ゲスト
(ka0000)
【節V】カカオと鬼と鳩ぽっぽ
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~7人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/01/28 22:00
- 完成日
- 2016/02/04 18:42
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
「突然だけど、今年のヴァレンタインデーは終了する!」
「「「な、なんだってー!!!」」」
●
カカオ減産、そして高騰に伴うチョコレートの供給危機を前に、ハンターズソサエティのショップ店員シルキー・アークライト(kz0013)が敗北し、ソサエティショップ史上初のチョコレート販売停止がなされた。
そんな折、北伐から戻ったアカシラ(kz0146)はこんな話を聞く。
――世の中には『義理チョコ』なるものがある、と。
その有無で悲嘆に暮れ人生に悩む者がいると知り立ち上がったアカシラ。そして彼女の相談を受けたヘクス・シャルシェレット(kz0015)は、彼女の話から東方にカカオ豆が自生する地域がある事を知った。
そして。
空前絶後のカカオ豆不足を乗り切るため、安定したチョコレート供給のため――ハンター達が、動いた。
人類史上2度目の東征、『チョコレート解放戦線』の始まりである。
●平穏
「義理チョコねぇ」
「……中元と歳暮だけで満足しませんか」
「……娘からもらったら嬉しいだろうな」
「ああ、男の子だけでしたね」
陰陽寮の一角で大江 紅葉(kz0163)とその上司であり師である男は書類をさばきながら会話をしていた。
西から入ってきたヴァレンタインデーを話題にしており、表面上の事だけでなく、リアルブルーでの成り立ちも入る。同じ部屋にいる者は二人の会話を面白く耳を傾けていた。
「紅葉はやらんのか? チョコじゃなくても」
「え? 家臣にですか? スメラギ様にですか?」
上司の手から筆が落ち、聞いていた者が顔を上げて紅葉を見る。
「可哀そうだな」
「ん?」
「いや、なんでもない」
上司は濁し、誰も何も言わない。紅葉は首をかしげた。
●大江家
「うわあああああああああ」
「ふざけるなっ」
「落ち着け」
帰宅した紅葉が耳にしたのは、最近雇った鬼たちの騒動だった。
テユカが悪さをして、善木が罠にはまり、五来がなだめているのかと思った。
お茶を飲んでいた家臣の爺が言うには、より複雑な話だと言う。止めに入っていないのは、鬼たちの状況を考えると首を突っ込めなかったと言う。
「何がどうしたんですか?」
紅葉が穏便に済まそうとにこにこと話しかける。
「うわああん、だって、あたしはいいと思うんだ」
「大体、あのアマが絡んでんだろう! ろくな事じゃねぇ!」
「アカシラ姐は悪くないもん!」
「落ち着け、いいか、子ども相手にそんなに……」
誰も紅葉に気付かない。
紅葉は息を吸うと声を張り上げた。
「いい加減にしなさい! 何がどうしたのか私に分かるように説明しなさいっ!」
屋敷中響き渡った声に、全員、動きを止めた。
主である紅葉が大声を上げることはめったにない。そのために誰しもが驚愕した。
「実は……テユカがこれを」
五来が見せたほうが早いと紙を一枚出す。
紅葉は目を通すと小刻みに震える。
「……タイミング悪い」
「はい?」
「何、これ? 私、アカシラ殿に聞きたいことあるのに、グラズヘイムに出かけることに……そっちはそっちで楽しい事なのですが……」
「……」
五来は紅葉の能天気さにあきれつつも、これだからこの屋敷は居心地がいいんだと思う。
「で、何が問題なの?」
「ヴァレンタインデーと言うのがあって、好きな人にチョコレートあげるんでしょ?」
おずおずとテユカが告げる。
「という風習もあるそうですが……ま、まさか」
「紅葉さま、光頼おじさんに上げ……むぐっ」
善木があわててテユカの口をふさいだ。松永 光頼という紅葉の友人の名前が上がる。
「あらあら、テユカはおませさんなのね。確かにチョコレートは手に入らないというから……」
「そこは揉めてない」
「結局何を揉めているんです?」
善木は黙った。
「つまり、チョコレートの原材料となるカカオを探しに来たハンターに協力したいと言う話だ。テユカが行く気満々」
「……まあ、危ないですよ?」
五来の説明に紅葉はうなずいた。
彼らがいた里に集まっている鬼たちの出自は様々。テユカの言動からすると、アカシラを知って育っていると思われる。
「テユカはアカシラ殿に会いたいの?」
「うーん? アカシラ姐と付き合いはないからそれほどではないよ? でもね、わくわくするんだよ、チョコ……」
「あげたいのね? 松永殿、好かれているのですね」
「……う、うん?」
テユカも同じ間違いはできないかったが、訂正もできなかった。
「かといって、テユカだけ行くのは……」
善木と五来も屋敷の警護も兼ねて雇っている。紅葉の護衛に一度連れ出したが、結構目立つし、問題もあると分かっていた。
善木はアカシラに対して感情がはっきりとしている。
「で、あなたは?」
紅葉は五来に尋ねる。
「……アカシラに対しての気持ちか? 怒りはなくないが、今はここにいるし」
「なら、テユカと五来、二人で行ってらっしゃい」
五来はうなずいた。喜ぶテユカを前に、善木が複雑な表情を見せる。
「うちの警備も必要ですからね」
「……妥当だな」
善木は紅葉にうなずいた。
「で、紅葉さまは来るの?」
「いえ、仕事でグラズヘイムに行くのよ?」
