ゲスト
(ka0000)
【初夢】蕎麦屋黄玉堂の初夢
マスター:佐倉眸

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/01/07 15:00
- 完成日
- 2016/01/15 18:32
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
賑やかな街を抜けて、隣町への街道に静かに佇む蕎麦屋が1軒。
蕎麦処黄玉堂。ひび割れて禿げ掛かった看板にはそう書かれている。
一見すると開いているのか分からない程静かで古めかしいが、染め抜いた暖簾の藍地の色は鮮やかだ。表の腰掛けと、6畳程の座敷。客は馴染みの商人ばかり。彼等に蕎麦と一時の憩いを提供する。この店の中はひどく穏やかな時が流れているという。
店主は老齢と言ってよく、その店主に代わって、前の夏に夫を亡くして出戻っていた孫娘の百合が喪服のままで厨に立っている。
彼女の湯がく蕎麦は美味いが、汁は不味いと評判だ。
彼女の代わりに出汁と醤油を扱うのは、前の店主と同じく老齢の、某。
「お百合、おい、お百合」
某の声が煩く呼ぶ。
「何ですか、そんなに何度も呼ばなくたって、聞こえてますよ」
「客だよ」
打ち粉の付いた包丁を手にしたまま、百合はいらっしゃいと微笑んだ。
●
某に追い払われるように出迎えた暖簾の下、百合は短く悲鳴を上げた。
そこには一面に桜に引き立てられた武者絵を背負った六尺一本の飛脚が倒れていた。
飛脚箱だけを守るように抱え込んで、足首を酷く腫らしている。鮮やかな色を刺した肌にも所々に裂傷が走っている。
もし、と百合が声を掛けるが、飛脚は唸るばかりで返事をしない。険しく眉が寄り、額には脂汗が浮いている。
「と、戸板を……っ、何方か、何方か」
百合の慌てた声に飛び出してきた客が、店の戸に寝かせた飛脚を店の内へ運び込む。小上がりの座敷の端に寝かせ、水を絞った手拭いで額を拭い、傷に布を括っていく。
足はどうやら折れているらしく、濡らした手拭いで冷やす以上、どうしようも出来なかった。
身の丈よりも大きな目玉に睨まれた。ぎょろぎょろ揺れる目玉は宙に浮かび、こちらに向かって突進してくる。
後退る背を引っ掻いたのは大百足の足。裸の身体に絡み付くように這いずる気味の悪さに、悲鳴すらも上げられない。
三つ目の狸の首が飛び、人面の狐が、こん、と鳴く度青白い火が追ってくる。
熱の無い火に頬を舐められると、堪らずその場を逃げ出した。
飛脚の男が目を開けた。
額に乗せられた手拭いに触れ、天井を見上げながら周りを見回す。
「ここは……」
「……あら、お目覚め? その内にお医者さんが見えますよ」
百合が小上がりに掛けて、起き上がろうとする飛脚を留める。
「何かありました? すごいお怪我で……」
「…………化生に、憑かれた……嗚呼、もう山は越せない」
●
飛脚は語った。
昨日の未明に前の駅から来た飛脚から書状を引き継ぎ、山を越えるまでを走る予定だった。すぐに走って、日の出の頃には山に入ったという。
しかし、その山中で化生、巨大な目玉や虫の化け物、長い時を経て化けた狸に狐に狗、周りの木々さえ曲がりくねって、撓った蔓が行く手を阻む。
どうにか山を下りて来た道を駆け戻り、気付けば既に日は暮れていた。
駅まで戻ろうと、痛む足を引きずって、拾った木切れを付け木に歩いたが、次第に痛みで朦朧として、気付けばここに寝かされていた。
「急ぎ届けなければならないが……山は越せぬし、この足では……」
「それ、大切なお手紙なんですね」
ゆっくり飲んで下さいと、白湯を差しだして百合が尋ねる。
飛脚が僅かに顔を顰めた。大切どころか、と呟く。
「ここらの護りに関わる密書だとか、何とか。本当かは知らないが、届かなければ首が飛ぶと聞かされている」
半身を起こして白湯を煽る。
今から歩いて駅に戻り、事情を話して手を考える。予定よりも大分遅れる、俺の首も飛ぶだろうなぁと飛脚が乾いた声で笑った。
「今から、走れる方がいれば良いんですけどね」
空の湯飲みを弄んで百合がぽつりと呟いた。
賑やかな街を抜けて、隣町への街道に静かに佇む蕎麦屋が1軒。
