少年、恐怖の先に夢をみる

マスター:狐野径

シナリオ形態
ショート
難易度
難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/01/30 07:30
完成日
2016/02/04 20:30

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●主の死
 彼らはグラズヘイム王国の一角にいた。
「僕、レチタティーヴォ様と出会ったところに行きたい。でも、どこか分からないんだよね」
 レチタティーヴォはプエル(kz0127)が目を覚ました時に「人間の所にプエルがいた」と「助けてあげた」と言うことだけは教えてくれた。記憶がないプエルの最初の記憶はレチタティーヴォの淡々としているが頼っていいんだという雰囲気だった。
 そして、その場所を尋ねるにも尋ねることはできない。
 レチタティーヴォが人間に討たれた、と報告を受ける。
 駆けつけようとするプエルをエクエスとプエルについてきた歪虚は止める。なだめすかしてどうにか今は落ち着いているようだった。
 プエルは鳥かごの細工のペンダントヘッドを弄んでいた。ふと、何かに気付いたらしく口に入れようとしている。
「駄目です、それは!」
 エクエスはあわてる。
「離せ! だって、レチタティーヴォ様がいなくなっちゃったんだよ! 弱いままじゃ、僕はいけないんだっ! だって、ほかの奴ら、僕が弱いって言うこと聞いてくれないし、レチタティーヴォ様がいたから、仕方がないって! 僕が弱いのがいけないんだ! 新参者だからって散々いじめてくるんだもの、ひどいよ! 皆色々持ってうらやましいのにっ! 個性がないとかすぐに言うんだ! そりゃ、クロフェドとかラトスみたいな力もなかったよ? でも、でも、だから僕は一生懸命レチタティーヴォ様にくっついて行って頑張ったんだよ! 嫉妬しているのは僕なのに、おかしいよ、色々!」
「落ち着いてください、プエル様! あのお方があなたに良い所を見出したからこそ使ってくださったのです。あのお方は、そもそも気に入らなければ側におかなかった。ですから、わたくしはプエル様が憎らしいくらいうらやましいですよ?」
 エクエスは必死になだめる。ここで貯めている最中のマテリアルを使わせるわけにはいかない。何度かハンターには狙われたが、何とか順調に集めていると言うのに。
 エクエスはプエルを羽交い絞めにする。腕力ではプエルに勝てるが、なかなかうまく抑え込めない。
 プエルは口に含み、噛み砕いた。

 カリッ。

 簡単に石は砕ける。
 エクエスは攻撃の矛先が来ることを恐れ、プエルを離す。
 プエルは地面に膝をついて呆然としているだけだった。
 エクエスが何も起こらないかと思っていた次の瞬間、プエルが震える。
「う、うわあああああ、あ、うげっ……」
 プエルはうずくまり吐く。吐くとは言えども何も出てくるものはない。膨張したマテリアルにプエルは恍惚と恐怖が生じていた。
「だから……プエル様……」
「マテリアルがたくさん入ってた……ふふっ……僕……余は……レチタティーヴォ様の代わ……」
 プエルは立ち上がりかかったところで倒れた。
 エクエスの手は剣の柄にかかるが、様々なことを考え剣を抜くのはやめる。
「このまま放置するわけにはいかねぇし……他の奴にくれてやるつもりはない」
 エクエスはクツクツと喉の奥で笑う。
「アイツは無に還った! プエルを最期まで見ようとしていたアイツは! 俺は勝った……ふふ、ははは」
 エクエスの足元には苦悶の表情を浮かべる美しい少年がいる。
「舞台はまだ終わってないんだ、若君? しばらく、楽しんでくれよ、歪虚としての道を」
 エクエスは笑う、楽しくて仕方がない。
「そして、絶望してくれ! 俺はお前のマテリアルを食ってやる! 何のために這いつくばってやってきたのか! 散々アイツの目がこちらに向かないことを考えて行動したのだって!」
 マテリアルの暴走を起こしていたかに見えたプエルを抱き上げるのを躊躇したが、問題なかった。吸収して自分のものにしたのだろうか?
「プエル様、きっと舞台は成功いたしますよ」
 優しい声音でエクエスはプエルにささやいた。
 プエルの揺れた荷物から、レチタティーヴォを模した三頭身の布でできた人形がこぼれる。落下するがちょうどプエルの腕の中に納まった、そこが居場所だと主張するように。