溜息を洩らした。
ああ、間が悪い、と。
●いざ
テユカは緊張しつつ出かける。優しい紅葉のために、カカオという物を見つけたい。それがあれば、愛の告白ができて、紅葉はもっと優しくなって、勉強しなくていいと言うかもしれないと思考が飛んだ。
そのカカオとやらから作られるチョコレートは美味しいとも聞く。それなら食べてみたい。
誰も住んでいない里。妖怪は跋扈しているだろうから油断はできない。
テユカは戦う術を持たないが、五来もハンターもいるから心強い。
「まあ、今も妖怪多いんだろうな」
五来はテユカを守らないといけないと気を張り詰める。
「テユカはカカオを知っているのか?」
「知らない」
「……そうか」
「チョコレート見つかるといいなぁ」
「……ああ」
五来は少し考えた。
テユカはカカオ探しに来たはずだが、チョコレート探しになっているのではないか、と。
いずれにせよ、捜索する方向に足を踏み入れた。
鳩のような妖怪が群れていたという話があるため、緊張とともに前に進んだ。
●守る物
カカオはラグビーボール型、大きいと30センチくらいの長さとなる。それらを狙うのは人間だけではなく妖怪もだった。
それらはカカオの木から離れたところでたむろしている。
『くるっぽー』
『ぐるるるぅぽーーーーーーー』
『オ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛』
鳩の妖怪たちは日向にたむろをしてくつろぐ。
彼らは何かを語り、何かを呻く。
一見穏やかそうに見えるそれらは、そこに日向ぼっこしているのか。
「突然だけど、今年のヴァレンタインデーは終了する!」
「「「な、なんだってー!!!」」」
●
カカオ減産、そして高騰に伴うチョコレートの供給危機を前に、ハンターズソサエティのショップ店員シルキー・アークライト(kz0013)が敗北し、ソサエティショップ史上初のチョコレート販売停止がなされた。
そんな折、北伐から戻ったアカシラ(kz0146)はこんな話を聞く。
――世の中には『義理チョコ』なるものがある、と。
その有無で悲嘆に暮れ人生に悩む者がいると知り立ち上がったアカシラ。そして彼女の相談を受けたヘクス・シャルシェレット(kz0015)は、彼女の話から東方にカカオ豆が自生する地域がある事を知った。
そして。
空前絶後のカカオ豆不足を乗り切るため、安定したチョコレート供給のため――ハンター達が、動いた。
人類史上2度目の東征、『チョコレート解放戦線』の始まりである。
●平穏
「義理チョコねぇ」
「……中元と歳暮だけで満足しませんか」
「……娘からもらったら嬉しいだろうな」
「ああ、男の子だけでしたね」
陰陽寮の一角で大江 紅葉(kz0163)とその上司であり師である男は書類をさばきながら会話をしていた。
西から入ってきたヴァレンタインデーを話題にしており、表面上の事だけでなく、リアルブルーでの成り立ちも入る。同じ部屋にいる者は二人の会話を面白く耳を傾けていた。
「紅葉はやらんのか? チョコじゃなくても」
「え? 家臣にですか? スメラギ様にですか?」
上司の手から筆が落ち、聞いていた者が顔を上げて紅葉を見る。
「可哀そうだな」
「ん?」
「いや、なんでもない」
上司は濁し、誰も何も言わない。紅葉は首をかしげた。
●大江家
「うわあああああああああ」
「ふざけるなっ」
「落ち着け」
帰宅した紅葉が耳にしたのは、最近雇った鬼たちの騒動だった。
テユカが悪さをして、善木が罠にはまり、五来がなだめているのかと思った。
お茶を飲んでいた家臣の爺が言うには、より複雑な話だと言う。止めに入っていないのは、鬼たちの状況を考えると首を突っ込めなかったと言う。
「何がどうしたんですか?」
紅葉が穏便に済まそうとにこにこと話しかける。
「うわああん、だって、あたしはいいと思うんだ」
「大体、あのアマが絡んでんだろう! ろくな事じゃねぇ!」
「アカシラ姐は悪くないもん!」
「落ち着け、いいか、子ども相手にそんなに……」
誰も紅葉に気付かない。
紅葉は息を吸うと声を張り上げた。
「いい加減にしなさい! 何がどうしたのか私に分かるように説明しなさいっ!」
屋敷中響き渡った声に、全員、動きを止めた。
主である紅葉が大声を上げることはめったにない。そのために誰しもが驚愕した。
「実は……テユカがこれを」
五来が見せたほうが早いと紙を一枚出す。
紅葉は目を通すと小刻みに震える。
「……タイミング悪い」
「はい?」
「何、これ? 私、アカシラ殿に聞きたいことあるのに、グラズヘイムに出かけることに……そっちはそっちで楽しい事なのですが……」
「……」
五来は紅葉の能天気さにあきれつつも、これだからこの屋敷は居心地がいいんだと思う。
「で、何が問題なの?」
「ヴァレンタインデーと言うのがあって、好きな人にチョコレートあげるんでしょ?」
おずおずとテユカが告げる。
「という風習もあるそうですが……ま、まさか」
「紅葉さま、光頼おじさんに上げ……むぐっ」
善木があわててテユカの口をふさいだ。松永 光頼という紅葉の友人の名前が上がる。
「あらあら、テユカはおませさんなのね。確かにチョコレートは手に入らないというから……」
「そこは揉めてない」
「結局何を揉めているんです?」
善木は黙った。
「つまり、チョコレートの原材料となるカカオを探しに来たハンターに協力したいと言う話だ。テユカが行く気満々」
「……まあ、危ないですよ?」
五来の説明に紅葉はうなずいた。
彼らがいた里に集まっている鬼たちの出自は様々。テユカの言動からすると、アカシラを知って育っていると思われる。
