ゲスト
(ka0000)
クライノートの涙
マスター:大林さゆる

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~7人
- サポート
- 0~14人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/01/17 09:00
- 完成日
- 2016/01/24 02:06
このシナリオは2日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
涙の色は、なんでしょう?
ココロから、生まれるもの?
それとも、本能から生まれ出るモノ?
ワタシには、意味が分からないわ。
●
自由都市同盟。
蒸気工場都市「フマーレ」近郊に、小さな村があった。
その村は徐々にマテリアルが減少したせいなのか、今では人も住めない場所になっていた。
マテリアルの喪失に導かれるように、この村には歪虚が住みつくようになり、住人たちがどこへ消えたのかも分からず仕舞いだった。
その噂はハンター・オフィスでも知られるようになっていたが、マテリアルが減少した原因は歪虚を生み出す『何か』であった。
直接、その原因を見つけようと、マクシミリアン・ヴァイス(kz0003)が噂の村に訪れていた。
村の周囲には、数匹の『羊』が群がっていた。
「今度は『羊』か……歪虚に飲み込まれたか?」
マクシミリアンは雑魔の羊をロングソードで切り裂きながら、村の奥へと突き進む。
辿り着いた先には、古びた2階建ての工場があった。
ほとんどの建物は風化して朽ち果てていたが、北に位置する工場だけは残っていた。
「さて、何が出てくるのやら」
呟きながら、静かに工場を窺うマクシミリアン。
まずは敵を偵察して、その後に本部へと連絡するつもりでいた。
しばらくして、少年の悲鳴が響いた。
敵に気付かれないように、マクシミリアンは工場の内部へと侵入。
「……あいつか、一人で先走ったか」
妖艶な美女の姿をした青銅の人形たちが、水本 壮(みずもと・そう)を取り囲み、楽しげに笑っていた。
壮は何本も矢で射ぬかれ、傷だらけになっていた。
「美女だと思って油断したっす。一旦、引き返して態勢を取り直すのが賢明っすね」
なんとか青銅の人形からは逃げ出すことはできたものの、壮の行く手には『風のヴォイド』が浮遊していた。
「お前らのことは、本部に報告するからなー」
捨て台詞のごとく、壮はダッシュに専念して、その場から去ることができた。
「ふう、やれやれ。さすがの俺でも、あの歪虚たちには勝てないな」
壮が村の入口で立ち止まると、誰かが肩を叩いた。
突然のことに、思わず叫ぶ壮。
「ギャー!」
「相変わらずだな」
溜息交じりに言ったのは、マクシミリアンだった。
「え? マクシミリアンさん、何故こんなところに?」
「決まっているだろう。本部から偵察を頼まれてな」
どことなく怒っているような眼差しでマクシミリアンが告げた。
否、そうではなく、壮には彼が怒っているように見えたのだ。
「そっか。俺ってば、余計なことを……」
壮はどうやら噂だけ聞いて、ここまで来たようだった。
「まあ、いい。せっかく来たのだから、水本も偵察に協力しろ」
やはり機嫌が悪いのか、マクシミリアンは冷めた顔で…と思っているのは、壮だけだろう。
マクシミリアンにも感情はあるのだが、それを表に出すことは少なかった。
内心は壮のことが気掛かりであったが、マクシミリアンは顔色一つ変えずに言った。
「……おまえ一人では大変だろう。戦闘は他のハンターに任せた方が良いな」
「そうっすよね。俺なんか、足手纏いっすからね」
壮は申し訳なさそうに応えた。
「……怪我をしているな。本部に戻ったら、治癒してもらえ」
そう言いながら、マクシミリアンが踵を返すと、壮もついていくことにした。
本部まで戻った二人は、受付嬢に敵の情報を報告すると、依頼として張り出された。
「風のヴォイドが気になるな。今回のヤツは、鱗粉を撒き散らしながら攻撃してくる。接近戦になると、少し手こずるかもしれんな」
マクシミリアンがそう告げると、その事も依頼に補足されていた。
村の奥にある工場は、縦10メートル、横20メートル、高さ10メートルの建物であったが、いくつか窓があり、そこから青銅の人形が放つ矢が飛んできたり、風のヴォイドがエアカッターで攻撃してくることもあった。
そのため、一般人ではなかなか近づくことができず、退治するだけでなく調査の依頼も舞い込んできた。
「青銅の人形は『美女』の姿をしてるっす。遠くから見たら三人の美女が遊んでいたように見えたんだけど、接近しようとしたら、弓矢で攻撃してきたっすよ。あれは絶対、ハニー・トラップっすよ!」
やたらと力説する壮に、受付嬢は「そうですか」と言いながらも、『この人、単純なのかも』と思っていた。
「村の周辺や内部には、雑魔の羊が群れを成していたが、マテリアルの喪失で自然と集まった可能性が高いな。要は村の奥にいる青銅の人形だろう」
マクシミリアンはそう告げた後、控室でハンターたちを待ち続けていた。
果たして、人形たちは何を企んでいるのか。
今はまだ、誰にも分からなかった。
涙の色は、なんでしょう?
