ゲスト
(ka0000)
高嶺に咲く氷の花
マスター:蒼かなた

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/01/14 12:00
- 完成日
- 2016/01/20 15:48
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●氷晶蜜とは
年も明けて数日。
冬も本番とも言えるこの時期、辺境の大地は真っ白な雪に覆われていた。
「はぁ、寒い。今日も景気よく降ってるね」
ヴァルカン族の族長、ラナ・ブリギットは窓の外で降り積もる雪を眺めながらため息を吐いた。
「族長、失礼します」
そんなラナの元に彼女の右腕であるラッヅが扉を開いて現れた。
「何だい。こっちは休憩に入ったばっかりだよ。丸一日働き詰めだったんだから少しくらい眠らせて欲しいんだけどね」
北伐での大規模な作戦の影響で、武器や防具の修繕にユニットの修理など職人としての仕事が山のように舞い込んでいるのだ。
ラナは手でしっしと追い払うようなしぐさをすると、ラッヅのほうも申し訳ないとは思っているのか苦笑いを浮かべた。
「別に工房に戻ってくださいと言いに来た訳じゃないですよ」
「それじゃあ一体何の用だい?」
「族長にしか判断できないお仕事です」
結局仕事なのかとラナは再度溜息を吐きながらラッヅが持ってきた資料に目を通し始めた。
それは簡単に言えば資材の目録だ。現在の在庫や今後の補充予定、そして消費量などがまとめられている。
そしてそれに目を通したラナは僅かに眉を顰めた。
「やっぱりというか、一部の資材が枯渇しそうだね」
「ええ、鉄や銅みたいな一般的な鉱石は何とかなりそうなんですが。希少素材の類が軒並み底を尽きそうです」
修理と言えど材料はそれなりに必要である。ハンターの使う道具は質の良い素材が使われているので、それを修理するなら相応の物を使わないといけない。
特に高いレベルまで強化している品であるほど必要な素材は多く、希少なものを使わないといけないのだ。
「今んところ他の国からの補給の目途は立ってないし。こりゃ辺境内で自力で集めるしかないね」
一度頭を掻くとラナは足りない素材の一覧の乗ったリストを懐に仕舞い、部屋の隅に掛かっていたマントに手を伸ばした。
「留守の間は頼むよ」
「はい、お気をつけて」
●ハンターオフィス
「今回皆様にお願いしたいのは、とある素材の採取です」
開拓地『ホープ』のハンターオフィスに集められたハンター達はオフィス職員から今回の依頼の説明を受けていた。
「その素材とはグロキエ・フロースから採れる蜜。グロキエ・クリシュ・メル、別名『氷晶蜜』と呼ばれる物です」
オフィス職員が手元のパネルを操作すると、ハンター達の目の前のウィンドウにその詳細が表示される。
グロキエ・フロースは雪の上に咲く花で、この冬の時期に一定の標高のある山の上に生息している。
そしてグロキエ・フロースは土壌からマテリアルを吸い上げ、それを水属性のマテリアルに変換しながら蜜を作り出す。
最初は空に向かって真っ直ぐに咲いていた花は、蜜が溜まるにつれてその重さで段々とお辞儀をするようにして頭を垂れるのだ。
この蜜は液体ではなく氷の結晶のようになっており、これをグラキエ・クリシュ・メル、別名「氷晶蜜」と呼ばれる。
因みにこの氷晶蜜は常に冷気を発している為、夏場には一つは欲しい知る人ぞ知るアイテムでもある。
ただ、氷晶蜜は滅多に一般家庭などに流通することはない。希少であるというのもそうだが、鍛冶に使う素材として大半が消費されるからだ。
「また、今回採取に向かう山は普段人が立ち入らないことから道中も険しく、原生生物による襲撃の可能性もあるので十分に注意してください」
年も明けて数日。
冬も本番とも言えるこの時期、辺境の大地は真っ白な雪に覆われていた。
「はぁ、寒い。今日も景気よく降ってるね」
ヴァルカン族の族長、ラナ・ブリギットは窓の外で降り積もる雪を眺めながらため息を吐いた。
「族長、失礼します」
そんなラナの元に彼女の右腕であるラッヅが扉を開いて現れた。
「何だい。こっちは休憩に入ったばっかりだよ。丸一日働き詰めだったんだから少しくらい眠らせて欲しいんだけどね」
北伐での大規模な作戦の影響で、武器や防具の修繕にユニットの修理など職人としての仕事が山のように舞い込んでいるのだ。
ラナは手でしっしと追い払うようなしぐさをすると、ラッヅのほうも申し訳ないとは思っているのか苦笑いを浮かべた。
「別に工房に戻ってくださいと言いに来た訳じゃないですよ」
