彼等の説得

マスター:佐倉眸

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/01/02 19:00
完成日
2016/01/10 23:18

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


 子ども達の間で、お化け屋敷、と言われる廃工場がある。
 蒸気工場都市フマーレの商業区、その一角に嘗て佇んでいた教会。信仰の廃れたその教会を改装して稼働した工場は転々、持ち主を変えて商品を変えて。今では崩れ掛かった廃墟となっている。
 柵の1箇所が破れて、子供が潜るのに丁度良い穴が開いているそこは、少し危なくて、面白い物や珍しい物が沢山見付かる遊び場だった。

 過日、そのお化け屋敷で人が死んだと伝えられた。
 辺りの警備が強化されたが、その翌日から、警備に集まる顔が1人2人と欠けていった。
 それを逃れた1人の男が、お化け屋敷の近くで殺されそうになったと証言した。
 欠けた警邏の中に友人が要るシオはその証言に胸を痛めたが、一時見回りを中断し、辺りを立ち入り禁止とする、近付こうとする住人や、遊びに来てしまった子ども達に声を掛けるようにと決まってしまった。

●×××
 仕方ないと言う仲間達の話に項垂れてシオは帰途に就く。
 恐らく殺されたであろう友人を思い、重い足を引き摺った。
 足を止めて少しだけ通りの先を眺める。この道の先に件のお化け屋敷が建っている。と、思わず向かって仕舞いそうになりながら、ぱちん、と自分の頬を叩いて真っ直ぐ帰り道を歩いた。

 不意の音に振り返るとそこに美しい和装に、白い容の姿があった。
 華やかな着物に鈴の鳴る草履を履いて、結い上げた髪に簪と笄を挿している。
 しゃんと、鈴の音を鳴らしながら一歩、シオに近付いてその顔を見詰めながらうっそりと微笑んだ。
「ねえ、お友達を助けに入ってあげないの? 殺されたというのなら、余計に、見回りなんてしていないで、さっさと犯人を捕まえて、冷たい亡骸を弔ってあげないと可哀想じゃない?」
「…………っ、あ、あなたは、だれっ」
「みんなそう思っているはずよ。あなたのお友達が亡くなって、悲しんでいるのはあなただけでは無いでしょう? ね、大丈夫。きっとあなたなら、みんなを説得出来るわ」
「…………」
「あなたが、お友達を、迎えに行ってあげないとね? お友達も、あなたのこと、待っているはずよ」
「……そう、ですね」
 ガラス玉のような瞳でシオを見詰め、透き通る声で囁いて、その姿はすぐに見えなくなってしまった。
 昇った月を見上げてシオは1人考える。彼奴が殺された、そのままで良いはずが無い。犯人は捕まえなくては。そして、彼奴を見付けてやらなくては。
「――嗚呼、武器が、いるなァ……」
 仲間を誘って武器を揃えて、シオはゆっくりと引き返す。この時間にも何人か詰めているはずだ。


 ハンターオフィスに相談が一つ持ち込まれた。街の警邏のリーダーからで、ある建物に殺人鬼か、或いは歪虚の類いが棲み着いたらしいというものだ。
 オフィスの受付嬢が何点か聞き取り、対象が不明な間は周辺の確実な封鎖とハンターによる調査を行うと、話しがまとまり、その旨の依頼が掲示され、ハンターが集められた。
 道すがら、ハンター達はこれまでの経緯の説明を受け、封鎖にはこちらも手を貸すと、リーダーは警邏の人員を名前を挙げながら数えていく。
 ある1人の名前に差し掛かると口籠もり、彼は最初に殺されたと思われているメンバーの友人で、酷く落ち込んでいたと言い添えた。
 相談や作戦を練るにも、詰め所はこの先だから、現場を見てから行こうかと道を一つ曲がる。
「滅多に人の来ない道だが、この辺りだと近道になることも多いし、子供たちが面白がって遊び場にしてしまうんだ」
 通りを真っ直ぐに進んだ先黒い靄の掛かった建物を指し、あれだよ、と告げた。

