ゲスト
(ka0000)
【初夢】しみない雨~迷いの森の喫茶店~
マスター:DoLLer

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/01/06 07:30
- 完成日
- 2016/01/14 07:41
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
迷いの森はいつでも真夜中。
だけど決して真っ暗ではありません。お空にはお月様がニコニコ黄色い明かりを届けてくれます。たくさんの木々には妖精さんが光の粉を取らして飛んでいるし、木々に実る果実は淡く色とりどりに照らしてくれます。地面では、ほら。妖精の粉を受けたキノコがぽんっと笠を開きます。ちょろちょろ流れる小川はそんな明かりをいくつも運んでキラキラ輝き眩しいくらい。
そんな森のど真ん中で、喫茶店『月の雫亭』はひっそり営業をしています。
大きな樫の木のうろ二つから、煌々灯りが漏れていて、その間にある大きな口に見えるのが入り口の扉です。ゆっくりあけると、扉から伸びたスズランが、チリリン、リリンとかわいらしい音を立てて皆さんの来訪を知らせます。
「寒いところようこそ。しかも今日はアメが降りそうですね」
長い髪を後ろでくくったマスターのお兄さんが、そう言って迷ったあなた達を迎え入れてくれました。
うろの窓から空を覗くと、確かに。今にも雨が降ってきそう。
こつん。
あら、そう言っている間に雨が窓に当たりました。この喫茶店に入って正解でした。
と思ったら。あれれ?
雨が窓の外をコツコツと叩きます。それはコツコツあたり、雫のまま窓辺にこつこつ積もっていきます。
滲みこまない雨なんて初めてです。
「これは雨? 雹?」
「アメですよ。今日はご機嫌斜めのようです。どうりで寒いはず」
機嫌が斜めだと雨が降るの?
変な話だと思いましたが、空を見上げてああ、と思いました。
雲が一つ傾いています。そこからこつこつ雫がこぼれ。まるで傾いた籠のよう。
どうして滲みないんですか?
「そりゃ、ご機嫌が悪いからじゃないかな。ムードが悪いとどんなものも心に沁みなくなる」
シルクハットの熊さんがしたり顔で言いました。
そして、窓から転がり落ちてきた雫を一つ、ティーカップに淹れて上げると。あら不思議。
お茶は綺麗な飴色に変わります。どんな味がするんだろう?
「沁みない物は、滲みるようにしてあげたらいい。凍みた心もきっと溶けるだろうね」
「アメの雫は温めてあげれば、どんなところにも溶けるし、また雲のように形も変わります。ひと手間加えることで不思議と変わるものです」
お茶にいれても抜群。お菓子作りにもいいですよ。
お兄さんは微笑むと、あなた達に籠を差し出します。
「森が冷えると、皆様も温まらないでしょうから。あたたかなお手伝いをお願いできますか?」
だけど決して真っ暗ではありません。お空にはお月様がニコニコ黄色い明かりを届けてくれます。たくさんの木々には妖精さんが光の粉を取らして飛んでいるし、木々に実る果実は淡く色とりどりに照らしてくれます。地面では、ほら。妖精の粉を受けたキノコがぽんっと笠を開きます。ちょろちょろ流れる小川はそんな明かりをいくつも運んでキラキラ輝き眩しいくらい。
そんな森のど真ん中で、喫茶店『月の雫亭』はひっそり営業をしています。
大きな樫の木のうろ二つから、煌々灯りが漏れていて、その間にある大きな口に見えるのが入り口の扉です。ゆっくりあけると、扉から伸びたスズランが、チリリン、リリンとかわいらしい音を立てて皆さんの来訪を知らせます。
「寒いところようこそ。しかも今日はアメが降りそうですね」
長い髪を後ろでくくったマスターのお兄さんが、そう言って迷ったあなた達を迎え入れてくれました。
うろの窓から空を覗くと、確かに。今にも雨が降ってきそう。
こつん。
あら、そう言っている間に雨が窓に当たりました。この喫茶店に入って正解でした。
と思ったら。あれれ?
雨が窓の外をコツコツと叩きます。それはコツコツあたり、雫のまま窓辺にこつこつ積もっていきます。
滲みこまない雨なんて初めてです。
「これは雨? 雹?」
「アメですよ。今日はご機嫌斜めのようです。どうりで寒いはず」
機嫌が斜めだと雨が降るの?
変な話だと思いましたが、空を見上げてああ、と思いました。
雲が一つ傾いています。そこからこつこつ雫がこぼれ。まるで傾いた籠のよう。
どうして滲みないんですか?
