ゲスト
(ka0000)
放置屋敷と歪虚たち
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/01/19 12:00
- 完成日
- 2016/01/26 00:43
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●怯えるパルム、同胞に助けを求める
グラズヘイム王国の中央北東寄りに位置する小さな町。
その町を通り過ぎようと街道を行く旅人の前に、瀕死に見えるパルムが一体転がっていた。旅人はパルムを拾うと、あわててエクラ教会に駆け込み見た状況をそのまま告げる。
困った司祭はひとまず水を張った皿にパルムを浸けてみた。
そもそも精霊で植物ではないから関係ないと思うが試さずにはいられない。試に『ヒール』もかけてみたが、効いているのか分からない。司祭が尽くせる手は尽くした。
パルムを水に浸けた後、司祭は隣に住む魔術師の手を借りようと走った。しかし、魔術師は留守で応対に出たのは弟子だった。それでもいいのかと司祭は思う。彼女が連れているペットのパルムがひょっとしたら対応してくれるかもしれないと、淡い期待があったからだった。
魔術師の弟子と共に教会に戻り一時間。
拾われたパルムは人心地付いたのか、皿の上でごろごろしていた。
「……助かったんですか?」
魔術師の弟子であるルゥルが舌足らず気味な口調で尋ねる。
「おそらくは……干からびがなくなっていますから」
司祭であるマークが答える。
ルゥルのペットのパルム……名前はポルムという、はテーブルの上でパルムと会話をしている。
「きゅ」
「きゅゆ?」
「きゅきゅきききゅ」
ルゥルもマークもルゥルのもう一匹のペットのフェレットもその会話は分からない。ただ、じっと聞いている。
どうやら話がまとまったようなのは理解した。
パルムは感涙にむせびながら小さな手を打ち鳴らし、ポルムが胸を張って拳を打ちつけたから。
「ありがとう、きっと応じてくれると思ったよ……です」
「任せておけ……と言うところでしょうか?」
ルゥルとマークはアテレコをしたが、『何を』『どうする』がさっぱり分からない。
ポルムはルゥルに向かって何かを一生懸命言っている。
――立ちはだかる言葉の壁。
「ためしに紙とペンを渡してみます」
ルゥルがポルムに手渡した。
「……」
ルゥルとマークは息をのんで様子をうかがう。ポルムは書き終え、理解したかとでも言うように期待を込めてルゥルとマークを見ている。
「……」
「えと……、もこもこさんがいたんですか?」
ポルムは燃え尽きた、ルゥルは友達きっと分かってくれると信じていたから。
「もこもこは歪虚ですか?」
マークの追加情報にポルムはうなずいた。
ルゥルは嫉妬する、友達の気持ちがマークに分かって自分に分からないはずはないと。
「このもこもこを退治すればいいんですね!」
「きゅー」
「私も理解できました」
マークは思った、推測であって理解ではないと。でも、大人だし、エクラ教の司祭だし、色々考えて黙った。
「ハンターさんに頼むです」
「……待ってください。その費用も考えて、調査を行います。領主に請求です」
「……マークさん、ジャイルズさんみたいですよ……」
ジャイルズとは同じ町に住む薬草園の主であり、合理主義なところがある。彼は依頼するならまとめてかつ領主に請求書を回すということを的確にやってきた。
「……褒め言葉です」
「私はそんなに頼りなかったですか」
今度はマークが落ち込んだ。
●怒りのルゥル、事務所で熱弁を振るう
隣の大きな町にあるハンターズソサエティの支部で、ルゥルは怒りと涙の大演説をした。
「ロビンさん、いいですか! 今回、ハンターさんが来てくれないと、ルゥルがお出かけするところが減ってしまうです。それにあの林は子どもたちの遊び場ですし、茸に木の実に、恵みを受け取るところでもあるんでぃーーーーす! 林は街道に隣接しているのですから、安全でないと町が寂れるです。そして、グラズヘイム王国も寂しくなります! 国の問題です! ですから、ロビンさんがこう、力説して、是非とも依頼を魅力的に見せてもらって……みぎゃあああああ」
「……ご、ごめん、ルゥルちゃん、泣かないで。ほ、ほら、これ、炭酸飲料といってリアルブルーの飲み物だって。あ、これポテトチップスで……」
いつも来訪者との会話を楽しんでいる二枚目半の受付男子ロビン・ドルトスは、本当に困っていた。周りにある誰かが持ち込んだおやつを並べて機嫌を取ることを始める。
「しゃー」
「きゅきゅきゅ」
ルゥルが泣き始めたことで、ペットであるフェレットとパルムが一斉にロビンに抗議をしている。
「いや、うん、僕のせいなのかな?」
語尾が上がり、周囲に助けを求めるロビン。同僚はにこにことして「がんばれ」と告げ、通りがかったハンターも笑っていた。
珍事だ、助けはなし。
