ゲスト
(ka0000)
【命魔】Strike the Road
マスター:剣崎宗二

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 6~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 7日
- 締切
- 2016/01/16 07:30
- 完成日
- 2016/01/20 23:29
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●35年前
「ねぇアレクサンドル。今日は予定あったの?」
白いコートの、快活そうな少女が、研究所を出て行くアレクサンドルを呼び止める。
「ああ、ちょっとウィリアムのじーさんの足の調子を見に、な。マイレスが運転してくれるそうだから、心配は要らん。…ただ、すまんが、アインの世話は任せる事になるが」
「大丈夫大丈夫。けど、早めに帰ってきてね? 今日はアインの誕生日だから――」
「分かっている。出来るだけ早くするさ」
それが少女――ティア・ウィリーと交わす、最後の言葉だとも知らずに。アレクサンドルは、車に乗り込んだ。
そんな彼が戻ってきた時。状況は一変していた。
――研究所は、業火に包まれていたのである。
「リーア! 何が起こった!!」
その声に、小柄な東洋人の少女が振り返る。
「迫撃砲が直撃して、化学室で火災が――」
「ティアとアインは!!」
「ティアは化学室…! 皆化学火災を恐れて入ろうとしなかったから、アインが自分で車椅子を押して助けに…!」
「くっそ、なんて無茶を…! ……軍人がこれだけ居るのに、車椅子の子供一人が助けに入ったのか…!」
「ダメよ!貴方も…!」
自らも水を被り、突入しようとするアレクサンドルを、リーアと呼ばれた少女が引きとめる。
次の瞬間、一段と大きな爆発が巻き起こり――
●来訪者
「……何用だ」
「やれやれ、毎度の事だけど冷たいね?」
白コートの二人。金髪の男は、歩み寄る仮面の男に冷たく言い放った。
仮面の男は其れを気にする素振りは無く、おどけたような返事を返す。
「別に僕だって冷やかしで来ている訳じゃない。ちゃんとした用事さ」
「お前さんの用には大体不吉な予感がするのだがな」
その返事に、仮面の男――コーリアスは、心外だ、とでも言うかのように腕を広げる。
「今回はちゃんとした用事って言ってるんだけどね。……まぁ、『Life to Lifeless』の力を貸してもらいたいだけさ」
「無機物を動かしたいだけならば、お前自身の眷属に頼めば良かろう?」
「アレはだめだ。やつ等は飽くまでも『操って』いる。集中力が切れればそれまでだ。だけど……
仮面の下の目を、遠くに居る『殺人鬼』に向ける。
「貴公には、『ディーン』と言う前例がある。無論、交換条件は僕にもある。貴公が探している例の『書』の内2巻の場所が見つかったからね」
「……!」
声には出さなかったが、金髪の男が動揺したのは、コーリアスには見て取れた。
仮面の下でほそくえみながら、彼は言葉を続ける。
「その場所は教えよう。…ああ、心配しなくていい。力を使ってもらうのは、帰ってきてからだ。これなら僕が貴公を騙している――等と言う心配もないでしょ?」
暫しの沈黙。そして。金髪白衣の男――アレクサンドル・バーンズは、頷いた。
●車隊への襲撃
公道上。
サルヴァトーレ・ロッソより下ろされた、書物類を含む荷物。そして――一般人を、他の都市に輸送するため走っていた車隊。その先頭の車両が――突如として、停止した。
何故かと言えば。その前に、岩の巨人共が、立ちはだかっていたからだ。
「ヒャッハーハハハハ!狩りの時間だぜぇぇぇぇ!」
岩の後ろから飛び出したのは、ディーン・キル。殺人鬼はその刃を振るい、一瞬にして先頭の馬車2台の御者を物言わぬ屍と化す。
「いっぱいいるなぁ。いいぜ。久しぶりに羽伸ばしていいって言われてんだ。十分に…楽しんでいくぜぇぇ!」
その背中に煌くのは、一本の見慣れぬ刀。己の双刃以外他の得物を使った事が無い彼が背負うその刀の銘は、『破刃』。東方に於ける彼の歪虚――アレクサンドルとも親交があった、吹上 九弦が持つ九本が、その一振り。
ぎざぎざのついた、丸でノコギリのような刃を、然し彼は即座に使用しようとはしなかった。
前方の混乱を見て、後方の車両――荷物を搭載した物は、ゆっくりと後退し、難を逃れると共に、前の車両の後退――逃げ道を作ろうとした。
「…ふん、簡単な物だ」
ブン。空間が揺らめく。
――光の屈折を操るマントを使い、姿を隠していたアレクサンドルは、そのまま書類を検分する。
だが、姿は見えずとも、高位の歪虚である彼の存在は、それだけで違和感として感じられる事になる。彼は――気配を隠蔽する能力を持たないが故に、この道具を使用しているのだから。
