ゲスト
(ka0000)
魂の先
マスター:鷹羽柊架

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/12/31 09:00
- 完成日
- 2016/01/07 06:33
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
シバが戦士としてその命を赤き大地に捧げた。
その話はファリフのもとにすぐ届いた。
皆はシバを父のように慕っていた彼女の様子を心配したが、ファリフは「そう」と言葉を返し、声音も穏やかなもの。
「シバ様は戦士として全うした。それはボクたち……この土地で生きる戦士にとって誇らしいことだよ」
この世に生を受けたものは必ず死ぬ。
それがこの世の摂理。
戦う者としてそれを全うし、骸を大地に返すのはとても幸福な事とファリフは示唆した。
ファリフの言葉に皆は成長したものだと安堵する。
「ファリフ」
「どうかしたの?」
フェンリルがファリフのそばに寄り添うと、ファリフはフェンリルの毛並みをゆっくり撫でる。
「敵は要塞都市へと向かってるようだ」
「要塞都市へ……」
告げられた場所を鸚鵡返しに呟くファリフが思い出すのはあの長い長い城壁。
「歪虚の侵攻は随分進んでいる」
行くか? とフェンリルに尋ねられたが、ファリフの答えは一つしかない。
切り取ったかのような丘の上に存在している要塞都市【ノアーラ・クンタウ】は長い長い壁に覆われていた。
今まで、ファリフはここがとても嫌で、最後に来た日はいつだったかというほど。
ヴェルナーが辺境部族に下したあの言葉は一種の呪いと化したかのように仲間達の命が奪われていった。
それ故に、ここは親帝国派にとっては希望の場所。反帝国派には絶望の壁といえるだろう。
しかし、今は歪虚の侵攻で辺境を阻む壁が壊されつつある。
あの壁の向こうには全員が戦えるわけではない。
無数の家族が存在しており、まだ一人で歩く事もおぼつかない幼子だっている。
放っておけないと判断し、ファリフはフェンリルを連れて要塞都市へと来た。
ファリフが向かった時にはドワーフ達が壁の修繕工事を行っており、実際に見たその壁は中の支柱が見えており、曲がっていた。
その光景は歪虚がどれだけの攻勢を見せているのかすぐに分かる。
「あら……ファリフ!?」
呼ばれた方向を向いたファリフは見たことがある姿に目を見張ってしまう。
「カペラさん!」
フェンリルに乗ったまま、ファリフは通称ドワーフ王ヨアキムの娘であるカペラの方へと駆けて行った。
「御無沙汰ねー」
「うん。あれ、戦っていたの?」
笑顔のカペラであるがその様子はなんだか疲れからのハイテンションのようにも見える。
カペラと一緒にいた者達からも似たような感じを受けてしまうし、一人はむき身の剣をたらして持っていた。
「向こうでね。何だかんだで零れてこっちにくる歪虚を掃除してたの」
「そっか」
どこか他人事のように頷くファリフにカペラは彼女に気付かれないように、そっと息を吐く。
「寒いでしょう? お茶でもご馳走するわ」
カペラの誘いにファリフ達は頷いた。
通されたのはフェンリルもゆっくりできるようにとクレムトの鍛冶場。
ドワーフ工房も流石に今日の作業は中止しているが、辺境では有力部族であるスコール族の族長が幻獣と一緒に来ていることで野次馬のようにクレムトの鍛冶場に入っている。
ファリフはカペラとは少なからず会った事はあるが、工房に入るのは初めてであった。
温かいお茶とサンドイッチを供されて、サンドイッチを一口食べる。
燻製の香りがする鶏肉と香ばしく焼かれたパンは香りも味もいい。ファリフは自分が空腹であった事にようやく気付く。
「……おいしい」
無心にサンドイッチを食べていくが、喉が渇いてしまい、お茶で水分をとる。
「……あっつ……」
「クレムトの事務担当の料理は美味しいのよ。お茶も熱いの好きだから口の中を火傷しないようにね」
「うん」
こっくりと頷くファリフは一気に食べ終わった。
「シバ……死んだってね」
「うん」
その情報はハンターを通じ、一気に広まっているようであった。
「戦士として立派な方だったよ」
「そうね」
「ボクもそうでありたい。未来のボクに戦士として恥ないように」
顔を上げるファリフはカペラを見つめる。
「戦士として……ね」
「え?」
「私はドワーフで技師だから分らないけど、さびしいわ……」
カペラが言い終わる前にドワーフ工房の技師達がドアを大きな音と共に開けて飛び込んできた。
「フォニケさん、どうしたの?」
カペラにフォニケと呼ばれた女性技師は歪虚の挙動を伝える。
現時点、こちらに向かっている歪虚が複数おり、壁の修繕にあたっているドワーフ達が歪虚とかち合う可能性があるという。