「ル、ルゥルは、悲しいです。丘の上でパルムを食べるイベントが催されているなんて! みぎゃあああああああああああああああああああああああああああ」
「……え? え? そういう内容だったっけ?」
「ぎゅううううううううううう」
ポルムが怒りの声を上げたため、どうやら本当にあったことらしかった。
「……わ、分かった、分かったよ! ルゥルちゃん、君の可愛らしいお目が溶けてなくなってしまうから、それ以上は泣いてはいけない」
きょとんとしたルゥルはひとまず泣き止んだ。
「ところで、丘にはどうやって登るのか知っているかい?」
「のり面をえっちらおっちら」
「……木が茂っているあそこ?」
「はい。あの街道歩いていると石が飛んできたこともあると聞きましたよ?」
「その通りです、情報通ですね、ルゥルちゃん」
「任せてください」
「では、ハンターの募集を掛けますね」
「費用は領主さまにお願いします」
「……その交渉は」
ルゥルの目はキラキラとロビンに向かい、こくんと首を縦に振った。
グラズヘイム王国の中央北東寄りに位置する小さな町。
その町を通り過ぎようと街道を行く旅人の前に、瀕死に見えるパルムが一体転がっていた。旅人はパルムを拾うと、あわててエクラ教会に駆け込み見た状況をそのまま告げる。
困った司祭はひとまず水を張った皿にパルムを浸けてみた。
そもそも精霊で植物ではないから関係ないと思うが試さずにはいられない。試に『ヒール』もかけてみたが、効いているのか分からない。司祭が尽くせる手は尽くした。
パルムを水に浸けた後、司祭は隣に住む魔術師の手を借りようと走った。しかし、魔術師は留守で応対に出たのは弟子だった。それでもいいのかと司祭は思う。彼女が連れているペットのパルムがひょっとしたら対応してくれるかもしれないと、淡い期待があったからだった。
魔術師の弟子と共に教会に戻り一時間。
拾われたパルムは人心地付いたのか、皿の上でごろごろしていた。
「……助かったんですか?」
魔術師の弟子であるルゥルが舌足らず気味な口調で尋ねる。
「おそらくは……干からびがなくなっていますから」
司祭であるマークが答える。
ルゥルのペットのパルム……名前はポルムという、はテーブルの上でパルムと会話をしている。
「きゅ」
「きゅゆ?」
「きゅきゅきききゅ」
ルゥルもマークもルゥルのもう一匹のペットのフェレットもその会話は分からない。ただ、じっと聞いている。
どうやら話がまとまったようなのは理解した。
パルムは感涙にむせびながら小さな手を打ち鳴らし、ポルムが胸を張って拳を打ちつけたから。
「ありがとう、きっと応じてくれると思ったよ……です」
「任せておけ……と言うところでしょうか?」
ルゥルとマークはアテレコをしたが、『何を』『どうする』がさっぱり分からない。
ポルムはルゥルに向かって何かを一生懸命言っている。
――立ちはだかる言葉の壁。
「ためしに紙とペンを渡してみます」
ルゥルがポルムに手渡した。
「……」
ルゥルとマークは息をのんで様子をうかがう。ポルムは書き終え、理解したかとでも言うように期待を込めてルゥルとマークを見ている。
「……」
「えと……、もこもこさんがいたんですか?」
ポルムは燃え尽きた、ルゥルは友達きっと分かってくれると信じていたから。
「もこもこは歪虚ですか?」
マークの追加情報にポルムはうなずいた。
ルゥルは嫉妬する、友達の気持ちがマークに分かって自分に分からないはずはないと。
「このもこもこを退治すればいいんですね!」
「きゅー」
「私も理解できました」
マークは思った、推測であって理解ではないと。でも、大人だし、エクラ教の司祭だし、色々考えて黙った。
「ハンターさんに頼むです」
「……待ってください。その費用も考えて、調査を行います。領主に請求です」
「……マークさん、ジャイルズさんみたいですよ……」
ジャイルズとは同じ町に住む薬草園の主であり、合理主義なところがある。彼は依頼するならまとめてかつ領主に請求書を回すということを的確にやってきた。
「……褒め言葉です」
「私はそんなに頼りなかったですか」
今度はマークが落ち込んだ。
●怒りのルゥル、事務所で熱弁を振るう
隣の大きな町にあるハンターズソサエティの支部で、ルゥルは怒りと涙の大演説をした。
「ロビンさん、いいですか! 今回、ハンターさんが来てくれないと、ルゥルがお出かけするところが減ってしまうです。それにあの林は子どもたちの遊び場ですし、茸に木の実に、恵みを受け取るところでもあるんでぃーーーーす! 林は街道に隣接しているのですから、安全でないと町が寂れるです。そして、グラズヘイム王国も寂しくなります! 国の問題です! ですから、ロビンさんがこう、力説して、是非とも依頼を魅力的に見せてもらって……みぎゃあああああ」
「……ご、ごめん、ルゥルちゃん、泣かないで。ほ、ほら、これ、炭酸飲料といってリアルブルーの飲み物だって。あ、これポテトチップスで……」