かくして、輸送隊を護衛していたハンターたちは、二面の問題に直面する事になる。
前面の迫り来る危機を排除するのが先か。はたまた、後方の不穏な気配に対処するか。
――選択肢は、委ねられた。
「ねぇアレクサンドル。今日は予定あったの?」
白いコートの、快活そうな少女が、研究所を出て行くアレクサンドルを呼び止める。
「ああ、ちょっとウィリアムのじーさんの足の調子を見に、な。マイレスが運転してくれるそうだから、心配は要らん。…ただ、すまんが、アインの世話は任せる事になるが」
「大丈夫大丈夫。けど、早めに帰ってきてね? 今日はアインの誕生日だから――」
「分かっている。出来るだけ早くするさ」
それが少女――ティア・ウィリーと交わす、最後の言葉だとも知らずに。アレクサンドルは、車に乗り込んだ。
そんな彼が戻ってきた時。状況は一変していた。
――研究所は、業火に包まれていたのである。
「リーア! 何が起こった!!」
その声に、小柄な東洋人の少女が振り返る。
「迫撃砲が直撃して、化学室で火災が――」
「ティアとアインは!!」
「ティアは化学室…! 皆化学火災を恐れて入ろうとしなかったから、アインが自分で車椅子を押して助けに…!」
「くっそ、なんて無茶を…! ……軍人がこれだけ居るのに、車椅子の子供一人が助けに入ったのか…!」
「ダメよ!貴方も…!」
自らも水を被り、突入しようとするアレクサンドルを、リーアと呼ばれた少女が引きとめる。
次の瞬間、一段と大きな爆発が巻き起こり――
●来訪者
「……何用だ」
「やれやれ、毎度の事だけど冷たいね?」
白コートの二人。金髪の男は、歩み寄る仮面の男に冷たく言い放った。
仮面の男は其れを気にする素振りは無く、おどけたような返事を返す。
「別に僕だって冷やかしで来ている訳じゃない。ちゃんとした用事さ」
「お前さんの用には大体不吉な予感がするのだがな」
その返事に、仮面の男――コーリアスは、心外だ、とでも言うかのように腕を広げる。
「今回はちゃんとした用事って言ってるんだけどね。……まぁ、『Life to Lifeless』の力を貸してもらいたいだけさ」
「無機物を動かしたいだけならば、お前自身の眷属に頼めば良かろう?」
「アレはだめだ。やつ等は飽くまでも『操って』いる。集中力が切れればそれまでだ。だけど……
仮面の下の目を、遠くに居る『殺人鬼』に向ける。
「貴公には、『ディーン』と言う前例がある。無論、交換条件は僕にもある。貴公が探している例の『書』の内2巻の場所が見つかったからね」
「……!」
声には出さなかったが、金髪の男が動揺したのは、コーリアスには見て取れた。
仮面の下でほそくえみながら、彼は言葉を続ける。
「その場所は教えよう。…ああ、心配しなくていい。力を使ってもらうのは、帰ってきてからだ。これなら僕が貴公を騙している――等と言う心配もないでしょ?」
暫しの沈黙。そして。金髪白衣の男――アレクサンドル・バーンズは、頷いた。
●車隊への襲撃
公道上。
サルヴァトーレ・ロッソより下ろされた、書物類を含む荷物。そして――一般人を、他の都市に輸送するため走っていた車隊。その先頭の車両が――突如として、停止した。
何故かと言えば。その前に、岩の巨人共が、立ちはだかっていたからだ。
「ヒャッハーハハハハ!狩りの時間だぜぇぇぇぇ!」
岩の後ろから飛び出したのは、ディーン・キル。殺人鬼はその刃を振るい、一瞬にして先頭の馬車2台の御者を物言わぬ屍と化す。
「いっぱいいるなぁ。いいぜ。久しぶりに羽伸ばしていいって言われてんだ。十分に…楽しんでいくぜぇぇ!」
その背中に煌くのは、一本の見慣れぬ刀。己の双刃以外他の得物を使った事が無い彼が背負うその刀の銘は、『破刃』。東方に於ける彼の歪虚――アレクサンドルとも親交があった、吹上 九弦が持つ九本が、その一振り。
ぎざぎざのついた、丸でノコギリのような刃を、然し彼は即座に使用しようとはしなかった。
前方の混乱を見て、後方の車両――荷物を搭載した物は、ゆっくりと後退し、難を逃れると共に、前の車両の後退――逃げ道を作ろうとした。
「…ふん、簡単な物だ」
ブン。空間が揺らめく。
――光の屈折を操るマントを使い、姿を隠していたアレクサンドルは、そのまま書類を検分する。
だが、姿は見えずとも、高位の歪虚である彼の存在は、それだけで違和感として感じられる事になる。彼は――気配を隠蔽する能力を持たないが故に、この道具を使用しているのだから。
かくして、輸送隊を護衛していたハンターたちは、二面の問題に直面する事になる。
前面の迫り来る危機を排除するのが先か。はたまた、後方の不穏な気配に対処するか。
――選択肢は、委ねられた。
リプレイ本文
●Sound of 「Kill」
「この音は…くそったれがっ!!」