ココロから、生まれるもの?
それとも、本能から生まれ出るモノ?
ワタシには、意味が分からないわ。
●
自由都市同盟。
蒸気工場都市「フマーレ」近郊に、小さな村があった。
その村は徐々にマテリアルが減少したせいなのか、今では人も住めない場所になっていた。
マテリアルの喪失に導かれるように、この村には歪虚が住みつくようになり、住人たちがどこへ消えたのかも分からず仕舞いだった。
その噂はハンター・オフィスでも知られるようになっていたが、マテリアルが減少した原因は歪虚を生み出す『何か』であった。
直接、その原因を見つけようと、マクシミリアン・ヴァイス(kz0003)が噂の村に訪れていた。
村の周囲には、数匹の『羊』が群がっていた。
「今度は『羊』か……歪虚に飲み込まれたか?」
マクシミリアンは雑魔の羊をロングソードで切り裂きながら、村の奥へと突き進む。
辿り着いた先には、古びた2階建ての工場があった。
ほとんどの建物は風化して朽ち果てていたが、北に位置する工場だけは残っていた。
「さて、何が出てくるのやら」
呟きながら、静かに工場を窺うマクシミリアン。
まずは敵を偵察して、その後に本部へと連絡するつもりでいた。
しばらくして、少年の悲鳴が響いた。
敵に気付かれないように、マクシミリアンは工場の内部へと侵入。
「……あいつか、一人で先走ったか」
妖艶な美女の姿をした青銅の人形たちが、水本 壮(みずもと・そう)を取り囲み、楽しげに笑っていた。
壮は何本も矢で射ぬかれ、傷だらけになっていた。
「美女だと思って油断したっす。一旦、引き返して態勢を取り直すのが賢明っすね」
なんとか青銅の人形からは逃げ出すことはできたものの、壮の行く手には『風のヴォイド』が浮遊していた。
「お前らのことは、本部に報告するからなー」
捨て台詞のごとく、壮はダッシュに専念して、その場から去ることができた。
「ふう、やれやれ。さすがの俺でも、あの歪虚たちには勝てないな」
壮が村の入口で立ち止まると、誰かが肩を叩いた。
突然のことに、思わず叫ぶ壮。
「ギャー!」
「相変わらずだな」
溜息交じりに言ったのは、マクシミリアンだった。
「え? マクシミリアンさん、何故こんなところに?」
「決まっているだろう。本部から偵察を頼まれてな」
どことなく怒っているような眼差しでマクシミリアンが告げた。
否、そうではなく、壮には彼が怒っているように見えたのだ。
「そっか。俺ってば、余計なことを……」
壮はどうやら噂だけ聞いて、ここまで来たようだった。
「まあ、いい。せっかく来たのだから、水本も偵察に協力しろ」
やはり機嫌が悪いのか、マクシミリアンは冷めた顔で…と思っているのは、壮だけだろう。
マクシミリアンにも感情はあるのだが、それを表に出すことは少なかった。
内心は壮のことが気掛かりであったが、マクシミリアンは顔色一つ変えずに言った。
「……おまえ一人では大変だろう。戦闘は他のハンターに任せた方が良いな」
「そうっすよね。俺なんか、足手纏いっすからね」
壮は申し訳なさそうに応えた。
「……怪我をしているな。本部に戻ったら、治癒してもらえ」
そう言いながら、マクシミリアンが踵を返すと、壮もついていくことにした。
本部まで戻った二人は、受付嬢に敵の情報を報告すると、依頼として張り出された。
「風のヴォイドが気になるな。今回のヤツは、鱗粉を撒き散らしながら攻撃してくる。接近戦になると、少し手こずるかもしれんな」
マクシミリアンがそう告げると、その事も依頼に補足されていた。
村の奥にある工場は、縦10メートル、横20メートル、高さ10メートルの建物であったが、いくつか窓があり、そこから青銅の人形が放つ矢が飛んできたり、風のヴォイドがエアカッターで攻撃してくることもあった。
そのため、一般人ではなかなか近づくことができず、退治するだけでなく調査の依頼も舞い込んできた。
「青銅の人形は『美女』の姿をしてるっす。遠くから見たら三人の美女が遊んでいたように見えたんだけど、接近しようとしたら、弓矢で攻撃してきたっすよ。あれは絶対、ハニー・トラップっすよ!」
やたらと力説する壮に、受付嬢は「そうですか」と言いながらも、『この人、単純なのかも』と思っていた。
「村の周辺や内部には、雑魔の羊が群れを成していたが、マテリアルの喪失で自然と集まった可能性が高いな。要は村の奥にいる青銅の人形だろう」
マクシミリアンはそう告げた後、控室でハンターたちを待ち続けていた。
果たして、人形たちは何を企んでいるのか。
今はまだ、誰にも分からなかった。
リプレイ本文
自由都市同盟。
マテリアルの喪失により、歪虚たちが住みついた小さな村に、依頼を受けたハンターたちの姿があった。