とりあえず、ハンターオフィスにいたハンター達には応援を頼んでいる。
「行きましょ!」
立ち上がるカペラはファリフの方へ向かう。
「食べたら動くのは心にいいのよ!」
「え、あ、うん!」
立ち上がるファリフにフェンリルは「やれやれ」と言ったような表情を見せて歩き出した。
その話はファリフのもとにすぐ届いた。
皆はシバを父のように慕っていた彼女の様子を心配したが、ファリフは「そう」と言葉を返し、声音も穏やかなもの。
「シバ様は戦士として全うした。それはボクたち……この土地で生きる戦士にとって誇らしいことだよ」
この世に生を受けたものは必ず死ぬ。
それがこの世の摂理。
戦う者としてそれを全うし、骸を大地に返すのはとても幸福な事とファリフは示唆した。
ファリフの言葉に皆は成長したものだと安堵する。
「ファリフ」
「どうかしたの?」
フェンリルがファリフのそばに寄り添うと、ファリフはフェンリルの毛並みをゆっくり撫でる。
「敵は要塞都市へと向かってるようだ」
「要塞都市へ……」
告げられた場所を鸚鵡返しに呟くファリフが思い出すのはあの長い長い城壁。
「歪虚の侵攻は随分進んでいる」
行くか? とフェンリルに尋ねられたが、ファリフの答えは一つしかない。
切り取ったかのような丘の上に存在している要塞都市【ノアーラ・クンタウ】は長い長い壁に覆われていた。
今まで、ファリフはここがとても嫌で、最後に来た日はいつだったかというほど。
ヴェルナーが辺境部族に下したあの言葉は一種の呪いと化したかのように仲間達の命が奪われていった。
それ故に、ここは親帝国派にとっては希望の場所。反帝国派には絶望の壁といえるだろう。
しかし、今は歪虚の侵攻で辺境を阻む壁が壊されつつある。
あの壁の向こうには全員が戦えるわけではない。
無数の家族が存在しており、まだ一人で歩く事もおぼつかない幼子だっている。
放っておけないと判断し、ファリフはフェンリルを連れて要塞都市へと来た。
ファリフが向かった時にはドワーフ達が壁の修繕工事を行っており、実際に見たその壁は中の支柱が見えており、曲がっていた。
その光景は歪虚がどれだけの攻勢を見せているのかすぐに分かる。
「あら……ファリフ!?」
呼ばれた方向を向いたファリフは見たことがある姿に目を見張ってしまう。
「カペラさん!」
フェンリルに乗ったまま、ファリフは通称ドワーフ王ヨアキムの娘であるカペラの方へと駆けて行った。
「御無沙汰ねー」
「うん。あれ、戦っていたの?」
笑顔のカペラであるがその様子はなんだか疲れからのハイテンションのようにも見える。
カペラと一緒にいた者達からも似たような感じを受けてしまうし、一人はむき身の剣をたらして持っていた。
「向こうでね。何だかんだで零れてこっちにくる歪虚を掃除してたの」
「そっか」
どこか他人事のように頷くファリフにカペラは彼女に気付かれないように、そっと息を吐く。
「寒いでしょう? お茶でもご馳走するわ」
カペラの誘いにファリフ達は頷いた。
通されたのはフェンリルもゆっくりできるようにとクレムトの鍛冶場。
ドワーフ工房も流石に今日の作業は中止しているが、辺境では有力部族であるスコール族の族長が幻獣と一緒に来ていることで野次馬のようにクレムトの鍛冶場に入っている。
ファリフはカペラとは少なからず会った事はあるが、工房に入るのは初めてであった。
温かいお茶とサンドイッチを供されて、サンドイッチを一口食べる。
燻製の香りがする鶏肉と香ばしく焼かれたパンは香りも味もいい。ファリフは自分が空腹であった事にようやく気付く。
「……おいしい」
無心にサンドイッチを食べていくが、喉が渇いてしまい、お茶で水分をとる。
「……あっつ……」
「クレムトの事務担当の料理は美味しいのよ。お茶も熱いの好きだから口の中を火傷しないようにね」
「うん」
こっくりと頷くファリフは一気に食べ終わった。
「シバ……死んだってね」
「うん」
その情報はハンターを通じ、一気に広まっているようであった。
「戦士として立派な方だったよ」
「そうね」
「ボクもそうでありたい。未来のボクに戦士として恥ないように」
顔を上げるファリフはカペラを見つめる。
「戦士として……ね」
「え?」
「私はドワーフで技師だから分らないけど、さびしいわ……」
カペラが言い終わる前にドワーフ工房の技師達がドアを大きな音と共に開けて飛び込んできた。
「フォニケさん、どうしたの?」
カペラにフォニケと呼ばれた女性技師は歪虚の挙動を伝える。
現時点、こちらに向かっている歪虚が複数おり、壁の修繕にあたっているドワーフ達が歪虚とかち合う可能性があるという。
とりあえず、ハンターオフィスにいたハンター達には応援を頼んでいる。
「行きましょ!」
立ち上がるカペラはファリフの方へ向かう。
「食べたら動くのは心にいいのよ!」
「え、あ、うん!」
