ゲスト
(ka0000)
【初夢】ハゲまさないでっ
マスター:奈華里

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/01/06 12:00
- 完成日
- 2016/01/14 00:13
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
ここは誰からも忘れられた小さな社――。
その社に住まうは老齢の神様。もうご高齢という事もあってかちょっとばかし耳が遠い。
だからなのか最近はぼんやり空を眺めたり、日がな一日ごろごろして過ごす事が多く、全くもって隠居暮らしを続けている。
「もうすぐ年の暮れかのぅ」
温度を感じる事はなかったが、四季の移ろいが彼にそれを知らせる。
「正月なら御神酒の一つも欲しいのぅ」
もう随分人間に会っていない。それもその筈、彼の社はかれこれ数百年も掃除されずに荒れ放題。鬱蒼とした山の天辺にあるのだから、人間が歩いてくるのは些か難しいだろう。
「お酒、欲しいのぅ…」
けれど、神様は諦めが悪かった。考えねば良かった事だが、一度頭に浮かべてしまうとその味を脳が勝手に呼び起こし、欲求へと繋げていく。
「ついでに尾頭付きの鯛とか、御節も食べたいのぅ」
彼の知る人間のお正月――それはとても楽しいものだ。
昔ならば彼の元にも参拝客が訪れ、何かしらのお供えを置いて行ったものである。
「欲しいのぅ…」
夕暮れの太陽を見つめながら神様が思う。
本来は人の願いを叶えるべき神が――己の為に願う。
それは本来あってはならない事だった。しかし、彼は願ってしまった。
そしてそれは神の不満となり、人間に影響を及ぼすまでとなる。
「え…うそでしょ」
訳が判らない。ストレスなど溜めていない。ネズミの類いは飼っていない。昨日は普通に過ごしていた。何事もなく過ごしていた。うちに鋏はない。悪戯にしても度が過ぎている。というか、こんな悪戯する人物に心当たりはない。
「…何で、どうして…」
鏡に映る自分の姿に彼女が驚愕する。
始めは小さな硬貨位だった。しかし気付けば徐々にその範囲は広がって、朝に比べてその面積は二倍近くに広がっている。
(ヤバい…物凄い早さではげている…)
信じたくないがこれは事実だ。目を逸らす事は出来ない。
けれど原因が判らず、かと言って病院に行くのは恥ずかしい。
(どうしよう…)
このまま進行したら大変だ。次々と抜け落ちてゆく髪に危機感を覚える。
一方、髪のない人には奇跡が起こっていた。
「マジか。俺の毛根復活宣言ッ!!…けどこれは」
徐々に伸びてくる髪に歓喜していたのは少し前の事。
けれど、喜んでばかりはいられない。何故なら、こっちは伸び続けているからだ。
(やべぇ…切っても切って伸びてくるし…正直切る速度が追い付かねえ)
懐かしんだふっさふさの髪。しかし、長過ぎればそれは邪魔なだけだ。
適度な量――それが一番大事なのである。
((一体どうなってるんだーー!?))
抜け始めた人も、伸び始めた人も心中穏やかではいられない。
皆が皆そうだったらいいのだが、窓から覗けば普段通りに暮らす人波が目に入り、それが自分だけなのだと思い知らされる。そしてそんな世にも奇妙な出来事に見舞われた彼等は思わず助けを乞う。
((助けて、神様――!……そうだ、髪の神様にお願いしよう))
自分でどうにもできない時は神頼みに限る。
但し、今回に至ってはその神様が原因であるのだが、そんな事は知る由もない。
((よし、そうと決まれば急がないとっ))
決意した者が髪神の社を目指す。そうあの朽ちた社へと――。
その道のりには多くの困難が待ち受けている事を彼等はまだ知らない。
その社に住まうは老齢の神様。もうご高齢という事もあってかちょっとばかし耳が遠い。
だからなのか最近はぼんやり空を眺めたり、日がな一日ごろごろして過ごす事が多く、全くもって隠居暮らしを続けている。
「もうすぐ年の暮れかのぅ」
温度を感じる事はなかったが、四季の移ろいが彼にそれを知らせる。
「正月なら御神酒の一つも欲しいのぅ」
もう随分人間に会っていない。それもその筈、彼の社はかれこれ数百年も掃除されずに荒れ放題。鬱蒼とした山の天辺にあるのだから、人間が歩いてくるのは些か難しいだろう。
「お酒、欲しいのぅ…」
けれど、神様は諦めが悪かった。考えねば良かった事だが、一度頭に浮かべてしまうとその味を脳が勝手に呼び起こし、欲求へと繋げていく。