 ハンター達とリーダーがお化け屋敷に到着した時、シオと彼の話しに感化されたメンバーは、ハンター達の通った道を走っていた。
 がしゃん、と背後で武装の音を聞く。
「誰だ、君たちは。そこを退いてくれ」
 盾と警棒、拳銃を手にした警邏の男達が10人、シオを先頭に集まっている。
「し、シオ君……お前達どういうつもりだ、待機していろと言ったはずだ」
 一瞬狼狽えながらも、リーダーはシオを見据えて詰め所へ戻れと命じる。シオ達は動かない。
「俺は彼奴を迎えに行きます。誰だろうと、邪魔をするなら」
 脚を肩幅に開く、グリップは確りと握って両手で構える。ぎらつく片目で照門を覗き照星を睨む。
 銃の扱いも、彼奴と一緒に覚えたんだ。
 引き金に指を掛けた。
 銃口は、リーダーの頭を狙っている。
 男達もそれぞれが得物を握り締め、構えた。


 警邏と睨み合うハンター達の背後、お化け屋敷と呼ばれる廃工場の庭に、惨殺された亡骸が積まれていた。
 その中には警邏の男達と同じ格好の者もいる。華やかな和装に長い髪、髪間から角を覗かせた青白い肌の歪虚は首を裂いた亡骸を振り回し、飛び散る血で庭を染める。
「やっぱり赤は良い色。でも、庭を全部染めるには、まだまだ足りない……もうすぐ、追加のペンキが届くんだけど」
 うっそりと笑って、表の声に耳を澄ませた。

リプレイ本文


 たん、たん。
 響いた銃声は2つ。
 セリス・ティニーブルー(ka5648)の弾丸にシオの腕が赤く染まる。震えた指が絡んだ引鉄に放たれた鉛は、的にされたリーダーを逸れて明後日の方向へ飛んでいった。
 ごとりと重たい音を立ててシオの指から拳銃が落ちた。
 銃声に挟まれたリーダーの身体が傾いでふらつく。シオ、と、戦慄く唇がかつて彼を慕っていた者の名を呼ぶが、彼を撃とうとした者にその声が届く気配は無い。
 拳銃を後方へ蹴り飛ばし、リーダーと彼等の間へギュンター=IX(ka5765)が割って入る。
 傷を押さえて血に塗れた手でハンターを指したシオが、進め、と後方へ痛みに震える声を上げる。
 仲間が捕らわれているんだ、俺たちを待っているんだ、と。
 咆哮はギュンターの冷静な一喝に遮られた。
「もし私が捕まった仲間なら……そんなバカな真似はするなと言うでしょう」
 この淀んだ廃屋が見えないのかと、穏やかな紫の双眸の奥は厳しい。
 シオを見詰めるリーダーの肩をメリエ・フリョーシカ(ka1991)が掴む。自身の背に庇う様に下がらせると腕を組んで彼等を眺め渡した。
 見下ろす視線も構わずに、足を開いて肩を聳やかす。凜と彼等を睨み上げた赤い目が熱を上げる炎のように青に染まっていく。
 背に翼を広げたような陽炎の幻影が昇り、解放されたマテリアルに呼応した青い燐光が陽炎の中に閃いている。
「聞いてるでしょう。私達はハンターです。貴方達はバックアップの筈ですが」
 彼等を近付かせない、とマテリアルの青に染めた目が真っ直ぐに睨む。
「その仇も、私達がとります。回れ右して封鎖にまわって頂けますか?」
 仲間の仇がと尚も進もうとする者を遮って、淡々とした声で告げた。
 敵討ちは嫌いでは無いが、と万歳丸(ka5665)も目の前の男達を見下ろしながら口角を僅かに上げる。
「俺達ァこの場の解決のために喚ばれたんだ――そこにいるのが、気違いの殺人鬼か歪虚か分かんねェからな」
 大柄な体躯に怯んで下がろうとする者もいるが、殆どは構わず万歳丸に得物を向ける。
「歪虚なら、テメェら如きじゃ相手にならねェ」
 朱色の盾に触れた警棒を弾いて、背後の廃墟を睨んだ。
「ジュゲームリリカル……ルンルン忍法キープアウト! ここから先は立ち入り禁止なんだからっ」
 ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)が護符を二枚引いてマテリアルを込める。
 中空を滑らせるように放ったそれは廃屋の前に、そこを通る者を捕らえる為の罠と化した。
 ルンルンの溌剌と歌うように、場違いな程に明るい声が彼等の視線を攫った。
 続いて、と彼等に見せ付けるように、符を引き抜いて翳す。
「ジュゲームリリカルクルクルマジカル……」
 マテリアルを流しながら指に挟んで立てた符は、彼等の前でひらりと翻り柵の隙間から廃屋の中へ飛んでいった。
「……ルンルン忍法分身の術! 偵察はニンジャにお任せ」
 その式の行方を追う彼等を背に、ブラウ(ka4809)も式の偵察を気に掛けている。
「早く、はやく……」
 納めた刀の鞘を握って疼く様子を隙と見たのか、前衛の脇を抜けた1人が背後から迫る。
「わたし、説得とか苦手なのよね……自分の血で染まりたくなかったら、引きなさい」
 気配に気付く声にも構わずに銃を向けるが、実戦に不慣れな照準が定まる前に、翻る鞘が脇腹を払って身体を弾き飛ばした。
「今ここで血に染まってくれるのなら……わたしは容赦なく染めるわ。香りも愉しめるし」
 尻餅をつき見上げた先、据えられた切っ先に震える。