「テユカはアカシラ殿に会いたいの?」
「うーん? アカシラ姐と付き合いはないからそれほどではないよ? でもね、わくわくするんだよ、チョコ……」
「あげたいのね? 松永殿、好かれているのですね」
「……う、うん?」
テユカも同じ間違いはできないかったが、訂正もできなかった。
「かといって、テユカだけ行くのは……」
善木と五来も屋敷の警護も兼ねて雇っている。紅葉の護衛に一度連れ出したが、結構目立つし、問題もあると分かっていた。
善木はアカシラに対して感情がはっきりとしている。
「で、あなたは?」
紅葉は五来に尋ねる。
「……アカシラに対しての気持ちか? 怒りはなくないが、今はここにいるし」
「なら、テユカと五来、二人で行ってらっしゃい」
五来はうなずいた。喜ぶテユカを前に、善木が複雑な表情を見せる。
「うちの警備も必要ですからね」
「……妥当だな」
善木は紅葉にうなずいた。
「で、紅葉さまは来るの?」
「いえ、仕事でグラズヘイムに行くのよ?」
溜息を洩らした。
ああ、間が悪い、と。
●いざ
テユカは緊張しつつ出かける。優しい紅葉のために、カカオという物を見つけたい。それがあれば、愛の告白ができて、紅葉はもっと優しくなって、勉強しなくていいと言うかもしれないと思考が飛んだ。
そのカカオとやらから作られるチョコレートは美味しいとも聞く。それなら食べてみたい。
誰も住んでいない里。妖怪は跋扈しているだろうから油断はできない。
テユカは戦う術を持たないが、五来もハンターもいるから心強い。
「まあ、今も妖怪多いんだろうな」
五来はテユカを守らないといけないと気を張り詰める。
「テユカはカカオを知っているのか?」
「知らない」
「……そうか」
「チョコレート見つかるといいなぁ」
「……ああ」
五来は少し考えた。
テユカはカカオ探しに来たはずだが、チョコレート探しになっているのではないか、と。
いずれにせよ、捜索する方向に足を踏み入れた。
鳩のような妖怪が群れていたという話があるため、緊張とともに前に進んだ。
●守る物
カカオはラグビーボール型、大きいと30センチくらいの長さとなる。それらを狙うのは人間だけではなく妖怪もだった。
それらはカカオの木から離れたところでたむろしている。
『くるっぽー』
『ぐるるるぅぽーーーーーーー』
『オ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛』
鳩の妖怪たちは日向にたむろをしてくつろぐ。
彼らは何かを語り、何かを呻く。
一見穏やかそうに見えるそれらは、そこに日向ぼっこしているのか。
リプレイ本文
●密林に踏み込む
視界は悪いが、足元はそれなりに安定している道なき道を進むハンターたちとテユカと五来。
「チョコレート……たくさんなっているといいなぁ」
「テユカちゃん、カカオってまるごと食べられるわけじゃないぽいし、チョコになるのは中身の少しだけ」
メイム(ka2290)がテユカの発言を耳にし、カカオとチョコレートについて説明をした。
「うっ本当? でも、おいしんでしょ? チョコレート。それあげあると良いことがある……かも」
テユカは問題ないとうなずく。
「で、なんで良いことがあると思うんだ?」
リュー・グランフェスト(ka2419)は周囲を見つつ、話しに加わった。カカオを運ぶために、途中までは馬を連れてきて、安全そうなところで待たせた。
「だって、紅葉さまが光頼おじさんに告白して、恋人になれば、きっともっと優しくなって……」
「勉強は減らないぞ、大してやってないのだから。それに……松永様に『おじさん』はやめろ」
テユカは五来の言葉に不満そうな顔になる。
なお、光頼は年齢が20代半ばなので呼び方は微妙な年頃かもしれない。五来もそのくらい。
「おめえは勉強が嫌いなんだべさ? どーしてさ?」
鬼道丸(ka4736)は首をかしげながら、のんびりした口調で尋ねる。
鬼道丸がまじめに着こなしている『まるごとぜんら』のために、テユカは笑いそうになり耐える。あれは防具なのだと紅葉がソサエティの支給品を見せてくれたことがある。
「なんか嫌い」
「どの程度の勉強をしているか知らないけれど……読み書きはできた方が便利ですよ?」
クオン・サガラ(ka0018)は苦笑する。
クオンはカカオの安定供給ができるといいと思う一方で、ヴァレンタインデーが広まることに心を痛めていた。クリムゾンウェストやエトファリカといった地域にあるだろう伝統文化が駆逐されるのではという不安。
「戦闘が待っていそうだし、こいつのテストをしたかったところだ、が……」
不動シオン(ka5395)は大身槍「黒樫」を抱きしめ、少し不安に思う。敵がいる場所によっては不利益を被るかもしれない。仲間を見れば、大きな武器も持っているため「どうにかなるだろう」と考えた、不利な戦闘は誰もが避けるだろうから。
「フッフッフ~、カカオが手に入り次第モーレ・ポブラーノ作成ですぅ。死体が残る程度の歪虚なら、きっとお肉も熟成が進んで美味しいと思いますぅ。これぞ鴨葱ならぬチョコ鳩……ポジョ・デ・モーレが私たちを待ってますぅ♪」
星野 ハナ(ka5852)はウキウキと足を進める。
「ああ、鳩の妖怪っ! なんかこうもやっとむかっとするのはなんだろう」
岩井崎 旭(ka0234)は前を歩きながらつぶやいた、視界が悪いために「超聴覚」も使う。
技を使うと必然覚醒状態となる。覚醒状態になると彼の姿が変わることが分かる。
(鳥だよね……だから歪虚に怒りが湧くんじゃないの?)