●マテリアルの侵蝕
 町の代官コヨテ・アットは気が気ではないが、実にすばらしい物を手に入れた。
 美しい少年の姿の歪虚。
 連れていた歪虚に見覚えがある気がしたが、気のせいだと片づけた。そもそも歪虚に知り合いなどいない。
 コヨテは預けられた少年の汚れは落とし、新しい服を着せ、寝室に寝かせた。少年が決して離さない人形は気味が悪いが、布や綿、ボタンでできている手づくりの人形のようで恐れる理由はない。
「愛らしい、美しい! 人形であり、生きている」
 奥の客間は人払いをして、誰も来させないようにした。誰かに聞かれて、領主や教会に伝えられたら終わりだ。
 少年の人形は歪虚だから。
 滑らかな肌、陶器の人形のようでいて人間に近い外見をしている歪虚。ひょっとしたら本性は別にあるのかもしれないが、コヨテの屋敷に眠る少年の歪虚は人間の姿でしかない。
「くくく……」
 マテリアルの侵蝕は発生する恐れも考える。
「もちろん、危険な状況になる前に目を覚ましていただければよいのだが……」
 もっと居心地がいいところを見つけてあげればいいのだ。
「できれば、全てを手に入れたい……」
 彼が望む行動をとっている間に、少年が目を覚ました際のリスクは大きい。
「ああ、なんと可愛らしい。一番厄介なのは……クリシスにはばれないようにしないと」
 領主であるウィリアム・クリシスを思うとコヨテはちっと舌打ちをする。拠点とする町から離れたこの町で築き上げてきた物を失うわけにはいかない。

●町の調査
「マテリアルが不安定になっているみたいなんですよ、この町」
 ハンターズソサエティ支部の職員たちは話をする。
 町の生活に何も不自由はないが、ちょっとしたことで感じる不安。
「まさかと思うけれど、コヨテさんが公害起こしているんじゃないのかしら?」
「……そういえば機導研究している人ですよね」
 領主のクリシスは町で魔法生物大発生を経験しており、取締を強化している。原因となる魔法公害を防ぐために。もちろん、研究そのものは禁止されていないため、小さい公害は時々あるが、人的被害が起こる前に片づけるよう努力されている。
「魔法生物と雑魔の発生があるということかしらね……」
 職員たちは溜息をもらす。
「気持ち悪いし、クリシス様に直接話しておく?」
「そうしましょう」
 職員たちは賢明な判断を下した。
 クリシスからは状況の調査と歪虚退治の依頼が来た。

●異変
 町の周りに雑魔が増え、人間を襲う。
 まだ冬とはいえ、植物の勢いが妙にない。
 敏感な幼子は怯え、周囲を見回してばかりいる。
 小さな、小さな不安の塊。
 小さくても町中の不安の塊が集まれば、大きく、大きくなってくる。
 町の中で殺人も起る、以前にはない頻度で。
 人形が動き、人形が笑う――。

