ゲスト
(ka0000)
知追う者、都の見える場で舞う
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/01/12 19:00
- 完成日
- 2016/01/18 22:22
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●ご来光
今年の最初に上がる太陽は格別素晴らしい。
エトファリカ連邦国の大江 紅葉(kz0163)は家臣たちと見つめる。白々差す光に色々な思いが湧く。
去年はそんな余裕はなかった。何としてでも生きて、歪虚から家族と家臣を守りたかった。
たった一年でここまで変わるのだろうか?
国内の人間も多く死んだ。
大江家にも死んだ家臣もいる、落ち着いた後に増えた家臣もいる。増えた中に交戦状態から外れた鬼がいる。
「……っ!」
紅葉の目に涙が溜まる。
光に照らされた周囲にあの崖があった。
「……あれは何だったんだろう」
歪虚に接触されたことは口をつぐんだ。それでも天ノ都の危機に都を離れたことは不自然に映り、妖怪に与するのではと疑われた。
ハンターと行動をとっていたために、状況は客観的に伝わっているはずだ。紅葉を悪しざまに言う者たちには妹の若葉が死んだ理由も妖怪のための生贄と言われる始末。
「……結局……なぜ?」
時間が経ち、冷静な思考は取り戻せば、疑問ばかりが生じる。
大した力もない自分が?
なぜ、歪虚に名を知られていたのか?
そして、誰が何のためにあの事件を起こしたのか?
悲劇の連鎖とはいえ、歪虚王を討ち果たすという劇的事件も起こる。
紅葉の情報に歪虚が関わっているが、黒幕は歪虚ではないのか?
●依頼を
ハンターズソサエティへ顔を出した紅葉を見て職員はどきりとする。
依頼を見に来たのか出しに来たのか、すでに常連といえる回数ここにきている。
「依頼を出しに参りました」
「はい、で、どんな要件です? 新年早々南部にでも突入します? それとも、珍しい動物でも探しに行きます?」
「……」
「……すみません。大江様って学者でもアクティブで色々追いかける印象があって。むしろ、北伐に参戦されなかったのが不思議で」
「あの件に関しては、理由がいくつかあるのです」
足手まといになるということと、あのころの精神状態を考えると無理を言えない状況。
「足手まといですか?」
「ええ、辺境行ったことないですし、雪原なんて見たら」
「……あっ」
帰ってこない、帰ってきたら歪虚になっているってありえそうだと、職員すら考えた。
「それと、あまり術使えません」
「え?」
「夏に付けられた噂もありますし、嫌がる人は徹底的に嫌がりますよ?」
一部の人間なのは分かるが、戦場となると士気にもかかわる。下手をすればそこを歪虚に突かれかねない。
「あたしは大江様のファンですから、強く生きてください」
「え? ふふっ、ありがとう。そもそも、噂通りだったら、どこにいても危険ですよね?」
「うっ、怖いこと言わないでください」
紅葉は職員の反応を見て笑う。
「むう、それで依頼は?」
「ええ、私を護衛してほしいのです。天ノ都から馬で往復できますから日帰り予定です」
天ノ都が見える崖の上に行きたいのだと言う。
「妹が殺され、天ノ都が壊されるのをハンターの方たちと私が見た所です」
「犯人探しですか?」
「遅いですよ? でも、誰かが糸を引いているのは分かります……あれが鬼の離反を滑らかにしたのですから。誰が? 鬼が? でも、私は……誰に踊らされたのか? 分からないことだらけですよ? 実際、アカシラ殿にも話を伺ってみたいですね」
話を聞こうにも間が悪く聞けるところに彼女はいない。
「供養も兼ねて……せっかく迎えた新しい年をそこで見たいと思ったのです」
「……分かりました。出発は?」
「そうですね……早朝、丑三つ時」
「それ、早朝?」
「馬使っても私の技量からは早々早く走れませんし、深夜出発ですね」
「……寒そうですね」
「冬ですから」
にこやかに立ち去る紅葉の表情に寂しそうな物を職員は見つけた。
「妹さんが殺された現場。弱いとはいえ巫子という役割があるのにスメラギ様の危機にそばにいなかった負い目……」
悲劇の連鎖を止められたのは、紅葉がとどまったこともあるが、依頼に関わったハンターのお蔭だろうなと職員は思い唇をかんだ。
今年の最初に上がる太陽は格別素晴らしい。
エトファリカ連邦国の大江 紅葉(kz0163)は家臣たちと見つめる。白々差す光に色々な思いが湧く。
去年はそんな余裕はなかった。何としてでも生きて、歪虚から家族と家臣を守りたかった。
たった一年でここまで変わるのだろうか?
