ゲスト
(ka0000)
凍てついた海岸線から来る
マスター:蒼かなた
- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
- 1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/01/21 22:00
- 完成日
- 2016/01/28 21:36
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●吹雪の止んだとある朝
辺境の地では今まさに大雪の季節となっていた。
標高の高い山は軒並み真っ白に染め上げられ、普段は土と岩がむき出しになっている荒野も今は白銀の世界へと変わっていた。
厳しい環境ではあるものの、辺境の民はそれを当たり前と受け入れその中で暮らしている。
そんな辺境の東部に位置する海岸沿いに1つの村があった。
連日降り続けた雪が漸く止んだ日の朝、屋根に雪の降り積もった家から出てきた村人は目の前に広がる海を見て溜息を吐く。
「はぁー、見事に凍りついたの」
数日前の雪が降る前まで穏やかな波の音を立てていた海面は見事に凍りつき、真っ白い氷の足場が大分沖の方まで出来上がっていた。
さらに海風が吹くたびに氷の上に積もった雪が舞い上がり、風の軌跡に合わせて白雪が周囲を舞い踊る。
「おおっと、いかんいかん。つい見惚れてしまった。早く雪下ろしをせんとな」
村人ははたと思い出したように動き出し、梯子を使って屋根の上に登るとせっせとそこに積もる雪を地面へと向けて下ろしていく。
そんな作業を1時間も続けた頃、村人はふぅと一息吐いたところでふと海の方に視線を向けた。
「んっ? 何だあれは……」
村人の目には白い氷と化した海の上で、何か黒い物がぽつぽつと並んでいるように見えた。
はてと首を傾げていると、その黒い何かは1つまた1つと数が増えていく。
黒い物の正体もそうだが、一体どこから増えているのかと村人は更に首をひねる。
「おい、なんじゃあれは!」
どうやらここで他の村人も海の上の黒い何かに気づいたらしく、村のあちらこちらで不安気な声が上がり始めた。
「おお、そうだ。いいものがあったな」
そこで雪かきをしていた村人はつい最近行商人から譲り受けた双眼鏡という道具のことを思い出し、家の中からそれをひったくるようにして手にして戻り、早速レンズを覗き込んで黒い何かを観察する。
双眼鏡を使えばその黒い何かの正体がよく見えた。人間のような姿かたちをしていたが、その肌はぬめぬめとした魚のような鱗に覆われており、腕と脚には鋭い鉤爪が生え、頭はサメやシャチなどの獰猛な海の生き物の顔を平べったくしたような気色の悪いものであった。
そして、村人はその黒い何かのギョロリとした目を覗き込んでしまった。
「うひゃあっ!? ば、化け物じゃあ!!」
村人は手にしていた双眼鏡を放り出し、その場でしりもちを着くほどの慌てようだった。
「歪虚じゃ、きっと歪虚じゃ! 早くハンターオフィスに連絡をするんじゃ!」
●ハンターオフィス
辺境の開拓地『ホープ』にあるハンターオフィスに数人のハンター達が招集された。
「皆様、今回はお集まり頂きありがとうございます。早速依頼の説明をさせていただきます」
オフィス職員が手元のパネルを叩くと、いくつかのウィンドウが立ち上がりハンター達の前に表示される。
「場所は辺境東部の海岸線沿いにあるとある漁村になります」
現在の漁村の状況としてウィンドウに表示される写真の第一印象は真っ白、といったところだろうか。
どの写真でも雪が降り積もり、特に『海岸』として表示された写真には青白い氷の足場が奥まで続いているだけで言われなければそこが海だとは誰も思わないだろう。
「見ての通りこの漁村は連日続いた雪によって埋もれており、更に歪虚が出現したという海も凍りついています」
そして今回現れたという歪虚の姿も映し出された。
半魚人と言えばいいのだろうか、人と魚の中間的なその姿は生理的嫌悪を引き立てるのには十分な醜悪さを持っていた。
「この歪虚達は凍り付いた海の上を歩き回るのみで、今のところ村のほうまではやってきていません。しかしどんどんその数を増やしているようで、最後の報告によると30匹程確認されています」
一体何の目的があるのかは不明だが、数が揃った上で村のほうへ押し寄せてきたら村人たちは一溜まりもないだろう。
「今回は敵の数もそうですが、戦う場所が場所だけに足元にも十分注意してください」
ぺこりと頭を下げたオフィス職員に見送られ、ハンター達は現場の漁村へと向かうべく転移門へと足を向けた。
辺境の地では今まさに大雪の季節となっていた。
標高の高い山は軒並み真っ白に染め上げられ、普段は土と岩がむき出しになっている荒野も今は白銀の世界へと変わっていた。
厳しい環境ではあるものの、辺境の民はそれを当たり前と受け入れその中で暮らしている。
そんな辺境の東部に位置する海岸沿いに1つの村があった。
連日降り続けた雪が漸く止んだ日の朝、屋根に雪の降り積もった家から出てきた村人は目の前に広がる海を見て溜息を吐く。
