幻獣の森の日輪祭

マスター:猫又ものと

シナリオ形態
イベント
難易度
易しい
オプション
参加費
500
参加制限
-
参加人数
1~50人
サポート
0~0人
報酬
普通
相談期間
6日
締切
2015/12/29 19:00
完成日
2016/01/19 09:51

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●日輪祭
 辺境にある幻獣の森。
 ここ数日の寒さで雪が降り、幻獣の森も白く覆われ、真っ白い木立が立ち並ぶ。
「ベルカナ、これでいいッスか?」
「まあ! ツキウサギ様お上手ですね! さあ、チューダ様もこれを飾ってください」
「何故我輩までやらないといけないのですー? 寒いのです! 我輩の小さいおててがジンジンしているのです!」
「これがきちんと出来たら、暖かくて甘いココアを淹れて差し上げますよ?」
「……焼いたマシュマロもつけて欲しいのです」
「かしこまりました。おつけしましょう」
「我輩頑張るのであります!」
「ちゃんとツキウサギさんにも差し上げますからね」
「ありがとうッス」
 巫女ベルカナにあっさり御された自称幻獣王チューダに、苦笑を浮かべるツキウサギ。
 ベルカナ達だけでなく、幻獣の森にいる巫女達は忙しそうに、いそいそと金色の丸いモチーフを大きなモミの樹に飾り付けていて……。
 森の一角に設置された転移門からやってきたハンター達は、何事かと首を傾げる。
「こんにちは、ベルカナ。チューダもツキウサギも……巫女達も皆、一体何やってるんだ?」
「あら。皆様こんにちは。今、『日輪祭』の準備をしていたんですよ」
「……日輪祭? なぁに、それ」
「それはですね……」
 ハンターの問いに、笑顔を返すベルカナ。彼女はこほんと咳払いをして続ける。
 辺境の一部の地域に昔から伝わる、『日輪祭』と呼ばれるお祭りがある。
 夜が長くなるこの時期、太陽が再び光を蘇らせるように……と行われるそれは、寒さを吹き飛ばすように温かいご馳走を戴き、さらに心も暖かくなるようにとモミの樹に色とりどりの飾りつけをしたり、贈り物の交換をしたりする風習があるのだそうだ。
「へー。冬なのに太陽のお祭りするのか」
「太陽とモミの樹って、何か関係があるの?」
「ずっと昔の話ですが……冬になって太陽が遠くなると、生命を司るマテリアルが低下すると考えられていたんです。だから冬でも枯れない生命力が強いモミの樹に太陽を飾り、辺境を守って下さっている白龍様に貢物をして、力を呼び戻そうとしたんだと思います」
「あー。贈り物の交換って、白龍への貢物から始まったのかー。なるほどねー」
「ん? では、あのチューダの持っている飾りは、太陽を模したものなのか?」
 ベルカナの説明に納得したように頷くハンター。別のハンターが、チューダを指差す。
 幻獣王がキラキラと光る丸い飾りを己の身体にくくりつけているのを見て、ハンター達は笑いをかみ殺し……ベルカナは慣れているのか涼しい顔で口を開く。
「ええ。太陽のモチーフです。他にもリボンや、星、ボールも飾ったりするんですけど、色も太陽にちなんで、金や赤が使われることが多いんです」
「へー。そうなんだー。何だか楽しそうなお祭りだね。僕達も参加していい?」
「はい。勿論です。日輪祭で贈り物をし合った者達は、精霊の加護を受けて絆が深まるという言い伝えもあるんですよ。白龍様はいなくなってしまいましたけれど……私も、ナーランギ様やツキウサギ様、チューダ様に贈り物をして、辺境の地を守って戴けるようお願いしようかなと思っています」
「お前達も我輩に貢ぎ物をするとよいのですよ! 幻獣王の祝福を与えるのであります!」
 キラキラと輝く飾りを身につけて胸を張るチューダに、顔を見合わせるハンター達。
 事件解決や、歪虚退治に忙しい毎日。
 たまには、息抜きをするのも良いかもしれない――。
「今は雪で作った灯篭で照らしておりますから夜でも明るいですが、寒いですからしっかりお召し物を着ていらしてくださいね。私共で焚き火やスープなどもご用意しておりますから、寒くなられましたら暖を取りにいらしてください」
 微笑むベルカナに、頷くハンター達。
 そして、誰を誘おうかと考えながら、身支度を始めるのだった。

リプレイ本文

「……飾りつけ、ですか?」
「そうよ。このデスドクロ様級の存在になるとだな。もはや自分が楽しむというよりは、楽しませる側に回らなくちゃならねぇのよ」
「そうなんですか。大変ですね」
「一般大衆の為だ。まー見てな。かつてないツリーを拝ませてやるよ」
「楽しみにしてますね」
 両手一杯にツリーの飾りつけを抱えて胸を張るデスドクロ・ザ・ブラックホール(ka0013)に、頷くマリル(メリル)(ka3294)。その周囲の木々に、何やら仕掛けていく。
「太陽と星の飾りに……雪像もいっぱいあるんやねぇ。可愛らしいなぁ」
 立ち並ぶ雪像に目を輝かせる春日(ka5987)。
 そこにスコップを持って立っていたチョココ(ka2449)とツキウサギがえっへんと胸を張る。
「ツッキーさんと一緒に作ったんですのよ!」
「これからもっと作るッス!」
「そうなん? だったらうちもすこぉしお手伝い、させてもらおかな」
「わーい! 大歓迎なのですわ!」
「スコップお貸しするッス!」
「おおきに。どんなん作ったら楽しいやろか……」
 大喜びのチョココとツキウサギに、くすくすと笑う春日。
 新たな雪像の為に雪を集め始める。
「甘酒は火にかけたし……後はクッキーを並べましょうか」
「台がもう一つ必要ですわね」
「うん。売り物とプレゼントは分けた方がいいよね」
「あの、手伝って貰って有難いけど……遊びに行かなくていいのか?」
 その近くでせっせと屋台の準備をするミノリ(ka5705)と音羽 美沙樹(ka4757)、シアーシャ(ka2507)。料理をしながら問うザレム・アズール(ka0878)に、ミノリは遠い目をする。
「あはは。本当は連れと来るはずだったんですけど、手違いがありましてね」
「それは残念でしたわね。あたしは元々ここにいる皆さんへ贈物をしようと思っていたので……」
「あたしもー! 木の実でアクセサリー沢山作って、皆に配ろうかなって」
「そっか。でも、屋台も贈物も楽しいよな」
「そうですよね!」
「あたしもそう思います」
「うん! とってもステキだと思うの!」
 笑顔のザレムに、頷くミノリ。美沙樹とシアーシャも、贈物を並べながら微笑む。
 屋台で美味しいものや贈物を振りまけば、仲間達の笑顔が見られるはずだ。
 それは、とても楽しいし、幸せな事だと……そう思う。
「アサルトライダーズ! 集合ー!」
「点呼! いーち、にー、さーん……」
「ああっ!? 一人足りないでござるよ!!?」
 祭り会場の入り口で腕を上げた岩井崎 旭(ka0234)。
 それに応えて点呼を始めたモニカだったが、何度数えても3人しかおらず……ミィリア(ka2689)が叫ぶ。
「やべえ! はぐれたか!?」
「きっと迷子なのね……! みんなで探さなくちゃなのよー!」
「わーん! 目を離すと迷子のプロ二人の内どっちかがいなくなるでござるー!」
 わーわーと騒ぎながら走り出す3人。
 アサルトライダーズのお祭りは、嵐の様相です。