 まず見えたのは血の煙った赤黒い靄、随所に積み重なって黒ずむ亡骸。
 符には気付かず骸の山に腰掛ける、なにものかの姿。
 底の厚い草履、花柄の華やかな和装、血染めのストール、長い黒髪、角。

「この先が庭かな……グロっ」
 彼等の抑えを仲間に任せ、ルンルンは庭の偵察に専念する。彼等の中にも、戦線を引きルンルンの声を聞き始める者が出始めた。
「庭が大変なことになってます……あれが犯人かな? きゃあ! 動きました、すっごい武器がたくさん、何人も殺されてます、私絶対許せな、――っ」

 こちらに気付いたらしい赤い唇が弧を描いた。
 細腕で屍を1つ掴み上げると、符に向かって投げつけてくる。
 幾筋も切り裂かれた血の気の無い屍が符を掠めると、赤い唇が「ざんねん、はずれちゃった」と符に見せる様に明瞭に象って動いた。
 掛けていた亡骸から下りると鈴の音を鳴らしながら近付いて、懐から取り出した針を指先に構える。

 ルンルンの声を遮るように針は符を貫いて破壊した。
 視界の切り替わる間際、ガラス玉のような目がうっそりと笑ったように見えた。
「見付かってしまいましたか……これは、手強そうですね」
 

 彼等の内、後方でルンルンの言葉を聞いていた数人のざわめきが届く。
 凄い武器だ、何人やられたんだと、この突入を尻込みする言葉だ。
 それを叱咤する、シオの声は低く、腕からの失血に青ざめている。それでも尚仲間を迎えにと張り上げる声に、彼等の士気が戻っていく。
 ルンルンが彼等へも聞かせる言葉の端々から、歪虚の可能性が高いと見るとメリエは説得の語気を強めていく。
「……出る幕はないんですよ。こちらの言う事を聞いて頂けませんかね」
 彼等では出る幕など無い。青い目が据わり、燐光の閃く揺らぎは高く上る。
「最後通告。回れ右するか、医務室のベッドで目を覚ますか。選べ」
 眼前、引いた者が1人、飛び込んできた者が2人。彼等の扱う武器を受けて罅の入るような鎧では無く、警棒と鉛を弾くとそれぞれの腹へ握り固めた拳を叩き込む。

 メリエの前に2人倒れると、その影から得物を振り上げて走り出してきた者が2人。引いたはずの1人も巻き込んで廃屋へ向かう。
 それを遮る銃声が響いた。
「下がりなさい。ミイラ取りがミイラになってしまっては、先に倒れた者達が報われないわ」
 セリスの放った弾丸の跡が足下に並んでいる。シオの腕を撃った手腕を見ている彼等は、じりと足を摺って後退するが、廃屋を睨む目に未練は消えていない。
「同朋の仇を自ら討ちたいって気持ちは判らなくもないけど……」
 それなら行かせて欲しいと彼等が言うが、セリスの銃口は彼等の足に向いて動かない。
「同朋の残したものを判ってやれないのなら、同朋を粗末に扱うのと何ら変わりがないわよ」
 彼等を説得しながら、セリスは視界の端に取り押さえられればと、煽動を続けるシオを窺う。