リプレイ本文

●絵画
 コントラルト(ka4753)の渡した手紙を見て領主ウィリアムはうなずいた。状況証拠が集まるまで密に調べるつもりであったが、踏み込むことも必要との考えをもっとだととらえた。
「一筆書こう」
 ウィリアムが書いている間、ザレム・アズール(ka0878)は執務室の絵を見ていた。穏やかそうな一家の絵であり、ウィリアムと妻、長男と長女だと推測はできる。
 絵師は美化もしているだろうが、長男には内気そうな雰囲気が漂う。
 ザレムは思うところがあり仲間を見ると、レイオス・アクアウォーカー(ka1990)とミオレスカ(ka3496)と目が合う。
「使うことがなければ一番いいんだがね」
 チマキマル(ka4372)は言うが、現在の状況からは一番代官の所が怪しい。
「人形がいたとか……」
 椿姫・T・ノーチェ(ka1225)は先日の大きな戦いで災厄の十三魔レチタティーヴォ討伐に関わった。ボスがいなくなってもそれに従っていたモノたちがいなくなったわけではない。人形に見えたとしても、人間という可能性も捨てきれず、救えるなら救いたかった。
「皆様の安寧が訪れるよう、精いっぱい働きます」
 夜桜 奏音(ka5754)は祈る仕草をする。巫子として旅をして目にするのは、楽しい事ばかりではない。
「歪虚と言ってもそれ自体が起こしている事か、別の眷属……傲慢の技によって操られているかなど背景は……」
 不明、とコントラルトは淡々と告げる。
「代官の屋敷の見取り図はないか?」
 レイオスが尋ねるとウィリアムは首を横に振る。
「ただ、簡単な見取り図くらいなら」
 ウィリアムは書き記す。
「可愛いお子さんですね」
「ああ、自慢の息子だったが……生きていればどんなに頼もしいか……君みたいに立派になっていれば」
 ミオレスカの問いに寂しそうにウィリアムは言い、レイオスを見た。死んだあとの年月を考えると近い年頃。
 外で待っていたマリィア・バルデス(ka5848)は椿姫と合流する。
「私はあなたの護衛という形にしておくけれど……」
 敵がどこで見ているか分からないとマリィアは考えていた。ハンターズソサエティの支部がある町であるからハンターもいるだろうが、調査していることを少しでも悟られまいと考える。
「……なあ……プエルってここの領主の子じゃないのか?」
 ザレムの言葉にプエルと面識があったレイオスとミオレスカの目が泳いだ。
「目の色は違いますけれどね……」
「それに、ほら、雰囲気が」
 ミオレスカとレイオスは自分の発した言葉の白々しさに溜息を洩らした。
「もし、そうだとしても公言は避けて、倒すだけだけどね」
 ザレムは大きく息を吐いた。
「もし息子が歪虚と化しているなら、領主はどこまで知っているのかしら?」
 コントラルトに誰も答えることはできなかった。

●町の外
 ハンターたちは二人一組で行動し、出来る限り単独行動を避けるという方針を取る。
 情報を集めつつ、レイオスとミオレスカは町の外に出る。兵士や門番らは話した後、ハンターが調べていると知って安堵をもらす。
 やはり魔法公害が発生している可能性がある。
「排水かな」
「目に見えて分からないのは辛いですね」
 レイオスとミオレスカは慎重に周囲を見る。雑魔の発生でわかるが、その前の段階だと判断がしづらい。
「雑魔です」
 隠れている物を見つけミオレスカは素早く攻撃をする。
「多いな」
 銃声により、隠れていたそれらは人間を襲うべく飛び出してきた。レイオスは迎え撃つ。
 移動をしてしばらく様子を見る。
 何体か倒し終えて二人は見て回り、町に戻った。元を正さなければまた雑魔は生じるだろうから、機導がらみで研究をしているという代官には話を聞きたいところだった。

●噂話
 椿姫とマリィアは町の中で起った殺人事件を調査していた。
 魔法公害や雑魔云々を言わず、正直に「殺人事件に関して」と口にすると、不安が溜まる兵は口をあっさり開く。死体の状況に関しての情報は開示された。
「利き手、獲物の種類、人体の壊し方の習熟度が想像できる。どんな状況かしら?」
 マリィアの問いかけに示された資料は拙い、できれば死体を検分したいと思うほどだった。
「刃物に素手でしょうか……」
「ピアノ線かしら?」
 殺し方に一定の法則は見られない。そのために殺したいから殺したという雰囲気が漂う。
 遺体発見現場や時間を地図に書きこむ。
「現地で聞いてみようかしら」
「……人形? 人間の可能性もありますね」
「人形に見えても人間かもしれないし、どちらも油断はできないわ」
「分かっています」
 マリィアと椿姫は後にして、現場を巡った。現場では子どもらしい声は聞いたということは分かってもそれ以上は出てこなかった。

