ゲスト
(ka0000)
笑顔で近づく者達 ~廃墟の集落~
マスター:天田洋介

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/12/30 19:00
- 完成日
- 2016/01/07 15:36
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
グラズヘイム王国・古都【アークエルス】東方の森に、かつてナガケと呼ばれる集落が存在した。
集落の主な産業は豚、牛、馬を育てる畜産だったのだが、幻獣の獅子鷹『メニュヨール』によって崩壊してしまう。家畜の仔攫いが激増したからだ。
ナガケ集落は解散の憂き目に遭い、青年ガローア・ラグアは父親のマガンタと共に放浪の身となる。
父が亡くなってからも根無し草な生き方を続けてきたガローア。だが覚悟を決めた彼はハンターの力を借りてメニュヨール退治に成功した。
その後、ガローアは古都でドワーフの青年『ベッタ』と出会う。意気投合した二人は集落復興に動きだす。
ベッタの故郷周辺に棲息していた幻の青と呼ばれていた幻獣の肉質はとても素晴らしかった。リアルブルーの高級和牛霜降り肉を彷彿とさせる。そこで幻の青の名を改めて『シモフリ』と呼称することとなった。
シモフリ六頭を放牧場に連れて帰り、オークの樹木が並ぶ放牧場に放つ。しばらくは森での生活と同じように樹木の上で棲みついた。だが危険がなければ地表で暮らすことがわかる。また好物は木の実だが、玉蜀黍の粒にも旺盛な食欲をみせた。
シモフリ六頭の他に乳牛一頭と鶏の雌鳥六羽も飼うことにする。これで毎日新鮮な牛乳と鶏卵が手に入るようになった。
木の実不足に備えて春からの玉蜀黍畑の開墾を開始。その頃、紅の兎のような幻獣二体に柵を壊される事態が発生した。
それが過ぎ去ったかと思えば雑魔の巨大蜂が飛来。雑魔蜂はハンター達の知恵と行動力によって巣ごと退治される。
森が紅葉に染まる頃、ある商人一家を集落に泊まった。よい機会と考えたガローアはハンターに野生のシモフリを狩ってきてもらう。
ハンターの手によって調理されたシモフリ料理を味わった一家はいたく気に入る。市場にだす際には是非に声をかけてくれといわれ、人脈作りに成功した。
「おーい、ガローア。ちょいと来てくれへんか?」
ある日の朝、放牧場の片隅でベッタがガローアを大声で呼んだ。
「どうかした……こいつらはもしかして」
「そうや。おそらくはあんときの奴らや」
二人が見下ろしたのは紅い兎。枯れた草むらの中で二羽が寄り添って身を寄せ合っている。以前の記憶よりもかなり痩せて震えていた。
「柵を壊した奴らやけど」
「このまま放っておくのもなんだよね」
ガローアとベッタは一羽ずつ抱えて住処へと戻った。薪をくべて暖炉の炎を強めにし、部屋を暖かくする。二羽とも毛布にくるんで寝かせてあげた。
それからベッタが玉蜀黍畑の開墾に向かう。ガローアは家に残って紅い兎達を見守りながらロープを編むことにした。
「兎が食べそうなのは……どれだ?」
紅い兎が何を食べるのかわからない。そこで本物の兎が食べそうなカボチャと人参を近くに置いておく。
午後になって二人は交代する。ガローアが家畜小屋での作業。ベッタは掃除などの家事を行う。
ベッタが薪割りを終えて部屋へ戻ったところ、二羽が目を覚ましていた。
「腹減ってたんか。急いで食べると喉に詰まらすで」
懸命にカボチャやニンジンを囓っている。
ベッタが夕食用のシチューを作っているとガローアが戻った。その頃には二羽の紅い兎はお腹いっぱいで寝ていた。
二人は食事をとりながらここしばらくのことを振り返る。
「まさかあれから立て続けに出産になるなんて思わなかったよ」
「シモフリの仔も仰山産まれたんやから、なんとかせなあかんからな」
二週間前から一週間前はシモフリの出産ラッシュだった。四頭の雌から計三十一頭が産まれたのである。
現在、雄二頭は放牧場にいるが雌四頭と仔三十一頭は家畜小屋で飼っていた。
オークの木から採取したドングリはまだまだたくさんある。乳をだす雌に優先して食べさせていた。
数日が経って紅い兎二羽は見違えるぐらいすっかり元気になる。二人にとても懐く。もう悪さはしないであろう。
家畜小屋での世話。それに玉蜀黍畑を年内に完成させたいと考えたガローアはハンターに協力を仰ぐことにする。古都アークエルスでの買い出しの際に依頼を行った。
このときのガローアとベッタは何も知らない。知る由もない。一週間後、ナガケ集落を奪おうと賊が現れることを。
集落の主な産業は豚、牛、馬を育てる畜産だったのだが、幻獣の獅子鷹『メニュヨール』によって崩壊してしまう。家畜の仔攫いが激増したからだ。
ナガケ集落は解散の憂き目に遭い、青年ガローア・ラグアは父親のマガンタと共に放浪の身となる。
父が亡くなってからも根無し草な生き方を続けてきたガローア。だが覚悟を決めた彼はハンターの力を借りてメニュヨール退治に成功した。
その後、ガローアは古都でドワーフの青年『ベッタ』と出会う。意気投合した二人は集落復興に動きだす。
ベッタの故郷周辺に棲息していた幻の青と呼ばれていた幻獣の肉質はとても素晴らしかった。リアルブルーの高級和牛霜降り肉を彷彿とさせる。そこで幻の青の名を改めて『シモフリ』と呼称することとなった。