蕎麦処黄玉堂。ひび割れて禿げ掛かった看板にはそう書かれている。
一見すると開いているのか分からない程静かで古めかしいが、染め抜いた暖簾の藍地の色は鮮やかだ。表の腰掛けと、6畳程の座敷。客は馴染みの商人ばかり。彼等に蕎麦と一時の憩いを提供する。この店の中はひどく穏やかな時が流れているという。
店主は老齢と言ってよく、その店主に代わって、前の夏に夫を亡くして出戻っていた孫娘の百合が喪服のままで厨に立っている。
彼女の湯がく蕎麦は美味いが、汁は不味いと評判だ。
彼女の代わりに出汁と醤油を扱うのは、前の店主と同じく老齢の、某。
「お百合、おい、お百合」
某の声が煩く呼ぶ。
「何ですか、そんなに何度も呼ばなくたって、聞こえてますよ」
「客だよ」
打ち粉の付いた包丁を手にしたまま、百合はいらっしゃいと微笑んだ。
●
某に追い払われるように出迎えた暖簾の下、百合は短く悲鳴を上げた。
そこには一面に桜に引き立てられた武者絵を背負った六尺一本の飛脚が倒れていた。
飛脚箱だけを守るように抱え込んで、足首を酷く腫らしている。鮮やかな色を刺した肌にも所々に裂傷が走っている。
もし、と百合が声を掛けるが、飛脚は唸るばかりで返事をしない。険しく眉が寄り、額には脂汗が浮いている。
「と、戸板を……っ、何方か、何方か」
百合の慌てた声に飛び出してきた客が、店の戸に寝かせた飛脚を店の内へ運び込む。小上がりの座敷の端に寝かせ、水を絞った手拭いで額を拭い、傷に布を括っていく。
足はどうやら折れているらしく、濡らした手拭いで冷やす以上、どうしようも出来なかった。
身の丈よりも大きな目玉に睨まれた。ぎょろぎょろ揺れる目玉は宙に浮かび、こちらに向かって突進してくる。
後退る背を引っ掻いたのは大百足の足。裸の身体に絡み付くように這いずる気味の悪さに、悲鳴すらも上げられない。
三つ目の狸の首が飛び、人面の狐が、こん、と鳴く度青白い火が追ってくる。
熱の無い火に頬を舐められると、堪らずその場を逃げ出した。
飛脚の男が目を開けた。
額に乗せられた手拭いに触れ、天井を見上げながら周りを見回す。
「ここは……」
「……あら、お目覚め? その内にお医者さんが見えますよ」
百合が小上がりに掛けて、起き上がろうとする飛脚を留める。
「何かありました? すごいお怪我で……」
「…………化生に、憑かれた……嗚呼、もう山は越せない」
●
飛脚は語った。
昨日の未明に前の駅から来た飛脚から書状を引き継ぎ、山を越えるまでを走る予定だった。すぐに走って、日の出の頃には山に入ったという。
しかし、その山中で化生、巨大な目玉や虫の化け物、長い時を経て化けた狸に狐に狗、周りの木々さえ曲がりくねって、撓った蔓が行く手を阻む。
どうにか山を下りて来た道を駆け戻り、気付けば既に日は暮れていた。
駅まで戻ろうと、痛む足を引きずって、拾った木切れを付け木に歩いたが、次第に痛みで朦朧として、気付けばここに寝かされていた。
「急ぎ届けなければならないが……山は越せぬし、この足では……」
「それ、大切なお手紙なんですね」
ゆっくり飲んで下さいと、白湯を差しだして百合が尋ねる。
飛脚が僅かに顔を顰めた。大切どころか、と呟く。
「ここらの護りに関わる密書だとか、何とか。本当かは知らないが、届かなければ首が飛ぶと聞かされている」
半身を起こして白湯を煽る。
今から歩いて駅に戻り、事情を話して手を考える。予定よりも大分遅れる、俺の首も飛ぶだろうなぁと飛脚が乾いた声で笑った。
「今から、走れる方がいれば良いんですけどね」
空の湯飲みを弄んで百合がぽつりと呟いた。
リプレイ本文
●
薙刀を身に寄せて、小上がりに掛けた片胡座、若竹の清々しい緑の目を細める。脚絆を巻いた脚を揺らし、腰を上げて空になった白塗りの歪な湯飲みを置く。
その側に御代はここに、と、銭を置いたミオレスカ(ka3496)が店を出ていく。耳を欹てた山へと走った。
「ここで会ったのも何かの縁って言うしな。困ってる奴は見捨ててらんねぇぜ」
飛脚の傍らに座して柊 真司(ka0705)は彼の話を親身に聞く。
「ただの旅人だけどね、俺も。手伝うよ……それはそうと、先ずは聞いておきたいんだ」