いつも来訪者との会話を楽しんでいる二枚目半の受付男子ロビン・ドルトスは、本当に困っていた。周りにある誰かが持ち込んだおやつを並べて機嫌を取ることを始める。
「しゃー」
「きゅきゅきゅ」
ルゥルが泣き始めたことで、ペットであるフェレットとパルムが一斉にロビンに抗議をしている。
「いや、うん、僕のせいなのかな?」
語尾が上がり、周囲に助けを求めるロビン。同僚はにこにことして「がんばれ」と告げ、通りがかったハンターも笑っていた。
珍事だ、助けはなし。
「ル、ルゥルは、悲しいです。丘の上でパルムを食べるイベントが催されているなんて! みぎゃあああああああああああああああああああああああああああ」
「……え? え? そういう内容だったっけ?」
「ぎゅううううううううううう」
ポルムが怒りの声を上げたため、どうやら本当にあったことらしかった。
「……わ、分かった、分かったよ! ルゥルちゃん、君の可愛らしいお目が溶けてなくなってしまうから、それ以上は泣いてはいけない」
きょとんとしたルゥルはひとまず泣き止んだ。
「ところで、丘にはどうやって登るのか知っているかい?」
「のり面をえっちらおっちら」
「……木が茂っているあそこ?」
「はい。あの街道歩いていると石が飛んできたこともあると聞きましたよ?」
「その通りです、情報通ですね、ルゥルちゃん」
「任せてください」
「では、ハンターの募集を掛けますね」
「費用は領主さまにお願いします」
「……その交渉は」
ルゥルの目はキラキラとロビンに向かい、こくんと首を縦に振った。
リプレイ本文
●教会
ゾファル・G・初火(ka4407)は到着後、真っ先に向かった魔術師の研究所から、教会に戻ってきた。
「……いなかった」
「いませんよ?」
ルゥルは当然と言う。
「え? いない? 研究所をそこにもってるなら、歪虚の事知ってそうじゃん?」
ルゥルとマークは顔を見合わせた。
「……上に何があるか一応調べていたみたいですが」
マークが言う。
「以前にも歪虚が近辺にいたっすよね? なら、上の方に合成生物を生み出す怪しい研究所とかっすか?」
央崎 枢(ka5153)が尋ねる。
「建物はあるみたいです。出入りしている様子はないですし、十年単位でそこに『誰かが住んでいた』という認識はありません」
マークがうめく。
「パルムを……襲う? お腹がすいていたのでしょうか……」
外待雨 時雨(ka0227)がささやくように言い、ちらりとここにいるパルムを見る。
「パルムを愛する者のためにも捨て置くわけにはいきません」
ツィスカ・V・アルトホーフェン(ka5835)は力ある者としての義務と考え、宣言する。
「上から物が降ってくるんだろう? それにパルムを食べる儀式とか? ロクな奴じゃないな」
岩井崎 旭(ka0234)は眉を寄せて色々と状況を思い浮かべる。十中八九、歪虚が絡んでいるだろう。
「そ、そんなことになっているんでしょうか? せいぜい、ゴブリンが居ついてパルムを食べていたくらいかと」
マークは困惑するが十分最悪なことを推測している。
「ゴブリンがこのあたりにいたこともあるんだし、殲滅する」
カイン・マッコール(ka5336)は故郷をゴブリンの争いで失っているため、ゴブリンに対する怒りは強い。
「ルゥルさんもエルフなんですよね。ハンターになってから初めて見……」
「ち、違いますよ、ルゥルはエルフさんではありません」
アルマ・シャムロック(ka5940)はそわそわと口を開くが、ルゥルが間髪入れずに否定してきた。
アルマは困惑する。ルゥルは幅広いヘアバンドで耳を隠しているが、どう見てもエルフだ。
「すみません。この子の兄が耳を引っ張っていじめたんですよ……互いに小さい頃に」
マークはアルマの前にしゃがんでこっそり教えた。
「そ、それは、可哀そうです」
アルマはそれぞれの悩みがあるとうなずき、無理に話すのはいけない。仲良くしたい気持ちはまた別だ。
「で、ルゥルちゃんはどうしますかぁ?」
星野 ハナ(ka5852)は甘い声で尋ねた瞬間、ルゥルがそわっとして視線を逸らした。
「ふふっ、パルム好きで、ルゥルちゃんが、こーそりついて来たら困るでしょぉ?」
図星でマークが止めようとして、ルゥルが頑として聞かず、ハンターが仲介して治まった。
連れて行くと言う方向で。
ルゥルは嬉々として準備に向かう。
この間、自力脱出したパルムが書いた状況説明の絵をハンターは見せてもらった。
「これは……なかなかの……芸術作品……ですね」
「そんなにすごいか? あ、作品になるが状況は分からない」
時雨は旭の解説に首肯した。
パルムなら理解するのかと連れのパルムに見せるが、誰一人何か理解はしなかったようだ。
●登ろう
林の中からは登るのは難しいだろうとあらかじめ言われてはいた。
ゾファルも目視し、そこを登るとなると登攀する必要性が高いと判断した。身体能力が高いハンターと言えども得手不得手はあるのだから無理はしない。