シモフリ六頭を放牧場に連れて帰り、オークの樹木が並ぶ放牧場に放つ。しばらくは森での生活と同じように樹木の上で棲みついた。だが危険がなければ地表で暮らすことがわかる。また好物は木の実だが、玉蜀黍の粒にも旺盛な食欲をみせた。
シモフリ六頭の他に乳牛一頭と鶏の雌鳥六羽も飼うことにする。これで毎日新鮮な牛乳と鶏卵が手に入るようになった。
木の実不足に備えて春からの玉蜀黍畑の開墾を開始。その頃、紅の兎のような幻獣二体に柵を壊される事態が発生した。
それが過ぎ去ったかと思えば雑魔の巨大蜂が飛来。雑魔蜂はハンター達の知恵と行動力によって巣ごと退治される。
森が紅葉に染まる頃、ある商人一家を集落に泊まった。よい機会と考えたガローアはハンターに野生のシモフリを狩ってきてもらう。
ハンターの手によって調理されたシモフリ料理を味わった一家はいたく気に入る。市場にだす際には是非に声をかけてくれといわれ、人脈作りに成功した。
「おーい、ガローア。ちょいと来てくれへんか?」
ある日の朝、放牧場の片隅でベッタがガローアを大声で呼んだ。
「どうかした……こいつらはもしかして」
「そうや。おそらくはあんときの奴らや」
二人が見下ろしたのは紅い兎。枯れた草むらの中で二羽が寄り添って身を寄せ合っている。以前の記憶よりもかなり痩せて震えていた。
「柵を壊した奴らやけど」
「このまま放っておくのもなんだよね」
ガローアとベッタは一羽ずつ抱えて住処へと戻った。薪をくべて暖炉の炎を強めにし、部屋を暖かくする。二羽とも毛布にくるんで寝かせてあげた。
それからベッタが玉蜀黍畑の開墾に向かう。ガローアは家に残って紅い兎達を見守りながらロープを編むことにした。
「兎が食べそうなのは……どれだ?」
紅い兎が何を食べるのかわからない。そこで本物の兎が食べそうなカボチャと人参を近くに置いておく。
午後になって二人は交代する。ガローアが家畜小屋での作業。ベッタは掃除などの家事を行う。
ベッタが薪割りを終えて部屋へ戻ったところ、二羽が目を覚ましていた。
「腹減ってたんか。急いで食べると喉に詰まらすで」
懸命にカボチャやニンジンを囓っている。
ベッタが夕食用のシチューを作っているとガローアが戻った。その頃には二羽の紅い兎はお腹いっぱいで寝ていた。
二人は食事をとりながらここしばらくのことを振り返る。
「まさかあれから立て続けに出産になるなんて思わなかったよ」
「シモフリの仔も仰山産まれたんやから、なんとかせなあかんからな」
二週間前から一週間前はシモフリの出産ラッシュだった。四頭の雌から計三十一頭が産まれたのである。
現在、雄二頭は放牧場にいるが雌四頭と仔三十一頭は家畜小屋で飼っていた。
オークの木から採取したドングリはまだまだたくさんある。乳をだす雌に優先して食べさせていた。
数日が経って紅い兎二羽は見違えるぐらいすっかり元気になる。二人にとても懐く。もう悪さはしないであろう。
家畜小屋での世話。それに玉蜀黍畑を年内に完成させたいと考えたガローアはハンターに協力を仰ぐことにする。古都アークエルスでの買い出しの際に依頼を行った。
このときのガローアとベッタは何も知らない。知る由もない。一週間後、ナガケ集落を奪おうと賊が現れることを。
リプレイ本文
●
ハンター一行は借りた馬車に乗って寒風吹きすさぶ年末のナガケ集落を訪れた。
「シモフリの仔がやんちゃで大変なんです」
「ほな開墾を手伝ってくれる人は、おいらの後をついてきてや。シモフリはガローアと一緒やで」
シモフリを世話する班はガローアと一緒に家畜小屋へと向かう。玉蜀黍畑の開墾を手伝う班はベッタと一緒に集落の外に向かった。
仕事は希望によって数日おきに入れ替わる予定である。
マリィア・バルデス(ka5848)だけは愛犬二頭と一緒に放牧場に残った。のんびりとしている雄のシモフリ達を見張りつつ、柵や塀などの再点検を行う。
「結構広いし、それに放牧場といってもオークの木が生えているから、まるで林みたいよね」
真新しい板で作られている柵の部分は以前に紅い兎が壊した個所だ。
「ガローアがいってたけど、あの小さな身体でこれほどの破壊力があるは驚きよね。とても厚い板なのに」
マリィアはガローア達の住処にいた紅い兎二羽を思いだす。小柄でとてもかわいらしい姿からは想像できない攻撃力であった。
「これだけいっぺんに出産されると……世話も大変ですね」
家畜小屋出入り口の扉を潜り抜けて足を踏み入れたばかりの明王院 雫(ka5738)が瞬きを繰り返す。
母親から乳を飲んでいるたくさんの仔たち。そうでない仔の中には小屋の中を駆け巡る。まん丸の体型の仔シモフリが倒れるとボールのように転がっていく。雌四頭と仔三十一頭の楽園が広がっていた。
「新しい藁が敷いてある間仕切りの向こう側に母親を移動させてください。仔の大半は追いかけていきますので。そうでないのは抱えて運んでもらえれば。移動が終わったら古くなった藁を交換して綺麗にします」
ガローアが閂を抜いて間仕切りの扉を開ける。
「はい。こっちだよ。ゆっくりとね」
シェルミア・クリスティア(ka5955)が雌のシモフリを一頭ずつ追い立てて移動させていった。