憑かれた、というのはとザレム・アズール(ka0878)――砂錬が飛脚の顔を覗く。飛脚は頭を覆うように抱えて呻きながら、折れて動かない足を見た。
化生から逃げる際の骨折だろうそれは、骨折の腫れの他に異常は見えない。
縄と鎖が開封をきつく戒める飛脚箱も砂錬の見立てではそれらの憑いた様子は無い。
括った髪をさらりと鞍馬 真(ka5819)が飛脚箱の柄を取って肩に担ぐ。箱は重たげだが中身は空かと思う程、左肩に乗せたそれは軽い。
「私が運ぼう。片腕が塞がってしまうが……邪魔にはならぬよう努めるつもりだ」
微かな衣擦れの音を立てて鞍馬が店を出る。
「――よし、行くか。ああ、その前に……一筆頼めるか?」
柊が届け先に飛脚の依頼だと伝え、疑わせない為の委任状が欲しいと告げる。飛脚の額を仰いでいた百合が出納の反故と筆を差し出した。
文字を知らないらしい手ながら、彼の名だけは読める物が綴られると、その紙一枚を懐へ。柊は刀を握って立ち上がり、下げ緒をきつく括り直す。
身の丈近くの大太刀を背負った砂錬が、化かされないようにしなければな、と2人へ声を掛け、去り際、軽く半身を起こして見送る飛脚へ、必ず届けると頷いた。
「手紙、運ばないと……大変。だね」
店を出るとその軒先で鵯(ka4720)とナーディル・K(ka5486)が待っていた。
鞍馬の担いだ箱を見て鵯が守るように傍へ、白衣に輪袈裟を掛けて杖を突いたナーディルも、目深に被った菅笠を揺らして頷く。
密書の箱を託された彼等が、飛脚が化生と遭遇したという山の麓に至ったのは昼の頃、高く昇った日が燦々と照っている。
この山かと身構える彼等の前に先行したミオレスカの姿もあった。
山に入ると途端に道が狭くなる。灯りが要るかと砂錬は周囲を見回すが、木漏れ日が足下を照らして明るい。
枝に掛からぬように箱を庇いながら慎重に進んで行くと、あるところで、ふっと生温い風が吹き抜けた。
人の吐息のようにも感じられるその風が、どこからともなく饐えた臭いを運んでくる。
「……噂を聞いたことがあるんだ。他所を旅していた時に」
こういう物は、例えば、こんな、小さな灯りにも弱かったりする。
がん灯に火を入れ、鞍馬の前に出るとその進む先へぐるりと光りを向けていく。
あぶり出されたように葉掠れの音がざわめいて、飛び出した何かの影が茂みの奥へ去っていった。
風はまだ止まない。
「山の中を歩くのは得意ですが……」
金剛杖を握って先を眺め、ナーディルが呟いた。斯様な物がまだ刀には慣れぬ己に斬れるだろうかと。
潜んでいた物は1匹では無いのだろうと、鞍馬も身に引き付けるように箱を担ぎ直して、刀の柄に手を掛けた。
任せます、と鵯が前へ、滑らかに反る大振りの得物の刀身を活かすように茂みを薙ぐと更に数匹の影が飛び出して、逃げるように去っていった。
「炎か。――っ、おい」
刀を片手に、松明を灯そうとした柊が息を飲む。燃え上がった炎を翳し、その光に照らされながら目を擦ると声を張り上げた。
彼等はその2つの灯りが照らすばかりの暗闇の中、温い風の漂う中に佇んでいた。
●
このまま走り抜ける、と柊が鞍馬を振り返る。柄を固く握って頷くと、鞍馬も箱を庇いながら刃を翳す。
柊が地面を蹴ると黒い土が跳ね上がり、暗がりの中でも煌めく刃が前方の茂みを薙ぎ払った。
不意に間合いを詰められた影は為す術も無く、刃に掛かり真っ二つに避ける。慌てて飛び出してきた物を断つと、地面に伏せたそれは四肢をばたつかせてきぃきぃ鳴きながら煙になった。
周囲がほんの一瞬だけ晴れる。
差し込んだ淡い日差しに照らされた影は四足獣の形を成し、大きさは大小様々、日差しの傍で樹に貼り付く物もいれば、茂みから覗く物もいる。
それらを纏めて切り裂こうと払う太刀筋の軌跡は、まるで刃自体を引き延ばしたように辺りを巻き込み、刈られた葉を散らして道を開く。
「走るぞ!」
この隙に、足を止めず次の手を構えながら柊は後方へ声を掛ける。
松明を片手に揺らすと、その炎の揺れが歪に、彼等を囲む木々の伸ばす枝を幾重にも浮かび上がらせた。
その様子に同じく前方へ刃を向けた砂錬ががん灯の火を向けながらそれを睨む。
「三光の術……」
大太刀の斬撃を三方へ向けて放つ。旅人だと名乗りながらも、その腕は鍛えられた武人のもの。