「久方ぶりかの? 怪我の具合はどうじゃ?」
「ああ。もう大分良い」
「それは何よりじゃ」
「……イスフェリア。すまんな。気を遣わせて……」
「ううん。子供達も一緒に楽しめたらいいなって思ってたから」
 バタルトゥの傷を確認し、満足そうに頷くフラメディア・イリジア(ka2604)。
 恐縮する彼に、イスフェリア(ka2088)は笑顔を返す。
 彼女はオイマト族の子供達に声をかけて、ここに連れて来ていた。
 太陽の形の焼き菓子を配ったら、子供達にすっかり懐かれ引率の先生状態である。
「おねーちゃん! 遊ぼー」
「はーい! 皆、暖かくしてるかな? ちゃんと手袋してね!」
 彼女の声に元気に返事をする子供達。イスフェリアは思い出したようにバタルトゥに向き直る。
「バタルトゥさんは、甘いものは食べられる? これ良かったら食べてみてね。フラメディアさんもどうぞ」
「おねーちゃんまだー?」
「雪ダルマ作ろー!」
 話す間もなく子供達に連れて行かれたイスフェリア。
 フラメディアはくつりと笑ってため息をつく。
「おやおや。もう行ってしもうた。後でちゃんと礼を言わねばならんのう」
「そうだな……」
 己の手の上の焼き菓子に、バタルトゥは目を細めた。


「ぼくの方が背が高いです!!」
「うんうん。良かったのな!」
 スメラギを見るなり、満面の笑みをシグリッド=リンドベリ(ka0248)の頭をよしよしする黒の夢(ka0187)。
 幼い帝からグサッ! という音が聞こえた気がして、バタルトゥが首を傾げる。
「お、俺様だってあと2年もすりゃ、こいつぐらいになるっつーの!」
「そうか。期待している……」
「こうして見ると、バターちゃんとスーちゃん、親子みたいなのな!」
「親子ですかー。じゃあ、ぼくはお兄ちゃんですね!」
「うるせー! 背が高いくらいで勝った気になるなよ!!」
 どこまでも無邪気な黒の夢とシグリッドに、吼えるスメラギ。
 その間もバタルトゥが黙々と雪を積み上げて、かまくらが出来上がっていく。


「イェルズ様。先日はお世話になりました」
「こちらこそ! 怪我、大丈夫です?」
「はい。不覚を取りましたが……次は足を引っ張らぬよう、精進して参ります」
「それは俺もです。一緒に頑張りましょう」
 深々と頭を下げる月雲 夜汐(ka5780)に釣られて、ぺこりとお辞儀するイェルズ。
 そこに、シアーシャが元気に走りこんできた。
「シアーシャさんもこんにちは」
「こんにちは! はいこれ! プレゼントだよ!!」
「えっ。俺に?」
「うん! この前、オイマト族が子供達のために色々と作ってるのが素敵だなって思って、あたしも作ってみたんだ」
「そうでしたか。ありがとうございます。大事にしますね。俺も何かあったかな……」
 ポケットを探るイェルズ。そっと何かをシアーシャの手に乗せる。
「あっ。小さい木彫りのお馬さん! かわいい!」
「この間、時間があったから彫ってみたんですよ。良かったらどうぞ」
「いいの!? ありがとー!」
 予想外の素敵な事にシアーシャは満面の笑みを浮かべた。


「うん。なかなか立派に出来上がったんじゃねーか?」
「チューダの可愛らしさが出てますよね! ね、ジョージさん」
「え、ええ」
 巨大な幻獣王の形をしたかまくらの出来に満足そうに頷くミリア・コーネリウス(ka1287)。アルマ・アニムス(ka4901)に笑顔を向けられ、ジョージ・ユニクス(ka0442)は曖昧に頷く。
 目指すべき道の先にいるミリア。彼女は優しく強く、その様に焦がれて……。でも、その傍らにはアルマがいる。
 仲の良さそうな2人の姿に、胸が締め付けられるけれど……それでも、僕は――。
「どうした? 疲れたか? 休んでいいぞ?」
「いいえ。ちょっと考え事をしていただけですよ」
 己を甘やかそうとするミリアに、笑みを返すジョージ。アルマが思い出したように懐を探る。
「そーだ! ミリアに贈物があるんですよ。ほら、指輪です!」
「へえ~。綺麗だな」
「つけてあげますよ」
「ん。ありがと」
 何の疑問も抱かず、左手を差し出すミリア。薬指に納まる指輪。蒼い宝石が輝くそれは、彼女にとても似合っている。
 ズキリと痛むジョージの胸。アルマはそれに気付かず、満面の笑みで彼女に抱きつく。
「僕、ミリアの事大好きですっ」
「ボクも大好きだぞ。もちろんジョージもな!」
「ええ! 僕もジョージ好きです!」
「……ありがとうございます。僕もお二方好きです……って、アルマ、くっつき過ぎ!」
 がばーっと抱きついてきたアルマをアワアワと押し返すジョージ。ミリアはくすくすと笑う。
「アルマはすぐに懐くからなー」
「さあ、かまくらの中でご馳走食べましょう! 屋台で甘酒買って来ましたよ」
「いいですね。僕も差し入れ持ってきました」
 わいわいと盛り上がりながらかまくらに入る3人。
 無邪気な2人の笑顔は、空回りする少年の心に突き刺さる。