「はぁー、見事に凍りついたの」
数日前の雪が降る前まで穏やかな波の音を立てていた海面は見事に凍りつき、真っ白い氷の足場が大分沖の方まで出来上がっていた。
さらに海風が吹くたびに氷の上に積もった雪が舞い上がり、風の軌跡に合わせて白雪が周囲を舞い踊る。
「おおっと、いかんいかん。つい見惚れてしまった。早く雪下ろしをせんとな」
村人ははたと思い出したように動き出し、梯子を使って屋根の上に登るとせっせとそこに積もる雪を地面へと向けて下ろしていく。
そんな作業を1時間も続けた頃、村人はふぅと一息吐いたところでふと海の方に視線を向けた。
「んっ? 何だあれは……」
村人の目には白い氷と化した海の上で、何か黒い物がぽつぽつと並んでいるように見えた。
はてと首を傾げていると、その黒い何かは1つまた1つと数が増えていく。
黒い物の正体もそうだが、一体どこから増えているのかと村人は更に首をひねる。
「おい、なんじゃあれは!」
どうやらここで他の村人も海の上の黒い何かに気づいたらしく、村のあちらこちらで不安気な声が上がり始めた。
「おお、そうだ。いいものがあったな」
そこで雪かきをしていた村人はつい最近行商人から譲り受けた双眼鏡という道具のことを思い出し、家の中からそれをひったくるようにして手にして戻り、早速レンズを覗き込んで黒い何かを観察する。
双眼鏡を使えばその黒い何かの正体がよく見えた。人間のような姿かたちをしていたが、その肌はぬめぬめとした魚のような鱗に覆われており、腕と脚には鋭い鉤爪が生え、頭はサメやシャチなどの獰猛な海の生き物の顔を平べったくしたような気色の悪いものであった。
そして、村人はその黒い何かのギョロリとした目を覗き込んでしまった。
「うひゃあっ!? ば、化け物じゃあ!!」
村人は手にしていた双眼鏡を放り出し、その場でしりもちを着くほどの慌てようだった。
「歪虚じゃ、きっと歪虚じゃ! 早くハンターオフィスに連絡をするんじゃ!」
●ハンターオフィス
辺境の開拓地『ホープ』にあるハンターオフィスに数人のハンター達が招集された。
「皆様、今回はお集まり頂きありがとうございます。早速依頼の説明をさせていただきます」
オフィス職員が手元のパネルを叩くと、いくつかのウィンドウが立ち上がりハンター達の前に表示される。
「場所は辺境東部の海岸線沿いにあるとある漁村になります」
現在の漁村の状況としてウィンドウに表示される写真の第一印象は真っ白、といったところだろうか。
どの写真でも雪が降り積もり、特に『海岸』として表示された写真には青白い氷の足場が奥まで続いているだけで言われなければそこが海だとは誰も思わないだろう。
「見ての通りこの漁村は連日続いた雪によって埋もれており、更に歪虚が出現したという海も凍りついています」
そして今回現れたという歪虚の姿も映し出された。
半魚人と言えばいいのだろうか、人と魚の中間的なその姿は生理的嫌悪を引き立てるのには十分な醜悪さを持っていた。
「この歪虚達は凍り付いた海の上を歩き回るのみで、今のところ村のほうまではやってきていません。しかしどんどんその数を増やしているようで、最後の報告によると30匹程確認されています」
一体何の目的があるのかは不明だが、数が揃った上で村のほうへ押し寄せてきたら村人たちは一溜まりもないだろう。
「今回は敵の数もそうですが、戦う場所が場所だけに足元にも十分注意してください」
ぺこりと頭を下げたオフィス職員に見送られ、ハンター達は現場の漁村へと向かうべく転移門へと足を向けた。
リプレイ本文
●雪に覆われた漁村
村人達がハンターオフィスに連絡をしてから丁度丸一日。雪に覆われた村に依頼を受けたハンター達が到着した。
「綺麗に積もってるね。何だか故郷の事を思い出すよ」
送迎の馬車から降りたところでリンカ・エルネージュ(ka1840)は周囲の景色を見渡し、自然とそんな言葉を零した。
「なんだ、お前さんも雪国の出身か?」
リンカの呟きを偶然耳にした仙堂 紫苑(ka5953)がそう声を掛けた。彼もまた雪国の出身であったようだ。
「紫苑さんもそうなんだ。うん、雪深い港町の出身なんだよね。だから今回の依頼はどうしても他人事に思えなくて」
そう言いながらリンカははにかむように笑みを浮かべた。故郷の事を話せるのはやはり嬉しいものなのだろう。
「なるほどな。しかし、流石に俺の故郷じゃ流石に海まで凍るなんてことはなかったが……初めて見るが大した光景だ」
紫苑の言葉にリンカも共に村の外に広がる光景へと目をやる。見事に凍りついた海岸は、恐らく言われなければそこが海だとは気づけないだろう。
実際雪も積もっている所為で海岸と海の境界がどこなのかは全く分からない。
「仕事じゃなければ、流氷観光も良いんだけどね」
「それなら、仕事が終わったらそうするのもいいじゃろう」
凍り付いた海を眺めていた2人に、馬車から飛び降りてきたレーヴェ・W・マルバス(ka0276)がそう提案した。
「やれやれ、しかし折角の幻想的な風景も歪虚がたむろしておっては台無しじゃのぅ」