「かといって、馬で登れないじゃん!」
街道沿いの斜面を見てゾファルは溜息をもらす。
旭もゴースロンで行こうと思っていたが、避けた方が無難だろうと考える。
馬たちは教会で預かる。テキパキとマークが慣れた手つきで入口につなぎ世話を始めた。
「さて、これを登るわけだね。少しでも安全確保したほうがいいだろう?」
ロープを持って先に登りはじめる枢。つかむところを確保するための試みだ。
斜面を見れば、草や木々があるため、つかまれば登れなくはない。不慣れなら難しいし、安全対策は幾重にしてもしすぎることはない。
「それじゃパルちゃんケンちゃんよろしくお願いしますぅ。歪虚を見つけたら騒いでくださいねぇ。ルゥルちゃん、もし敵が出ても突撃しちゃだめですからねぇ? 直接攻撃はお兄さんたちの方が得意なんですからぁ。歪虚を全部ブッコロしてみんなの遊び場を回復するためにも、ルゥルちゃんの遠距離攻撃、期待してますぅ」
ハナはペットとルゥルに言い聞かせる。ハナのペットの犬はパルムを頭に乗せ、一生懸命登って行く。
ルゥルはキグルミの手をおーと拳を突き上げる。
「雨が降る前に解決しないといけませんね」
「みぎゃ?」
「いえ……その……私が外出すると雨が多いのです」
「私がお出かけするときは、晴れも雨もあるですよ?」
「そうですか? ……でも、これは……」
雨が降ったら危険な斜面だと時雨は思った。
「行こう、上から物が降ってこないうちに」
カインは盾を持ち見上げる。自然物より「何か」が狙ってくる飛んでくる物がはるかに危険だ。
一行は確実に上っていく。急な斜面なため滑り落ちることを注意し、ゴブリンに発見されないように注意する。
「ルゥルちゃん、わたしだって耳はこうですが、エルフなんです、ハーフですけど!」
「……へぇ」
気のない返事だが、登っている最中だから仕方がないとアルマは心の中で呟く。
「村には、お母さん以外にエルフの人はいませんでしたけど」
「ふーん」
ルゥルはちらりとアルマを見る。
ツィスカはマークが小さい声で言っていたのを耳にしていたため、アルマに微笑みかけ、静かにのように指を自分の唇に当てた。
「アルマさん、焦ってはいけません」
「あ、そうですね」
「でも、きっとお友達になれますよ」
ツィスカにささやかれアルマはうなずき緊張の中に笑みを浮かべた。ルゥルも興味がないわけではないと反応から感じた。
今は登ることに注力をする。
注意をしていても、ずり落ちることもあり、登るのはなかなか難しい。
「あと一息……」
枢は登ろうとしたが、背後でずりっパキっという音がした。
ルゥルがロープにつかまってじたばたして、必死に足場を確保しようとしている。
アルマとハナが手伝って、ルゥルの体勢を整えようとしている。
時雨とツィスカが上と下を警戒をしている。
若干先行していたメンバーは一瞬で彼女らの様子を確認し、木々に隠れるようにして止まり上の様子をうかがう。
「……ん?」
旭が眉を寄せた。
「……ゴブリンだ」
カインが上を見上げ憎々しげにつぶやく。それらが自分たちを見て何かしゃべっているようなのがまた腹が立つ。
「よっし、戦闘じゃん!」
ゾファルは隠れていたところから飛び出した。
「ルゥルちゃん、気を付けてくださいねぇ」
ハナはいつでも札を抜けるように準備はする。
ゴブリンは三体。それらは敵に対して石を投げる。
「間に合わなかったか」
旭は間を縫って走る。
勢いを付けて登り始めたカインと枢に石が真っ直ぐ来る。盾で受けたり、回避したりでしのいだ。
「オイゴラ! なにコソコソ投げて来て……」
「その怒り、あと一歩で届く」
枢は怒りの声を上げかかったが、カインのもっともな言葉に「おう」と言って前進した。
「きゃあ」
「ああ、アルマさん」
アルマに石が当たり、ルゥルはあわてる。
「大したことはないです、驚いただけですから」
アルマは体勢を整え、前を見据える。
距離があるからと言ってハンターたちも黙っていない。前に進むだけが解決ではなく、後方からの援護射撃も重要だ。
「距離に問題はありません」
「足元は……不安定ですが」
ツィスカが機導砲を、時雨がシャドウブリットをそれぞれ放った。それらはゴブリンらしい影に当たる。
「マジックアロー」
ルゥルは木に引っ掛かりながら魔法を放つ。
「待機しますねぇ」
ハナは札を握り締め、次は札で仲間を助ける。
再び石が飛んでくる前に枢のヴァイパーソードを振るう。剣でありながら鞭のように使えるそれがしなやかにゴブリンに当たる。
「はい、これでおーわりっ」
枢は機嫌を直す。
「これだけじゃない?」
その間に登りきったゾファルがゴブリンにギガースアックスを叩きつける。
「これは歪虚?」
ゴブリンに対して攻撃をしたカインは通常見るゴブリンと異なる様子に、攻撃時に気付く。
「ありうる」
旭が残り一体を攻撃した。
倒されたゴブリンは塵となって消えてなくなった。
●地上にゴブ、屋根にヌエ?