国内の人間も多く死んだ。
大江家にも死んだ家臣もいる、落ち着いた後に増えた家臣もいる。増えた中に交戦状態から外れた鬼がいる。
「……っ!」
紅葉の目に涙が溜まる。
光に照らされた周囲にあの崖があった。
「……あれは何だったんだろう」
歪虚に接触されたことは口をつぐんだ。それでも天ノ都の危機に都を離れたことは不自然に映り、妖怪に与するのではと疑われた。
ハンターと行動をとっていたために、状況は客観的に伝わっているはずだ。紅葉を悪しざまに言う者たちには妹の若葉が死んだ理由も妖怪のための生贄と言われる始末。
「……結局……なぜ?」
時間が経ち、冷静な思考は取り戻せば、疑問ばかりが生じる。
大した力もない自分が?
なぜ、歪虚に名を知られていたのか?
そして、誰が何のためにあの事件を起こしたのか?
悲劇の連鎖とはいえ、歪虚王を討ち果たすという劇的事件も起こる。
紅葉の情報に歪虚が関わっているが、黒幕は歪虚ではないのか?
●依頼を
ハンターズソサエティへ顔を出した紅葉を見て職員はどきりとする。
依頼を見に来たのか出しに来たのか、すでに常連といえる回数ここにきている。
「依頼を出しに参りました」
「はい、で、どんな要件です? 新年早々南部にでも突入します? それとも、珍しい動物でも探しに行きます?」
「……」
「……すみません。大江様って学者でもアクティブで色々追いかける印象があって。むしろ、北伐に参戦されなかったのが不思議で」
「あの件に関しては、理由がいくつかあるのです」
足手まといになるということと、あのころの精神状態を考えると無理を言えない状況。
「足手まといですか?」
「ええ、辺境行ったことないですし、雪原なんて見たら」
「……あっ」
帰ってこない、帰ってきたら歪虚になっているってありえそうだと、職員すら考えた。
「それと、あまり術使えません」
「え?」
「夏に付けられた噂もありますし、嫌がる人は徹底的に嫌がりますよ?」
一部の人間なのは分かるが、戦場となると士気にもかかわる。下手をすればそこを歪虚に突かれかねない。
「あたしは大江様のファンですから、強く生きてください」
「え? ふふっ、ありがとう。そもそも、噂通りだったら、どこにいても危険ですよね?」
「うっ、怖いこと言わないでください」
紅葉は職員の反応を見て笑う。
「むう、それで依頼は?」
「ええ、私を護衛してほしいのです。天ノ都から馬で往復できますから日帰り予定です」
天ノ都が見える崖の上に行きたいのだと言う。
「妹が殺され、天ノ都が壊されるのをハンターの方たちと私が見た所です」
「犯人探しですか?」
「遅いですよ? でも、誰かが糸を引いているのは分かります……あれが鬼の離反を滑らかにしたのですから。誰が? 鬼が? でも、私は……誰に踊らされたのか? 分からないことだらけですよ? 実際、アカシラ殿にも話を伺ってみたいですね」
話を聞こうにも間が悪く聞けるところに彼女はいない。
「供養も兼ねて……せっかく迎えた新しい年をそこで見たいと思ったのです」
「……分かりました。出発は?」
「そうですね……早朝、丑三つ時」
「それ、早朝?」
「馬使っても私の技量からは早々早く走れませんし、深夜出発ですね」
「……寒そうですね」
「冬ですから」
にこやかに立ち去る紅葉の表情に寂しそうな物を職員は見つけた。
「妹さんが殺された現場。弱いとはいえ巫子という役割があるのにスメラギ様の危機にそばにいなかった負い目……」
悲劇の連鎖を止められたのは、紅葉がとどまったこともあるが、依頼に関わったハンターのお蔭だろうなと職員は思い唇をかんだ。
リプレイ本文
●夜の空の下
「さて、出発ですね」
紅葉は道の脇にある岩を見つめ、寂しそうな表情を浮かべる。
エルバッハ・リオン(ka2434)は紅葉の表情を見てそれには触れず、声を掛ける。
「半年……一年ぶりですね。紅葉さん、お久しぶりです。今回もよろしくお願いします」
エルバッハは紅葉が見ていた先を見つめる。
「紅葉さんが依頼を出して私が受けるのって初めて……あっ、別にいつも、とんでもないお方と思っているわけでは」
ミオレスカ(ka3496)は紅葉が落ち込んでいるか、元気すぎて無鉄砲かもという極端な印象が付きかかっていた。
「そうだな……あ、いや、こほん、一応護衛だが、こういうのは初めてだな……」
雪継・白亜(ka5403)は紅葉を助けたことはあっても、相手を知るような会話はあまりしたことがなかった。
「本日の護衛の一人、マリィア・バルデス(ka5848)よ、今日はよろしく」
マリィアはきりっとした顔に浅い笑みを浮かべる。
「同じくだ、よろしく」
クリスティン・ガフ(ka1090)の力強さを紅葉はまぶしく見つめる。
