【命魔】Strike the Road

マスター:剣崎宗二

シナリオ形態
ショート
難易度
難しい
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
6~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
7日
締切
2016/01/16 07:30
完成日
2016/01/20 23:29

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●35年前

「ねぇアレクサンドル。今日は予定あったの?」
 白いコートの、快活そうな少女が、研究所を出て行くアレクサンドルを呼び止める。
「ああ、ちょっとウィリアムのじーさんの足の調子を見に、な。マイレスが運転してくれるそうだから、心配は要らん。…ただ、すまんが、アインの世話は任せる事になるが」
「大丈夫大丈夫。けど、早めに帰ってきてね? 今日はアインの誕生日だから――」
「分かっている。出来るだけ早くするさ」
 それが少女――ティア・ウィリーと交わす、最後の言葉だとも知らずに。アレクサンドルは、車に乗り込んだ。

 そんな彼が戻ってきた時。状況は一変していた。
 ――研究所は、業火に包まれていたのである。
「リーア! 何が起こった!!」
 その声に、小柄な東洋人の少女が振り返る。
「迫撃砲が直撃して、化学室で火災が――」
「ティアとアインは!!」
「ティアは化学室…! 皆化学火災を恐れて入ろうとしなかったから、アインが自分で車椅子を押して助けに…!」
「くっそ、なんて無茶を…! ……軍人がこれだけ居るのに、車椅子の子供一人が助けに入ったのか…!」
「ダメよ!貴方も…!」
 自らも水を被り、突入しようとするアレクサンドルを、リーアと呼ばれた少女が引きとめる。
 次の瞬間、一段と大きな爆発が巻き起こり――


●来訪者

「……何用だ」
「やれやれ、毎度の事だけど冷たいね?」
 白コートの二人。金髪の男は、歩み寄る仮面の男に冷たく言い放った。
 仮面の男は其れを気にする素振りは無く、おどけたような返事を返す。
「別に僕だって冷やかしで来ている訳じゃない。ちゃんとした用事さ」
「お前さんの用には大体不吉な予感がするのだがな」
 その返事に、仮面の男――コーリアスは、心外だ、とでも言うかのように腕を広げる。
「今回はちゃんとした用事って言ってるんだけどね。……まぁ、『Life to Lifeless』の力を貸してもらいたいだけさ」

「無機物を動かしたいだけならば、お前自身の眷属に頼めば良かろう?」
「アレはだめだ。やつ等は飽くまでも『操って』いる。集中力が切れればそれまでだ。だけど……
 仮面の下の目を、遠くに居る『殺人鬼』に向ける。
「貴公には、『ディーン』と言う前例がある。無論、交換条件は僕にもある。貴公が探している例の『書』の内2巻の場所が見つかったからね」
「……!」
 声には出さなかったが、金髪の男が動揺したのは、コーリアスには見て取れた。
 仮面の下でほそくえみながら、彼は言葉を続ける。
「その場所は教えよう。…ああ、心配しなくていい。力を使ってもらうのは、帰ってきてからだ。これなら僕が貴公を騙している――等と言う心配もないでしょ?」
 暫しの沈黙。そして。金髪白衣の男――アレクサンドル・バーンズは、頷いた。


●車隊への襲撃

 公道上。
 サルヴァトーレ・ロッソより下ろされた、書物類を含む荷物。そして――一般人を、他の都市に輸送するため走っていた車隊。その先頭の車両が――突如として、停止した。
 何故かと言えば。その前に、岩の巨人共が、立ちはだかっていたからだ。
「ヒャッハーハハハハ!狩りの時間だぜぇぇぇぇ!」
 岩の後ろから飛び出したのは、ディーン・キル。殺人鬼はその刃を振るい、一瞬にして先頭の馬車2台の御者を物言わぬ屍と化す。
「いっぱいいるなぁ。いいぜ。久しぶりに羽伸ばしていいって言われてんだ。十分に…楽しんでいくぜぇぇ!」
 その背中に煌くのは、一本の見慣れぬ刀。己の双刃以外他の得物を使った事が無い彼が背負うその刀の銘は、『破刃』。東方に於ける彼の歪虚――アレクサンドルとも親交があった、吹上 九弦が持つ九本が、その一振り。
 ぎざぎざのついた、丸でノコギリのような刃を、然し彼は即座に使用しようとはしなかった。
 前方の混乱を見て、後方の車両――荷物を搭載した物は、ゆっくりと後退し、難を逃れると共に、前の車両の後退――逃げ道を作ろうとした。