煌めく刃は視界を遮った枝を刈り飛ばし、胴へ足へ迫る物を叩き斬る。同時に断たれた様に地面に落ちた枝を避けて走りながら共に走る仲間に視線を巡らせた。
表情を確かめるには暗いが、彼等が化生に呑まれた様子は見られない。
安堵よりも先に、足を急かす。
少し後の方でも化生と刃を交え始めたようだ。
ミオレスカは獣が咬んだ薙刀の刃を押し付ける様にその顎から喉へ裂いて耳を澄ます。
払った刃を返しながら、更に1匹。手を妨げようと迫る枝を刈りながら、尚も数匹。
その数は一向に減る様子は無い。
切った瞬間だけ晴れ間を覗かせながら、辺りは絶えず温い風と闇が包む。
そして、斬れば斬る程に、襲いかかってくる獣は、形の無い影に四つ脚を生やし、唯の影から毛並みまで覗える黒い固まりに。今斬った大型の獣は目の辺りにどんよりと色を無し、毛並みも所々を赤錆の色に染めていた。
切りが無い、と思いながらも、それらが彼等の元へ至らぬように、踏みとどまる。
裾を割り地面を踏みしめた足が、身体に掛かる重圧に土を削って踏み止まる。
「……仕事だから」
鞍馬へ先にと促して、迫る影を抑え込んだ。
長い刀身に隙無く噛み付く獣の影。鋼を折らんとするかのように、噛んだ牙がかたかたと鳴る。
柄を握り締め峰に手を添え、一呼吸溜めると踏み込みながら切り払う。化生が消え、光が差した道は鞍馬が走り抜けるとすぐに影が集まってくる。
刀を構え直して、次だと言う様に狙いを定めた。
ナーディルが杖を振るい化生を叩く。
「あまり、刀は……」
扱ったことが無い、とその杖に手を掛けるとすらりとした白い刀身が現れた。
叩いただけでは足を止めない影を真二つに、頭から断って息を吐く。
「人助けの、ためですからね」
迫る蔓を切り上げる、草の汁が散ったのか、土埃に巻かれたのか、白衣に黒ずむ汚れが浮いた。
汚れは影を断って、僅かながらも差し込む日差しに翳せばその色を薄め、軽く払えば元より無かったかのように消えた。
四方を守られながら、その防御を抜けて飛び込んだ物を片手の白刃で的確に貫く。
「箱は、まだ運べるか」
進めなくなれば置こうとも考えるが、今は足を止めるよりも、斬り合いながら走る方が早い。
柊と砂錬が開く道を、鵯とナーディルが抑える間に走る。樹上から伸びてきた蔓と、それに下がっていた虫を斬ると、自身の腕の影を狙ったように狐の形をした影が飛び掛かってきた。
「……っ」
咄嗟に懐から飛び道具を投じてその喉を切り裂いた。
不安定な姿勢に傾ぐ足が縺れ、黒い袴に擦った土がその色を濁らせたような汚れを残す。
すぐに姿勢を立て直すと、周囲を確かめて走り出す。
後方からの気遣う声に大丈夫だと頷いて、迫る影を任せ箱を揺らして暗い道を急いだ。
仕込み刀と大太刀がその背を守る。
●
どれ程走っただろうか、終わらない化生の襲撃、次第に生々しく、生きた獣に近付いていく影に、それでいてどこか現実離れした動きをする木々の枝や蔓、そこに這って彼等を噛もうと狙う虫に息が上がる。
或いは、既に、それらの術中に、と些末な噂話の記憶まで手繰りながら砂錬はその獣を注視するが、思考を保たせまいとするようにすぐさま横からもう1匹が襲ってくる。
鞍馬も箱を一旦置き、その傍を離れずに自身の周囲を切り払ってから進むように動きを変える。
単身、最前線の獣と交えるミオレスカも、獣の爪に、牙に着物を裂かれ、四肢に無数の傷を得ていた。
時折差す日を感じればその傷が癒えたような気はするが、地面に打ち付けた腕の痛みは引いていない。
ミオレスカの前に黒い靄の中、鈍色の毛並みの中に赤い目を持ち、所々を斑に染めた獣が現れた。
うなり声を上げて牙を剥きながらも、どこか愛嬌のある顔形に、狸、と呟きながら上段に構える。
獣の体高はミオレスカの肩程はあり、爪を尖らせる前足を擡げて飛び掛かってくれば刀一つでは抑えるのがやっとになる。
地面を踏みしめながら睨み付けると、その狸の向こうにぎろりとこちらを睨んだ目玉を見付けた。
「あ、あれか……っ」
届かないもどかしさを嘲笑うような目玉は中空からぬるりとこちらを見下ろしてくる。
その目玉の周りには、獣や影が幾重にも集まっていた。
刃を爪に阻まれながら、背後に彼等の足音を聞いた。