立ち上がるファリフにフェンリルは「やれやれ」と言ったような表情を見せて歩き出した。
リプレイ本文
フォニケの依頼に応えたハンター達は、依頼人が仲間を連れてくると言うので、要塞の門の近くで待っていた。
今回は要塞都市も巻き込む戦いとなっており、周囲は負傷兵を運んでいたり、伝令に走ったりと混乱をきわめている。
「おまたせ!」
向こうから、フォニケの呼び声が聞こえた。
「フォニケ、待ってた……よ?」
アルカ・ブラックウェル(ka0790)が手を振ったが、途切れてしまう。
ハンターたちの視界を遮るのは青白灰の毛並みを持つ狼が動き回る人々を飛び越えてこちらに向かってきている。
「お待たせ!」
「ファリフはん!?」
ハンターの眼前にはスコール族の長であるファリフがフェンリルに乗っていた。
「あ、アカーシャさん、お久しぶり」
ハンター達が少なからず驚いている中、アカーシャ・ヘルメース(ka0473)声に気付いたファリフはフェンリルから降りる。
「……シバはん、死んだってな」
アカーシャの言葉にファリフが頷いた。
死の間際に立つシバはハンターへ依頼を立てた。
「ボクはその場に立ち会っていなかったけど」
ファリフの表情にアカーシャはゆっくりと息をついた。
「……ホント、急になんだから……」
頬を膨らませるのはウーナ(ka1439)。
シバの依頼に応えることができなかったのが心残りだったようで、いつもは勝気な印象を受ける顔には悔しさがにじんでいる。
「ファリフくん。この戦いが終われば、キミに話があるわ」
そう告げたのはアイラ(ka3941)。
「ボクに……?」
きょとんとなるファリフにオウガ(ka2124)も頷く。
「俺はオウガだ。俺もアイラと同じ理由で話がしたい」
はっと勘付いたファリフは二人をじっと見たが、オウガは門の向こうを見つめている。
「シバのじっちゃんの最後を見届けた者として、この地の者として、好き勝手する連中をこれ以上好き勝手やらせるかよ!」
「行こう。修繕作業中は丸腰も同然。守らなければ」
静かに事を見守っていたイーディス・ノースハイド(ka2106)が口を開く。
今も広大な土地の中、戦闘は行っている。
少しでも被害を食い止めなくてはこの要塞は機能を失いかねない。
ハンターと辺境に住む者達は門から飛び出して目的の所へ向かった。
壁の修繕を行っている者たちは全員が戦闘能力があるとはいえない。
大掛かりな作業を最速で行っている為、工房の覚醒者たちが有志で警備に走る事もあった。
「何か、もう敵がいるみたい!」
ウーナが叫ぶと、ファリフが先に向かうと返す。
アルカが叫ぶが早いかの速さでフェンリルがファリフを乗せて疾走を始めた。
視線の向こうでは敵に気付いただろう一人のドワーフが斧を片手に狼へと立ち向かっている。
ドワーフの一撃は致命傷にはならず、狼はドワーフの腕にくらいつくと、フェンリルが狼とドワーフごと跳ね飛ばして一度止まった。
フェンリルに続けてイーディスが、駆けてくる狼に立ち向かう。
慌てることなく敵を見つめるイーディスの左胸に守護を意味する印章が淡く輝いた。右手を腰に差している剣へ伸ばし、一気に引き抜く。
引き抜いたのは剣だけではない。鞘から刀身を引き抜く際に発生した衝撃波が狼へと向かっていった。
狼がイーディスから繰り出された衝撃波に直撃してその場に倒れて伏されてしまう。イーディスの視線は狼ではなく、これから向かってくるオーガ達。
横目でこれから向かってくる仲間達はすぐに着くだろうが、それまでは持ちこたえさせなくてはならない。
立っている場所から少なからず振動が響いてきている。
鼻息の荒いオーガ達が纏まった形で歩いてきていたのをウーナが確認した。
「先に行くわ!」
先行する形でウーナがスピードを上げた。
「シバさんとの最初の依頼もこんなだったね……」
ぽつりと、ウーナが呟く。
一年以上前の記憶を引っ張り出し、在りし日の彼を思い出すウーナの表情は寂しげなもの。
共に戦い、共に得た勝利は何にも変えられなく、次の戦いもシバは共に立てなくなった。
「死んだ人間にはもう、助けを願えないわね」
しんみりした話を切り上げるようにウーナは歯を食いしばる。
「この戦いも何もしれくれない。あたしたちが倒さなきゃ!」
寂しい気持ちを燃やして闘志とした彼女はオーガを見据えていた。
ウーナが端のオーガのこめかみを狙い撃った。
オーガは風圧の方向を向き、攻撃を加えた者を確認しようとしたが、ウーナが早かった。
算段上の距離にイーディスやファリフ達は入らないことを確認する。
「踊ってもらうわよ!」
タイミング見計らったウーナは即座にアサルトライフルを構えて敵へティザーダンスを行う。
細かくトリルを繰り返して発射される弾はオーガ達の足元を走り抜けていき、本能的危機感を感じたオーガ達は反射的に足を上げてたり、止まったりと隊列を乱していく。