「今頃気付いたんだが、男は俺一人だけか……」
百鬼 雷吼(ka5697)は大きく息を吐き、気を引き締める。ハンターの能力に性別は関係ないと分かっているが、彼なりの思いもあった。
「待て! 俺は男だよ! どこをどう見たら女に見えるだよ」
鳳凰院ひりょ(ka3744)は東方の地をゆっくり見て思いにふけっていたところを現実に引き戻された。
「……すまん、人間との付き合いが薄かったから」
「……仕方がないね」
ひりょは謝罪を受け入れる。
「お前達を私がきちんと守る、安心しろ」
クリスティンが雷吼に言い、マリィアがうなずく。
「さあ、紅葉さんを守りますよ」
ミオレスカが拳を上げた所で女性陣が元気よく「おー」と言う。
「ふふっ。よろしくお願いしますね」
「待て、その、気にしたなら……話することも変わるしな、ほら……」
釈明をしようと雷吼が口を開くが、すでに女性陣は護衛の方法をあれこれまとめている。口元が笑っているので、気にしている彼をからかっている風だろう。
「俺はどっちに入ればいいんだろう」
ひりょは溜息を洩らした。
●崖の道
紅葉がいるところを本隊とし、先行する者と周囲を見る者で別れる。
道中は短いとはいえ、油断はできない。強弱様々な妖怪の出現も否定できない上、夜で視界が悪い、他に通りがかるハンターもいないだろう。
先行するクリスティンとマリィアはバイクで状況を確認する。
妖怪か動物か、時々、草木を揺らす音はする。都から近いこともあり、現状何も出ない。
トランシーバーで連絡と取りつつゆっくりと向かう。
紅葉は荷物を積んでいるためもあり、より不安定さはある。
「寒いですね……」
「しっかり着こんだよ」
「重要です。風邪を引いたら……大変ですから」
「あ……必要なら毛布膝にかけるかな?」
ひりょは首を軽く横に振った紅葉を見たが、彼女の視線は遠くにあるようだった。
「魔導バイクもかっこいいですよね」
紅葉は話を変え、白亜が乗っているバイクを見つめる。
「紅葉も乗る?」
「……そうですねぇ、そのうち考えてみましょうか」
「家臣に止められるぞ?」
「ちょっと乗ってみるなら良いでしょうけど」
雷吼とミオレスカに指摘されて紅葉は苦笑する。
「妖怪……?」
エルバッハは銃声を耳にし、注意を促した。
先行隊は見つけるとすぐに銃および、剣での攻撃のタイミングを計る。
マリィアの威嚇射撃後、クリスティンがチャージを含んだ一撃を食らわせる。
「逃がさない方がいい?」
「逃がさない」
マリィアは尋ねつつも射撃、クリスティンが近付いた妖怪を叩き斬る。
「……この先狭いから注意だな」
「紅葉も知っているだろうが、一応連絡を入れよう」
マリィアとクリスティンは先行しつつも、距離を開けないように注意を始めた。
幸い、妖怪もちょっかいを出すことはこれ以上はなかった。
人間が用心を忘れれば狙うつもりはあるのか、気配は消えなかった。
細い道も何とかぬけ、道が分かれるところに来た。
紅葉はうつろな目を道に向け、唇を噛み記憶を振り払おうと必死になる。
「紅葉さん、どっちにいきますか?」
エルバッハは淡々と尋ねる。
「上に行きましょう? 景色がいいのはそちらですし、降りるのは現地でもできますから」
上の道でたどり着ける頂上と下の道が向かう中腹。行った先でのり面を行き来はできる。勾配が急なため難しいだけだった。
「誰が、何のために?」
紅葉はポツリつぶやいた。
●白む空
崖の上は季節が良ければ風光明媚かもしれない。
まだ日は昇っていないために景色は見えていないに等しい。
「火を起こしましょう」
エルバッハとミオレスカがテキパキと行動を始めた。
「さすがに寒い」
ひりょは頬を寒さで赤くして目を瞬く。高い所にくると吹く風の冷たさがよりしみてくる。
「……俺、天ノ都、今回ゆっくり初めてみたんだよ、見分を広めたいって」
「どうでした?」
「俺、リアルブルーの東方……ここに似たような文化を持つ地域から来たんだよ」
「まあ」
「食文化は似ている……全体として昔の雰囲気だった」
「昔?」
「そう……良い悪いとか、好き嫌いとかじゃなくて……なんて言えばいいんだろう……」
「サルヴァトーレ・ロッソがあるんですから、文明は違うと分かりますよ? そもそもこちらとに西でも文化も違いますし」
紅葉は結局、サルヴァトーレ・ロッソを見ていない。
「俺……色々なところへ出向き、見分を広めたい。知らないこともたくさんあるから」
「私もそうですよ? なら、ひりょさんと情報交換ですね」
ひりょはうなずいた。歪虚との戦いも激化していくだろうから簡単なことではないが。
「……心の整理の為にちょうどいい場所か? 操られていた鬼もいたとか」
雷吼のつぶやきに紅葉はうなずく。