同じく馬車から降りてきてレーヴェの隣に立ったヴィルマ・ネーベル(ka2549)も海のほうへと視線を向けた。白く凍った海の沖のほうではあちらこちらで動き回る影が見える。
「全くじゃな。観光の前にまずは漁といこうかの。おーおー、これは大漁の予感じゃ」
レーヴェは額に手を当てて動き回る歪虚の影をざっと眺める。遠くてしっかりと姿を確認することは出来ないが、依頼の情報にあった通り30匹前後はいるようだ。
「それにしても、寒い」
そこで多々良 莢(ka6065)がぽつりとそう呟いた。彼女は現在しっかりと厚手のコートを着込み防寒用の滑り止めブーツまで履いての完全装備だ。
別に彼女が寒がりというわけではなく、気温がマイナスへと傾いているこの場所なら人として当然の反応だろう。
「寒さもそうだが、氷上の戦闘となると転倒にも気を付けないとな」
「あっ、そうそう。それならこれを使うといいよ」
紫苑の言葉にメイム(ka2290)は荷物袋から革紐を取り出して手渡してきた。
「これは?」
「滑り止めだよ。こんな感じで靴に結べばいけるはず」
そう言ってメイムは片足を上げてブーツの靴底を見せる。そこには革紐が丁度バツ印になるようにして巻き付けられていた。
「なるほどな。折角だしやっておこう」
「氷で滑るのもそうじゃが、氷が割れた時の為にウォーターウォークも掛けておくかのぅ。この時期に海水浴はしたくないじゃろ?」
「あっ、ウォーターウォークは私も使えるからお手伝いするよ」
ヴィルマの言葉にリンカもひょいっと手を挙げて存在をアピールする。
「寒中水泳はお断りだし、助かる」
莢はその言葉にこくりと一度頷きつつ、防寒具を付けた状態での体の動きを確認する。腰の刀を抜刀し、一振りしてから鞘へと戻す。
「んっ、大丈夫そう」
やはり多少動きにくくはなるが、戦闘に支障はなさそうだ。
「オーケー。それじゃあそろそろ行こうぜ。氷上の舞台へとよ」
デルフィーノ(ka1548)の言葉に皆は一様に頷き、ハンター達は凍てついた海へと足を向けた。
●開戦
「さあ、いくぞ」
紫苑がその一言と共に氷の上へと足を乗せた途端にである。それまで凍り付いた海の上を歩き回っていた歪虚達が一斉にそちらへと視線を向けてきた。
そしてこの場が誰もが覚えのある殺気の飛び交う戦場へと変貌したのを全員が理解する。
「来た来た来たっ!」
沖の方にいた歪虚達はもの凄い速度でハンター達の元へと殺到してくる。
「マーダーシザース、こいつの力を試させて貰うぜ」
紫苑は突っ込んでくる半魚人達の前に立ちはだかると、手にした大鋏の両刃を大きく開かせる。
『ギギギギッ!』
「まずはお前だっ」
紫苑は真っ先に突っ込んできた鮫顔の半魚人に大鋏を向けた。突っ込んできた勢いもあってか片刃は半魚人の肩に突き刺さり、もう片刃は脇腹付近を貫く。
だがそれだけでは終わらず、そのタイミングで紫苑が大鋏の持ち手にある魔導機械にマテリアルを注ぎ込むと、大鋏の両刃が僅かに震え、そして一気に内側へと閉じた。
ジョキンという音が聞こえてきそうな流れで半魚人の上半身が斜めに断ち切られ、紫苑が半身になったところでその横を2つになった歪虚が通り過ぎていく。
「オーケー、いい性能してる」
「ばさっとしている暇はなさそうじゃぞ。ほれ、もう次が来よった」
そんな言葉と共に、紫苑の真横を通り抜けるようにして青い稲妻が駆け抜けていく。一瞬視線を後ろに向ければ、水色の霧を纏うヴィルマが金色の小振りの杖を構えていた。
そして再び視線を前に戻せば、稲妻に貫かれて半魚人が黒い煙を上げながらその場で倒れていく。
「俺には当てないでくれよ?」
紫苑の言葉にヴィルマはにこりと笑って返す。それが当然と言う意味なのかまた別の意味なのかは、考えない方がいいだろう。
そんなヴィルマの隣ではリンカが手にした剣に口づけをするとその足元に魔法陣が描かれ、リンカの体に吸い込まれるようにして収束し消えていく。
「さぁ、氷上で私とダンスだ!」
そして気合を言葉と共に剣を軽く一閃すると、それに合わせて揺れたリンカの髪が白銀から僅かに青みを帯び氷ついた色へと変わる。
そんな彼女に向かって1匹のウツボ面の半魚人が飛び掛かってきた。
『ギギググゥッ』
「うっ! 半魚人とはやっぱやだ!」
リンカが長剣の剣先を半魚人へと向けると、白い閃光と共に雷撃が放たれた。幾つもの鋭角を作りながら直進する雷は時折その軌跡に白い薔薇の花を生み出し、それは傍から見ればあたかも雷撃が伸びる茨であるかのように見えたのかもしれない。
しかしここは戦場で、それを見て楽しむ余裕は今はない。そしてその雷の茨も、ただ敵を貫くためだけに直進し、敵を焼き焦がす。
「出だしは良好のようじゃな。私も負けておれんの」
後方にあった大岩に登っていたレーヴェは、見下ろした先で戦う仲間達の様子を確認し、そして背負っていた自身の身の丈を超す和弓を手に取る。
そして仲間達の元へと殺到してくる半魚人の一匹に狙いを定め、矢を番え、引き絞る。
「全く、醜悪な面じゃのう。どうせ焼いても食えんのじゃろう……なっ」
言葉の終わりと共に放った矢は周囲の冷たい空気を切り裂き、一陣の風のように飛んで狙った半魚人の脚を貫いた。