隊列が乱れたオーク達の中に兎型の歪虚を見出したアルカが叫ぶ。
「フォニケ達は兎や狼達をお願い!」
「奥から更に狼が来ている!」
「了解!」
アルカとアイラの声に応えたフォニケがカペラと共に兎達の方へと向かう。
二人の眼前に向かってきているのはオーガだった。
「早く倒そう」
「うん」
耐久戦は不利と判断し、先に飛び出したのはアルカだ。
身体にマテリアルを循環させて駆けだす。オーガの目の前で横に跳び、背後を取る。
アルカを視線で追い、武器を振るおうとするオーガの動きを見ていたアルカは槍の穂先が彼女の腕を切り裂いた。
「く……っ」
構うことなく、穂先の根元へ跳躍して勢いをつけて更に跳び、オーガをアイラの方へと突き出すように背を蹴りつけた。
再び跳躍してアルカはオーガより一度離れる。
オーガはすぐに体勢を立て直してしまうが、次にオーガが目にしたのはレイピアを構えるアイラの姿。
ステップを踏むアイラは大山猫の速さでオーガが闇雲に振るう槍を回避しつつ懐へと飛び込んだ。素早くレイピアを振ってオーガの右肩を斬り裂く。
アイラの相手をしていたオーガは自身の足が拘束されいる感覚に気付いた。
後ろからアルカがワイヤーウィップでオーガの足を拘束し、鋼線が皮膚を斬っている。
「今だ!」
アルカの言葉に頷いたアイラは再びレイピアを振り上げ、オーガの首を目掛けて振り下ろした。
首を無くした身体は為す術はなく、倒れる。
前線に立っていたのはイーディスだ。
ハンター仲間が駆けつけてことによって、オーガや他の獣型歪虚を複数相手にせずに済み、幾許か気は楽になったものの、油断は許されない。
目の前にいるのは頑丈と力が売りのオーガが一体。
防戦一方と見えるのだが、イーディスは涼しい表情であり、柳眉を寄せてはいない。闇雲に武器をイーディスの盾に叩きつけているオーガの方が消耗しているようにも見えた。
敵の動きを見極めているイーディスは加えられる攻撃を最小限の防御でやり過ごしている。
先ほど、ウーナがティザーダンスをオーガ達に繰り広げていた時、イーディスもまた、衝撃波でオーガ達の体力を消耗させていた。
振り下ろしたオーガの棍棒がイーディスの盾の縁を掠り、オーガの集中力が切れた事をイーディスは察した。
集中力を切らした時、渾身の一撃を喰らわせようとするか、戦意を失うか……歪虚であるオーガは前者だ。
オーガが武器を大きく振り上げた時、イーディスはその隙を逃さずに剣でオーガの脇腹を斬りつける。
カウンターに驚きつつも、オーガが武器を振り下ろすまもなく、イーディスが斬りつけた脇腹から鈍い光を放つ大斧で骨ごと断ち斬られた。
「イーディスさん、無事?」
ファリフが振り向けば、イーディスは頷いた。
「もう少しだから」
「私のやるべき事はキミ達の壁。私の役目を全うするだけさ」
そう言ったイーディスは盾を持ち直し、次の敵に備える。
アカーシャはシェダルと組んでオーガと対峙していた。
壁役のシェダルは槍を持ったオーガと正面から攻撃を受けていた。盾と刀で対応していた。
体力の消耗は避けられないとはいえ、早急に仕留めることをアカーシャは念頭に置いて竜身体を通じて祖霊の力を喚ぶ。
空気を切る風の音に気づいたオーガが槍を突き出してアカーシャを狙う。
アカーシャは借り受けた蛇のごとくしなやかに槍を背面跳びで交わし、手を着くことなく着地した。
「二対一や。早よう、終わらせたる」
着地の反動で勢いつけたアカーシャはシェダルの盾の下を潜り、オーガの懐に飛び込む。
ギリギリの間合で六角棍「黒鉄」を構えたアカーシャが獲物を回転させてその先端へ力を一点集中させた。
竜がその身を突き出すような突き……突竜撃でオーガの装甲を砕き、その皮膚も抉れてしまっている。
弾き飛ばされるしかなかったオーガは何とか足を踏みしめ、倒れることはなかったが、アカーシャの攻撃の隙を突いたシェダルが刀で武器を弾き飛ばした。
シェダルの盾がオーガの拳を受け止め、刀で肩を突き刺す。
「一気にいくで!」
六角棍を構え直したアカーシャの気合と共にオーガの顎へと六角棍の先が横殴りに入り、首があらぬ方向へと曲げられる。
更に間合を詰めたアカーシャは膝を防護するレガースごとオーガの腹を膝で蹴りこんだ。
攻撃した痕が凍っていき、オーガの身体が硬直していく。
「仕舞いや!」
凍った皮膚ごと砕くアカーシャの掌底が決まった。
イーディスと少し離れたところでオーガと戦っていたのはオウガである。
「いくぜ!」
対峙しているオーガは大斧を持っていたが、当のオウガは気にしていないどころか、気合十分。
まず狙ったのは足の付け根。
オーガもただで攻撃はさせてくれず、オウガは腕に剣を滑らせてしまう。
滲む傷に怯むことなくオウガは大腿を目掛けて一撃を打つ。
「よ……っと!」
