ゲスト
(ka0000)
咲いて待ち伏せていたもの
マスター:君矢

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/02/04 12:00
- 完成日
- 2016/02/16 20:13
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
辺境の山の中。斜面の途中の木の根元。緑髪の少女が二人座っていた。
少女たちの緑髪から多数の白く細長い花が髪飾りのように咲いていてその周辺を甘い芳香に誘われた無数の蜂が蜜を求めて飛んでいた。
彼女たちは眼前を飛ぶ蜂に何の反応も見せず、無表情な顔でぼんやりと遠くを見つめている。
少女たちは白いワンピースという薄着で、とても冬の山中を歩く服装に見えない。
ビュウゥと冷たい風がワンピースの裾をはためかせる。ワンピースの下には綺麗な形の足と白い動物の骨らしい物が散乱しているのが見えた。
そして少女たちの風に揺れもしない緑色の髪は、長く伸びていて終わりが見えない。長く伸びた髪は先にいくにしたがって寄り集まり太い蔓のように変化していく。
その蔓は、木の枝に絡まったり斜面を越えていったりと思い思いの方向に伸びていた。どの蔓も豊かに葉をつけて、多数の白い花を満開にして甘い芳香を漂わせているのだった。
辺境の山の中。シェノグ族の村へ続く道を三人組の男性が歩いていた。旅装束姿の彼らは足元の悪い山道を一歩、一歩確かめるように登っていく。
「今年は雪が積もっていなくていいねぇ」
「このまま降らないっていうのも薬草に影響がありそうだけどなぁ」
「族長と相談してみないといけないな」
先頭から順にアーノルド、ジェレミー、ボリスという名前でシェノグ族と薬草の取引をしている商人達だ。
今日は、来春からの取引について打ち合わせをするべく村を訪ねようとしていた。
平年であれば雪が降り道も凍って危ない道だが今年は暖かいため移動しやすい。
その反面暖かい気候が薬草の質や量、収穫時期にどのような影響を与えるだろうかということが商人達には気になるところだった。
村まであと一息という場所まで登って来たとき、先頭を歩いているアーノルドが足を止めた。なんだか甘い芳香がしたので周りを見渡す。
「おい、こんな花見たことあったか?」
山道の脇の木から白い花が咲いた蔓が垂れ下がっていた。白い花から甘い芳香が漂ってくる。
「いやぁ、知らないな」
瑞々しい緑色をした葉と白く細長い蘭のような花がいくつも穂状に咲いている蔓だった。
三人はシェノグ族と長く取引をしているため何度もこの道を歩いているが、初めて見る花だった。
「暖かいからなぁ。狂い咲きじゃないのか」
平年より暖かいとはいえ、今は冬。山の木も草も枯れて地面を茶色に染めている。所々に見える常緑樹もくすんだような色をして見えるなかで、この蔓だけは生命力豊かな緑色をしていた。花も鮮やかに力強く咲いている。
少し休憩だと冬には珍しい花を楽しみながら、三人は雑談をしている。
「珍しい花だな。売れるかな」
植物好きの好事家を何人か思い浮かべながらアーノルドは手を伸ばして、垂れ下がっている花を触った。
「族長に聞いてみようか」
「それにしても甘い香りだな」
嗅いでみると濃厚な甘い香りに頭がくらくらしてくるが、不思議と白い花から目が離せなかった。
と、蔓は風がないのに大きく揺れた。
ひゅるんとしなると、花をつついていた腕に巻きついてアーノルドを吊り上げる。
「う、わぁぁ」
アーノルドがもがきながら悲鳴を上げる。
「お、おい!」
「今、助けるからな」
アーノルドの体はぶらぁんと空中で揺れている。二人が手を伸ばして足をつかんで引っ張ろうとした。
「いでぇぇよ! うでが」
片腕で宙づりにされているアーノルドは苦痛に顔を歪めている。
「がまんしろ!」
蔓は強靱で、三人の体重が掛かっているのにビクともしない。
「アーノルドさん!? 大変! 手伝います!」
三人の背後から声をかけてきたのはシェノグ族の少女達だった。偶然、近くにいたところアーノルドの悲鳴を聞いて駆けつけてきたのだった。
「何なんだよ! こいつは!」
ジェレミーがアーノルドの足をつかみながら、シェノグ族に尋ねる。
「わ、分かりません。見たことありません……」
答えたのは、シェノグ族のツアンプ・シェノグ(kz0170)だった。
花はどことなく蘭に似ているような気がするが、花の咲き方も形も香りも知らない植物だった。
「こんな蔓、歪虚だよ! ツアンプ! ハンター呼んできて! 私達だけじゃ無理だよ」
ジェレミー達に加勢しつつ叫んだのは、シェノグ族のリアンだった。
「は、はい! すぐに呼んできます!」
とツアンプは叫びながら麓を目指して駆けだした。
「いでぇよ! 助げでぐれ!」
蔓は、アーノルドを攫いたいのか吊り上げる力を強くする。
残った商人達とリアンはとにかくアーノルドを助けようとした。
「おじさん達、掴んでいてね」
リアンが鉈を持って近くの木に登ると蔓を切断しようと試みた。
一回、二回と鉈を叩きつける。
木に掴まっているという体勢に無理があるのか、蔓が堅いのかビクともしない。
「いっでぇよぉぉ」
「頑張れ!」
ジェレミーとボリスもアーノルドを励ましながら、連れて行かれないようにしがみつく。
「え、あ、きゃ、なに!?」