その音を聴いた瞬間、キール・スケルツォ(ka1798)は馬車を飛び出し、その屋根を伝って前に向けて駆け出す。忘れるべくもない――この音は殺人鬼『ディーン・キル』の『鬼哭』。彼が殺しを始める前に獲物の動きを封じる為に展開する音の鎖。
あわよくば一般人の懐を探ろうとして、前方に寄っていたのが幸運であった。駆け出す彼は、そのまま耳に布を詰め込み、音の効果を軽減させる。
だが、問題は速度だ。前衛までにはそれなりの距離がある。そして重装備である彼は、それほど早くは駆けられない。
「てめぇ…!」
矢を弓につかえ、放つ。それは馬車の屋根に遮られ、ディーンには命中せず大きく横に外れる。
「あくびが出る狙いだぜぇ……来いよ。待っててやるから。…暇つぶしにその間に…こいつらには死んでもらうがなぁ!」
刃の一閃、逃げようとした一般人の一人が両断される。
「死にたくなければ、馬車を放棄して後方へ逃げなさい!」
「荷物は投げ捨てろ…!命より軽い物はな…!」
エリシャ・カンナヴィ(ka0140)と扼城(ka2836)の指示により、乗客は一斉に荷物を投げ捨て、後方への後退を始める。これは意外な効を奏し、投げ捨てた荷物が僅かにディーンの進路を阻み、その殺刃を食い止める。
「待ちやがれぇ…!」
「ぎゃっ!?」
だが、彼には空を舞う黒刃がある。
刃が一人の男性の足首を縫いとめ、直後、ディーンの刃が男性の心臓を貫く。
だが、彼が三人目に取り掛かれるよりも先に、轟音が鳴り響く。馬から飛び降りたエリシャが、乗客の投げ捨てた荷物の中にあった楽器を踏みつけ、『鬼哭』を掻き消しながら跳躍。降り注ぐ手裏剣が、ディーンの腕に突き刺さる。
「こちとら前より速く硬くなってんのよ。きっちり仕返ししてやるわ」
「あん時の嬢ちゃんか…おもしれぇ…!」
抜刀したエリシャが振り下ろした振動剣を、己の刃を交差させ受け止めるディーン。
交わる刃と刃、押し切るようにしてお互い、距離を離す。
――ハンターたちの布陣には、僅かながらの問題があった。
ディーンに気づき、その対応に回った者の内、馬に騎乗していたのは――エリシャだけだったのだ。故に、初手にて、彼女は単独で接敵する羽目になってしまった。それが…ディーンに僅かながら、付け入る隙を与える事になる。
「おいおい、逃げてんじゃねぇよ――!」
馬の手綱を切り離すよう御者に指示したlol U mad ?(ka3514)により、戦闘音に怯えた馬たちが一般人同様、逃げ出し始める。武器を「銃」に変形させ、ディーンは黒刃が目標への道筋を構築するように、陣形を組む。
「させないわ…!」
ディーンの弱点は、彼女なりに心得があった。武器を銃に変形させた際、一時的にそれは「受ける」のに非常に不適な形状になってしまう。エリシャの敏捷さを以ってすれば、大きな一撃を叩き込むのは困難ではない。だが、その瞬間。空いた手で、ディーンが背中の刀を抜刀する。
「…!」
その刀の能力は未だ不明。だが、打ち合うのは得策ではない。そう考えたエリシャが一瞬、刀を引く。ここで若しももう一人。あと一人いれば、回り込み背後からディーンを刺せた筈だ。
「跳ね踊れぇ!」
放たれる銃弾が、一般人と馬。合わせて4名を、貫く。
だが、彼の攻撃に合わせるようにして、もう一発の銃弾も、放たれていた。
「Do U know wut time it is?」
狙いを定め、放たれた狙撃。この超・長距離からでも狙いを付けられたのは、一重にロルの技術である。放たれた冷気の弾丸。それは一直線にディーンに向かって飛来し――
「おらぁこっち来いよ!」
等しく、エリシャとディーンを貫いた。
「ぐぉ…長距離狙撃か。ちぃーっと甘く見てたぜ」
無理な体勢からの借刀殺。それ故に、ダメージの大半の転嫁は成されず、友の祈りの乗った必殺の一撃は、ディーンとエリシャにほぼ等しく、大きな傷を負わせた。冷気は彼らに等しく纏わりつき、その動きを緩慢にさせる。
「いつまで掴んでいるの…よ!」
「ぐぉ…!?」
後頭部による強烈な頭突き。ディーンを怯ませて拘束を脱したエリシャが、そのまま逆手に振動刀を回し、ディーンの手を切り裂く。
「んのアマぁ…!」
だが、それでも彼は武器を緩めない。痛覚がないのか、それとも痛みですら、力に変えているのか。
降り注ぐ無数の黒刃。それを回避したエリシャだが、次の瞬間、背後にディーンが回りこんでいた。
(幻刃…!)
普段の彼女ならば、この状態からでも回避は可能だろう。――だが、冷気の影響を受けている状態では別だ。ノコギリのような大刀が、彼女を背後から切り裂く。
(っ…!)
傷は浅くはない。が――危惧していた、九弦の魔刀の特殊効果は、未だ表れていない。それは『敵を斬る』事によって発揮されるものではないと言う事か。
痛みに耐え、手裏剣をも逆手に持ち変える。そのまま、背後にいたディーンの目に向けて、突き立てる!