「そうです……どこの里の者か私にはわかりませんが。戦場はありましたから」
「だな……話に聞くところによると、ここでその妖怪が討たれたから流れが変わった。俺達鬼が日の目を見ることができた。だからこそ、墓参りや祭事をするために来たんだ」
「……そうですね」
雷吼は紅葉から離れ、枯れている茂みのあたりに向かう。死して操られ、ハンターたちに丁重に葬られた名もなき者たちのために、祈りの言葉を捧げるために。
「まだ暗いな……」
クリスティンは暗い中にぽつぽつと明かりがある町を見る。
背後がパッと明るくなる。火を起こせたところに、薪をくべ、炎を大きくしているところだ。
「荷物……神事すると聞いたが?」
「……え? え? ええっ?」
クリスティンが驚くような素っ頓狂な声が紅葉から洩れる。
「あ、すみません。まあ、元をただせばそういうものと思いますが、私がやるのはその気持ちですし」
「気持ちも重要だ。全力で、強欲に生きるには」
「……強欲ですか」
紅葉はあの日見た光景はかすかにしか残っていない。死んだ妹、ハンター、つぶされる都……飛来した巨大な影。
「ガルドブルムですか」
「……知ってるのか?」
「災厄の十三魔、強欲と呼ばれる眷属」
「ああ、愚問だな。紅葉は知識に対して貪欲と聞く」
クリスティンの言葉に、紅葉は何とも言えない笑みを浮かべる。
「私は何でも全力でこなす。強欲に生きたいと。守るなら全力で、楽しむなら全力で。神事もするなら、それに思いを誠心誠意注ぎ込む」
紅葉はクリスティンの言葉を理解し始めた。
「依頼にはどんな些細なことも限界知らず全力全開で挑む。それが私。私達ハンターの心意気、そうだろう?」
不意に話を振られたら火の回りにいるメンバーは一瞬思案顔になるが、うなずく。全力で取り組んでいるから。
ニカッと笑ったクリスティンが見回りと称し場を離れた。
「そろそろ湯を沸かさないと……」
「それだと少ないですよ、こちらも使いましょう」
いそいそと白亜が鍋に水を入れて火を掛け、別の鍋にエルバッハが湯を沸かし始める。
寒さをしのぐため、せっかくなら楽しみたいという雰囲気が伝わる。互いに持ち寄った軽食や茶の道具などが並ぶ。
紅葉は優しく眺める。
(若葉もあのくらいですよね)
一緒にいるような気がし、目頭が熱くなる。
「鬼の亡者たちは……歪虚ではなかったの? 死体は残ったと聞くが……ああ、報告書には目を通したのよ」
マリィアは周囲を見渡す。依頼の内容から状況を知ろうと、彼女は記録を読んだ。
「歪虚ではないとは思います……が、あの場にいた妖怪の物……でしょうか?」
紅葉が記憶を手繰っても不明な点は多い。亡者たちの行動の不自然さ、妖怪にその術があったのかと言うこと。
「あなたたちを率先して狙わなかったのよね? 敵なんか守りたくないって思いが残っていたんじゃないのかしら?」
マリィアの言葉に紅葉は微笑む。
「そうですね。そう考えると素敵です」
「見張りと弔いはきちんとするよ」
マリィアはブランデーを見せ、紅葉の側から離れた。
紅葉は狩衣から別の衣をまとう。重くしっかりとした布地の祭事用の物。
そして、たき火を見る。炎はそばにいる人たちの頬を赤く染める。
紅茶や緑茶の香り、コーヒーの香りが漂い、軽食も香る。
「……楽しそうですね」
「紅葉も」
白亜が手招きをする。
「あ、座ったら汚れるな」
「そうですね……座るのは後にしましょう」
さまざまな軽食を眺める。
「おにぎりですか」
「はいっ! 東方ならやはりこれです。リアルブルーにあるという醤油や味噌に惹かれたんですが、ここでもあると知りました。あ、でも、紅葉さんや雷吼さんにとっては当たり前だったかもしれませんが」
「気候で違いますからね、色々。西方の物に興味が今あります」
紅葉は先日の事を思い出す。
お茶うけにあいそうな菓子類を並べつつ、ひりょが入ってくる。温かい飲み物を渡され、彼と言わず誰もがほっとする。
「味噌汁に合う具材をぜひ知りたいです」
ミオレスカの問いかけに紅葉やひりょが答える。それぞれの好みが反映された品だった。
白亜はコーヒーを勧めつつ、「きっと面白いと思うぞ」と変わった形のスプーンを取り出し手品師のように見せる。このスプーンの上にブランデーをしみこませた角砂糖を載せ、火をつけた。
まだ闇が濃いため、青白く燃えるのが良く見える。
「まあ」
「カフェ・ロワイヤルと言ってな、まさに暗がりで楽しむ飲み方だ。それに、コーヒーだけとは違うブランデーの香りと味も楽しめる」
そして、コーヒーの中に砂糖は消える。
「より体が温まります」
紅葉はそれを飲む。
時間が来た。
山の端が白くなっていく。
紅葉は仮面と槍を手に舞う。
飾りが付いた槍は重そうに見えたが、仮面の主が憑いたのように力強く振るう。