(シモフリの母は大変なご様子。それにしてもこうしてお世話をするのですか。勉強になることこの上ない)
そんなことを考えながらツィスカ・V・アルトホーフェン(ka5835)はフォークで古い藁を掬う。手押し車に載せて外にある堆肥作りの場所へと持っていく。
明王院雫とガローアも手伝って古い藁をすべて除いた。掃除をしてから新しい藁を運び込む。
他にも餌となるドングリの用意など、やるべきことはたくさん残っていた。
集落の外に辿り着いた一同も仕事を始めていた。開墾作業はガローアとベッタによってかなり進んでいたが、わずかに未開拓の土地が残っている。
「これを抜いてしまえば後は楽になるよね」
「ではこれを使って片付けてしまいますか」
巌 技藝(ka5675)と九竜 諒斗(ka1290)は覚醒した上で大地に鎮座していた大木の切り株に挑んだ。頑丈な鉄棒を差し込み、梃子の原理で掘り起こす。
「小石はまだまだありますね」
「すべての小石を除くのは無理ですが、玉蜀黍の育成に問題がないぐらいにはできるはずです」
連城 壮介(ka4765)が大地に鍬を入れていく。ミオレスカ(ka3496)は掘り起こした土に混じる小石を拾う。実際に種を蒔くのは春頃だが今はそのための前準備である。
仕事を頑張っているうちに時間は瞬く間に過ぎていく。
宵の口、暖炉のある広間でガローアが作ったシチューをみんなで味わう。
「そうなんです。仔シモフリすべてに名前をつけたいんですが、多すぎて困っているんです。思いつかなくて」
ガローアが会話の流れからハンター達に仔シモフリの名付けを頼んだ。
食事の後、ミオレスカが気になっていた紅い兎二羽に近づこうとする。
「よしよし、あれ? 避けられてしまいました。何かコツがあるのでしょうか?」
だが怖がられて部屋の別隅へと逃げられてしまう。
「ミオレスカさん、このカボチャがあればばっちりやで」
ベッタに言われた通りにすると二羽がミオレスカの足元までやってくる。
「とてもいい子たちです」
「まぁ……可愛らしいうさぎさんたちですね」
ミオレスカが抱えている紅い兎を明王院雫が撫でる。もふもふな長い毛で触り心地がとてもよかった。
旅の疲れと肉体作業でハンター達は疲れていた。その日は誰もが早めに就寝する。
「なんや、珍しいで」
翌朝、一番早く起きたベッタが窓戸を開けて野外を眺めると霧が立ち込めていた。
●
霧の中、マリィアが放牧場を巡回していると愛犬二頭が呻りだす。
もしもに備えてマリィアは覚醒して待ち構える。今は普段着。腰の裏側に隠してある白色の拳銃を意識しつつ。
「やあ、そこの美しい方、ここは一体どこだね。森で迷ってしまってね」
霧の中から笑顔で近づいてきたのは筋肉隆々の厳つい男達だ。総勢十名。話しかけてきたのはリーダーらしき眼帯の男だ。
「貴女だけですか。こちらに住んでいらっしゃるのは」
「こちらのことを話す前にあなたたちは誰かしら? 用件はあるのかしら?」
マリィアが話しかけていた途中、何かの用事でガローアが通りかかる。
「ねぇガローア。この村ってどこかで大々的に移民募集したの? ……もしそうなら私も手をあげたいと思って」
「そんなことしていませんよ。こちらの方々は?」
マリィアはガローアに事情を話す。
「この方のいう通りなんです。森をでるための道を教えてもらえますか? もし日暮れまでに徒歩で村や町に着くのが難しいのなら泊めてもらいたいのです。夜露が凌げれば鈍なところでも構いません」
事情を聞いたガローアは一晩の宿泊を承知した。明朝、馬車をだして古都まで連れて行く約束も交わす。
(安全確保のテロ対策等に駆りだされたときも、こんな胡散臭い連中を見かけたわ)
マリィアは男達十名を快く思わない。動向の注視を心に決めた。彼女のいうことを聞いた愛犬二頭がベッタを連れてくる。
「いきなり大所帯やな」
夕食分の食材を使って昼食用の即席のハムサンドが作られた。みんなで食べるとき、ミオレスカが男達を作業に誘う。
「畑や小屋のお手伝いやってみませんか? 人手はいくらあっても足りませんし、遠い国では、働かざるもの食うべからず、とも言うそうです」
「もちろんですよ。みんな、お世話になるんだ。午後からは全員で手伝うぞ」
眼帯の男の呼びかけに他の九名が大声で応えた。
午後の作業は頭数が増えたおかげでとても捗る。ベッタと明王院雫が夕食と寝床の用意にかかり切りになってもお釣りがあるぐらいの成果があがった。
夕食時の広間は楽しい団らんの場となる。
「シモフリって、とっても美味しいんですよ」
「どんな味なんだ?」
ミオレスカだけでなく多くのハンターが男達と話す。やがて就寝の時間となる。
日付が変わる頃、目が覚めてしまったシェルミアが水を飲みに台所へと向かう。廊下を歩いていると男達に宛がわれた部屋から灯りが漏れていることに気がつく。
「ったくケチな奴らだぜ。酒ぐらいだせっての。そうすりゃ酔わせてやっちまったのによ」
「無理だな。半数以上が飲み過ぎて仕事どころじゃなくなるのがオチだ」
先程までとは違う野蛮な話し方にシェルミアは疑問を感じる。しばらく扉の前に立って耳をそばだてた。
(全員殺してこの集落を乗っ取る? た、大変だよねっ!)
