乙女たち、少年想いて墓参り

マスター:狐野径

シナリオ形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
少なめ
相談期間
5日
締切
2015/12/29 09:00
完成日
2016/01/04 09:21

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●歌声
 イノア・クリシスは父に代わり、町であったチャリティーコンサートに顔を出した。愛らしい子らの歌声や有志の大人たちの本格的に近い歌、リアルブルーの音楽と融合したらしい音楽……さまざまな音楽が駆け巡る。
 その中でイノアは思い出す、母と兄がいた幼い頃を。
 父は領内と他の貴族とのやり取りで忙殺されていたが、それも領内の民のため。
 母は領内の民の貧しい人を救おうと毎日活動にいそしむ。それにイノアは付いて回る。
 兄は勉強と武術の鍛錬に追われる中、領民との交流も兼ね歌の練習に教会へ通う。教会には歌を教える司祭がおり、合唱団があった。その司祭が言うには、兄ほどの歌い手はこれまでいなかったとほめたたえていた。
 それはイノアにとって誇らしいことであった。外見もよく、文武両道、歌もうまいが優しすぎた。イノアがわがまま言っても怒らないで困ったように微笑んでいるのが常であった。
 唯一怒ったのが、兄が最期の日。兄をからかった時だった。

『やめろっ! それは……』
『恋文? お兄様が……え? なにこれ……お兄様、なんで黙ってたのっ!』
『……』
 妹に叱責されてニコラスは黙りこんだ。その手を引きイノアは父の下に急ぐ。兄は抵抗しなかった、悪いことをしたのをばれたというような雰囲気で。

 あの時、あの時点でハンターを雇えていたらどう変わっていたのだろうか?
 思いにふけっている間にコンサートは終わる。
 帰宅すると一通の手紙が来ていた。
 読んで驚いた、かつての友人たちが遊びにくるというのだ、兄の墓参りに。
「生活環境が変わるから、思い出を語りに? 懐かしいわ……本当、もう、信じられない」
 イノアの目から涙があふれるのを止められなかった。
 コンサートで子らの声を聞いたせいで感傷的になっているに違いないと思う。
「会わなくなって五年かしら? ふふっ、二人ともお兄様が現れると何を話しかけてもこちらを聞いてくれなかったのよねぇ」
 兄の絵姿を見て苦笑した。
「ふふっ、見た目はいいけれど、性格が……」
 薄い茶色の髪の少年は恥ずかしそうにどこか悲しそうな笑顔で絵の中にいる。
「それより……あの二人顔見知りだったかしら?」
 今度遊びに行きたいと言っている二人は、イノアの遊び相手として来ていた。二人の身分が違うためクリシス家が配慮し、同時と遊びに来ることはなかった。親同士が決めた遊び相手であったが、イノアも彼女たちも関係なく仲良くなった。
 一緒に来ると言うが接点が見えず、イノアは不思議がった。

●偶然の依頼人たち
 隣の領地の町に行く護衛を頼みに、貴族の娘であるディナ・アリシスと商人の娘シェーラ・テシスが同時にハンターズソサエティの支部の扉をくぐった。
 受付を待っている間に、年が近い二人はあれこれ話していた。互いの目的が一緒としり、二人は意気投合していた。身分は意外と関係なかった。
 職員に二人で依頼を出す。
「つまり、隣の……クリシス様の領地に行くための護衛が欲しいと言うことですね?」
 あの近辺は平地も川もあるが、丘陵地帯があるため、危険地帯も多い道がある。危険は野生の動物から人間の悪党まで様々だ。大きな事件はほとんど起きていないが、先月にゴブリンが大挙して村を襲ったという話も耳にしている。情勢は不安定であり、行けるなら今しかないという二人の思いも職員は理解した。
「はいっ! これを逃したらディナさまもあたしも、イノア様にお会いする機会が掴めないと思いました」
 シェーラがきっぱりと言う。
 二人とも結婚や寮がある学校入るやらで環境が変わる。環境が変わるだけでなく、行動も変わってしまう。
「イノアちゃんにお会いするのもあるけれど、ニコラス様のお墓参りも……」
「初恋ですから!」
「そ、それははっきり言わないでください」
 ディナは顔を真っ赤にしてシェーラに怒る。
「初恋ですか?」
 職員はにこにこと笑う。ディナは貴族の娘であるし、結びつきを強くするといって婚約者になっていた可能性もあるのではないかと考える。シェーラの場合はなかなか難しいだろうが、単純にかっこいい王子様みたいな雰囲気でその人物を見ていたのかもしれない。
 故人であるし、この職員がニコラス・クリシスを知り合えることはない。
「こんなつまらない依頼を受けていただけます?」
「……ぜひ、恋の話でもしながら? あ、ディナさまはご結婚が……」
「別です、それとこれは。夫となる方は素敵な人です、嫌々結婚するわけではないですので安心してください」
「ふふっ、そうですか……? すみません、差し出がましいことを言って」
「いえ、心配して下さるみたいなので嬉しいです」
 職員は依頼を受理した。