「そりゃ、ご機嫌が悪いからじゃないかな。ムードが悪いとどんなものも心に沁みなくなる」
シルクハットの熊さんがしたり顔で言いました。
そして、窓から転がり落ちてきた雫を一つ、ティーカップに淹れて上げると。あら不思議。
お茶は綺麗な飴色に変わります。どんな味がするんだろう?
「沁みない物は、滲みるようにしてあげたらいい。凍みた心もきっと溶けるだろうね」
「アメの雫は温めてあげれば、どんなところにも溶けるし、また雲のように形も変わります。ひと手間加えることで不思議と変わるものです」
お茶にいれても抜群。お菓子作りにもいいですよ。
お兄さんは微笑むと、あなた達に籠を差し出します。
「森が冷えると、皆様も温まらないでしょうから。あたたかなお手伝いをお願いできますか?」
リプレイ本文
「不思議……」
迷ったのかどうだか、そしてどうやってここに来たのやら。
コツンとあたるアメにおでこを押さえながら、七夜・真夕(ka3977)さんは空を見上げました。ああ、もしかしてまた違う世界にやってきたのかな。
そう思うともう真夕さんは前向きに。二度あることは三度あるものです。
「迷わずおいで」
バジル・フィルビー(ka4977)さんがお店の近くで草木をならして円のベッドをこしらえます。星屑も雫もみんなそこに集まってやってきますが、4つも5つもバラバラ降ってきたら、そりゃ大変。道元 ガンジ(ka6005)くんは慌てて袖で頭をカバー。手のひらでアメは弾けてバラバラになってはガンジくんの目の前をキラキラで覆います。赤青緑、黄色に紫。
「これ、おいしそう!」
ガンジくんの鼻が甘い香りをかぎわけると思わず、手のひらをくるり返してキャッチ。そのままお口にスロー。
「蜜の味? それとも水の味?」
ケイルカ(ka4121)ちゃんがガンジくんの顔色を窺います。ケイルカさんもアメには興味津々。
「柚子の味!」
その言葉にケイルカさんはぱっと目を輝かせて、まだまだ降り落ちてくるアメに両手を広げました。
「アメをたくさん集めるまで雲さんのご機嫌をナナメのままにしておいてね。お空のお散歩いってくる!」
ケイルカさんはそう言うや否や、カゴ一つ持っていつもは見るのも嫌いなキノコの上に飛び乗りました。
キノコノコノコ。この子は跳ねるの。
嫌いの上で機を待つの。つまりそれこそ上機嫌。
「せぃのーーぉ」
ケイルカは跳びあがっては飛んでゆき、風に乗っては落ちてくるアメをカゴで拾い集めます。ガンジくんも負けてなるものかと後を追いかけます。
と、あれれ。風が思うように傾いた雲の方に行ってくれません。
「こっち、こっち(東風)だってば!」
ケイルカさんがそう言うたびに風はどんどん西へと流れていきます。慌ててケイルカさんは浮かんでいた雲にしがみつきますが。
「これも美味しいっ!! フワフワだよ」
しがみついた雲からすぽんと顔を出したのはガンジくん。ちぎっては食べ。ちぎっては食べ。みるみる雲は散らされて小さくなっていきます。
「きゃああああっ」
あ、とうとう支えきれなくなって落ちてしまいました。ガンジくんはお腹いっぱいに雲を食べたのでそのままお腹を上にして、ふよふよ。
しかしケイルカさんはそうもいきません。
「助けませんとっ」
ティア・ユスティース(ka5635)さんは西へ東へ彼女を受け止めようと走り出します。こういうところはお母さんそっくり。なのに須藤 要(ka0167)さんはといえば、アメを入れたカンを燗して見守るばかり。
「何とかなるさ。なんたって飴(Candy)だもの、何でも出来る(Can do)よ。栄え(南風)ある雨雲よ」
真っ逆さまの世界に思わずぎゅっと目を閉じたケイルカさんの耳に、そんな要さんの声が聞こえます。
カンの中からクモの糸が噴き出したかと思うと、みるみる間に雲になって、ティアさんとケイルカさんを包み込みます。
「まあ、お父様が語ってくれたおとぎ話の通りですね。その時はクッションだったと聞いていましたけれど」
雲の巣まみれになりつつ、無事ケイルカさんを救い出したティアさんはまだ目をぎゅっと閉じて、身体もぎゅっと固くしていたケイルカさんに優しくそう言います。
「ふぅ~、ティアさんありがとうね!」
ケイルカさんはなんとか守った籠のアメを抱きしめ安堵のため息。本当はもっと集める予定でしたけれど、たくさん下に落ちてしまいました。
