
ディアドラの言葉に、ネーヴェとハナも頷く。
「そういえば、トイラスさんからマリーテさんの服の切れはしを借りてましたぁ」
思い出したように言ったハナは、同行中の犬に取り出したマリーテの服の切れはしのにおいを嗅がせる。
「ケンちゃん、この匂いの人を探して、見つけたら私たちが辿り着くまでそこで吠えて私たちを呼んでくださいぃ、いいですねぇ……行きなさいっ!」
ハナの指示を受け、元気よく「わん」と返事をしたあとで犬が駆け出していく。
その後、視界などないも同然のホワイトアウトの中、ハンターたちは己の経験と勘を頼りに直進する。
早く要救助者を見つけなければと先を急ぐが、そうはさせじとするかのように二体の猿が現れた。
不意をつかれたとはいえ、それすらも想定内。構えた盾で、ディアドラは敵の攻撃を受け止める。
その間に、ハナは立ち止まっていた犬に再度の指示を飛ばす。
「ケンちゃん! ここはいいから、パスしてマリーテさん追いなさいぃ……早く!」
火炎符を放ち、立ち塞がる猿の雑魔に攻撃を仕掛け、犬が突破するための隙間を得る。
ディアドラも盾を使い、敵の攻撃を跳ね返す。
バランスを崩した猿へカウンター気味に一撃を入れ、少なくないダメージを与える。
激昂する猿が体勢を直してディアドラを襲うとするも、それより早くネーヴェが敵の懐へ踏み込む。
アックスブレードで肩から胴を薙ぎ払い、一体の猿の雑魔を絶命させた。
不利を悟っても、もう一体の猿は逃げようとしない。目を血走らせ、余計に敵意を剥き出しにしてくる。
敵の攻撃に備え、先頭に立つディアドラが盾を構えた。
●
「マリーテさーん! どこっすか~? 生きてたら死ぬ気で返事するっす~」
吹雪の轟音に負けないよう、神楽は声を張り上げる。
大声でマリーテに呼びかけながら、捜索を行うのは神楽と真のB班だった。
そこに馨から交戦中の通信が入る。トランシーバーで情報を受け取ると、真はふうと軽くため息をついた。
「どうやら先行班が敵に見つかったらしい。猿と接敵したら、先行班に意識が向かないように出来る限り派手に暴れて、ボス猿以外を誘き寄せられるようにするつもりだったんだが」
今となってはそれも難しいかもしれない。
気を取り直して、二人が先を急ごうとした矢先の出来事だった。
先を歩く神楽の左方から、猿の雑魔がいきなり襲いかかってきたのである。
真横に吹く激しい雪のカーテンが敵を隠していたおかげで、すぐには接近に気づけなかった。
死角から攻撃されたので間一髪だったが、なんとか神楽は猿の一撃を回避した。
雪のせいで素早く動けないのもあり、距離を取る前に神楽はファミリアアタックで猿を吹き飛ばした。
神楽は素早くトランシーバーを使い、敵数と場所を即座に他班へ連絡する。
「近づくと巻き込まれるから注意っす! 敵は一体で――」
「――いや、二体だ。もう一体、奥から増えた。どうやら敵は、吹雪の中でも良好な視界を保てるようだ」
刀を抜きながら、真が神楽に指摘した。
言い直したあとで神楽はトランシーバーをしまい、魔導銃を構える。
「この足場と視界じゃ逃げられねーから、とっとと蹴散らすっすよ!」
●
トランシーバーから次々に、先行班のフィルメリアに情報が入る。
途中で遭遇する猿を無視し、とにかく全力で北を目指した。
焦りを押し殺し、直感と方向感覚を頼りに懸命な捜索活動を続ける。
「こうも雪が強いと……ん? 何か聞こえる……?」
吹雪の中でフィルメリアが耳を澄ます。雪の音に混じって、犬の鳴き声がかすかに聞こえる。
気になったフィルメリアは、鳴き声のする方に移動した。
必死になって吠えていたのは、ハナがマリーテのにおいを覚えさせ、探すように指示していた犬だった。
どうして犬がと疑問に思ったのも、わずかな時間だけ。
犬が吠えるその先に、マリーテらしき中年女性の姿があった。
遭遇したのよりも大型の猿に襲われ、恐怖に怯えながら逃げ惑っている。
ジェットブーツを使い、楽しげに腕を振り上げた猿とマリーテの間にフィルメリアが入る。
