ゲスト
(ka0000)
クリスマス ゴブリン被害を食い止めて
マスター:からた狐

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~20人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 3日
- 締切
- 2015/12/28 15:00
- 完成日
- 2016/01/17 07:26
このシナリオは3日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
クリスマスといえばマーケット。
巨大なツリーに光を灯し、見渡す限りに屋台が並ぶ。年末年始に向けての買い物が全てそこで揃えられるというほど、品ぞろえも様々。
冬の寒さを吹き飛ばすような食事や酒もあちこちで売られ、方々から人が訪れる。
昼前から夜更けまで。人の賑わいは途絶えることなく、金と会話と笑い声が行き交う。
「大体どこもクリスマス前後まで開催されていますが。閉幕間近の今になって困った事態が起きた街から依頼が届いております」
ハンターオフィスにて、係員が依頼を説明する。
その街のマーケットは規模こそさほど大きくないが、近隣から人が集うので活気はある。小競り合いからの喧嘩や、金銭トラブルなどもしょっちゅうで、当然それなりの警備は配備済み。
けれども、複数のゴブリンが相手となると少々勝手も違ってくる。
猿並みの頭脳でも、どこで小賢しい知恵を身に着けたか、マントを羽織って入り込み、屋台の飲食物を食い荒らし、強奪して逃げて行った。
その翌日も同じ手段で入りこんで来たので、警備を強化。街に入る際はフードなどを禁止して顔を検めるようにした所、事前にゴブリンたちを発見出来た。
逃げられたが街には入られず、「ああよかった」と胸をなでおろした矢先に、なんと街の門は通らずに夕暮れ時の薄暗さを利用して街の壁を身軽に登って入って来たという。ゴブリンといえども、かなり身軽な奴ららしい。
街を囲む外壁全てを見張るには限度がある。警備員にしても、ゴブリンにばかり関わってはいられない。ゴブリンが騒動を起こせば、それに乗じてスリ窃盗を行おうとする不逞もいるので、混乱は増すばかり。
「逃走の際にゴブリンたちが店主や通行人に対して怪我を負わせることもあります。武器も携帯しているようで、下手すれば今以上の騒ぎになる可能性も考えられております」
何よりも、かくもゴブリンの横行を見過ごしておけば治安に関わる。けれど、ゴブリンたちの逃げ足も素早く、そうこうしている内にマーケット最終日となってしまった。
この日は足を運んだ人にクリスマスケーキを振る舞う予定もあり、これまで以上の混雑が予想される。
中止も考えたが、近隣に広く知らしめるにはもう時間が足りない。それにケーキはすでに用意しているので大量の無駄になってしまう。
これまで通りのゴブリン出没注意喚起はするが、今の所それが精いっぱいになると思われる。どころか、混雑に比例して警備の手も足りないぐらい。
「なので、マーケットで食い逃げ窃盗を繰り返すゴブリン対策専門に、ハンターたちには警備をお願いしたいとの依頼です」
入り込むゴブリンは三体。
門は警戒されていると分かっているので、おそらくまた夕暮れか夜陰に乗じて、外壁を伝ってくるだろう。
フードとマントで全身を隠されると、そこらの子供と見分け辛い。行動で怪しいと思っても、人ごみや屋台でごった返す街中。路地裏の闇にでも紛れ、身軽に屋根に登られでもすれば、常人では追いかけるのも難しくなる。
狙うのは飲食物と分かっている。飲食専門の屋台が二十店舗程。防火の都合もあり、街の中心にある噴水広場の周囲に集めてある。そして、最終日はその広場で終日クリスマスケーキが振る舞われる。
おそらくゴブリンも入り込めば、当然そこを狙うだろう。
「ようするに、夕暮れから重点的に飲食街を張っていればゴブリンの方から現れると予想できます。ただ、気を付けてほしいのは、街中での殺生は絶対に避けて下さい」