リプレイ本文

●出発
 ハンターを前にディナとシェーラは驚くが、年の近い少女をみて安堵もする。
「……オレに反応したわけか。東方の鬼で未来の大英雄、万歳丸(ka5665)だ」
 にかりと笑った。
「ここ田舎だから、鬼って初めてです!」
「そうですね、話は伺っています」
 二人は納得したとうなずき合い、自然と角に目が向かう。
「俺はレオン(ka5108)です、少しの間ですが宜しくお願いします」
 笑顔で礼儀正しく挨拶をする。
「ルシール・フルフラット(ka4000)だ、よろしく」
 ルシールは依頼の内容に「初恋の相手の墓参り」と記載があったため、苦い思い出が胸の内に浮かんでいた。その思い出は記憶の隅に押しやり、乙女たちの行く道を守ろうと心に決める。
「エリオ・アスコリ(ka5928)と申します、よろしくお願いします」
 礼儀正しく挨拶をする。
「巽 宗一郎(ka3853)だよ、よろしく」
 宗一郎はちらりと恋人の真夜・E=ヘクセ(ka3868)を見る。初恋と聞いて思い出すのは彼女との出会いだった。
「真夜・E=ヘクセよ。道中のための計画もきちんと立てたわ」
 真夜は挨拶しながら、どこか緊張していた。聞きたいことがあっても繊細な内容でタイミングが難しく、解決しないかも知れないと考えていた。
 なお、ハンターたちがまとめた計画は、ディナとシェーラが歩きたい思いは尊重し、荷物は馬に、休憩はこまめにということだった。