「はい。錺丸にはこれ、夜芸速にはこれね」
「おや、紅々乃。随分賑やかだねえ」
「ああっ! 大巫女様! 今お伺いしようと思ってたんですよ!」
 狛犬とリーリーに贈物を渡していた鷹藤 紅々乃(ka4862)。大巫女の姿を見つけて笑顔で駆け寄る。
「大巫女様! 紹介しますです。夜芸速彦です♪」
 紅々乃に紹介され得意気に頭を振るリーリーに、大巫女は頬を緩める。
「紅々乃に似て賑やかな子だね」
「えっ。私賑やかですか!?」
「ああ。来てる時はすぐに分かるよ」
 くつくつと笑う大巫女。その笑顔に、紅々乃は遠い故郷を思い出す。
 祖母もこんな風に笑う人だった。修行の時はとても厳しかったけれど、それでも尊敬していて――。
 そんな事を考えながら、彼女は大巫女に組紐がついた銀の鈴を差し出す。
「大巫女様に贈物です。私が居た国では鈴は邪気を払うと言われています。大巫女様のご健勝を願って組み紐を編みました」
「おやおや。わざわざすまないね。それじゃあたしは可愛い孫にお菓子でも食べさせてやるとするかね」
「いいんですか!?」
「勿論。お前達もついておいで」
 狛犬とリーリーに声をかけ、紅々乃の手を引いて歩き出す大巫女。
 その枯れ枝のような手の感触に、彼女は何とも言えない懐かしさを感じていた。


「前もね、幻獣に会った事があるのよ」
 ツキウサギの毛並みに顔を埋めたまま言うシェリル・マイヤーズ(ka0509)。
 残念ながら、ここに白い馬はいなかったけれど。
 ツキウサギは柔らかくて、優しい子で――。
「平和な森だね。人も……お前達みたいに純粋だったら、闇に囚われる事もないのかな……」
 呟くシェリル。彼は何も答えないが、とても暖かい。
 ――歪虚さえ倒せばいいと思っていた。
 人の光は、闇に勝てるのだろうか……。
 ――24日は誕生日。喪った家族を思い起こさせるから、口にした事はなかった。
 でも、今なら少しだけ、楽しい事も思い出せるようになったから……明日は、大切な人達に贈物をしよう。
 だからまず、手始めに……。
「あのね、ツキウサギ」
「何ッスか?」
 幻獣の温もりを感じながら始める他愛もない話。
 今年の誕生日の思い出は、ツキウサギから始まる事になりそうだ。


 冬の最中に太陽は死して再び蘇る。己の部族でもそう教えられた。
 嘗て儀式をする側だったが、今またこうして祭に参加できて嬉しい……。
 懐かしい祭りの様子に、エアルドフリス(ka1856)は目を細める。
 ――今年は、悩み多き一年だったように思う。
 自身と向き合う事は辛かったが……シバ師から受け継いだ想いは確かにこの身中にある。
 ……部族が滅びて15年。
 それでも己はこの地の者だと、漸く思えた。
 それはきっと、自分を許してくれた人が居たからで……。
 ――やっぱり一緒に来たかったな。
 揃いのペンダントに触れる彼。昔習った、太陽を称える歌を口ずさむ。
 心は常に、ここにはいないあの人と共に。
 この歌が、あの人に届く事を願いながら。


 天に座します白龍と地に居ます八百万の聖獣の大前に
 御酒海川山野の味物を献奉り給ひて――

 森に木霊するUisca Amhran(ka0754)の伸びやかな歌声。
 その声に誘われるように、星輝 Amhran(ka0724)が地に膝をつき、鈴をかき鳴らす。
 歌に重なる鈴の音。
 星輝のゆったりとした風のような足運び。
 それは、駆け引きのように続き――。
「おー。奉納の舞か? 綺麗なもんだなー」
「そうですね……」
 杯を傾けるボルディア・コンフラムス(ka0796)に頷く天央 観智(ka0896)。
 雪に真っ白く染められた木々を見上げ、夜汐は懐かしさに目を細める。
「息も白く……里も、もう降りましたでしょうか……」
「あなたの故郷は雪深いところだったの?」
 J(ka3142)の問いにこくりと頷く彼女。
 雪灯篭や雪像を見ていると、昔、兄達と雪遊びしていた頃を思い出す……。
「しっかし、今年も色々あった一年だったよなぁ」
 空を見上げるボルディア。
 歪虚王を倒したと思ったら、今度は二体の歪虚王が現れたり、巨大な船が飛んだり……。
 十年分は驚いた気がする。
「……来年もまた、こうして同じ夜空を見ながら酒が飲めるといいねえ」
「それがボルディアさんの願いですか?」
「まあね。観智は?」
「僕ですか? ……もっと幻獣達と仲良くなれるといいですね」
 そう言いながら、隣のリーリーを見つめる彼。
 この子を迎えてから暫く経つけれど、考えている事が分かる時と分からない時がある。
 慎重派同士、波長は合いそうな気がしているのだが……。
 この子だけでなく、幻獣については色々と……何故チューダだけ名前があるのか、とか気になる事があるので、今後解明していけたらいいと思う。
「Jさんは何か願い事あります?」
「あたし? 友人の安全かなぁ。自分の事は自分で何とかするのが信条だけど、自分の手の届かない物事まではどうしようもないでしょう?」
「ははは。Jらしいねえ。夜汐は何か願いごとないのかい?」
 観智の問いに淡々と答えるJ。カラカラと笑うボルディアに、夜汐は少し考え込む。
「わたくしは……力が欲しゅうございます」
「力? 可愛いのに随分男前なお願いごとね」
「……わたくしに女子らしさなど……」
 続いたJの言葉に、雅な遊びをする姉妹を思い出し少し俯く夜汐。
 もう、とうの昔にそんなものは捨てた。
 わたくしは、戦士として、強くあらねば……!
 空を見上げて誓う彼女。Jも空を見上げてそういえば……と呟く。
「よく考えてみたらこのお祭り、願い事を叶えるんじゃなくて、絆を深めるご利益でしたっけ」
「あっ。そういやそうだったな!」
「えーと。じゃあ、この場でイチャイチャしている人々の絆が深まりますように」
「……ご自分の縁は願わないのですか?」
「え? そんなものはとうの昔に終わらせたわ。さあ皆、ご飯にしましょっか」
 彼女の大雑把な願いに冷や汗を流す観智。どこまでもサバサバとしているJに、ボルディアはカカカと笑った。