「どう考えても罠でしょうが……行くなら行けばよろしいのでは?」
 どうぞ、と道を示して見せたギュンターに、向き合っていた彼等が一瞬怯んだ。
「行ってもただ犠牲者が増えるだけです。捕まったご友人もさぞ嘆くことでしょうが、私には関係のないことですから、どうぞご自由に」
 先頭の1人が顔を顰める。中の危険さはルンルンの言葉に聞いていた。冷静さを取り戻した彼が下がろうと足を止めるが、後方から1人飛び込んでくる者がいた。
 おわかり頂けないようですね、とギュンターは手持ちの札を投じる。空気を裂いて飛んだそれは、警棒を振り上げた手に角を刺した。
 不意の痛みに得物を落とした手を捕らえて、手持ちのロープで縛り上げる。押さえ付けられながら暴れた彼も、黙って見下ろす仲間に諭されるように次第に落ち着きを取り戻していく。

 聞いただろ、と万歳丸が対峙する男達に言う。
「仇は俺らに任せろ。てめェらの痛みも怒りも尤もだ。歪虚じゃなけりゃァ好きに裁けばいいが……」
 彼等がじっと黙る。周りの圧されていく声に、敵わないと感じている。
「そうじゃなかった。その為にてめェらの生命が喪われる事を、故人が望むとおもってンのか?」
 シオの声が遮るように響いてくる。助けに行かないのか、見捨てるのかと。
 金の目がぎろりとシオを見下ろした。
「まだ染まってくれるの?」
 ブラウも抜き身の刀をシオへ向ける。鞘を握り直して峰で叩ける構えだが、切っ先は彼の眼前に据えた。
「いいぜ、かかって来なァ!」

 咆哮を響かせて飛び込んだシオが髄を打たれ、殴り飛ばされると、彼を呼ぶ声が広がった後、しんと静まりかえった。
 ギュンターがロープの余りでシオを縛り、セリスが彼等に整列を促している。
「他に、ロープの必要な方は?」
 冗談のような言葉に名乗り出る者は無く点呼を取られた彼等はリーダーに従って並んでいる。
「状況報告は出来るようにしておきます」
 セリスはメリエ、万歳丸とトランシーバーを合わせる。
「皆さん、無事家にたどり着くまでがお仕事です。油断せず、戻りましょうね」
 浅からぬ傷を負った者や縛られた者が担がれ、手空きの殆どいない状況へ、ギュンターが励ますような言葉を掛け、2人と彼等とリーダーが詰め所へと出発した。


「動いている敵は歪虚が一体です。ゴツくは無かったですが、頭に角があって死体や針を投げてきます。敵は恐らく正面、中は暗いですが、死角になるのは……死体の影くらいです」
 見付かってしまい、それ以上の偵察は出来なかった、死体を軽々と投げつけて、針の一撃で札を破壊した。大袈裟では無く、手強いかも知れないとルンルンが潜めた声でハンター達へ伝える。
 ルンルンの言葉を聞き、彼等の出発の支度をしている内から、我慢出来ないというようにブラウが柵へと走り出す。手を掛けて身を翻すように、その内側へ侵入を果たすと、辺りを満たす錆の香を一杯に吸い込んだ。
「あぁ……っ――なんて素晴らしいのかしら……」
 頬が紅潮し、橙の瞳が潤む。小さな唇から火照った溜息を零し、血煙の中己の肩を抱いて背を震わせた。
 フリルの愛らしい清楚な造りのワンピースの裾がふわりと広がって、その内から4本の腕がまろび出る。その幻影の先、数本の指を得て手の様に形作られたそれは、主であるブラウの興奮に従うように蠢いて方々の屍へと伸びていく。
 正面の屍に腰掛けた敵の出方を窺いながら、収めた刀にマテリアルを込める。
「貴方がこんな楽園を作ってくれたのね……? 感謝するわ」
 言葉と共に斬り掛かる。抜き放たれたモーター仕込みの刀が、盾のように差し出された屍を切り払う瞬間に、超音波の振動音を庭一面に響かせる。
 屍を裂いて届いた切っ先が浅く敵の身体に届いているが、ブラウの望む香りを広げるには至っていない。
「貴方のお名前は? どんな香りがするの?……貴方の香りを嗅がせて」
 霜の溢れる鞘へ刀を収め、敵に恍惚と微笑みかける。
 メリエと万歳丸も廃屋の庭へ、ルンルンは警戒を強く後方で札を構えている。
「ようこそ。あなた方を呼んだ覚えは無いけど、まあ、いいわ。ペンキ、帰っちゃったみたいだもの」
 屍に腰掛けたままで指に摘まむ針、メリエと万歳丸の接近を待ち、その歪虚は3本同時に投じた。
 膂力を乗せられた針はメリエの脇を掠めて地面に刺さり、弾けるように形を無くすと黒い花弁が舞い上がる。
 正面と構えていた万歳丸もそれを避けるが、攻撃の為に接近していたブラウは躱しきれずに足を縫い止めるように貫かれた。