●恋とは?
 休憩のとき用に真夜がお弁当や菓子の用意などをしていたため、どこかピクニックの延長にも思われた。守る側は気を抜きすぎてもいけないが、依頼人たちはピクニック気分くらいがちょうど良いだろう。
 一行が進む街道は現在一般に使われており、危険の度合いは低い。低いとはいえ、何があるか分からない。
 宗一郎と真夜、エリオが依頼人の周りで荷物と彼女たちの様子に注意を払う。シェーラは荷物を馬に載せてしまえば歩き方はしっかりとしている。また、ディナは今の所問題なさそうだ。
 万歳丸とルシールが前後からやや距離を保った。まっすぐな道でもないので、速度を調整しつつの移動だ。
「少し先を見てきます」
 レオンは馬に乗ると道の状況を見るために走る、魔導短伝話をルシールに渡し、こまめに連絡をすると告げて。
「そういえば、どうして隣まで行こうと思ったの?」
 宗一郎が尋ねる。
「はい、あちらに住むイノア様にお会いしたいのです。手紙のやり取りはしていたのですが、環境が変わる前にもう一度と」
「偶然ディナ様と知り合ってこうなりました。クリシス様の配慮であのころ知り合えなかったのは残念」
「貴族と商人ということですよね? 確かにわたくしの友人に町の人はいないです」
 しょげるディナにシェーラは「初めてがあたしってこと」と笑った。
「イノア様、美人になっただろうなぁ」
「イノア様、ニコラス様と違う可愛らしい方だったから」
「それとニコラス様の墓参り」
「……そうね、葬儀にも出られなかったし」
 二人は溜息を洩らした。
「領主代行ってやってた」
 万歳丸はイノアに一度会ったことがある。
「まあ?」
「イノア様、代行! ニコラス様より想像つく」
 二人は友人の活躍を知って嬉しそうだ。
「辛くて葬儀には出られなかったんですか?」
 エリオは彼女たちの言い方に妙な部分を感じて尋ねた。面識はあったようだから、葬儀に出ることもあるだろう。
「……記憶が薄いのですが……事件の少し前に今住む町に戻ったのです、もともと父がいるところでしたから」
「うちの商店は支店としてクリシス様の所を残して、本店を移動させたの」
 二人は顔を見合わせた。当時は互いを知らないため気付かなかったことが一つあった。
「イノア様、突然遊び相手がいなくなったということになるんですね……」
「そうですね」
「葬儀に出なかったの、このあたりに歪虚や魔法生物がいるとか話があったせいだった気がする」
 シェーラが溜息を洩らした。これに対してディナがうなずく。
 移動に慣れている大人ならどうにかできても、まだ少女を連れての移動は大変だったと想像できる。
「今はこうして行けるだけ、この地域は安定しているということだな」
 ルシールが少女たちに微笑む。
 しばらく思い出と今の状況に浸るように、依頼人二人のおしゃべりが止まった。
「……結婚すると聞いているけれど、ここでは当たり前なの?」
 宗一郎の問いかけに二人は顔を見合わせる。
「それぞれだと思いますよ? 私の場合はそれが良いと思ったのでするのです」
「あたしが結婚するとしたら恋愛! うう、ニコラス様を知っていると難しい」
 真夜がびくりと硬直する。
(ええ、初恋だとは聞いているのよ……ニコラスと言う人とディナで、許嫁だったかもしれないわけ? シェーラが好きで三角関係? 話題として地雷? あっ、初恋って誰の? ニコラスって子の? それとも……)
 真夜は表面上冷静なままだが、心の中は相当の葛藤のうちにあった。
「ところで、なンだ、どういうトコロが『すき』になったンだ? 恋愛は分からン、から聞いておく」
 万歳丸が真夜の心配をよそに尋ねた。
「そうですね……ニコラス様はまず、見た目……凛々しくて可愛い感じで」
「礼儀正しいし、文武両道でした」
「歌もうまいし、なんていうか『いる』だけでいい」
 思い出の中のニコラスは素敵な人物のようだ。
「初恋ときいたけど……」
 真夜が思っていたようなことはなかったようだ。一人思い悩んだことが恥ずかしいやら、気が抜けたやらで安堵する。
「え? 初恋ですよ?」
「実らない初恋、ニコラス様に告白なんて……」
「イノア様もいらっしゃるし……」
「『お兄様って駄目なのよねぇ』とか言いながら、自慢しすぎでしたよ」
「そもそも、ニコラス様に告白だなんて……恐ろしくてできません」
「あー、確かに」
 二人は笑った。
「なんで告白できなかったのですか?」
 エリオは尋ねる。妹以外に原因があるように感じられた。
「だって、あのころの女の子の初恋はニコラス様って答える人多いよ、たぶん」
 シェーラの言葉に真夜ははっとした、初恋は片思い。
「みんなのアイドルだったの?」
 真夜の言葉は合っていたらしく、二人は楽しそうに笑った。
「そうですね、アイドルっていえばその通りです」
「だから、死んだと知らされた時、遺体を見るまで信じないって思ったもの」
「ウィリアム様もご遺体を見せなかったと聞いていますから……相当ひどかったんでしょうね」
「……うう、ニコラス様」
 しめっぽくなってきた。
「あ、そうだ……マヤ、美味しいお茶あったかな」
 宗一郎が荷物を指さして尋ねる。
「そろそろ休憩しようか? レオンも戻って来たし」
 ルシールがちょうどよさそうなところが見えてきた。