後続の五人が登ってくる間、状況を確認する。
空き地であり、今は枯れているが草が大量に生えている。ただ、ゴブリン達が生活していたこともあり、踏みつけられて視界はある。
その先に建物がある。古く、朽ちかけている。
鳥の泣き声とゴブリンと思われる声が聞こえる。
「行こうぜ」
「ゴブリンは残らず狩る」
ゾファルとカインは状況が整い次第走る体勢を整える。
「……鍋?」
「あれで……パルムを……」
旭が見つけて眉をひそめたところに、登ってきた時雨が同じものを見つけつぶやく。
「やっぱりそう考えるか」
「考えます……ね」
「依頼のあの情報は嘘じゃなかったことか?」
「そう……ですね」
推定歪虚がパルムを捕まえ、儀式めいたことをしつつ食べていたとかいう情報になっていた。
連れたちのパルムは何か察したのか怒っている様子だ。
「何か動物みたいなのもいるみたいですね、鳥でしょうか?」
ツィスカは武器の装備を確認した。敵は見えていないが、鳴き声、これまでこの近辺に現れた物を考えれば似ている可能性はある。憤怒の歪虚でキメラ状態の歪虚。
「ルゥルちゃんは後ろにいるんですよ?」
「はいです。アルマさんも無理しちゃだめですよ?」
アルマは心配してくれるルゥルに、ほっと胸をなでおろす。
「そうですよぉ、柔軟な対応が必要ですぅ」
ハナの言葉にルゥルは首を上下に振った。
「あいつらがこちらを気にする前に、行くぜ」
枢は前方を見据え声を出すと、すでに準備を整えていた前衛のメンバーは走り出す。
時雨は前衛になる者たちにプロテクションを掛ける。
ハナが五色光符陣を展開した。
第三勢力に気付いてはいた二種類の歪虚たちは、第三勢力も放置はできないと判断する。
装備がしっかりしたゴブリン達は位置をずらして敵を迎え撃とうとする。共闘というわけではないため、いつ敵の歪虚が狙ってくるか分からない。
キメラと言える姿の生き物は羽を備えており、ふわりと浮かび屋根の上に登ろうとする。その際に大きく息を吐く動作をした。
その直後、電撃が走る。
接敵ぎりぎりまで来た旭、ゾファル、カインと枢が巻き込まれるが、回避したり鎧で止める。
静電気が発生した時のパリッとした精神的な痛みは来たが、行動が阻害されるようなことはなかった。
「てめぇばっか飛んでんじゃねぇ!」
旭は武器で引っかけるように引きずりおろうそうとする。技も加え、威力はすさまじい。
「久々の歪虚狩りじゃん」
ゾファルは嬉々として歪虚に武器をぶつける。
「パルムさんたちをいじめたのはあなたたちですか!」
ルゥルの側でアルマは行動を待機しつつ、物的証拠を見て怒りがわく。
「けんか両成敗です。狩られるのはあなた方です」
ツィスカが機導砲を放つ。これらが縄張り争いのようなことをしていたため、街道を行く人たちに影響があったのは明確だ。
鵺のような歪虚は地面に飛び降りるように、旭とゾファルに攻撃をした。
「この程度」
「問題ないぜ」
むしろ、近くなったことで歪虚は反撃を食らうこととなる。
歪虚たちが倒されるまでに、時間は大してかからなかった。
物的証拠……たき火の跡と鍋。歪虚になる前の食生活だろうか。
木箱はふたが開いているため何も入っていないのを確認できた。
安全だろうとハンターが判断した時、犬やパルム達が生存パルムがいるか捜索を始めた。目線が違う方が出てくるかもしれない。しばらくうろうろしたそれらはも満足げに戻ってきた。
●建物は
歪虚が壊したのか扉や窓は壊されている。
「さすがに王国の様式ではいつの時代か、どういった建物かはっきりと分からないです」
ツィスカはおおよそと思い目星はつけるが、状況証拠の積み重ねだ。
「百年くらいだろうなぁ? 下手に入ると床が壊れて落ちるとかありそうだし」
旭は探索にはそれなりの準備がいると考えた。
「別荘のようですね」
時雨は想像した。サンルームだっただろう部屋は、晴れの日も雨の日も穏やかな時間が流れそうだ。
「そうですねぇ。もっときれいだったら、私も住みたいと思っちゃうかもしれません」
ハナはにこにこと言う。
「やっぱ、女の人ってこういう家に弱いのか?」
枢は女性陣に尋ねるように話を振ったが、反応は様々であった。結論、人による。
「あああ、もう終わりー。つまんねー、帰ろうー」
ゾファルが伸びをして立ち去りはじめる。適度な運動であり、あっけない戦いとも言えた。
「ここの平穏が守られ広まれば」
カインはこの町のゴブリン騒動は少しずつ解決していると感じ取る。
下りる前に眺めると百年前なら、木々も茂っておらず、見晴らし良かったのかもしれない、と誰となく思える。
ハンターたちは張ってあったロープを伝いながら、ゆっくり戻る。下りは違う緊張だ。
教会に戻る道でルゥルはそわそわする。
「アルマさん、ごめんなさい」
「え?」
「ルゥル、エルフなのです」
「あ、はいっ」