「過誤もあるさ」
要さんはケイルカさんとティアさんに巻き付いた雲を取ってあげると、くるくるっとまとめて紐にします。ティアさんはそこに光をともしたロザリオを掲げます。
「加護があらんことを」
その言葉に、雲の紐は硬くなって籠に変わります。
「それじゃあ次は落ちたアメ集めだね」
「むー」
バジルさんの言葉にケイルカさんは困ってしまいした。川の中にアメが落ちたのは知っていますが、だって冷たそうだもの。
「川の中のは冷たそうですね? 心凍えて何物にも染みないというに、もっと悲しんでいらっしゃらないかと」
「そうだね。でも水に溶けていないなら見えなくなっているだけ(見ず) だから、きっとなくなってはいないはず。アメのキラキラ、少しわけてもらおう」
ティアさんの心配に、バジルさんは微笑んでそう言うと、川べりに座るとちょっとした石を拾い上げると絵筆を取ります。
「輝きを胸に。さらに輝いて。君の名はニジマス(虹増す)」
バジルさんがニジマスをかき上げると、カンバス代わりの石を逆に飲みこみ、意志をもって水の中を泳ぎ始めては次々とアメをバジルさんの籠にアメを集めてくれます。
「すごーい」
真夕さんが驚く中にも、バジルさんがもう一匹。さらに木の葉にも。あっという間にニジマスがいっぱい。川はもうニジでいっぱい。
「でも、ちょっとせまそうじゃない?」
空より水面の方が光り輝くくらいに溢れるのを見た真夕さんの言葉に、バジルさんは頬を掻いて苦笑しました。まだ妖精を描こうと思っていたのは内緒です。
そこで真夕さんは音下駄を軽く踏み鳴らしました。シャランという音と共にじゃぽん。とニジマスが空を跳ねます。
「もっと心広くなればいいわよね。虹が川から照るなら、上も下もないもの」
真夕さんはお月様に問いかけました。もちろんまあるいお月様はにっこり笑顔。
今度は天儀装束の袖を大きく円を描くと、ニジマスはもっと高く。
ケイルカさんもフルートを取り出し吹き始めます。
「音はみんなをつないでくれる。これって縁よね」
「そうね! 円だから縁。境目なんてひとつもないわ」
真夕さんがくるりと舞うごとに、ケイルカさんのフルートも強くなったり弱くなったり。
音は高く、川の水もニジマスもどんどん高く空へと登っていきます。
「悲しい事も嫌な事も、楽しい事で洗い流そう。好きな事思い浮かべて」
真夕さんの言葉に寒いお空は水いっぱい。水の中に音楽会の様子がふわり。浮かんでは空高く浮かびます。
青いのはお空なのか、それとも水なのか。ケイルカさんの笛が響き渡りながらも泡がこぽこぽ昇ります。
「魚が空を泳いでる……」
泡が昇っていくのを見上げたガンジくん。魚は空を泳いでいるのを見てしまいました。じゃあ鳥は?
川のあったところに視線を移すと、いました。鳥は水の中をはばたいています。お月様も水の中。
「ね、ガンジ。よければ空に何か嫌な事があったか聞いてみて」
「あの雲まで登るのは大変だったけれど、下にあるなら簡単そう! 行ってくるよ!!」
ガンジくんは真下ではばたく鳥さんに乗ると、どんどん下へ。斜めになった雲へと向かっていきます。
「お月様とケンカしたのかい? 誰かのお願いきこうとしたの? 悩みがあるなら聴くよ?」
「そう、月と一緒に雪を見たいって言われたの。とっても腹が立って僕はへそを曲げた。だから、身体も曲がった」
見事なご機嫌(mood) 斜めな三段論法(mood)。
でも、本人はへそを曲げたせいかすっかりひねくれちゃって。
「でも立てに伸びる雲ってスタイリッシュ(mode)でしょ」
なんていいます。
「真っ直ぐになったなら下にストンと落ちるだろ。ああ、でも今は地上は上か。ちょうどいいからその気持ち吐き出してごらん。きっと楽になる」
「辛くなんてあるものか」
ガンジくんの言葉にも雲は言うことを聞いてくれません。どうしましょう。
でも、やせ我慢をしているのはわかります。だって雲の身体はガンジくんが食べるところを悩むくらいに細いんだもの。
「本当の気持ちを言えないなんて辛いこと。お母様も本当のことなかなか言えなくて苦しんだといいます。苦い思いもいっぱい」
「そんな時は温かくあまーい気持ちになれればいいわ」
真夕さんはにっこりティアさんに微笑むと、喫茶店のキッチンにバジルさんが集めたアメを小鍋にいれます。