「少し下にズレたの。どれ、ではこれでトドメじゃ」
レーヴェは頭の中で矢の軌道の計算に修正を入れながら次の矢を番え、そして脚を射られて氷上を這いずる半魚人に再び狙いを定めた。
「けどこれ、前に進むどころじゃないかも~」
メイムが白銀の槍を振るい1匹の半魚人の胸を貫くと、その後ろからまた別の半魚人が飛び掛かってきた。
メイムはそこで槍に半魚人が突き刺さったまま足を強く踏み込み、そして体を大きく捻って体を一回転させ槍を振り回す。
飛び掛かってきた半魚人はその槍で弾き飛ばされ、突き刺さっていた半魚人も途中ですっぽ抜けて遠くの方へ飛ばされていった。
「っと、ととっ!」
そしてメイムのほうは回転を止めようとしたところで踏ん張りがきかず、そのままもう一回転してから何とか止まることに成功する。
そしてその間に、また別の半魚人がこちらに迫ってきているのが見えた。
「私の生活のため、あなた達にはサヨナラして貰うよ」
その半魚人を横合いから間合いを詰めた莢の絡繰刀が斬りつけた。その刀の銘の通り、紫電の軌跡を残しながら返す刃で首を落としてトドメを刺す。
「けど、斬っても斬っても切りがない」
莢が半眼になり沖の方へ視線を向ければ、どこからともなく新たな半魚人の影が現れているのが見える。
「個体としての強さは大したことないのが幸いだな」
「とりあえず、今はこの調子で迎撃するのがよさそうじゃのぅ」
次々と迫りくる半魚人達に向けて、ハンター達は手にした武器を再び構えた。
●氷上の戦場
「しぶとい」
莢は這いずり迫ってきた半魚人の頭に刀を突き立てた。
それから周囲を確認しながら頬に付いた血を拭い。そして刀を引き抜いて軽く払って刃にこびりついた歪虚の血を飛ばす。
「この気温でも凍らない血。一体なにで出来ているのかのぅ」
「何でもいいさ。まあ、凍らないでくれて助かったけどな」
ヴィルマの言葉を紫苑はさらっと受け流す。もしこの血が凍りつくようなものであったなら、紫苑の体は今頃半分ほど氷漬けになっていたであろう。
ただやはり血は血であることに変わりはないらしく、前衛を張っているハンター達の武器の切れ味がやや落ちたように感じられる。
「はあ、これで、何体倒したっけ?」
「数えてなかった。でも、30匹はとっくに終わった気がする」
白い息を吐くリンカの問いにはメイムが答えた。周りに転がる死体の数から考えても、確かに30匹以上は倒しているだろう。だが半魚人達は未だに残っている。
「皆、朗報じゃ。沖のほうからはもう出てこなくなったぞっ」
そこで後方の大岩の上にいるレーヴェの声が皆に届いた。彼女の言葉通りなら今見えている敵が全て。あと10匹といったところだろうか。
「結局倍近くいたんだね……追加報酬とか出ないのかな」
「さて、出るといいんじゃがのぅ……っと、そろそろ効果が切れる。掛けなおしておくか」
ヴィルマが莢の足元に向けて杖を振るうと、青い霧が円を描くようにして莢の足首の周りを回りだす。
「んっ?」
そこでヴィルマの目が一瞬何かを捉えた気がした。ただ彼女の視線は莢の足元に向いていた為、見えているのは氷の足場だけだ。
「待って、何か聞こえる」
そこでメイムも何かに気づいた。目に見えているわけではない。ただ、彼女の耳が何か異音を捉えたのだ。
「おい、来るぞっ」
「とにかく、迎え――」
正面から迫ってきた半魚人達にハンター達が視線をやった瞬間、リンカと紫苑の足元の氷が急に砕けた。
「んなっ!?」
「わわっ!?」
2人の体が一瞬宙に浮いた後、そのまま重力に引かれて砕けた氷の下にある海の上へと落ちる。だが事前に掛けていた水上歩行の魔法によって2人はそのまま水の上に『着地』することが出来た。
「危なか――っ!」
何とか難を逃れた、そう思った隙を突き水中から現れた腕が2人の足を掴みそのまま海中へと引きずりこんだ。
「ちぃ、水中から近づき氷を砕いてきおったか。変なところで頭の回る連中じゃのぅ」
ここはまだ岸からそれほど離れていないので水深は浅いだろう。だが水中で戦闘をするとなると海の深さはもはや関係ない。特に魔術師ともなれば使える魔術は限定され、場合によっては手も足も出なくなってしまう。
「こっちは任せた」
そこでヴィルマの横から莢が走り込み、リンカが引きずり込まれた穴に飛び込み海中へと潜った。
それを見送ったヴィルマは手にした杖を握りなおすと、青い光を灯した瞳を氷上の半魚人達へと向ける。
「悪いが時間が惜しいのじゃ。そなたらは早々に、無へと還れ」
帯電し小さな炸裂音を響かせる黄金の杖が半魚人達へと向けられ、轟く雷鳴と共に青い閃光が走った。
その頃、海中に引き込まれたリンカは、手にした長剣を自らの足を掴む腕に突き刺していた。
半魚人はそこで手を放し、黒い血を周囲にまき散らしながらリンカの周囲を泳ぎだす。
(浅かったっ。体が思うように動かない……それに、息もっ)
文字通り凍り付く冷たさの海水が急速にリンカの体温と体力を奪っていく。それに突然水中に引きずり込まれた所為もあってしっかり呼吸も出来なかったのが辛い。
(敵は、1匹だけ……それならっ!)