慌てながらもシェルミアは肌身離さず持っていたトランシーバーを送信モードに。そして扉枠上の梁に置く。
足音を立てずに寝室へ戻ってツィスカを揺らす。起きたツィスカがトランシーバーを受信モードにすると男達の会話が聞こえてきた。
「獲物を前に意気揚々と……三流のすることですね」
ツィスカとシェルミアは手分けして仲間達に緊急事態を報せる。ガローアとベッタにも伝えて一つの部屋に集まってもらった。
無線を通じて届く男達の悪巧みが終わる。今晩の襲撃はあきらめて、朝食後に集落を乗っ取るつもりらしい。但し、見張りは立てるようだ。
「本当なんですね」
「見かけはごついけど、普通やと思うてしもたわ。おいらも修行が足らんな」
ガローアとベッタが肩を落とす。
「あの方たちが、強盗……」
ミオレスカも少し落ち込んだがすぐに持ち直す。
「何かあったらガローアとベッタを守ってね」
マリィアは屈むと二羽の紅い兎の頭を撫でる。
もしもを考えてガローアとベッタは集落内の空き家にある隠し部屋に避難することとなった。窓から静かに出て行く二人を紅い兎二羽が追いかける。
ばれないようツィスカのトランシーバーを回収。その後、ハンター側も見張りを立てて朝まで男達が休む部屋を見張った。
●
「馬車が壊れてしまって、ガローアとベッタが直している最中なのよ。すぐには無理そうだからもう一晩泊まっていけばいいんじゃない? 今日も仕事を手伝ってもらえたら嬉しいんだけどよいかしら?」
朝食前にマリィアが男達に告げる。眼帯の男が馬車修理を手伝いたいといいだしたが適当に誤魔化した。
「野生のシモフリを狩ってくるので、今晩はお楽しみに」
明王院雫は集落から外にでる方便として嘘をつく。
こうして主に家畜小屋と玉蜀黍畑に分かれて作業を行うこととなる。明王院雫は狩りへと出かけた。マリィアは昨日に引き続いて放牧場を巡視するのだった。
●
すでに男達が賊だというのは判明している。故に野蛮な行為を見届けてから行動する必要はない。どのみち戦闘中に馬脚を現すのだから。
問題はナガケ集落に被害が及ばないようすることだけ。特に人とシモフリへの被害は避けなければならなかった。
「シモフリたちの鳴き声が聞こえてきますよ」
「おかしいですね。錠前が開かないとは」
シェルミアとツィスカが家畜小屋の扉を開けるのに手こずる。
(この様子、間違いありませんね)
九竜諒斗が横目で眺めると賊五人は不遜な態度をとっていた。
扉を開けるふりをしつつ覚醒済みの九竜諒斗、シェルミア、ツィスカは攻撃を仕掛ける。振り向きざまに賊五名を次々と手足の打撃で吹き飛ばした。
「賊なのはばれていますからね」
建物の影に隠れていた明王院雫も参戦。足元に転がってきた賊の渠打ちを鞘付きの剣で突いて悶絶させる。
「てめぇら! こっちの正体を知ってたな!」
唯一、はげ頭の男だけが立ち上がった。そのタフさからいって覚醒者に間違いない。攻撃してくると身構えたが一目散に遁走していく。
「仲間を置いて逃げるのですね」
「とことこん卑怯者だね」
「銃を持つ私から逃げるつもりとは愚かですね」
九竜諒斗、シェルミア、ツィスカが銃撃ではげ頭の脚部を狙う。物陰へと隠れる前に撃ち抜いて転ばす。
「余計なことをしなければ怪我をしないで済んだかも知れないのに」
はげ頭の男が握っていたフォークを明王院雫が踏んで使えなくする。その間に確保。全員を縛り上げて空き家に放り込んでおくのだった。
●
玉蜀黍畑の開墾地に辿り着いたとき、眼帯の男を含めた五人全員が隠し持っていた銃を抜いた。
「あの集落は俺達のもんだ。これから有効利用させてもらうぜ。あのまん丸の家畜はうまいんだってな。楽しみだぜ。最後のお仕事は畑のど真ん中に大きな穴を掘ることだ。小屋に行ったお仲間も充分に隠れるくらいの大きな穴をよろしくな」
眼帯の男がにやつきながら銃口を巌技藝の額に向ける。
「一人ずつ狙うと思ったけど、せっかちだね、あんた。それじゃもてないんじゃないかね?」
巌技藝は嘲笑を浮かべながら眼帯の男を睨みつけた。余程気にさわったのか彼の銃爪は軽かった。しかし何度引いても弾はでない。
「私が不発になるように細工しましたから」
ミオレスカがそう呟いたとき、その場にいたハンターが一斉に動いた。
「容赦しません。覚悟してください」
連城壮介は近くに隠してあった日本刀「虎徹」を抜いてすり足気味に賊へと迫った。身体を捻りつつ下段から振り上げた切っ先が深紅に輝いて軌跡を描く。さらに寄って上段から振り下ろして別の賊を袈裟懸けに。