「苦い時は、ミルクを入れて上げれば、柔らかく包み込んでくれるものよ。甘い一時(ハニー)の代わりに蜂蜜少し。多すぎたらきっとベトベトになるか砂を吐いちゃうわ」
そして紅茶の完成。最後に一滴。喫茶店の壺に入っていたジンジャーをひとつまみ。
あら、逆さになっていたせいか壺を開けたらひとつかみ程はいっちゃった。でも真夕さんは気にしません。
「ジンジャー(生姜)だもの。しょうがない」
「あったかい(hot)ポット(pot)にいれようか。冷めた気持ちにはきっとよく効くよ」
完成した紅茶を要さんがポットに移し替えてくれてティアさんに預けます。
「これでツラい気持ちは吹き飛ぶわ。気持ちがアガってきたら、みんなで喫茶店でみんなでお茶しましょうって伝えて上げて」
「わかりました。行ってまいります!」
温かい真夕さんの言葉と、淹れてくれた紅茶をもってティアさんは綿あめの雲に乗ってご機嫌斜めの雲の元へ。そうして紅茶をプレゼント。
一口した雲はみるみる膨れ上がります。
「辛い!」
辛い(ツラい、本当はカラい)って言えたね。
冷たく固くなった心を柔らかくするには熱い気持ちは伝わったようです。
その気持ちを受け取ったティアさんがヒーリングスフィアの光の膜で包み込みます。
胸に溜めた冷えたアメもいっぱい。雨のように降り注ぎます。アメの雨。いえ、本当の雨です。
「おおお、ぺちゃんこだったのが膨らんだ。すっごい。お日様に干した布団みたい!」
カタくなった雲に少し心配になっていましたけれど、これならきっと大丈夫だね。ガンジくんは嬉しさいっぱいに雲に抱き付きます。
お日様のいい匂い。
「ちょっとつまんでもいい?」
「ほっぺつままれたら、醒め(冷め)ちゃうから、一思いにガブリとどうぞ!」
雲さんの機嫌もすっかり戻ったようです。それじゃあ遠慮なく。
「いただきまぁす!!」
ガンジくんはガブリ。あっつあつの砂糖の味がします、ちょ、ちょっと辛いかも?
雲さんはかじられ、小さくなるほどに身体も心も軽く。どんどん浮いていきます。
「ようこそ、あったかい春に」
要さんはアメをウメの花にして差し出します。でもアメは丸くてまだツボミみたい。
雲は小さくなったまま、なんだか身を縮こまらせます。
だって周りにはいっぱいの冷たいアメ。降り積もったそれはまるで雪の様。まだまだ寒くて、思わず身震い。もしかするとアメをこぼしちゃつたこと気にしてるのかな。
「大丈夫。すぐ温かくなるよ。要ちゃん、このお花いいかな?」
「ああ、いいよ。その間に次の準備しとく」
要さんから受け取ったケイルカが蕾の梅に、軽くキス。
あら不思議。ウメは大きく膨らんでチューリップに育ちます。
「春が来るから舞うわけじゃないの。舞うから春が来るのよ。踊れば身体もあったかく、心も温かくなるわ」
「そうそう。みーんなで一緒! 真夕ちゃんの踊り、私の笛の音があれば冷たい風もとんでっちゃう!!」
真夕さんとケイルカさんはお花を二人で持ちます。独りは寂しくても二人なら賑やかに。
チューリップの口がプルプル震えたかと思うと、花咲いた唇から音が漏れだします。二人の気持ちをあらわす音楽が湯気のように溢れ出てきます。湯気は輪っかになってくるくる優しい音色。楽しい音色が流れます。
「ねっねっ。これなら楽しくいっぱい溶かせるわ。もっとたくさんの人と手をつなげばもっと温かくなるかも」
「そうだね。輪はたくさんあった方がいいかな」
ケイルカさんの言葉にバジルさんは空に呼びかけます。
「母さん鳥よ。文句(crame)なしの巣になるよ。卵を育てるのにどうだろう」
バジルさんの呼び声に鶴(crane)が一羽やってきます。1羽、2羽。いっぱいいっぱい。
何羽もがいくつもの輪になって空にお話作ります。
音の湯気の巣にはとてもじゃないけど入りきりそうにありません。ケイルカさんは慌てます。
「うわわ、もっともっとお花咲かせないととてもじゃないけど足りないかも!」
「大丈夫。ここに温かい雲さんいるんだから」
真夕さんはぎゅっと雲を抱きしめます。ガンジくんもぎゅっ。みんなでぎゅっ。
「幸せはね、分かち合うと増えるものなのよ。あったかい気持ちもね」
するとかじられて小さくなった雲さんはむくむくみんなの輪の中から溢れるくらい膨れ上がっていきます。これなら鶴さんみんなそろって子育てできるかも?