と言誰となく思ったかもしれない。
●それら
『グッルクル……』
『ポッーポーッ』
『オ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛』
カリポリ……。
熱帯雨林の適度に隙間がある部分で、それらはたむろしていた。鳩の日向ぼっこなのだが、熱帯雨林で楽しいのかは不明。なんだかより一層蒸していそうだ。
ここには他の妖怪も来ない。人間も鬼もやってこない、幸せだ、満たされている……が満たされていない。彼らは妖怪だ、人とは感性は異なる。いや、同じ部分もあるかもしれない……好物が手元からなくなった場合。
●沈黙
「鳩に似た妖怪がいるって情報はありましたね」
クオンは茂みからそこを眺めた。
そこに妖怪らしき物体はいるが、アカシラが見たモノと同一かは誰もが知らない。わざわざ戻って聞きに行くのもより、いずれ倒すことになる妖怪だから倒してしまえばいい。
「いや、鳩じゃねーだろ……いや、鳩か?」
リューはサイズを見つつ首をひねる。
「ねえ、どーして今回の応募人数少ないのにあんなに歪虚がいるの!?」
メイムはぼそりと不平を言うが、すでにどう対処するか脳内は思考が駆け巡る。
「鳩ってこの程度だべ……」
「人間サイズ……喰いごたえあってよいじゃないですかぁ!」
鬼道丸は続いたハナの言葉を聞いてきょとんとする。どこから突っ込めばいいか分からなくなってきていた、敵だけではなく仲間にも。
「新鮮な死体なら……残るとは言うが……」
シオンは目の前の鳩たちが食料に見えなくはないとうなずきそうになり、主役の武器を握りしめる。
「妖怪がいる近くにカカオがあるんだったよね?」
テユカはその近くにカカオがあるのかとそわそわする。
「見ていてもしょうがない」
旭は木々が途切れて広くなっているその場所を見つめる。
「テユカちゃんは戦えないんだし……カカオ好きならこれに寄ってくるかもしれない」
メイムは小さいカカオ豆を取り出した。小さいとはいえ、これが基準であり、成長すれば大きくなるだけの事。
「途中に落ちてはなかったしなぁ……」
リューは落ちていればためしに見せてみるつもりだったが見つからなかった。カカオの周りにいるなら好きなはずで、目の前の妖怪の集団が見逃すわけはないだろう、と。
「オラはテユカたちの側にいるべ」
「同じく、護衛をしつつ、援護をしましょう」
鬼道丸とクオンが護衛は請け負う。
「とっとと殺(や)りましょう~」
ハナはさわやかな笑顔を見せた。
●飛び散る!
「行きますぅ『五色光布陣』ですぅ!」
ハナが先陣を切った。中衛の位置から敵を多く含むように符術を展開する。攻撃が当たったのか、鳩の羽が飛び散る。
(それほど数が入っていなかったはずですけどぉ?)
ハナは羽の量を見て胸の奥がざわつく。
テユカたちと離れたところでメイムがカカオを掲げる。
「さあ、お前達の好物はここにあるわよっ!」
「この先にあるなら……鳩ども、こいやあ!!」
メイムの声とリューの威嚇により、妖怪たちはぎろりと睨み付けそちらにくぎつけになる。
飛び散る羽が収まると、すっくと鳩は立ち上がったのがはっきりと見える。
「……え」
何人かの声が重なる。
手前の巨大鳩の脚は筋肉ムキムキの人間の脚だった。
奥にいた鳩は頭だけ鳩だなと認識はしていたが、立つとはっきりとし、頭の下は筋肉ムキムキの人間の肉体だった。立つとき、肉体を誇るようにポーズしたようにも見えるが気のせいかもしれない。
ハンターは悲鳴を上げない。しかし、どこかなんか言いたい気持ちは膨れ上がるため、闘志に変えて突き進むべきだと胸の奥で言い聞かせる。
「う、うわああああああああああ」
テユカが悲鳴を上げた。一般人で子供だし、仕方がないし、悲鳴を代表してくれたわけだ。五来が必死になだめている。
「……お前らの相手はこの俺だ!」
覚醒状態になった旭から洩れたのは、己を奮いたたせる声だった。
鳥人間……と本人が己の覚醒状態を指して言うとおりの姿になる、頭部がミミズクのようになり、背にはミミズクの羽を背負ったような。
ただし、妖怪と異なり、人間味や神々しさも感じる。
「なんだありゃ……鳩、鳩で妖怪……倒すのみっ!」