「この村の工場では、鉱石の加工が行われていたのかしら。もしかして、青い機械的なもの?」
霧崎 灯華(ka5945)は依頼に興味を持ち参加することにした。
ハンター・オフィスにてマクシミリアン・ヴァイス(kz0003)から依頼内容を聞くことができたが、超級まりお(ka0824)は情報収集は基本とばかりに前もって聞き込みをしていた。
「村に歪虚たちが住み着くようになったのは、およそ一週間前だって。定期的に行商に来ていた商人から聞いた話だと、一ヶ月前くらいは住人もいたらしいよ。マクシミリアンさんが偵察に来た頃には住人は全ていなかったみたい」
まりおは眼前に見える朽ち果てた建物を見据えた。残っているのは、工場だけだ。
「ん……僕も気になってマクシミリアンさんに聞いてみたけど、鉱石を扱っていた工場らしいよ」
ナタナエル(ka3884)は工場の看板に『クライノート』と描かれていたことに気付き、それが『宝石』を意味すると推察して、歪虚を産み出す『何か』は鉱物系ではと思っていた。
テノール(ka5676)は青銅の人形が気になっていたが、調査をするにしても、まずは敵を倒す必要があった。
「まずは陽動班と侵入班に別れて、北に位置する工場まで進むことにしよう」
その案に皆が賛成して、すぐさま戦闘開始となった。
テノールはマクシミリアンから借りた村の地図を参考にして、最短ルートで目的地を目指すことにした。
村の建物はほとんど崩れ落ちており、陽動班が動き出すと、物陰から雑魔の羊が魔法の矢で攻撃してきた。
「さぁ、レースのお時間だ。僕の運転テクに付いてこられるかな?」
魔導バイク「グリンガレット」に騎乗した仁川 リア(ka3483)はエンジン音を轟かせて、北へと走っていく。
リアはバイクに乗りながら敵の攻撃を回避して、さらに先へと進む。
「遊びは終わりよ。仲間の邪魔はさせないわ」
白金 綾瀬(ka0774)は魔導バイク「ゲイル」に乗り、試作型魔導銃「狂乱せしアルコル」改で羊を確実に仕留めていく。
そして、戦馬に騎乗して村の入口から駆けてくるのはナタナエル…リヤンワイヤーを振るうと、羊が一匹消滅していく。
リアたちが雑魔の羊を十匹ほど倒した頃には、侵入班のテノール、まりお、ヒズミ・クロフォード(ka4246)は工場付近まで辿り着くことができた。
だが、工場の窓から綾瀬たち目掛けて矢が飛び、時折、風の刃がテノールを狙い、飛んでくる。回避して矢を潜り抜けると、テノールは工場の壁に隠れて仲間と連絡を取った。
「こちらテノール、工場に到着」
トランシーバーで陽動班に連絡すると、リアから応答があった。
「了解。僕たちも工場に向うよ」
リアは綾瀬とナタナエルに声をかけると、北へ目指して走り出した。
●
「上等だ! 願ってもないチャンスだ」
リアが叫ぶ。
工場に接近すると、一階の窓から『風のヴォイド』が浮遊しているのが見えた。外へ出る様子はなく、窓際で漂っていた。
リアは工場の外からボウ「レッドコメット」で矢を放つと、内部にいる青い物体…風のヴォイドに突き刺さった。
「この機会は外さないわよ」
綾瀬は銃を構え『レイターコールドショット』を放った。冷気を纏った弾丸が敵に命中し、風のヴォイドは床から1M付近で浮遊したまま、身動きが取れなくなった。
馬から降りたナタナエルは『立体攻撃』で工場の壁を蹴って窓から飛び込み、風のヴォイドを目掛け『部位狙い』でローゼンメッサーを突き立てた。鋭敏視覚と隠密の技があるナタナエルは、敵に気配を悟られることなく、一連の行動に成功。
風のヴォイドは、ナタナエルたちの攻撃を受けても、動きが取れずに浮遊したままだ。工場内部には、まだ青銅の人形三体、風のヴォイド一体が残っているはず。
そう思ったナタナエルは四方八方から狙われない位置に潜み、一階の窓から素早く外へ出ると、テノールに連絡。
「風のヴォイド一体を一階の窓際で発見したよ。中にいる他のヴォイドに気付かれないように、外でしばらく待機しているよ」
『了解。僕たちは青銅の人形たちの動向を探っている最中だ。何か分かったら、また連絡してくれ』
テノールは工場内部にも、雑魔の羊が潜んでいる可能性も考えて、慎重に行動していた。
「青銅の人形って、何か能力があるのかな。いきなり倒すより、確認してからでも遅くないかも」
まりおが小声で言うと、テノールが呟いた。
「青銅は金属……『嫉妬』の歪虚だったら、その特徴があるはず」
それを聞いて、ヒズミは思い出したように言った。
「嫉妬デスカ。金属のような外殻を持つ歪虚で、何かの遊びに執着することもあるラシイデス。人形が歪虚化した『何か』が、ここにある気がするンデス」
「それを見つけるためにも、歪虚を倒すのが先決か……仕方がない」