クリスマスや年末年始を楽しむ人々に水をさす真似はして欲しくないそうだ。
とはいえ、放置する訳にもいかない。諭しても聞き入れる訳も無く、捕え続ける間の牢ももったいない。放免すれば、今後、街中に入り込んでどんな暴れ方をするか分からない。
なので、人前では捕縛を優先。仕留めるのは街の外に運び出してから、というのが依頼者からの要望だった。
巨大なツリーに光を灯し、見渡す限りに屋台が並ぶ。年末年始に向けての買い物が全てそこで揃えられるというほど、品ぞろえも様々。
冬の寒さを吹き飛ばすような食事や酒もあちこちで売られ、方々から人が訪れる。
昼前から夜更けまで。人の賑わいは途絶えることなく、金と会話と笑い声が行き交う。
「大体どこもクリスマス前後まで開催されていますが。閉幕間近の今になって困った事態が起きた街から依頼が届いております」
ハンターオフィスにて、係員が依頼を説明する。
その街のマーケットは規模こそさほど大きくないが、近隣から人が集うので活気はある。小競り合いからの喧嘩や、金銭トラブルなどもしょっちゅうで、当然それなりの警備は配備済み。
けれども、複数のゴブリンが相手となると少々勝手も違ってくる。
猿並みの頭脳でも、どこで小賢しい知恵を身に着けたか、マントを羽織って入り込み、屋台の飲食物を食い荒らし、強奪して逃げて行った。
その翌日も同じ手段で入りこんで来たので、警備を強化。街に入る際はフードなどを禁止して顔を検めるようにした所、事前にゴブリンたちを発見出来た。
逃げられたが街には入られず、「ああよかった」と胸をなでおろした矢先に、なんと街の門は通らずに夕暮れ時の薄暗さを利用して街の壁を身軽に登って入って来たという。ゴブリンといえども、かなり身軽な奴ららしい。
街を囲む外壁全てを見張るには限度がある。警備員にしても、ゴブリンにばかり関わってはいられない。ゴブリンが騒動を起こせば、それに乗じてスリ窃盗を行おうとする不逞もいるので、混乱は増すばかり。
「逃走の際にゴブリンたちが店主や通行人に対して怪我を負わせることもあります。武器も携帯しているようで、下手すれば今以上の騒ぎになる可能性も考えられております」
何よりも、かくもゴブリンの横行を見過ごしておけば治安に関わる。けれど、ゴブリンたちの逃げ足も素早く、そうこうしている内にマーケット最終日となってしまった。
この日は足を運んだ人にクリスマスケーキを振る舞う予定もあり、これまで以上の混雑が予想される。
中止も考えたが、近隣に広く知らしめるにはもう時間が足りない。それにケーキはすでに用意しているので大量の無駄になってしまう。
これまで通りのゴブリン出没注意喚起はするが、今の所それが精いっぱいになると思われる。どころか、混雑に比例して警備の手も足りないぐらい。
「なので、マーケットで食い逃げ窃盗を繰り返すゴブリン対策専門に、ハンターたちには警備をお願いしたいとの依頼です」
入り込むゴブリンは三体。
門は警戒されていると分かっているので、おそらくまた夕暮れか夜陰に乗じて、外壁を伝ってくるだろう。
フードとマントで全身を隠されると、そこらの子供と見分け辛い。行動で怪しいと思っても、人ごみや屋台でごった返す街中。路地裏の闇にでも紛れ、身軽に屋根に登られでもすれば、常人では追いかけるのも難しくなる。
狙うのは飲食物と分かっている。飲食専門の屋台が二十店舗程。防火の都合もあり、街の中心にある噴水広場の周囲に集めてある。そして、最終日はその広場で終日クリスマスケーキが振る舞われる。
おそらくゴブリンも入り込めば、当然そこを狙うだろう。
「ようするに、夕暮れから重点的に飲食街を張っていればゴブリンの方から現れると予想できます。ただ、気を付けてほしいのは、街中での殺生は絶対に避けて下さい」
クリスマスや年末年始を楽しむ人々に水をさす真似はして欲しくないそうだ。
とはいえ、放置する訳にもいかない。諭しても聞き入れる訳も無く、捕え続ける間の牢ももったいない。放免すれば、今後、街中に入り込んでどんな暴れ方をするか分からない。
なので、人前では捕縛を優先。仕留めるのは街の外に運び出してから、というのが依頼者からの要望だった。
