聖火の氷

マスター:赤山優牙

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2016/01/24 09:00
完成日
2016/01/28 20:23

みんなの思い出

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オープニング

●???
「貴様……この辺りの者ではないな」
 暗闇の中、声が響き渡る。
 どんよりとした雲が風に流れ、月の光が差し込んできた。
 平原にいるのは二つの影。一つは、二つの角のうち、片方の先端が欠けていた。
「ん、そうだけど……お兄さんも妖怪? かな?」
「妖怪……?」
 もう一つ。東方風の衣装に身を包む少女が楽しそうに言った。その腹は異様に膨れているが、旅装束にまぎれて判然としない。
 二人とも、人間ではない。
 人は、総じて彼らをこう呼んだ――歪虚と――。
「ここ一帯は、この私の策源地だ。なんの用だ」
「そうなんだ、へえ……ねえ、お兄さん、天使ベリトって知ってる? 探してるんだぁ」
 掴みどころのない小娘の姿をした歪虚に、角折れの歪虚はイラついた。
「弱者は強者の言う事を守るものだ」
 角折れの歪虚は【強制】の能力を使用した。
 負のマテリアルが小娘に襲いかかり、それに、抵抗し切れなかった。力量の差もあるが、突然の事だったから。
 少女の手が首にかかり、その首をへし折ろうと力が籠る。
 手応えに、角折れの歪虚の口の端が釣り上がる。しかし。
「へえ、変なのを使うんだね、お兄さん」
「――貴様」
 少女の手が静かに降ろされる。蠕動する身体を見て、角折れの歪虚の目が細められた。
「僕、此処を通りたいだけなんだけどなぁ。通してくれない?」
「……対価は頂こうか」
「対価……対価、かぁ」
 言葉に、少女は小さな指を顎にあてる。
「んー……じゃあ、これはどう? 使わないから」
 その袖口ポロンと地面に落下したのは、刀だった。ただの刀ではない。三日月を思わせるような弧を描いた刀だ。
 使わないものを対価として差し出すとはどういう事だと角折れの歪虚は思ったが、刀から発せられる異様なオーラに気がついた。
「九弦の刀、『虚月』」
 聞いた事のない人物の名と銘柄だった。
 見れば東方風の姿をしている少女だ。東方由来の歪虚なのかと角折れの歪虚は推測する。
「歪虚が持つ不吉な月か……良いだろう。この一帯では自由にすればいい。どうせ、私には『得られなかった地』だからな」
「はぁい」
 飛ぶように走り去る少女には目もくれず、角折れの歪虚は魅入るように刀を見つめる。
 なるほど、この刀の力――これは、私にピッタリではないか。
 角折れの歪虚はニタっと笑っていた。

●悩み
 軍師騎士ノセヤは騎士団本部の一室に籠っていた。
 大量に山積みされた古めかしい本。そのいずれも魔術に関する系統のものだ。
 数年前の歪虚との戦いで父も兄も戦死した為、家督を譲られてはいるが、ノセヤは元々文官肌だ。
 魔術師である事を目につけられ、青の隊隊長のゲオルギウスから特命を受けて『ある任務』に就いている。
「マテリアルを使用するのは刻令術であっても変わらないか……」
 刻令術に関する文献は探してもほとんど見つからなかった。
 あっても、触り程度の紹介ばかりだ。
「魔術師協会にまで問い合わせれば……いや、それは、無いか……」
 独学は困難だろう。
 或いは、研究に没頭すれば、なにか得られるかもしれない。だが、それでは間に合わないのだ。効率良く学ぶ為には、師が必要となる。
「アダム様に教えていただくのが一番かと」
 同じ部屋に籠っていた刻令術の技術者が本の山の間から顔を出して言った。
 刻令術の権威アダム・マンスフィールドに直接師事してもらうのが早いとは分かっている。だが、お互い忙しい身だ。
「そもそも、課題が多すぎる……ここは、ハンター達に頼むとします」
「……宝探しをですか?」
 技術者の問い掛けにノセヤは頷いた。
 宝探しというのは嘘でも誇張でもない。
 なぜなら、それ位の価値は確実にあるのだから。
「大規模な刻令術装置を動かすに必要なマテリアル鉱石の捜索……確かに、宝探しです」
 読んでいた本をパタリと閉じて、ノセヤは席から立ち上がった。
 ハンターオフィスに行って依頼を出す為だ。