「太陽と星がきらきらしていて綺麗……。立派な飾りですね」
「そうだろう! デスドクロ様が本気を出したからな!」
「お疲れ様でした。ふろふき大根いかがですか?」
「おお! 食ってやってもいいぞ!」
「チーズを使ったグラタンもありますよ」
「わーい! 戴きますのー!」
 モミの樹の飾りつけを見てうっとりとするミオレスカ(ka3496)。
 彼女の作った料理に、デスドクロとチョココが飛びつく。
 先ほど、ボルディアや観智達にも差し入れてきたが、皆喜んで食べてくれた。
 美味しい笑顔を見るのはとても幸せだ。どうせなら、幻獣達にも喜んで貰いたい……。
「ところで、ナーランギ様の好物って何かご存知ですか?」
「む? 知らんな」
「わたくしも知らないですの」
「そうですか……。ツキウサギさんにお伺いしたらニンジンって言われたんですけど、それってツキウサギさんが好きな物でよね……」
 デスドクロとチョココの返答にふう、とため息をつくミオレスカ。
 ちなみにチューダに聞いたらナッツとお菓子と言われた。
 それも彼自身が食べたいものだろうと思う。
「……これ、どれも美味しいですの。きっとナー様も喜ぶですのよ」
「そうでしょうか」
「はいですの。ナー様に直接好物を聞けばいいですの! わたくし一緒に行ってあげますの!」
「ふふ。ありがとうございます」
 ぐっと拳を握るチョココに、笑顔を返すミオレスカ。
 ナーランギも、この料理を喜んでくれると良いのだが……。


 その頃、かまくらの中では嵐が起きていた。
「ちょっ! 黒の夢放しやがれ!!」
「えへへ、お代はらぶで結構! なのなっ~!」
 ぎゃああああ! と響き渡るスメラギの悲鳴。
 バタルトゥとスメラギに腕輪をプレゼントした黒の夢。その様子を、鍋を調理しながら眺めていたシグリッドだったが……彼が瓶の中身を鍋に投入した途端、彼女の目がとろんとしてスメラギに襲い掛かった。
「シグリッド、何を入れた……!?」
「鍋にお酒を入れただけです……! 良く味が染みるかと思って……」
 バタルトゥの問いに慌てて答えるシグリッド。
 説明しよう! 黒の夢はすごく酒に弱く、匂いを嗅いだだけで酔っ払ってしまうのだ!!
 ……って、そのせいかああああ!!
「バタルトゥさん、どうしましょう」
「……いいか。スメラギを抱えたらすぐに逃げるぞ」
「わ、分かりました! 置いてかないで下さいね!?」
 族長の緊迫した声にごくりと唾を飲む彼。黒の夢の隙を伺い、スメラギを救出しようとしたが……。
「うふふー! バターちゃんスーちゃん、シグリッドちゃんもだぁい好きよっ」
 ――救出失敗。どうやら、2人もキス魔の餌食になる模様です(ちーん)。


「雪も飾りも綺麗ですわねー」
「ホントだねー。……コーシカ、どうかした?」
「え? ううん。何でもない」
 うっとりと景色を眺めている舞桜守 巴(ka0036)と時音 ざくろ(ka1250)に、首を振って見せるコーシカ(ka0903)。
 ――今日は3人でのデート。ざくろと二人で、ってわけじゃないのはやっぱり少し残念だけど、独り占めできないのは覚悟していたから……。
 そんなコーシカの気持ちを察してか、巴がにっこりと笑う。
「コーシカ、いいからもっとくっつきなさい?」
「えっ。巴姉さん?」
「そうだよ! 遠慮はいらないよ!」
 2人をまとめて抱えるざくろに、アワアワと慌てるコーシカに余裕の笑みを浮かべる巴。
 巴は思い出したように、2人に小包を差し出す。
「2人にプレゼントを用意してますの」
「あ、ざくろも。これからもずっと一緒に過ごせるようにって思って」
「あああ! 贈物交換、忘れていたわ……!」
 プレゼントを渡され、青ざめるコーシカ。
 どうしようかと必死で考えているコーシカを見つめて、巴はにっこりと笑う。
「じゃあ、プレゼントはコーシカ自身って事でいいかしら」
「ええ……!?」
「いいですわよね? ざくろ?」
「え!? ……う、うん。それでいいよ……」
 巴の問いに慌てるざくろ。ちょっと考えてから、顔を赤くしながら頷く。
「そうと決まれば、2人とも行きましょ!」
「どこへ!?」
「そりゃあねえ……ここじゃ無理でしょ?」
「何が!?」
 艶っぽい笑みを浮かべる巴に、慌ててツッコミを入れるざくろ。
 コーシカは諦めたようにため息をつく。
「あーもー。分かったわよ。今はこれで我慢して、ね?」
 2人の頬を掠めるように唇を寄せるコーシカ。
 耳まで赤くなるざくろと、物足りなさそうな巴に、彼女はもう一度ため息をついた。