リプレイ本文
新年準備も兼ねたクリスマスマーケットは人でにぎわっていた。
今日は、朝からクリスマスケーキを振る舞っているとあって、はしゃぐ子供も目につく。
「凄く賑やかだね……。終わったら一緒に」
「終わったらね」
買い物を楽しむ人ごみに紛れて、時音 ざくろ(ka1250)もアデリシア=R=エルミナゥ(ka0746)と並んで歩く。ざくろの誘いにアデリシアも確認していた地図をひとまずたたんで、笑って答える。
その光景は周囲を歩く人たちと変わりない。仲睦まじい恋人同士か、仲のいい女の子たちと見るかは人それぞれだが。
けれども、二人の視線はそれとなくお互い以外の――楽しんでいる子供たちを見つめていた。
ほとんどの子が冬の寒さから身を護るように、防寒はしっかりと。中にはきっちりマフラーやフードで顔を覆っている子もいる。
日が暮れれば、寒さは増し、さらに衣服を着こむ子も増えるだろう。火の灯り程度では顔の判別も分かりづらい。
そこに、何が紛れていても気付きにくくなる。例えそれがゴブリンであっても――。
「ゴブリンたちも生きる為に食料を盗んでいるのでしょうけど、依頼を受けた以上は容赦できませんね」
エルバッハ・リオン(ka2434)はいつも通りの戦闘服に身を包んで、マーケットを見渡していた。さすがに冬場で露出は少なめ。装飾は過多だが、クリスマスの浮かれムードの中ではむしろそれがなじんでいる。
時折、怪しい小僧をみかけて双眼鏡を取り出すも、違うと確認すればまた目視に戻る。
たかがゴブリン。されどゴブリン。
カイン・マッコール(ka5336)は若干今回の依頼に不穏な表情を見せている。
「主催側は、たかがゴブリンの窃盗騒ぎと捉えているようだが、彼らは馬鹿だが間抜けではない。襲撃の為の長期的偵察を兼ねている可能性も高い」
欲の深いゴブリンは、人と敵対することも多い。単純な彼らが徒党を組み、数と力に任せて人を襲う話は珍しくも無い。
どこまで知恵が回るかは定かでないが、偵察ぐらいは行うこともある。
他に伏兵が潜んでいないか。異変が無いか一応聞いては見たが、今の所やはり出てきたゴブリンは依頼の三体だけのようだ。
各人、大体三手に分かれ、ケーキを振る舞っている噴水広場を中心に動向を見守る。
ハンター同士の連絡は魔導短伝話やトランシーバーで行っている。警戒されないよう目立たない恰好で潜む者もいれば、ハンターであると丸分かりの装備でうろつく者もいる。
今の所、ゴブリンらしき姿は誰からも連絡が来ないのだが……。
「ゴブリンもだけど、それに乗じて犯罪が増えるのは良くないね。冬場で食べ物が無いのは分からなくもないけど……」
見廻っていたマチルダ・スカルラッティ(ka4172)はややうんざりと疲れた声を出す。
ゴブリンが騒げば、それに乗じて不穏な動きを見せる人もいる。
ハンターと分かりやすい恰好をしている分、途中で仲裁を求められたり、軽犯罪者を捕まえたり声をかけられることもしばしば。
八劒 颯(ka1804)は大荷物のそばで商人のふりをしてくつろいでいるが、その視点からだと不審な行動を取ろうとする人間が目につく。
「人目につく場所での戦闘は避けて下さいとのこと。そりゃせっかくのお祭りですものねぇ」
颯は神妙に頷き、気合を入れる。
騒ぎになれば彼らもまたどう動くのか。人々の楽しみに水をさすのは勘弁願いたい。
●
街の壁を見廻ったマチルダによれば、壁もいい加減ガタが来ているので身軽な者なら登るのも可能だろうとのこと。
さすがに門の周辺などは人も多くて目につきやすいが、街一周となると目の届かない個所も多い。つまりはどこからやってきてもおかしく無いという事だ。
日が暮れ、灯りが点り出すと、ハンターたちは緊張して待つ。
ランタンなどで街は明るいが、その分、路地裏などの暗がりがより闇が深い。
子供の数は減ったが、皆無でも無い。
エルバッハは双眼鏡をのぞき、怪しい子供姿が無いかを探す。見るだけで確認できなければ仲間に連絡。そういう子供にマチルダは近付き、クッキーをプレゼントする。そこまで近付けばさすがに顔を見える。