敵の攻撃を正面から腕で受け止め、マリーテに危害が及ばないようにする。
いきなりの乱入者に怪訝そうな顔をした猿が、少しだけ離れる。
戸惑っているのはマリーテも同じ。背後を振り返り、フィルメリアは持っていたコートを彼女に手渡しながら状況を説明する。
その後すぐに猿から注意を逸らさないようにしながら、マリーテ発見の一報を各班に送った。
タイミング良く、報告を終えるなり同じ先行班で道中の猿を引き付けてくれていた馨がフィルメリアに合流した。
「無事にマリーテさんを発見できたみたいっすね。怪我してないようなら、ブランデーを飲むっすか? 体が温まるっすよ」
ブランデーを用意すると同時に、馨は着ていたケープをマリーテにかけてあげた。
助かったと安堵したのか、マリーテが涙ながらに二人にお礼を言った。
油断は禁物――。
フィルメリアがそう言おうとした直後、吹雪の壁を壊すように他の仲間も現場に到着した。
A班として行動中のディアドラ、ハナ、ネーヴェだった。道中に遭遇した猿を片づけ、トランシーバーで報告を受けた現場に急行してきたのである。
ハナの足元には、必死になって吠え続け、マリーテの居場所をフィルメリアに知らせた犬もいた。
フィルメリアが事情を説明すると、ハナは犬を抱き上げて「ケンちゃん、えらいぃ」と褒めてあげた。
母親を安全な場所まで移動させようというディアドラの提案に対し、それなら自分がマリーテを連れていくとフィルメリアが言った。
「少し扱いが荒くなりますがご容赦を、しっかり掴まっていてくださいね」
マリーテを抱きかかえるなり、フィルメリアがジェットブーツも使って移動を開始する。
フィルメリアがマリーテを運ぶならと、馨が先行して猿の露払いをすることになった。
せっかくの獲物が奪われる。そう判断した大猿が怒りの咆哮とともに、マリーテを執拗に狙う。
「残念だが、そう簡単にはいかぬぞ。大王たるこのボクが、殿を務めているのだからな!」
叫ぶように発したディアドラが、大猿の強烈な一撃でさえも難なく盾で受け流した。
●
先行班がマリーテを発見し、救出。近くにいたA班が合流。
トランシーバーで知らせを受けた神楽と真は、それならばと周囲の猿の相手をしながら合流することにした。
「他の班が救出をしている最中ならば、私はそれを邪魔させないようにするだけだ」
囮となりながらも、真と神楽はマリーテを避難させるフィルメリアとの合流を急ぐ。
ようやくマリーテを運ぶフィルメリアを発見したが、二体の猿に襲われてる最中だった。
マリーテやフィルメリアを守ろうと馨がひとりで奮戦しているが、さすがに不利は否めない。
そのうちに猿の一体が、フィルメリアが運んでいるマリーテを奪い取ろうと手を伸ばした。
「ち、やらせねーっす!」
いち早く狙いを察した神楽が、猛然とダッシュする。
身を盾にして守ったかいがあり、合流を果たした直後にフィルメリアは山の出入口まで無事にマリーテを運び届けた。
そこでずっと待っていたトイラスにマリーテを引き渡す。
本来ならこれで依頼達成となるが、マリーテだけでなく他のハンターも猿たちをこのまま放置するつもりはなかった。
「さぁ……好き勝手やってくれた返礼と行きましょうか」
「同感っすね。また騒ぎを起こされちゃたまんないっすから、掃除しておくっす!」
眼を鋭くさせたフィルメリアに続き、神楽も身を翻して追ってきた猿たちに突撃する。
フィルメリアの護衛をしていたメンバーも合流し、ハンターたちが全力で逆襲を開始する。
「歪虚はブッコロですぅ、燃やし尽くしてあげますぅ!」
雪には強くとも、火に関しては違ったみたいだった。ハナの火炎符をまともに食らい、大猿が悲鳴を上げる。
できた隙をハンターが見逃すはずもない。シザーハンズでの近接格闘から、フィルメリアが碧雷を放つ。
ボス格だった大猿が倒されても、他の猿は逃げるのではなくハンターに向かってきた。
吹雪でも視界を確保できる敵だけに、逃げられた方がずっと厄介だった。