 コントラルトは町に着いてから魔導短伝話を使った。歪虚が使えないという話もあるからだ。
「どうだった?」
 チマキマルの問いかけにコントラルトは溜息をもらす。
「ここのハンターズソサエティの職員が悩むのが分かったわ」
 雑音が聞こえると言えば聞こえるため、不安と思うと不安になってくる。
「そう、人間の気持ちによって左右される……だから難しい、客観的に調べる必要がある」
 チマキマルはすっと目を細めて、町を見る。まさにこちらの気持ち一つで見え方が変わる。
「話し好きそうなおばさん、小さい子ども……話をきいてみましょう」
 具体的な話も聞けた。代官は悪い人ではないが、どこか胡散臭さもある。最近は機嫌がいいとも耳にした。町の人の推測は平和そのものだった。
 実験がうまくいった、機導の道具を作れた、好みの人が現れたなどなど。
 子供たちはしゃべる人形がいるって本当とか、夜になると人形は動くんだよと質問や怖い話をした。明確な情報元は不明だが不安だけは抱いているようだった。

●屋敷
「すみませんね、代官様のおうちに上がらせていただいて」
 かつらとスーツで変装ザレムはにこにこと入る。仕立て屋という触れ込みで、あちこちの家を巡って話を聞き、追い出されたりしつつやってきた。
「あ、こちらは旅の巫女で一緒に来たんですよ。この領内は比較的安全ですが、お嬢さん一人行かせるのも思いまして」
 奏音が横であいさつをする。
「最近このあたりも歪虚も多いと聞きます。私の祈りで少しでも皆様の安らぎに役に立てればと思います」
 使用人たちに緊張が見える、笑顔で当たり障りのないことを言っているが。
「ん? 君は?」
 奥からコヨテが出てきた、ザレムは偽りの身分を告げ、説明を繰り返した。
「ふーむ、仕立てが必要な者はおらぬが……」
 一瞬目がさまよった、何か考えているように。
「あ、ああ、知り合いが頼みたがっていたかもしれないな。何でも、年頃の子の服を作りたいとか」
 事実か否かはコヨテの様子から察するしかない。
「連絡を取っておこう……どこに滞在するのかね?」
 ザレムは宿を告げる。

 カタリ。

 奥の部屋で何か動く音がした。
「おや、お客様ですか? 長居してはいけませんね、ご連絡お待ちしております」
 ザレムは何も気付かなかったふりをして立ち去ろうとする、コヨテは音に驚いた様子だったから。
 見送りに出たメイドは奏音の袖を引いた。
「巫女様……お気を付けください」
「はい、ありがとうございます。あなたに良き導きがありますように」
 奏音は彼女から怯えを感じとり、安堵させようと優しく微笑み祈るしぐさをした。
 人通りの少ない道を選んで帰るが残念ながら何もなかった。無防備な一般人を装ったが、効果がなかったのか、すでに警戒されて逃げられたのか判断はつかなかった。

●情報
 宿に集まったハンターたちは次の行動に移る。
「急いだ方がいいかもしれない」
 ザレムは変装を解いてハンターの格好になる。
「その物音が本当に『何か』がいる証拠にはならないわよ?」
 コントラルトの言葉にザレムも頷く。
「だから、見てくる」
「一人は危険です。時間を区切って、見回りをしてみましょう……?」
 ザレムの言葉にミオレスカはあわてた。
「一度夜の町を見てみることは重要ではないか?」
 チマキマルは選択肢の一つを出す。踏み込むにも状況にもあいまいな点が多い。
「魔法公害が起っていることは確実だし、話を聞くと言う形を取って入り込んで問題ないだろう?」
 レイオスは状況から言う。
「忍び込んで確認を取るにしても、二手に分かれていれば、表に目が向いて陽動になるわね」
 マリィアの言葉でザレムが「助かる」とうなずく。
「人間の子どもなら哀れだ、歪虚なら……」
 椿姫は唇を噛む。
「私はザレムさんと裏から参ります」
 奏音は怯えた様子のメイドが気になっていた。