跳び上がった巌技藝はトンファーで賊の頭部を強打する。
ミオレスカは魔導拳銃で銃撃。制圧射撃で賊の動きを牽制した後でレイターコールドショットで動きを封じた。
マリィアは少し離れた樹木の裏で様子を窺う。無線を通じて会話が聞こえていたので状況は完全に把握していた。
(逃げるなんて賊の首領失格もいいところね)
茂みの中に飛び込もうとした眼帯の男を威嚇射撃で牽制。殺意を込めた視線で睨みつけて逃げる気をなくさせる。
運が良いのか悪いのか。苦しみながらも斬られた賊共はまだ息があった。
●
重傷を負った賊の治療はひとまず間に合う。後は本人の生命力次第。縛ったまま空き家に閉じ込めて紅い兎に見張ってもらった。ハンター一行が帰路へ就いた際、古都の官憲に引き渡す予定となる。
ガローアとベッタは未だ落ち込んでいた。そんな雰囲気を吹き飛ばそうとハンター達はシモフリの名付けのことを思いだす。二人を連れて家畜小屋を訪ねる。
「名前……そうですね。付けるとすれば、マツザカ、コウベ、オウミ、ヒダ……ちょっと捻ってヒタチなんてどうでしょうかね? 俺は『ヒタチ』がよいと思いますよ」
九竜諒斗にはこだわりがあるらしい。
「名前、付けさせてくれるのよねっ! じゃあ『デルタ』でっ!」
マリィアはおでこの辺りがわずかに茶色い仔シモフリがお気に入りだ。
「ではこの仔は『アオタロウ』がいいです」
ミオレスカは一段と深い青い毛並みの一頭に名前をつける。
「この仔は『フジ』。二つと無いで、フジ(不二)です」
連城壮介は名付けたばかりの仔シモフリを抱きかかえた。
住処へと戻る頃にはガローアとベッタの気持ちもかなり上向く。
「そうや。あれがあったんや。餅、いうとったな」
少し前、ベッタが古都で買ってきた東方の食材を思いだす。
「餅ですか……そのまま焼いて食べるのもよいですし、油で揚げるのも美味しいですよね。できれば醤油があればなお良かったんですがね……」
「お餅とは、お米の新技術ですね。醤油と合わせると、奥が深いです」
九竜諒斗とミオレスカが話題にしていた醤油にガローアは聞き覚えがあった。
「醤油、確かあったような」
ガローアは古都の商人に勧められて瓶入り醤油を購入していた。
炭火の上に網をのせて餅が焼かれる。いくつかは油で揚げられた。
「白いけどまるでシモフリみたいですね」
「本当に。まん丸です」
九竜諒斗と明王院雫がぷっくりと膨らんだ餅をみてシモフリを連想する。
「変わった味だけど美味しいね」
「あんなに固かったのにここまで柔らかくなるとは不思議な食べ物ですね」
シェルミアとツィスカが砂糖醤油で焼きたての餅を頬張る。
ハンター滞在中に玉蜀黍畑の開墾は完了、仔シモフリの生育も順調。ガローアとベッタは降りかかろうとした災いを払ってくれたハンター一行に感謝するのだった。
ハンター一行は借りた馬車に乗って寒風吹きすさぶ年末のナガケ集落を訪れた。
「シモフリの仔がやんちゃで大変なんです」
「ほな開墾を手伝ってくれる人は、おいらの後をついてきてや。シモフリはガローアと一緒やで」
シモフリを世話する班はガローアと一緒に家畜小屋へと向かう。玉蜀黍畑の開墾を手伝う班はベッタと一緒に集落の外に向かった。
仕事は希望によって数日おきに入れ替わる予定である。
マリィア・バルデス(ka5848)だけは愛犬二頭と一緒に放牧場に残った。のんびりとしている雄のシモフリ達を見張りつつ、柵や塀などの再点検を行う。
「結構広いし、それに放牧場といってもオークの木が生えているから、まるで林みたいよね」
真新しい板で作られている柵の部分は以前に紅い兎が壊した個所だ。
「ガローアがいってたけど、あの小さな身体でこれほどの破壊力があるは驚きよね。とても厚い板なのに」
マリィアはガローア達の住処にいた紅い兎二羽を思いだす。小柄でとてもかわいらしい姿からは想像できない攻撃力であった。
「これだけいっぺんに出産されると……世話も大変ですね」
家畜小屋出入り口の扉を潜り抜けて足を踏み入れたばかりの明王院 雫(ka5738)が瞬きを繰り返す。
母親から乳を飲んでいるたくさんの仔たち。そうでない仔の中には小屋の中を駆け巡る。まん丸の体型の仔シモフリが倒れるとボールのように転がっていく。雌四頭と仔三十一頭の楽園が広がっていた。
「新しい藁が敷いてある間仕切りの向こう側に母親を移動させてください。仔の大半は追いかけていきますので。そうでないのは抱えて運んでもらえれば。移動が終わったら古くなった藁を交換して綺麗にします」