繰り出される攻撃をディアドラが防ぎ、カウンターを仕掛けると同時にネーヴェが近距離戦で仕留める。
遠距離から神楽が銃で攻撃し、素早い攻撃を封じた上で、真が渾身撃でとどめを刺す。
マリーテを助けるという優先目的がなければ、ハンターたちが苦戦をするほどの相手ではなかった。
最後の一体を馨がワイヤーウィップの餌食にして、戦闘終了。吹雪の雪山を騒がせた猿の雑魔は全滅した。
●
依頼を完了したハンターが報告に戻ると、村中の人間からお礼を言われた。
宿泊予定の宿屋で、マリーテの作ったシチューをご馳走になり、雪山で冷えた体を十分に温めた。
唯一の誤算は村人のお礼がいつまでも終わらず、深夜を過ぎても飲ませ食わせさせられた続けたことだった。
降り続く雪は激しさを増し、山まで行かなくとも前が見え辛い状況だ。
トイラスの依頼を承諾したハンターたちは、彼の案内でマリーテが連れ去られた山へと向かう。
徐々に深くなる雪にブーツを沈ませながら、星野 ハナ(ka5852)が移動中に手早くタロットでマリーテの居場所を占う。
「マリーテさんを見つけられる方角、私が幸せになる方角はどっちですぅ……?」
ハナの占う様子を、側にいた鞍馬 真(ka5819)が覗き込む。
「占いか。連れ去られたというマリーテさんの居場所が特定できればいいんだが」
「当たるも八卦当たらぬも八卦ですけどぉ、迷ったらここから見て大ざっぱに北西方面を探したらいいかもしれません~」
到着した山の入口。ハンターの足手まといにならないよう、トイラスはこの場で帰りを待つと言った。
ハンターの家で待ってて構わないという言葉に、首を縦に振らない。よほど母を心配しているのだろう。
雪の中、腰に両手を当てて、ディアドラ・ド・デイソルクス(ka0271)が堂々と立つ。民衆の希望となるのはもちろんだが、まずはマリーテを助け、トイラスの希望になるつもりだった。
「雑魔共の分際で身の程をわきまえないとは。母親の事なら安心するが良いぞ。大王たるこのボクが助けに行くのだからな。視界がやや悪いが、まあ問題はないだろう」
お願いしますと頭を下げたトイラスの応援を含んだ視線を背に受けながら、ハンターたちはさらに雪深い山へと歩を進めていく。
「う~、さぶ。とっとと助けて鍋でもするっす」
自分自身を温めるように、神楽(ka2032)が手のひらで腕を撫で摩る。
「この寒い中、捜索をするのも大変だ……。何せ、この吹雪では周りが見え難い」
真っ直ぐ前を見るネーヴェ=T.K.(ka5479)が、顔面に向かってくる雪の激しさにたまらず目を細める。
防寒具を着ていても、結構な寒さなのがわかる。着の身着のままでさらわれたマリーテは明らかに危険だ。
「部屋に籠って冬眠したいくらいの寒さだが、仕方ない、これも仕事だ。早く見つけ出さねば」
「要救助者のことを考えたら、時間を掛ける訳にはいかないわね……出来るだけ早く、焦らず行きましょうか」
ネーヴェに同意し、そう言ったのはフィルメリア・クリスティア(ka3380)だ。透き通ったフロスティブルーの髪が、真っ白な雪の中でも美しさを保って揺れている。
「捜索にあたって先行役とそれに続く役が2班の合計3班編成で行くぞ。先行役はこの場からまっすぐ進んで捜索を行い、あとに続く2班はそれぞれ左右を探していく形になるな」
移動中に話し合いがなされていたのもあり、ディアドラの言葉に異を唱える者はいなかった。
「フィルメリアさんと俺がここから真っ直ぐ北上しつつ、声を上げてマリーテさんに呼びかけながら捜索するっす。発見したり何かあれば無線で連絡を取り合い合流するって流れで」
無限 馨(ka0544)が、持っているトランシーバーを軽く振って見せる。ぱっと見は軽薄でお調子者な印象を受ける優男な感じだが、根は真面目だったりする。
打ち合わせどおりに、ハンターたちは3班に分かれる。
正面から北上する先行班に馨とフィルメリア。
正面左方から北上するのをA班とし、ディアドラ、ネーヴェ、ハナが担当する。