「…ふん、簡単な物だ」
 ブン。空間が揺らめく。
 ――光の屈折を操るマントを使い、姿を隠していたアレクサンドルは、そのまま書類を検分する。
 だが、姿は見えずとも、高位の歪虚である彼の存在は、それだけで違和感として感じられる事になる。彼は――気配を隠蔽する能力を持たないが故に、この道具を使用しているのだから。

 かくして、輸送隊を護衛していたハンターたちは、二面の問題に直面する事になる。
 前面の迫り来る危機を排除するのが先か。はたまた、後方の不穏な気配に対処するか。
 ――選択肢は、委ねられた。

リプレイ本文

●Sound of 「Kill」

「この音は…くそったれがっ!!」
 その音を聴いた瞬間、キール・スケルツォ(ka1798)は馬車を飛び出し、その屋根を伝って前に向けて駆け出す。忘れるべくもない――この音は殺人鬼『ディーン・キル』の『鬼哭』。彼が殺しを始める前に獲物の動きを封じる為に展開する音の鎖。
 あわよくば一般人の懐を探ろうとして、前方に寄っていたのが幸運であった。駆け出す彼は、そのまま耳に布を詰め込み、音の効果を軽減させる。
 だが、問題は速度だ。前衛までにはそれなりの距離がある。そして重装備である彼は、それほど早くは駆けられない。
「てめぇ…!」
 矢を弓につかえ、放つ。それは馬車の屋根に遮られ、ディーンには命中せず大きく横に外れる。
「あくびが出る狙いだぜぇ……来いよ。待っててやるから。…暇つぶしにその間に…こいつらには死んでもらうがなぁ!」
 刃の一閃、逃げようとした一般人の一人が両断される。
「死にたくなければ、馬車を放棄して後方へ逃げなさい!」
「荷物は投げ捨てろ…!命より軽い物はな…!」
 エリシャ・カンナヴィ(ka0140)と扼城(ka2836)の指示により、乗客は一斉に荷物を投げ捨て、後方への後退を始める。これは意外な効を奏し、投げ捨てた荷物が僅かにディーンの進路を阻み、その殺刃を食い止める。

「待ちやがれぇ…!」
「ぎゃっ!?」
 だが、彼には空を舞う黒刃がある。
 刃が一人の男性の足首を縫いとめ、直後、ディーンの刃が男性の心臓を貫く。
 だが、彼が三人目に取り掛かれるよりも先に、轟音が鳴り響く。馬から飛び降りたエリシャが、乗客の投げ捨てた荷物の中にあった楽器を踏みつけ、『鬼哭』を掻き消しながら跳躍。降り注ぐ手裏剣が、ディーンの腕に突き刺さる。
「こちとら前より速く硬くなってんのよ。きっちり仕返ししてやるわ」
「あん時の嬢ちゃんか…おもしれぇ…!」
 抜刀したエリシャが振り下ろした振動剣を、己の刃を交差させ受け止めるディーン。
 交わる刃と刃、押し切るようにしてお互い、距離を離す。