オウガの鼻先を敵の剣が掠めるも、傷にはならず、素早く間合を取った。
敵は間合を詰めようとしてオウガを追う。
オウガは祖霊の力を借り受け、俊敏な動作で敵の動きを避けて捌き、反撃のタイミングを見つけようとする。
オーガが吠えると長剣を持つ手の肩が千切れそうだ。
振り向けば、アイラが弓を構えていた。
「大丈夫そうだね!」
アルカも加勢し、即座にワイヤーウィップでオーガを拘束する。
オウガは助走のあと跳躍し、竜の咆哮もかくやに吼える。
ナックルに祖霊の力と、ありったけの自身の力を込めて敵の頬目掛けて右フックを叩き込む。
間合を取るために離れたオウガが敵を確認すると、左頬は陥没し、熱気で皮膚や体毛が焼けており、そのまま倒れてしまう。
戦いが終わり、ハンターはドワーフ工房へと向かおうとなったが、アルカは修繕の手伝いを申し出た。
「一度休憩だ」
葉巻煙草を咥えるシェダルとフォニケに襟首をつかまれたアルカは強制的に要塞の門の中へと入る。
シェダルが熱いお茶を皆に振る舞う。熱い茶は身体を温めてくれる。
「せや、試練の時は挨拶できひんかったな」
アカーシャはフェンリルの方を向いて名を名乗る。
フェンリルはアカーシャを覚えていたようであった。
「下調べにも来ていたな。抜け目ない奴だ」
悪意のないフェンリルの言葉は珍しいほめ言葉なのだろう。
一度静まった場にアカーシャはファリフに向き直り、口を開く。
「ファリフはん、シバはんが遺した最も偉大な所はどこやと思う」
「シバさんは……辺境……この地の戦士として、命を全うした。その誇り高い生き方は戦士達の心に刻まれると思う」
長年、歪虚に狙われてきたこの地において、戦士として戦いに命を捧げ、地に還るという事を出来る者は少ない。
志半ばで死ぬ者、心折れた者もいたのも事実。
「ファリフくん」
お茶を啜ったアイラはカップを両手で包み込むようにファリフを見つめた。
「……キミの話の前に、教えてほしい。シバさんの最後を」
ファリフの毅然とした表情を見たアイラとオウガは顔を見合わせて頷き合う。
「……シバのじっちゃんさ……凄く強かった」
シバはハンター達と死合いを行った事から始まる。
倒れても彼は何度でも立ち上がり、ハンターの矢を、剣を、弾丸を、拳を受けていた。
血を流していく身体から湧くマテリアルは闇夜に輝く月光の如く眩き、彼自身の命の煌めきと思わざるを得なかった。
そして、ハンター達が見た蛇……。
ファリフや他の者達も壮絶なるシバの最期の死合いに言葉を失った。
辺境……赤き大地の最強の戦士、シバはもうこの世にいないことを思い知らさせるに十分な内容。
立派な最後だったとオウガはファリフへ向ける。
「……俺もこの地の戦士だからさ、あんな最期だったら、羨ましいと思う」
オウガの太陽の如くの金の瞳とファリフの蒼穹の空色の瞳がぶつかった。
「ファリフ個人としてはどう思う」
「ボクは……戦士だし、戦いにおける死は当然……」
「俺は寂しいよ。もう声を聞くこともないし、姿を見る事もできないだからよ」
オウガがファリフの言葉を遮るように告げられて、ファリフは目を見張った。
『忘れるな。尾を噛む、蛇であれ……永久に、繋がる……』
そう言ったのはアイラだ。
「おじいちゃんが私達に告げてくれた最期の言葉」
蛇……シバの一族の象徴であり、彼が最期に体現させたもの。
「この言葉はあの場にいた私達だけじゃない。きっと、ファリフくんにも伝えたかったと思う」
シバは最期の最後までこの地に生きる者としてこの地を想いながら逝ったとアイラは告げる。
「手を出して……くれるかな?」
アイラが尋ねると、ファリフはウーナを見やる。
「ウーナさんも!」
驚いたウーナだったが、三人で手を繋ぐ。
少し冷たい手が触れ合う。
「皆で思いを繋いでいこう。それが私達でおじいちゃんに誓った思い」
アイラが言えば、ファリフの瞳から一筋の涙が零れ落ちた。
父の如く慕っていたシバへの寂しさ、戦士としての羨望……オウガやアイラ達の気遣い……全部ひっくるめた感情が熱い涙へとなって頬を伝う。
「……赤き大地を取り戻す……歪虚から護るよ。未来に胸を張ってこの地に還れるように」
涙を零したファリフの様子は凛と気高く、イーディスはファリフが纏う高潔さを見て、気を引き締められるように背筋を伸ばす。
「一人で抱えるなよ」
オウガの言葉にファリフは頷く。
「ボクひとりじゃ出来る事もあまりないんだ。皆とならきっと、どんなことも立ち迎えられる。また一緒に戦ってほしい」
一転して明るい表情を見せるファリフにアカーシャが安心したような表情を見せた。
今回は要塞都市も巻き込む戦いとなっており、周囲は負傷兵を運んでいたり、伝令に走ったりと混乱をきわめている。
「おまたせ!」
向こうから、フォニケの呼び声が聞こえた。
「フォニケ、待ってた……よ?」