 メリエが太刀を抜き、残りの距離を詰めると振りかぶって叩き付ける。
「遊びは終わりだ。好き勝手した代償は払え」
 マテリアルを込めた全力で斬りつけるが、その切っ先が届く感覚は薄く、左右には真2つに斬られた屍が転がって居る。
「良い刀ね、凄い切れ味」
 うっそりと笑う歪虚が次の屍に手を掛け、横たわっていたそれを引き上げると、万歳丸の拳に向けて投じる。
 屍の盾を透過するように歪虚自身にも届いた衝撃に、軽く乱れた髪を手櫛で梳き、万歳丸をじっと見上げた。
「ね、あなたの――」
「呵々ッ! 操れるもンなら操ってみな!」
 遮られると、ざんねん、と笑って歪虚は再び針を取り出す、3人が回避に構え、ルンルンも札を歪虚へ向けて投じ、稲妻を放って加勢する。

 血の煙る赤い庭に、黒い花弁が舞い上がる。
 稲妻の閃光に照らされたそれは、幾度もハンターを貫く針となった。


 負傷させた彼等を運ばせ、リーダーの先導で詰め所へ向かう。
 セリスとギュンターは、時折擦れ違う、その行列を訝しんだ住人が廃屋へと向かいかけるのを引き留めながら続いた。
 噂になってしまいそうだと、シオを担いだリーダーが呟く。
 穏便にとはいかず、元よりそのつもりも無いが、と、肩の重みとその温もりに安堵の息を吐いた。
 皆が生きていて良かったと、随分危ない場所へ行こうとしていたようだから、と。
 彼等と2人が詰め所へ至る。怪我人を休ませ、シオの腕にも包帯を巻く。銃弾は幸いにも残っておらず、再び銃を握ることは出来ないだろうが、癒えれば生活に差し障りの無さそうな傷だ。
 それくらいなら良い薬だとリーダーが笑い、それからぽつりぽつりと、彼等の中から謝罪の言葉が零れ始めた。

「助けることも重要でしょうが、状況を見極めてそこから撤退することもまた、大切な仕事」
 戦うことが役目では無いのだからと告げる、ギュンターの言葉を、彼等も今は静かに聞いている。
 煽られて飛び出した男も項垂れながら頷いていた。
 彼等を見張っていたセリスも、その様子に漸く安堵の息を吐いた。

 セリスのトランシーバーが音を拾う。詰め所を出て道を戻る。
 届いた声は仲間からの、撤退を告げるものだった。

依頼結果

依頼成功度普通
面白かった! 5
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

  • 罠の教会から生還せし者
    セリス・ティニーブルーka5648

  • ギュンター=IXka5765

重体一覧

参加者一覧

  • 強者
    メリエ・フリョーシカ(ka1991
    人間(紅)|17才|女性|闘狩人
  • 背徳の馨香
    ブラウ(ka4809
    ドワーフ|11才|女性|舞刀士
  • 罠の教会から生還せし者
    セリス・ティニーブルー(ka5648
    エルフ|25才|女性|猟撃士
  • パティの相棒
    万歳丸(ka5665
    鬼|17才|男性|格闘士

  • ギュンター=IX(ka5765
    人間(紅)|65才|男性|符術師
  • 忍軍創設者
    ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784
    人間(蒼)|17才|女性|符術師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/12/30 14:31:05
アイコン 相談卓
万歳丸(ka5665
鬼|17才|男性|格闘士(マスターアームズ)
最終発言
2016/01/02 10:24:27