 ――ハンターたちの布陣には、僅かながらの問題があった。
 ディーンに気づき、その対応に回った者の内、馬に騎乗していたのは――エリシャだけだったのだ。故に、初手にて、彼女は単独で接敵する羽目になってしまった。それが…ディーンに僅かながら、付け入る隙を与える事になる。
「おいおい、逃げてんじゃねぇよ――!」
 馬の手綱を切り離すよう御者に指示したlol U mad ?(ka3514)により、戦闘音に怯えた馬たちが一般人同様、逃げ出し始める。武器を「銃」に変形させ、ディーンは黒刃が目標への道筋を構築するように、陣形を組む。
「させないわ…!」
 ディーンの弱点は、彼女なりに心得があった。武器を銃に変形させた際、一時的にそれは「受ける」のに非常に不適な形状になってしまう。エリシャの敏捷さを以ってすれば、大きな一撃を叩き込むのは困難ではない。だが、その瞬間。空いた手で、ディーンが背中の刀を抜刀する。
「…!」
 その刀の能力は未だ不明。だが、打ち合うのは得策ではない。そう考えたエリシャが一瞬、刀を引く。ここで若しももう一人。あと一人いれば、回り込み背後からディーンを刺せた筈だ。
「跳ね踊れぇ!」
 放たれる銃弾が、一般人と馬。合わせて4名を、貫く。
 だが、彼の攻撃に合わせるようにして、もう一発の銃弾も、放たれていた。
「Do U know wut time it is?」
 狙いを定め、放たれた狙撃。この超・長距離からでも狙いを付けられたのは、一重にロルの技術である。放たれた冷気の弾丸。それは一直線にディーンに向かって飛来し――
「おらぁこっち来いよ!」
 等しく、エリシャとディーンを貫いた。
「ぐぉ…長距離狙撃か。ちぃーっと甘く見てたぜ」
 無理な体勢からの借刀殺。それ故に、ダメージの大半の転嫁は成されず、友の祈りの乗った必殺の一撃は、ディーンとエリシャにほぼ等しく、大きな傷を負わせた。冷気は彼らに等しく纏わりつき、その動きを緩慢にさせる。
「いつまで掴んでいるの…よ!」
「ぐぉ…!?」
 後頭部による強烈な頭突き。ディーンを怯ませて拘束を脱したエリシャが、そのまま逆手に振動刀を回し、ディーンの手を切り裂く。
「んのアマぁ…!」
 だが、それでも彼は武器を緩めない。痛覚がないのか、それとも痛みですら、力に変えているのか。
 降り注ぐ無数の黒刃。それを回避したエリシャだが、次の瞬間、背後にディーンが回りこんでいた。
(幻刃…!)
 普段の彼女ならば、この状態からでも回避は可能だろう。――だが、冷気の影響を受けている状態では別だ。ノコギリのような大刀が、彼女を背後から切り裂く。
(っ…!)
 傷は浅くはない。が――危惧していた、九弦の魔刀の特殊効果は、未だ表れていない。それは『敵を斬る』事によって発揮されるものではないと言う事か。
 痛みに耐え、手裏剣をも逆手に持ち変える。そのまま、背後にいたディーンの目に向けて、突き立てる!
「がぁぁぁぁ!」
 咆哮。片目を潰されたディーンは、然し更なる凶暴性を発揮する。すぐさま離脱しようとしたエリシャだが、冷気の影響で僅かに動きが遅れる。だが、それはディーンもまた同じ――然しそちらに目をやった瞬間、大鋸のような剣が振り下ろされ力ずくで床に押し付けられる。
 理由は直ぐに分かった。その腕に纏う、「炎の力を纏うガントレット」。それが冷気を祓い、ディーンの動きを元に戻していたのである。

 ドン。
 弾丸が、ディーンの背後から突き刺さる。注意が完全にエリシャに向いた隙を狙っての、不規則な軌道の一撃。だがそれは、体力と引き換えに、更にディーンの殺意を加速させる事になる。
 ――その時であった。扼城と、ミリア・コーネリウス(ka1287)が到着したのは。

「成程……此奴は、この場で始末した方が良い」
 ディーンの姿を確認するや、ガンブレードを構える扼城。敵の危険性は、報告書でも理解していたつもりだ。だがそれが秘める殺気は、彼が予想していた物以上であった。彼に、即座にこの場での撃殺を選択させるほどに。
 放たれる無数の剣閃を、ディーンは片手のガントレットで受け止める。片手のみで受けきれるほど生易しい物ではなく、彼自身にも傷は刻まれていく。
 己の体を活性化させて回復しながら、エリシャが、全身の力を込めて、己を押さえつける鋸刃を押し込む!
「!」
 片手を扼城への防御に使っていたが故に、押さえつける力は弱まっていた。その為、エリシャに押された際、ディーンは『押し負けて』しまい、僅かに体勢が崩れた。その瞬間――
「ここらで一度負けてみちゃくれないかね」
 ミリアの神速の突きが、一直線にディーンの胴を狙う!両手を封じられている彼に防御の術はなく、刃が、彼の腹部を貫通する!
「がはぁ!?」
「そこだ…!」
 更に追撃する扼城。放たれたのは剣撃ではなく、銃撃。狙うはディーンの視界の遮断を、更なるチャンスに繋げる事。
「てめぇら……なめんじゃ……ねぇぇぇぇえええ!!!」
 だが、痛みを力。衝撃を炎に変えたディーンは、激昂のままに両拳を振り下ろす。ミリアの大剣ごと、それはエリシャに叩きつけられ、爆炎を巻き起こす。爆炎は炎の壁となり、弾丸を迎撃すると共に、回復できる以上の速度で、エリシャの体力を奪っていく。
 ――かくして、最後まで奮戦し、味方の到着の時間を稼ぎ、一撃へと繋げたエリシャは、炎の中に倒れた。


●The Dreams of Alexandre

(あの歪虚の主は…と言う事は)
 一方。ディーンの出現の連絡を受けたアルマ・アニムス(ka4901)は、然し後方の違和感の調査に向かう。前方に現れたのがあの歪虚。ならば後方に居る違和感は――