テノールが工場の入口に辿り着くと、行く手を阻むように雑魔の羊たちが待ち構えていた。
「良い具合に並んでるな」
テノールは『震撃』を繰り出すと、その勢いで羊を弾き飛ばし、工場の内部へと移動していく。
「ほいほーい、ちゃっちゃとやっちゃうよ」
軽快な足並みで、まりおは『飛燕』を発動させ、試作光斬刀「MURASAMEブレイド」で羊を切り裂いていく。敵は回避する余裕もなく、消滅。その隙にヒズミは仕込杖で羊を叩き、入口から中へと入ることができた。
「こういう時は近接武器が役に立ちマスネ」
ヒズミは銃の使い手であったが、護身用に仕込杖を装備していたのだ。
テノールたちは工場の中に潜入すると、二階へと続く階段の後ろに隠れて、敵の動向を探っていた。
一階の窓際には、身動きが取れない風のヴォイドが浮遊していたが、しばらくすると青銅の人形が三体、楽しそうに笑いながら二階から降りてきた。
青銅の人形たちは行動不能になった風のヴォイドを指でつっついて遊んでいたが、すぐに飽きて、また二階へと上り始めた。踊り場まで行くと、部屋の隅から風のヴォイドが姿を現して、鱗粉を撒き散らしていた。もう一体の風のヴォイドが行動不能になっていたせいか、2階にいた風のヴォイドが警戒していたのだ。
しばらくすると、行動阻害の効果が切れた風のヴォイドがテノールたちに接近してきた。
ヒズミは少し離れた場所にあった古びた機材の後ろに隠れて様子を窺っていた。
2階に居る人形たちは、こちらの気配に気付いていない。
接近してくる風のヴォイドに、テノールは動じていなかった。
「ここで何をしている?」
呟くようにテノールが問うと、風のヴォイドはエアカッターで攻撃してきた。
「それが返答か。ならば問答無用だな」
拳を突き出し、射程のある『青龍翔咬波』を放つテノール。
風のヴォイドは水飛沫のように飛び散り、消滅していく。
一階の階段裏での攻撃に、青銅の人形たちは特に気にしていなかった。
人形たちは2階の窓から外を眺めていた。
●
一方、その頃。
「リア!」
綾瀬は奇跡的に巻き込まれることはなかったが、リアがシールド「フンケルン」で敵の矢を受け流すと、雑魔の羊たちはバイクで引かれるのを恐れて、リアにしがみ付くように纏わりついてきた。
「こいつら、捨て身で来たのか?!」
リアはしがみ付いてくる羊たちをテブテジュ「海魔」で払い除けるが、5匹の羊はリアに密着したまま至近距離から魔法の矢を繰り出す。
バイクに騎乗していたリアは抵抗を試みるが、死角から放たれた矢が胴体に突き刺さる。その矢は工場の2階にいた青銅の人形が放った矢であった。血飛沫が飛びながらも、リアは体勢を整えるが、かなりのダメージを受けていた。
「敵も必死という訳か……だったら、僕も意地の見せ所だ」
リアは重い傷を負いながらも、怒髪天をつく勢いでバイクを走らせた。
「敵の狙いは僕だ! 今のうちに!」
「任せて。一匹たりとも、逃しはしないわ」
綾瀬は『高加速射撃』で狙い撃ち、正確に羊を仕留めていく。
工場付近にいたナタナエルは肉迫してくる羊をリヤンワイヤーで断ち斬る。
「あたしも加勢するわ」
灯華はバイクの音を頼りに陽動班に追いつき、『胡蝶符』を投げつけると、羊が一匹消え去っていく。
「他にもいないか、確認してから工場へ向いましょう」
綾瀬の懸念通り、工場の周辺に羊が隠れていたが、仲間と連携して全て倒すことができた。
「リアさん、大丈夫かな」
ナタナエルが心配そうにリアの元へと駆け寄る。
「……これくらい、なんてことないよ。普通の攻撃くらいならできるから」
リアは重体になりながらも、トランシーバーで侵入班へ連絡。
「こちら仁川、今から陽動班も工場に潜入するよ」
『了解だ。青銅の人形は『嫉妬』の眷属かもしれない。倒したら、調査するつもりだ』
テノールから返答があり、ナタナエルたちは窓から工場の中へと入ることにした。
●
ハンターたちが工場の1階に全員揃うと、ヒズミは遊撃するため、カービン「ルブルムレクスRK3」を構え、踊り場にいる青銅の人形に狙いを定めて『レイターコールドショット』を放った。
「これが決まれば、仲間も接近して戦えるハズデス」
弾が脚に当たると、小さな傷から冷気が広がり、青銅の人形が1体、その場で行動不能になった。
「ヒズミさん、ありがとさーん」
まりおは前衛に立ち、階段にいる青銅の人形に『フェイントアタック』を繰り出し、翻弄する。
「風のヴォイドを狙えば、他の敵にも当たるか」
テノールはナックル「セルモクラスィア」で『青龍翔咬波』を解き放つ。
「青龍よ、喰い破れ!」
掌から直線上にマテリアルが迸り、青銅の人形2体と風のヴォイド1体を攻撃……ダメージは受けたようだが、まだ倒れる気配はなかった。
「風のヴォイドは絶対に逃がさないわよ」