「がぁぁぁぁ!」
咆哮。片目を潰されたディーンは、然し更なる凶暴性を発揮する。すぐさま離脱しようとしたエリシャだが、冷気の影響で僅かに動きが遅れる。だが、それはディーンもまた同じ――然しそちらに目をやった瞬間、大鋸のような剣が振り下ろされ力ずくで床に押し付けられる。
理由は直ぐに分かった。その腕に纏う、「炎の力を纏うガントレット」。それが冷気を祓い、ディーンの動きを元に戻していたのである。
ドン。
弾丸が、ディーンの背後から突き刺さる。注意が完全にエリシャに向いた隙を狙っての、不規則な軌道の一撃。だがそれは、体力と引き換えに、更にディーンの殺意を加速させる事になる。
――その時であった。扼城と、ミリア・コーネリウス(ka1287)が到着したのは。
「成程……此奴は、この場で始末した方が良い」
ディーンの姿を確認するや、ガンブレードを構える扼城。敵の危険性は、報告書でも理解していたつもりだ。だがそれが秘める殺気は、彼が予想していた物以上であった。彼に、即座にこの場での撃殺を選択させるほどに。
放たれる無数の剣閃を、ディーンは片手のガントレットで受け止める。片手のみで受けきれるほど生易しい物ではなく、彼自身にも傷は刻まれていく。
己の体を活性化させて回復しながら、エリシャが、全身の力を込めて、己を押さえつける鋸刃を押し込む!
「!」
片手を扼城への防御に使っていたが故に、押さえつける力は弱まっていた。その為、エリシャに押された際、ディーンは『押し負けて』しまい、僅かに体勢が崩れた。その瞬間――
「ここらで一度負けてみちゃくれないかね」
ミリアの神速の突きが、一直線にディーンの胴を狙う!両手を封じられている彼に防御の術はなく、刃が、彼の腹部を貫通する!
「がはぁ!?」
「そこだ…!」
更に追撃する扼城。放たれたのは剣撃ではなく、銃撃。狙うはディーンの視界の遮断を、更なるチャンスに繋げる事。
「てめぇら……なめんじゃ……ねぇぇぇぇえええ!!!」
だが、痛みを力。衝撃を炎に変えたディーンは、激昂のままに両拳を振り下ろす。ミリアの大剣ごと、それはエリシャに叩きつけられ、爆炎を巻き起こす。爆炎は炎の壁となり、弾丸を迎撃すると共に、回復できる以上の速度で、エリシャの体力を奪っていく。
――かくして、最後まで奮戦し、味方の到着の時間を稼ぎ、一撃へと繋げたエリシャは、炎の中に倒れた。
●The Dreams of Alexandre
(あの歪虚の主は…と言う事は)
一方。ディーンの出現の連絡を受けたアルマ・アニムス(ka4901)は、然し後方の違和感の調査に向かう。前方に現れたのがあの歪虚。ならば後方に居る違和感は――
「…いる?何もしない…話しだけ聞いて」
彼と共に後ろに向かったシェリル・マイヤーズ(ka0509)も、また同じ考えを持っていたようだ。武装を放棄し、気配のある馬車へと潜り込む。
――そこには、何も見えない。だが周辺を覆う気配だけは感じる。
「お探しものです?お手伝いしますよっ」
「良い。動くな」
同じように中に入ったアルマが、手伝おうと動いたのを制止する。だが、それは即ち、彼自身の位置が暴露されたと言う事でもあり……光を屈折するマントを脱ぎはらい、アレクサンドルがその姿を現す。その手には、既に1冊の本。後、もう1冊は……
「これじゃないです?」
手を伸ばそうとしたアルマ。然し、其れに先んじて、鋼鉄の腕が本をひょいっと拾い上げる。収まったのは――アレクサンドルの手の中。
「大事な者の…よかった」
「取りはしませんよ。元々それは大事な形見なのでしょう。アレックスさんが持っておくべき物です」
その言葉に、アレクサンドルの警戒心が、僅かに揺らぐ。
「探し物が取れたなら……一般人を逃がして」
「元よりおっさんは彼らに用はない」
「ディーンにも手を出させないで…欲しい。暴れ足りないなら…ハンターが…相手する。叔父様先生の邪魔もしない…」
「あいつにお前たちとだけ戦えと? それは無理な相談だ。暴れだしたアレが…まともに聞くと思うか?」
交渉の結果は、半分ほどか。
「さて、おっさんの目的は達成された。これ以上ここに居る理由もない…ディーンを回収して撤退するとしよう。お前さんたちだって、これ以上ディーンが殺戮を続けるのは望まないだろう?」
「待ってください。前に聞かれたお話、お答えしますっ」
呼び止めたのは、アルマ。
アレクサンドルが宣言した、例え友でも滅ぼす――その話。
「それでも……友達は友達です。アレックスさんもウィリアムさんお友達は否定しなかったです」
「ああ、そうだ。友である事は事実。それでも――」
「アレックスさんともお友達になりたいです。お友達たくさんだと、楽しいことたくさんで幸せですっ。僕、アレックスさんすきです!」
無邪気な彼のその宣言。僅かにアレクサンドルの眉がピクリと動く。
「理想だけでは何も救えんよ。……それともおっさんが、お前さんの愛する人を抹殺してもいいというのか?」
「それは嫌です」
きっぱり。
「だから、次は全力で止めます……僕、諦め悪いですよ?とっても我儘な悪い子ですから!」
ふふ、とアレクサンドルも笑う。
「ならばやって見せるがいい。おっさんの覚悟と、お前さんの望みのぶつかりあいだ…力で、己の望みを貫くが良い」
振り向き、立ち去ろうとする彼の背中に、シェリルがそっと触れる。
「冷たい…ね」
「…人の悪を見てきたからな。冷たくもなる」
「歪虚は嫌い‥でも歪虚も人も‥変わらない‥。人は自分で笑顔を‥潰す」
「…故に、悲劇を阻む為に、全てを滅ぼす」
その心は交わることはなく、アレクサンドルの姿は、光のマントの下へと消える。
●The End of 『Kill』
最初の冷気弾、エリシャによる一刺し、そしてミリアによる貫撃。
既にディーンの体力は大幅に減退していた。だが、その戦意は『血狂い』に支えられ、未だ衰えず。
爆撃を受けたミリアと扼城が己の回復に力を割き、攻撃の手が緩んだその隙を突き、彼は全力でミリアに飛び掛る。咄嗟に大剣で受け止める。が、その瞬間!