「ついでに尾頭付きの鯛とか、御節も食べたいのぅ」
彼の知る人間のお正月――それはとても楽しいものだ。
昔ならば彼の元にも参拝客が訪れ、何かしらのお供えを置いて行ったものである。
「欲しいのぅ…」
夕暮れの太陽を見つめながら神様が思う。
本来は人の願いを叶えるべき神が――己の為に願う。
それは本来あってはならない事だった。しかし、彼は願ってしまった。
そしてそれは神の不満となり、人間に影響を及ぼすまでとなる。
「え…うそでしょ」
訳が判らない。ストレスなど溜めていない。ネズミの類いは飼っていない。昨日は普通に過ごしていた。何事もなく過ごしていた。うちに鋏はない。悪戯にしても度が過ぎている。というか、こんな悪戯する人物に心当たりはない。
「…何で、どうして…」
鏡に映る自分の姿に彼女が驚愕する。
始めは小さな硬貨位だった。しかし気付けば徐々にその範囲は広がって、朝に比べてその面積は二倍近くに広がっている。
(ヤバい…物凄い早さではげている…)
信じたくないがこれは事実だ。目を逸らす事は出来ない。
けれど原因が判らず、かと言って病院に行くのは恥ずかしい。
(どうしよう…)
このまま進行したら大変だ。次々と抜け落ちてゆく髪に危機感を覚える。
一方、髪のない人には奇跡が起こっていた。
「マジか。俺の毛根復活宣言ッ!!…けどこれは」
徐々に伸びてくる髪に歓喜していたのは少し前の事。
けれど、喜んでばかりはいられない。何故なら、こっちは伸び続けているからだ。
(やべぇ…切っても切って伸びてくるし…正直切る速度が追い付かねえ)
懐かしんだふっさふさの髪。しかし、長過ぎればそれは邪魔なだけだ。
適度な量――それが一番大事なのである。
((一体どうなってるんだーー!?))
抜け始めた人も、伸び始めた人も心中穏やかではいられない。
皆が皆そうだったらいいのだが、窓から覗けば普段通りに暮らす人波が目に入り、それが自分だけなのだと思い知らされる。そしてそんな世にも奇妙な出来事に見舞われた彼等は思わず助けを乞う。
((助けて、神様――!……そうだ、髪の神様にお願いしよう))
自分でどうにもできない時は神頼みに限る。
但し、今回に至ってはその神様が原因であるのだが、そんな事は知る由もない。
((よし、そうと決まれば急がないとっ))
決意した者が髪神の社を目指す。そうあの朽ちた社へと――。
その道のりには多くの困難が待ち受けている事を彼等はまだ知らない。
リプレイ本文
●有
髪神様の不満の犠牲者――不運な四人は自分の異変と向き合い困惑する。
「おぉ髪よ、なぜ我を見捨てたもうた…」
鏡に映るのはものの見事に頭頂部が抜け落ちた哀れな姿。これでは川妖怪ではないか。
だがものは考えよう。頭頂部がつるっつるのその髪型は某宣教師がしていた髪型に瓜二つ。
つまりはそれに近い扮装をしていれば、周りから変な目で見られる事はないかもしれない。
「幸い、俺の服はそれっぽい雰囲気を持っているし…後は帽子か」
彼、ロニ・カルディス(ka0551)はもう一度寂しくなった頭頂部に触れ、今の状態を確かめる。
その拍子にまたぱさりと髪が床に落ちて――血の気がさっと引いていく。
(宣教師の服装で社を尋ねるというのは変な話だが…背に腹は代えられん)
兎に角急がなければ。
参拝であるから何か貢物がいるであろうが、買い物をするにもこの姿は目立って仕方がない。
「ええっい、これで済ますか」
手近にあった酒瓶を手に取る。良いものも中には含まれているが、この際仕方がない。
「いざ、髪神神社へ」
彼が勢いよく外へと踏み出す。
すると、そんな彼の前を一陣の風が走り抜けて、そこには尋常じゃない様子のサロペットの少女。
彼女の名は超級まりお(ka0824)――現在誰よりもピンチな少女だった。
話は少し前に遡る。
いつもと同じ目覚めの朝が来る筈だった。しかし、ふかふかのベットから体を起こしてみれば、わさりと何が落ちて…目を擦り、視線を落とすとそこには茶色い毛の束が。
「うおおぉ!?」
その毛の束には見覚えがあった。当たり前だ。自分の毛を見間違う筈がない。
すーすーする頭に恐る恐る手を伸ばして、彼女は悟った。ほぼ自分に髪が残っていない事に。
「こ、これは一体……」
もし全ての髪が抜けたらどうなるのだろう。
(髪は女の命というし、という事は全て抜け落ちたら…ヤバい、死んでしまう?)