「卵を温めるついでに、アメも温めてくれないかな」
「いいよ、いいよ。みんなでしてあげよう」
鶴の一声がかかると、みんな雲に乗って一休み。ケイルカさんの笛の音を優しい子守唄にして。
するとアメはみるみる溶けて輝きはじめます。
「このアメでパンケーキが焼けるかも。懐で温めてくれた味はきっと懐かしい味になるかもしれないね」
「気を付けなよ。焦げつくような熱さにはまだ早い」
バジルさんの一言に要さんが注意。そうだね。春を飛び越して夏になっちゃう。
雲は飴色に輝いて、うすら光が漏れだし梯子になります。
「溶けてきた。いい具合だ。ひっくり返しに行こうか」
「どんな味になっているかな。大きいので一緒に行こうか」
要さんバジルさんを始めにみんなで梯子をのぼって雲の上。
アメが黄金色に溶けて広がっています。二人はそれぞれ端に回って、小麦粉入れてぐるぐるかき混ぜパンケーキのできあがり。
「いいかい?」
「「せぇのっ」」
力を合わせてみんなで持ち上げたその時、鶴が驚いてしまいました。
「ケーン、ケーン」
あ。勢い余ってパンケーキは大気圏まで昇ってしまいます。月の光だけではよく見えません。
そこでティアさんが杖に太陽の光込めてパンケーキを照らしますとパンケーキも照らし返して眩しいくらい。お日様のようになってしまいます。
日と月が一緒になったら明けてきます。空は虹色。曙の色。
「うわわ、お空に虹色のコーヒー!!」
ケイルカさんの言う通り。黒いコーヒーに甘い虹色のアメがかかります。
香りもとってもいいですよ。なんてったってみんなで作ったんですもの。これはみんなで楽しまないと飲みきれないくらいです。
コーヒーをみんなで飲めばひとごこち。夜明けまでがんばったみんなはゆめごこち。
ティアさんがシャインのかかった杖を振ってコーヒーをかき混ぜると、どんどん夜は白んじていい色合い。雲は空のお社(shrine)にみえてきます。
「今年も一年、いいことがありますように」
迷ったのかどうだか、そしてどうやってここに来たのやら。
コツンとあたるアメにおでこを押さえながら、七夜・真夕(ka3977)さんは空を見上げました。ああ、もしかしてまた違う世界にやってきたのかな。
そう思うともう真夕さんは前向きに。二度あることは三度あるものです。
「迷わずおいで」
バジル・フィルビー(ka4977)さんがお店の近くで草木をならして円のベッドをこしらえます。星屑も雫もみんなそこに集まってやってきますが、4つも5つもバラバラ降ってきたら、そりゃ大変。道元 ガンジ(ka6005)くんは慌てて袖で頭をカバー。手のひらでアメは弾けてバラバラになってはガンジくんの目の前をキラキラで覆います。赤青緑、黄色に紫。
「これ、おいしそう!」
ガンジくんの鼻が甘い香りをかぎわけると思わず、手のひらをくるり返してキャッチ。そのままお口にスロー。
「蜜の味? それとも水の味?」
ケイルカ(ka4121)ちゃんがガンジくんの顔色を窺います。ケイルカさんもアメには興味津々。
「柚子の味!」
その言葉にケイルカさんはぱっと目を輝かせて、まだまだ降り落ちてくるアメに両手を広げました。
「アメをたくさん集めるまで雲さんのご機嫌をナナメのままにしておいてね。お空のお散歩いってくる!」
ケイルカさんはそう言うや否や、カゴ一つ持っていつもは見るのも嫌いなキノコの上に飛び乗りました。
キノコノコノコ。この子は跳ねるの。
嫌いの上で機を待つの。つまりそれこそ上機嫌。
「せぃのーーぉ」
ケイルカは跳びあがっては飛んでゆき、風に乗っては落ちてくるアメをカゴで拾い集めます。ガンジくんも負けてなるものかと後を追いかけます。
と、あれれ。風が思うように傾いた雲の方に行ってくれません。
「こっち、こっち(東風)だってば!」
ケイルカさんがそう言うたびに風はどんどん西へと流れていきます。慌ててケイルカさんは浮かんでいた雲にしがみつきますが。
「これも美味しいっ!! フワフワだよ」
しがみついた雲からすぽんと顔を出したのはガンジくん。ちぎっては食べ。ちぎっては食べ。みるみる雲は散らされて小さくなっていきます。