●依頼
「皆さんにお願いしたいのは、『聖火の氷』についての情報を得る事です」
 集まったハンター達に軍師騎士ノセヤは説明を始める。
 『聖火の氷』とは王国北西部フレッサ領の壊滅したある村の秘宝だった物だ。
 高純度のマテリアルのなにか……という噂はあるのだが、村は壊滅し、秘宝の情報は途絶えている。
「私達の目標は、『聖火の氷』の正体を突き止め、手に入れる事です。その為には、この秘宝の情報を集めなくてはなりません」
 壁に張っている西方の地図を差すノセヤ。
「時間があまりないのですが、交通の手配をしていますので、なにとぞ、よろしくお願いします」
 ノセヤは丁寧に頭を下げて、ハンター達にお願いするのであった。

リプレイ本文

●港町ガンナ・エントラータ
 その情報屋は一見、怪しい酒場の様だった。
 店主は、十色 エニア(ka0370)が説明した内容を黙って聞いている。
「……という事で、情報あるかな? 情報料は支払うか、もしくは、ここで踊るけど」
 薄暗い店内に、他の客はいない。エニアの言葉が響く。
 深い溜め息と共に店主が首を横に振った。情報は無いという事だろう。少し落胆したエニアは小さく「ありがとう」と言うと、小銭をカウンターの上に置いて立ち去ろうとした。
「ちょっと待ちな、お兄さん」
「え?」
 引き止めた店主の言葉に思わず振り返るエニア。
「せっかく、足を運んだのだろう。正しいかともかく、推測だがな……」
 店主はそう前置きしてから口を開いた。
 情報屋の推測というのはただの感想とは違う。なにかの役に立つ可能性はある。
「その『聖火の氷』という秘宝が見つかった地方を俺は怪しいと思う。有名な秘宝ではなく、マイナーな秘宝なら、ルーツはそれがあった地方だと思うからな」
 もし、誰もが知っている宝であれば、誰かがその正体や所在を知っているはずだ。
 そうではないという事は、その足取りは『聖火の氷』があった場所が近いかもしれない。
「ありがとう。ここまで来たかいがあったよ」
 エニアは軽く微笑んで酒場から出た。
(アルテリア地方……フレッサの街には、他の人が向かっているし、わたしは、ピースホライズンに向かうかな)
 見上げた空はどんよりと曇っていた。
 秘宝を巡る調査は始まったばかりだ。

●古都アークエルス
(……『聖火の氷』……確か、弓矢作戦の時にソレを回収するはずじゃった物の名じゃったかの……)
 記憶の紐を辿るように星輝 Amhran(ka0724)が当時の事を思い出しながら、王立図書館で調べ物をしていた。
 『聖火の氷』が高純度のマテリアルのなにかなので、歪虚が狙う理由はある。
 弓矢作戦以降、秘宝が見つからないのを星輝は因縁深い角折れの歪虚が手にしているのではないかと思っていた。
 大量の本や資料から、該当する秘宝の物は見つからなかった。だが、興味深い研究論文が見つかり、星輝は考え込む。
(――故に、マテリアルが高濃度に満たされた空間はなにか作用を起こす可能性があり――)
 思い返せば、弓矢作戦の際、最前線で戦ったハンター達は不思議な力を感じたという。
 戦いの最中にふと、仲間の想いや存在を感じ……たと思った次の瞬間、敵の攻撃が当たらなかったりしたという状況。
(……つまり、あの作戦時、あの村一帯は高濃度のマテリアルで満たされていた空間だったのかの……)
 考えられる可能性の一つに星輝は辿り着いた。
 それは、弓矢作戦時には、既に秘宝の力が解放されていたかもしれないという事に。

●リゼリオ
 ハンターズソサエティのオフィスの一室に女性が3人ばかり集まっていた。
「ノゾミちゃん、受付嬢さんになったんだね。あっ、『Uisca様』とか堅苦しい呼び方じゃなくて、イスカさんとかでいいからね」
 Uisca Amhran(ka0754)が目の前に座る緑髪の少女に向かって微笑みながら言う。
「はい……イ、イスカさん」
 ノゾミと呼ばれた緑髪の少女はぎこちなく応える。
 真新しい受付嬢の制服に身を包み、どことなく緊張しているようにも見えた。
「さっそくだけど、『聖火の氷』について、イケメンさんからなにか聞いていない?」
「いえ、なにも聞いていないです……ほ、本当ですよ」
 少女の言葉と身ぶりにUiscaは視線をもう1人の女性に向けた。
「残念ながら、過去に関連する依頼が無いか探してみましたが……」
 Uiscaの視線に気がつき、ソルラが首を横に振りながら言った。
「力になれず、申し訳ないです、イスカさん」
「大丈夫ですよ。ノゾミちゃんが謝る事ではないですし」
 『聖火の氷』の情報は無かった。だが、緑髪の少女が元気な姿で居る事が確認できただけでも嬉しく思ったUiscaだった。