「…いる?何もしない…話しだけ聞いて」
 彼と共に後ろに向かったシェリル・マイヤーズ(ka0509)も、また同じ考えを持っていたようだ。武装を放棄し、気配のある馬車へと潜り込む。
 ――そこには、何も見えない。だが周辺を覆う気配だけは感じる。

「お探しものです?お手伝いしますよっ」
「良い。動くな」
 同じように中に入ったアルマが、手伝おうと動いたのを制止する。だが、それは即ち、彼自身の位置が暴露されたと言う事でもあり……光を屈折するマントを脱ぎはらい、アレクサンドルがその姿を現す。その手には、既に1冊の本。後、もう1冊は……
「これじゃないです?」
 手を伸ばそうとしたアルマ。然し、其れに先んじて、鋼鉄の腕が本をひょいっと拾い上げる。収まったのは――アレクサンドルの手の中。

「大事な者の…よかった」
「取りはしませんよ。元々それは大事な形見なのでしょう。アレックスさんが持っておくべき物です」
 その言葉に、アレクサンドルの警戒心が、僅かに揺らぐ。

「探し物が取れたなら……一般人を逃がして」
「元よりおっさんは彼らに用はない」
「ディーンにも手を出させないで…欲しい。暴れ足りないなら…ハンターが…相手する。叔父様先生の邪魔もしない…」
「あいつにお前たちとだけ戦えと? それは無理な相談だ。暴れだしたアレが…まともに聞くと思うか?」
 交渉の結果は、半分ほどか。

「さて、おっさんの目的は達成された。これ以上ここに居る理由もない…ディーンを回収して撤退するとしよう。お前さんたちだって、これ以上ディーンが殺戮を続けるのは望まないだろう?」
「待ってください。前に聞かれたお話、お答えしますっ」
 呼び止めたのは、アルマ。
 アレクサンドルが宣言した、例え友でも滅ぼす――その話。
「それでも……友達は友達です。アレックスさんもウィリアムさんお友達は否定しなかったです」
「ああ、そうだ。友である事は事実。それでも――」
「アレックスさんともお友達になりたいです。お友達たくさんだと、楽しいことたくさんで幸せですっ。僕、アレックスさんすきです!」
 無邪気な彼のその宣言。僅かにアレクサンドルの眉がピクリと動く。
「理想だけでは何も救えんよ。……それともおっさんが、お前さんの愛する人を抹殺してもいいというのか?」
「それは嫌です」
 きっぱり。
「だから、次は全力で止めます……僕、諦め悪いですよ?とっても我儘な悪い子ですから!」
 ふふ、とアレクサンドルも笑う。
「ならばやって見せるがいい。おっさんの覚悟と、お前さんの望みのぶつかりあいだ…力で、己の望みを貫くが良い」

 振り向き、立ち去ろうとする彼の背中に、シェリルがそっと触れる。
「冷たい…ね」
「…人の悪を見てきたからな。冷たくもなる」
「歪虚は嫌い‥でも歪虚も人も‥変わらない‥。人は自分で笑顔を‥潰す」
「…故に、悲劇を阻む為に、全てを滅ぼす」
 その心は交わることはなく、アレクサンドルの姿は、光のマントの下へと消える。