「きゃああああっ」
あ、とうとう支えきれなくなって落ちてしまいました。ガンジくんはお腹いっぱいに雲を食べたのでそのままお腹を上にして、ふよふよ。
しかしケイルカさんはそうもいきません。
「助けませんとっ」
ティア・ユスティース(ka5635)さんは西へ東へ彼女を受け止めようと走り出します。こういうところはお母さんそっくり。なのに須藤 要(ka0167)さんはといえば、アメを入れたカンを燗して見守るばかり。
「何とかなるさ。なんたって飴(Candy)だもの、何でも出来る(Can do)よ。栄え(南風)ある雨雲よ」
真っ逆さまの世界に思わずぎゅっと目を閉じたケイルカさんの耳に、そんな要さんの声が聞こえます。
カンの中からクモの糸が噴き出したかと思うと、みるみる間に雲になって、ティアさんとケイルカさんを包み込みます。
「まあ、お父様が語ってくれたおとぎ話の通りですね。その時はクッションだったと聞いていましたけれど」
雲の巣まみれになりつつ、無事ケイルカさんを救い出したティアさんはまだ目をぎゅっと閉じて、身体もぎゅっと固くしていたケイルカさんに優しくそう言います。
「ふぅ~、ティアさんありがとうね!」
ケイルカさんはなんとか守った籠のアメを抱きしめ安堵のため息。本当はもっと集める予定でしたけれど、たくさん下に落ちてしまいました。
「過誤もあるさ」
要さんはケイルカさんとティアさんに巻き付いた雲を取ってあげると、くるくるっとまとめて紐にします。ティアさんはそこに光をともしたロザリオを掲げます。
「加護があらんことを」
その言葉に、雲の紐は硬くなって籠に変わります。
「それじゃあ次は落ちたアメ集めだね」
「むー」
バジルさんの言葉にケイルカさんは困ってしまいした。川の中にアメが落ちたのは知っていますが、だって冷たそうだもの。
「川の中のは冷たそうですね? 心凍えて何物にも染みないというに、もっと悲しんでいらっしゃらないかと」
「そうだね。でも水に溶けていないなら見えなくなっているだけ(見ず) だから、きっとなくなってはいないはず。アメのキラキラ、少しわけてもらおう」
ティアさんの心配に、バジルさんは微笑んでそう言うと、川べりに座るとちょっとした石を拾い上げると絵筆を取ります。
「輝きを胸に。さらに輝いて。君の名はニジマス(虹増す)」
バジルさんがニジマスをかき上げると、カンバス代わりの石を逆に飲みこみ、意志をもって水の中を泳ぎ始めては次々とアメをバジルさんの籠にアメを集めてくれます。
「すごーい」
真夕さんが驚く中にも、バジルさんがもう一匹。さらに木の葉にも。あっという間にニジマスがいっぱい。川はもうニジでいっぱい。
「でも、ちょっとせまそうじゃない?」
空より水面の方が光り輝くくらいに溢れるのを見た真夕さんの言葉に、バジルさんは頬を掻いて苦笑しました。まだ妖精を描こうと思っていたのは内緒です。
そこで真夕さんは音下駄を軽く踏み鳴らしました。シャランという音と共にじゃぽん。とニジマスが空を跳ねます。
「もっと心広くなればいいわよね。虹が川から照るなら、上も下もないもの」
真夕さんはお月様に問いかけました。もちろんまあるいお月様はにっこり笑顔。
今度は天儀装束の袖を大きく円を描くと、ニジマスはもっと高く。
ケイルカさんもフルートを取り出し吹き始めます。
「音はみんなをつないでくれる。これって縁よね」
「そうね! 円だから縁。境目なんてひとつもないわ」
真夕さんがくるりと舞うごとに、ケイルカさんのフルートも強くなったり弱くなったり。
音は高く、川の水もニジマスもどんどん高く空へと登っていきます。
「悲しい事も嫌な事も、楽しい事で洗い流そう。好きな事思い浮かべて」
真夕さんの言葉に寒いお空は水いっぱい。水の中に音楽会の様子がふわり。浮かんでは空高く浮かびます。
青いのはお空なのか、それとも水なのか。ケイルカさんの笛が響き渡りながらも泡がこぽこぽ昇ります。
「魚が空を泳いでる……」
泡が昇っていくのを見上げたガンジくん。魚は空を泳いでいるのを見てしまいました。じゃあ鳥は?