アルカ・ブラックウェル(ka0790)が手を振ったが、途切れてしまう。
ハンターたちの視界を遮るのは青白灰の毛並みを持つ狼が動き回る人々を飛び越えてこちらに向かってきている。
「お待たせ!」
「ファリフはん!?」
ハンターの眼前にはスコール族の長であるファリフがフェンリルに乗っていた。
「あ、アカーシャさん、お久しぶり」
ハンター達が少なからず驚いている中、アカーシャ・ヘルメース(ka0473)声に気付いたファリフはフェンリルから降りる。
「……シバはん、死んだってな」
アカーシャの言葉にファリフが頷いた。
死の間際に立つシバはハンターへ依頼を立てた。
「ボクはその場に立ち会っていなかったけど」
ファリフの表情にアカーシャはゆっくりと息をついた。
「……ホント、急になんだから……」
頬を膨らませるのはウーナ(ka1439)。
シバの依頼に応えることができなかったのが心残りだったようで、いつもは勝気な印象を受ける顔には悔しさがにじんでいる。
「ファリフくん。この戦いが終われば、キミに話があるわ」
そう告げたのはアイラ(ka3941)。
「ボクに……?」
きょとんとなるファリフにオウガ(ka2124)も頷く。
「俺はオウガだ。俺もアイラと同じ理由で話がしたい」
はっと勘付いたファリフは二人をじっと見たが、オウガは門の向こうを見つめている。
「シバのじっちゃんの最後を見届けた者として、この地の者として、好き勝手する連中をこれ以上好き勝手やらせるかよ!」
「行こう。修繕作業中は丸腰も同然。守らなければ」
静かに事を見守っていたイーディス・ノースハイド(ka2106)が口を開く。
今も広大な土地の中、戦闘は行っている。
少しでも被害を食い止めなくてはこの要塞は機能を失いかねない。
ハンターと辺境に住む者達は門から飛び出して目的の所へ向かった。
壁の修繕を行っている者たちは全員が戦闘能力があるとはいえない。
大掛かりな作業を最速で行っている為、工房の覚醒者たちが有志で警備に走る事もあった。
「何か、もう敵がいるみたい!」
ウーナが叫ぶと、ファリフが先に向かうと返す。
アルカが叫ぶが早いかの速さでフェンリルがファリフを乗せて疾走を始めた。
視線の向こうでは敵に気付いただろう一人のドワーフが斧を片手に狼へと立ち向かっている。
ドワーフの一撃は致命傷にはならず、狼はドワーフの腕にくらいつくと、フェンリルが狼とドワーフごと跳ね飛ばして一度止まった。
フェンリルに続けてイーディスが、駆けてくる狼に立ち向かう。
慌てることなく敵を見つめるイーディスの左胸に守護を意味する印章が淡く輝いた。右手を腰に差している剣へ伸ばし、一気に引き抜く。
引き抜いたのは剣だけではない。鞘から刀身を引き抜く際に発生した衝撃波が狼へと向かっていった。
狼がイーディスから繰り出された衝撃波に直撃してその場に倒れて伏されてしまう。イーディスの視線は狼ではなく、これから向かってくるオーガ達。
横目でこれから向かってくる仲間達はすぐに着くだろうが、それまでは持ちこたえさせなくてはならない。
立っている場所から少なからず振動が響いてきている。
鼻息の荒いオーガ達が纏まった形で歩いてきていたのをウーナが確認した。
「先に行くわ!」
先行する形でウーナがスピードを上げた。
「シバさんとの最初の依頼もこんなだったね……」
ぽつりと、ウーナが呟く。
一年以上前の記憶を引っ張り出し、在りし日の彼を思い出すウーナの表情は寂しげなもの。
共に戦い、共に得た勝利は何にも変えられなく、次の戦いもシバは共に立てなくなった。
「死んだ人間にはもう、助けを願えないわね」
しんみりした話を切り上げるようにウーナは歯を食いしばる。
「この戦いも何もしれくれない。あたしたちが倒さなきゃ!」
寂しい気持ちを燃やして闘志とした彼女はオーガを見据えていた。
ウーナが端のオーガのこめかみを狙い撃った。
オーガは風圧の方向を向き、攻撃を加えた者を確認しようとしたが、ウーナが早かった。
算段上の距離にイーディスやファリフ達は入らないことを確認する。
「踊ってもらうわよ!」
タイミング見計らったウーナは即座にアサルトライフルを構えて敵へティザーダンスを行う。
細かくトリルを繰り返して発射される弾はオーガ達の足元を走り抜けていき、本能的危機感を感じたオーガ達は反射的に足を上げてたり、止まったりと隊列を乱していく。
隊列が乱れたオーク達の中に兎型の歪虚を見出したアルカが叫ぶ。
「フォニケ達は兎や狼達をお願い!」
「奥から更に狼が来ている!」
「了解!」
アルカとアイラの声に応えたフォニケがカペラと共に兎達の方へと向かう。
二人の眼前に向かってきているのはオーガだった。
「早く倒そう」
「うん」
耐久戦は不利と判断し、先に飛び出したのはアルカだ。
