ゲスト
(ka0000)
すみっこお焚き
マスター:月宵

- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- 易しい
- オプション
-
- 参加費
500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 1~50人
- サポート
- 0~0人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/01/07 09:00
- 完成日
- 2016/01/14 13:38
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
辺境の地。そこには様々な部族が存在している。彼らにはそれぞれ崇拝し、信仰するトーテムと言うものが存在する。彼ら部族をまとめあげるに不可欠なもの、言わば生命線と言ったところだろうか。
そんな部族の中に『イチヨ族』と言うものがいる。彼らは流浪の少数部族で、各地を転々とする者達。彼らのトーテムの名は『概念精霊・コリオリ』と言う。
彼らの信条は『他部族の信仰を信仰する』と言う変わったものだ。
それが例え、如何なる信仰であろうとも……
●
雲一つない青空。季節特有の冷たい風がイチヨ族の少年ヤ・マダのまだ未発達な手を悴ませる。
「さ……寒いよ」
白い息をあてながら、少しでも指先を温めようと一生懸命擦り合わせる。
マダは今、とある山の頂きに来ている。それは、これより始まる催事の監視役の為にだ。
「これで温めておけ。向こうで配っていた」
傍らにいた仮面の人物イ・シダが、粘土の焼き物に入ったアツアツの甘酒をマダに手渡す。
「シダ様、恐れ入ります……うっ」
ズッ、と音をさせてマダが甘酒を啜れば、あまりの熱さに口元を押さえた。
涙目になりながらも、マダは歩いてから火口を覗き込んだ。火口より遥か下には、太陽と変わらずの輝きを持ち、うねるマグマの姿があった……
「……すごい」
「眼、気を付けろ」
この山にはカエルの形をした火の精霊がいると言われている。山頂より何かしらの物をマグマへ投げ込むと、物にこもった想いを精霊が受け取り、後々何か良いことがあると言い伝えられている。
それも、その物への想いが深ければ深いほど良い、とされている。火口へ投げ込むものは、農具でも装備品、装飾品でも何でも良い。
「シダ様は何を持ってきましたか? ぼくは使い古した辞典です」
シダがマダから視線を下げると、確かに彼の手には何度と読み込まれて、ページが開ききった赤い書物が握られていた。本人曰く、暗記し終わったのでもう良いそうだ。次世代の勉強熱心さに感心しつつ、しばし悩んだ末にシダはこう言った。
「そうだな……これにしよう」
おもむろに自らの仮面を外した。様々な儀式を共に見守ってきた仮面なら、この儀式に捧ぐには相応しいものだろう。そう言いきるシダ。
「案ずるな、予備はある」
「あ、そうですか……」
今まで使用してきた物への労いの意味もある。とても大事な儀式なのだが、ある問題があった。
この山、帝国よりはるか端に存在しているのだ。なのでか、人が全くといって良いほど寄り付かず、付近の他部族にすら伝わっていないのだ。
「だからこそのハンターですか?」
「ああ、ナダ族長は考えた」
様々な所を行き交いするハンター。イチヨ族の族長であるサ・ナダは、彼らの口コミ力に頼ることにしたのだ。
今頃オフィスには、この催事への招待依頼が貼り出されている頃だろう。
「来て、くれますかね?」
「……祈るばかりだ」
そんな部族の中に『イチヨ族』と言うものがいる。彼らは流浪の少数部族で、各地を転々とする者達。彼らのトーテムの名は『概念精霊・コリオリ』と言う。
彼らの信条は『他部族の信仰を信仰する』と言う変わったものだ。
それが例え、如何なる信仰であろうとも……
●
雲一つない青空。季節特有の冷たい風がイチヨ族の少年ヤ・マダのまだ未発達な手を悴ませる。
「さ……寒いよ」
白い息をあてながら、少しでも指先を温めようと一生懸命擦り合わせる。
マダは今、とある山の頂きに来ている。それは、これより始まる催事の監視役の為にだ。
「これで温めておけ。向こうで配っていた」