●休息
 弟子の休息も兼ねてルシールは周囲の警戒に動いた。
「レオンも休んでおけ」
「え? いえ、このくらい」
「いざとなって守れなければ意味がないだろう?」
「はい……」
 ディナとシェーラに真夜が加わって話をしている。
 お茶と菓子を出したのが始まりで、年齢が近い乙女であり恋の先輩と言えるためか、だんだんと盛り上がっていく。
 楽しそうな真夜を見るのは宗一郎にとって嬉しいことである。真夜が何か語っているらしく、二人が真剣に耳を傾けている。
 それ以外のハンターは距離を置き、警戒をしつつ休む。
「――それが恋だと気付くのに随分時間がかかったの。彼が一人で抱え込むなって言い続けてくれて」
 真夜の声が懐かしむように宗一郎には聞こえた。
「……まあ、そうだとしたら、今のあなたがあるのは、その彼のお蔭なのですね?」
「うわー、いいなぁ」
 ディナとシェーラの声が響いた。
(何を話しているのか気になる。僕とのこと? それとも……。恋と聞くと真夜とで会った時の事を思い出すなぁ)
 リアルブルーで出会い、偶然一緒にこちらに転移した。二人の思いを確かめ、一緒に今までやってきた。様々なことが駆け巡るが、護衛の仕事だと思い直し、気を引き締めた。
 レオンは竪琴で無聊を慰める音楽でもと思ったが、またの機会に取っておくことにした。
「恋が絡むと入りやすいよ」
 様子を見ていたエリオは笑う。士官学校では味わえない経験である、ハンター仲間との軽口に乙女たちの恋話などは。
「ンー……?」
 万歳丸が穏やかで複雑な声を漏らした。
「どうしたんだい?」
「あ、いや……恋愛なんてしらねェから……ただ、相手は故人らしいが、良いモン残したンだな」
「そうだな」
「思い出を語ることで、友が増えたンだろ? その上、思い出のほかの話も増えた」
「戦いよりも恋は素晴らしいということかな?」
 万歳丸がうなずき、エリオは笑う。恋も戦いを生むことがあるが、彼らの脳裏に浮かぶ戦いとはまた別。
「恋か……」
 レオンがつぶやくと、意味のありそうな声音に視線が集まる。
 男性陣の状況を感じ取った休息を取っていた女性陣が視線を向ける。
 話すことを要求する視線を一身に受けたレオンは周囲を見渡す。何か話さないと誰も納得しないと気付き、話すことを考える。
「いや、その……好きな人がいるんだ」
 見回りに行ったルシールが戻ってこないか様子を今一度確認する。
「赤ん坊のころからずっと見てきた……彼女は理想の騎士で……強くて優しくて、本当にきれいな女性で。でも、自分の事をあまり考えていないように見えて、どこか遠くに行ってしまいそうで怖くなることがあったんだ」
 ディナが「まあ」と声を上げて同情の表情を見せる。
「だから、決めたんだ、俺が守るって」
 男性陣から「おお」とどよめきが起こり、女性陣からも小さな声が上がった。
「素敵ですね!」
「背中を守る男性……ロマンチック!」
「そういえば、ニコラス様、騎士団長にあこがれていましたよね」
「あ、聞いたことあります。王都に出かけたとき見かけてかっこよかったとか」
「でも、イノア様が『お兄様は優しすぎるから歪虚も逃がしそう』といったそうよ」
「……イノア様、鋭い……」
「でも、歪虚ですよ?」
「そ、そうですよね」
 シェーラは同意を示しておくが、ニコラスの性格を考えると納得はしていない。
「そんなに優しかったの?」
 真夜が尋ねる。
「怒っている印象がないのよね」
「それはその通りです。イノア様にからかわれても微笑んで終わってしまう」
 二人は黙った。
「なんか、話が盛り上がっているようだったが?」
 ルシールが戻ってきた、声が聞こえたとのこと。
「そろそろ出発しようか?」
 宗一郎が促す。
「お嬢さん方、ヴァリオスの流行りには興味ありませんか?」
 エリオは彼女たちの興味を引くことに成功し、話は変わった。

●敵襲!
 おしゃべりと休息のお蔭で、一日目の宿には体力の余裕を持って入った。疲れた彼女たちは夕食後すぐに就寝する。
 ハンターたちは彼女たちの護衛として時間を区切って見張りをする。泊まったこの村自体の雰囲気は悪くないが、悪人はどこにいるか分からないから。念には念を入れる。

 翌日も幸い好天に恵まれる。
 ディナに筋肉痛が発生したが、「この程度で音は上げられません」とのことだった。
 周囲に目を光らせるとともに、ディナに対しての気配りがより一層必要となった。