鬼道丸は武器を構えつつ、目の前の敵に集中する。のんびりとした雰囲気から一気に鋭さが増す。
「鳩……わたしはテユカを守る……」
クオンは淡々とつぶやく。変に考えると妖怪に対して何か言いたくなるかもしれない。
「貴様ら、カカオを食っていないで私の相手をしろ!」
シオンは鳩たちが群れるところの広場に向かい、鋭く突き食らわせた。手ごたえは十分あるが、妙に羽が散った。
羽で視界が遮られる。
『オ゛エ゛エ゛エ゛』
『ぐるっぽー』
低い威嚇の声と共に妖怪たちが行動を起こした。
筋肉質な鳩の妖怪――鳩マッチョと仮に命名――は近くにいた鳩の妖怪――脚だけマッチョ――を抱えるとメイムめがけてぶん投げてきた。
別の一頭はメイムに石を投げ、他のモノたちは突進して来る。
「ちょ、ちょっとおおおおお!」
狙われたメイムは悲鳴を上げる。脚だけマッチョは途中で落ち、石も当たらなかったが、突進してくる奴らは止まらない。肉の壁が迫ってくるようだ。
メイムやリューに近くにいた脚だけマッチョは蹴りやくちばしを食らわせる。
メイム達以外にも人間がいるのには気づいているため、脚だけマッチョの一部はそちらに向かう。
「このくらいで、私は負けませんよぉ! 目の前に肉の材料……って、ちょ、多いっですぅうう!」
ハナは悲鳴を上げる、突かれ蹴られて。
「くっ、いきなり囲まれるとは」
シオンをくちばしで突きまくる。
「……うあああ、お姉ちゃんたちがんばれー」
テユカは応援をした、彼女の精一杯の行動。
ハンターたちは落ち着くことにした、冷静さを失うと良いことは一つもない。
反撃を開始する。
「行くぜ、紋章剣『天槍』!」
リューの望む敵の位置にはなっていないが、密集の中に一本の筋はある。
「確実にいくよお」
メイムはカカオをしまい、ハンマーで殴りつける。
「行くぜ! あれ?」
旭は武器を振るったのだが、力み過ぎた上に蔦に武器が絡まった気がした。
「……落ち着け、落ち着け……」
シオンは少し下がって、マテリアルヒーリングを掛けてる。武器が云々より、自分が死にかけては元もこうもない。
「数が多いから『デルタレイ』」
クオンは機導を使い敵を撃つ。当たったのか当たらないのか分からないが、脚だけマッチョは羽を散らした。
「……そういえばアオバトという鳥は羽が抜けやすく……」
クオンはリアルブルーの美しい鳥であるアオバトのことを思い出したが、目の前の妖怪に美しさの欠片もない。いや、筋肉の美しさはあるかもしれないが。
「近づくな、こら」
鬼道丸は鋭い突きを歪虚に食らわせる。
「テユカは守らないとならない」
五来は弱ってきた妖怪にとどめを刺した。
「え、肉は!」
ハナは札で攻撃をしつつ、驚愕する。いや、見えないだけで転がっているかもしれない。敵は多いのだから悲観はしてはいけないのだ、まだ。
鳩の妖怪たちの勢いは衰えず攻撃を仕掛けてくる。蹴りとくちばし、そしてこぶしで語る。
「暑苦しい……かもしれない」
誰かがつぶやく。
蒸し暑い地域に、暑苦しい何かがそこにあった。息をすると、飛び散った羽が口に入り込むようでもあった。
「いい加減に減って頂戴」
メイムはマテリアルも込めた、重い一撃で鳩の妖怪たちを追い込んでいく。
「お前らは見飽きた! 『吹き荒れる塵旋風』!」
旭は広場で存分に武器を振るった。脚だけマッチョは羽をまき散らす。
「……見えにくいっ!」
羽が舞い散っている中、リューが残っていた鳩マッチョを攻撃する。
「……脚だけマッチョの羽がなくなっている……」
五来がつぶやいた。
「避けたり、攻撃が当たると減るんだろうね」
アオバトの羽が回避に使われるのと同じく、とクオンが分析しつつ、デルタレイを放つ。銃で狙うか否かを悩ましい状況だが、ひとまずダメージを入れる事、羽をむしり取ることが重要だろうと考える。
「今度こそ武器の性能テストだ」
シオンは開けた土地に入り込み、鳩の妖怪に思いっきり武器を振るった。一度目に使ったときに答えはあったが、気持ちよく振るうことができる場所は重要だった。
「鳩肉か……残るのか?」
「ぬううううう」
鬼道丸は攻撃する中、ハナの呻きを聞いた。
羽が舞い、札も舞い、ハンターも舞った……戦場の決着は、湿気と暑さで干からびる前につく。
●カカオは?