「父上の住む町に住んでいたころ……兄上や通りすがりのピカピカした服を来たお兄さんがルゥルの耳を引っ張ったんです。皆がいじめるからって、母上が先生の所にルゥルを預けたんです」
「だからここにいるんですね」
「先生……結局、ほとんどいなくて、マークさんが面倒見てくれます」
聞いていたツィスカと時雨は沈黙して顔を見合わせるが、人のよさそうな司祭の顔を思い浮かべると「押し付けられているだけか」と思えた。真っ直ぐに育っているように見えるので、環境は悪くないようだ。
「魔法……使えていると言うことは……」
「指導はしていると言うことでしょうね」
時雨とツィスカはため息交じりにうなずいた。
「ハンターのエルフさんは皆気にしていないでした。ルゥルも大きくなって、強くなればいいんですよね」
「ルゥルちゃんもきちんとハンターですよ」
笑いあい、仲良くアルマとルゥルは手をつなぐ。
「はいはい! せっかく、無事終わったんですからぁ、ルゥルちゃんも一緒にぱーと打ち上げしましょう!」
ハナが元気よく言うと、勢いにつられたルゥルとそれにつられたアルマがビョコビョコとはねる。
「それは楽しそうだな」
枢が笑う中、ゾファルは「おごりなら」と言ったり和気藹々としている。
「このあたり、そういう店なさそうだぞ?」
旭の言葉に、カインも頷く。
ハナと枢がルゥルを質問攻めにし、結論は大きい町へ行くことだった。
ゾファル・G・初火(ka4407)は到着後、真っ先に向かった魔術師の研究所から、教会に戻ってきた。
「……いなかった」
「いませんよ?」
ルゥルは当然と言う。
「え? いない? 研究所をそこにもってるなら、歪虚の事知ってそうじゃん?」
ルゥルとマークは顔を見合わせた。
「……上に何があるか一応調べていたみたいですが」
マークが言う。
「以前にも歪虚が近辺にいたっすよね? なら、上の方に合成生物を生み出す怪しい研究所とかっすか?」
央崎 枢(ka5153)が尋ねる。
「建物はあるみたいです。出入りしている様子はないですし、十年単位でそこに『誰かが住んでいた』という認識はありません」
マークがうめく。
「パルムを……襲う? お腹がすいていたのでしょうか……」
外待雨 時雨(ka0227)がささやくように言い、ちらりとここにいるパルムを見る。
「パルムを愛する者のためにも捨て置くわけにはいきません」
ツィスカ・V・アルトホーフェン(ka5835)は力ある者としての義務と考え、宣言する。
「上から物が降ってくるんだろう? それにパルムを食べる儀式とか? ロクな奴じゃないな」
岩井崎 旭(ka0234)は眉を寄せて色々と状況を思い浮かべる。十中八九、歪虚が絡んでいるだろう。
「そ、そんなことになっているんでしょうか? せいぜい、ゴブリンが居ついてパルムを食べていたくらいかと」
マークは困惑するが十分最悪なことを推測している。
「ゴブリンがこのあたりにいたこともあるんだし、殲滅する」
カイン・マッコール(ka5336)は故郷をゴブリンの争いで失っているため、ゴブリンに対する怒りは強い。
「ルゥルさんもエルフなんですよね。ハンターになってから初めて見……」
「ち、違いますよ、ルゥルはエルフさんではありません」
アルマ・シャムロック(ka5940)はそわそわと口を開くが、ルゥルが間髪入れずに否定してきた。
アルマは困惑する。ルゥルは幅広いヘアバンドで耳を隠しているが、どう見てもエルフだ。
「すみません。この子の兄が耳を引っ張っていじめたんですよ……互いに小さい頃に」
マークはアルマの前にしゃがんでこっそり教えた。
「そ、それは、可哀そうです」
アルマはそれぞれの悩みがあるとうなずき、無理に話すのはいけない。仲良くしたい気持ちはまた別だ。
「で、ルゥルちゃんはどうしますかぁ?」
星野 ハナ(ka5852)は甘い声で尋ねた瞬間、ルゥルがそわっとして視線を逸らした。
「ふふっ、パルム好きで、ルゥルちゃんが、こーそりついて来たら困るでしょぉ?」
図星でマークが止めようとして、ルゥルが頑として聞かず、ハンターが仲介して治まった。
連れて行くと言う方向で。
ルゥルは嬉々として準備に向かう。
この間、自力脱出したパルムが書いた状況説明の絵をハンターは見せてもらった。
「これは……なかなかの……芸術作品……ですね」
「そんなにすごいか? あ、作品になるが状況は分からない」
時雨は旭の解説に首肯した。
パルムなら理解するのかと連れのパルムに見せるが、誰一人何か理解はしなかったようだ。
●登ろう
林の中からは登るのは難しいだろうとあらかじめ言われてはいた。
ゾファルも目視し、そこを登るとなると登攀する必要性が高いと判断した。身体能力が高いハンターと言えども得手不得手はあるのだから無理はしない。
「かといって、馬で登れないじゃん!」
街道沿いの斜面を見てゾファルは溜息をもらす。