一抹の不安…その姿を想像すれば、ぶるると寒気が走りくしゃみ一発。
ぽろりと一本毛が落ちる。彼女に残されているのは後三本。いつもであれば帽子で見えない自慢のアホ毛だ。
「早く髪神様の所に向かわなきゃ!!」
彼女は何も持たずに帽子を被って外に出る。そして自分に出来る最大の速さで駆け出す。
彼女はこの時まだ気付いていなかった。髪とは別に、違う場所も変化している事に…。
さて、一方では逆の症状が出ているの者も存在する。
「な、何が起こっている!?」
緩やかなスピードではあるが、毛根全てが活性化し伸び続ける髪。
しかもどういう訳か髪のみならず、体毛ものびている気がして気が気ではない。
(落ち着け、俺…きっと何かいい解決策がある筈だ。こんな事、ありえないんだから)
いつもは冷静沈着なザレム・アズール(ka0878)であるが、このままではドワーフよりもどっかの宇宙生物よりもけむくじゃらになってしまう。とりあえず鋏を取り出して手当たり次第にカットしてみるも、あまり長さに変化が見られない。
(まさか、伸びる速度が俺の切る速度を上回っているのか…)
信じたくないがそれも現実。応急処置として彼は髪を二つに分けて括り、途方に暮れる。
そんな時、彼の耳に届いたのは嬉しい情報。
「へぇ~、だったらあの山の上の髪神様でも頼ってみたら? 枝毛が治るかもよ」
山の上の髪神――その言葉に反応して、彼は家を飛び出し通行人の間に割って入る。
「すまない。その話を詳しく…」
「キャ――、化け物―――っ!!」
のびる髪に包まれた何か。そう認識された彼につけられたレッテルは非情なものだ。
「ち、違う…俺はにんげ」
「んあ? 雑魔か?」
そんな所に通りかかったのはつるつるてんの阿部 透馬(ka5823)だった。彼も被害者の一人であるが、他の二人とは考え方が違う。
『ハゲたんなら剃っちまえばいいじゃんか!』
そう考え、起きて早々残りの髪を刈り上げて、清々しい表情を見せている。
「お嬢さん方、俺はハンターだから後は任せていいぜ」
もさもさザレムを敵と見なして彼が言う。
「あ、あの…お願いしますぅ」
二人はそう言ってそそくさとその場を立ち去ってゆく。
「さぁ、もう逃げられないぜぇ?」
余裕綽々の透馬に対してザレムは焦っていた。
「いや、俺、違うって…元は人間で、お前と同じハンターで…」
矢継ぎ早にそう言うが、それを理解しては貰えない。
「はぁ、馬鹿言うなよ? 人型って事は知能もあるようだし、騙そうったってそうはいかねぇぜ?」
ぽきりと指を折って、透馬が臨戦態勢を取る。
(ヤバい、こいつ本気だ…しかし、こっちは剣を握るにしてもこれでは…)
髪が邪魔で手に取れたとしても動きが制限されてしまう。万事休す…そんな言葉が脳裏を過る。
だが、そこへ彼にとっては救世主現る。
「どけどけどけーーーーい!」
赤の帽子に青のサロペット。まりおだ。超高速で走って来て、終いには――。
どっかーーーんっ
気付けばザレムは宙を飛んでいた。まりおに突き飛ばされたらしい。いつの間にやら伸びた髪が彼に纏わりつき、ボールのように見えたのかもしれない。
「おうおう、よく飛んだなぁ」
透馬がそれを見つめ言葉する。
(俺は一体どうなるんだろう…)
上空でザレムの頬にきらりと光る雫が見えた。
●為
偶然出会ったまりおと透馬は互いの事情を聞いて、同行を提案する。
そんな二人を見つけて、様子を窺うのはロニだ。
「成程…あの二人もどうやら俺と同じのようだな」
帽子をちゃっかり入手して、見た目は何処から見ても宣教師。この姿であれば知人に会ってもハゲがばれる事はないだろう。
だがしかし、逆にいえばハンターっぽく見えないのが難点だ。
「君達、もしよかったら俺も手伝おうか?」
ロニが自然を装い、二人に近付く。
「なんだぁ? なんかの勧誘だったらお断りだぜ?」
だが、透馬は彼の姿からそっちの人だと勘違いしたらしい。いぶかし気な視線を彼に向ける。
そして、遅れて振り返ったまりおの姿に彼は思わず目を見開く。華奢な後ろ姿に女性だとばかり思っていたが、口の周りに生えたもっさもさの髭。何日剃らなければそこまで伸ばせるのだろうというくらいの立派さに意表を突かれる。
「えっと、君は…」
そのギャップに笑いをこらえて、役に徹しつつ彼が言葉を探す。
「……今、笑いそうになったよね?」
「はあ?」
「ひどい。僕、女の子なのに…」
「あ、え~っと」
「透馬、僕先行くから」
そう言い残し彼女は去って行く。
「あぁもう俺も行くからな」
その様子に溜息を吐いて、彼も彼女を追う。彼女を傷つけてしまった。不意打ち的だったとはいえ謝らなければ。 そう思い、ロニは二人を追って、都は新年真っ只中。大通りは人混みに溢れている。
「うぅ、時間が無いのにこの人混み…」
無理もない。初詣帰り、新年早々始まるセールやら福袋を求めてやって来る人、人、人。
(しかし、ここを突破せねば、命が危ない)
かくなる上は――周囲に視線を走らせる。そこで目に留まったのは初日の出のポスターだった。
その絵に彼女は一つの策が閃く。しかし、それはまさに決死の覚悟を要する策……出来ればやりたくはない。
けれど、このままでは三本の毛の死が迫るばかり。
(何をする気だ?)