「侠気の……っ、ある方ですね。あの話を聞いて、荷運びを引き受けるなんて」
「きみも、だろう?」
振り返らずに掛けられた声に、鞍馬が応じる。
土汚れには染めているが、箱はここまで無事運ばれた。
「ここは私に任せて先に行ってください」
得物を取って化生しようとする彼等に、ミオレスカは先を示す。道を妨げているのはこの狸だけでは無いのだから。
「そうさせて貰おう、深追いはせずに」
目的は箱を届けることだと、砂錬が言い聞かせるように告げ、狸の戦線を越えた彼等に迫る無数の歪な影を一太刀に払う。
彼等の前に目玉が揺れた。
煌々と青白い鬼火を周りに浮かべ、目玉は笑うように震えて彼等を見下ろす。
彼等と影が斬り合うのを眺めるように揺れると、不意に浮かんでいた中空から、落下しながら鞍馬に迫った。
鞍馬がその刃に目玉を捕らえ、その隙に迫る影をナーディルが払い除ける。
鵯は刀身が火花を立てる程苛烈に舞って、影の数を減らしていく。
「光刀……撒火の術」
砂錬が刃を伸べて大きく薙いで、その鋼に炎を帯びさせたように影を切り払うと、彼等から目玉までの道が開く。
「抜けば玉散る光の刃ってな。悪いが押し通させて貰うぜ」
柊が地面を蹴る勢いを乗せながら切っ先を目玉に向けて斬り込み、自身の倍以上の大きさの目玉にも屈せずに貫いた。
ぽん、と軽く弾けるような音が鳴った。
光りはきらきらと、紙吹雪のように舞って踊って、彼等を照らす。
辺りは穏やかな山の小径。化生の気配は無くなった。
不意に差す眩しさに目を覆うと、辺りが元の様子に戻っていることを知る。彼等が荷物や得物、箱を調べると何れも出立の時と変わりなく、化生に噛まれたり引っ掻かれた跡も無くなっていた。
転んだ泥汚れは残っているから、此処で何かあったことは確かなのだろうと、それぞれに袴や着物を払って道の先を見詰めた。
鞍馬も箱を担ぎ直し、急ごうと頷き合って山道を走る。
彼等を先にと促して、ミオレスカもその背を守るように着いていった。
化生が消えても山道だからと、警戒は怠らず。野生の獣にも気を付けながら走ったが、それきり彼等を脅かす物には遭遇しなかった。
●
山を越えると俄に浮き足立った男達が集まっていた。
どうする、何があったとそわそわと落ち付かない声が聞こえてくる。
彼等が声を掛けると、男達、出会った飛脚と同じだろう、何れも肌に彫り物を施した逞しい体つきで、わっと驚く声を上げた。
今日にも届く密書が来ないと慌てた声に、言うなと咎める声が重なる。
男の1人が鞍馬を差して、それだ、と喚いた。
「山の向こうで預かってきた。彼は――」
山で化生に襲われて倒れていた。偶然居合わせ、大切な物だと聞いたから。鞍馬が箱を差し出すと男達は訝しがりながらそれを受け取る。
硬い封に箱を空けた様子が無いと知ると数人はほっとしたようだが、先頭に立った男は尚も訝しがる目を向けてくる。
「……その飛脚からだ」
柊が懐から紙を取り出す。表は蕎麦屋の書き付けだが、裏には彼の文字で、たくす、と綴られている。
飛脚の署名を認めると、男はやっと息を吐いて、彼等を駅へと迎え入れた。
あれはこの蕎麦屋にいるのかと、怪我はどうだと、お前等は何者だと問いただし、礼と口止めを握らせた。
1人それを拒んで中身を尋ねた砂錬に、男は、教えられんなぁと豪快に笑う。
駅の飛脚は既に次の駅へと走り出していた。
明るくなった山の中、狸と狐が戯れている。
今度はどちらが怖がらせた。俺だ。いいや、俺だ。
――だが、あの兄さんには悪ぃことしちまった――
――転んで痛そうだったなぁ……――
きぃきぃ鳴きながら、2匹は茂みの奥に丸くなった。
薙刀を身に寄せて、小上がりに掛けた片胡座、若竹の清々しい緑の目を細める。脚絆を巻いた脚を揺らし、腰を上げて空になった白塗りの歪な湯飲みを置く。
その側に御代はここに、と、銭を置いたミオレスカ(ka3496)が店を出ていく。耳を欹てた山へと走った。
「ここで会ったのも何かの縁って言うしな。困ってる奴は見捨ててらんねぇぜ」
飛脚の傍らに座して柊 真司(ka0705)は彼の話を親身に聞く。
「ただの旅人だけどね、俺も。手伝うよ……それはそうと、先ずは聞いておきたいんだ」