●フレッサの街
「謎の秘宝なんて聞いたら、冒険家としては放って何ておけないもん、必ずその正体を暴いて見つけてみせる!」
 強い決意を言い放った時音 ざくろ(ka1250)は、次の聞き込みへと向かう。
 彼はフレッサの街で『聖火の氷』について聞き込みを行っていた。
 秘宝があった村は壊滅し、生き残りは一人も居ないと言うが、ざくろは諦めていなかった。
「秘宝の噂が村の外に今有るという事は、それが外に出る事になった原因も必ず有る筈なんだ」
 それに、気になる事もある。
(何故、『聖火』の後に続くのがそれと相反する様な『氷』、という言葉なのか非常に興味深くて……ここに、その姿に到るヒントが隠されているんじゃ無いかな?)
 彼の読みは、もしかして真相に近いかもしれない。
(……そういえば、燃える水ってリアルブルーに居た事に聞いた事が……)
 臭水と呼ばれる地下資源があった。燃える水として献上されたという言い伝えがある。
 だが、この赤き世界には化石燃料が無いという噂だ。もし化石燃料があるなら、サルヴァトーレ・ロッソが帝国領内に不時着する事は無かっただろう。
 ざくろは謎を追いかける為、フレッサの街での調査を続ける事にした。

●王都イルダーナ
 全員を見送って、アティ(ka2729)は聖堂教会の大聖堂に来ていた。
(エクラ教徒としてはやはり、宗派に関するものであるのではと思いますわ)
 名前からして『聖火の氷』である。
 聖なる力を宿した何かではないかと思うのは不自然な事ではなかった。
 だが、資料室で色々と調べても該当する物は欠片も出て来ない。
 一息ついた所で、司祭の一人が話しかけてきた。この司祭はアティの質問に真摯に応じ、調査を協力してくれていた。
「アティさん、あくまでも可能性なのですが……」
「はい、なんでしょうか?」
「人々は時に、神秘的な物を神格化したり、尊いものに近付けようとする事があると思うのです」
 原因や正体が分からないのであれば、尚更だ。
 秘宝は確かに存在したかもしれない。人々はその神秘さを敬い、そう名付けたかもしれないのだ。
「あくまで、可能性ですが……」
「いえ、司祭様の推測は正しいかもしれません……調査の協力、ありがとうございました」
 少なくとも、教会関係ではないという事が分かっただけでも進展かもしれない。
 アティはそう思いながら、司祭に深く頭を下げた。

●ネオ・ウィーダの街
「おかえりなさい、樹。早かったのね」
 豊かなそれを揺らしながらリルエナは檜ケ谷 樹(ka5040)を出迎えた。
 同棲している二人ではあるが、仕事の為、樹が外へ出たと思ったらすぐに帰ってきたからだ。
「参ったよ。『聖火の氷』っていう秘宝を探して行商人に聞き込みしていたのだけど……」
 苦笑を浮かべる樹。成果は……見ての通りの様子だ。
「今日はこのまま休んでいけばいい」
 そっと背後からリルエナが腕を回してきた。
 背中に圧倒的な存在感を感じる。
「そうするよ……リルエナは知らないか? 『聖火の氷』という高純度のマテリアルのなにからしいけど」
「知らないわ。でも……」
 横目で見えるリルエナの表情は曇っているように見えた。
「もし、本当なら、いかにも歪虚が狙いそうな気がする。歪虚は、マテリアルを取り込んで自らの力とするから」
「そうなのか。なら、宝探しも気をつけないと」
 とぼけた様な樹の言葉にキュッとリルエナは回した手に力を込めた。
 もしもの事がないように。そんな思いを込めて。