●裏
 代官の屋敷の裏口に回ったザレムと奏音は突然開いた扉に、茂みに隠れた。
「さ、プエル様」
 青年と共に、幼子のように人形を抱きしめたプエルが現れる。腕の中の人形はレチタティーヴォをモデルとして三頭身にした形に見える。
「……まだ気持ち悪い……ん? ……何かいるよ」
 紫色の目は真っ直ぐザレム達が隠れているところに向いている。
 ザレムの隣で奏音が札を握り締め、どうするのかと目で訴える。
 敵が戦闘準備をしていない上に、仲間はかなり近い所にいるのだ。
「行くよっ」
 ザレムは宣言と共にデルタレイをプエルに向かって放った。
「もちろんです」
 奏音は札にマテリアルを込め、舞うように五色光符陣を張る。
 範囲に入っていたプエルは笑いながら避けてしまう。
「無粋だなぁ、君たち、ここは舞台裏だよ? 君たちには退場を願いたい……ところだけど、どうでもいいや」
 プエルは貴族の子弟のようにお辞儀をすると次の攻撃が来る前に立ち去った。
 ザレムと奏音は裏から入って確認をするか、追いかけるかを瞬時に判断する。

●表
 戸を叩こうとしたハンター一行は裏口から連絡を受ける。
「……あれはっ、逃げるな、こら!」
「逃がしません」
 レイオスとミオレスカは視界の端に動いたそれらを見逃さなかった。同時に射撃武器を使うが建物の陰に相手が入るのが早かった。
 別の二体の人形が行く手を遮った。
 プエルは追撃が来ないと分かっているのか、ひょっこりと建物の陰から顔をのぞかせる。彼の持つ人形も顔を出し、プエルが手を持って振る仕草をしているのは愛らしいが、ハンターにとって微笑ましい状景ではなかった。
「お前達も適当に追いかけておいでよ?」
 プエルは立ち去ったが、少年と少女の人形の歪虚は嬉しそうにハンターと対峙する。
「プエル様は可愛いのが嫌だなぁ、ふふっ」
 茶色の髪の少年の姿をした人形はお辞儀をして、手にナイフを持つ。
「こいつら殺したら、プエル様褒めてくれるかな? あたしはプエル様の人形が欲しい」
 金髪の少女が笑いながら言う。手にはナイフを持つが、しゃべりながら動く手はキラキラした光もうかがせる。
(糸?)
 マリィアは眉をひそめた。
「手にあった人形は『れちたん』に似ているようにも……」
「そうそう、どうせならプエル様人形の方がいいのに」
 ミオレスカの問いかけに人形たちは笑い声をそろえる「レチタティーヴォの形だよ?」と。
 討ったはずの歪虚の名。
「これもレチタティーヴォの演出ってことですか?」
 椿姫は戦う準備を整え、問う。何のたくらみがあるのか、情報は欲しい。
「違うよぉ、あの糞騎士がやったことだよ!」
「プエル様がいなかったらあんな奴いらないよ!」
 笑いながら歪虚は先手を取る。
 少女の人形から放たれたナイフをレイオスは回避した。
「ふふ、僕の歌を聞いてよぉお!」
 少年の人形は間合いを詰めた所で甲高い声を上げる。
 近くにいたレイオス、ミオレスカ、椿姫が頭を抑える。
「阻止します」
「邪魔だ」
 一歩下がりミオレスカは少女の人形を狙い、レイオスは少年の人形を狙う。
「計画の口を割ってもらいたいんですが」
「代官を早く抑えた方がいいかもしれない」
 椿姫の攻撃は少年の人形を狙い、コントラルトもデルタレイで同じく狙う。
「同感だけど、これをやらないと無差別殺人は増えるかもしれない」
「人形狩りは必要だ……『マテリアル解放』」
 マリィアとチマキマルの攻撃が少年の人形に加えられた。
「ちょ、なんだよぉ! ぼく、もっと歌いたかったのにぃ」
 少年の人形の歪虚は耐えきれず砕け、塵と化した。
「あははははっ! 情けないっ! えっとぉ、セリフ言うなら『お兄様ぁ、そんなので騎士団長様みたいになるなんて、おっかしい』だっけ?」
 少女の人形はけたたましく笑った。
 ハンターたちはすぐに少女の人形を狙う。
「プエル様にご報告しないといけないから、逃げるもん!」
 少女の人形の歪虚はあわててドレスを翻して走り出す。
「タイミングはいいみたいだね」
「逃がしませんよ」
 裏口から表に回ってきたザレムと奏音が鉢合わせた。
 人形は逃げ切れず、撃破される。
「代官っ」
 コントラルトとチマキマルが屋敷に踏み込む。マリィアと椿姫も続く。
 これだけの物音がして誰も出てこないのもおかしい。
 レイオスとミオレスカ、ザレムと奏音は簡単に情報交換をし、周囲をうかがった。