「それじゃあ一体何の用だい?」
「族長にしか判断できないお仕事です」
結局仕事なのかとラナは再度溜息を吐きながらラッヅが持ってきた資料に目を通し始めた。
それは簡単に言えば資材の目録だ。現在の在庫や今後の補充予定、そして消費量などがまとめられている。
そしてそれに目を通したラナは僅かに眉を顰めた。
「やっぱりというか、一部の資材が枯渇しそうだね」
「ええ、鉄や銅みたいな一般的な鉱石は何とかなりそうなんですが。希少素材の類が軒並み底を尽きそうです」
修理と言えど材料はそれなりに必要である。ハンターの使う道具は質の良い素材が使われているので、それを修理するなら相応の物を使わないといけない。
特に高いレベルまで強化している品であるほど必要な素材は多く、希少なものを使わないといけないのだ。
「今んところ他の国からの補給の目途は立ってないし。こりゃ辺境内で自力で集めるしかないね」
一度頭を掻くとラナは足りない素材の一覧の乗ったリストを懐に仕舞い、部屋の隅に掛かっていたマントに手を伸ばした。
「留守の間は頼むよ」
「はい、お気をつけて」
●ハンターオフィス
「今回皆様にお願いしたいのは、とある素材の採取です」
開拓地『ホープ』のハンターオフィスに集められたハンター達はオフィス職員から今回の依頼の説明を受けていた。
「その素材とはグロキエ・フロースから採れる蜜。グロキエ・クリシュ・メル、別名『氷晶蜜』と呼ばれる物です」
オフィス職員が手元のパネルを操作すると、ハンター達の目の前のウィンドウにその詳細が表示される。
グロキエ・フロースは雪の上に咲く花で、この冬の時期に一定の標高のある山の上に生息している。
そしてグロキエ・フロースは土壌からマテリアルを吸い上げ、それを水属性のマテリアルに変換しながら蜜を作り出す。
最初は空に向かって真っ直ぐに咲いていた花は、蜜が溜まるにつれてその重さで段々とお辞儀をするようにして頭を垂れるのだ。
この蜜は液体ではなく氷の結晶のようになっており、これをグラキエ・クリシュ・メル、別名「氷晶蜜」と呼ばれる。
因みにこの氷晶蜜は常に冷気を発している為、夏場には一つは欲しい知る人ぞ知るアイテムでもある。
ただ、氷晶蜜は滅多に一般家庭などに流通することはない。希少であるというのもそうだが、鍛冶に使う素材として大半が消費されるからだ。
「また、今回採取に向かう山は普段人が立ち入らないことから道中も険しく、原生生物による襲撃の可能性もあるので十分に注意してください」
リプレイ本文
●雪に覆われた森と崖
グラキエ・クリシュ・メル、またの名を氷晶蜜を求めてハンター達は雪の降り積もった山へと入った。
「さ、寒いわぁ」
沢城 葵(ka3114)はぶるりと体を震わせて防寒具のコートの襟首を押さえた。
「雪山の登山は初めてだが、こんなに寒いものなんだな」
鞍馬 真(ka5819)も吐いた息が悉く凍り付いて白い煙になるのを眺めながら、これから登る山を改めて見上げた。
そんな真の肩をぽんと叩く者がいた。振り返ってみるとそこにはクリムゾンウェストの世界でも見かけることの多くなったCAMのデュミナス、もといでゅみなすの着ぐるみが立っていた。
「……!」
彼、もしくは彼女、中の人は不明なDYNAMIS君(ka5167)は真に向けてぐっと親指を立ててサムズアップを見せる。
恐らくは大丈夫だ、と安心させるためのメッセージなのだろう。
「……まあ、いいです。それよりも今回は珍しい花の蜜を採りにいけるみたいで」
やけに目立つDYNAMIS君を一瞥したクオン・サガラ(ka0018)はさくっと話題を変えて、今回の依頼の目的である氷晶蜜のことについてをラナに尋ねた。
「ああ、別段珍しいってわけでもないけどね。ただ、その姿を拝むにはちょいっと苦労しないといけないだけさ」
ラナが言うにはグロキエ・フロースはある程度標高のある山なら自生しているものなのだと言う。だからその気になればその姿を拝みにいくことはそこまで難しくはない。
「それならわざわざこんな登山に適していない山を選ばなくても良かったんじゃないか?」
ラナの話を聞いていた龍崎・カズマ(ka0178)がそこでそう言葉を返した。それにラナは一度肩を竦めて改めてその問いに答える。
「それにはちゃんと理由があってね。グロキエ・フロースは普通なら群生する花じゃないんだ。山中を虱潰しに探して1輪しか見つからないってこともある」
「それはまた。でもその言い方だとこの山は普通ではないってことですか?」
「その通り。聖地が近いおかげかは知らないがこの付近の山にはグロキエ・フロースが群生する場所がいくつかあってね。その中でも比較的登りやすいのがここってわけさ」