●ピースホライズン
 エニアが大通りの一角で踊っていた。
 歪虚の襲撃により街は復興途上であるが、人々の往来はそれなりに多く、聞き込みをするにはなかなか良い状況だ。
「この街は、交易・人種交流の重要拠点である為、復興真っ最中じゃ。復興特需で、人も商人も激しく行き交い情報も溢れておるじゃろうの♪」
 ニコニコ顔の星輝が、踊り終わって一休憩を入れているエニアに話しかけた。
 エニアを餌に人集めを行い、星輝が聞き込みを行っているのだ。
「ハンターなのか踊り子なのか、本業が行方不明だね」
「ついでいうと、エニアが、男なのか、女なのかも、分からない輩がいそうじゃのう」
「まぁ、良くも悪くも、目立つよね~……」
 露出の多い、赤色と紫色が基調の踊り子衣装をジト目で見つめるエニア。
 その時、行商人が二人に話しかけて来た。
 エニアが文字通り身体を張っていた意味があったと言うものだ。
「君達が『聖火の氷』とやらを探しているというハンターか?」
「そうじゃが、なにか知っておるのか?」
 星輝が思わず前のめりになる。
「私は、その秘宝があった村の出身の者だ。随分と昔に村を出て行商しているが」
「もしかして、ソルラさんが逢ったという行商の人!?」
 驚くエニアの言葉に、行商人も驚く。
 まさか、ここに来て予想もしない人と出逢えると思ってもいなかった。
「君達はもしかして、あの村に現れた歪虚を討ち取りに行った者達なのか。それで、なぜ、今、その秘宝の事を?」
「それが、ある騎士が探していて、わたし達はその行方を追っているのです」
 エニアの説明に行商人は顎に手をやる。
「私は詳しくは知らないのだが……なんでも大峡谷がなんたらと聞いた気がする」
「大峡谷じゃと?」
「……大峡谷にはある噂がある。地の底まで続く巨大な洞窟や遥か古代文明の遺跡があると……秘宝はもしかして、そこから持ち出された可能性があるかもしれない」
 行商人の身振りの先、街を支える巨大な『橋』の先にずっと続く大峡谷が見える。
「肝心の場所までは分からないのね」
「それだけでも掴めたのなら、恩の字じゃ」
 エニアが落胆気味に呟き、星輝が慰みの言葉をかけた。
 大峡谷は文字通り、深い谷がずっと続いているのだ。王国と帝国は大峡谷によって隔たれている。
 その距離は果てしなく長く、そして、大峡谷は険しい地形だけではなく、危険な怪物が生息しているとも言われており、人は踏み入らない魔境なのだ。

●フレッサ領 壊滅した村
 ソルラが率いるアルテミス小隊の初陣は、フレッサ領内の歪虚に支配された村で行われた。
 あの時、作戦に参加していた一人のUiscaは悲しげな目で壊滅した村を見つめている。復興は為されず、今は人が住んでいた形跡すらも朽ち果てていこうとしていた。
「結局、村の人は誰も居なかったですね」
 フレッサの街に結婚や仕事の都合で移り住んでいる人がいないか探したUiscaだったが、空振りに終わった。
 まったく居なかったわけではない。だが、フレッサの街も歪虚による襲撃を受け、その犠牲者の中に、村出身の者も居た。
「ざくろも色々と当たったけどね……」
 フレッサの街で学者や研究者までも訊ねたが思うような情報を得る事ができなかった。
 秘宝と呼ばれるだけの事はある。
「この村で情報がなにか得られればいいけどね」
 樹が犬小屋だった残骸に手をかける。
 ボロリと崩れ落ちた。見渡す限り、まともに残っている建物はない。
「ここまで酷い有り様じゃねぇ」
 それでも地下室やなにかヒントの欠片になるものでもないか樹は諦めず探索を続ける。
 それに倣う様にざくろとUiscaも村だった所の調査を行った。
「あれは、なんだろう」
 ざくろが指差した方角。
 村から少しだけ外れた小高い丘の麓にポッカリと穴が開いていた。