●無言
 物言わぬ存在となったコヨテは驚愕の表情を浮かべ倒れている、地下の実験場を解放したままで。
「何も分からないのね、結局」
 コントラルトは眉をひそめる。書き残している物があれば別だが。
 死体の状況を見て、マリィアはナイフでの一突きだと知る。
「脅されてかもしれないし、自ら進んでかもしれない」
「凶器は残っていないですね」
 椿姫の問いにマリィアは首を横に振った。持って逃げた、もしくは、人形たちが使っていたのか。
「奥を見よう」
 言うと同時にチマキマルは実験室に足を踏み入れる。
 物音を聞きつけたやってきた使用人への説明はマリィアと椿姫がすることとなる。
 その間、コントラルトとチマキマルが実験室の検分をしていた。
「綺麗に片付きすぎ……さっき片づけたという雰囲気よね」
 コントラルトは生臭い空気と何かがいたかあったかする檻と湿った床。
「機導だけではなさそうだな、興味があったのは」
 チマキマルは歪虚に関しての資料を見つつ告げる。どう興味があったのか不明だが、内容は嫉妬や暴食など特定の眷属に偏っているように見えた。
 後から入ってきた四人と合流し、情報交換する。
「つまり後片付けをしていった奴らがいるわけだよね」
 ザレムは裏口から出て行ったプエルたちを想像した。
 プエルたちがいたとされる客間にハンターは入った。
「何をしていたんだ、あいつら」
 レイオスが枕をひっくり返した所で何か出てくることもない。
「宿泊しただけみたいですよね……」
 ミオレスカは困惑して部屋を見て回った。
「……レチタティーヴォの影は消えない?」
 椿姫は唇を噛む。
「いいえ、消えます。歪虚を止めさえすれば」
 奏音はきっぱりと言った。

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重体一覧

参加者一覧

  • 幻獣王親衛隊
    ザレム・アズール(ka0878
    人間(紅)|19才|男性|機導師

  • 椿姫・T・ノーチェ(ka1225
    人間(蒼)|30才|女性|疾影士
  • 王国騎士団“黒の騎士”
    レイオス・アクアウォーカー(ka1990
    人間(蒼)|20才|男性|闘狩人
  • 師岬の未来をつなぐ
    ミオレスカ(ka3496
    エルフ|18才|女性|猟撃士
  • 迷いの先の決意
    チマキマル(ka4372
    人間(紅)|35才|男性|魔術師
  • 最強守護者の妹
    コントラルト(ka4753
    人間(紅)|21才|女性|機導師
  • 想いと記憶を護りし旅巫女
    夜桜 奏音(ka5754
    エルフ|19才|女性|符術師
  • ベゴニアを君に
    マリィア・バルデス(ka5848
    人間(蒼)|24才|女性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 調査方針について
ミオレスカ(ka3496
エルフ|18才|女性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2016/01/30 00:12:46
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/01/28 15:56:59