「かかったなぁ!」
エリシャが最も警戒し、剣を交えようとしなかった理由が、ここにあった。
鋸の刃が大剣を引っ掛けた瞬間。それは弾き飛ばされ、同じような大剣が、ディーンの手に出現していたのだ。
『武装解除』と『模倣』。其れこそが魔剣『破刃』の能力。刀術に特化した九弦では使いこなせなかったこの刀を、寧ろディーンは120%、使いこなしていたと言えよう。
振り下ろされた己の大剣を、強引に換装した盾で受け止める。後退するミリアであったが、突き刺さる黒刃が、その動きを阻む。
更に振り下ろされる大剣。然し、それは白の大盾によって受け止められる。
「――傷つける者を、僕は赦さない」
立ちはだかったのは、ジョージ・ユニクス(ka0442)。直後、背後から刃が、ディーンを襲う。
「テメェ、俺には狂気が足りねぇつったよなぁ」
振動刀を両手で構える。
「――だったら見せてやるよ、俺が命知らずの馬鹿だって事をさぁ!!」
交差する刀閃。
「がぁぁ!」
「ぐっ…!」
ディーンの大剣がキールの胴を裂いたのと同時に、振動刀はディーンの首筋に大きな傷をつけた。
そこへ更に打ち込まれるロルの冷気弾。
「今度の生贄は――てめぇだ…!」
ジョージを引き寄せ、盾にする。ジョージの防御力は高く、ダメージの転嫁を受けても尚、回復の要を見ない。
放たれる突進の勢いを乗せた突き。ミリアのそれがジョージの鎧の隙間を縫って通り、ディーンの体に突き刺さった瞬間。ジョージもまた拘束を脱し、剣の柄でディーンの頭部を強打する。
動いたのは、キール。木を立体的な動きで蹴り、上方を取った彼は、ワイヤーを振り下ろす。そのワイヤーが狙うは、ディーンの持つ『破刃』。
命中した瞬間――ワイヤーで巻きつけ、引っ張り、奪おうとする。だが――この刃は『破刃』。模倣と武装解除を力とする刀。
「来いよ!!!!」
瞬間、ワイヤーが弾き飛ばされ、ディーンの手にはワイヤーが。
追ってきたミリアに巻きつけてその追撃を止め、ディーンは身を翻す。
「おっさんの命だ……脱出しねぇとな」
「待て!」
ここで逃せば、更に多くの人が脅かされる事になる。
「お前に恨みはないよ。いや、お前ら全体を許せないだけだ!」
怒りに、その身に纏う炎の色が――変わる。無実の人々を殺し、己の力へ変えるディーンへの怒り。
炎を剣に吹き込み、ジョージが横一閃でディーンの背を狙う!
ガン。
動き出したゴーレムが、彼の刃を食い止める。
同様に、扼城の銃撃もまた、もう片方のゴーレムの巨体が止めた。
撤退するディーン。然し、彼とゴーレムたちの距離が離れた瞬間。
「エリシャ! ミリア! 借りるぞ!」
ロルの声とともに、ミリアが空に武器を投げ上げる。
それを狙ったロルの脳裏には、軌道が――見えていた。
「It's your turn!」
弾丸が、エリシャの刺さった刀と、ミリアの盾の間を跳ね返り、ディーンの背を狙う!