カインや颯はケーキや屋台周辺に睨みをきかせる。そこからやや離れ、ざくろとアデリシアは市井に紛れてケーキを頬張り談笑していたのだが……。
「後ろです! 気をつけて下さい!」
魔導短伝話を通じて、マチルダの声が届く。ほぼ同時、後ろから伸びて来た手が二人の持つケーキを奪っていた。
振り返れば、目深にマントをかぶった子供らしき姿が。だが、そのマントの下に隠した手が、明らかに人間とは違うのを、しっかりと確認した。
泥棒は身を翻して逃走を始める。二人が追いかけようとした矢先、
「泥棒!」
屋台のそばとケーキのそばでも騒ぎが起きた。その中心にはどちらも同じくフードを目深にかぶった子供らしき姿がある。
「紛れやすいよう、三手に分かれたか。――おい、お前ら!」
カインが恫喝し、剣に手をかける。が、まだ抜かない。さすがに人が多すぎる。
それでも危険は察しただろう。二体は慌てて何も取らないまま逃げだした。
周囲は騒然となったが、事情を知らない者には悪童の窃盗騒ぎとしか見えない。
ぽかんとしている通行人を避けながら、ハンターたちは窃盗犯の後を追い始めた。
三体は、小柄な体を生かして人の間をすり抜けるように走る。と、壁に立てかけられていた板を足掛かりにするりと屋根の上へと駆け上がった。
そこまで追っては来ないと踏んだか。逃走者たちの逃げ足が少し鈍った。振り返る様はどこか小馬鹿にしたように肩を揺らしている。
だが。
「どこに逃げても無駄ですわ。必ず追いかけて見せます」
マテリアルを足から噴出させて、颯も軽々と屋根に飛び上がった。
登ってくるにしても時間がかかると踏んでいたのだろう。逃走者たちは露骨にうろたえ、人とは異なる奇声を上げる。とにかく逃げなければと急いで屋根を走ろうとしたが、その前にはすでにざくろが回り込んでいた。
うろたえるあまりに逃走者たちの足がもつれる。バランス崩してすっころび、そのまま屋根から落ちてしまった。
見ていた通行人が悲鳴を上げる中、三体はフラフラになりながらも立ち上がる。すかさず下にいたアデリシアが迫ると、何とか人気のない方へと三体は逃げ出していった。
「逃げましたわ。追いかけるならともかく、戦うには街の外か人気のない所まで追い込む必要があるでしょうねぇ」
しかし、街中での戦闘は難しそうだと、改めて颯は思う。
屋根から見下ろせば、通行人たちが騒いでいる。街中ではいかに人気が無い場所であっても、物音聞きつけ、どんなやじ馬が来るか分かったものではない。
幾らゴブリン退治とはいえ、街中で物騒な現場を見て、野次馬が騒ぐようではせっかくのマーケットが台無しになる。
「よし。人ごみの中では手を出せないからね。まずは人気のない方に追い込むよ」
「この方向ならいい場所があります。道を外れさせないようにしましょう」
ざくろが魔導短伝話で三体の動向を他のハンターたちにも伝える。アデリシアは先に頭に叩き込んでいた周辺地理を思い浮かべると、道を示す。
狭い路地を三体が逃走する。
「さっさと走れ。ここで成敗するぞ」
後方からはカインが追い立てて来る。
頭上は、颯とざくろがジェットブーツを利用して、屋根を伝って追いかけて来るので登れない。
道なりに走るしかないが、分かれ道になると角からアデリシアやマチルダが飛び出す。先回りされていることに気付いているのか、いないのか。とにかく三体は逃げやすい方へと走るしかなくなり。
やがて、全く人気のない場所に出る。
三体は別に困らない。どこにいようと追跡者たちを振り切れればいいのだが――。
「はい、ご苦労様です」
胸元に赤い薔薇、四肢と頬に棘を絡ませたような模様を浮かべて、エルバッハが待っていた。
三体は即座に方向転換。さらに逃げようとしたが、それより早くエルバッハがスタッフ「ケレース」を掲げていた。
青白いガスが周囲に広がり、三体をあっという間に包み込む。
スリープクラウド。魔法の眠りに誘われて、三体の動きが鈍ったかと思うと、ふらふらと倒れてしまった。
雲が晴れてから、ハンターたちは高いびきをあげる三体に近寄る。