立ち止まり黙ってしまったまりおを見つけ、透馬とロニが思う。
そんな中次の瞬間、彼女は禁断の技に出た。意を決して手に取ったのは被っていた帽子、正面にある太陽が彼女の頭皮を照らす。そして、
「ハゲフラァァァッシュ!!」
彼女は今、女(の恥じらい)を捨てた。
それも全ては己が命と髪の毛の復活の為。剥き出しになった頭皮はものの見事に太陽光を反射し、通行人達の目を襲う。
「うわっ、なんだこの光はっ」
「ちょっと、訳判んないんですけど――」
口々に紡がれる通行人の声であるが、耳を貸している暇はない。今こそ好機とばかりにまりおはその人波をすり抜ける。
「なんと、大胆な…」
ロニがその姿に感銘を受ける。彼女は全てを捨て去り道を開いたのだ。それに比べて自分は何だ。
ハゲを隠し、あわよくば誰にも事がばれないようにと願いながら社を目指す浅ましさ…。
「おまえの犠牲は無駄にはしないっ! 俺も腹を括るぞ!」
走り向けていく彼女の髪が一本死滅するのを確認して、ロニが叫ぶ。そして、彼もまた帽子を取って…。
「俺とて男だ。道を開いて見せよう!」
ぴかりと輝くトンスラハゲ。そこから生み出された反射光が再び道行く人々の目を惑わせ、彼らの進撃を可能にする。
「あいつも同じだったのか…」
その姿に初めて同志だと気付く透馬だった。
●転
都脱出を終えた三人は社を目指し森を進む。森に入れば鬱蒼とし木々が壁となり、ハゲは目立たない。
但し、用心しないといけないのは野生生物や賊の類いだ。この時期、人通りも多くない為食料を求めてその手の輩の出没が警戒される。そんな一行を余所に図らずも先に到着していたのは誰を隠そうザレムだった。
「あぁ、これが試練……神は俺に何を求めているというのか…」
上空を飛んできて墜落した先には大きな木。その木に落ちたのが運の尽き。
伸びる髪は留まる所を知らず、変に動けば動くほど木に絡まり取れなくなってゆく。そうこうする事小一時間。彼は木と髪と戯れ続けている。
「あー…俺、このままどうなるのかなぁ」
既に視界はほとんど塞がれた状態。唯一利くのは耳だ。
髪を縛っておいたおかげでそこだけはうまく隠れずに済んでいる。
「まだ距離があるのか。これは一苦労だな」
そんな彼に聞き覚えのある声――足音と共に近付くその主を彼は知っている。
(この声…確か、依頼で一緒になった事のあるロニじゃないか?)
このままいても仕方がない。一か八かだと思い、ザレムは声を張り上げる。
「ロニー! 近くにいるなら助けてくれー!」
「ん?」
その声にロニが反応し、周囲を確認。するとどうだろう木にはまとわりつく黒い毛玉。奇妙にもこもこ動いて実に気持ちが悪い。
「あれ、知り合いなのか?」
まりおが問う。
「いや…声は似ているが、俺に珍獣の知り合いはいない」
その言葉にザレム血涙。しかしながら顔が見えない為、それも仕方のない事だろう。だが、問題はその後だ。
「俺は知ってるぜ…朝、アレに出くわしていたからな」
バトルグローブを嵌めた手をぽきぽきさせながら透馬が前に出る。
「え、ちょっ、これ、まずくない…」
その音に更にもごもご動くザレム。
嫌な汗が体中から吹き出しシャツを破って作った白旗を振ってみるが、髪に邪魔されて彼らの目はに届かない。
「覚悟しな、雪男さんよぉ」
「ヒギャーーー!!」
ザレムは必死に抵抗した。唯一持っていた鋏を手当たり次第に振り回し、周囲の髪を斬り裂く。
すると切れ落ちる髪は三人の元へと降り注ぎ、接近を辛うじて抑える。
「くそっ、何て奴だ」
ばさばさ降り注ぐ髪に苛立つ三人。すると幹がぽきりと折れてザレム落下。
その後バウンドするところころと転がっていくではないか。
「あ、待ちやがれっ」
社に向かいたい気持ちを抑えて、彼らは毛玉を追う。
「あぁん、なんだこりゃあ」
そして行きついた先は山賊のアジトだ。もうこれは災難としか言いようがない。
「お、俺は悪くないんだからな」
クッションになった髪とお別れして、長髪と呼べる程度に切り揃えたザレムが賊の真ん中に立ち言う。
「全く、次から次へと今年は厄年だな」
そんな場所に出くわして、追いかけてきた三人はげんなり中。急ぐ身故見逃してもいいのだが、次に紡がれた言葉が三人を刺激する。
「あぁん、禿ズラパーティーかよ…こりゃあ、持ちもんもしけてそうだなぁ」
プチッ
その時三人の堪忍袋の緒が切れた。
「今、おまえはなんてった…禿ズラだと……好きでこうなったんじゃねーわっ!」
いつもは凛々しい佇まいでドワーフと言えど聖導士らしい面持ちのロニであるが、気にしいてる所を突かれては言葉遣いも下品にならざる負えない。
「今の言葉、万死に値する」