「なるほどな」
ラナの説明に納得がいったのかカズマも一度頷いた。
「……あの、ラナのお姉はん……お久しゅう」
「おや、アンタは――」
ぺこりと頭をさげて挨拶してきた浅黄 小夜(ka3062)に、ラナは一度顎下に手を当てて考え、そしてすぐに思い出したのかぽんと手を打った。
「ああ、ハチミツ採りの時に一緒だった子だね。名前は小夜でよかったかい?」
「……はい。今回も……案内、よろしゅう、お頼み申します……」
再び頭を下げる小夜にラナは手をひらひら降って答える。
「それより蜜の採取依頼でまた再開するとはね。もしかして甘い物好きかい?」
「あっ、その……ちょっとは……気になって、ます」
にんまりとした笑みを浮かべるラナに小夜は僅かにたじろぎながらも素直に答えた。
「ふふっ、そうかい。なら喜びな。氷晶蜜はそのままじゃ食べられないけど――」
「皆、止まって」
と、そこで先導していたアルト・ヴァレンティーニ(ka3109)が立ち止まり皆を手で制した。
「敵……の、気配はしないな。何かあったか?」
カズマは周囲を見渡すが、自分達以外の気配がないことを確認しアルトに尋ねる。
「これを――」
そう言ってアルトが示したのは降り積もった雪に残る足跡と、そして白い雪を赤く染める血痕が僅かながら見て取れた。
「どれ……どうやらこれは狼の足跡じゃのう。こっちは鹿のものかの」
蜜鈴=カメーリア・ルージュ(ka4009)は雪に残る足跡からそう判断した。足跡も血痕もまだ新しい。ここでナニカが起きてからそれほど時間は経っていないだろう。
「ここより先は彼の者達の領域。より警戒して進まんとのう」
そう口にしながら蜜鈴は畳んだままの扇を口元に当てる。その隠れきれていない微笑は余裕の現れか、はたまた……。
「なに、狼如きに恐れを抱くハンター様じゃないだろう? さあ、出発するよ」
ラナの一声でハンター達は再び雪に覆われた森を進みだした。
それから1時間ほど歩いたところでハンター達は森を抜けた。幸い獣や亜人に襲われることはなく、登山の進捗は順調と言えた。
そして森の次にハンター達の前に現れたのは急勾配な崖である。
「まさかここをまっすぐ登るとか言わないよな?」
「ははっ、まさか。ちゃんと抜け道があるよ。ほら、こっちだ」
そう言ってラナはハンター達を引き連れて崖を迂回するように進んでいく。そして案内したのは同じく急勾配な崖の前であった。見上げてみても正直登れそうな要素は一つもない。
「ああ、違う違う。こっちだよ、こっち」
そう言ってラナはハンター達の視線を別の場所へと誘導した。その場所をよく見てみると、崖から張り出している氷が丁度足場のようになっている。そしてその氷の足場が階段のように崖の先のほうへと延びていっているのが見えた。
ただ、階段と言ってもその段差は人の背丈より高く、たまに人1人が余裕で落ちれる隙間が開いていたりするが。
「ハンター専用通路ってわけか。こりゃあこの山に一般人が立ち入らないわけだ」
カズマの台詞は恐らく他のハンター達も同意見であろう。誰も好き好んでこんな死と隣り合わせなアスレチックをしたいとは思わない。
とにもかくにも、ハンター達はラナの先導を受けながら氷で出来た階段を使い崖を登ることとなる。
「さあ、掴まってください」
上の段にいるクオンが伸ばした手に葵が捕まり、クオンはそのまま筋力だけで葵の体を上へと引き上げる。
「ありがとねぇ。それにしてこんな場面どこかで見た覚えがあるわぁ」
「? とりあえず沢城さんも他の人を引き上げるのを手伝ってください」
どこでだったかしらと首を捻る葵も、クオンの言葉でそれもそうねと他の皆を引き上げる手伝いに参加する。
「これで崖の半分くらいか。まだ先は長いな」
最後に引き上げられた真は氷の足場の端から下を眺めてみる。地面も大分遠くなっており、崖を回る形で登ってきたのでスタート地点はもはや見えなくなっている。
「ここの足場は広いし。少し休憩しておこうか」
「そうだな。なら温かいお茶でもどうかな? 用意してきたんだ」
ラナの言葉にアルトは荷物から水筒を取り出して軽く振って見せる。祝福を受けた水筒からは湯気のでる温かいお茶が注がれ、冷え切っていたハンター達の体を温めた。
●氷の花園
凍てついた森と急勾配な崖を登りきり、ハンター達はついに頂上近くの高原へとやってきた。
そこはこれまでのでこぼこと人を阻むような険しい地形とは打って変わって、遮蔽物になるものが1つもないなだらかな坂だけが続いていた。
「これはこれは。雪の兎でも跳ねておりそうな雪景色じゃのう」