リンカは体を捻り、暗い海中の中で光が差し込んでいる海面へと向かう。恐らくそこが自分が海中に引きずり込まれた穴のある場所だ。
だが、それを許すほど半魚人も馬鹿ではなかった。氷上にいた時の倍近い速度でリンカの泳ぐ方向に回り込み、大口を開けて噛みつこうと突撃してくる。
リンカはこれを避けることが出来ず、剣で受け止めようとするも腕に噛みつかれてしまい、そのまま海底まで押し戻される。
激しい痛みは顔を歪ませ、空気を求める肺が直接握りつぶされてるかのように圧迫されていく。そして視界の端が僅かずつ暗転していく中で、その視界に稲妻が走った。
(やるなら、今っ)
リンカがマテリアルを込めた腕で海底を叩く。すると周囲の砂が盛り上がり始め、そこから飛び出してきた土の壁がリンカと半魚人の体を真上に跳ね上げた。
そして、丁度真上で控えていた莢の刃が半魚人の背中を刺し貫く。
「ぷはぁっ!」
半魚人を片付けて数秒後、氷の砕けた海面にリンカと莢が顔を出した。
「2人共、大丈夫? ほら、捕まって。」
メイムは手を差し出して海面から2人のことを引き上げる。
「やれやれ、これで一安心じゃのぅ」
「うわあああ、寒いいいぃぃ、どころで、ジオンさんわわぁ?」
「俺は、無事、だ、ぜぇ」
体の震えが止まらないリンカの言葉に、途切れ途切れな返事が返ってきた。そちらを見れば、リンカと同じように震えている紫苑の姿があった。
「ご、ご無事でぇ、なにより、でずぅ」
「ハハ、速攻で、バラバラに、してやって、ぜぇ」
紫苑のほうは海中に引き込まれたところで即大鋏で半魚人を捉え、細かく砕いてきたらしい。ただ武器もそうだが装着しているパワードスーツの重さもあって、浮かんでくるのに手間取ったようだ。
「さて、どうやら歪虚も全滅したようじゃ。依頼完了じゃの」
周囲の確認を終えて大岩から降りてきたレーヴェも皆の元にやってきた。
「しかし、これは流石に直帰するわけにもいかんのぅ。村で暖を取らせて貰おうか」
「そうじゃな。早いところ戻って身体を温めようぞ」
「暫く、海は、見たくない」
「同感、ですうぅぅ」
凍える仲間を連れ、ハンター達は凍り付いた海岸を去る。
「ふぅー……帰ってゆっくりしてから、作業にとりかかろー」
そんな次にやりたいことを考えながら。
村人達がハンターオフィスに連絡をしてから丁度丸一日。雪に覆われた村に依頼を受けたハンター達が到着した。
「綺麗に積もってるね。何だか故郷の事を思い出すよ」
送迎の馬車から降りたところでリンカ・エルネージュ(ka1840)は周囲の景色を見渡し、自然とそんな言葉を零した。
「なんだ、お前さんも雪国の出身か?」
リンカの呟きを偶然耳にした仙堂 紫苑(ka5953)がそう声を掛けた。彼もまた雪国の出身であったようだ。
「紫苑さんもそうなんだ。うん、雪深い港町の出身なんだよね。だから今回の依頼はどうしても他人事に思えなくて」
そう言いながらリンカははにかむように笑みを浮かべた。故郷の事を話せるのはやはり嬉しいものなのだろう。
「なるほどな。しかし、流石に俺の故郷じゃ流石に海まで凍るなんてことはなかったが……初めて見るが大した光景だ」
紫苑の言葉にリンカも共に村の外に広がる光景へと目をやる。見事に凍りついた海岸は、恐らく言われなければそこが海だとは気づけないだろう。
実際雪も積もっている所為で海岸と海の境界がどこなのかは全く分からない。
「仕事じゃなければ、流氷観光も良いんだけどね」
「それなら、仕事が終わったらそうするのもいいじゃろう」
凍り付いた海を眺めていた2人に、馬車から飛び降りてきたレーヴェ・W・マルバス(ka0276)がそう提案した。
「やれやれ、しかし折角の幻想的な風景も歪虚がたむろしておっては台無しじゃのぅ」
同じく馬車から降りてきてレーヴェの隣に立ったヴィルマ・ネーベル(ka2549)も海のほうへと視線を向けた。白く凍った海の沖のほうではあちらこちらで動き回る影が見える。
「全くじゃな。観光の前にまずは漁といこうかの。おーおー、これは大漁の予感じゃ」
レーヴェは額に手を当てて動き回る歪虚の影をざっと眺める。遠くてしっかりと姿を確認することは出来ないが、依頼の情報にあった通り30匹前後はいるようだ。
「それにしても、寒い」
そこで多々良 莢(ka6065)がぽつりとそう呟いた。彼女は現在しっかりと厚手のコートを着込み防寒用の滑り止めブーツまで履いての完全装備だ。