正面右方から北上するのをB班とし、神楽と真が班員となる。
「手遅れになる前に、急がねばな……」
マリーテ用にと、予備の防寒具も持ってきた真が呟くように言った。
●
おさまる気配を微塵も見せず、吹雪の勢いは猛烈になる一方だった。
降り積もる雪に足を取られそうになるのも構わず、フィルメリアと馨は全力で前を目指す。
強い風が積もった雪を舞い上げ、降り続く雪と合わさって真っ白な壁を形成する。そこへ二人は恐れもせずに突っ込む。
見通しは悪く、マリーテの姿どころか少し先も見えない。
そのせいで、二人は接近するまで敵の存在に気づけなかった。
吹雪の中でも平気なように発達したのか、厚い毛皮を身に纏った猿が目の前で笑う。
フィルメリアは素早く視線を周囲に向けるも、マリーテらしき女性の姿はない。
「救助対象が見つかる迄は、構っている暇はないわね……」
フィルメリアも、マリーテ用に予備のコートを持ち込んでいる。早く防寒対策を施さなければ危険だと、十分すぎるほど理解しているからだ。
「ここは俺が引き受けるんで、先行ってください。適当にあしらったら、すぐあと追うんで」
「……わかりました。では、この場はよろしくお願いします」
馨が猿を引き受けている隙に、フィルメリアが先行する。彼女が十分に離れたら、ドッジダッシュで敵との距離を取って後を追うつもりだった。
「こちら無限、報告より小型の猿に遭遇したっす。敵は複数いるみたいなんで、気を付けるっすよ!」
トランシーバーで各班に連絡したあと、馨は猿と正面から対峙する。
「せっかくっすから、一発位は殴っておくっすかね」
●
A班が北上を開始する地点に到達した時、先行班の馨から敵と遭遇したという連絡が入った。
トランシーバーを持つネーヴェが情報を受け取り、すぐに前衛を担うディアドラとハナへ報告する。
「先行班が敵と遭遇し、戦闘を開始したようだ」
「そうか。特に今回は視界も悪く、相手の奇襲を受けやすい環境下だからな。相手からの不意をついた攻撃を避ける意味でも、盾をうまく使っていかなければな」
応じながら、雪を踏みしめて進むディアドラ。すぐ隣にはハナもいる。
「この吹雪では馬も使えない。機動力にやや不安が残るが、やむを得まい。マントがあるから、寒さも当面はしのげるであろう。母親のことを考えればこの程度、大した負担にはならないからな」
ディアドラの言葉に、ネーヴェとハナも頷く。
「そういえば、トイラスさんからマリーテさんの服の切れはしを借りてましたぁ」
思い出したように言ったハナは、同行中の犬に取り出したマリーテの服の切れはしのにおいを嗅がせる。
「ケンちゃん、この匂いの人を探して、見つけたら私たちが辿り着くまでそこで吠えて私たちを呼んでくださいぃ、いいですねぇ……行きなさいっ!」
ハナの指示を受け、元気よく「わん」と返事をしたあとで犬が駆け出していく。
その後、視界などないも同然のホワイトアウトの中、ハンターたちは己の経験と勘を頼りに直進する。
早く要救助者を見つけなければと先を急ぐが、そうはさせじとするかのように二体の猿が現れた。
不意をつかれたとはいえ、それすらも想定内。構えた盾で、ディアドラは敵の攻撃を受け止める。
その間に、ハナは立ち止まっていた犬に再度の指示を飛ばす。
「ケンちゃん! ここはいいから、パスしてマリーテさん追いなさいぃ……早く!」
火炎符を放ち、立ち塞がる猿の雑魔に攻撃を仕掛け、犬が突破するための隙間を得る。
ディアドラも盾を使い、敵の攻撃を跳ね返す。
バランスを崩した猿へカウンター気味に一撃を入れ、少なくないダメージを与える。
激昂する猿が体勢を直してディアドラを襲うとするも、それより早くネーヴェが敵の懐へ踏み込む。
アックスブレードで肩から胴を薙ぎ払い、一体の猿の雑魔を絶命させた。
不利を悟っても、もう一体の猿は逃げようとしない。目を血走らせ、余計に敵意を剥き出しにしてくる。
敵の攻撃に備え、先頭に立つディアドラが盾を構えた。
●
「マリーテさーん! どこっすか~? 生きてたら死ぬ気で返事するっす~」