綾瀬は『レイターコールドショット』で狙い撃つと、風のヴォイドは2階の通路で身動きが取れなくなっていた。
ナタナエルは『立体攻撃』からの『部位狙い』で前方にいる青銅の人形に攻撃をしかけるが、敵は不敵な笑みを浮かべ、立ち尽くしていた。
「なんなの、痛みを感じないのかしら」
灯華が『火炎符』で攻撃をしかけるが、青銅の人形は涼しげな顔をしていた。リアは重体でスキルが使えないため、通常攻撃で後方から弓で援護していた。
「僕だって、できることはあるんだ。負けはしないよ」
痛みに耐えながらも、リアは未来を信じて戦い続けていた。
ヒズミは銃を構えて機材の背後に隠れていたが、2階の通路にいた青銅の人形が真上から弓で攻撃をしかけてきた。人形たちにとって、ヒズミは自分の存在を脅かす存在だと判断したのか、風のヴォイドもエアカッターを放ってきた。
矢がヒズミの身体を貫き、左腕は風の刃で切り裂かれ、その衝撃でヒズミは体勢を崩しそうになった。だが、闘いの最中で倒れる訳にはいかないと、懸命に立ち上がろうとしていた。
「……まだ、やらなければならないコトガ、アルンデス」
ヒズミは重い傷を負ってしまったが、後悔はしていなかった。敵が自分をターゲットにすれば、仲間は闘い易くなるからだ。
「恩にきるわ、ヒズミ」
綾瀬はすかさず『高加速射撃』で2階にいる風のヴォイドを狙い撃つと、敵の身体は弾け飛び、小さな物体だけが浮遊していた。
小さくなった風のヴォイドは、ナタナエルが『立体攻撃』による『部位狙い』で仕留めると、崩れ去るように消えていく。
「残りは青銅の人形3体だ」
テノールが敵に接近して『震撃』を放つと、人形が1体、砕け散った。
「よっしゃ、もういっちょ」
まりおが『フェイントアタック』を繰り出した途端、青銅の人形がまたもや1体、砕け散る。
灯華は後衛から『胡蝶符』を飛ばすと、青銅の人形は蝶のような光弾に変化した符に貫かれ、粉々になった。
残ったのは、三つの部品だけだった。
それに気が付いた灯華が、部品を拾い上げる。
「これも何かの証拠になるかもしれないわね」
「まるで、涙の形に似ているね」
戦闘が終わり、元の表情に戻ったナタナエルは、ふと思った。
(涙は生体構造による眼球保護の為の体液だ。構造上生物と同じであるならば、涙も流れよう。ただ、人の場合は生理現象でもあるし、感情由来でも流れる。嬉しいと、哀しいと、悔しいと、おかしいと、感情と共に泣くのは人だけだ。不思議だろう? だから、人は面白い)
ナタナエルは消え去った人形たちに話しかけるように、涙の形をした部品を見つめていた。
●
「ほいじゃ、調査開始~」
まりおは『マテリアルヒーリング』で自身の怪我を回復させ、工場の中を歩き回っていた。
ハンターたちは思い思いに調査していたが、灯華は『占術』を使い、自分の読みが当たっているどうか、確認していた。
「天井裏、二重壁、隠し扉、地下室。どこかに何かあるはずよ」
「地下室はなかったわ」
綾瀬は一階のどこかに変わった所がないか調べていたが、特に何も見つからなかった。
「青銅の人形がいた場所って、どこだっけ?」
まりおの疑問に、ナタナエルが応えた。
「人形たちは二階にいることが多かったように思えるよ」
「そっか。だとしたら、天井裏ね」
灯華の閃きにより、天井裏に上がったのは、テノールとナタナエル。
ヒズミは重体であったが、二人が調査し易いように、部屋にあったテーブルの上に立ち、ハンディLEDライトで天井を照らしていた。
「何か見つかりマシタカ?」
「あったぞ。これか?」
テノールは20センチほどの銅像を見つけた。
「三つあるね。これを本部に持っていけば、何か分かるかもしれないね」
ナタナエルが二つ抱え、テノールが一つ持って、天井裏から降りてきた。
「これは……乙女の銅像デスネ。天井裏にあったのが気にナリマス」
ヒズミがそう思うのも無理はない。青銅の人形たちが護っていた物かもしれないからだ。
その後、ハンターたちは乙女の銅像三つと、青銅の部品を三つを本部へと持ち込んだ。
「あたしの予想だと、この三つは過去、現在、未来を意味しているわ」
灯華の予想は当たっていた。
本部の職員が調査したところ、三つは運命の時間を表し、青銅の部品を発見したことで、村の土地は少しずつマテリアルが回復したようだった。
その兆しとして、一週間後には、村にも自然と野鳥が来るようになった。
マテリアルの喪失により、歪虚たちが住みついた小さな村に、依頼を受けたハンターたちの姿があった。
「この村の工場では、鉱石の加工が行われていたのかしら。もしかして、青い機械的なもの?」
霧崎 灯華(ka5945)は依頼に興味を持ち参加することにした。