ガローアが閂を抜いて間仕切りの扉を開ける。
「はい。こっちだよ。ゆっくりとね」
シェルミア・クリスティア(ka5955)が雌のシモフリを一頭ずつ追い立てて移動させていった。
(シモフリの母は大変なご様子。それにしてもこうしてお世話をするのですか。勉強になることこの上ない)
そんなことを考えながらツィスカ・V・アルトホーフェン(ka5835)はフォークで古い藁を掬う。手押し車に載せて外にある堆肥作りの場所へと持っていく。
明王院雫とガローアも手伝って古い藁をすべて除いた。掃除をしてから新しい藁を運び込む。
他にも餌となるドングリの用意など、やるべきことはたくさん残っていた。
集落の外に辿り着いた一同も仕事を始めていた。開墾作業はガローアとベッタによってかなり進んでいたが、わずかに未開拓の土地が残っている。
「これを抜いてしまえば後は楽になるよね」
「ではこれを使って片付けてしまいますか」
巌 技藝(ka5675)と九竜 諒斗(ka1290)は覚醒した上で大地に鎮座していた大木の切り株に挑んだ。頑丈な鉄棒を差し込み、梃子の原理で掘り起こす。
「小石はまだまだありますね」
「すべての小石を除くのは無理ですが、玉蜀黍の育成に問題がないぐらいにはできるはずです」
連城 壮介(ka4765)が大地に鍬を入れていく。ミオレスカ(ka3496)は掘り起こした土に混じる小石を拾う。実際に種を蒔くのは春頃だが今はそのための前準備である。
仕事を頑張っているうちに時間は瞬く間に過ぎていく。
宵の口、暖炉のある広間でガローアが作ったシチューをみんなで味わう。
「そうなんです。仔シモフリすべてに名前をつけたいんですが、多すぎて困っているんです。思いつかなくて」
ガローアが会話の流れからハンター達に仔シモフリの名付けを頼んだ。
食事の後、ミオレスカが気になっていた紅い兎二羽に近づこうとする。
「よしよし、あれ? 避けられてしまいました。何かコツがあるのでしょうか?」
だが怖がられて部屋の別隅へと逃げられてしまう。
「ミオレスカさん、このカボチャがあればばっちりやで」
ベッタに言われた通りにすると二羽がミオレスカの足元までやってくる。
「とてもいい子たちです」
「まぁ……可愛らしいうさぎさんたちですね」
ミオレスカが抱えている紅い兎を明王院雫が撫でる。もふもふな長い毛で触り心地がとてもよかった。
旅の疲れと肉体作業でハンター達は疲れていた。その日は誰もが早めに就寝する。
「なんや、珍しいで」
翌朝、一番早く起きたベッタが窓戸を開けて野外を眺めると霧が立ち込めていた。
●
霧の中、マリィアが放牧場を巡回していると愛犬二頭が呻りだす。
もしもに備えてマリィアは覚醒して待ち構える。今は普段着。腰の裏側に隠してある白色の拳銃を意識しつつ。
「やあ、そこの美しい方、ここは一体どこだね。森で迷ってしまってね」
霧の中から笑顔で近づいてきたのは筋肉隆々の厳つい男達だ。総勢十名。話しかけてきたのはリーダーらしき眼帯の男だ。
「貴女だけですか。こちらに住んでいらっしゃるのは」
「こちらのことを話す前にあなたたちは誰かしら? 用件はあるのかしら?」
マリィアが話しかけていた途中、何かの用事でガローアが通りかかる。
「ねぇガローア。この村ってどこかで大々的に移民募集したの? ……もしそうなら私も手をあげたいと思って」
「そんなことしていませんよ。こちらの方々は?」
マリィアはガローアに事情を話す。
「この方のいう通りなんです。森をでるための道を教えてもらえますか? もし日暮れまでに徒歩で村や町に着くのが難しいのなら泊めてもらいたいのです。夜露が凌げれば鈍なところでも構いません」
事情を聞いたガローアは一晩の宿泊を承知した。明朝、馬車をだして古都まで連れて行く約束も交わす。
(安全確保のテロ対策等に駆りだされたときも、こんな胡散臭い連中を見かけたわ)
マリィアは男達十名を快く思わない。動向の注視を心に決めた。彼女のいうことを聞いた愛犬二頭がベッタを連れてくる。
「いきなり大所帯やな」
夕食分の食材を使って昼食用の即席のハムサンドが作られた。みんなで食べるとき、ミオレスカが男達を作業に誘う。
「畑や小屋のお手伝いやってみませんか? 人手はいくらあっても足りませんし、遠い国では、働かざるもの食うべからず、とも言うそうです」