まりおもメラメラと瞳に炎を燃やしてじりりと賊ににじり寄る。
「まぁ、あれだ。容姿を馬鹿にする奴は痛い目見るぜって事で…喰らえ、脱帽アタック!」
透馬のそれが引き金となった。念の為、都を出る時に買ったかつら。
それを敵に投げつけて、意表をつき攻撃へと転じる。
「命までは奪わんが、奪われる側の気持ちを味合わせてやろう…」
ロニが言う。彼、かなりストレスを抱えていたらしく、賊の髪を奪った剣で刈り尽していく。
そして、まりおは『火事場のハゲ力』と称し、いわゆる頭突きで賊を打ち負かし、それと引き換えにまた一本髪を失う結果となる。
「な、何なんだこれ…まさか、俺と正反対なのか?」
髪の抜けた知人らを見て立ち尽くすザレムが呟く。
まりお、透馬、そしてロニ。皆、依頼で顔を合わせた事がある。
しかし性格は――髪が無くなっているせいか、些か彼の知っているものとは少し違って見えた。
●変
賊の成敗を終えて、ザレムも仲間に。
髪が伸び過ぎるのだと言ったら、少し羨ましがられたが彼は彼で苦労しているのだからお互い様だ。
「後少し、この崖を登れば社に近いらしい」
立て看板を確認して彼が言う。が森を抜け、山に入ると徐々に気温は下がり吹雪いてくる始末である。
「あぁ、もう駄目だ…」
そう言い、まりおがその場に崩れた。何事かと思えば最後の一本が彼女に別れを告げている。
「ま、まさか本当に全部抜けたら死ぬのか」
トンスラと呼べる程もう残っていない髪――両サイドに残るロニのその髪ももう数える程しかない。
「いや、死なないと思うぞ。俺はほらこの通り」
坊主にしている頭を皆にさらして透馬が励ます。
しかし、彼女は確実に弱っていた。髭に生命力を取られているのかもしれない。
「仕方ない。俺が連れて上がるよ」
ザレムがそう言い、己が髪をロープ代わりに彼女を結わえ付ける。
「意外とその髪便利なんじゃないか?」
透馬のその言葉に、しかしザレムは苦笑いする他なかった。
「おや、人間がきたのう」
鳥居の上にいた神様が四人の姿を見取って、目を輝かせる。
「ここが髪神様の社か…」
その姿に気付かずロニは珍し気に鳥居を眺める。
「参拝客か?」
そこへ神様自らやってきた。数百年振りの人間とあって本当に嬉しそうだ。だが、そこで異変は起こる。
「おや?」
髪神様の身体が徐々に薄れていくではないか。
「えっ、ちょっ」
「料理はお供えは」
このまま消えてしまっては困るとロニとザレムが慌てる。しかし、神様は薄くなる一方で。
人の来訪に喜ぶと共に、また必要にされたいという心が彼を転生へと導いたらしい。
「来てくれて嬉しかったぞ~」
満面の笑顔で髪神は天に昇ってゆく。
((うそだろ…))
彼らの元にカミが戻るまで――まだ時間がかかりそうであった。
髪神様の不満の犠牲者――不運な四人は自分の異変と向き合い困惑する。
「おぉ髪よ、なぜ我を見捨てたもうた…」
鏡に映るのはものの見事に頭頂部が抜け落ちた哀れな姿。これでは川妖怪ではないか。
だがものは考えよう。頭頂部がつるっつるのその髪型は某宣教師がしていた髪型に瓜二つ。
つまりはそれに近い扮装をしていれば、周りから変な目で見られる事はないかもしれない。
「幸い、俺の服はそれっぽい雰囲気を持っているし…後は帽子か」
彼、ロニ・カルディス(ka0551)はもう一度寂しくなった頭頂部に触れ、今の状態を確かめる。
その拍子にまたぱさりと髪が床に落ちて――血の気がさっと引いていく。
(宣教師の服装で社を尋ねるというのは変な話だが…背に腹は代えられん)
兎に角急がなければ。
参拝であるから何か貢物がいるであろうが、買い物をするにもこの姿は目立って仕方がない。
「ええっい、これで済ますか」
手近にあった酒瓶を手に取る。良いものも中には含まれているが、この際仕方がない。
「いざ、髪神神社へ」
彼が勢いよく外へと踏み出す。
すると、そんな彼の前を一陣の風が走り抜けて、そこには尋常じゃない様子のサロペットの少女。
彼女の名は超級まりお(ka0824)――現在誰よりもピンチな少女だった。
話は少し前に遡る。
いつもと同じ目覚めの朝が来る筈だった。しかし、ふかふかのベットから体を起こしてみれば、わさりと何が落ちて…目を擦り、視線を落とすとそこには茶色い毛の束が。
「うおおぉ!?」
その毛の束には見覚えがあった。当たり前だ。自分の毛を見間違う筈がない。
すーすーする頭に恐る恐る手を伸ばして、彼女は悟った。ほぼ自分に髪が残っていない事に。
「こ、これは一体……」
もし全ての髪が抜けたらどうなるのだろう。
(髪は女の命というし、という事は全て抜け落ちたら…ヤバい、死んでしまう?)