川のあったところに視線を移すと、いました。鳥は水の中をはばたいています。お月様も水の中。
「ね、ガンジ。よければ空に何か嫌な事があったか聞いてみて」
「あの雲まで登るのは大変だったけれど、下にあるなら簡単そう! 行ってくるよ!!」
ガンジくんは真下ではばたく鳥さんに乗ると、どんどん下へ。斜めになった雲へと向かっていきます。
「お月様とケンカしたのかい? 誰かのお願いきこうとしたの? 悩みがあるなら聴くよ?」
「そう、月と一緒に雪を見たいって言われたの。とっても腹が立って僕はへそを曲げた。だから、身体も曲がった」
見事なご機嫌(mood) 斜めな三段論法(mood)。
でも、本人はへそを曲げたせいかすっかりひねくれちゃって。
「でも立てに伸びる雲ってスタイリッシュ(mode)でしょ」
なんていいます。
「真っ直ぐになったなら下にストンと落ちるだろ。ああ、でも今は地上は上か。ちょうどいいからその気持ち吐き出してごらん。きっと楽になる」
「辛くなんてあるものか」
ガンジくんの言葉にも雲は言うことを聞いてくれません。どうしましょう。
でも、やせ我慢をしているのはわかります。だって雲の身体はガンジくんが食べるところを悩むくらいに細いんだもの。
「本当の気持ちを言えないなんて辛いこと。お母様も本当のことなかなか言えなくて苦しんだといいます。苦い思いもいっぱい」
「そんな時は温かくあまーい気持ちになれればいいわ」
真夕さんはにっこりティアさんに微笑むと、喫茶店のキッチンにバジルさんが集めたアメを小鍋にいれます。
「苦い時は、ミルクを入れて上げれば、柔らかく包み込んでくれるものよ。甘い一時(ハニー)の代わりに蜂蜜少し。多すぎたらきっとベトベトになるか砂を吐いちゃうわ」
そして紅茶の完成。最後に一滴。喫茶店の壺に入っていたジンジャーをひとつまみ。
あら、逆さになっていたせいか壺を開けたらひとつかみ程はいっちゃった。でも真夕さんは気にしません。
「ジンジャー(生姜)だもの。しょうがない」
「あったかい(hot)ポット(pot)にいれようか。冷めた気持ちにはきっとよく効くよ」
完成した紅茶を要さんがポットに移し替えてくれてティアさんに預けます。
「これでツラい気持ちは吹き飛ぶわ。気持ちがアガってきたら、みんなで喫茶店でみんなでお茶しましょうって伝えて上げて」
「わかりました。行ってまいります!」
温かい真夕さんの言葉と、淹れてくれた紅茶をもってティアさんは綿あめの雲に乗ってご機嫌斜めの雲の元へ。そうして紅茶をプレゼント。
一口した雲はみるみる膨れ上がります。
「辛い!」
辛い(ツラい、本当はカラい)って言えたね。
冷たく固くなった心を柔らかくするには熱い気持ちは伝わったようです。
その気持ちを受け取ったティアさんがヒーリングスフィアの光の膜で包み込みます。
胸に溜めた冷えたアメもいっぱい。雨のように降り注ぎます。アメの雨。いえ、本当の雨です。
「おおお、ぺちゃんこだったのが膨らんだ。すっごい。お日様に干した布団みたい!」
カタくなった雲に少し心配になっていましたけれど、これならきっと大丈夫だね。ガンジくんは嬉しさいっぱいに雲に抱き付きます。
お日様のいい匂い。
「ちょっとつまんでもいい?」
「ほっぺつままれたら、醒め(冷め)ちゃうから、一思いにガブリとどうぞ!」
雲さんの機嫌もすっかり戻ったようです。それじゃあ遠慮なく。
「いただきまぁす!!」
ガンジくんはガブリ。あっつあつの砂糖の味がします、ちょ、ちょっと辛いかも?