「雪の兎って、そんな歪虚がいるのか?」
綺麗な雪景色に感嘆の声を漏らす蜜鈴の言葉に、真がそう尋ねてきた。
それに蜜鈴は一瞬きょとんとした顔をしてから、くすくすと笑いだす。
「おんしは面白いことを言うのう。雪の兎ならば可愛らしい妖精であって欲しいものじゃの」
そこでぽふぽふっと妙に軽い音がした。皆がそちらを向けば少し先を行っていたDYNAMIS君が皆に合図を送るために手を叩いていたらしく、何やら彼の立つ丘を越えた先に何かを見つけたらしい。
皆が丘を登ってみたところで、そこにはこれまで白一色しかなかった山に初めて彩りが生まれた。
広くなだらかに積もった雪の上で、淡い青色を携えた花がその一面に咲き誇っていた。その花は氷のように透き通った花びらを持ち、その中にある宝石のような結晶が太陽の光を反射してきらきらと眩しく輝いている。
花の数は10や20どころではなく、その広さゆえに数え切れぬほどの氷の花がその場所には咲き乱れていた。
そしてその花畑のあちこちで半透明な薄い羽根をもった蝶がひらりひらりと舞っていた。その蝶は時折風に吹かれて舞い上がり、暫し空を飛ぶのを楽しんだあとまた花へと降りてその氷細工のような羽を休めている。
「……すごい、綺麗」
その幻想的な光景に小夜が思わず言葉を漏らした。
「ホント、綺麗としか言えないわぁ。それにこの花畑も想像以上に広くて驚いちゃったわ」
葵が見渡す限りでは丘に囲まれてやや窪んだこの地形だけでも数百本のグロキエ・フロースが咲いているように見えた。
「どうやら今年は当たりだったみたいだね。いつもはこの半分も咲いてないんだよ」
「それなら僥倖ですね。では早速始めましょうか」
ハンター達は見張りと採取の班に分かれて氷晶蜜の採取に取り掛かった。
「いいかい? これくらい頭を垂れてる奴が採取オッケーの証さ」
「そうか。で、あとは花の下に手を添えて……苞部分を軽く叩けばいいだろうか?」
「おっ、その通りだよ。するどいね。じゃあ試してごらん」
カズマはラナに氷晶蜜の採取方法を教わりながら1つ目の採取に挑戦する。大きく頭を垂れている花の下へと手を添え、そして苞の部分を指先でトンっと叩いてみた。
するとパキッと薄氷が割れる小さな音がして、カズマの手の中にビー玉サイズの氷の塊のような蜜が落ちてきた。
「無事採取できたようだね。この調子でどんどん頼むよ」
「この調子ならすぐに袋一杯集まりそうだな。氷蝶も大人しいし」
丁度よさげに頭を垂れた花から氷晶蜜を回収した真は周囲を舞う氷蝶へ視線を向ける。
依頼を受ける前に注意された通り、不用意に近寄ったりして刺激しなければ何もしてくる様子はなかった。ただ数は多くそこら中を舞っているので花畑の中を歩く時は十分に注意をしなければならなかったが。
そうやって順調に採取を進めていく中で、周囲の警戒をしていたクオンの耳に自分達のものではない氷を踏みしめる足音が聞こえた。
クオンがその音のした方向へ魔導銃を向けスコープを覗いてみると、灰色の毛並みの狼が数匹こちらに向けて歩いてきているのが見えた。
「……狼が数匹こちらに向かってきています。まだわたし達の存在には気づいていないようですが、どうしますか?」
クオンは通信機を使ってそう皆に呼びかけた。それから正確な数、方角、別の群れの存在の確認をする通信を幾度か繰り返した後、カズマとアルトが採取を一度中断し狼達の元へと向かうこととなる。
「数は報告通り。飢えている様子もなさそうだな。デザートでも食べにきたか?」
カズマは丘の上から狼達の姿を見下ろしたところで、狼達の口元が赤く染まっていることに気づいた。恐らく狩りをして獲物にありついたばかりなのだろう。
空腹でハンター達を追って来たのでもないのなら、この狼達が何の目的でこの花園までやってきたのかは不明だ。
ただ、このまま花畑に入られてハンター達と鉢合わせていたら一悶着が発生するのは明らかである。それで氷蝶を刺激するわけにはいかない。
「手前勝手な理由で悪いが、ここは引き返してくれないか?」
アルトは狼達にそう語り掛ける。人間の言葉が伝わるとは思ってはいない。ただ、覚醒することによってその体からは燃え盛る炎にも似たオーラが噴き出し、その派手な外見とは裏腹に氷のように冷たくなった視線で狼達の姿を射抜く。
カズマも同じように覚醒し、そして鉤爪型の魔導機械が音を立てながら展開されていく。
そんな2人の様子に狼達も臨戦態勢を取るが、野生動物である彼らにもその実力の差がしっかりと分かっているのだろう。襲い掛かってこようとはせず、じりじりと後ろへと下がっていく。そして――
『オオォォーーン!』