「もちろんですよ。みんな、お世話になるんだ。午後からは全員で手伝うぞ」
眼帯の男の呼びかけに他の九名が大声で応えた。
午後の作業は頭数が増えたおかげでとても捗る。ベッタと明王院雫が夕食と寝床の用意にかかり切りになってもお釣りがあるぐらいの成果があがった。
夕食時の広間は楽しい団らんの場となる。
「シモフリって、とっても美味しいんですよ」
「どんな味なんだ?」
ミオレスカだけでなく多くのハンターが男達と話す。やがて就寝の時間となる。
日付が変わる頃、目が覚めてしまったシェルミアが水を飲みに台所へと向かう。廊下を歩いていると男達に宛がわれた部屋から灯りが漏れていることに気がつく。
「ったくケチな奴らだぜ。酒ぐらいだせっての。そうすりゃ酔わせてやっちまったのによ」
「無理だな。半数以上が飲み過ぎて仕事どころじゃなくなるのがオチだ」
先程までとは違う野蛮な話し方にシェルミアは疑問を感じる。しばらく扉の前に立って耳をそばだてた。
(全員殺してこの集落を乗っ取る? た、大変だよねっ!)
慌てながらもシェルミアは肌身離さず持っていたトランシーバーを送信モードに。そして扉枠上の梁に置く。
足音を立てずに寝室へ戻ってツィスカを揺らす。起きたツィスカがトランシーバーを受信モードにすると男達の会話が聞こえてきた。
「獲物を前に意気揚々と……三流のすることですね」
ツィスカとシェルミアは手分けして仲間達に緊急事態を報せる。ガローアとベッタにも伝えて一つの部屋に集まってもらった。
無線を通じて届く男達の悪巧みが終わる。今晩の襲撃はあきらめて、朝食後に集落を乗っ取るつもりらしい。但し、見張りは立てるようだ。
「本当なんですね」
「見かけはごついけど、普通やと思うてしもたわ。おいらも修行が足らんな」
ガローアとベッタが肩を落とす。
「あの方たちが、強盗……」
ミオレスカも少し落ち込んだがすぐに持ち直す。
「何かあったらガローアとベッタを守ってね」
マリィアは屈むと二羽の紅い兎の頭を撫でる。
もしもを考えてガローアとベッタは集落内の空き家にある隠し部屋に避難することとなった。窓から静かに出て行く二人を紅い兎二羽が追いかける。
ばれないようツィスカのトランシーバーを回収。その後、ハンター側も見張りを立てて朝まで男達が休む部屋を見張った。
●
「馬車が壊れてしまって、ガローアとベッタが直している最中なのよ。すぐには無理そうだからもう一晩泊まっていけばいいんじゃない? 今日も仕事を手伝ってもらえたら嬉しいんだけどよいかしら?」
朝食前にマリィアが男達に告げる。眼帯の男が馬車修理を手伝いたいといいだしたが適当に誤魔化した。
「野生のシモフリを狩ってくるので、今晩はお楽しみに」
明王院雫は集落から外にでる方便として嘘をつく。
こうして主に家畜小屋と玉蜀黍畑に分かれて作業を行うこととなる。明王院雫は狩りへと出かけた。マリィアは昨日に引き続いて放牧場を巡視するのだった。
●
すでに男達が賊だというのは判明している。故に野蛮な行為を見届けてから行動する必要はない。どのみち戦闘中に馬脚を現すのだから。
問題はナガケ集落に被害が及ばないようすることだけ。特に人とシモフリへの被害は避けなければならなかった。
「シモフリたちの鳴き声が聞こえてきますよ」
「おかしいですね。錠前が開かないとは」
シェルミアとツィスカが家畜小屋の扉を開けるのに手こずる。
(この様子、間違いありませんね)
九竜諒斗が横目で眺めると賊五人は不遜な態度をとっていた。
扉を開けるふりをしつつ覚醒済みの九竜諒斗、シェルミア、ツィスカは攻撃を仕掛ける。振り向きざまに賊五名を次々と手足の打撃で吹き飛ばした。
「賊なのはばれていますからね」
建物の影に隠れていた明王院雫も参戦。足元に転がってきた賊の渠打ちを鞘付きの剣で突いて悶絶させる。
「てめぇら! こっちの正体を知ってたな!」
唯一、はげ頭の男だけが立ち上がった。そのタフさからいって覚醒者に間違いない。攻撃してくると身構えたが一目散に遁走していく。
「仲間を置いて逃げるのですね」
「とことこん卑怯者だね」
「銃を持つ私から逃げるつもりとは愚かですね」
九竜諒斗、シェルミア、ツィスカが銃撃ではげ頭の脚部を狙う。物陰へと隠れる前に撃ち抜いて転ばす。
「余計なことをしなければ怪我をしないで済んだかも知れないのに」
はげ頭の男が握っていたフォークを明王院雫が踏んで使えなくする。その間に確保。全員を縛り上げて空き家に放り込んでおくのだった。
●