ハンター・オフィスにてマクシミリアン・ヴァイス(kz0003)から依頼内容を聞くことができたが、超級まりお(ka0824)は情報収集は基本とばかりに前もって聞き込みをしていた。
「村に歪虚たちが住み着くようになったのは、およそ一週間前だって。定期的に行商に来ていた商人から聞いた話だと、一ヶ月前くらいは住人もいたらしいよ。マクシミリアンさんが偵察に来た頃には住人は全ていなかったみたい」
まりおは眼前に見える朽ち果てた建物を見据えた。残っているのは、工場だけだ。
「ん……僕も気になってマクシミリアンさんに聞いてみたけど、鉱石を扱っていた工場らしいよ」
ナタナエル(ka3884)は工場の看板に『クライノート』と描かれていたことに気付き、それが『宝石』を意味すると推察して、歪虚を産み出す『何か』は鉱物系ではと思っていた。
テノール(ka5676)は青銅の人形が気になっていたが、調査をするにしても、まずは敵を倒す必要があった。
「まずは陽動班と侵入班に別れて、北に位置する工場まで進むことにしよう」
その案に皆が賛成して、すぐさま戦闘開始となった。
テノールはマクシミリアンから借りた村の地図を参考にして、最短ルートで目的地を目指すことにした。
村の建物はほとんど崩れ落ちており、陽動班が動き出すと、物陰から雑魔の羊が魔法の矢で攻撃してきた。
「さぁ、レースのお時間だ。僕の運転テクに付いてこられるかな?」
魔導バイク「グリンガレット」に騎乗した仁川 リア(ka3483)はエンジン音を轟かせて、北へと走っていく。
リアはバイクに乗りながら敵の攻撃を回避して、さらに先へと進む。
「遊びは終わりよ。仲間の邪魔はさせないわ」
白金 綾瀬(ka0774)は魔導バイク「ゲイル」に乗り、試作型魔導銃「狂乱せしアルコル」改で羊を確実に仕留めていく。
そして、戦馬に騎乗して村の入口から駆けてくるのはナタナエル…リヤンワイヤーを振るうと、羊が一匹消滅していく。
リアたちが雑魔の羊を十匹ほど倒した頃には、侵入班のテノール、まりお、ヒズミ・クロフォード(ka4246)は工場付近まで辿り着くことができた。
だが、工場の窓から綾瀬たち目掛けて矢が飛び、時折、風の刃がテノールを狙い、飛んでくる。回避して矢を潜り抜けると、テノールは工場の壁に隠れて仲間と連絡を取った。
「こちらテノール、工場に到着」
トランシーバーで陽動班に連絡すると、リアから応答があった。
「了解。僕たちも工場に向うよ」
リアは綾瀬とナタナエルに声をかけると、北へ目指して走り出した。
●
「上等だ! 願ってもないチャンスだ」
リアが叫ぶ。
工場に接近すると、一階の窓から『風のヴォイド』が浮遊しているのが見えた。外へ出る様子はなく、窓際で漂っていた。
リアは工場の外からボウ「レッドコメット」で矢を放つと、内部にいる青い物体…風のヴォイドに突き刺さった。
「この機会は外さないわよ」
綾瀬は銃を構え『レイターコールドショット』を放った。冷気を纏った弾丸が敵に命中し、風のヴォイドは床から1M付近で浮遊したまま、身動きが取れなくなった。
馬から降りたナタナエルは『立体攻撃』で工場の壁を蹴って窓から飛び込み、風のヴォイドを目掛け『部位狙い』でローゼンメッサーを突き立てた。鋭敏視覚と隠密の技があるナタナエルは、敵に気配を悟られることなく、一連の行動に成功。
風のヴォイドは、ナタナエルたちの攻撃を受けても、動きが取れずに浮遊したままだ。工場内部には、まだ青銅の人形三体、風のヴォイド一体が残っているはず。
そう思ったナタナエルは四方八方から狙われない位置に潜み、一階の窓から素早く外へ出ると、テノールに連絡。
「風のヴォイド一体を一階の窓際で発見したよ。中にいる他のヴォイドに気付かれないように、外でしばらく待機しているよ」
『了解。僕たちは青銅の人形たちの動向を探っている最中だ。何か分かったら、また連絡してくれ』
テノールは工場内部にも、雑魔の羊が潜んでいる可能性も考えて、慎重に行動していた。
「青銅の人形って、何か能力があるのかな。いきなり倒すより、確認してからでも遅くないかも」
まりおが小声で言うと、テノールが呟いた。
「青銅は金属……『嫉妬』の歪虚だったら、その特徴があるはず」
それを聞いて、ヒズミは思い出したように言った。
「嫉妬デスカ。金属のような外殻を持つ歪虚で、何かの遊びに執着することもあるラシイデス。人形が歪虚化した『何か』が、ここにある気がするンデス」
「それを見つけるためにも、歪虚を倒すのが先決か……仕方がない」
テノールが工場の入口に辿り着くと、行く手を阻むように雑魔の羊たちが待ち構えていた。
「良い具合に並んでるな」
テノールは『震撃』を繰り出すと、その勢いで羊を弾き飛ばし、工場の内部へと移動していく。