別に彼女が寒がりというわけではなく、気温がマイナスへと傾いているこの場所なら人として当然の反応だろう。
「寒さもそうだが、氷上の戦闘となると転倒にも気を付けないとな」
「あっ、そうそう。それならこれを使うといいよ」
紫苑の言葉にメイム(ka2290)は荷物袋から革紐を取り出して手渡してきた。
「これは?」
「滑り止めだよ。こんな感じで靴に結べばいけるはず」
そう言ってメイムは片足を上げてブーツの靴底を見せる。そこには革紐が丁度バツ印になるようにして巻き付けられていた。
「なるほどな。折角だしやっておこう」
「氷で滑るのもそうじゃが、氷が割れた時の為にウォーターウォークも掛けておくかのぅ。この時期に海水浴はしたくないじゃろ?」
「あっ、ウォーターウォークは私も使えるからお手伝いするよ」
ヴィルマの言葉にリンカもひょいっと手を挙げて存在をアピールする。
「寒中水泳はお断りだし、助かる」
莢はその言葉にこくりと一度頷きつつ、防寒具を付けた状態での体の動きを確認する。腰の刀を抜刀し、一振りしてから鞘へと戻す。
「んっ、大丈夫そう」
やはり多少動きにくくはなるが、戦闘に支障はなさそうだ。
「オーケー。それじゃあそろそろ行こうぜ。氷上の舞台へとよ」
デルフィーノ(ka1548)の言葉に皆は一様に頷き、ハンター達は凍てついた海へと足を向けた。
●開戦
「さあ、いくぞ」
紫苑がその一言と共に氷の上へと足を乗せた途端にである。それまで凍り付いた海の上を歩き回っていた歪虚達が一斉にそちらへと視線を向けてきた。
そしてこの場が誰もが覚えのある殺気の飛び交う戦場へと変貌したのを全員が理解する。
「来た来た来たっ!」
沖の方にいた歪虚達はもの凄い速度でハンター達の元へと殺到してくる。
「マーダーシザース、こいつの力を試させて貰うぜ」
紫苑は突っ込んでくる半魚人達の前に立ちはだかると、手にした大鋏の両刃を大きく開かせる。
『ギギギギッ!』
「まずはお前だっ」
紫苑は真っ先に突っ込んできた鮫顔の半魚人に大鋏を向けた。突っ込んできた勢いもあってか片刃は半魚人の肩に突き刺さり、もう片刃は脇腹付近を貫く。
だがそれだけでは終わらず、そのタイミングで紫苑が大鋏の持ち手にある魔導機械にマテリアルを注ぎ込むと、大鋏の両刃が僅かに震え、そして一気に内側へと閉じた。
ジョキンという音が聞こえてきそうな流れで半魚人の上半身が斜めに断ち切られ、紫苑が半身になったところでその横を2つになった歪虚が通り過ぎていく。
「オーケー、いい性能してる」
「ばさっとしている暇はなさそうじゃぞ。ほれ、もう次が来よった」
そんな言葉と共に、紫苑の真横を通り抜けるようにして青い稲妻が駆け抜けていく。一瞬視線を後ろに向ければ、水色の霧を纏うヴィルマが金色の小振りの杖を構えていた。
そして再び視線を前に戻せば、稲妻に貫かれて半魚人が黒い煙を上げながらその場で倒れていく。
「俺には当てないでくれよ?」
紫苑の言葉にヴィルマはにこりと笑って返す。それが当然と言う意味なのかまた別の意味なのかは、考えない方がいいだろう。
そんなヴィルマの隣ではリンカが手にした剣に口づけをするとその足元に魔法陣が描かれ、リンカの体に吸い込まれるようにして収束し消えていく。
「さぁ、氷上で私とダンスだ!」
そして気合を言葉と共に剣を軽く一閃すると、それに合わせて揺れたリンカの髪が白銀から僅かに青みを帯び氷ついた色へと変わる。
そんな彼女に向かって1匹のウツボ面の半魚人が飛び掛かってきた。
『ギギググゥッ』
「うっ! 半魚人とはやっぱやだ!」
リンカが長剣の剣先を半魚人へと向けると、白い閃光と共に雷撃が放たれた。幾つもの鋭角を作りながら直進する雷は時折その軌跡に白い薔薇の花を生み出し、それは傍から見ればあたかも雷撃が伸びる茨であるかのように見えたのかもしれない。
しかしここは戦場で、それを見て楽しむ余裕は今はない。そしてその雷の茨も、ただ敵を貫くためだけに直進し、敵を焼き焦がす。
「出だしは良好のようじゃな。私も負けておれんの」
後方にあった大岩に登っていたレーヴェは、見下ろした先で戦う仲間達の様子を確認し、そして背負っていた自身の身の丈を超す和弓を手に取る。
そして仲間達の元へと殺到してくる半魚人の一匹に狙いを定め、矢を番え、引き絞る。
「全く、醜悪な面じゃのう。どうせ焼いても食えんのじゃろう……なっ」