「が…っ!」
貫通。既に極限まで戦い続けたディーンがそれに耐えられる筈はなく。
――殺人鬼は、ここにて斃れた。
だが、彼を援護しようとゴーレムたちが飛ばした岩は、次の瞬間、追撃の為前に出たロルを――押しつぶしていた。
「遅かった…か!」
直後到着するアレクサンドル。『破刃』に手をかけ、彼は撤退した。
アレクサンドルはその目標を手に入れた。駆けつけるのが遅れた事で、完全に人的被害も0、と言うわけではない。
――だが、それでも凶敵の一人……ディーン・キルの命脈を、ハンターたちは断ち切ったのであった。
「この音は…くそったれがっ!!」
その音を聴いた瞬間、キール・スケルツォ(ka1798)は馬車を飛び出し、その屋根を伝って前に向けて駆け出す。忘れるべくもない――この音は殺人鬼『ディーン・キル』の『鬼哭』。彼が殺しを始める前に獲物の動きを封じる為に展開する音の鎖。
あわよくば一般人の懐を探ろうとして、前方に寄っていたのが幸運であった。駆け出す彼は、そのまま耳に布を詰め込み、音の効果を軽減させる。
だが、問題は速度だ。前衛までにはそれなりの距離がある。そして重装備である彼は、それほど早くは駆けられない。
「てめぇ…!」
矢を弓につかえ、放つ。それは馬車の屋根に遮られ、ディーンには命中せず大きく横に外れる。
「あくびが出る狙いだぜぇ……来いよ。待っててやるから。…暇つぶしにその間に…こいつらには死んでもらうがなぁ!」
刃の一閃、逃げようとした一般人の一人が両断される。
「死にたくなければ、馬車を放棄して後方へ逃げなさい!」
「荷物は投げ捨てろ…!命より軽い物はな…!」
エリシャ・カンナヴィ(ka0140)と扼城(ka2836)の指示により、乗客は一斉に荷物を投げ捨て、後方への後退を始める。これは意外な効を奏し、投げ捨てた荷物が僅かにディーンの進路を阻み、その殺刃を食い止める。
「待ちやがれぇ…!」
「ぎゃっ!?」
だが、彼には空を舞う黒刃がある。
刃が一人の男性の足首を縫いとめ、直後、ディーンの刃が男性の心臓を貫く。
だが、彼が三人目に取り掛かれるよりも先に、轟音が鳴り響く。馬から飛び降りたエリシャが、乗客の投げ捨てた荷物の中にあった楽器を踏みつけ、『鬼哭』を掻き消しながら跳躍。降り注ぐ手裏剣が、ディーンの腕に突き刺さる。
「こちとら前より速く硬くなってんのよ。きっちり仕返ししてやるわ」
「あん時の嬢ちゃんか…おもしれぇ…!」
抜刀したエリシャが振り下ろした振動剣を、己の刃を交差させ受け止めるディーン。
交わる刃と刃、押し切るようにしてお互い、距離を離す。
――ハンターたちの布陣には、僅かながらの問題があった。
ディーンに気づき、その対応に回った者の内、馬に騎乗していたのは――エリシャだけだったのだ。故に、初手にて、彼女は単独で接敵する羽目になってしまった。それが…ディーンに僅かながら、付け入る隙を与える事になる。
「おいおい、逃げてんじゃねぇよ――!」
馬の手綱を切り離すよう御者に指示したlol U mad ?(ka3514)により、戦闘音に怯えた馬たちが一般人同様、逃げ出し始める。武器を「銃」に変形させ、ディーンは黒刃が目標への道筋を構築するように、陣形を組む。
「させないわ…!」
ディーンの弱点は、彼女なりに心得があった。武器を銃に変形させた際、一時的にそれは「受ける」のに非常に不適な形状になってしまう。エリシャの敏捷さを以ってすれば、大きな一撃を叩き込むのは困難ではない。だが、その瞬間。空いた手で、ディーンが背中の刀を抜刀する。
「…!」
その刀の能力は未だ不明。だが、打ち合うのは得策ではない。そう考えたエリシャが一瞬、刀を引く。ここで若しももう一人。あと一人いれば、回り込み背後からディーンを刺せた筈だ。
「跳ね踊れぇ!」
放たれる銃弾が、一般人と馬。合わせて4名を、貫く。
だが、彼の攻撃に合わせるようにして、もう一発の銃弾も、放たれていた。
「Do U know wut time it is?」
狙いを定め、放たれた狙撃。この超・長距離からでも狙いを付けられたのは、一重にロルの技術である。放たれた冷気の弾丸。それは一直線にディーンに向かって飛来し――
「おらぁこっち来いよ!」
等しく、エリシャとディーンを貫いた。
「ぐぉ…長距離狙撃か。ちぃーっと甘く見てたぜ」
無理な体勢からの借刀殺。それ故に、ダメージの大半の転嫁は成されず、友の祈りの乗った必殺の一撃は、ディーンとエリシャにほぼ等しく、大きな傷を負わせた。冷気は彼らに等しく纏わりつき、その動きを緩慢にさせる。
「いつまで掴んでいるの…よ!」
「ぐぉ…!?」
後頭部による強烈な頭突き。ディーンを怯ませて拘束を脱したエリシャが、そのまま逆手に振動刀を回し、ディーンの手を切り裂く。
「んのアマぁ…!」
だが、それでも彼は武器を緩めない。痛覚がないのか、それとも痛みですら、力に変えているのか。
降り注ぐ無数の黒刃。それを回避したエリシャだが、次の瞬間、背後にディーンが回りこんでいた。
(幻刃…!)
普段の彼女ならば、この状態からでも回避は可能だろう。――だが、冷気の影響を受けている状態では別だ。ノコギリのような大刀が、彼女を背後から切り裂く。
(っ…!)
傷は浅くはない。が――危惧していた、九弦の魔刀の特殊効果は、未だ表れていない。それは『敵を斬る』事によって発揮されるものではないと言う事か。
痛みに耐え、手裏剣をも逆手に持ち変える。そのまま、背後にいたディーンの目に向けて、突き立てる!