一抹の不安…その姿を想像すれば、ぶるると寒気が走りくしゃみ一発。
ぽろりと一本毛が落ちる。彼女に残されているのは後三本。いつもであれば帽子で見えない自慢のアホ毛だ。
「早く髪神様の所に向かわなきゃ!!」
彼女は何も持たずに帽子を被って外に出る。そして自分に出来る最大の速さで駆け出す。
彼女はこの時まだ気付いていなかった。髪とは別に、違う場所も変化している事に…。
さて、一方では逆の症状が出ているの者も存在する。
「な、何が起こっている!?」
緩やかなスピードではあるが、毛根全てが活性化し伸び続ける髪。
しかもどういう訳か髪のみならず、体毛ものびている気がして気が気ではない。
(落ち着け、俺…きっと何かいい解決策がある筈だ。こんな事、ありえないんだから)
いつもは冷静沈着なザレム・アズール(ka0878)であるが、このままではドワーフよりもどっかの宇宙生物よりもけむくじゃらになってしまう。とりあえず鋏を取り出して手当たり次第にカットしてみるも、あまり長さに変化が見られない。
(まさか、伸びる速度が俺の切る速度を上回っているのか…)
信じたくないがそれも現実。応急処置として彼は髪を二つに分けて括り、途方に暮れる。
そんな時、彼の耳に届いたのは嬉しい情報。
「へぇ~、だったらあの山の上の髪神様でも頼ってみたら? 枝毛が治るかもよ」
山の上の髪神――その言葉に反応して、彼は家を飛び出し通行人の間に割って入る。
「すまない。その話を詳しく…」
「キャ――、化け物―――っ!!」
のびる髪に包まれた何か。そう認識された彼につけられたレッテルは非情なものだ。
「ち、違う…俺はにんげ」
「んあ? 雑魔か?」
そんな所に通りかかったのはつるつるてんの阿部 透馬(ka5823)だった。彼も被害者の一人であるが、他の二人とは考え方が違う。
『ハゲたんなら剃っちまえばいいじゃんか!』
そう考え、起きて早々残りの髪を刈り上げて、清々しい表情を見せている。
「お嬢さん方、俺はハンターだから後は任せていいぜ」
もさもさザレムを敵と見なして彼が言う。
「あ、あの…お願いしますぅ」
二人はそう言ってそそくさとその場を立ち去ってゆく。
「さぁ、もう逃げられないぜぇ?」
余裕綽々の透馬に対してザレムは焦っていた。
「いや、俺、違うって…元は人間で、お前と同じハンターで…」
矢継ぎ早にそう言うが、それを理解しては貰えない。
「はぁ、馬鹿言うなよ? 人型って事は知能もあるようだし、騙そうったってそうはいかねぇぜ?」
ぽきりと指を折って、透馬が臨戦態勢を取る。
(ヤバい、こいつ本気だ…しかし、こっちは剣を握るにしてもこれでは…)
髪が邪魔で手に取れたとしても動きが制限されてしまう。万事休す…そんな言葉が脳裏を過る。
だが、そこへ彼にとっては救世主現る。
「どけどけどけーーーーい!」
赤の帽子に青のサロペット。まりおだ。超高速で走って来て、終いには――。
どっかーーーんっ
気付けばザレムは宙を飛んでいた。まりおに突き飛ばされたらしい。いつの間にやら伸びた髪が彼に纏わりつき、ボールのように見えたのかもしれない。
「おうおう、よく飛んだなぁ」
透馬がそれを見つめ言葉する。
(俺は一体どうなるんだろう…)
上空でザレムの頬にきらりと光る雫が見えた。
●為
偶然出会ったまりおと透馬は互いの事情を聞いて、同行を提案する。
そんな二人を見つけて、様子を窺うのはロニだ。
「成程…あの二人もどうやら俺と同じのようだな」
帽子をちゃっかり入手して、見た目は何処から見ても宣教師。この姿であれば知人に会ってもハゲがばれる事はないだろう。
だがしかし、逆にいえばハンターっぽく見えないのが難点だ。
「君達、もしよかったら俺も手伝おうか?」
ロニが自然を装い、二人に近付く。
「なんだぁ? なんかの勧誘だったらお断りだぜ?」
だが、透馬は彼の姿からそっちの人だと勘違いしたらしい。いぶかし気な視線を彼に向ける。
そして、遅れて振り返ったまりおの姿に彼は思わず目を見開く。華奢な後ろ姿に女性だとばかり思っていたが、口の周りに生えたもっさもさの髭。何日剃らなければそこまで伸ばせるのだろうというくらいの立派さに意表を突かれる。
「えっと、君は…」
そのギャップに笑いをこらえて、役に徹しつつ彼が言葉を探す。
「……今、笑いそうになったよね?」
「はあ?」
「ひどい。僕、女の子なのに…」
「あ、え~っと」
「透馬、僕先行くから」
そう言い残し彼女は去って行く。
「あぁもう俺も行くからな」
その様子に溜息を吐いて、彼も彼女を追う。彼女を傷つけてしまった。不意打ち的だったとはいえ謝らなければ。 そう思い、ロニは二人を追って、都は新年真っ只中。大通りは人混みに溢れている。
「うぅ、時間が無いのにこの人混み…」
無理もない。初詣帰り、新年早々始まるセールやら福袋を求めてやって来る人、人、人。
(しかし、ここを突破せねば、命が危ない)
かくなる上は――周囲に視線を走らせる。そこで目に留まったのは初日の出のポスターだった。
その絵に彼女は一つの策が閃く。しかし、それはまさに決死の覚悟を要する策……出来ればやりたくはない。
けれど、このままでは三本の毛の死が迫るばかり。
(何をする気だ?)