空を裂き、天を貫く。
もし舞台ならば、踏み鳴らす音が聞こえるだろうが、ここは岩が多い崖の上。
ハンターは警護もしつつ舞を見る。
白亜はしばらく見た後、スケッチブックを取り出し描き始める。
雷吼は龍笛「松風」を取り出し載せるように吹く。
クリスティンは斬魔刀を持ち、対するように舞う。
マリィアは紅葉が想う妹に対してブランデーを捧げる、気持ちが届くようにと祈り。
エルバッハは東方で見聞きしたことが脳裏を駆けた。
ひりょは能のような舞に転移前の事、これからの未来を見た。
ミオレスカは異国の舞を見て目を輝かせつつも、紅葉の中に何か見ていた。
光が差し、天ノ都が目を覚ます。
かつてを知らずとも傷痕が痛々しく見える。まだ復興の途中であり、道は半ばだと知る。
城は立っているとはいえ、街並みはきちんとした家が建っているとはほど遠い。戦禍から外れた場所は以前のたたずまいを見せている。そのためにギャップは明らかだ。
紅葉は舞い終えた。
膝を付き、肩で息をしている。
●未来を歩む糧となる
たき火の周りで軽食を食べ、息を付く。
「何を描いていたのですか?」
「え、ええ?」
紅葉は目ざとく見つけて白亜のスケッチブックを覗きこもうとした。
「マシュマロを焼くと温かくて美味しいんですよ」
紅葉にミオレスカは差し出しつつ、何か問うような表情を見せる。
「心のうちに色々溜まっているご様子ですね……出過ぎたことかとも思いますが、ここでそれらを言ってしまえば、多少は気持ちが楽になるかも知れませんよ? もちろん、言われたことは他言しません」
エルバッハはぽつりと告げ、紅葉の表情が硬直するのを見る。
「……依頼を出してきたんだから、何かあるとは思うけれど?」
マリィアに指摘される。
「紅葉の事知りたいし……あ、もちろん、無理はしなくていい」
白亜は見上げる、紅葉の顔を。
「……妹が死んだきっかけは私……私が風邪をひかなければ、あの子はあんな行動に出なかった……あの子が無鉄砲だったのは私の育て方が間違ったから……」
ハンターは首を横に振るのが精いっぱいだ。
育てるというには近い年齢差の姉妹であり、家臣の責任にも思える。何が悪い悪くないは誰もが口をはさめない。
「……足元をすくわれたのは私の落ち度です。私なんて実力もない巫子……、都の周りから離れない……。なのに誰が私をここに来させようとしたのですか? 都の役人の誰かですか? そもそも、私なんて陥れても大したことはありません。それだと言うのに……誰が何のために。鬼の情報を知る妖怪ですって! どうして?」
エルバッハははっとする。
「……一つだけ可能性はあるんです。倉庫の時、外で話をしましたよね……それを見ていたヒトがいたら?」
倉庫から食べ物を拝借していた鬼の子らを懲らしめたときの話だ。ハンターたちも紅葉も注意をしていたため見られていないはずだ。
「人間とは限らないんですよね」
「……歪虚が?」
エルバッハはうなずく。
「俺達も戦ったけど、歪虚いたよね……西の奴らも」
ひりょが眉をひそめた。
「……どうあれ、俺は感謝しているんだぞ? 妖怪を討った事実は事実。あの後も鬼を積極的に日の当たる場所に連れて行ってくれているんだから」
雷吼は紅葉の側にしゃがみ顔見る。
「だから、何かあれば俺は力を貸す。俺の中に流れる鬼神の血にかけての誓約だ」
「駄目ですよ、そんなことを……」
「いいんだよ!」
紅葉の頭をぽふとなでるように触る。
「もう一人の当事者……アカシラ殿に会ってみたい」
紅葉はポツリ呟いた。
「いえ、難しいのは分かってますよ? だって、こちらにはいませんし……ははっ……すっきりしました! みなさんありがとうございます」
「行動すれば、かなうかもしれないぞ?」
クリスティンはにやりと笑う。
「さて、あなたが無事に戻るまでが護衛の仕事よ」
マリィアは微笑んだ。
紅葉は願いながら、種を植えた。妹と家臣が倒れた当たりと、崖の上に。
「難が転じ……実が成るように」
「さて、出発ですね」
紅葉は道の脇にある岩を見つめ、寂しそうな表情を浮かべる。
エルバッハ・リオン(ka2434)は紅葉の表情を見てそれには触れず、声を掛ける。
「半年……一年ぶりですね。紅葉さん、お久しぶりです。今回もよろしくお願いします」
エルバッハは紅葉が見ていた先を見つめる。
「紅葉さんが依頼を出して私が受けるのって初めて……あっ、別にいつも、とんでもないお方と思っているわけでは」
ミオレスカ(ka3496)は紅葉が落ち込んでいるか、元気すぎて無鉄砲かもという極端な印象が付きかかっていた。
「そうだな……あ、いや、こほん、一応護衛だが、こういうのは初めてだな……」
雪継・白亜(ka5403)は紅葉を助けたことはあっても、相手を知るような会話はあまりしたことがなかった。