旭もゴースロンで行こうと思っていたが、避けた方が無難だろうと考える。
馬たちは教会で預かる。テキパキとマークが慣れた手つきで入口につなぎ世話を始めた。
「さて、これを登るわけだね。少しでも安全確保したほうがいいだろう?」
ロープを持って先に登りはじめる枢。つかむところを確保するための試みだ。
斜面を見れば、草や木々があるため、つかまれば登れなくはない。不慣れなら難しいし、安全対策は幾重にしてもしすぎることはない。
「それじゃパルちゃんケンちゃんよろしくお願いしますぅ。歪虚を見つけたら騒いでくださいねぇ。ルゥルちゃん、もし敵が出ても突撃しちゃだめですからねぇ? 直接攻撃はお兄さんたちの方が得意なんですからぁ。歪虚を全部ブッコロしてみんなの遊び場を回復するためにも、ルゥルちゃんの遠距離攻撃、期待してますぅ」
ハナはペットとルゥルに言い聞かせる。ハナのペットの犬はパルムを頭に乗せ、一生懸命登って行く。
ルゥルはキグルミの手をおーと拳を突き上げる。
「雨が降る前に解決しないといけませんね」
「みぎゃ?」
「いえ……その……私が外出すると雨が多いのです」
「私がお出かけするときは、晴れも雨もあるですよ?」
「そうですか? ……でも、これは……」
雨が降ったら危険な斜面だと時雨は思った。
「行こう、上から物が降ってこないうちに」
カインは盾を持ち見上げる。自然物より「何か」が狙ってくる飛んでくる物がはるかに危険だ。
一行は確実に上っていく。急な斜面なため滑り落ちることを注意し、ゴブリンに発見されないように注意する。
「ルゥルちゃん、わたしだって耳はこうですが、エルフなんです、ハーフですけど!」
「……へぇ」
気のない返事だが、登っている最中だから仕方がないとアルマは心の中で呟く。
「村には、お母さん以外にエルフの人はいませんでしたけど」
「ふーん」
ルゥルはちらりとアルマを見る。
ツィスカはマークが小さい声で言っていたのを耳にしていたため、アルマに微笑みかけ、静かにのように指を自分の唇に当てた。
「アルマさん、焦ってはいけません」
「あ、そうですね」
「でも、きっとお友達になれますよ」
ツィスカにささやかれアルマはうなずき緊張の中に笑みを浮かべた。ルゥルも興味がないわけではないと反応から感じた。
今は登ることに注力をする。
注意をしていても、ずり落ちることもあり、登るのはなかなか難しい。
「あと一息……」
枢は登ろうとしたが、背後でずりっパキっという音がした。
ルゥルがロープにつかまってじたばたして、必死に足場を確保しようとしている。
アルマとハナが手伝って、ルゥルの体勢を整えようとしている。
時雨とツィスカが上と下を警戒をしている。
若干先行していたメンバーは一瞬で彼女らの様子を確認し、木々に隠れるようにして止まり上の様子をうかがう。
「……ん?」
旭が眉を寄せた。
「……ゴブリンだ」
カインが上を見上げ憎々しげにつぶやく。それらが自分たちを見て何かしゃべっているようなのがまた腹が立つ。
「よっし、戦闘じゃん!」
ゾファルは隠れていたところから飛び出した。
「ルゥルちゃん、気を付けてくださいねぇ」
ハナはいつでも札を抜けるように準備はする。
ゴブリンは三体。それらは敵に対して石を投げる。
「間に合わなかったか」
旭は間を縫って走る。
勢いを付けて登り始めたカインと枢に石が真っ直ぐ来る。盾で受けたり、回避したりでしのいだ。
「オイゴラ! なにコソコソ投げて来て……」
「その怒り、あと一歩で届く」
枢は怒りの声を上げかかったが、カインのもっともな言葉に「おう」と言って前進した。
「きゃあ」
「ああ、アルマさん」
アルマに石が当たり、ルゥルはあわてる。
「大したことはないです、驚いただけですから」
アルマは体勢を整え、前を見据える。
距離があるからと言ってハンターたちも黙っていない。前に進むだけが解決ではなく、後方からの援護射撃も重要だ。
「距離に問題はありません」
「足元は……不安定ですが」
ツィスカが機導砲を、時雨がシャドウブリットをそれぞれ放った。それらはゴブリンらしい影に当たる。
「マジックアロー」
ルゥルは木に引っ掛かりながら魔法を放つ。
「待機しますねぇ」
ハナは札を握り締め、次は札で仲間を助ける。
再び石が飛んでくる前に枢のヴァイパーソードを振るう。剣でありながら鞭のように使えるそれがしなやかにゴブリンに当たる。
「はい、これでおーわりっ」
枢は機嫌を直す。
「これだけじゃない?」
その間に登りきったゾファルがゴブリンにギガースアックスを叩きつける。
「これは歪虚?」
ゴブリンに対して攻撃をしたカインは通常見るゴブリンと異なる様子に、攻撃時に気付く。
「ありうる」
旭が残り一体を攻撃した。
倒されたゴブリンは塵となって消えてなくなった。
●地上にゴブ、屋根にヌエ?