傍らにいた仮面の人物イ・シダが、粘土の焼き物に入ったアツアツの甘酒をマダに手渡す。
「シダ様、恐れ入ります……うっ」
ズッ、と音をさせてマダが甘酒を啜れば、あまりの熱さに口元を押さえた。
涙目になりながらも、マダは歩いてから火口を覗き込んだ。火口より遥か下には、太陽と変わらずの輝きを持ち、うねるマグマの姿があった……
「……すごい」
「眼、気を付けろ」
この山にはカエルの形をした火の精霊がいると言われている。山頂より何かしらの物をマグマへ投げ込むと、物にこもった想いを精霊が受け取り、後々何か良いことがあると言い伝えられている。
それも、その物への想いが深ければ深いほど良い、とされている。火口へ投げ込むものは、農具でも装備品、装飾品でも何でも良い。
「シダ様は何を持ってきましたか? ぼくは使い古した辞典です」
シダがマダから視線を下げると、確かに彼の手には何度と読み込まれて、ページが開ききった赤い書物が握られていた。本人曰く、暗記し終わったのでもう良いそうだ。次世代の勉強熱心さに感心しつつ、しばし悩んだ末にシダはこう言った。
「そうだな……これにしよう」
おもむろに自らの仮面を外した。様々な儀式を共に見守ってきた仮面なら、この儀式に捧ぐには相応しいものだろう。そう言いきるシダ。
「案ずるな、予備はある」
「あ、そうですか……」
今まで使用してきた物への労いの意味もある。とても大事な儀式なのだが、ある問題があった。
この山、帝国よりはるか端に存在しているのだ。なのでか、人が全くといって良いほど寄り付かず、付近の他部族にすら伝わっていないのだ。
「だからこそのハンターですか?」
「ああ、ナダ族長は考えた」
様々な所を行き交いするハンター。イチヨ族の族長であるサ・ナダは、彼らの口コミ力に頼ることにしたのだ。
今頃オフィスには、この催事への招待依頼が貼り出されている頃だろう。
「来て、くれますかね?」
「……祈るばかりだ」
リプレイ本文
「煮えたぎる熱を感じるね。スゴイ!」
道元ガンジ(ka6005)の一声がそれであった。火口付近に設置された鉄の手摺から身を乗り出し、マグマをずいっと覗きこむ。
「この火口に投げ込めばいいのですね!」
火口からの熱気を素顔で受けながらアシェ-ル(ka2983)は熱さに顔をしかめる。
「落ちたらひとたまりもないね」
同じく手すりに軽く手をかけて、鳳凰院ひりょ(ka3744)が火口を一瞥する。
「これだけ大きな火口なのに……」
そう言ってから巌技藝(ka5675)は深い紫のポニーテールを揺らしながら、視線を外に下ろした。自分達を覗いて、山を登る数は十人も越えないとなんとも物悲しい。
「あの……」
投げる予定の道具を弄りながら十野間忍(ka6018)は、チラリと傍らを見る。
そこには仮面の内側から視線をぶつけるシダの姿が……
「何でこっちを見るのでしょうか?」
それも動きを見張るようにすぐ隣でだ。
「投げるものが、良き思い出であった、と言うものばかりではないから、な」
と鉄面皮の向く先には龍崎・カズマ(ka0178)の姿。シダと変わりない平淡な声でこう返す。
「どうして俺の方を見るんだ」
「こういう事が長いと、理解してしまう」
つまりカズマの持ち物が、少なからず『そういう物』なのだ、とシダは察したのだ。肩を竦め一呼吸、カズマは視線を外して呟く。
「そう言うことにはならない、安心しろ」
●鳳凰院の場合
ひりょは改めて得物を掴んだ。それは木刀。見た目はどこにでもありそうな、どこにでも売ってそうな変哲もない武具だ。
しかし、ひりょにとっては違う。それこそ、この世界より前。まだ鳳凰院と言う家名に重きがあった頃。鍛練を積むために使用していた得物。
次期当主候補、そのレールに乗せられていた自らが人生。疑問をもっていた人生。
しかし、そんなもの紅の世界には通用しないのだ。
再スタートの機会。その区切りとする為に、この木刀を捨てる。
(鍛練は勿論続けていくけどね)
片手で木刀を持ち掲げる……
「俺は今年も沢山の笑顔を守れる存在でありたい」
そこに自らの笑顔も含むのは当然と心で思いつつ、上段に構えたまま手放した木刀は、そのまま緋へと飲み込まれた。
(俺は俺の選んだ道を進んでいけばいい、そうだよな?)