身体にマテリアルを循環させて駆けだす。オーガの目の前で横に跳び、背後を取る。
アルカを視線で追い、武器を振るおうとするオーガの動きを見ていたアルカは槍の穂先が彼女の腕を切り裂いた。
「く……っ」
構うことなく、穂先の根元へ跳躍して勢いをつけて更に跳び、オーガをアイラの方へと突き出すように背を蹴りつけた。
再び跳躍してアルカはオーガより一度離れる。
オーガはすぐに体勢を立て直してしまうが、次にオーガが目にしたのはレイピアを構えるアイラの姿。
ステップを踏むアイラは大山猫の速さでオーガが闇雲に振るう槍を回避しつつ懐へと飛び込んだ。素早くレイピアを振ってオーガの右肩を斬り裂く。
アイラの相手をしていたオーガは自身の足が拘束されいる感覚に気付いた。
後ろからアルカがワイヤーウィップでオーガの足を拘束し、鋼線が皮膚を斬っている。
「今だ!」
アルカの言葉に頷いたアイラは再びレイピアを振り上げ、オーガの首を目掛けて振り下ろした。
首を無くした身体は為す術はなく、倒れる。
前線に立っていたのはイーディスだ。
ハンター仲間が駆けつけてことによって、オーガや他の獣型歪虚を複数相手にせずに済み、幾許か気は楽になったものの、油断は許されない。
目の前にいるのは頑丈と力が売りのオーガが一体。
防戦一方と見えるのだが、イーディスは涼しい表情であり、柳眉を寄せてはいない。闇雲に武器をイーディスの盾に叩きつけているオーガの方が消耗しているようにも見えた。
敵の動きを見極めているイーディスは加えられる攻撃を最小限の防御でやり過ごしている。
先ほど、ウーナがティザーダンスをオーガ達に繰り広げていた時、イーディスもまた、衝撃波でオーガ達の体力を消耗させていた。
振り下ろしたオーガの棍棒がイーディスの盾の縁を掠り、オーガの集中力が切れた事をイーディスは察した。
集中力を切らした時、渾身の一撃を喰らわせようとするか、戦意を失うか……歪虚であるオーガは前者だ。
オーガが武器を大きく振り上げた時、イーディスはその隙を逃さずに剣でオーガの脇腹を斬りつける。
カウンターに驚きつつも、オーガが武器を振り下ろすまもなく、イーディスが斬りつけた脇腹から鈍い光を放つ大斧で骨ごと断ち斬られた。
「イーディスさん、無事?」
ファリフが振り向けば、イーディスは頷いた。
「もう少しだから」
「私のやるべき事はキミ達の壁。私の役目を全うするだけさ」
そう言ったイーディスは盾を持ち直し、次の敵に備える。
アカーシャはシェダルと組んでオーガと対峙していた。
壁役のシェダルは槍を持ったオーガと正面から攻撃を受けていた。盾と刀で対応していた。
体力の消耗は避けられないとはいえ、早急に仕留めることをアカーシャは念頭に置いて竜身体を通じて祖霊の力を喚ぶ。
空気を切る風の音に気づいたオーガが槍を突き出してアカーシャを狙う。
アカーシャは借り受けた蛇のごとくしなやかに槍を背面跳びで交わし、手を着くことなく着地した。
「二対一や。早よう、終わらせたる」
着地の反動で勢いつけたアカーシャはシェダルの盾の下を潜り、オーガの懐に飛び込む。
ギリギリの間合で六角棍「黒鉄」を構えたアカーシャが獲物を回転させてその先端へ力を一点集中させた。
竜がその身を突き出すような突き……突竜撃でオーガの装甲を砕き、その皮膚も抉れてしまっている。
弾き飛ばされるしかなかったオーガは何とか足を踏みしめ、倒れることはなかったが、アカーシャの攻撃の隙を突いたシェダルが刀で武器を弾き飛ばした。
シェダルの盾がオーガの拳を受け止め、刀で肩を突き刺す。
「一気にいくで!」
六角棍を構え直したアカーシャの気合と共にオーガの顎へと六角棍の先が横殴りに入り、首があらぬ方向へと曲げられる。
更に間合を詰めたアカーシャは膝を防護するレガースごとオーガの腹を膝で蹴りこんだ。
攻撃した痕が凍っていき、オーガの身体が硬直していく。
「仕舞いや!」
凍った皮膚ごと砕くアカーシャの掌底が決まった。
イーディスと少し離れたところでオーガと戦っていたのはオウガである。
「いくぜ!」
対峙しているオーガは大斧を持っていたが、当のオウガは気にしていないどころか、気合十分。
まず狙ったのは足の付け根。
オーガもただで攻撃はさせてくれず、オウガは腕に剣を滑らせてしまう。
滲む傷に怯むことなくオウガは大腿を目掛けて一撃を打つ。
「よ……っと!」
オウガの鼻先を敵の剣が掠めるも、傷にはならず、素早く間合を取った。
敵は間合を詰めようとしてオウガを追う。
オウガは祖霊の力を借り受け、俊敏な動作で敵の動きを避けて捌き、反撃のタイミングを見つけようとする。
オーガが吠えると長剣を持つ手の肩が千切れそうだ。
振り向けば、アイラが弓を構えていた。
「大丈夫そうだね!」
アルカも加勢し、即座にワイヤーウィップでオーガを拘束する。
オウガは助走のあと跳躍し、竜の咆哮もかくやに吼える。