後続の五人が登ってくる間、状況を確認する。
空き地であり、今は枯れているが草が大量に生えている。ただ、ゴブリン達が生活していたこともあり、踏みつけられて視界はある。
その先に建物がある。古く、朽ちかけている。
鳥の泣き声とゴブリンと思われる声が聞こえる。
「行こうぜ」
「ゴブリンは残らず狩る」
ゾファルとカインは状況が整い次第走る体勢を整える。
「……鍋?」
「あれで……パルムを……」
旭が見つけて眉をひそめたところに、登ってきた時雨が同じものを見つけつぶやく。
「やっぱりそう考えるか」
「考えます……ね」
「依頼のあの情報は嘘じゃなかったことか?」
「そう……ですね」
推定歪虚がパルムを捕まえ、儀式めいたことをしつつ食べていたとかいう情報になっていた。
連れたちのパルムは何か察したのか怒っている様子だ。
「何か動物みたいなのもいるみたいですね、鳥でしょうか?」
ツィスカは武器の装備を確認した。敵は見えていないが、鳴き声、これまでこの近辺に現れた物を考えれば似ている可能性はある。憤怒の歪虚でキメラ状態の歪虚。
「ルゥルちゃんは後ろにいるんですよ?」
「はいです。アルマさんも無理しちゃだめですよ?」
アルマは心配してくれるルゥルに、ほっと胸をなでおろす。
「そうですよぉ、柔軟な対応が必要ですぅ」
ハナの言葉にルゥルは首を上下に振った。
「あいつらがこちらを気にする前に、行くぜ」
枢は前方を見据え声を出すと、すでに準備を整えていた前衛のメンバーは走り出す。
時雨は前衛になる者たちにプロテクションを掛ける。
ハナが五色光符陣を展開した。
第三勢力に気付いてはいた二種類の歪虚たちは、第三勢力も放置はできないと判断する。
装備がしっかりしたゴブリン達は位置をずらして敵を迎え撃とうとする。共闘というわけではないため、いつ敵の歪虚が狙ってくるか分からない。
キメラと言える姿の生き物は羽を備えており、ふわりと浮かび屋根の上に登ろうとする。その際に大きく息を吐く動作をした。
その直後、電撃が走る。
接敵ぎりぎりまで来た旭、ゾファル、カインと枢が巻き込まれるが、回避したり鎧で止める。
静電気が発生した時のパリッとした精神的な痛みは来たが、行動が阻害されるようなことはなかった。
「てめぇばっか飛んでんじゃねぇ!」
旭は武器で引っかけるように引きずりおろうそうとする。技も加え、威力はすさまじい。
「久々の歪虚狩りじゃん」
ゾファルは嬉々として歪虚に武器をぶつける。
「パルムさんたちをいじめたのはあなたたちですか!」
ルゥルの側でアルマは行動を待機しつつ、物的証拠を見て怒りがわく。
「けんか両成敗です。狩られるのはあなた方です」
ツィスカが機導砲を放つ。これらが縄張り争いのようなことをしていたため、街道を行く人たちに影響があったのは明確だ。
鵺のような歪虚は地面に飛び降りるように、旭とゾファルに攻撃をした。
「この程度」
「問題ないぜ」
むしろ、近くなったことで歪虚は反撃を食らうこととなる。
歪虚たちが倒されるまでに、時間は大してかからなかった。
物的証拠……たき火の跡と鍋。歪虚になる前の食生活だろうか。
木箱はふたが開いているため何も入っていないのを確認できた。
安全だろうとハンターが判断した時、犬やパルム達が生存パルムがいるか捜索を始めた。目線が違う方が出てくるかもしれない。しばらくうろうろしたそれらはも満足げに戻ってきた。
●建物は
歪虚が壊したのか扉や窓は壊されている。
「さすがに王国の様式ではいつの時代か、どういった建物かはっきりと分からないです」
ツィスカはおおよそと思い目星はつけるが、状況証拠の積み重ねだ。
「百年くらいだろうなぁ? 下手に入ると床が壊れて落ちるとかありそうだし」
旭は探索にはそれなりの準備がいると考えた。
「別荘のようですね」
時雨は想像した。サンルームだっただろう部屋は、晴れの日も雨の日も穏やかな時間が流れそうだ。
「そうですねぇ。もっときれいだったら、私も住みたいと思っちゃうかもしれません」
ハナはにこにこと言う。
「やっぱ、女の人ってこういう家に弱いのか?」
枢は女性陣に尋ねるように話を振ったが、反応は様々であった。結論、人による。
「あああ、もう終わりー。つまんねー、帰ろうー」
ゾファルが伸びをして立ち去りはじめる。適度な運動であり、あっけない戦いとも言えた。
「ここの平穏が守られ広まれば」
カインはこの町のゴブリン騒動は少しずつ解決していると感じ取る。
下りる前に眺めると百年前なら、木々も茂っておらず、見晴らし良かったのかもしれない、と誰となく思える。
ハンターたちは張ってあったロープを伝いながら、ゆっくり戻る。下りは違う緊張だ。
教会に戻る道でルゥルはそわそわする。
「アルマさん、ごめんなさい」
「え?」
「ルゥル、エルフなのです」
「あ、はいっ」
「父上の住む町に住んでいたころ……兄上や通りすがりのピカピカした服を来たお兄さんがルゥルの耳を引っ張ったんです。皆がいじめるからって、母上が先生の所にルゥルを預けたんです」
「だからここにいるんですね」
「先生……結局、ほとんどいなくて、マークさんが面倒見てくれます」
聞いていたツィスカと時雨は沈黙して顔を見合わせるが、人のよさそうな司祭の顔を思い浮かべると「押し付けられているだけか」と思えた。真っ直ぐに育っているように見えるので、環境は悪くないようだ。
「魔法……使えていると言うことは……」
「指導はしていると言うことでしょうね」
時雨とツィスカはため息交じりにうなずいた。
「ハンターのエルフさんは皆気にしていないでした。ルゥルも大きくなって、強くなればいいんですよね」
「ルゥルちゃんもきちんとハンターですよ」
笑いあい、仲良くアルマとルゥルは手をつなぐ。
「はいはい! せっかく、無事終わったんですからぁ、ルゥルちゃんも一緒にぱーと打ち上げしましょう!」
ハナが元気よく言うと、勢いにつられたルゥルとそれにつられたアルマがビョコビョコとはねる。
「それは楽しそうだな」
枢が笑う中、ゾファルは「おごりなら」と言ったり和気藹々としている。
「このあたり、そういう店なさそうだぞ?」
旭の言葉に、カインも頷く。
ハナと枢がルゥルを質問攻めにし、結論は大きい町へ行くことだった。
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/01/16 23:42:18 |
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相談卓 外待雨 時雨(ka0227) 人間(リアルブルー)|17才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2016/01/19 07:10:16 |