『何かいる気配があります。注意してください』
 先行したレオンからルシールに連絡が入る。
「何か分かれば連絡をしてくれ。ただし、無茶はするな」
『了解です、師匠』
 背中が空の馬の側にディナとシェーラを添える。載せると的になる可能性もあるため、すぐに乗れる位置にする。
 魔法で応戦できるため真夜が側に付く。
 万歳丸は依頼人二人を馬に載せて逃がす場合に備える。
 宗一郎とエリオ、ルシールが前後に位置し周囲を見る。
 茂みが動いた。
 真夜がアースウォールを作り上げる。
「様子を見に行くから戻ってこい」
『え? 師匠、俺も行きます』
「戻ってきて、お嬢さんたちを守る事」
『分かりました』
 レオンは少し不満をにじませたが、仕事なのだとしっかりと考えた。
「大丈夫です、すぐに終わりますから」
 エリオがディナとシェールを安心させるように言い、ルシールを追って茂みに入る。
 狼が数匹うろうろしているが、覚醒状態になったハンターに怯えて逃げて行く。
「こんなところに出るのか?」
「追われてきたのかもしれない?」
 エリオの言葉にルシールも頷き、周囲を見渡す。
『師匠、コボルドがいました。散らします』
「頼んだ」
 レオンの連絡にルシールが手短に答える。
「あっちにもいるから問題ないが」
「急ごう」
 ルシールとエリオは戻る。
 一方、狼が蹴散らされている間、残っていた者たちは緊張のままじっとしていた。
「……一塊になってじっとしてなァ!」
 コボルドに気付いた万歳丸が動いた。進行方向から馬の蹄の音もするため、レオンが来ていると判断した。人手は十分だろう。
 道を挟んで狼が出た方とは反対側の茂みだ。
 万歳丸とレオンが見るとコボルドは二体いた。
 はぐれてここにいるのか、どこかに本拠地があるのか、疑問は生じるが目の前の物を処理するのが先だ。
 レオンと万歳丸の攻撃により、コボルドは討たれる。
「巣があると聞ィてるか?」
「いや。流れてきた亜人もいるみたいだから、たまたまだと」
 もし近くに何かあるなら、もっと話題になっていただろうし、あの二人の旅が許されるわけはなかった。

●到着
 この後は順調に進み、町が見えてきた。
「あれは?」
「イノア様!」
 城壁の外に護衛の騎士を連れたイノアがいた。イノアは一行を見て、微笑み、手を軽く振る。
「お久しぶりです、二人とも。季節のお手紙はいただいていたけれど、こうして会えるのは嬉しい限りだわ」
 乙女たちは久しぶりに会った喜びを分かち合う。
「それより、ハンターの皆さま、私の友人たちを送って下さり、ありがとうございます」
 イノアがお礼を述べ、万歳丸にあいさつをした。
「ところで二人はどうやって知り合ったのです?」
 イノアの言葉に二人は「たまたま」ということを告げる。
「真夜さんやレオンさんの恋の話は興味深かったですわ」
 真夜は照れ臭そうに笑みを浮かべ、宗一郎は真夜を見て不安げに微笑む。
「何を話したか気になるけれど?」
「別に? 一緒にいられて嬉しいということかしら?」
「……僕もだよ」
 ディナが小さく「まあ」と言い、シェーラが黄色い悲鳴を上げる。
「そういえばレオンは何をしたのか興味があるよ?」
 ルシールに言われてレオンは首を横に振る。あの時、誰が話していたのか気付いていたのだ。
「秘密ですよ!」
 レオンは答えた。
「……恋愛か、何か、いいもンに思えた」
「まあな。縁だから、簡単にできない」
「そりャそうだ」
 万歳丸とエリオも自然と笑顔になる。
 乙女たちの笑いは平穏な空気にふさわしく、風に乗って消えた。

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重体一覧

参加者一覧


  • 巽 宗一郎(ka3853
    人間(蒼)|18才|男性|闘狩人

  • 真夜・E=ヘクセ(ka3868
    人間(蒼)|17才|女性|魔術師
  • 落花流水の騎士
    ルシール・フルフラット(ka4000
    人間(紅)|27才|女性|闘狩人
  • 死者へ捧ぐ楽しき祈り
    レオン(ka5108
    人間(紅)|16才|男性|闘狩人
  • パティの相棒
    万歳丸(ka5665
    鬼|17才|男性|格闘士
  • 緑青の波濤
    エリオ・アスコリ(ka5928
    人間(紅)|17才|男性|格闘士

サポート一覧

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依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/12/28 07:57:05
アイコン 相談卓
エリオ・アスコリ(ka5928
人間(クリムゾンウェスト)|17才|男性|格闘士(マスターアームズ)
最終発言
2015/12/28 08:06:57