狼の1頭が遠吠えを上げた。その瞬間、すぐ傍の花畑から氷蝶が一斉に飛び上がる。そしてその羽を震わせてきらきらと光る鱗粉を周囲へとばら撒き始めた。
「っ! ちぃっ!?」
そしてカズマとアルトがそれに一瞬気を取られた隙に、狼達は散開して逃げ出していた。四方八方に逃げ出しているので追うのは難しい。
もとより逃げたのなら追う必要はないのだが、丘を迂回して花畑のほうへ向かってしまったものも数匹いた。
「おっと、狼の遠吠えだけでもビビるなんて思ったより臆病な奴らだね」
「ブリギット、そんな悠長なこと言ってる場合じゃないわよぉ」
葵は鱗粉を巻き続ける氷蝶達に向けて眠りの霧を発生させて沈静化を図る。しっかり効果はあるようで、氷蝶はひらひらと花畑の中へと落ちてゆく。
「とは言っても、ここらは流石にもう駄目だね」
ラナは傍に咲いている氷の花が心なしか萎れているのを見て溜息を吐いた。
「何やら騒々しくなってしまったのう」
一方少し離れた場所で蜜の採取をしていた蜜鈴は、蜜の採取時に花を叩くのに使っていた煙管を指先でくるりと回す。
「……お手伝い……行った方が、ええかな……?」
そんな蜜鈴と行動を共にしていた小夜も、遠目で忙しそうにしている仲間達を見てそう思案する。
「それもよいが。まずはこちらが先じゃのう」
蜜鈴が視線を横にずらせば、丘を越えて1匹の狼がこちらへと向かってきていた。あちらから逃げ出してきた1匹なのだろうが、無作法にも氷花を踏みつけながら走る所為で氷蝶達が飛び立ちこちらでも鱗粉を巻き始めてしまう。
「お花が……氷蝶も……怖がってます……」
「獣とは言えどその所業は目に余るのう」
それを見た小夜と蜜鈴は狼の進路を塞ぐようにして立ちはだかると、それぞれ己の獲物を手にして覚醒する。
小夜はこの氷の花畑と合わせるかのようにその髪色を透き通った蒼色へと変え、そして足元に現れた黒猫の幻影が狼を威嚇する。
蜜鈴は足元の赤い魔法陣から炎のオーラで構築された龍を召喚し、龍は召喚主を守るかのようにして蜜鈴の周囲を渦巻くようにして飛んでいる。
その2人に気づいて狼は再び足を止めた。そして唸り声を上げ始める。
「無粋じゃのう。蝶達がおびえてかなわぬわ――凶暴なる微睡み、安寧の敵を闇夜の彼方へと誘え」
蜜鈴は言葉の後半を歌うように読み上げると、その周囲に朱金の蝶を舞わせる。そして1匹の蝶が狼の元へと飛ぶと、蝶は青白い靄へと変わりそのまま狼を包み込んだ。
「……他には、いないみたい……」
小夜が周囲を見渡す限りではどうやら他の狼はこちらには来ていないようだった。
「そのようじゃのう。ならこのまま……おや?」
その時、1匹の氷蝶がひらりと羽を羽ばたかせ蜜鈴の右肩へと止まった。鱗粉も撒いてはおらず、どうやら狼が眠ったことで落ち着きを取り戻したらしい。
続くようにして小夜の肩にも同じよう蝶が止まる。
「……これじゃあ、動けない……ですね」
「ああ、おんしの言う通り。身動き一つとれん。これは困ったのう」
口ではそう言いつつも、本当に困ったようすは見せず。蜜鈴はどこか懐かしさを覚える出来事にしばし思いを馳せるのであった。
グラキエ・クリシュ・メル、またの名を氷晶蜜を求めてハンター達は雪の降り積もった山へと入った。
「さ、寒いわぁ」
沢城 葵(ka3114)はぶるりと体を震わせて防寒具のコートの襟首を押さえた。
「雪山の登山は初めてだが、こんなに寒いものなんだな」
鞍馬 真(ka5819)も吐いた息が悉く凍り付いて白い煙になるのを眺めながら、これから登る山を改めて見上げた。
そんな真の肩をぽんと叩く者がいた。振り返ってみるとそこにはクリムゾンウェストの世界でも見かけることの多くなったCAMのデュミナス、もといでゅみなすの着ぐるみが立っていた。
「……!」
彼、もしくは彼女、中の人は不明なDYNAMIS君(ka5167)は真に向けてぐっと親指を立ててサムズアップを見せる。
恐らくは大丈夫だ、と安心させるためのメッセージなのだろう。
「……まあ、いいです。それよりも今回は珍しい花の蜜を採りにいけるみたいで」
やけに目立つDYNAMIS君を一瞥したクオン・サガラ(ka0018)はさくっと話題を変えて、今回の依頼の目的である氷晶蜜のことについてをラナに尋ねた。
「ああ、別段珍しいってわけでもないけどね。ただ、その姿を拝むにはちょいっと苦労しないといけないだけさ」
ラナが言うにはグロキエ・フロースはある程度標高のある山なら自生しているものなのだと言う。だからその気になればその姿を拝みにいくことはそこまで難しくはない。