「ほいほーい、ちゃっちゃとやっちゃうよ」
軽快な足並みで、まりおは『飛燕』を発動させ、試作光斬刀「MURASAMEブレイド」で羊を切り裂いていく。敵は回避する余裕もなく、消滅。その隙にヒズミは仕込杖で羊を叩き、入口から中へと入ることができた。
「こういう時は近接武器が役に立ちマスネ」
ヒズミは銃の使い手であったが、護身用に仕込杖を装備していたのだ。
テノールたちは工場の中に潜入すると、二階へと続く階段の後ろに隠れて、敵の動向を探っていた。
一階の窓際には、身動きが取れない風のヴォイドが浮遊していたが、しばらくすると青銅の人形が三体、楽しそうに笑いながら二階から降りてきた。
青銅の人形たちは行動不能になった風のヴォイドを指でつっついて遊んでいたが、すぐに飽きて、また二階へと上り始めた。踊り場まで行くと、部屋の隅から風のヴォイドが姿を現して、鱗粉を撒き散らしていた。もう一体の風のヴォイドが行動不能になっていたせいか、2階にいた風のヴォイドが警戒していたのだ。
しばらくすると、行動阻害の効果が切れた風のヴォイドがテノールたちに接近してきた。
ヒズミは少し離れた場所にあった古びた機材の後ろに隠れて様子を窺っていた。
2階に居る人形たちは、こちらの気配に気付いていない。
接近してくる風のヴォイドに、テノールは動じていなかった。
「ここで何をしている?」
呟くようにテノールが問うと、風のヴォイドはエアカッターで攻撃してきた。
「それが返答か。ならば問答無用だな」
拳を突き出し、射程のある『青龍翔咬波』を放つテノール。
風のヴォイドは水飛沫のように飛び散り、消滅していく。
一階の階段裏での攻撃に、青銅の人形たちは特に気にしていなかった。
人形たちは2階の窓から外を眺めていた。
●
一方、その頃。
「リア!」
綾瀬は奇跡的に巻き込まれることはなかったが、リアがシールド「フンケルン」で敵の矢を受け流すと、雑魔の羊たちはバイクで引かれるのを恐れて、リアにしがみ付くように纏わりついてきた。
「こいつら、捨て身で来たのか?!」
リアはしがみ付いてくる羊たちをテブテジュ「海魔」で払い除けるが、5匹の羊はリアに密着したまま至近距離から魔法の矢を繰り出す。
バイクに騎乗していたリアは抵抗を試みるが、死角から放たれた矢が胴体に突き刺さる。その矢は工場の2階にいた青銅の人形が放った矢であった。血飛沫が飛びながらも、リアは体勢を整えるが、かなりのダメージを受けていた。
「敵も必死という訳か……だったら、僕も意地の見せ所だ」
リアは重い傷を負いながらも、怒髪天をつく勢いでバイクを走らせた。
「敵の狙いは僕だ! 今のうちに!」
「任せて。一匹たりとも、逃しはしないわ」
綾瀬は『高加速射撃』で狙い撃ち、正確に羊を仕留めていく。
工場付近にいたナタナエルは肉迫してくる羊をリヤンワイヤーで断ち斬る。
「あたしも加勢するわ」
灯華はバイクの音を頼りに陽動班に追いつき、『胡蝶符』を投げつけると、羊が一匹消え去っていく。
「他にもいないか、確認してから工場へ向いましょう」
綾瀬の懸念通り、工場の周辺に羊が隠れていたが、仲間と連携して全て倒すことができた。
「リアさん、大丈夫かな」
ナタナエルが心配そうにリアの元へと駆け寄る。
「……これくらい、なんてことないよ。普通の攻撃くらいならできるから」
リアは重体になりながらも、トランシーバーで侵入班へ連絡。
「こちら仁川、今から陽動班も工場に潜入するよ」
『了解だ。青銅の人形は『嫉妬』の眷属かもしれない。倒したら、調査するつもりだ』
テノールから返答があり、ナタナエルたちは窓から工場の中へと入ることにした。
●
ハンターたちが工場の1階に全員揃うと、ヒズミは遊撃するため、カービン「ルブルムレクスRK3」を構え、踊り場にいる青銅の人形に狙いを定めて『レイターコールドショット』を放った。
「これが決まれば、仲間も接近して戦えるハズデス」
弾が脚に当たると、小さな傷から冷気が広がり、青銅の人形が1体、その場で行動不能になった。
「ヒズミさん、ありがとさーん」
まりおは前衛に立ち、階段にいる青銅の人形に『フェイントアタック』を繰り出し、翻弄する。
「風のヴォイドを狙えば、他の敵にも当たるか」
テノールはナックル「セルモクラスィア」で『青龍翔咬波』を解き放つ。
「青龍よ、喰い破れ!」
掌から直線上にマテリアルが迸り、青銅の人形2体と風のヴォイド1体を攻撃……ダメージは受けたようだが、まだ倒れる気配はなかった。
「風のヴォイドは絶対に逃がさないわよ」
綾瀬は『レイターコールドショット』で狙い撃つと、風のヴォイドは2階の通路で身動きが取れなくなっていた。
ナタナエルは『立体攻撃』からの『部位狙い』で前方にいる青銅の人形に攻撃をしかけるが、敵は不敵な笑みを浮かべ、立ち尽くしていた。