ナックルに祖霊の力と、ありったけの自身の力を込めて敵の頬目掛けて右フックを叩き込む。
間合を取るために離れたオウガが敵を確認すると、左頬は陥没し、熱気で皮膚や体毛が焼けており、そのまま倒れてしまう。
戦いが終わり、ハンターはドワーフ工房へと向かおうとなったが、アルカは修繕の手伝いを申し出た。
「一度休憩だ」
葉巻煙草を咥えるシェダルとフォニケに襟首をつかまれたアルカは強制的に要塞の門の中へと入る。
シェダルが熱いお茶を皆に振る舞う。熱い茶は身体を温めてくれる。
「せや、試練の時は挨拶できひんかったな」
アカーシャはフェンリルの方を向いて名を名乗る。
フェンリルはアカーシャを覚えていたようであった。
「下調べにも来ていたな。抜け目ない奴だ」
悪意のないフェンリルの言葉は珍しいほめ言葉なのだろう。
一度静まった場にアカーシャはファリフに向き直り、口を開く。
「ファリフはん、シバはんが遺した最も偉大な所はどこやと思う」
「シバさんは……辺境……この地の戦士として、命を全うした。その誇り高い生き方は戦士達の心に刻まれると思う」
長年、歪虚に狙われてきたこの地において、戦士として戦いに命を捧げ、地に還るという事を出来る者は少ない。
志半ばで死ぬ者、心折れた者もいたのも事実。
「ファリフくん」
お茶を啜ったアイラはカップを両手で包み込むようにファリフを見つめた。
「……キミの話の前に、教えてほしい。シバさんの最後を」
ファリフの毅然とした表情を見たアイラとオウガは顔を見合わせて頷き合う。
「……シバのじっちゃんさ……凄く強かった」
シバはハンター達と死合いを行った事から始まる。
倒れても彼は何度でも立ち上がり、ハンターの矢を、剣を、弾丸を、拳を受けていた。
血を流していく身体から湧くマテリアルは闇夜に輝く月光の如く眩き、彼自身の命の煌めきと思わざるを得なかった。
そして、ハンター達が見た蛇……。
ファリフや他の者達も壮絶なるシバの最期の死合いに言葉を失った。
辺境……赤き大地の最強の戦士、シバはもうこの世にいないことを思い知らさせるに十分な内容。
立派な最後だったとオウガはファリフへ向ける。
「……俺もこの地の戦士だからさ、あんな最期だったら、羨ましいと思う」
オウガの太陽の如くの金の瞳とファリフの蒼穹の空色の瞳がぶつかった。
「ファリフ個人としてはどう思う」
「ボクは……戦士だし、戦いにおける死は当然……」
「俺は寂しいよ。もう声を聞くこともないし、姿を見る事もできないだからよ」
オウガがファリフの言葉を遮るように告げられて、ファリフは目を見張った。
『忘れるな。尾を噛む、蛇であれ……永久に、繋がる……』
そう言ったのはアイラだ。
「おじいちゃんが私達に告げてくれた最期の言葉」
蛇……シバの一族の象徴であり、彼が最期に体現させたもの。
「この言葉はあの場にいた私達だけじゃない。きっと、ファリフくんにも伝えたかったと思う」
シバは最期の最後までこの地に生きる者としてこの地を想いながら逝ったとアイラは告げる。
「手を出して……くれるかな?」
アイラが尋ねると、ファリフはウーナを見やる。
「ウーナさんも!」
驚いたウーナだったが、三人で手を繋ぐ。
少し冷たい手が触れ合う。
「皆で思いを繋いでいこう。それが私達でおじいちゃんに誓った思い」
アイラが言えば、ファリフの瞳から一筋の涙が零れ落ちた。
父の如く慕っていたシバへの寂しさ、戦士としての羨望……オウガやアイラ達の気遣い……全部ひっくるめた感情が熱い涙へとなって頬を伝う。
「……赤き大地を取り戻す……歪虚から護るよ。未来に胸を張ってこの地に還れるように」
涙を零したファリフの様子は凛と気高く、イーディスはファリフが纏う高潔さを見て、気を引き締められるように背筋を伸ばす。
「一人で抱えるなよ」
オウガの言葉にファリフは頷く。
「ボクひとりじゃ出来る事もあまりないんだ。皆とならきっと、どんなことも立ち迎えられる。また一緒に戦ってほしい」
一転して明るい表情を見せるファリフにアカーシャが安心したような表情を見せた。
依頼結果
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依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/12/29 00:38:35 |
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■歪虚退治・相談卓■ アルカ・ブラックウェル(ka0790) 人間(クリムゾンウェスト)|17才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2015/12/31 07:19:05 |