「がぁぁぁぁ!」
咆哮。片目を潰されたディーンは、然し更なる凶暴性を発揮する。すぐさま離脱しようとしたエリシャだが、冷気の影響で僅かに動きが遅れる。だが、それはディーンもまた同じ――然しそちらに目をやった瞬間、大鋸のような剣が振り下ろされ力ずくで床に押し付けられる。
理由は直ぐに分かった。その腕に纏う、「炎の力を纏うガントレット」。それが冷気を祓い、ディーンの動きを元に戻していたのである。
ドン。
弾丸が、ディーンの背後から突き刺さる。注意が完全にエリシャに向いた隙を狙っての、不規則な軌道の一撃。だがそれは、体力と引き換えに、更にディーンの殺意を加速させる事になる。
――その時であった。扼城と、ミリア・コーネリウス(ka1287)が到着したのは。
「成程……此奴は、この場で始末した方が良い」
ディーンの姿を確認するや、ガンブレードを構える扼城。敵の危険性は、報告書でも理解していたつもりだ。だがそれが秘める殺気は、彼が予想していた物以上であった。彼に、即座にこの場での撃殺を選択させるほどに。
放たれる無数の剣閃を、ディーンは片手のガントレットで受け止める。片手のみで受けきれるほど生易しい物ではなく、彼自身にも傷は刻まれていく。
己の体を活性化させて回復しながら、エリシャが、全身の力を込めて、己を押さえつける鋸刃を押し込む!
「!」
片手を扼城への防御に使っていたが故に、押さえつける力は弱まっていた。その為、エリシャに押された際、ディーンは『押し負けて』しまい、僅かに体勢が崩れた。その瞬間――
「ここらで一度負けてみちゃくれないかね」
ミリアの神速の突きが、一直線にディーンの胴を狙う!両手を封じられている彼に防御の術はなく、刃が、彼の腹部を貫通する!
「がはぁ!?」
「そこだ…!」
更に追撃する扼城。放たれたのは剣撃ではなく、銃撃。狙うはディーンの視界の遮断を、更なるチャンスに繋げる事。
「てめぇら……なめんじゃ……ねぇぇぇぇえええ!!!」
だが、痛みを力。衝撃を炎に変えたディーンは、激昂のままに両拳を振り下ろす。ミリアの大剣ごと、それはエリシャに叩きつけられ、爆炎を巻き起こす。爆炎は炎の壁となり、弾丸を迎撃すると共に、回復できる以上の速度で、エリシャの体力を奪っていく。
――かくして、最後まで奮戦し、味方の到着の時間を稼ぎ、一撃へと繋げたエリシャは、炎の中に倒れた。
●The Dreams of Alexandre
(あの歪虚の主は…と言う事は)
一方。ディーンの出現の連絡を受けたアルマ・アニムス(ka4901)は、然し後方の違和感の調査に向かう。前方に現れたのがあの歪虚。ならば後方に居る違和感は――
「…いる?何もしない…話しだけ聞いて」
彼と共に後ろに向かったシェリル・マイヤーズ(ka0509)も、また同じ考えを持っていたようだ。武装を放棄し、気配のある馬車へと潜り込む。
――そこには、何も見えない。だが周辺を覆う気配だけは感じる。
「お探しものです?お手伝いしますよっ」
「良い。動くな」
同じように中に入ったアルマが、手伝おうと動いたのを制止する。だが、それは即ち、彼自身の位置が暴露されたと言う事でもあり……光を屈折するマントを脱ぎはらい、アレクサンドルがその姿を現す。その手には、既に1冊の本。後、もう1冊は……
「これじゃないです?」
手を伸ばそうとしたアルマ。然し、其れに先んじて、鋼鉄の腕が本をひょいっと拾い上げる。収まったのは――アレクサンドルの手の中。
「大事な者の…よかった」
「取りはしませんよ。元々それは大事な形見なのでしょう。アレックスさんが持っておくべき物です」
その言葉に、アレクサンドルの警戒心が、僅かに揺らぐ。
「探し物が取れたなら……一般人を逃がして」
「元よりおっさんは彼らに用はない」
「ディーンにも手を出させないで…欲しい。暴れ足りないなら…ハンターが…相手する。叔父様先生の邪魔もしない…」
「あいつにお前たちとだけ戦えと? それは無理な相談だ。暴れだしたアレが…まともに聞くと思うか?」
交渉の結果は、半分ほどか。
「さて、おっさんの目的は達成された。これ以上ここに居る理由もない…ディーンを回収して撤退するとしよう。お前さんたちだって、これ以上ディーンが殺戮を続けるのは望まないだろう?」
「待ってください。前に聞かれたお話、お答えしますっ」
呼び止めたのは、アルマ。
アレクサンドルが宣言した、例え友でも滅ぼす――その話。
「それでも……友達は友達です。アレックスさんもウィリアムさんお友達は否定しなかったです」
「ああ、そうだ。友である事は事実。それでも――」
「アレックスさんともお友達になりたいです。お友達たくさんだと、楽しいことたくさんで幸せですっ。僕、アレックスさんすきです!」
無邪気な彼のその宣言。僅かにアレクサンドルの眉がピクリと動く。
「理想だけでは何も救えんよ。……それともおっさんが、お前さんの愛する人を抹殺してもいいというのか?」
「それは嫌です」
きっぱり。
「だから、次は全力で止めます……僕、諦め悪いですよ?とっても我儘な悪い子ですから!」
ふふ、とアレクサンドルも笑う。
「ならばやって見せるがいい。おっさんの覚悟と、お前さんの望みのぶつかりあいだ…力で、己の望みを貫くが良い」
振り向き、立ち去ろうとする彼の背中に、シェリルがそっと触れる。
「冷たい…ね」
「…人の悪を見てきたからな。冷たくもなる」
「歪虚は嫌い‥でも歪虚も人も‥変わらない‥。人は自分で笑顔を‥潰す」
「…故に、悲劇を阻む為に、全てを滅ぼす」
その心は交わることはなく、アレクサンドルの姿は、光のマントの下へと消える。
●The End of 『Kill』
最初の冷気弾、エリシャによる一刺し、そしてミリアによる貫撃。
既にディーンの体力は大幅に減退していた。だが、その戦意は『血狂い』に支えられ、未だ衰えず。
爆撃を受けたミリアと扼城が己の回復に力を割き、攻撃の手が緩んだその隙を突き、彼は全力でミリアに飛び掛る。咄嗟に大剣で受け止める。が、その瞬間!