「それならわざわざこんな登山に適していない山を選ばなくても良かったんじゃないか?」
ラナの話を聞いていた龍崎・カズマ(ka0178)がそこでそう言葉を返した。それにラナは一度肩を竦めて改めてその問いに答える。
「それにはちゃんと理由があってね。グロキエ・フロースは普通なら群生する花じゃないんだ。山中を虱潰しに探して1輪しか見つからないってこともある」
「それはまた。でもその言い方だとこの山は普通ではないってことですか?」
「その通り。聖地が近いおかげかは知らないがこの付近の山にはグロキエ・フロースが群生する場所がいくつかあってね。その中でも比較的登りやすいのがここってわけさ」
「なるほどな」
ラナの説明に納得がいったのかカズマも一度頷いた。
「……あの、ラナのお姉はん……お久しゅう」
「おや、アンタは――」
ぺこりと頭をさげて挨拶してきた浅黄 小夜(ka3062)に、ラナは一度顎下に手を当てて考え、そしてすぐに思い出したのかぽんと手を打った。
「ああ、ハチミツ採りの時に一緒だった子だね。名前は小夜でよかったかい?」
「……はい。今回も……案内、よろしゅう、お頼み申します……」
再び頭を下げる小夜にラナは手をひらひら降って答える。
「それより蜜の採取依頼でまた再開するとはね。もしかして甘い物好きかい?」
「あっ、その……ちょっとは……気になって、ます」
にんまりとした笑みを浮かべるラナに小夜は僅かにたじろぎながらも素直に答えた。
「ふふっ、そうかい。なら喜びな。氷晶蜜はそのままじゃ食べられないけど――」
「皆、止まって」
と、そこで先導していたアルト・ヴァレンティーニ(ka3109)が立ち止まり皆を手で制した。
「敵……の、気配はしないな。何かあったか?」
カズマは周囲を見渡すが、自分達以外の気配がないことを確認しアルトに尋ねる。
「これを――」
そう言ってアルトが示したのは降り積もった雪に残る足跡と、そして白い雪を赤く染める血痕が僅かながら見て取れた。
「どれ……どうやらこれは狼の足跡じゃのう。こっちは鹿のものかの」
蜜鈴=カメーリア・ルージュ(ka4009)は雪に残る足跡からそう判断した。足跡も血痕もまだ新しい。ここでナニカが起きてからそれほど時間は経っていないだろう。
「ここより先は彼の者達の領域。より警戒して進まんとのう」
そう口にしながら蜜鈴は畳んだままの扇を口元に当てる。その隠れきれていない微笑は余裕の現れか、はたまた……。
「なに、狼如きに恐れを抱くハンター様じゃないだろう? さあ、出発するよ」
ラナの一声でハンター達は再び雪に覆われた森を進みだした。
それから1時間ほど歩いたところでハンター達は森を抜けた。幸い獣や亜人に襲われることはなく、登山の進捗は順調と言えた。
そして森の次にハンター達の前に現れたのは急勾配な崖である。
「まさかここをまっすぐ登るとか言わないよな?」
「ははっ、まさか。ちゃんと抜け道があるよ。ほら、こっちだ」
そう言ってラナはハンター達を引き連れて崖を迂回するように進んでいく。そして案内したのは同じく急勾配な崖の前であった。見上げてみても正直登れそうな要素は一つもない。
「ああ、違う違う。こっちだよ、こっち」
そう言ってラナはハンター達の視線を別の場所へと誘導した。その場所をよく見てみると、崖から張り出している氷が丁度足場のようになっている。そしてその氷の足場が階段のように崖の先のほうへと延びていっているのが見えた。
ただ、階段と言ってもその段差は人の背丈より高く、たまに人1人が余裕で落ちれる隙間が開いていたりするが。
「ハンター専用通路ってわけか。こりゃあこの山に一般人が立ち入らないわけだ」
カズマの台詞は恐らく他のハンター達も同意見であろう。誰も好き好んでこんな死と隣り合わせなアスレチックをしたいとは思わない。
とにもかくにも、ハンター達はラナの先導を受けながら氷で出来た階段を使い崖を登ることとなる。
「さあ、掴まってください」
上の段にいるクオンが伸ばした手に葵が捕まり、クオンはそのまま筋力だけで葵の体を上へと引き上げる。
「ありがとねぇ。それにしてこんな場面どこかで見た覚えがあるわぁ」
「? とりあえず沢城さんも他の人を引き上げるのを手伝ってください」
どこでだったかしらと首を捻る葵も、クオンの言葉でそれもそうねと他の皆を引き上げる手伝いに参加する。
「これで崖の半分くらいか。まだ先は長いな」
最後に引き上げられた真は氷の足場の端から下を眺めてみる。地面も大分遠くなっており、崖を回る形で登ってきたのでスタート地点はもはや見えなくなっている。
「ここの足場は広いし。少し休憩しておこうか」