「本日の護衛の一人、マリィア・バルデス(ka5848)よ、今日はよろしく」
マリィアはきりっとした顔に浅い笑みを浮かべる。
「同じくだ、よろしく」
クリスティン・ガフ(ka1090)の力強さを紅葉はまぶしく見つめる。
「今頃気付いたんだが、男は俺一人だけか……」
百鬼 雷吼(ka5697)は大きく息を吐き、気を引き締める。ハンターの能力に性別は関係ないと分かっているが、彼なりの思いもあった。
「待て! 俺は男だよ! どこをどう見たら女に見えるだよ」
鳳凰院ひりょ(ka3744)は東方の地をゆっくり見て思いにふけっていたところを現実に引き戻された。
「……すまん、人間との付き合いが薄かったから」
「……仕方がないね」
ひりょは謝罪を受け入れる。
「お前達を私がきちんと守る、安心しろ」
クリスティンが雷吼に言い、マリィアがうなずく。
「さあ、紅葉さんを守りますよ」
ミオレスカが拳を上げた所で女性陣が元気よく「おー」と言う。
「ふふっ。よろしくお願いしますね」
「待て、その、気にしたなら……話することも変わるしな、ほら……」
釈明をしようと雷吼が口を開くが、すでに女性陣は護衛の方法をあれこれまとめている。口元が笑っているので、気にしている彼をからかっている風だろう。
「俺はどっちに入ればいいんだろう」
ひりょは溜息を洩らした。
●崖の道
紅葉がいるところを本隊とし、先行する者と周囲を見る者で別れる。
道中は短いとはいえ、油断はできない。強弱様々な妖怪の出現も否定できない上、夜で視界が悪い、他に通りがかるハンターもいないだろう。
先行するクリスティンとマリィアはバイクで状況を確認する。
妖怪か動物か、時々、草木を揺らす音はする。都から近いこともあり、現状何も出ない。
トランシーバーで連絡と取りつつゆっくりと向かう。
紅葉は荷物を積んでいるためもあり、より不安定さはある。
「寒いですね……」
「しっかり着こんだよ」
「重要です。風邪を引いたら……大変ですから」
「あ……必要なら毛布膝にかけるかな?」
ひりょは首を軽く横に振った紅葉を見たが、彼女の視線は遠くにあるようだった。
「魔導バイクもかっこいいですよね」
紅葉は話を変え、白亜が乗っているバイクを見つめる。
「紅葉も乗る?」
「……そうですねぇ、そのうち考えてみましょうか」
「家臣に止められるぞ?」
「ちょっと乗ってみるなら良いでしょうけど」
雷吼とミオレスカに指摘されて紅葉は苦笑する。
「妖怪……?」
エルバッハは銃声を耳にし、注意を促した。
先行隊は見つけるとすぐに銃および、剣での攻撃のタイミングを計る。
マリィアの威嚇射撃後、クリスティンがチャージを含んだ一撃を食らわせる。
「逃がさない方がいい?」
「逃がさない」
マリィアは尋ねつつも射撃、クリスティンが近付いた妖怪を叩き斬る。
「……この先狭いから注意だな」
「紅葉も知っているだろうが、一応連絡を入れよう」
マリィアとクリスティンは先行しつつも、距離を開けないように注意を始めた。
幸い、妖怪もちょっかいを出すことはこれ以上はなかった。
人間が用心を忘れれば狙うつもりはあるのか、気配は消えなかった。
細い道も何とかぬけ、道が分かれるところに来た。
紅葉はうつろな目を道に向け、唇を噛み記憶を振り払おうと必死になる。
「紅葉さん、どっちにいきますか?」
エルバッハは淡々と尋ねる。
「上に行きましょう? 景色がいいのはそちらですし、降りるのは現地でもできますから」
上の道でたどり着ける頂上と下の道が向かう中腹。行った先でのり面を行き来はできる。勾配が急なため難しいだけだった。
「誰が、何のために?」
紅葉はポツリつぶやいた。
●白む空
崖の上は季節が良ければ風光明媚かもしれない。
まだ日は昇っていないために景色は見えていないに等しい。
「火を起こしましょう」
エルバッハとミオレスカがテキパキと行動を始めた。
「さすがに寒い」
ひりょは頬を寒さで赤くして目を瞬く。高い所にくると吹く風の冷たさがよりしみてくる。
「……俺、天ノ都、今回ゆっくり初めてみたんだよ、見分を広めたいって」
「どうでした?」
「俺、リアルブルーの東方……ここに似たような文化を持つ地域から来たんだよ」
「まあ」
「食文化は似ている……全体として昔の雰囲気だった」
「昔?」
「そう……良い悪いとか、好き嫌いとかじゃなくて……なんて言えばいいんだろう……」
「サルヴァトーレ・ロッソがあるんですから、文明は違うと分かりますよ? そもそもこちらとに西でも文化も違いますし」
紅葉は結局、サルヴァトーレ・ロッソを見ていない。
「俺……色々なところへ出向き、見分を広めたい。知らないこともたくさんあるから」