吹雪の轟音に負けないよう、神楽は声を張り上げる。
大声でマリーテに呼びかけながら、捜索を行うのは神楽と真のB班だった。
そこに馨から交戦中の通信が入る。トランシーバーで情報を受け取ると、真はふうと軽くため息をついた。
「どうやら先行班が敵に見つかったらしい。猿と接敵したら、先行班に意識が向かないように出来る限り派手に暴れて、ボス猿以外を誘き寄せられるようにするつもりだったんだが」
今となってはそれも難しいかもしれない。
気を取り直して、二人が先を急ごうとした矢先の出来事だった。
先を歩く神楽の左方から、猿の雑魔がいきなり襲いかかってきたのである。
真横に吹く激しい雪のカーテンが敵を隠していたおかげで、すぐには接近に気づけなかった。
死角から攻撃されたので間一髪だったが、なんとか神楽は猿の一撃を回避した。
雪のせいで素早く動けないのもあり、距離を取る前に神楽はファミリアアタックで猿を吹き飛ばした。
神楽は素早くトランシーバーを使い、敵数と場所を即座に他班へ連絡する。
「近づくと巻き込まれるから注意っす! 敵は一体で――」
「――いや、二体だ。もう一体、奥から増えた。どうやら敵は、吹雪の中でも良好な視界を保てるようだ」
刀を抜きながら、真が神楽に指摘した。
言い直したあとで神楽はトランシーバーをしまい、魔導銃を構える。
「この足場と視界じゃ逃げられねーから、とっとと蹴散らすっすよ!」
●
トランシーバーから次々に、先行班のフィルメリアに情報が入る。
途中で遭遇する猿を無視し、とにかく全力で北を目指した。
焦りを押し殺し、直感と方向感覚を頼りに懸命な捜索活動を続ける。
「こうも雪が強いと……ん? 何か聞こえる……?」
吹雪の中でフィルメリアが耳を澄ます。雪の音に混じって、犬の鳴き声がかすかに聞こえる。
気になったフィルメリアは、鳴き声のする方に移動した。
必死になって吠えていたのは、ハナがマリーテのにおいを覚えさせ、探すように指示していた犬だった。
どうして犬がと疑問に思ったのも、わずかな時間だけ。
犬が吠えるその先に、マリーテらしき中年女性の姿があった。
遭遇したのよりも大型の猿に襲われ、恐怖に怯えながら逃げ惑っている。
ジェットブーツを使い、楽しげに腕を振り上げた猿とマリーテの間にフィルメリアが入る。
敵の攻撃を正面から腕で受け止め、マリーテに危害が及ばないようにする。
いきなりの乱入者に怪訝そうな顔をした猿が、少しだけ離れる。
戸惑っているのはマリーテも同じ。背後を振り返り、フィルメリアは持っていたコートを彼女に手渡しながら状況を説明する。
その後すぐに猿から注意を逸らさないようにしながら、マリーテ発見の一報を各班に送った。
タイミング良く、報告を終えるなり同じ先行班で道中の猿を引き付けてくれていた馨がフィルメリアに合流した。
「無事にマリーテさんを発見できたみたいっすね。怪我してないようなら、ブランデーを飲むっすか? 体が温まるっすよ」
ブランデーを用意すると同時に、馨は着ていたケープをマリーテにかけてあげた。
助かったと安堵したのか、マリーテが涙ながらに二人にお礼を言った。
油断は禁物――。
フィルメリアがそう言おうとした直後、吹雪の壁を壊すように他の仲間も現場に到着した。
A班として行動中のディアドラ、ハナ、ネーヴェだった。道中に遭遇した猿を片づけ、トランシーバーで報告を受けた現場に急行してきたのである。
ハナの足元には、必死になって吠え続け、マリーテの居場所をフィルメリアに知らせた犬もいた。
フィルメリアが事情を説明すると、ハナは犬を抱き上げて「ケンちゃん、えらいぃ」と褒めてあげた。
母親を安全な場所まで移動させようというディアドラの提案に対し、それなら自分がマリーテを連れていくとフィルメリアが言った。
「少し扱いが荒くなりますがご容赦を、しっかり掴まっていてくださいね」
マリーテを抱きかかえるなり、フィルメリアがジェットブーツも使って移動を開始する。