●The End of 『Kill』

 最初の冷気弾、エリシャによる一刺し、そしてミリアによる貫撃。
 既にディーンの体力は大幅に減退していた。だが、その戦意は『血狂い』に支えられ、未だ衰えず。
 爆撃を受けたミリアと扼城が己の回復に力を割き、攻撃の手が緩んだその隙を突き、彼は全力でミリアに飛び掛る。咄嗟に大剣で受け止める。が、その瞬間!
「かかったなぁ!」
 エリシャが最も警戒し、剣を交えようとしなかった理由が、ここにあった。
 鋸の刃が大剣を引っ掛けた瞬間。それは弾き飛ばされ、同じような大剣が、ディーンの手に出現していたのだ。
 『武装解除』と『模倣』。其れこそが魔剣『破刃』の能力。刀術に特化した九弦では使いこなせなかったこの刀を、寧ろディーンは120%、使いこなしていたと言えよう。
 振り下ろされた己の大剣を、強引に換装した盾で受け止める。後退するミリアであったが、突き刺さる黒刃が、その動きを阻む。
 更に振り下ろされる大剣。然し、それは白の大盾によって受け止められる。
「――傷つける者を、僕は赦さない」
 立ちはだかったのは、ジョージ・ユニクス(ka0442)。直後、背後から刃が、ディーンを襲う。
「テメェ、俺には狂気が足りねぇつったよなぁ」
 振動刀を両手で構える。
「――だったら見せてやるよ、俺が命知らずの馬鹿だって事をさぁ!!」
 交差する刀閃。
「がぁぁ!」
「ぐっ…!」
 ディーンの大剣がキールの胴を裂いたのと同時に、振動刀はディーンの首筋に大きな傷をつけた。
 そこへ更に打ち込まれるロルの冷気弾。
「今度の生贄は――てめぇだ…!」
 ジョージを引き寄せ、盾にする。ジョージの防御力は高く、ダメージの転嫁を受けても尚、回復の要を見ない。
 放たれる突進の勢いを乗せた突き。ミリアのそれがジョージの鎧の隙間を縫って通り、ディーンの体に突き刺さった瞬間。ジョージもまた拘束を脱し、剣の柄でディーンの頭部を強打する。
 動いたのは、キール。木を立体的な動きで蹴り、上方を取った彼は、ワイヤーを振り下ろす。そのワイヤーが狙うは、ディーンの持つ『破刃』。
 命中した瞬間――ワイヤーで巻きつけ、引っ張り、奪おうとする。だが――この刃は『破刃』。模倣と武装解除を力とする刀。
「来いよ!!!!」
 瞬間、ワイヤーが弾き飛ばされ、ディーンの手にはワイヤーが。
 追ってきたミリアに巻きつけてその追撃を止め、ディーンは身を翻す。
「おっさんの命だ……脱出しねぇとな」
「待て!」
 ここで逃せば、更に多くの人が脅かされる事になる。
「お前に恨みはないよ。いや、お前ら全体を許せないだけだ!」
 怒りに、その身に纏う炎の色が――変わる。無実の人々を殺し、己の力へ変えるディーンへの怒り。
 炎を剣に吹き込み、ジョージが横一閃でディーンの背を狙う!

 ガン。
 動き出したゴーレムが、彼の刃を食い止める。
 同様に、扼城の銃撃もまた、もう片方のゴーレムの巨体が止めた。
 撤退するディーン。然し、彼とゴーレムたちの距離が離れた瞬間。

「エリシャ! ミリア! 借りるぞ!」
 ロルの声とともに、ミリアが空に武器を投げ上げる。
 それを狙ったロルの脳裏には、軌道が――見えていた。
「It's your turn!」
 弾丸が、エリシャの刺さった刀と、ミリアの盾の間を跳ね返り、ディーンの背を狙う!

「が…っ!」
 貫通。既に極限まで戦い続けたディーンがそれに耐えられる筈はなく。
 ――殺人鬼は、ここにて斃れた。
 だが、彼を援護しようとゴーレムたちが飛ばした岩は、次の瞬間、追撃の為前に出たロルを――押しつぶしていた。

「遅かった…か!」
 直後到着するアレクサンドル。『破刃』に手をかけ、彼は撤退した。

 アレクサンドルはその目標を手に入れた。駆けつけるのが遅れた事で、完全に人的被害も0、と言うわけではない。
 ――だが、それでも凶敵の一人……ディーン・キルの命脈を、ハンターたちは断ち切ったのであった。

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  • 優しさと厳しさの狭間
    エリシャ・カンナヴィka0140
  • Two Hand
    lol U mad ?ka3514

重体一覧

  • 優しさと厳しさの狭間
    エリシャ・カンナヴィka0140
  • Two Hand
    lol U mad ?ka3514

参加者一覧

  • 優しさと厳しさの狭間
    エリシャ・カンナヴィ(ka0140
    エルフ|13才|女性|疾影士
  • カコとミライの狭間
    ジョージ・ユニクス(ka0442
    人間(紅)|13才|男性|闘狩人
  • 約束を重ねて
    シェリル・マイヤーズ(ka0509
    人間(蒼)|14才|女性|疾影士
  • 英雄譚を終えし者
    ミリア・ラスティソード(ka1287
    人間(紅)|20才|女性|闘狩人
  • 《律》するは己が中の獣
    キール・スケルツォ(ka1798
    人間(蒼)|37才|男性|疾影士

  • 扼城(ka2836
    人間(蒼)|25才|男性|闘狩人
  • Two Hand
    lol U mad ?(ka3514
    人間(蒼)|19才|男性|猟撃士
  • フリーデリーケの旦那様
    アルマ・A・エインズワース(ka4901
    エルフ|26才|男性|機導師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/01/09 15:21:51
アイコン 相談卓
エリシャ・カンナヴィ(ka0140
エルフ|13才|女性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2016/01/16 03:21:36
アイコン 質問卓
エリシャ・カンナヴィ(ka0140
エルフ|13才|女性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2016/01/15 20:00:49