 穴は人が通れる程の大きさがあった。
 遠目だと分からなかったが、氷室のようだ。今は氷室としての役目は果たしていないだろう。だが、そんな事は3人にとって些細な問題だった。
 なぜなら、氷室から姿を現した人物が居たからだ。
「まさか、ハンターが来るとは、な」
「ネル・ベル……」
 樹が歪虚の名を口にした。
 同時にリルエナの言葉を思い出し、魔導拳銃に手を伸ばす。
「どうして、イケメンさんが、こんな所に?」
 Uiscaの質問に歪虚はニヤリと笑って答える。
「歪虚によって滅ぼされた村に歪虚である私が居てもなんら不思議な事ではないはずだからな。それよりも、良い機会だ。貴様は連れて帰るつもり、だったな」
 その言葉にざくろが大剣を構えてUiscaを庇うように前に立った。
「そんな事はさせない!」
「……戦うしかないという事ですね」
 後ろに下がったUiscaが魔法を唱える。
 マテリアルに働きかけ、抵抗力を上げる魔法だ。この歪虚は【強制】という能力を使うからだ。
「試しに『虚月』を使わせて貰おうか」
 歪虚がそう言うと、三日月を思わすような刀をハンター達に見せた。
 思わず身を構えるハンター達の目の前――湾曲した刀の空間に、ぼんやりと映像が映し出される。
「ざくろ達が写ってる?」
 ぼんやりとした映像は少しずつハッキリしてくるに合わせて、映像の中に、自分達の姿が写っている事をざくろは理解した。
 灼熱の炎の中でもがき苦しむ姿だ。
「これが、貴様らが待つ未来の姿だ」
 歪虚の言葉にUiscaが叫び返した。
「そんなものはまやかしです!」
 翡翠色の光が龍の姿の波動が周囲に向かって放たれる。
 映像は瞬時に消え失せ、歪虚も姿を消す。
「あそこに」
 樹が指差した丘の上に歪虚は移動していた。
 この歪虚が持つ瞬間移動の力だろうか。
「やはり、貴様らハンターには意味を成さない力だな……『虚月』は……」
 この地にハンターらが来たというのは秘宝を探し求めてという事なのだろうと歪虚は思った。
 そして、この村に秘宝が無い事を歪虚は知っていた。
「まぁ、いい。思わぬ収穫を貴様らのおかげで得られたからな。この場で貴様らを殺すのは容易いが……今回は見逃してやろう」
 高笑いして歪虚は消え失せた。
 後に何も残さずに。

●王都イルダーナ 騎士団本部の一室
 アティは仲間達から集められた情報や他の資料などの整理に追われていた。
 その部屋は騎士ノセヤが普段詰めている部屋であり、今はノセヤと共に一緒だ。
「ノセヤさん、以上が皆で集めた情報になりますわ」
 書類の束を受け取るノセヤ。
 逐一調査内容を確認していた彼であったので、この書類の束は納品物のようなものだ。
 それでも漏れがないかもう一度、しっかりと確認する辺り、この騎士の性格が表れている。
「……これ以上の情報は得られなかったようですが、私が調査しても、同様に成果は得られなかったでしょう」
「私もあまり、お役に立てなかったですわ」
「いえ、書類や資料の整理など、助かりましたよ」
 ノセヤの言葉に偽りはない。
 ここ最近、ずっと忙しくて片付けは後回しだったからだ。アティは整理だけではなく、騎士団本部にも滅んだ村や秘宝の情報は無いかと探していたのだが……。
「目指すべき次の場所がある程度分かっただけでも十分ですよ」
 資料の中、一つの単語にノセヤは視線を向けた。
「大峡谷……」
 同じ文字をアティも呟いた。
 きっと、ここに目指すべき秘宝がある……そんな予感がしたのであった。


 おしまい。

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MVP一覧

  • 【ⅩⅧ】また"あした"へ
    十色・T・ エニアka0370
  • 【魔装】の監視者
    星輝 Amhranka0724

重体一覧

参加者一覧

  • 【ⅩⅧ】また"あした"へ
    十色・T・ エニア(ka0370
    人間(蒼)|15才|男性|魔術師
  • 【魔装】の監視者
    星輝 Amhran(ka0724
    エルフ|10才|女性|疾影士
  • 緑龍の巫女
    Uisca=S=Amhran(ka0754
    エルフ|17才|女性|聖導士
  • 神秘を掴む冒険家
    時音 ざくろ(ka1250
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • エクラの御使い
    アティ(ka2729
    人間(紅)|15才|女性|聖導士
  • 幸せを手にした男
    檜ケ谷 樹(ka5040
    人間(蒼)|25才|男性|機導師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 【質問卓】情報照合
十色・T・ エニア(ka0370
人間(リアルブルー)|15才|男性|魔術師(マギステル)
最終発言
2016/01/24 00:24:10
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/01/20 21:54:03
アイコン 【相談卓】紅の大地を巡る旅
Uisca=S=Amhran(ka0754
エルフ|17才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2016/01/24 01:56:06