●十野間の場合
刃の切っ先をつまみ上げ、忍は丁寧にバタフライナイフを開いた。ペーパーナイフ代わりにしていたが、刃はガタガタ、見事に草臥れていた。名残惜しさを感じつつも、ナイフの刃をこれまた丁寧に折り畳む。
片手でナイフを投げて放ると、数度両手を叩いてから合わせて祈る。
術者として、見聞を広げる。今回は色々な話を聞こう、そう忍は思いつつ火口から背を向けたのであった。
●巌の場合
「折角だから、一指し舞を奉納するかね」
そう技藝が言い終わるや否や、素早く足踏みを鳴らした。
「あ、あぶないよ!?」
マダの制止も聞かず、彼女は柵の上に爪先で飛び乗った。目前の熱気に応えるように、一回転二回転、そして回し蹴り。ハラハラするマダとは対照的に、シダはいたって平生のままの無表情。
「ふぅ、いい汗かいた」
新調した地下足袋で舞い、汗で肌に張り付いた髪を手でさらった。
「気は済んだか」
早く完遂しろ、と暗に催促するシダ。臆する事もなく笑顔で技藝は応える。細い指を引っ掛け手にしていたのは、地下足袋だった。
一年間お世話になった地下足袋。新しい年を迎えて歳神様を祀って舞う為に、新しい足袋を下したところ。お焚き上げをするには、ちょうど良い機会だったのだ。
「昨年使った足袋に感謝の気持ちを籠めて……」
両足揃えるように足袋に引っ掛けていた指をそっと離した。つとめを終えた地下足袋は、今赤い大地に眠るのだ。
「お疲れさま」
●アシェールの場合
アシェールは両手を添えて、それと見つめあっていた。それは仮面。引き籠もりがちだった自分が、照れや恥ずかしさ、様々な感情を人から隠すためだったもの。
仮面があると安心する。今でも仮面を持っている物の筈なのに、くっついているかの様に手に馴染む。
けど、色々な人にあって変わった自分が今いるのだ。何かに頼らず、自分を信じて前に進みたい。
(だから、これは、私にとって、大事な決別)
「てやー!」
両手を大きく掲げて投げた仮面は……すっぽ抜けた。
大暴投。目指すはアシェールの遥か後ろ。儀式の待機列へ一直線。
カツーン…
仮面は、バウンドしその場に落ちた。
「あらあら」
「うわぁ、びっくりした」
ひりょと技藝が、後方で仮面を避ける姿をアシェール他二人で確認した。
「待っててやる。取ってこい」
「うう、失敗しました~」
新年早々ドタドタ当てつつも、アシェールは火口へと仮面を握りしめて帰ってきた。
「私の黒歴史、飛んでけー!」
●道元
ガンジは火口近くへ行けば、懐からベレー帽を取り出した。帽子を被っては両腕を腰にあてたり、ピースして見せたり格好つけてみたが、やはりイマイチ決まらない。
籖で引いたアイテムであったが、どうもしっくり来ない。次に籖の景品になるのなら、今度は似合う人に当たると良いな。
そう思いながらベレー帽を、フリスビーの様に手首にスナップをきかせ投げ飛ばした。
「さよなら!」
回転をしたままベレー帽は降りていき、マグマはそれを受け取った。
「さ、甘酒♪甘酒♪」
そしてガンジは嬉々としながら素早く踵を返し、火口を後にするのであった……
●お焚き上げの後には……
山の麓、部族総出で儀式に訪れた人々に、汁粉や甘酒を振る舞っていた。大鍋からは、漉し餡の柔らかな甘みが湯気に混ざってただよっている。
「プハァ~」
充分に冷ました甘酒をガンジは、ちびちびとすする。砂糖とは違う甘味に、白い息を吐いてほっこりとしていた。
「冷たいの方がよかったですかぁ?」
汗をかいている技藝に、部族の人間が温かい甘酒を渡しながら伺う。
「いいよ。山を下りている内に身体が冷えちまう」
「なんだか、凄くスッキリした気分です!」
厚手の陶器からは、汁粉の温かさがアシェールの手のひらからじんわりと伝わってくる。長いこと伸ばしていた髪をバッサリと切って、頭が軽くなった、そんな気分に近い。
「なら少しでも、ここの事を伝えろ。恩返しにもなるだろう」
そっけない返事をしたのはシダ。そのシダにアシェールは、視線を集める。