立ち止まり黙ってしまったまりおを見つけ、透馬とロニが思う。
そんな中次の瞬間、彼女は禁断の技に出た。意を決して手に取ったのは被っていた帽子、正面にある太陽が彼女の頭皮を照らす。そして、
「ハゲフラァァァッシュ!!」
彼女は今、女(の恥じらい)を捨てた。
それも全ては己が命と髪の毛の復活の為。剥き出しになった頭皮はものの見事に太陽光を反射し、通行人達の目を襲う。
「うわっ、なんだこの光はっ」
「ちょっと、訳判んないんですけど――」
口々に紡がれる通行人の声であるが、耳を貸している暇はない。今こそ好機とばかりにまりおはその人波をすり抜ける。
「なんと、大胆な…」
ロニがその姿に感銘を受ける。彼女は全てを捨て去り道を開いたのだ。それに比べて自分は何だ。
ハゲを隠し、あわよくば誰にも事がばれないようにと願いながら社を目指す浅ましさ…。
「おまえの犠牲は無駄にはしないっ! 俺も腹を括るぞ!」
走り向けていく彼女の髪が一本死滅するのを確認して、ロニが叫ぶ。そして、彼もまた帽子を取って…。
「俺とて男だ。道を開いて見せよう!」
ぴかりと輝くトンスラハゲ。そこから生み出された反射光が再び道行く人々の目を惑わせ、彼らの進撃を可能にする。
「あいつも同じだったのか…」
その姿に初めて同志だと気付く透馬だった。
●転
都脱出を終えた三人は社を目指し森を進む。森に入れば鬱蒼とし木々が壁となり、ハゲは目立たない。
但し、用心しないといけないのは野生生物や賊の類いだ。この時期、人通りも多くない為食料を求めてその手の輩の出没が警戒される。そんな一行を余所に図らずも先に到着していたのは誰を隠そうザレムだった。
「あぁ、これが試練……神は俺に何を求めているというのか…」
上空を飛んできて墜落した先には大きな木。その木に落ちたのが運の尽き。
伸びる髪は留まる所を知らず、変に動けば動くほど木に絡まり取れなくなってゆく。そうこうする事小一時間。彼は木と髪と戯れ続けている。
「あー…俺、このままどうなるのかなぁ」
既に視界はほとんど塞がれた状態。唯一利くのは耳だ。
髪を縛っておいたおかげでそこだけはうまく隠れずに済んでいる。
「まだ距離があるのか。これは一苦労だな」
そんな彼に聞き覚えのある声――足音と共に近付くその主を彼は知っている。
(この声…確か、依頼で一緒になった事のあるロニじゃないか?)