言葉の終わりと共に放った矢は周囲の冷たい空気を切り裂き、一陣の風のように飛んで狙った半魚人の脚を貫いた。
「少し下にズレたの。どれ、ではこれでトドメじゃ」
レーヴェは頭の中で矢の軌道の計算に修正を入れながら次の矢を番え、そして脚を射られて氷上を這いずる半魚人に再び狙いを定めた。
「けどこれ、前に進むどころじゃないかも~」
メイムが白銀の槍を振るい1匹の半魚人の胸を貫くと、その後ろからまた別の半魚人が飛び掛かってきた。
メイムはそこで槍に半魚人が突き刺さったまま足を強く踏み込み、そして体を大きく捻って体を一回転させ槍を振り回す。
飛び掛かってきた半魚人はその槍で弾き飛ばされ、突き刺さっていた半魚人も途中ですっぽ抜けて遠くの方へ飛ばされていった。
「っと、ととっ!」
そしてメイムのほうは回転を止めようとしたところで踏ん張りがきかず、そのままもう一回転してから何とか止まることに成功する。
そしてその間に、また別の半魚人がこちらに迫ってきているのが見えた。
「私の生活のため、あなた達にはサヨナラして貰うよ」
その半魚人を横合いから間合いを詰めた莢の絡繰刀が斬りつけた。その刀の銘の通り、紫電の軌跡を残しながら返す刃で首を落としてトドメを刺す。
「けど、斬っても斬っても切りがない」
莢が半眼になり沖の方へ視線を向ければ、どこからともなく新たな半魚人の影が現れているのが見える。
「個体としての強さは大したことないのが幸いだな」
「とりあえず、今はこの調子で迎撃するのがよさそうじゃのぅ」
次々と迫りくる半魚人達に向けて、ハンター達は手にした武器を再び構えた。
●氷上の戦場
「しぶとい」
莢は這いずり迫ってきた半魚人の頭に刀を突き立てた。
それから周囲を確認しながら頬に付いた血を拭い。そして刀を引き抜いて軽く払って刃にこびりついた歪虚の血を飛ばす。
「この気温でも凍らない血。一体なにで出来ているのかのぅ」
「何でもいいさ。まあ、凍らないでくれて助かったけどな」
ヴィルマの言葉を紫苑はさらっと受け流す。もしこの血が凍りつくようなものであったなら、紫苑の体は今頃半分ほど氷漬けになっていたであろう。
ただやはり血は血であることに変わりはないらしく、前衛を張っているハンター達の武器の切れ味がやや落ちたように感じられる。
「はあ、これで、何体倒したっけ?」
「数えてなかった。でも、30匹はとっくに終わった気がする」
白い息を吐くリンカの問いにはメイムが答えた。周りに転がる死体の数から考えても、確かに30匹以上は倒しているだろう。だが半魚人達は未だに残っている。
「皆、朗報じゃ。沖のほうからはもう出てこなくなったぞっ」
そこで後方の大岩の上にいるレーヴェの声が皆に届いた。彼女の言葉通りなら今見えている敵が全て。あと10匹といったところだろうか。
「結局倍近くいたんだね……追加報酬とか出ないのかな」
「さて、出るといいんじゃがのぅ……っと、そろそろ効果が切れる。掛けなおしておくか」
ヴィルマが莢の足元に向けて杖を振るうと、青い霧が円を描くようにして莢の足首の周りを回りだす。
「んっ?」
そこでヴィルマの目が一瞬何かを捉えた気がした。ただ彼女の視線は莢の足元に向いていた為、見えているのは氷の足場だけだ。
「待って、何か聞こえる」
そこでメイムも何かに気づいた。目に見えているわけではない。ただ、彼女の耳が何か異音を捉えたのだ。
「おい、来るぞっ」
「とにかく、迎え――」
正面から迫ってきた半魚人達にハンター達が視線をやった瞬間、リンカと紫苑の足元の氷が急に砕けた。
「んなっ!?」
「わわっ!?」
2人の体が一瞬宙に浮いた後、そのまま重力に引かれて砕けた氷の下にある海の上へと落ちる。だが事前に掛けていた水上歩行の魔法によって2人はそのまま水の上に『着地』することが出来た。
「危なか――っ!」
何とか難を逃れた、そう思った隙を突き水中から現れた腕が2人の足を掴みそのまま海中へと引きずりこんだ。
「ちぃ、水中から近づき氷を砕いてきおったか。変なところで頭の回る連中じゃのぅ」
ここはまだ岸からそれほど離れていないので水深は浅いだろう。だが水中で戦闘をするとなると海の深さはもはや関係ない。特に魔術師ともなれば使える魔術は限定され、場合によっては手も足も出なくなってしまう。
「こっちは任せた」
そこでヴィルマの横から莢が走り込み、リンカが引きずり込まれた穴に飛び込み海中へと潜った。