「……という訳でじゃな。作戦は成功するとは限らんものじゃ。失敗するなとは言わんが、失敗した時の事を考えておくのも指揮官というものじゃぞ」
「フラメディアの話は難しいのですー! 我輩お腹空いたのですー!」
「え。もう? さっき紅々乃ちゃんとミオレスカちゃんから差し入れ貰って食べてたじゃないの」
「おぬし、食ってばかりでは太るぞ?」
「失礼なのです! 栄養は全てこの豊かな毛並みにいくのです!!」
「チューダはんは面白いなぁ」
 びたんびたんと暴れるチューダに、呆れた顔をするフラメディア。
 ため息をつくUiscaと星輝の横で、春日がころころと笑う。
 そんな幻獣王を笑顔で見つめていたザレムは、そっとお菓子を出し出す。
「これ、良かったらどうぞ」
「美味しいのですー! もっと欲しいのです!」
「うんうん。好きなだけ食べていいぞ」
 お菓子を口いっぱいに頬張るチューダ。甘いものは別腹らしい。
 彼は、幻獣王の首にそっと星のオーナメントをかける。
「俺からの贈物。一等賞の証だよ」
「うむ! 我輩は一番なのです!」
 フンス! と胸を張るチューダ。そのもふもふのお腹が目に入って……。
「チューダ。お腹、撫でていいかな」
「ん? 勿論なのです!」
 彼の膝の上でだらしなく腹を見せる幻獣王。ザレムは感動に震えながらその毛並みを堪能する。
「クフィンもお肉食べる?」
「由野は何が好きかの……」
「……割と何でも食べるようであったがの。皆、ココア飲むかえ?」
「あ、おおきに。お手伝いしますえ。そういえば、Uiscaはんがさっき歌ってはった歌は何ですのん?」
 相棒のイェジトとリーリーを侍らせるUiscaと星輝。ココアを淹れるフラメディアと春日の隣にもイェジドが寝そべっていて……ふわもこ天国で、きゃっきゃうふふと盛り上がる。


「雄々しい者、愛らしい者……。幻獣も人とそう変わらぬのう」
 隣で横たわるイェジドの毛並みを撫でながら微笑む蜜鈴=カメーリア・ルージュ(ka4009)。
 そうだな、と頷き、杯を傾けているバタルトゥに空色の瞳を向ける。
「……して、おんしは怪我は良くなったのかえ?」
「ああ、お陰様でな……」
「斯様な時であるからこそ、休息は然りと取らねばならぬぞ? おんしは民の為じゃと無理を通しよるからの」「……それが族長としての務め。当然の事だ」
 相変わらずの友人に、ため息をつく蜜鈴。
 この男は、いつも仲間や民を優先するが、自分は度外視なのだ。
 それはいい事でもあり、悪い事でもあり……。
「のう、バタルトゥ。命を粗末にするでないぞ。己を守る事が民を守る事に繋がるのじゃからな?」
「……蜜鈴に言われる程、危なっかしいのか、俺は」
「心配しよるだけじゃ」
 鉄扇を畳み、振るう蜜鈴。そこから、幾つもの紅い蝶が飛び出し、月夜の空を舞う。
「綺麗なものだな……」
「お気に召して何よりじゃ。妾は陽光にはなれぬが……月光となりておんしの往く道を照らそうて」
「……俺には、その位の光が丁度いい」
「ふふ。そうかえ」
 彼の何気ない一言にくつりと笑う蜜鈴。
 月光と紅い炎蝶に照らされ仄かに輝く雪の中で、2人は杯を酌み交わす。


「……迷子の届出は残念ながら来てませんね」
「そっかー。あいつどこ行ったんだろな」
「もう帰っちゃったんでござるかね」
「そんなー! 寂しいのよー!」
 首を傾げるミノリに、がっくり肩を落とす旭。ミィリアの呟きにモニカが叫び……そこにひょっこりと顔を出した美沙樹が、3人に順番に守り袋を手渡す。
「あらあら。元気出して下さいな。これ宜しかったらどうぞ」
「えっ。貰っていいのか!?」
「はい。シアーシャさんのアクセサリーと一緒に、皆さんにプレゼントしてますの」
「ありがとうなのよ! きれい……!」
 笑顔の美沙樹に、輝く目を向ける旭とモニカ。
 守り袋の中から出てきた日輪の中で揺れる水晶がとても綺麗で……。それをじっと見ていたミィリアが、ぽん、と手を打つ。
「ねねっ、こうなったらとびきりのお土産探して帰らないっ?? 一緒に来られなかった子と、それから騎突の新しいお仲間に!」
「わあ! それいい考えなのよ!」
「そうだな! ……なあ、美沙樹。これ、もっと貰ってっていいか?」
「はい。構いませんわよ」
「そんなに貰ってどうするのよ?」
「丁度日輪だし、これお土産にしようかと思ってさ。俺の名前は旭だぜ? 俺が縁起物みたいで面白いじゃん」
「何か強引だけど……ま、いっか」
 首を傾げる美沙樹とモニカ。胸を張る旭にミィリアが笑う。
「でも、幻獣さんの好みが分からないのね」
「そうだなー。幻獣の好みは幻獣に聞けば分かるんじゃね?」
「それもそうだよね! よし、早速行こう!」
「賛成なのよー!」
「その前に甘酒1杯飲んでいきません?」
「クッキーもありますよ。宜しかったら是非」
 引き止めるミノリと美沙樹。看板娘達の誘惑に、アサルトライダーズの面々の足が止まる。
 ――幻獣への聞き取り調査は、もう少し先になりそうな気配だ。


 飾りつけられたモミの樹の前では、小さなコンサートが繰り広げられていた。
 ルナ・レンフィールド(ka1565)のリュートと、エステル・クレティエ(ka3783)のフルートの調和した音色。
 楽しげで、踊り出したくなるような音楽が森を包む。
 緩やかにクライマックスを迎える曲。2人はマリル(メリル)とエアルドフリスに目配せをして……。
 迎えた曲の終焉。それと同時に、エステルとエアルドフリスから放たれる水球。
 マリル(メリル)が樹の上から刀で、ルナが鋭い風を呼び、水球を砕く……!
 鳴り響く水を切る音。
 刹那、水が弾けて飛んで……マリル(メリル)が設置した鏡によって、あちこち照らされてキラキラと宝石のように輝きながら降り注ぐ。
 ――やった! 上手くいった!
 心の中でガッツポーズをする彼女。
 赤と白の装束に身を包み、樹の上からプレゼントを投げる。
「みんなに幸せがありますように!」
 宝石に続いて、マリル(メリル)の声と共に降り注ぐプレゼントに、オイマト族の子供達が目を輝かせる。
「おねーちゃん! すごいよ! 綺麗だよ!」
「このプレゼント貰っていいのかな?」
「うん。ちゃんとお姉ちゃん達にお礼言おうね」
 見た事もない余興に大はしゃぎの子供達を、イスフェリアは優しい目で見守る。