顔を隠していたフードを外し、マチルダのハンディLEDライトで照らすと、出てきた顔はやはりゴブリン。
起こさないよう、ハンターたちは身振り手振りで確認し合うと、三体を静かに縛り上げ、街の外へと運び出した。
●
門番に事情を告げて、ゴブリンたちを街の外へと運び出す。
その頃には眠気も冷めたか、ゴブリンたちも暴れだしている。けれども、寝ている間に縛り上げた以上、せいぜい芋虫のように蠢くばかり。
「この辺りなら人も来ませんし、街中に逃げ込むような足場もありません」
念のために周囲を照らして確認するマチルダ。大丈夫、と判断すると、運んできたゴブリンを投げ出し、周囲をハンターたちは取り囲む。
地面の上で、ゴブリンたちはもがく。無抵抗な相手に、若干心が痛む者もいたが、ここで情けをかけても今後どんな仇を為してくるか分からない。
「……。あなたたちにしてみればただの偽善でしょうけど、せめて苦しまずに終わらせますね」
エルバッハの宣言が為されるや、花の香りを振りまきマチルダからファイアアローが飛んだ。さらに、エルバッハ自身もウィンドスラッシュを唱え、ゴブリンの首めがけて放っていた。
急所を撃たれ、大量の血を噴きながら倒れる一体。
抗議を繰り返していた二体は、否が応にも自分たちの命運を悟る。それを回避する手段はただ一つ。
「ゴブ、ブギャー」
火事場の何とやらか。縛り上げられた状態でも、二体は何とか起き上がり、どこかへ逃げようとする。
もっとも、勇んでみてもろくな動きが出来ず。歩いて逃げるよりも不恰好に動き回る。
「おとなしくなさって下さいませ」
颯から螺旋状の電撃が飛んだ。逃げようとしていた一体に、ぴしゃりと落雷。
「ギグ、グググググ」
微妙な痙攣をしながら、ゴブリンがばったりと倒れた。
カインはシールド「フンケルン」を構えて警戒しながら近寄るも、相手のそばに立つと容赦なく魔剣「シーガルスホルム」の黄金の刀身を振り下ろしていた。
残る一体も、銀に変わった髪をなびかせたアデリシアが、冷ややかにワイヤーウィップ「ジルベルリヒト」で絡めとる。
「逃がすと思っているのか。そもそも馬鹿な考えは起こすべきでなかったな」
「人の楽しみを邪魔するなんて、絶対に許さない……伸びろ光の剣!」
ざくろが唱えた光の剣は、情け容赦なくゴブリンを貫いていた。
●
戦闘と呼べるようなものではなく。ゴブリンたちの騒動はあっけなく終わった。
「遺体はこのまま放置とは行きません。かといって、街中に運ぶ訳にも参りませんが――」
残る問題をどうしましょう、とエルバッハが首を傾げる。
「倒したゴブリンは焼き払う。衛生問題もあるが、もし近くに仲間がいるなら警告にもなる」
カインに従い、ゴブリンの遺体はさらに街から離れた場所へ。けれど、あえて遠くからも見通しやすい場所へと運び込む。
用意してもらった薪を組み、火をかける。
聖夜に似つかわしくない灯りが夜を照らす。いや、邪悪を打ち払ってこその聖夜か。
街に戻ると、依頼人に報告。ゴブリンの騒ぎは単なる窃盗として騒ぎにはなったが、それももう沈静化している。マーケットは、客たちがただ楽しんでいた。
依頼も無事終了。後は、聖なる夜を恋人と楽しむだけ。ざくろはアデリシアの手を取り、二人でマーケットを巡る。
そろそろ夜も遅いとあって、店じまいする場所も増えてきていた。依頼者からの勧めで、颯たちもマーケットをそれぞれで楽しむ。
「騒がしいのはどうも苦手だ。嫌いじゃないけど」
カインはゴブリンが気になり、念には念を入れて、街の巡回に出る。
マーケットを楽しむ者、見張る者。ケーキを頬張り、ワインで温まり。時には誰かとダンスを踊る。
時には不穏な動きをする者には注意もしたが、どこに行っても、人々の楽しそうな笑い声が響いていた。
今日は、朝からクリスマスケーキを振る舞っているとあって、はしゃぐ子供も目につく。
「凄く賑やかだね……。終わったら一緒に」
「終わったらね」
買い物を楽しむ人ごみに紛れて、時音 ざくろ(ka1250)もアデリシア=R=エルミナゥ(ka0746)と並んで歩く。ざくろの誘いにアデリシアも確認していた地図をひとまずたたんで、笑って答える。