「なんなの、痛みを感じないのかしら」
灯華が『火炎符』で攻撃をしかけるが、青銅の人形は涼しげな顔をしていた。リアは重体でスキルが使えないため、通常攻撃で後方から弓で援護していた。
「僕だって、できることはあるんだ。負けはしないよ」
痛みに耐えながらも、リアは未来を信じて戦い続けていた。
ヒズミは銃を構えて機材の背後に隠れていたが、2階の通路にいた青銅の人形が真上から弓で攻撃をしかけてきた。人形たちにとって、ヒズミは自分の存在を脅かす存在だと判断したのか、風のヴォイドもエアカッターを放ってきた。
矢がヒズミの身体を貫き、左腕は風の刃で切り裂かれ、その衝撃でヒズミは体勢を崩しそうになった。だが、闘いの最中で倒れる訳にはいかないと、懸命に立ち上がろうとしていた。
「……まだ、やらなければならないコトガ、アルンデス」
ヒズミは重い傷を負ってしまったが、後悔はしていなかった。敵が自分をターゲットにすれば、仲間は闘い易くなるからだ。
「恩にきるわ、ヒズミ」
綾瀬はすかさず『高加速射撃』で2階にいる風のヴォイドを狙い撃つと、敵の身体は弾け飛び、小さな物体だけが浮遊していた。
小さくなった風のヴォイドは、ナタナエルが『立体攻撃』による『部位狙い』で仕留めると、崩れ去るように消えていく。
「残りは青銅の人形3体だ」
テノールが敵に接近して『震撃』を放つと、人形が1体、砕け散った。
「よっしゃ、もういっちょ」
まりおが『フェイントアタック』を繰り出した途端、青銅の人形がまたもや1体、砕け散る。
灯華は後衛から『胡蝶符』を飛ばすと、青銅の人形は蝶のような光弾に変化した符に貫かれ、粉々になった。
残ったのは、三つの部品だけだった。
それに気が付いた灯華が、部品を拾い上げる。
「これも何かの証拠になるかもしれないわね」
「まるで、涙の形に似ているね」
戦闘が終わり、元の表情に戻ったナタナエルは、ふと思った。
(涙は生体構造による眼球保護の為の体液だ。構造上生物と同じであるならば、涙も流れよう。ただ、人の場合は生理現象でもあるし、感情由来でも流れる。嬉しいと、哀しいと、悔しいと、おかしいと、感情と共に泣くのは人だけだ。不思議だろう? だから、人は面白い)
ナタナエルは消え去った人形たちに話しかけるように、涙の形をした部品を見つめていた。
●
「ほいじゃ、調査開始~」
まりおは『マテリアルヒーリング』で自身の怪我を回復させ、工場の中を歩き回っていた。
ハンターたちは思い思いに調査していたが、灯華は『占術』を使い、自分の読みが当たっているどうか、確認していた。
「天井裏、二重壁、隠し扉、地下室。どこかに何かあるはずよ」
「地下室はなかったわ」
綾瀬は一階のどこかに変わった所がないか調べていたが、特に何も見つからなかった。
「青銅の人形がいた場所って、どこだっけ?」
まりおの疑問に、ナタナエルが応えた。
「人形たちは二階にいることが多かったように思えるよ」
「そっか。だとしたら、天井裏ね」
灯華の閃きにより、天井裏に上がったのは、テノールとナタナエル。
ヒズミは重体であったが、二人が調査し易いように、部屋にあったテーブルの上に立ち、ハンディLEDライトで天井を照らしていた。
「何か見つかりマシタカ?」
「あったぞ。これか?」
テノールは20センチほどの銅像を見つけた。
「三つあるね。これを本部に持っていけば、何か分かるかもしれないね」
ナタナエルが二つ抱え、テノールが一つ持って、天井裏から降りてきた。
「これは……乙女の銅像デスネ。天井裏にあったのが気にナリマス」
ヒズミがそう思うのも無理はない。青銅の人形たちが護っていた物かもしれないからだ。
その後、ハンターたちは乙女の銅像三つと、青銅の部品を三つを本部へと持ち込んだ。
「あたしの予想だと、この三つは過去、現在、未来を意味しているわ」
灯華の予想は当たっていた。
本部の職員が調査したところ、三つは運命の時間を表し、青銅の部品を発見したことで、村の土地は少しずつマテリアルが回復したようだった。
その兆しとして、一週間後には、村にも自然と野鳥が来るようになった。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/01/16 22:49:15 |
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【相談卓】 仁川 リア(ka3483) 人間(クリムゾンウェスト)|16才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2016/01/17 01:26:00 |