 幻想的な景色をじっくり見て回り、暖かいものを飲んで一息ついた葛音 水月(ka1895)とステラ=ライムライト(ka5122)、黒沙樹 真矢(ka5714)の3人は、わいわいとプレゼント交換会を開催していた。
「うん。赤いマフラーも暖かいし、銀のバングルもカッコいいですね! ありがとう。嬉しいです」
「喜んでもらえてよかった! ……星の耳飾り、すごく素敵! 真矢さんありがとう!」
「こっちこそ。こういう銀の髪飾り欲しかったんだ。ありがとな、ステラ」
 ステラをよしよしと撫でる真矢。水月はそんな2人に贈物を差し出す。
「僕から、真矢さんにはこれ、ステラさんにはこれを……」
「んー? 俺を飼いたいってのは本気だったんだなあ」
「あっ。真矢さんお揃いだね!」
 黒い首輪を渡されて苦笑する真矢。ステラは既につけている首輪を指差してにこにこと笑う。
「気に入らなかったですか?」
「まさか。ちゃーんと付けてやるよ、カレシ様? ステラの淡い銀のリボンも可愛いな。どれ、つけてあげるよ」
「ありがとー! ねえねえ、水月さん! リボンも真矢さんとお揃いがいいな!」
「えっ。俺、こんな可愛いの似合わねえよ?」
 無邪気に言うステラに、少し頬を赤らめる真矢。そんな2人を見て、水月はにっこりと笑う。
「そうですね。今度用意しておきますよ」
「やったー!! 水月さんありがと!」
「お前達が言うんじゃしょーがねーか……。あんま派手なのにしないでくれよな」
「よし。綺麗な景色は見ましたし、これから暖かい場所で飲んで食べますか!」
「さんせーい!」
「おっ。いいな。俺酒飲みてえな」
 ――黒い首輪は所有されている証。3人だけの秘密。
 これからもっともっと、3人だけの秘密と思い出が増えて行くのだろう。


「ヨルガ、もっと紅茶はどうじゃ?」
「うん。戴きます。ヴィルマもこれどうぞ」
 ヴィルマ・ネーベル(ka2549)の薦めに、素直に頷くヨルムガンド・D・アルバ(ka5168)。
 そうしている間も、彼女の目は幻獣を追っていて……。
 意外と可愛いものが好きなのかな……とか思いながら、ヴィルマにクッキーを渡す。
「そうじゃ。これ……作ってみたのじゃ、不格好じゃが味は大丈夫じゃよ」
 ヴィルマなりに心を込めて作った飴。それはとても綺麗で、ヨルムガンドは目を細める。
「じゃあ、俺からもこれ……受け取ってくれる?」
「おや。愛らしい黒猫じゃのう」
 黒猫の帽子ピンを渡され、笑顔になるヴィルマ。そんな彼女を、彼はじっと見つめる。
「今までのお礼だよ」
「……礼をされるような事などしておらぬが」
「やっぱり気付いてないんだね」
 くすりと笑うヨルムガンド。
 ――ハンターになったばかりで不安だった時期に、彼女と出会った。
 その優しさに、何度心が救われたことか……。
「いつか、ヴィルマみたいに強くて優しいハンターになりたいな」
「優しいのはヨルガの方じゃ。……そなたを見ておると昔の我を思い出してのぅ」
「そうなの? だったら俺も、ヴィルマみたいになれるかな。……ありがとう。君に会えて良かった」
「……この上なく嬉しい言葉じゃ」
 囁くヴィルマ。彼の微笑がぼやけて見えて……ぽろりと、透明な涙が雪の上に落ちた。


「珂々火は、旅先でこういうお祭りを楽しんだりした事あるのかい?」
「そうだな。結構あちこち……と。ほら、零すぞ」
 飾りつけられた雪灯篭に目を輝かせる焔之迦(ka3896)。手にしたスープが傾いたのを見逃さず、珂々火(ka3930)が手を添える。
「もう。子供じゃないんだから大丈夫だっての!」
「どうだかな」
 慌てて顔を背けた焔之迦は、珂々火に包みを押し付ける。
「……これ、あげる。もう、あたしの事忘れんなよ」
「ん? まだあの時の事根に持ってんのか」
「だって、あたしはちゃんと覚えてたし」
 彼女に赤い双眸を向ける珂々火。
 彼が故郷を出た時、焔之迦は小さな子供だった。
 再会した時、成長した彼女が分からなかったのも無理はないのだが……。
 珂々火は小さくため息をつくと、腕輪を外して彼女の手に乗せる。
「旅のお守りにと貰った物だが、これも縁だろう。お前に譲る」
「え……。いいの?」
「借りた物を返し、貰った物を譲る。何も持たないが捨てる訳ではない。……それが離れるまで持っているといい。お嬢を守ってくれるだろう」
「……何それ」
 この男は本当に分からない。
 捕らえどころがなくて、雲みたいな奴なんだから――。
 焔之迦は横目で珂々火を見ると、掌の贈り物を大事そうにそっと包んだ。


「余興、上手く行ってよかったね!」
「ええ。ルナさんの演奏、素敵だったわ」
「エステルちゃんこそ! 一緒に演奏できてとっても嬉しかったの」
「私もよ!」
 笑い合うルナとエステル。
 2人はそうだった! と鞄を探ると、お互いに包みを渡す。
「これ、贈物です。エステルちゃんの爽やかなイメージで選んでみたんだけど……」
「私もこれ……ルナちゃんの愛らしい雰囲気に合うといいなって思って」
 待ちきれずに、その場で包みを開ける2人。
 ルナの掌には琥珀の表板に銀の指板と弦、糸巻きから揺れる細い銀鎖と音符の飾りがついたバイオリンのブローチ。エステルの手にはパステルグリーンの革地に白と青のラインが入ったフルートケースがあって……。
「わぁ……! 綺麗! 大切にしますね!」
「素敵……! ありがとう。私、ルナさんとお友達になれて良かった」
 彼女のお蔭で、自分の音楽の世界が広がった……そう思うから。この出会いに感謝したい。
「来年も仲良くしてね」
「こちらこそ!」
 はにかむエステルに、ルナは満面の笑みを浮かべて頷いた。


「賑やかなことだな」
 皆が楽しく生きられるなら、それでよかろうよ、と呟く龍崎・カズマ(ka0178)。
 灯りで輝く森と賑やかな声を肴に、いつの間にか隣にいたイェジドに寄りかかって酒を飲む。
 ――生き物ってのはすげえよな、どんどん変わっていける。
 立ち止まる事があってもいつかは歩き出そうとする。
 見送るしかできないものには、眩しくて寂しい感じもあるが……。
 幻獣は長い時間を生きると言うが、生物をどう見ているのだろう。
「お前の目に、生物はどう映っているんだ?」
 隣の幻獣に問うカズマ。イェジドは何も答えず、深く澄んだ双眸をこちらに向けてくる。
「……なあ。お前。モノは相談なんだが。俺と一緒に来ないか?」
 これも何かの縁だ。そう思った彼。イェジドは小首を傾げて、考えているようで――。