敵がいなくなった開けた地で、ハナは天に手を伸ばし、絶望に沈んだ。
「神は……この世にいなかったのですぅ……肉は……なしですぅ……」
テユカが憐れんでハナの肩をポンポンと叩き、頭に乗ったままの鳥の羽を無言で取る。
「……一部羽毛は残ったけっどのお……」
鬼道丸は体に着いた羽を取り捨てる。
「おっこれはっ!」
旭は見つけた、妖怪たちがいたあたりにカカオの実が落ちていたのを。立派なそれはまだ手つかずであり、十分食用に耐えそうだった。
「でかいなぁ。カカオの実って食ったことないな」
ひっくり返したりして観察した後、口に持って行こうとする。
「そのままでは食べられないよ?」
「無理ですよぉ?」
メイムとハナに指摘される。
「確か、干して、炒って、すりつぶして……食べられるんだべ?」
「そうですよ!」
鬼道丸は事前に調べたことをハナが肯定する。
「それを割って、中から取り出した一部が食べられるのよ。それに苦いんだよ?」
メイムがにやりとテユカを見る。
「やっぱり、チョコレートって苦いの?」
「食べやすいように砂糖を入れてお菓子にするんだよ」
「それだけでなく、ちゃんと料理すると味違うんです。美容と健康にカカオは最適」
不安がるテユカにメイムとハナが美味しさを伝道した。
「こいつらがカカオを食べるなら、この近くにカカオの木はあるって事か?」
リューは用心深く先に進むと、徐々に高所に向かう道があった。
「……退くか否か」
旭はラグビーボールのようなカカオの実を弄びながら見上げる。
「我らは決められぬ。テユカは行きたがるだろうし、怪我もしているぬしらが決める」
五来が助言する。
「行きます、この程度でカカオが手に入るなら」
「遅れはとったが、テストは良くできている。なら先に進むのもやぶさかではない」
ハナが息を巻き、シオンが大槍を抱きしめるように持つ。
「本当はヴァレンタインデーなんて広まってほしくはないんですが、チョコレートがないのは……寂しいですけど」
ため息交じりのクオンにテユカが「なんで」と問いかける。
「いや、もともとリアルブルーで……」
説明が始まったが、テユカは途中から聞いていない。クオンには申し訳ないと五来が思い、聞いておく。
鬼道丸は好奇心を持ってカカオを抱きしめる。
「これが食べられるとは……」
不思議なカカオを持ち、先を見る。
さて、一行は緩やかな道を登る。妖怪たちがカカオの木の周りに陣取らず、距離を置いてたむろし、行き来したおかげで道ができたことになる。
ハンターとテユカたちが登りきったその先に木々は茂っていた。独特な香りも漂い、期待に胸が膨らんだのだった。
視界は悪いが、足元はそれなりに安定している道なき道を進むハンターたちとテユカと五来。
「チョコレート……たくさんなっているといいなぁ」
「テユカちゃん、カカオってまるごと食べられるわけじゃないぽいし、チョコになるのは中身の少しだけ」
メイム(ka2290)がテユカの発言を耳にし、カカオとチョコレートについて説明をした。
「うっ本当? でも、おいしんでしょ? チョコレート。それあげあると良いことがある……かも」
テユカは問題ないとうなずく。
「で、なんで良いことがあると思うんだ?」
リュー・グランフェスト(ka2419)は周囲を見つつ、話しに加わった。カカオを運ぶために、途中までは馬を連れてきて、安全そうなところで待たせた。
「だって、紅葉さまが光頼おじさんに告白して、恋人になれば、きっともっと優しくなって……」
「勉強は減らないぞ、大してやってないのだから。それに……松永様に『おじさん』はやめろ」
テユカは五来の言葉に不満そうな顔になる。
なお、光頼は年齢が20代半ばなので呼び方は微妙な年頃かもしれない。五来もそのくらい。
「おめえは勉強が嫌いなんだべさ? どーしてさ?」
鬼道丸(ka4736)は首をかしげながら、のんびりした口調で尋ねる。
鬼道丸がまじめに着こなしている『まるごとぜんら』のために、テユカは笑いそうになり耐える。あれは防具なのだと紅葉がソサエティの支給品を見せてくれたことがある。
「なんか嫌い」
「どの程度の勉強をしているか知らないけれど……読み書きはできた方が便利ですよ?」
クオン・サガラ(ka0018)は苦笑する。
クオンはカカオの安定供給ができるといいと思う一方で、ヴァレンタインデーが広まることに心を痛めていた。クリムゾンウェストやエトファリカといった地域にあるだろう伝統文化が駆逐されるのではという不安。
「戦闘が待っていそうだし、こいつのテストをしたかったところだ、が……」
不動シオン(ka5395)は大身槍「黒樫」を抱きしめ、少し不安に思う。敵がいる場所によっては不利益を被るかもしれない。仲間を見れば、大きな武器も持っているため「どうにかなるだろう」と考えた、不利な戦闘は誰もが避けるだろうから。
「フッフッフ~、カカオが手に入り次第モーレ・ポブラーノ作成ですぅ。死体が残る程度の歪虚なら、きっとお肉も熟成が進んで美味しいと思いますぅ。これぞ鴨葱ならぬチョコ鳩……ポジョ・デ・モーレが私たちを待ってますぅ♪」
星野 ハナ(ka5852)はウキウキと足を進める。
「ああ、鳩の妖怪っ! なんかこうもやっとむかっとするのはなんだろう」
岩井崎 旭(ka0234)は前を歩きながらつぶやいた、視界が悪いために「超聴覚」も使う。
技を使うと必然覚醒状態となる。覚醒状態になると彼の姿が変わることが分かる。
(鳥だよね……だから歪虚に怒りが湧くんじゃないの?)