「そうだな。なら温かいお茶でもどうかな? 用意してきたんだ」
ラナの言葉にアルトは荷物から水筒を取り出して軽く振って見せる。祝福を受けた水筒からは湯気のでる温かいお茶が注がれ、冷え切っていたハンター達の体を温めた。
●氷の花園
凍てついた森と急勾配な崖を登りきり、ハンター達はついに頂上近くの高原へとやってきた。
そこはこれまでのでこぼこと人を阻むような険しい地形とは打って変わって、遮蔽物になるものが1つもないなだらかな坂だけが続いていた。
「これはこれは。雪の兎でも跳ねておりそうな雪景色じゃのう」
「雪の兎って、そんな歪虚がいるのか?」
綺麗な雪景色に感嘆の声を漏らす蜜鈴の言葉に、真がそう尋ねてきた。
それに蜜鈴は一瞬きょとんとした顔をしてから、くすくすと笑いだす。
「おんしは面白いことを言うのう。雪の兎ならば可愛らしい妖精であって欲しいものじゃの」
そこでぽふぽふっと妙に軽い音がした。皆がそちらを向けば少し先を行っていたDYNAMIS君が皆に合図を送るために手を叩いていたらしく、何やら彼の立つ丘を越えた先に何かを見つけたらしい。
皆が丘を登ってみたところで、そこにはこれまで白一色しかなかった山に初めて彩りが生まれた。
広くなだらかに積もった雪の上で、淡い青色を携えた花がその一面に咲き誇っていた。その花は氷のように透き通った花びらを持ち、その中にある宝石のような結晶が太陽の光を反射してきらきらと眩しく輝いている。
花の数は10や20どころではなく、その広さゆえに数え切れぬほどの氷の花がその場所には咲き乱れていた。
そしてその花畑のあちこちで半透明な薄い羽根をもった蝶がひらりひらりと舞っていた。その蝶は時折風に吹かれて舞い上がり、暫し空を飛ぶのを楽しんだあとまた花へと降りてその氷細工のような羽を休めている。
「……すごい、綺麗」
その幻想的な光景に小夜が思わず言葉を漏らした。
「ホント、綺麗としか言えないわぁ。それにこの花畑も想像以上に広くて驚いちゃったわ」
葵が見渡す限りでは丘に囲まれてやや窪んだこの地形だけでも数百本のグロキエ・フロースが咲いているように見えた。
「どうやら今年は当たりだったみたいだね。いつもはこの半分も咲いてないんだよ」
「それなら僥倖ですね。では早速始めましょうか」
ハンター達は見張りと採取の班に分かれて氷晶蜜の採取に取り掛かった。
「いいかい? これくらい頭を垂れてる奴が採取オッケーの証さ」
「そうか。で、あとは花の下に手を添えて……苞部分を軽く叩けばいいだろうか?」
「おっ、その通りだよ。するどいね。じゃあ試してごらん」
カズマはラナに氷晶蜜の採取方法を教わりながら1つ目の採取に挑戦する。大きく頭を垂れている花の下へと手を添え、そして苞の部分を指先でトンっと叩いてみた。
するとパキッと薄氷が割れる小さな音がして、カズマの手の中にビー玉サイズの氷の塊のような蜜が落ちてきた。
「無事採取できたようだね。この調子でどんどん頼むよ」
「この調子ならすぐに袋一杯集まりそうだな。氷蝶も大人しいし」
丁度よさげに頭を垂れた花から氷晶蜜を回収した真は周囲を舞う氷蝶へ視線を向ける。
依頼を受ける前に注意された通り、不用意に近寄ったりして刺激しなければ何もしてくる様子はなかった。ただ数は多くそこら中を舞っているので花畑の中を歩く時は十分に注意をしなければならなかったが。
そうやって順調に採取を進めていく中で、周囲の警戒をしていたクオンの耳に自分達のものではない氷を踏みしめる足音が聞こえた。
クオンがその音のした方向へ魔導銃を向けスコープを覗いてみると、灰色の毛並みの狼が数匹こちらに向けて歩いてきているのが見えた。
「……狼が数匹こちらに向かってきています。まだわたし達の存在には気づいていないようですが、どうしますか?」
クオンは通信機を使ってそう皆に呼びかけた。それから正確な数、方角、別の群れの存在の確認をする通信を幾度か繰り返した後、カズマとアルトが採取を一度中断し狼達の元へと向かうこととなる。
「数は報告通り。飢えている様子もなさそうだな。デザートでも食べにきたか?」
カズマは丘の上から狼達の姿を見下ろしたところで、狼達の口元が赤く染まっていることに気づいた。恐らく狩りをして獲物にありついたばかりなのだろう。
空腹でハンター達を追って来たのでもないのなら、この狼達が何の目的でこの花園までやってきたのかは不明だ。
ただ、このまま花畑に入られてハンター達と鉢合わせていたら一悶着が発生するのは明らかである。それで氷蝶を刺激するわけにはいかない。
「手前勝手な理由で悪いが、ここは引き返してくれないか?」