憑かれた、というのはとザレム・アズール(ka0878)――砂錬が飛脚の顔を覗く。飛脚は頭を覆うように抱えて呻きながら、折れて動かない足を見た。
化生から逃げる際の骨折だろうそれは、骨折の腫れの他に異常は見えない。
縄と鎖が開封をきつく戒める飛脚箱も砂錬の見立てではそれらの憑いた様子は無い。
括った髪をさらりと鞍馬 真(ka5819)が飛脚箱の柄を取って肩に担ぐ。箱は重たげだが中身は空かと思う程、左肩に乗せたそれは軽い。
「私が運ぼう。片腕が塞がってしまうが……邪魔にはならぬよう努めるつもりだ」
微かな衣擦れの音を立てて鞍馬が店を出る。
「――よし、行くか。ああ、その前に……一筆頼めるか?」
柊が届け先に飛脚の依頼だと伝え、疑わせない為の委任状が欲しいと告げる。飛脚の額を仰いでいた百合が出納の反故と筆を差し出した。
文字を知らないらしい手ながら、彼の名だけは読める物が綴られると、その紙一枚を懐へ。柊は刀を握って立ち上がり、下げ緒をきつく括り直す。
身の丈近くの大太刀を背負った砂錬が、化かされないようにしなければな、と2人へ声を掛け、去り際、軽く半身を起こして見送る飛脚へ、必ず届けると頷いた。
「手紙、運ばないと……大変。だね」
店を出るとその軒先で鵯(ka4720)とナーディル・K(ka5486)が待っていた。
鞍馬の担いだ箱を見て鵯が守るように傍へ、白衣に輪袈裟を掛けて杖を突いたナーディルも、目深に被った菅笠を揺らして頷く。
密書の箱を託された彼等が、飛脚が化生と遭遇したという山の麓に至ったのは昼の頃、高く昇った日が燦々と照っている。
この山かと身構える彼等の前に先行したミオレスカの姿もあった。
山に入ると途端に道が狭くなる。灯りが要るかと砂錬は周囲を見回すが、木漏れ日が足下を照らして明るい。
枝に掛からぬように箱を庇いながら慎重に進んで行くと、あるところで、ふっと生温い風が吹き抜けた。
人の吐息のようにも感じられるその風が、どこからともなく饐えた臭いを運んでくる。
「……噂を聞いたことがあるんだ。他所を旅していた時に」
こういう物は、例えば、こんな、小さな灯りにも弱かったりする。
がん灯に火を入れ、鞍馬の前に出るとその進む先へぐるりと光りを向けていく。
あぶり出されたように葉掠れの音がざわめいて、飛び出した何かの影が茂みの奥へ去っていった。
風はまだ止まない。
「山の中を歩くのは得意ですが……」
金剛杖を握って先を眺め、ナーディルが呟いた。斯様な物がまだ刀には慣れぬ己に斬れるだろうかと。
潜んでいた物は1匹では無いのだろうと、鞍馬も身に引き付けるように箱を担ぎ直して、刀の柄に手を掛けた。
任せます、と鵯が前へ、滑らかに反る大振りの得物の刀身を活かすように茂みを薙ぐと更に数匹の影が飛び出して、逃げるように去っていった。
「炎か。――っ、おい」
刀を片手に、松明を灯そうとした柊が息を飲む。燃え上がった炎を翳し、その光に照らされながら目を擦ると声を張り上げた。
彼等はその2つの灯りが照らすばかりの暗闇の中、温い風の漂う中に佇んでいた。
●
このまま走り抜ける、と柊が鞍馬を振り返る。柄を固く握って頷くと、鞍馬も箱を庇いながら刃を翳す。
柊が地面を蹴ると黒い土が跳ね上がり、暗がりの中でも煌めく刃が前方の茂みを薙ぎ払った。
不意に間合いを詰められた影は為す術も無く、刃に掛かり真っ二つに避ける。慌てて飛び出してきた物を断つと、地面に伏せたそれは四肢をばたつかせてきぃきぃ鳴きながら煙になった。
周囲がほんの一瞬だけ晴れる。
差し込んだ淡い日差しに照らされた影は四足獣の形を成し、大きさは大小様々、日差しの傍で樹に貼り付く物もいれば、茂みから覗く物もいる。
それらを纏めて切り裂こうと払う太刀筋の軌跡は、まるで刃自体を引き延ばしたように辺りを巻き込み、刈られた葉を散らして道を開く。
「走るぞ!」
この隙に、足を止めず次の手を構えながら柊は後方へ声を掛ける。
松明を片手に揺らすと、その炎の揺れが歪に、彼等を囲む木々の伸ばす枝を幾重にも浮かび上がらせた。
その様子に同じく前方へ刃を向けた砂錬ががん灯の火を向けながらそれを睨む。
「三光の術……」
大太刀の斬撃を三方へ向けて放つ。旅人だと名乗りながらも、その腕は鍛えられた武人のもの。