その光景は周囲を歩く人たちと変わりない。仲睦まじい恋人同士か、仲のいい女の子たちと見るかは人それぞれだが。
けれども、二人の視線はそれとなくお互い以外の――楽しんでいる子供たちを見つめていた。
ほとんどの子が冬の寒さから身を護るように、防寒はしっかりと。中にはきっちりマフラーやフードで顔を覆っている子もいる。
日が暮れれば、寒さは増し、さらに衣服を着こむ子も増えるだろう。火の灯り程度では顔の判別も分かりづらい。
そこに、何が紛れていても気付きにくくなる。例えそれがゴブリンであっても――。
「ゴブリンたちも生きる為に食料を盗んでいるのでしょうけど、依頼を受けた以上は容赦できませんね」
エルバッハ・リオン(ka2434)はいつも通りの戦闘服に身を包んで、マーケットを見渡していた。さすがに冬場で露出は少なめ。装飾は過多だが、クリスマスの浮かれムードの中ではむしろそれがなじんでいる。
時折、怪しい小僧をみかけて双眼鏡を取り出すも、違うと確認すればまた目視に戻る。
たかがゴブリン。されどゴブリン。
カイン・マッコール(ka5336)は若干今回の依頼に不穏な表情を見せている。
「主催側は、たかがゴブリンの窃盗騒ぎと捉えているようだが、彼らは馬鹿だが間抜けではない。襲撃の為の長期的偵察を兼ねている可能性も高い」
欲の深いゴブリンは、人と敵対することも多い。単純な彼らが徒党を組み、数と力に任せて人を襲う話は珍しくも無い。
どこまで知恵が回るかは定かでないが、偵察ぐらいは行うこともある。
他に伏兵が潜んでいないか。異変が無いか一応聞いては見たが、今の所やはり出てきたゴブリンは依頼の三体だけのようだ。
各人、大体三手に分かれ、ケーキを振る舞っている噴水広場を中心に動向を見守る。
ハンター同士の連絡は魔導短伝話やトランシーバーで行っている。警戒されないよう目立たない恰好で潜む者もいれば、ハンターであると丸分かりの装備でうろつく者もいる。
今の所、ゴブリンらしき姿は誰からも連絡が来ないのだが……。
「ゴブリンもだけど、それに乗じて犯罪が増えるのは良くないね。冬場で食べ物が無いのは分からなくもないけど……」
見廻っていたマチルダ・スカルラッティ(ka4172)はややうんざりと疲れた声を出す。
ゴブリンが騒げば、それに乗じて不穏な動きを見せる人もいる。
ハンターと分かりやすい恰好をしている分、途中で仲裁を求められたり、軽犯罪者を捕まえたり声をかけられることもしばしば。
八劒 颯(ka1804)は大荷物のそばで商人のふりをしてくつろいでいるが、その視点からだと不審な行動を取ろうとする人間が目につく。
「人目につく場所での戦闘は避けて下さいとのこと。そりゃせっかくのお祭りですものねぇ」
颯は神妙に頷き、気合を入れる。
騒ぎになれば彼らもまたどう動くのか。人々の楽しみに水をさすのは勘弁願いたい。
●
街の壁を見廻ったマチルダによれば、壁もいい加減ガタが来ているので身軽な者なら登るのも可能だろうとのこと。
さすがに門の周辺などは人も多くて目につきやすいが、街一周となると目の届かない個所も多い。つまりはどこからやってきてもおかしく無いという事だ。
日が暮れ、灯りが点り出すと、ハンターたちは緊張して待つ。
ランタンなどで街は明るいが、その分、路地裏などの暗がりがより闇が深い。
子供の数は減ったが、皆無でも無い。
エルバッハは双眼鏡をのぞき、怪しい子供姿が無いかを探す。見るだけで確認できなければ仲間に連絡。そういう子供にマチルダは近付き、クッキーをプレゼントする。そこまで近付けばさすがに顔を見える。
カインや颯はケーキや屋台周辺に睨みをきかせる。そこからやや離れ、ざくろとアデリシアは市井に紛れてケーキを頬張り談笑していたのだが……。
「後ろです! 気をつけて下さい!」
魔導短伝話を通じて、マチルダの声が届く。ほぼ同時、後ろから伸びて来た手が二人の持つケーキを奪っていた。
振り返れば、目深にマントをかぶった子供らしき姿が。だが、そのマントの下に隠した手が、明らかに人間とは違うのを、しっかりと確認した。