アルトは狼達にそう語り掛ける。人間の言葉が伝わるとは思ってはいない。ただ、覚醒することによってその体からは燃え盛る炎にも似たオーラが噴き出し、その派手な外見とは裏腹に氷のように冷たくなった視線で狼達の姿を射抜く。
カズマも同じように覚醒し、そして鉤爪型の魔導機械が音を立てながら展開されていく。
そんな2人の様子に狼達も臨戦態勢を取るが、野生動物である彼らにもその実力の差がしっかりと分かっているのだろう。襲い掛かってこようとはせず、じりじりと後ろへと下がっていく。そして――
『オオォォーーン!』
狼の1頭が遠吠えを上げた。その瞬間、すぐ傍の花畑から氷蝶が一斉に飛び上がる。そしてその羽を震わせてきらきらと光る鱗粉を周囲へとばら撒き始めた。
「っ! ちぃっ!?」
そしてカズマとアルトがそれに一瞬気を取られた隙に、狼達は散開して逃げ出していた。四方八方に逃げ出しているので追うのは難しい。
もとより逃げたのなら追う必要はないのだが、丘を迂回して花畑のほうへ向かってしまったものも数匹いた。
「おっと、狼の遠吠えだけでもビビるなんて思ったより臆病な奴らだね」
「ブリギット、そんな悠長なこと言ってる場合じゃないわよぉ」
葵は鱗粉を巻き続ける氷蝶達に向けて眠りの霧を発生させて沈静化を図る。しっかり効果はあるようで、氷蝶はひらひらと花畑の中へと落ちてゆく。
「とは言っても、ここらは流石にもう駄目だね」
ラナは傍に咲いている氷の花が心なしか萎れているのを見て溜息を吐いた。
「何やら騒々しくなってしまったのう」
一方少し離れた場所で蜜の採取をしていた蜜鈴は、蜜の採取時に花を叩くのに使っていた煙管を指先でくるりと回す。
「……お手伝い……行った方が、ええかな……?」
そんな蜜鈴と行動を共にしていた小夜も、遠目で忙しそうにしている仲間達を見てそう思案する。
「それもよいが。まずはこちらが先じゃのう」
蜜鈴が視線を横にずらせば、丘を越えて1匹の狼がこちらへと向かってきていた。あちらから逃げ出してきた1匹なのだろうが、無作法にも氷花を踏みつけながら走る所為で氷蝶達が飛び立ちこちらでも鱗粉を巻き始めてしまう。
「お花が……氷蝶も……怖がってます……」
「獣とは言えどその所業は目に余るのう」
それを見た小夜と蜜鈴は狼の進路を塞ぐようにして立ちはだかると、それぞれ己の獲物を手にして覚醒する。
小夜はこの氷の花畑と合わせるかのようにその髪色を透き通った蒼色へと変え、そして足元に現れた黒猫の幻影が狼を威嚇する。
蜜鈴は足元の赤い魔法陣から炎のオーラで構築された龍を召喚し、龍は召喚主を守るかのようにして蜜鈴の周囲を渦巻くようにして飛んでいる。
その2人に気づいて狼は再び足を止めた。そして唸り声を上げ始める。
「無粋じゃのう。蝶達がおびえてかなわぬわ――凶暴なる微睡み、安寧の敵を闇夜の彼方へと誘え」
蜜鈴は言葉の後半を歌うように読み上げると、その周囲に朱金の蝶を舞わせる。そして1匹の蝶が狼の元へと飛ぶと、蝶は青白い靄へと変わりそのまま狼を包み込んだ。
「……他には、いないみたい……」
小夜が周囲を見渡す限りではどうやら他の狼はこちらには来ていないようだった。
「そのようじゃのう。ならこのまま……おや?」
その時、1匹の氷蝶がひらりと羽を羽ばたかせ蜜鈴の右肩へと止まった。鱗粉も撒いてはおらず、どうやら狼が眠ったことで落ち着きを取り戻したらしい。
続くようにして小夜の肩にも同じよう蝶が止まる。
「……これじゃあ、動けない……ですね」
「ああ、おんしの言う通り。身動き一つとれん。これは困ったのう」
口ではそう言いつつも、本当に困ったようすは見せず。蜜鈴はどこか懐かしさを覚える出来事にしばし思いを馳せるのであった。
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ブリギットに質問がある人ぉ 沢城 葵(ka3114) 人間(リアルブルー)|28才|男性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2016/01/13 19:45:23 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/01/10 22:56:58 |
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相談 DYNAMIS君(ka5167) 人間(リアルブルー)|74才|男性|舞刀士(ソードダンサー) |
最終発言 2016/01/13 20:14:55 |