「何だ」
「どうして仮面をつけてるのぉ?」
自らと同じように仮面を着けているシダを不思議に思ったのだ。
「……黒歴史」
「え?」
「黒歴史に晒されないためだ」
先程アシェール自らが言った台詞を聞いていたのだろうか。仮面が黒歴史であった自分に対し、シダは黒歴史を仮面で防いでいると言う。何とも不思議な答えに、汁粉の餅を口で加えて伸ばしながら、首を傾げるアシェールだった。
「どうぞ」
ひりょ、と忍は盆に乗せられた甘酒をマダより手渡される。気合いを心にも体にも入れる意味で、甘酒の入った陶器をひりょは傾ける。
その横を通り抜けるのはカズマだった。半分程に減った杯を持ちながらひりょは声をかける。
「カズマは一杯やんないの?」
「俺はこれからだ」
カズマは一度振り向けば、人混みを避けながら山道を登るのであった。
「ところで、マダさんはどんな抱負を?」
「ぼ…ぼく?」
忍の唐突な質問に、自らを指で示して驚くも、持っていた丸盆を小脇に抱えながら小さく一言。
「月並みだけど、もっと勉学に励めるように、って」
勉学と言う言葉に学校と言う単語が思い浮かんで、興味のままに忍は質問を続けた。
「学校ですか?」
「ううん、ぼくの部族にそう言う施設はないよ」
マダは首を振りつつ、こう付け加える。実はイチヨ族は自分以外は皆覚醒者であり、マダだけが一般人なのだと言う。
「だから、その分を補う為に勉強するんだ」
「凄いですね」
改めて確認せずともマダは成人すらしていない年頃。そんな年端もいかない彼が、知識を求めるのだ。
(私も負けてはいられません!)
●龍崎の場合
カズマは火口へと蛇行し続く道をひたすらに歩いていた。もう儀式参加者もいないのだろう。僅かにあった人の声は今はなく、時折山風が彼の耳を撫でさするばかりだ。
火口へと辿り着けば、山頂には当たり前のようにシダが待っていた。
「…………」
何か言うでもなく、火口へ向かうカズマの傍らにつく。しかし、やはり言葉はない。
(好きにやれ、と言うことか)
ならば遠慮なく、と首にかけたひしゃげたドッグタグのチェーンから、装飾品を取り外した。
(どうか明日に振り向いて、か。…夢(過去)にまで心配されるとはな)
装飾品のざらついた表面を親指の腹で撫でる。
夢を見た。
内容こそ断片的だが、「過去」の事だったのは判る。感覚が教えてくれる。
覚えている、君が口ずさんでいた歌を。覚えている、君の作る料理の匂いを。
覚えている、君から流れた熱さを。覚えている、冷たくなる君を。
覚えている、覚えているとも。何でもない日々の得難さを。理不尽に奪われる悲しみを。己自身の無力さを。
そして、君の言葉を。
「っ」
ただ一度感情のままに指輪を握り締めた。
いつの間にか下げていた顔を閉じた拳に向けると、火口へ腕突き出し、拳を開く。
(俺(私)は大丈夫だから、君は安らかに眠って欲しい)
開いた拳から、結婚指輪がこぼれ落ちた……
「……」
カズマは指輪の行方を見ることもなく、火口を背にしながら行きと変わらぬ歩調で帰り道を進む。
―――――。
カズマの足音が止まる。山風とは明らかに違うオトが聞こえた、そんな気がした。が、それは一瞬のこと。カズマの足は何も変わらず前へ進み出していた。
(指輪が無くても、思い出が消える訳ではない……だろ?)
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
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面白かった! | 4人 |
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MVP一覧
- 虹の橋へ
龍崎・カズマ(ka0178)
重体一覧
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/01/06 18:23:14 |