フィルメリアがマリーテを運ぶならと、馨が先行して猿の露払いをすることになった。
せっかくの獲物が奪われる。そう判断した大猿が怒りの咆哮とともに、マリーテを執拗に狙う。
「残念だが、そう簡単にはいかぬぞ。大王たるこのボクが、殿を務めているのだからな!」
叫ぶように発したディアドラが、大猿の強烈な一撃でさえも難なく盾で受け流した。
●
先行班がマリーテを発見し、救出。近くにいたA班が合流。
トランシーバーで知らせを受けた神楽と真は、それならばと周囲の猿の相手をしながら合流することにした。
「他の班が救出をしている最中ならば、私はそれを邪魔させないようにするだけだ」
囮となりながらも、真と神楽はマリーテを避難させるフィルメリアとの合流を急ぐ。
ようやくマリーテを運ぶフィルメリアを発見したが、二体の猿に襲われてる最中だった。
マリーテやフィルメリアを守ろうと馨がひとりで奮戦しているが、さすがに不利は否めない。
そのうちに猿の一体が、フィルメリアが運んでいるマリーテを奪い取ろうと手を伸ばした。
「ち、やらせねーっす!」
いち早く狙いを察した神楽が、猛然とダッシュする。
身を盾にして守ったかいがあり、合流を果たした直後にフィルメリアは山の出入口まで無事にマリーテを運び届けた。
そこでずっと待っていたトイラスにマリーテを引き渡す。
本来ならこれで依頼達成となるが、マリーテだけでなく他のハンターも猿たちをこのまま放置するつもりはなかった。
「さぁ……好き勝手やってくれた返礼と行きましょうか」
「同感っすね。また騒ぎを起こされちゃたまんないっすから、掃除しておくっす!」
眼を鋭くさせたフィルメリアに続き、神楽も身を翻して追ってきた猿たちに突撃する。
フィルメリアの護衛をしていたメンバーも合流し、ハンターたちが全力で逆襲を開始する。
「歪虚はブッコロですぅ、燃やし尽くしてあげますぅ!」
雪には強くとも、火に関しては違ったみたいだった。ハナの火炎符をまともに食らい、大猿が悲鳴を上げる。
できた隙をハンターが見逃すはずもない。シザーハンズでの近接格闘から、フィルメリアが碧雷を放つ。
ボス格だった大猿が倒されても、他の猿は逃げるのではなくハンターに向かってきた。
吹雪でも視界を確保できる敵だけに、逃げられた方がずっと厄介だった。
繰り出される攻撃をディアドラが防ぎ、カウンターを仕掛けると同時にネーヴェが近距離戦で仕留める。
遠距離から神楽が銃で攻撃し、素早い攻撃を封じた上で、真が渾身撃でとどめを刺す。
マリーテを助けるという優先目的がなければ、ハンターたちが苦戦をするほどの相手ではなかった。
最後の一体を馨がワイヤーウィップの餌食にして、戦闘終了。吹雪の雪山を騒がせた猿の雑魔は全滅した。
●
依頼を完了したハンターが報告に戻ると、村中の人間からお礼を言われた。
宿泊予定の宿屋で、マリーテの作ったシチューをご馳走になり、雪山で冷えた体を十分に温めた。
唯一の誤算は村人のお礼がいつまでも終わらず、深夜を過ぎても飲ませ食わせさせられた続けたことだった。
依頼結果
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面白かった! | 7人 |
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MVP一覧
- 命無き者塵に還るべし
星野 ハナ(ka5852)
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 フィルメリア・クリスティア(ka3380) 人間(リアルブルー)|25才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2015/12/29 13:03:48 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/12/27 20:06:17 |