玉蜀黍畑の開墾地に辿り着いたとき、眼帯の男を含めた五人全員が隠し持っていた銃を抜いた。
「あの集落は俺達のもんだ。これから有効利用させてもらうぜ。あのまん丸の家畜はうまいんだってな。楽しみだぜ。最後のお仕事は畑のど真ん中に大きな穴を掘ることだ。小屋に行ったお仲間も充分に隠れるくらいの大きな穴をよろしくな」
眼帯の男がにやつきながら銃口を巌技藝の額に向ける。
「一人ずつ狙うと思ったけど、せっかちだね、あんた。それじゃもてないんじゃないかね?」
巌技藝は嘲笑を浮かべながら眼帯の男を睨みつけた。余程気にさわったのか彼の銃爪は軽かった。しかし何度引いても弾はでない。
「私が不発になるように細工しましたから」
ミオレスカがそう呟いたとき、その場にいたハンターが一斉に動いた。
「容赦しません。覚悟してください」
連城壮介は近くに隠してあった日本刀「虎徹」を抜いてすり足気味に賊へと迫った。身体を捻りつつ下段から振り上げた切っ先が深紅に輝いて軌跡を描く。さらに寄って上段から振り下ろして別の賊を袈裟懸けに。
跳び上がった巌技藝はトンファーで賊の頭部を強打する。
ミオレスカは魔導拳銃で銃撃。制圧射撃で賊の動きを牽制した後でレイターコールドショットで動きを封じた。
マリィアは少し離れた樹木の裏で様子を窺う。無線を通じて会話が聞こえていたので状況は完全に把握していた。
(逃げるなんて賊の首領失格もいいところね)
茂みの中に飛び込もうとした眼帯の男を威嚇射撃で牽制。殺意を込めた視線で睨みつけて逃げる気をなくさせる。
運が良いのか悪いのか。苦しみながらも斬られた賊共はまだ息があった。
●
重傷を負った賊の治療はひとまず間に合う。後は本人の生命力次第。縛ったまま空き家に閉じ込めて紅い兎に見張ってもらった。ハンター一行が帰路へ就いた際、古都の官憲に引き渡す予定となる。
ガローアとベッタは未だ落ち込んでいた。そんな雰囲気を吹き飛ばそうとハンター達はシモフリの名付けのことを思いだす。二人を連れて家畜小屋を訪ねる。
「名前……そうですね。付けるとすれば、マツザカ、コウベ、オウミ、ヒダ……ちょっと捻ってヒタチなんてどうでしょうかね? 俺は『ヒタチ』がよいと思いますよ」
九竜諒斗にはこだわりがあるらしい。
「名前、付けさせてくれるのよねっ! じゃあ『デルタ』でっ!」
マリィアはおでこの辺りがわずかに茶色い仔シモフリがお気に入りだ。
「ではこの仔は『アオタロウ』がいいです」
ミオレスカは一段と深い青い毛並みの一頭に名前をつける。
「この仔は『フジ』。二つと無いで、フジ(不二)です」
連城壮介は名付けたばかりの仔シモフリを抱きかかえた。
住処へと戻る頃にはガローアとベッタの気持ちもかなり上向く。
「そうや。あれがあったんや。餅、いうとったな」
少し前、ベッタが古都で買ってきた東方の食材を思いだす。
「餅ですか……そのまま焼いて食べるのもよいですし、油で揚げるのも美味しいですよね。できれば醤油があればなお良かったんですがね……」
「お餅とは、お米の新技術ですね。醤油と合わせると、奥が深いです」
九竜諒斗とミオレスカが話題にしていた醤油にガローアは聞き覚えがあった。
「醤油、確かあったような」
ガローアは古都の商人に勧められて瓶入り醤油を購入していた。
炭火の上に網をのせて餅が焼かれる。いくつかは油で揚げられた。
「白いけどまるでシモフリみたいですね」
「本当に。まん丸です」
九竜諒斗と明王院雫がぷっくりと膨らんだ餅をみてシモフリを連想する。
「変わった味だけど美味しいね」
「あんなに固かったのにここまで柔らかくなるとは不思議な食べ物ですね」
シェルミアとツィスカが砂糖醤油で焼きたての餅を頬張る。
ハンター滞在中に玉蜀黍畑の開墾は完了、仔シモフリの生育も順調。ガローアとベッタは降りかかろうとした災いを払ってくれたハンター一行に感謝するのだった。
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作戦相談 ツィスカ・V・A=ブラオラント(ka5835) 人間(クリムゾンウェスト)|20才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2015/12/30 12:07:27 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/12/27 19:42:15 |