と言誰となく思ったかもしれない。
●それら
『グッルクル……』
『ポッーポーッ』
『オ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛』
カリポリ……。
熱帯雨林の適度に隙間がある部分で、それらはたむろしていた。鳩の日向ぼっこなのだが、熱帯雨林で楽しいのかは不明。なんだかより一層蒸していそうだ。
ここには他の妖怪も来ない。人間も鬼もやってこない、幸せだ、満たされている……が満たされていない。彼らは妖怪だ、人とは感性は異なる。いや、同じ部分もあるかもしれない……好物が手元からなくなった場合。
●沈黙
「鳩に似た妖怪がいるって情報はありましたね」
クオンは茂みからそこを眺めた。
そこに妖怪らしき物体はいるが、アカシラが見たモノと同一かは誰もが知らない。わざわざ戻って聞きに行くのもより、いずれ倒すことになる妖怪だから倒してしまえばいい。
「いや、鳩じゃねーだろ……いや、鳩か?」
リューはサイズを見つつ首をひねる。
「ねえ、どーして今回の応募人数少ないのにあんなに歪虚がいるの!?」
メイムはぼそりと不平を言うが、すでにどう対処するか脳内は思考が駆け巡る。
「鳩ってこの程度だべ……」
「人間サイズ……喰いごたえあってよいじゃないですかぁ!」
鬼道丸は続いたハナの言葉を聞いてきょとんとする。どこから突っ込めばいいか分からなくなってきていた、敵だけではなく仲間にも。
「新鮮な死体なら……残るとは言うが……」
シオンは目の前の鳩たちが食料に見えなくはないとうなずきそうになり、主役の武器を握りしめる。
「妖怪がいる近くにカカオがあるんだったよね?」
テユカはその近くにカカオがあるのかとそわそわする。
「見ていてもしょうがない」
旭は木々が途切れて広くなっているその場所を見つめる。
「テユカちゃんは戦えないんだし……カカオ好きならこれに寄ってくるかもしれない」
メイムは小さいカカオ豆を取り出した。小さいとはいえ、これが基準であり、成長すれば大きくなるだけの事。
「途中に落ちてはなかったしなぁ……」
リューは落ちていればためしに見せてみるつもりだったが見つからなかった。カカオの周りにいるなら好きなはずで、目の前の妖怪の集団が見逃すわけはないだろう、と。
「オラはテユカたちの側にいるべ」
「同じく、護衛をしつつ、援護をしましょう」
鬼道丸とクオンが護衛は請け負う。
「とっとと殺(や)りましょう~」
ハナはさわやかな笑顔を見せた。
●飛び散る!
「行きますぅ『五色光布陣』ですぅ!」
ハナが先陣を切った。中衛の位置から敵を多く含むように符術を展開する。攻撃が当たったのか、鳩の羽が飛び散る。
(それほど数が入っていなかったはずですけどぉ?)
ハナは羽の量を見て胸の奥がざわつく。
テユカたちと離れたところでメイムがカカオを掲げる。
「さあ、お前達の好物はここにあるわよっ!」
「この先にあるなら……鳩ども、こいやあ!!」
メイムの声とリューの威嚇により、妖怪たちはぎろりと睨み付けそちらにくぎつけになる。
飛び散る羽が収まると、すっくと鳩は立ち上がったのがはっきりと見える。
「……え」
何人かの声が重なる。
手前の巨大鳩の脚は筋肉ムキムキの人間の脚だった。
奥にいた鳩は頭だけ鳩だなと認識はしていたが、立つとはっきりとし、頭の下は筋肉ムキムキの人間の肉体だった。立つとき、肉体を誇るようにポーズしたようにも見えるが気のせいかもしれない。
ハンターは悲鳴を上げない。しかし、どこかなんか言いたい気持ちは膨れ上がるため、闘志に変えて突き進むべきだと胸の奥で言い聞かせる。
「う、うわああああああああああ」
テユカが悲鳴を上げた。一般人で子供だし、仕方がないし、悲鳴を代表してくれたわけだ。五来が必死になだめている。
「……お前らの相手はこの俺だ!」
覚醒状態になった旭から洩れたのは、己を奮いたたせる声だった。
鳥人間……と本人が己の覚醒状態を指して言うとおりの姿になる、頭部がミミズクのようになり、背にはミミズクの羽を背負ったような。
ただし、妖怪と異なり、人間味や神々しさも感じる。
「なんだありゃ……鳩、鳩で妖怪……倒すのみっ!」
鬼道丸は武器を構えつつ、目の前の敵に集中する。のんびりとした雰囲気から一気に鋭さが増す。
「鳩……わたしはテユカを守る……」
クオンは淡々とつぶやく。変に考えると妖怪に対して何か言いたくなるかもしれない。
「貴様ら、カカオを食っていないで私の相手をしろ!」
シオンは鳩たちが群れるところの広場に向かい、鋭く突き食らわせた。手ごたえは十分あるが、妙に羽が散った。
羽で視界が遮られる。
『オ゛エ゛エ゛エ゛』
『ぐるっぽー』
低い威嚇の声と共に妖怪たちが行動を起こした。
筋肉質な鳩の妖怪――鳩マッチョと仮に命名――は近くにいた鳩の妖怪――脚だけマッチョ――を抱えるとメイムめがけてぶん投げてきた。
別の一頭はメイムに石を投げ、他のモノたちは突進して来る。
「ちょ、ちょっとおおおおお!」
狙われたメイムは悲鳴を上げる。脚だけマッチョは途中で落ち、石も当たらなかったが、突進してくる奴らは止まらない。肉の壁が迫ってくるようだ。
メイムやリューに近くにいた脚だけマッチョは蹴りやくちばしを食らわせる。
メイム達以外にも人間がいるのには気づいているため、脚だけマッチョの一部はそちらに向かう。
「このくらいで、私は負けませんよぉ! 目の前に肉の材料……って、ちょ、多いっですぅうう!」
ハナは悲鳴を上げる、突かれ蹴られて。
「くっ、いきなり囲まれるとは」
シオンをくちばしで突きまくる。
「……うあああ、お姉ちゃんたちがんばれー」
テユカは応援をした、彼女の精一杯の行動。
ハンターたちは落ち着くことにした、冷静さを失うと良いことは一つもない。
反撃を開始する。
「行くぜ、紋章剣『天槍』!」
リューの望む敵の位置にはなっていないが、密集の中に一本の筋はある。