雲さんはかじられ、小さくなるほどに身体も心も軽く。どんどん浮いていきます。
「ようこそ、あったかい春に」
要さんはアメをウメの花にして差し出します。でもアメは丸くてまだツボミみたい。
雲は小さくなったまま、なんだか身を縮こまらせます。
だって周りにはいっぱいの冷たいアメ。降り積もったそれはまるで雪の様。まだまだ寒くて、思わず身震い。もしかするとアメをこぼしちゃつたこと気にしてるのかな。
「大丈夫。すぐ温かくなるよ。要ちゃん、このお花いいかな?」
「ああ、いいよ。その間に次の準備しとく」
要さんから受け取ったケイルカが蕾の梅に、軽くキス。
あら不思議。ウメは大きく膨らんでチューリップに育ちます。
「春が来るから舞うわけじゃないの。舞うから春が来るのよ。踊れば身体もあったかく、心も温かくなるわ」
「そうそう。みーんなで一緒! 真夕ちゃんの踊り、私の笛の音があれば冷たい風もとんでっちゃう!!」
真夕さんとケイルカさんはお花を二人で持ちます。独りは寂しくても二人なら賑やかに。
チューリップの口がプルプル震えたかと思うと、花咲いた唇から音が漏れだします。二人の気持ちをあらわす音楽が湯気のように溢れ出てきます。湯気は輪っかになってくるくる優しい音色。楽しい音色が流れます。
「ねっねっ。これなら楽しくいっぱい溶かせるわ。もっとたくさんの人と手をつなげばもっと温かくなるかも」
「そうだね。輪はたくさんあった方がいいかな」
ケイルカさんの言葉にバジルさんは空に呼びかけます。
「母さん鳥よ。文句(crame)なしの巣になるよ。卵を育てるのにどうだろう」
バジルさんの呼び声に鶴(crane)が一羽やってきます。1羽、2羽。いっぱいいっぱい。
何羽もがいくつもの輪になって空にお話作ります。
音の湯気の巣にはとてもじゃないけど入りきりそうにありません。ケイルカさんは慌てます。
「うわわ、もっともっとお花咲かせないととてもじゃないけど足りないかも!」
「大丈夫。ここに温かい雲さんいるんだから」
真夕さんはぎゅっと雲を抱きしめます。ガンジくんもぎゅっ。みんなでぎゅっ。
「幸せはね、分かち合うと増えるものなのよ。あったかい気持ちもね」
するとかじられて小さくなった雲さんはむくむくみんなの輪の中から溢れるくらい膨れ上がっていきます。これなら鶴さんみんなそろって子育てできるかも?
「卵を温めるついでに、アメも温めてくれないかな」
「いいよ、いいよ。みんなでしてあげよう」
鶴の一声がかかると、みんな雲に乗って一休み。ケイルカさんの笛の音を優しい子守唄にして。
するとアメはみるみる溶けて輝きはじめます。
「このアメでパンケーキが焼けるかも。懐で温めてくれた味はきっと懐かしい味になるかもしれないね」
「気を付けなよ。焦げつくような熱さにはまだ早い」
バジルさんの一言に要さんが注意。そうだね。春を飛び越して夏になっちゃう。
雲は飴色に輝いて、うすら光が漏れだし梯子になります。
「溶けてきた。いい具合だ。ひっくり返しに行こうか」
「どんな味になっているかな。大きいので一緒に行こうか」
要さんバジルさんを始めにみんなで梯子をのぼって雲の上。
アメが黄金色に溶けて広がっています。二人はそれぞれ端に回って、小麦粉入れてぐるぐるかき混ぜパンケーキのできあがり。
「いいかい?」
「「せぇのっ」」
力を合わせてみんなで持ち上げたその時、鶴が驚いてしまいました。
「ケーン、ケーン」
あ。勢い余ってパンケーキは大気圏まで昇ってしまいます。月の光だけではよく見えません。
そこでティアさんが杖に太陽の光込めてパンケーキを照らしますとパンケーキも照らし返して眩しいくらい。お日様のようになってしまいます。
日と月が一緒になったら明けてきます。空は虹色。曙の色。
「うわわ、お空に虹色のコーヒー!!」
ケイルカさんの言う通り。黒いコーヒーに甘い虹色のアメがかかります。
香りもとってもいいですよ。なんてったってみんなで作ったんですもの。これはみんなで楽しまないと飲みきれないくらいです。
コーヒーをみんなで飲めばひとごこち。夜明けまでがんばったみんなはゆめごこち。
ティアさんがシャインのかかった杖を振ってコーヒーをかき混ぜると、どんどん夜は白んじていい色合い。雲は空のお社(shrine)にみえてきます。
「今年も一年、いいことがありますように」
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喫茶店『月の雫亭』にようこそ ケイルカ(ka4121) エルフ|15才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2016/01/05 23:23:12 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/01/04 08:34:50 |