「ゆずきゅん見て! 灯篭が綺麗!」
「うん。本当だねー」
 立ち並ぶ雪灯篭にはしゃぐ花厳 刹那(ka3984)を見守る霧雨 悠月(ka4130)。
 自分達の故郷のクリスマスみたいだな……なんて思いながら、悠月は刹那を呼ぶ。
「……刹那さんにあげたいものがあったんだよね。これ、どうぞ」
「ええ!? いいの!?」
「うん。こういうの好きかなーって」
 あは、と笑う悠月。彼の顔が何だか赤い気がする。
 贈物を見ると、可愛い動物のストラップで……どうしよう。これ、すごい好みだ。
「わ、わ、全然考えてなかったからお返しがないけど……ありがと。大事にするね!」
 努めて冷静に言う刹那。うわー。すごく嬉しい。顔、赤くなってないだろうか。
「うーん……何か、冷えてきたね。あっちで暖をとろうよ」
 自然に刹那の手を取る悠月。彼女の手が暖かくて……戦いとは違った、ドキドキがする。
「ゆずきゅん、どうかした?」
「ううん。刹那さんの手、あったかいなーって」
「ホントね。ゆずきゅんの手も暖かい」
「刹那さん、僕お腹空いたんだけど……」
「あ。お弁当作って来ました。サンドウィッチ!」
「わー! やった! すごい楽しみ!!」
「あはは。じゃ、暖かい飲み物と一緒に戴きましょうか」
「そうだね!」
 手を繋いだまま歩き出す2人。お互い、心臓が異様にドキドキしている事は秘密である。


「……という訳でですね。スメラギ様、これどうぞ!」
「ハァ!? 俺様なんも持ってきてねーぞ」
「いいんですよ。スメラギ様からは思い出を戴きますから!」
「何だそれ!?」
 日輪祭の言い伝えを話しつつ、贈り物を渡して来たアシェ-ル(ka2983)に、頬を染めるスメラギ。
 その反応は歳相応の少年に見えて……。
 しかし、今日己が話をしに来たのは王としての彼だ。
 初月 賢四郎(ka1046)はスメラギに深々と頭を下げる。
「東方解放では、多大な評価を戴きありがとうございました。案を認めて戴けたお陰で評価されましてね」
「いや。礼を言うのはこっちの方だ」
「今日お伺いしたのはもう一つ……己の身の振り方を考えてまして。スメラギ様の近衛隊はないんですか?」
「そんなもんねーよ。ずっと引き篭ってたからな。まあ、今は外に出てるし、必要かもしれねーけど」
「では、それに立候補しても?」
「それは紫草に言ってくれ。『スメラギ様が選ぶ方は斬新過ぎます』とかぜってーダメ出し食らうからよ」
「成程。では、そうさせて戴きます」
 肩を竦めるスメラギに、頷く賢四郎。
 そんな2人を見つめていたアシェールも、うんうんと頷く。
「さすがスメラギ様。人気あるんですね……! わたくしも近衛隊に立候補したいです!!」
「へっ? お前、近衛隊の仕事分かってんのか?」
「大丈夫です! ちゃんと覚えます!」
「いや、あのな……」
「賢四郎さん教えて下さいます?」
「ええ、まあ……」
 どこまでも明るいアシェールに冷や汗を流すスメラギ。賢四郎もまた、曖昧な笑みを浮かべた。


「……あやめ。具合でも悪いのか?」
「大丈夫ですよ。何でもありません。あ、あっちの方綺麗ですよ! 行ってみましょう!」
 華彩 あやめ(ka5125)が欠伸を噛み殺したように見えて心配そうに声をかける華彩 惺樹(ka5124)。
 妹にここ数日避けられている気がする。
 俺は何かしてしまったのだろうか……。
 はっ!? もしや好きな男が……!?
「……兄さん?」
「いや、何でもない。どうした?」
「このお祭りで贈り物をしあうとより仲良くなれるそうで、その……マフラーを用意したんですけど、受け取ってもらえますか……?」
「え。俺に……?」
「はい。内緒で作るの大変だったんですよ? 昨日も夜更かししちゃって」
 はにかむあやめに熱くなる目頭を押さえて打ち震える惺樹。
 ――避けられていた理由はこれだったのだ。良かった! 男じゃなかった……!!
「俺は東方一の果報者だ! ありがとう! 一生大切にする」
「ふふ。大袈裟ですよ」
「大袈裟なものか! ……と、そうだ。これは俺からだ」
「わぁ、素敵なストール。とっても暖かい……。ありがとうございます」
 幸せそうなあやめの笑顔。
 この笑顔の為にも、次に姉と出会えたら、その時は……。
 妹の手を握り、惺樹はそっと誓いを立てた。


「なあなあ。げんじゅー可愛かったな!」
「ああ、そうだな」
「飾りつけられたでっけー樹もぴかぴかだし、雪の灯りもすげー綺麗!!」
「気に入ったか?」
「うん! すっげー好き! 」
 目をキラキラと輝かせる綿狸 律(ka5377)に頬を緩める皆守 恭也(ka5378)。
 主でもあり、幼馴染でもあり、己の生きる理由でもある律は愛らしくて、いくら見ていても飽きない。
 律と共に暖かい甘酒を飲みながら寛いでいた恭也は、彼の手にそっと繊細な根付を握らせる。
「ん? 何だこれ」
「昨日、日輪祭で贈り物を交換しあうと絆が深まるという噂を聞いてな……。急ぎでこんなものしか用意できなかったが、良ければ受け取ってくれないか?」
「もっちろん! オレもな、贈り物用意したんだぜ!」
 じゃーん! という掛け声と共にアンクレットを取り出す律。恭也が一瞬目を丸くした後、すぐさま笑顔になって、律はあわてる。
「喜ぶのははえーぞ! あんま綺麗に出来なかったんだ!」
 恭也の根付と、律のアンクレットは同じ色で……。
 赤と緑は、2人を象徴する色だ。2人が共にあるようにと……同じ願いであるのが、何だか嬉しい。
「……律がくれるものならなんだって嬉しい。ありがとう。大切にする」
「それはこっちの台詞だっつーの! これからもずっと宜しくな! きょーや!!」
 えへへと笑って、恭也に身を寄せる律。冷たい風も、彼と2人なら気にならなかった。