「確実にいくよお」
メイムはカカオをしまい、ハンマーで殴りつける。
「行くぜ! あれ?」
旭は武器を振るったのだが、力み過ぎた上に蔦に武器が絡まった気がした。
「……落ち着け、落ち着け……」
シオンは少し下がって、マテリアルヒーリングを掛けてる。武器が云々より、自分が死にかけては元もこうもない。
「数が多いから『デルタレイ』」
クオンは機導を使い敵を撃つ。当たったのか当たらないのか分からないが、脚だけマッチョは羽を散らした。
「……そういえばアオバトという鳥は羽が抜けやすく……」
クオンはリアルブルーの美しい鳥であるアオバトのことを思い出したが、目の前の妖怪に美しさの欠片もない。いや、筋肉の美しさはあるかもしれないが。
「近づくな、こら」
鬼道丸は鋭い突きを歪虚に食らわせる。
「テユカは守らないとならない」
五来は弱ってきた妖怪にとどめを刺した。
「え、肉は!」
ハナは札で攻撃をしつつ、驚愕する。いや、見えないだけで転がっているかもしれない。敵は多いのだから悲観はしてはいけないのだ、まだ。
鳩の妖怪たちの勢いは衰えず攻撃を仕掛けてくる。蹴りとくちばし、そしてこぶしで語る。
「暑苦しい……かもしれない」
誰かがつぶやく。
蒸し暑い地域に、暑苦しい何かがそこにあった。息をすると、飛び散った羽が口に入り込むようでもあった。
「いい加減に減って頂戴」
メイムはマテリアルも込めた、重い一撃で鳩の妖怪たちを追い込んでいく。
「お前らは見飽きた! 『吹き荒れる塵旋風』!」
旭は広場で存分に武器を振るった。脚だけマッチョは羽をまき散らす。
「……見えにくいっ!」
羽が舞い散っている中、リューが残っていた鳩マッチョを攻撃する。
「……脚だけマッチョの羽がなくなっている……」
五来がつぶやいた。
「避けたり、攻撃が当たると減るんだろうね」
アオバトの羽が回避に使われるのと同じく、とクオンが分析しつつ、デルタレイを放つ。銃で狙うか否かを悩ましい状況だが、ひとまずダメージを入れる事、羽をむしり取ることが重要だろうと考える。
「今度こそ武器の性能テストだ」
シオンは開けた土地に入り込み、鳩の妖怪に思いっきり武器を振るった。一度目に使ったときに答えはあったが、気持ちよく振るうことができる場所は重要だった。
「鳩肉か……残るのか?」
「ぬううううう」
鬼道丸は攻撃する中、ハナの呻きを聞いた。
羽が舞い、札も舞い、ハンターも舞った……戦場の決着は、湿気と暑さで干からびる前につく。
●カカオは?
敵がいなくなった開けた地で、ハナは天に手を伸ばし、絶望に沈んだ。
「神は……この世にいなかったのですぅ……肉は……なしですぅ……」
テユカが憐れんでハナの肩をポンポンと叩き、頭に乗ったままの鳥の羽を無言で取る。
「……一部羽毛は残ったけっどのお……」
鬼道丸は体に着いた羽を取り捨てる。
「おっこれはっ!」
旭は見つけた、妖怪たちがいたあたりにカカオの実が落ちていたのを。立派なそれはまだ手つかずであり、十分食用に耐えそうだった。
「でかいなぁ。カカオの実って食ったことないな」
ひっくり返したりして観察した後、口に持って行こうとする。
「そのままでは食べられないよ?」
「無理ですよぉ?」
メイムとハナに指摘される。
「確か、干して、炒って、すりつぶして……食べられるんだべ?」
「そうですよ!」
鬼道丸は事前に調べたことをハナが肯定する。
「それを割って、中から取り出した一部が食べられるのよ。それに苦いんだよ?」
メイムがにやりとテユカを見る。
「やっぱり、チョコレートって苦いの?」
「食べやすいように砂糖を入れてお菓子にするんだよ」
「それだけでなく、ちゃんと料理すると味違うんです。美容と健康にカカオは最適」
不安がるテユカにメイムとハナが美味しさを伝道した。
「こいつらがカカオを食べるなら、この近くにカカオの木はあるって事か?」
リューは用心深く先に進むと、徐々に高所に向かう道があった。
「……退くか否か」
旭はラグビーボールのようなカカオの実を弄びながら見上げる。
「我らは決められぬ。テユカは行きたがるだろうし、怪我もしているぬしらが決める」
五来が助言する。
「行きます、この程度でカカオが手に入るなら」
「遅れはとったが、テストは良くできている。なら先に進むのもやぶさかではない」
ハナが息を巻き、シオンが大槍を抱きしめるように持つ。
「本当はヴァレンタインデーなんて広まってほしくはないんですが、チョコレートがないのは……寂しいですけど」
ため息交じりのクオンにテユカが「なんで」と問いかける。
「いや、もともとリアルブルーで……」
説明が始まったが、テユカは途中から聞いていない。クオンには申し訳ないと五来が思い、聞いておく。
鬼道丸は好奇心を持ってカカオを抱きしめる。
「これが食べられるとは……」
不思議なカカオを持ち、先を見る。
さて、一行は緩やかな道を登る。妖怪たちがカカオの木の周りに陣取らず、距離を置いてたむろし、行き来したおかげで道ができたことになる。
ハンターとテユカたちが登りきったその先に木々は茂っていた。独特な香りも漂い、期待に胸が膨らんだのだった。
依頼結果
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最終発言 2016/01/28 19:24:34 |
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相談卓 メイム(ka2290) エルフ|15才|女性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2016/01/28 20:23:47 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/01/26 23:17:54 |