それを見送ったヴィルマは手にした杖を握りなおすと、青い光を灯した瞳を氷上の半魚人達へと向ける。
「悪いが時間が惜しいのじゃ。そなたらは早々に、無へと還れ」
帯電し小さな炸裂音を響かせる黄金の杖が半魚人達へと向けられ、轟く雷鳴と共に青い閃光が走った。
その頃、海中に引き込まれたリンカは、手にした長剣を自らの足を掴む腕に突き刺していた。
半魚人はそこで手を放し、黒い血を周囲にまき散らしながらリンカの周囲を泳ぎだす。
(浅かったっ。体が思うように動かない……それに、息もっ)
文字通り凍り付く冷たさの海水が急速にリンカの体温と体力を奪っていく。それに突然水中に引きずり込まれた所為もあってしっかり呼吸も出来なかったのが辛い。
(敵は、1匹だけ……それならっ!)
リンカは体を捻り、暗い海中の中で光が差し込んでいる海面へと向かう。恐らくそこが自分が海中に引きずり込まれた穴のある場所だ。
だが、それを許すほど半魚人も馬鹿ではなかった。氷上にいた時の倍近い速度でリンカの泳ぐ方向に回り込み、大口を開けて噛みつこうと突撃してくる。
リンカはこれを避けることが出来ず、剣で受け止めようとするも腕に噛みつかれてしまい、そのまま海底まで押し戻される。
激しい痛みは顔を歪ませ、空気を求める肺が直接握りつぶされてるかのように圧迫されていく。そして視界の端が僅かずつ暗転していく中で、その視界に稲妻が走った。
(やるなら、今っ)
リンカがマテリアルを込めた腕で海底を叩く。すると周囲の砂が盛り上がり始め、そこから飛び出してきた土の壁がリンカと半魚人の体を真上に跳ね上げた。
そして、丁度真上で控えていた莢の刃が半魚人の背中を刺し貫く。
「ぷはぁっ!」
半魚人を片付けて数秒後、氷の砕けた海面にリンカと莢が顔を出した。
「2人共、大丈夫? ほら、捕まって。」
メイムは手を差し出して海面から2人のことを引き上げる。
「やれやれ、これで一安心じゃのぅ」
「うわあああ、寒いいいぃぃ、どころで、ジオンさんわわぁ?」
「俺は、無事、だ、ぜぇ」
体の震えが止まらないリンカの言葉に、途切れ途切れな返事が返ってきた。そちらを見れば、リンカと同じように震えている紫苑の姿があった。
「ご、ご無事でぇ、なにより、でずぅ」
「ハハ、速攻で、バラバラに、してやって、ぜぇ」
紫苑のほうは海中に引き込まれたところで即大鋏で半魚人を捉え、細かく砕いてきたらしい。ただ武器もそうだが装着しているパワードスーツの重さもあって、浮かんでくるのに手間取ったようだ。
「さて、どうやら歪虚も全滅したようじゃ。依頼完了じゃの」
周囲の確認を終えて大岩から降りてきたレーヴェも皆の元にやってきた。
「しかし、これは流石に直帰するわけにもいかんのぅ。村で暖を取らせて貰おうか」
「そうじゃな。早いところ戻って身体を温めようぞ」
「暫く、海は、見たくない」
「同感、ですうぅぅ」
凍える仲間を連れ、ハンター達は凍り付いた海岸を去る。
「ふぅー……帰ってゆっくりしてから、作業にとりかかろー」
そんな次にやりたいことを考えながら。
依頼結果
依頼成功度 | 普通 |
---|
面白かった! | 5人 |
---|
ポイントがありませんので、拍手できません
現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!
MVP一覧
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
作戦用相談板 仙堂 紫苑(ka5953) 人間(クリムゾンウェスト)|23才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2016/01/21 19:51:16 |
||
質問板 仙堂 紫苑(ka5953) 人間(クリムゾンウェスト)|23才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 |
||
プレイング メイム(ka2290) エルフ|15才|女性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2016/01/21 20:34:01 |
||
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/01/17 15:31:59 |