泥棒は身を翻して逃走を始める。二人が追いかけようとした矢先、
「泥棒!」
屋台のそばとケーキのそばでも騒ぎが起きた。その中心にはどちらも同じくフードを目深にかぶった子供らしき姿がある。
「紛れやすいよう、三手に分かれたか。――おい、お前ら!」
カインが恫喝し、剣に手をかける。が、まだ抜かない。さすがに人が多すぎる。
それでも危険は察しただろう。二体は慌てて何も取らないまま逃げだした。
周囲は騒然となったが、事情を知らない者には悪童の窃盗騒ぎとしか見えない。
ぽかんとしている通行人を避けながら、ハンターたちは窃盗犯の後を追い始めた。
三体は、小柄な体を生かして人の間をすり抜けるように走る。と、壁に立てかけられていた板を足掛かりにするりと屋根の上へと駆け上がった。
そこまで追っては来ないと踏んだか。逃走者たちの逃げ足が少し鈍った。振り返る様はどこか小馬鹿にしたように肩を揺らしている。
だが。
「どこに逃げても無駄ですわ。必ず追いかけて見せます」
マテリアルを足から噴出させて、颯も軽々と屋根に飛び上がった。
登ってくるにしても時間がかかると踏んでいたのだろう。逃走者たちは露骨にうろたえ、人とは異なる奇声を上げる。とにかく逃げなければと急いで屋根を走ろうとしたが、その前にはすでにざくろが回り込んでいた。
うろたえるあまりに逃走者たちの足がもつれる。バランス崩してすっころび、そのまま屋根から落ちてしまった。
見ていた通行人が悲鳴を上げる中、三体はフラフラになりながらも立ち上がる。すかさず下にいたアデリシアが迫ると、何とか人気のない方へと三体は逃げ出していった。
「逃げましたわ。追いかけるならともかく、戦うには街の外か人気のない所まで追い込む必要があるでしょうねぇ」
しかし、街中での戦闘は難しそうだと、改めて颯は思う。
屋根から見下ろせば、通行人たちが騒いでいる。街中ではいかに人気が無い場所であっても、物音聞きつけ、どんなやじ馬が来るか分かったものではない。
幾らゴブリン退治とはいえ、街中で物騒な現場を見て、野次馬が騒ぐようではせっかくのマーケットが台無しになる。
「よし。人ごみの中では手を出せないからね。まずは人気のない方に追い込むよ」
「この方向ならいい場所があります。道を外れさせないようにしましょう」
ざくろが魔導短伝話で三体の動向を他のハンターたちにも伝える。アデリシアは先に頭に叩き込んでいた周辺地理を思い浮かべると、道を示す。
狭い路地を三体が逃走する。
「さっさと走れ。ここで成敗するぞ」
後方からはカインが追い立てて来る。
頭上は、颯とざくろがジェットブーツを利用して、屋根を伝って追いかけて来るので登れない。
道なりに走るしかないが、分かれ道になると角からアデリシアやマチルダが飛び出す。先回りされていることに気付いているのか、いないのか。とにかく三体は逃げやすい方へと走るしかなくなり。
やがて、全く人気のない場所に出る。
三体は別に困らない。どこにいようと追跡者たちを振り切れればいいのだが――。
「はい、ご苦労様です」
胸元に赤い薔薇、四肢と頬に棘を絡ませたような模様を浮かべて、エルバッハが待っていた。
三体は即座に方向転換。さらに逃げようとしたが、それより早くエルバッハがスタッフ「ケレース」を掲げていた。
青白いガスが周囲に広がり、三体をあっという間に包み込む。
スリープクラウド。魔法の眠りに誘われて、三体の動きが鈍ったかと思うと、ふらふらと倒れてしまった。
雲が晴れてから、ハンターたちは高いびきをあげる三体に近寄る。
顔を隠していたフードを外し、マチルダのハンディLEDライトで照らすと、出てきた顔はやはりゴブリン。
起こさないよう、ハンターたちは身振り手振りで確認し合うと、三体を静かに縛り上げ、街の外へと運び出した。
●
門番に事情を告げて、ゴブリンたちを街の外へと運び出す。
その頃には眠気も冷めたか、ゴブリンたちも暴れだしている。けれども、寝ている間に縛り上げた以上、せいぜい芋虫のように蠢くばかり。
「この辺りなら人も来ませんし、街中に逃げ込むような足場もありません」