「かかったなぁ!」
エリシャが最も警戒し、剣を交えようとしなかった理由が、ここにあった。
鋸の刃が大剣を引っ掛けた瞬間。それは弾き飛ばされ、同じような大剣が、ディーンの手に出現していたのだ。
『武装解除』と『模倣』。其れこそが魔剣『破刃』の能力。刀術に特化した九弦では使いこなせなかったこの刀を、寧ろディーンは120%、使いこなしていたと言えよう。
振り下ろされた己の大剣を、強引に換装した盾で受け止める。後退するミリアであったが、突き刺さる黒刃が、その動きを阻む。
更に振り下ろされる大剣。然し、それは白の大盾によって受け止められる。
「――傷つける者を、僕は赦さない」
立ちはだかったのは、ジョージ・ユニクス(ka0442)。直後、背後から刃が、ディーンを襲う。
「テメェ、俺には狂気が足りねぇつったよなぁ」
振動刀を両手で構える。
「――だったら見せてやるよ、俺が命知らずの馬鹿だって事をさぁ!!」
交差する刀閃。
「がぁぁ!」
「ぐっ…!」
ディーンの大剣がキールの胴を裂いたのと同時に、振動刀はディーンの首筋に大きな傷をつけた。
そこへ更に打ち込まれるロルの冷気弾。
「今度の生贄は――てめぇだ…!」
ジョージを引き寄せ、盾にする。ジョージの防御力は高く、ダメージの転嫁を受けても尚、回復の要を見ない。
放たれる突進の勢いを乗せた突き。ミリアのそれがジョージの鎧の隙間を縫って通り、ディーンの体に突き刺さった瞬間。ジョージもまた拘束を脱し、剣の柄でディーンの頭部を強打する。
動いたのは、キール。木を立体的な動きで蹴り、上方を取った彼は、ワイヤーを振り下ろす。そのワイヤーが狙うは、ディーンの持つ『破刃』。
命中した瞬間――ワイヤーで巻きつけ、引っ張り、奪おうとする。だが――この刃は『破刃』。模倣と武装解除を力とする刀。
「来いよ!!!!」
瞬間、ワイヤーが弾き飛ばされ、ディーンの手にはワイヤーが。
追ってきたミリアに巻きつけてその追撃を止め、ディーンは身を翻す。
「おっさんの命だ……脱出しねぇとな」
「待て!」
ここで逃せば、更に多くの人が脅かされる事になる。
「お前に恨みはないよ。いや、お前ら全体を許せないだけだ!」
怒りに、その身に纏う炎の色が――変わる。無実の人々を殺し、己の力へ変えるディーンへの怒り。
炎を剣に吹き込み、ジョージが横一閃でディーンの背を狙う!
ガン。
動き出したゴーレムが、彼の刃を食い止める。
同様に、扼城の銃撃もまた、もう片方のゴーレムの巨体が止めた。
撤退するディーン。然し、彼とゴーレムたちの距離が離れた瞬間。
「エリシャ! ミリア! 借りるぞ!」
ロルの声とともに、ミリアが空に武器を投げ上げる。
それを狙ったロルの脳裏には、軌道が――見えていた。
「It's your turn!」
弾丸が、エリシャの刺さった刀と、ミリアの盾の間を跳ね返り、ディーンの背を狙う!
「が…っ!」
貫通。既に極限まで戦い続けたディーンがそれに耐えられる筈はなく。
――殺人鬼は、ここにて斃れた。
だが、彼を援護しようとゴーレムたちが飛ばした岩は、次の瞬間、追撃の為前に出たロルを――押しつぶしていた。
「遅かった…か!」
直後到着するアレクサンドル。『破刃』に手をかけ、彼は撤退した。
アレクサンドルはその目標を手に入れた。駆けつけるのが遅れた事で、完全に人的被害も0、と言うわけではない。
――だが、それでも凶敵の一人……ディーン・キルの命脈を、ハンターたちは断ち切ったのであった。
依頼結果
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マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/01/09 15:21:51 |
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相談卓 エリシャ・カンナヴィ(ka0140) エルフ|13才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2016/01/16 03:21:36 |
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質問卓 エリシャ・カンナヴィ(ka0140) エルフ|13才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2016/01/15 20:00:49 |