煌めく刃は視界を遮った枝を刈り飛ばし、胴へ足へ迫る物を叩き斬る。同時に断たれた様に地面に落ちた枝を避けて走りながら共に走る仲間に視線を巡らせた。
表情を確かめるには暗いが、彼等が化生に呑まれた様子は見られない。
安堵よりも先に、足を急かす。
少し後の方でも化生と刃を交え始めたようだ。
ミオレスカは獣が咬んだ薙刀の刃を押し付ける様にその顎から喉へ裂いて耳を澄ます。
払った刃を返しながら、更に1匹。手を妨げようと迫る枝を刈りながら、尚も数匹。
その数は一向に減る様子は無い。
切った瞬間だけ晴れ間を覗かせながら、辺りは絶えず温い風と闇が包む。
そして、斬れば斬る程に、襲いかかってくる獣は、形の無い影に四つ脚を生やし、唯の影から毛並みまで覗える黒い固まりに。今斬った大型の獣は目の辺りにどんよりと色を無し、毛並みも所々を赤錆の色に染めていた。
切りが無い、と思いながらも、それらが彼等の元へ至らぬように、踏みとどまる。
裾を割り地面を踏みしめた足が、身体に掛かる重圧に土を削って踏み止まる。
「……仕事だから」
鞍馬へ先にと促して、迫る影を抑え込んだ。
長い刀身に隙無く噛み付く獣の影。鋼を折らんとするかのように、噛んだ牙がかたかたと鳴る。
柄を握り締め峰に手を添え、一呼吸溜めると踏み込みながら切り払う。化生が消え、光が差した道は鞍馬が走り抜けるとすぐに影が集まってくる。
刀を構え直して、次だと言う様に狙いを定めた。
ナーディルが杖を振るい化生を叩く。
「あまり、刀は……」
扱ったことが無い、とその杖に手を掛けるとすらりとした白い刀身が現れた。
叩いただけでは足を止めない影を真二つに、頭から断って息を吐く。
「人助けの、ためですからね」
迫る蔓を切り上げる、草の汁が散ったのか、土埃に巻かれたのか、白衣に黒ずむ汚れが浮いた。
汚れは影を断って、僅かながらも差し込む日差しに翳せばその色を薄め、軽く払えば元より無かったかのように消えた。
四方を守られながら、その防御を抜けて飛び込んだ物を片手の白刃で的確に貫く。
「箱は、まだ運べるか」
進めなくなれば置こうとも考えるが、今は足を止めるよりも、斬り合いながら走る方が早い。
柊と砂錬が開く道を、鵯とナーディルが抑える間に走る。樹上から伸びてきた蔓と、それに下がっていた虫を斬ると、自身の腕の影を狙ったように狐の形をした影が飛び掛かってきた。
「……っ」
咄嗟に懐から飛び道具を投じてその喉を切り裂いた。
不安定な姿勢に傾ぐ足が縺れ、黒い袴に擦った土がその色を濁らせたような汚れを残す。
すぐに姿勢を立て直すと、周囲を確かめて走り出す。
後方からの気遣う声に大丈夫だと頷いて、迫る影を任せ箱を揺らして暗い道を急いだ。
仕込み刀と大太刀がその背を守る。
●
どれ程走っただろうか、終わらない化生の襲撃、次第に生々しく、生きた獣に近付いていく影に、それでいてどこか現実離れした動きをする木々の枝や蔓、そこに這って彼等を噛もうと狙う虫に息が上がる。
或いは、既に、それらの術中に、と些末な噂話の記憶まで手繰りながら砂錬はその獣を注視するが、思考を保たせまいとするようにすぐさま横からもう1匹が襲ってくる。
鞍馬も箱を一旦置き、その傍を離れずに自身の周囲を切り払ってから進むように動きを変える。
単身、最前線の獣と交えるミオレスカも、獣の爪に、牙に着物を裂かれ、四肢に無数の傷を得ていた。
時折差す日を感じればその傷が癒えたような気はするが、地面に打ち付けた腕の痛みは引いていない。
ミオレスカの前に黒い靄の中、鈍色の毛並みの中に赤い目を持ち、所々を斑に染めた獣が現れた。
うなり声を上げて牙を剥きながらも、どこか愛嬌のある顔形に、狸、と呟きながら上段に構える。
獣の体高はミオレスカの肩程はあり、爪を尖らせる前足を擡げて飛び掛かってくれば刀一つでは抑えるのがやっとになる。
地面を踏みしめながら睨み付けると、その狸の向こうにぎろりとこちらを睨んだ目玉を見付けた。
「あ、あれか……っ」
届かないもどかしさを嘲笑うような目玉は中空からぬるりとこちらを見下ろしてくる。
その目玉の周りには、獣や影が幾重にも集まっていた。