念のために周囲を照らして確認するマチルダ。大丈夫、と判断すると、運んできたゴブリンを投げ出し、周囲をハンターたちは取り囲む。
地面の上で、ゴブリンたちはもがく。無抵抗な相手に、若干心が痛む者もいたが、ここで情けをかけても今後どんな仇を為してくるか分からない。
「……。あなたたちにしてみればただの偽善でしょうけど、せめて苦しまずに終わらせますね」
エルバッハの宣言が為されるや、花の香りを振りまきマチルダからファイアアローが飛んだ。さらに、エルバッハ自身もウィンドスラッシュを唱え、ゴブリンの首めがけて放っていた。
急所を撃たれ、大量の血を噴きながら倒れる一体。
抗議を繰り返していた二体は、否が応にも自分たちの命運を悟る。それを回避する手段はただ一つ。
「ゴブ、ブギャー」
火事場の何とやらか。縛り上げられた状態でも、二体は何とか起き上がり、どこかへ逃げようとする。
もっとも、勇んでみてもろくな動きが出来ず。歩いて逃げるよりも不恰好に動き回る。
「おとなしくなさって下さいませ」
颯から螺旋状の電撃が飛んだ。逃げようとしていた一体に、ぴしゃりと落雷。
「ギグ、グググググ」
微妙な痙攣をしながら、ゴブリンがばったりと倒れた。
カインはシールド「フンケルン」を構えて警戒しながら近寄るも、相手のそばに立つと容赦なく魔剣「シーガルスホルム」の黄金の刀身を振り下ろしていた。
残る一体も、銀に変わった髪をなびかせたアデリシアが、冷ややかにワイヤーウィップ「ジルベルリヒト」で絡めとる。
「逃がすと思っているのか。そもそも馬鹿な考えは起こすべきでなかったな」
「人の楽しみを邪魔するなんて、絶対に許さない……伸びろ光の剣!」
ざくろが唱えた光の剣は、情け容赦なくゴブリンを貫いていた。
●
戦闘と呼べるようなものではなく。ゴブリンたちの騒動はあっけなく終わった。
「遺体はこのまま放置とは行きません。かといって、街中に運ぶ訳にも参りませんが――」
残る問題をどうしましょう、とエルバッハが首を傾げる。
「倒したゴブリンは焼き払う。衛生問題もあるが、もし近くに仲間がいるなら警告にもなる」
カインに従い、ゴブリンの遺体はさらに街から離れた場所へ。けれど、あえて遠くからも見通しやすい場所へと運び込む。
用意してもらった薪を組み、火をかける。
聖夜に似つかわしくない灯りが夜を照らす。いや、邪悪を打ち払ってこその聖夜か。
街に戻ると、依頼人に報告。ゴブリンの騒ぎは単なる窃盗として騒ぎにはなったが、それももう沈静化している。マーケットは、客たちがただ楽しんでいた。
依頼も無事終了。後は、聖なる夜を恋人と楽しむだけ。ざくろはアデリシアの手を取り、二人でマーケットを巡る。
そろそろ夜も遅いとあって、店じまいする場所も増えてきていた。依頼者からの勧めで、颯たちもマーケットをそれぞれで楽しむ。
「騒がしいのはどうも苦手だ。嫌いじゃないけど」
カインはゴブリンが気になり、念には念を入れて、街の巡回に出る。
マーケットを楽しむ者、見張る者。ケーキを頬張り、ワインで温まり。時には誰かとダンスを踊る。
時には不穏な動きをする者には注意もしたが、どこに行っても、人々の楽しそうな笑い声が響いていた。
依頼結果
依頼成功度 | 普通 |
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面白かった! | 4人 |
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依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 カイン・A・A・カーナボン(ka5336) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2015/12/27 23:37:50 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/12/27 19:50:13 |