依頼結果

依頼成功度大成功
面白かった! 26
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 完璧魔黒暗黒皇帝
    デスドクロ・ザ・ブラックホール(ka0013
    人間(蒼)|34才|男性|機導師
  • 母親の懐
    時音 巴(ka0036
    人間(蒼)|19才|女性|疾影士
  • 虹の橋へ
    龍崎・カズマ(ka0178
    人間(蒼)|20才|男性|疾影士
  • 黒竜との冥契
    黒の夢(ka0187
    エルフ|26才|女性|魔術師
  • 戦地を駆ける鳥人間
    岩井崎 旭(ka0234
    人間(蒼)|20才|男性|霊闘士
  • 優しさと懐かしさの揺籠
    シグリッド=リンドベリ(ka0248
    人間(蒼)|15才|男性|疾影士
  • カコとミライの狭間
    ジョージ・ユニクス(ka0442
    人間(紅)|13才|男性|闘狩人
  • 約束を重ねて
    シェリル・マイヤーズ(ka0509
    人間(蒼)|14才|女性|疾影士
  • 【魔装】の監視者
    星輝 Amhran(ka0724
    エルフ|10才|女性|疾影士
  • 緑龍の巫女
    Uisca=S=Amhran(ka0754
    エルフ|17才|女性|聖導士
  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムス(ka0796
    人間(紅)|23才|女性|霊闘士
  • 幻獣王親衛隊
    ザレム・アズール(ka0878
    人間(紅)|19才|男性|機導師
  • 止まらぬ探求者
    天央 観智(ka0896
    人間(蒼)|25才|男性|魔術師

  • ルーティア・ルー(ka0903
    エルフ|12才|女性|霊闘士
  • 矛盾に向かう理知への敬意
    初月 賢四郎(ka1046
    人間(蒼)|29才|男性|機導師
  • 神秘を掴む冒険家
    時音 ざくろ(ka1250
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • 英雄譚を終えし者
    ミリア・ラスティソード(ka1287
    人間(紅)|20才|女性|闘狩人
  • 光森の奏者
    ルナ・レンフィールド(ka1565
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • 【騎突】芽出射手
    モニカ(ka1736
    エルフ|12才|女性|猟撃士
  • 赤き大地の放浪者
    エアルドフリス(ka1856
    人間(紅)|30才|男性|魔術師
  • 黒猫とパイルバンカー
    葛音 水月(ka1895
    人間(蒼)|19才|男性|疾影士
  • 導きの乙女
    イスフェリア(ka2088
    人間(紅)|17才|女性|聖導士
  • 光森の太陽
    チョココ(ka2449
    エルフ|10才|女性|魔術師
  • 力の限り前向きに!
    シアーシャ(ka2507
    人間(紅)|16才|女性|闘狩人
  • 其の霧に、籠め給ひしは
    ヴィルマ・レーヴェシュタイン(ka2549
    人間(紅)|23才|女性|魔術師
  • 洞察せし燃える瞳
    フラメディア・イリジア(ka2604
    ドワーフ|14才|女性|闘狩人
  • 春霞桜花
    ミィリア(ka2689
    ドワーフ|12才|女性|闘狩人
  • 東方帝の正室
    アシェ-ル(ka2983
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • 世界は子供そのもの
    エラ・“dJehuty”・ベル(ka3142
    人間(蒼)|30才|女性|機導師
  • 一人二役
    マリル(メリル)(ka3294
    人間(紅)|16才|女性|疾影士
  • 師岬の未来をつなぐ
    ミオレスカ(ka3496
    エルフ|18才|女性|猟撃士
  • 星の音を奏でる者
    エステル・クレティエ(ka3783
    人間(紅)|17才|女性|魔術師
  • 雲に寄せる慕情
    焔之迦(ka3896
    人間(紅)|18才|女性|霊闘士
  • 優しき瞳の雲
    珂々火(ka3930
    人間(紅)|25才|男性|霊闘士
  • 紅花瞬刃
    花厳 刹那(ka3984
    人間(蒼)|16才|女性|疾影士
  • ヒトとして生きるもの
    蜜鈴=カメーリア・ルージュ(ka4009
    エルフ|22才|女性|魔術師
  • 感謝のうた
    霧雨 悠月(ka4130
    人間(蒼)|15才|男性|霊闘士
  • 清冽の剣士
    音羽 美沙樹(ka4757
    人間(紅)|18才|女性|舞刀士
  • 琴瑟調和―響―
    久我 紅々乃(ka4862
    人間(蒼)|15才|女性|舞刀士
  • フリーデリーケの旦那様
    アルマ・A・エインズワース(ka4901
    エルフ|26才|男性|機導師
  • 甘苦スレイヴ
    葛音 ステラ(ka5122
    人間(蒼)|19才|女性|舞刀士
  • この力は愛しき者の為に
    華彩 惺樹(ka5124
    人間(紅)|21才|男性|舞刀士
  • また、逢えるように
    華彩 あやめ(ka5125
    人間(紅)|16才|女性|魔術師

  • ヨルムガンド(ka5168
    人間(紅)|22才|男性|猟撃士
  • 仁恭の志
    綿狸 律(ka5377
    人間(紅)|23才|男性|猟撃士
  • 律する心
    皆守 恭也(ka5378
    人間(紅)|27才|男性|舞刀士
  • 日輪祭の看板娘
    ミノリ(ka5705
    鬼|20才|女性|格闘士
  • 月に繋がれし矢
    葛音 真矢(ka5714
    鬼|22才|女性|格闘士
  • 力を請い願う銀鬼
    月雲 夜汐(ka5780
    鬼|14才|女性|闘狩人
  • 太陽を写す瞳
    春日(ka5987
    人間(紅)|17才|女性|符術師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/12/29 13:41:58
アイコン 日輪祭のイベント予定
マリル(メリル)(ka3294
人間(クリムゾンウェスト)|16才|女性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2015/12/28 23:50:17