「私もそうですよ? なら、ひりょさんと情報交換ですね」
ひりょはうなずいた。歪虚との戦いも激化していくだろうから簡単なことではないが。
「……心の整理の為にちょうどいい場所か? 操られていた鬼もいたとか」
雷吼のつぶやきに紅葉はうなずく。
「そうです……どこの里の者か私にはわかりませんが。戦場はありましたから」
「だな……話に聞くところによると、ここでその妖怪が討たれたから流れが変わった。俺達鬼が日の目を見ることができた。だからこそ、墓参りや祭事をするために来たんだ」
「……そうですね」
雷吼は紅葉から離れ、枯れている茂みのあたりに向かう。死して操られ、ハンターたちに丁重に葬られた名もなき者たちのために、祈りの言葉を捧げるために。
「まだ暗いな……」
クリスティンは暗い中にぽつぽつと明かりがある町を見る。
背後がパッと明るくなる。火を起こせたところに、薪をくべ、炎を大きくしているところだ。
「荷物……神事すると聞いたが?」
「……え? え? ええっ?」
クリスティンが驚くような素っ頓狂な声が紅葉から洩れる。
「あ、すみません。まあ、元をただせばそういうものと思いますが、私がやるのはその気持ちですし」
「気持ちも重要だ。全力で、強欲に生きるには」
「……強欲ですか」
紅葉はあの日見た光景はかすかにしか残っていない。死んだ妹、ハンター、つぶされる都……飛来した巨大な影。
「ガルドブルムですか」
「……知ってるのか?」
「災厄の十三魔、強欲と呼ばれる眷属」
「ああ、愚問だな。紅葉は知識に対して貪欲と聞く」
クリスティンの言葉に、紅葉は何とも言えない笑みを浮かべる。
「私は何でも全力でこなす。強欲に生きたいと。守るなら全力で、楽しむなら全力で。神事もするなら、それに思いを誠心誠意注ぎ込む」
紅葉はクリスティンの言葉を理解し始めた。
「依頼にはどんな些細なことも限界知らず全力全開で挑む。それが私。私達ハンターの心意気、そうだろう?」
不意に話を振られたら火の回りにいるメンバーは一瞬思案顔になるが、うなずく。全力で取り組んでいるから。
ニカッと笑ったクリスティンが見回りと称し場を離れた。
「そろそろ湯を沸かさないと……」
「それだと少ないですよ、こちらも使いましょう」
いそいそと白亜が鍋に水を入れて火を掛け、別の鍋にエルバッハが湯を沸かし始める。
寒さをしのぐため、せっかくなら楽しみたいという雰囲気が伝わる。互いに持ち寄った軽食や茶の道具などが並ぶ。
紅葉は優しく眺める。
(若葉もあのくらいですよね)
一緒にいるような気がし、目頭が熱くなる。
「鬼の亡者たちは……歪虚ではなかったの? 死体は残ったと聞くが……ああ、報告書には目を通したのよ」
マリィアは周囲を見渡す。依頼の内容から状況を知ろうと、彼女は記録を読んだ。
「歪虚ではないとは思います……が、あの場にいた妖怪の物……でしょうか?」
紅葉が記憶を手繰っても不明な点は多い。亡者たちの行動の不自然さ、妖怪にその術があったのかと言うこと。
「あなたたちを率先して狙わなかったのよね? 敵なんか守りたくないって思いが残っていたんじゃないのかしら?」
マリィアの言葉に紅葉は微笑む。
「そうですね。そう考えると素敵です」
「見張りと弔いはきちんとするよ」
マリィアはブランデーを見せ、紅葉の側から離れた。
紅葉は狩衣から別の衣をまとう。重くしっかりとした布地の祭事用の物。
そして、たき火を見る。炎はそばにいる人たちの頬を赤く染める。
紅茶や緑茶の香り、コーヒーの香りが漂い、軽食も香る。
「……楽しそうですね」
「紅葉も」
白亜が手招きをする。
「あ、座ったら汚れるな」
「そうですね……座るのは後にしましょう」
さまざまな軽食を眺める。
「おにぎりですか」
「はいっ! 東方ならやはりこれです。リアルブルーにあるという醤油や味噌に惹かれたんですが、ここでもあると知りました。あ、でも、紅葉さんや雷吼さんにとっては当たり前だったかもしれませんが」
「気候で違いますからね、色々。西方の物に興味が今あります」
紅葉は先日の事を思い出す。
お茶うけにあいそうな菓子類を並べつつ、ひりょが入ってくる。温かい飲み物を渡され、彼と言わず誰もがほっとする。
「味噌汁に合う具材をぜひ知りたいです」
ミオレスカの問いかけに紅葉やひりょが答える。それぞれの好みが反映された品だった。
白亜はコーヒーを勧めつつ、「きっと面白いと思うぞ」と変わった形のスプーンを取り出し手品師のように見せる。このスプーンの上にブランデーをしみこませた角砂糖を載せ、火をつけた。
まだ闇が濃いため、青白く燃えるのが良く見える。
「まあ」
「カフェ・ロワイヤルと言ってな、まさに暗がりで楽しむ飲み方だ。それに、コーヒーだけとは違うブランデーの香りと味も楽しめる」