このままいても仕方がない。一か八かだと思い、ザレムは声を張り上げる。
「ロニー! 近くにいるなら助けてくれー!」
「ん?」
その声にロニが反応し、周囲を確認。するとどうだろう木にはまとわりつく黒い毛玉。奇妙にもこもこ動いて実に気持ちが悪い。
「あれ、知り合いなのか?」
まりおが問う。
「いや…声は似ているが、俺に珍獣の知り合いはいない」
その言葉にザレム血涙。しかしながら顔が見えない為、それも仕方のない事だろう。だが、問題はその後だ。
「俺は知ってるぜ…朝、アレに出くわしていたからな」
バトルグローブを嵌めた手をぽきぽきさせながら透馬が前に出る。
「え、ちょっ、これ、まずくない…」
その音に更にもごもご動くザレム。
嫌な汗が体中から吹き出しシャツを破って作った白旗を振ってみるが、髪に邪魔されて彼らの目はに届かない。
「覚悟しな、雪男さんよぉ」
「ヒギャーーー!!」
ザレムは必死に抵抗した。唯一持っていた鋏を手当たり次第に振り回し、周囲の髪を斬り裂く。
すると切れ落ちる髪は三人の元へと降り注ぎ、接近を辛うじて抑える。
「くそっ、何て奴だ」
ばさばさ降り注ぐ髪に苛立つ三人。すると幹がぽきりと折れてザレム落下。
その後バウンドするところころと転がっていくではないか。
「あ、待ちやがれっ」
社に向かいたい気持ちを抑えて、彼らは毛玉を追う。
「あぁん、なんだこりゃあ」
そして行きついた先は山賊のアジトだ。もうこれは災難としか言いようがない。
「お、俺は悪くないんだからな」
クッションになった髪とお別れして、長髪と呼べる程度に切り揃えたザレムが賊の真ん中に立ち言う。
「全く、次から次へと今年は厄年だな」
そんな場所に出くわして、追いかけてきた三人はげんなり中。急ぐ身故見逃してもいいのだが、次に紡がれた言葉が三人を刺激する。
「あぁん、禿ズラパーティーかよ…こりゃあ、持ちもんもしけてそうだなぁ」
プチッ
その時三人の堪忍袋の緒が切れた。
「今、おまえはなんてった…禿ズラだと……好きでこうなったんじゃねーわっ!」
いつもは凛々しい佇まいでドワーフと言えど聖導士らしい面持ちのロニであるが、気にしいてる所を突かれては言葉遣いも下品にならざる負えない。
「今の言葉、万死に値する」
まりおもメラメラと瞳に炎を燃やしてじりりと賊ににじり寄る。
「まぁ、あれだ。容姿を馬鹿にする奴は痛い目見るぜって事で…喰らえ、脱帽アタック!」
透馬のそれが引き金となった。念の為、都を出る時に買ったかつら。
それを敵に投げつけて、意表をつき攻撃へと転じる。
「命までは奪わんが、奪われる側の気持ちを味合わせてやろう…」
ロニが言う。彼、かなりストレスを抱えていたらしく、賊の髪を奪った剣で刈り尽していく。
そして、まりおは『火事場のハゲ力』と称し、いわゆる頭突きで賊を打ち負かし、それと引き換えにまた一本髪を失う結果となる。
「な、何なんだこれ…まさか、俺と正反対なのか?」
髪の抜けた知人らを見て立ち尽くすザレムが呟く。
まりお、透馬、そしてロニ。皆、依頼で顔を合わせた事がある。
しかし性格は――髪が無くなっているせいか、些か彼の知っているものとは少し違って見えた。
●変
賊の成敗を終えて、ザレムも仲間に。
髪が伸び過ぎるのだと言ったら、少し羨ましがられたが彼は彼で苦労しているのだからお互い様だ。
「後少し、この崖を登れば社に近いらしい」
立て看板を確認して彼が言う。が森を抜け、山に入ると徐々に気温は下がり吹雪いてくる始末である。
「あぁ、もう駄目だ…」
そう言い、まりおがその場に崩れた。何事かと思えば最後の一本が彼女に別れを告げている。
「ま、まさか本当に全部抜けたら死ぬのか」
トンスラと呼べる程もう残っていない髪――両サイドに残るロニのその髪ももう数える程しかない。
「いや、死なないと思うぞ。俺はほらこの通り」
坊主にしている頭を皆にさらして透馬が励ます。
しかし、彼女は確実に弱っていた。髭に生命力を取られているのかもしれない。
「仕方ない。俺が連れて上がるよ」
ザレムがそう言い、己が髪をロープ代わりに彼女を結わえ付ける。
「意外とその髪便利なんじゃないか?」
透馬のその言葉に、しかしザレムは苦笑いする他なかった。
「おや、人間がきたのう」
鳥居の上にいた神様が四人の姿を見取って、目を輝かせる。
「ここが髪神様の社か…」
その姿に気付かずロニは珍し気に鳥居を眺める。
「参拝客か?」
そこへ神様自らやってきた。数百年振りの人間とあって本当に嬉しそうだ。だが、そこで異変は起こる。
「おや?」
髪神様の身体が徐々に薄れていくではないか。
「えっ、ちょっ」
「料理はお供えは」
このまま消えてしまっては困るとロニとザレムが慌てる。しかし、神様は薄くなる一方で。
人の来訪に喜ぶと共に、また必要にされたいという心が彼を転生へと導いたらしい。
「来てくれて嬉しかったぞ~」
満面の笑顔で髪神は天に昇ってゆく。
((うそだろ…))
彼らの元にカミが戻るまで――まだ時間がかかりそうであった。
依頼結果
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/01/05 00:35:40 |
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髪は死んだ…… ロニ・カルディス(ka0551) ドワーフ|20才|男性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2016/01/06 09:12:30 |