刃を爪に阻まれながら、背後に彼等の足音を聞いた。
「侠気の……っ、ある方ですね。あの話を聞いて、荷運びを引き受けるなんて」
「きみも、だろう?」
振り返らずに掛けられた声に、鞍馬が応じる。
土汚れには染めているが、箱はここまで無事運ばれた。
「ここは私に任せて先に行ってください」
得物を取って化生しようとする彼等に、ミオレスカは先を示す。道を妨げているのはこの狸だけでは無いのだから。
「そうさせて貰おう、深追いはせずに」
目的は箱を届けることだと、砂錬が言い聞かせるように告げ、狸の戦線を越えた彼等に迫る無数の歪な影を一太刀に払う。
彼等の前に目玉が揺れた。
煌々と青白い鬼火を周りに浮かべ、目玉は笑うように震えて彼等を見下ろす。
彼等と影が斬り合うのを眺めるように揺れると、不意に浮かんでいた中空から、落下しながら鞍馬に迫った。
鞍馬がその刃に目玉を捕らえ、その隙に迫る影をナーディルが払い除ける。
鵯は刀身が火花を立てる程苛烈に舞って、影の数を減らしていく。
「光刀……撒火の術」
砂錬が刃を伸べて大きく薙いで、その鋼に炎を帯びさせたように影を切り払うと、彼等から目玉までの道が開く。
「抜けば玉散る光の刃ってな。悪いが押し通させて貰うぜ」
柊が地面を蹴る勢いを乗せながら切っ先を目玉に向けて斬り込み、自身の倍以上の大きさの目玉にも屈せずに貫いた。
ぽん、と軽く弾けるような音が鳴った。
光りはきらきらと、紙吹雪のように舞って踊って、彼等を照らす。
辺りは穏やかな山の小径。化生の気配は無くなった。
不意に差す眩しさに目を覆うと、辺りが元の様子に戻っていることを知る。彼等が荷物や得物、箱を調べると何れも出立の時と変わりなく、化生に噛まれたり引っ掻かれた跡も無くなっていた。
転んだ泥汚れは残っているから、此処で何かあったことは確かなのだろうと、それぞれに袴や着物を払って道の先を見詰めた。
鞍馬も箱を担ぎ直し、急ごうと頷き合って山道を走る。
彼等を先にと促して、ミオレスカもその背を守るように着いていった。
化生が消えても山道だからと、警戒は怠らず。野生の獣にも気を付けながら走ったが、それきり彼等を脅かす物には遭遇しなかった。
●
山を越えると俄に浮き足立った男達が集まっていた。
どうする、何があったとそわそわと落ち付かない声が聞こえてくる。
彼等が声を掛けると、男達、出会った飛脚と同じだろう、何れも肌に彫り物を施した逞しい体つきで、わっと驚く声を上げた。
今日にも届く密書が来ないと慌てた声に、言うなと咎める声が重なる。
男の1人が鞍馬を差して、それだ、と喚いた。
「山の向こうで預かってきた。彼は――」
山で化生に襲われて倒れていた。偶然居合わせ、大切な物だと聞いたから。鞍馬が箱を差し出すと男達は訝しがりながらそれを受け取る。
硬い封に箱を空けた様子が無いと知ると数人はほっとしたようだが、先頭に立った男は尚も訝しがる目を向けてくる。
「……その飛脚からだ」
柊が懐から紙を取り出す。表は蕎麦屋の書き付けだが、裏には彼の文字で、たくす、と綴られている。
飛脚の署名を認めると、男はやっと息を吐いて、彼等を駅へと迎え入れた。
あれはこの蕎麦屋にいるのかと、怪我はどうだと、お前等は何者だと問いただし、礼と口止めを握らせた。
1人それを拒んで中身を尋ねた砂錬に、男は、教えられんなぁと豪快に笑う。
駅の飛脚は既に次の駅へと走り出していた。
明るくなった山の中、狸と狐が戯れている。
今度はどちらが怖がらせた。俺だ。いいや、俺だ。
――だが、あの兄さんには悪ぃことしちまった――
――転んで痛そうだったなぁ……――
きぃきぃ鳴きながら、2匹は茂みの奥に丸くなった。
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飛脚箱をお届けしやしょう ミオレスカ(ka3496) エルフ|18才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2016/01/07 10:18:19 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/01/07 14:54:35 |