そして、コーヒーの中に砂糖は消える。
「より体が温まります」
紅葉はそれを飲む。
時間が来た。
山の端が白くなっていく。
紅葉は仮面と槍を手に舞う。
飾りが付いた槍は重そうに見えたが、仮面の主が憑いたのように力強く振るう。
空を裂き、天を貫く。
もし舞台ならば、踏み鳴らす音が聞こえるだろうが、ここは岩が多い崖の上。
ハンターは警護もしつつ舞を見る。
白亜はしばらく見た後、スケッチブックを取り出し描き始める。
雷吼は龍笛「松風」を取り出し載せるように吹く。
クリスティンは斬魔刀を持ち、対するように舞う。
マリィアは紅葉が想う妹に対してブランデーを捧げる、気持ちが届くようにと祈り。
エルバッハは東方で見聞きしたことが脳裏を駆けた。
ひりょは能のような舞に転移前の事、これからの未来を見た。
ミオレスカは異国の舞を見て目を輝かせつつも、紅葉の中に何か見ていた。
光が差し、天ノ都が目を覚ます。
かつてを知らずとも傷痕が痛々しく見える。まだ復興の途中であり、道は半ばだと知る。
城は立っているとはいえ、街並みはきちんとした家が建っているとはほど遠い。戦禍から外れた場所は以前のたたずまいを見せている。そのためにギャップは明らかだ。
紅葉は舞い終えた。
膝を付き、肩で息をしている。
●未来を歩む糧となる
たき火の周りで軽食を食べ、息を付く。
「何を描いていたのですか?」
「え、ええ?」
紅葉は目ざとく見つけて白亜のスケッチブックを覗きこもうとした。
「マシュマロを焼くと温かくて美味しいんですよ」
紅葉にミオレスカは差し出しつつ、何か問うような表情を見せる。
「心のうちに色々溜まっているご様子ですね……出過ぎたことかとも思いますが、ここでそれらを言ってしまえば、多少は気持ちが楽になるかも知れませんよ? もちろん、言われたことは他言しません」
エルバッハはぽつりと告げ、紅葉の表情が硬直するのを見る。
「……依頼を出してきたんだから、何かあるとは思うけれど?」
マリィアに指摘される。
「紅葉の事知りたいし……あ、もちろん、無理はしなくていい」
白亜は見上げる、紅葉の顔を。
「……妹が死んだきっかけは私……私が風邪をひかなければ、あの子はあんな行動に出なかった……あの子が無鉄砲だったのは私の育て方が間違ったから……」
ハンターは首を横に振るのが精いっぱいだ。
育てるというには近い年齢差の姉妹であり、家臣の責任にも思える。何が悪い悪くないは誰もが口をはさめない。
「……足元をすくわれたのは私の落ち度です。私なんて実力もない巫子……、都の周りから離れない……。なのに誰が私をここに来させようとしたのですか? 都の役人の誰かですか? そもそも、私なんて陥れても大したことはありません。それだと言うのに……誰が何のために。鬼の情報を知る妖怪ですって! どうして?」
エルバッハははっとする。
「……一つだけ可能性はあるんです。倉庫の時、外で話をしましたよね……それを見ていたヒトがいたら?」
倉庫から食べ物を拝借していた鬼の子らを懲らしめたときの話だ。ハンターたちも紅葉も注意をしていたため見られていないはずだ。
「人間とは限らないんですよね」
「……歪虚が?」
エルバッハはうなずく。
「俺達も戦ったけど、歪虚いたよね……西の奴らも」
ひりょが眉をひそめた。
「……どうあれ、俺は感謝しているんだぞ? 妖怪を討った事実は事実。あの後も鬼を積極的に日の当たる場所に連れて行ってくれているんだから」
雷吼は紅葉の側にしゃがみ顔見る。
「だから、何かあれば俺は力を貸す。俺の中に流れる鬼神の血にかけての誓約だ」
「駄目ですよ、そんなことを……」
「いいんだよ!」
紅葉の頭をぽふとなでるように触る。
「もう一人の当事者……アカシラ殿に会ってみたい」
紅葉はポツリ呟いた。
「いえ、難しいのは分かってますよ? だって、こちらにはいませんし……ははっ……すっきりしました! みなさんありがとうございます」
「行動すれば、かなうかもしれないぞ?」
クリスティンはにやりと笑う。
「さて、あなたが無事に戻るまでが護衛の仕事よ」
マリィアは微笑んだ。
紅葉は願いながら、種を植えた。妹と家臣が倒れた当たりと、崖の上に。
「難が転じ……実が成るように」
依頼結果
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/01/12 13:55:00 |
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相談卓 百鬼 雷吼(ka5697) 鬼|24才|男性|符術師(カードマスター) |
最終発言 2016/01/12 14:18:51 |