リアンが悲鳴を上げる。彼女の体にも白い花の咲いた蔓が絡まった。アーノルドを吊るす蔓とは別の蔓だ。
蔓によってリアンが木から引きはがされると、木から落下し地面に叩きつけられた。
「ぎゃぁ」
「うわわわ」
アーノルドをからめ取っていた蔓も大きくしなるとしがみついていた二人を巻き込んで落下する。
落下の衝撃で身動きが取れないジェレミーとボリスの目の前で、蔓はズッ、ズッ、ズッとアーノルドとリアンを奥へと引きずって行く。
「ジェレミー! ボリス! 助けてくれ!」
アーノルドの悲鳴が遠ざかっていく。
慣れた山道を全力でツアンプは駆け下りる。急がなきゃ! と焦っていたため、麓の街道に出たところで顔から転んでしまった。
鼻を擦りむいてしまったようだが気にしていられない。早く! 早く! と立ち上がりもう一度走る。
走りながら誰か助けてくださいと祈っていた時、街道の向こうに偶然、ハンター達が歩いているのが見えた。
ツアンプは、走り寄って声をかける。
「お願いします! 助けてください!」
少女たちの緑髪から多数の白く細長い花が髪飾りのように咲いていてその周辺を甘い芳香に誘われた無数の蜂が蜜を求めて飛んでいた。
彼女たちは眼前を飛ぶ蜂に何の反応も見せず、無表情な顔でぼんやりと遠くを見つめている。
少女たちは白いワンピースという薄着で、とても冬の山中を歩く服装に見えない。
ビュウゥと冷たい風がワンピースの裾をはためかせる。ワンピースの下には綺麗な形の足と白い動物の骨らしい物が散乱しているのが見えた。
そして少女たちの風に揺れもしない緑色の髪は、長く伸びていて終わりが見えない。長く伸びた髪は先にいくにしたがって寄り集まり太い蔓のように変化していく。
その蔓は、木の枝に絡まったり斜面を越えていったりと思い思いの方向に伸びていた。どの蔓も豊かに葉をつけて、多数の白い花を満開にして甘い芳香を漂わせているのだった。
辺境の山の中。シェノグ族の村へ続く道を三人組の男性が歩いていた。旅装束姿の彼らは足元の悪い山道を一歩、一歩確かめるように登っていく。
「今年は雪が積もっていなくていいねぇ」
「このまま降らないっていうのも薬草に影響がありそうだけどなぁ」
「族長と相談してみないといけないな」
先頭から順にアーノルド、ジェレミー、ボリスという名前でシェノグ族と薬草の取引をしている商人達だ。
今日は、来春からの取引について打ち合わせをするべく村を訪ねようとしていた。
平年であれば雪が降り道も凍って危ない道だが今年は暖かいため移動しやすい。
その反面暖かい気候が薬草の質や量、収穫時期にどのような影響を与えるだろうかということが商人達には気になるところだった。
村まであと一息という場所まで登って来たとき、先頭を歩いているアーノルドが足を止めた。なんだか甘い芳香がしたので周りを見渡す。
「おい、こんな花見たことあったか?」
山道の脇の木から白い花が咲いた蔓が垂れ下がっていた。白い花から甘い芳香が漂ってくる。
「いやぁ、知らないな」
瑞々しい緑色をした葉と白く細長い蘭のような花がいくつも穂状に咲いている蔓だった。
三人はシェノグ族と長く取引をしているため何度もこの道を歩いているが、初めて見る花だった。
「暖かいからなぁ。狂い咲きじゃないのか」
平年より暖かいとはいえ、今は冬。山の木も草も枯れて地面を茶色に染めている。所々に見える常緑樹もくすんだような色をして見えるなかで、この蔓だけは生命力豊かな緑色をしていた。花も鮮やかに力強く咲いている。
少し休憩だと冬には珍しい花を楽しみながら、三人は雑談をしている。
「珍しい花だな。売れるかな」
植物好きの好事家を何人か思い浮かべながらアーノルドは手を伸ばして、垂れ下がっている花を触った。
「族長に聞いてみようか」
「それにしても甘い香りだな」
嗅いでみると濃厚な甘い香りに頭がくらくらしてくるが、不思議と白い花から目が離せなかった。
と、蔓は風がないのに大きく揺れた。
ひゅるんとしなると、花をつついていた腕に巻きついてアーノルドを吊り上げる。
「う、わぁぁ」
アーノルドがもがきながら悲鳴を上げる。
「お、おい!」
「今、助けるからな」
アーノルドの体はぶらぁんと空中で揺れている。二人が手を伸ばして足をつかんで引っ張ろうとした。
「いでぇぇよ! うでが」
片腕で宙づりにされているアーノルドは苦痛に顔を歪めている。
「がまんしろ!」
蔓は強靱で、三人の体重が掛かっているのにビクともしない。
「アーノルドさん!? 大変! 手伝います!」
三人の背後から声をかけてきたのはシェノグ族の少女達だった。偶然、近くにいたところアーノルドの悲鳴を聞いて駆けつけてきたのだった。
「何なんだよ! こいつは!」
ジェレミーがアーノルドの足をつかみながら、シェノグ族に尋ねる。
「わ、分かりません。見たことありません……」
答えたのは、シェノグ族のツアンプ・シェノグ(kz0170)だった。
花はどことなく蘭に似ているような気がするが、花の咲き方も形も香りも知らない植物だった。
「こんな蔓、歪虚だよ! ツアンプ! ハンター呼んできて! 私達だけじゃ無理だよ」
ジェレミー達に加勢しつつ叫んだのは、シェノグ族のリアンだった。
「は、はい! すぐに呼んできます!」
とツアンプは叫びながら麓を目指して駆けだした。
「いでぇよ! 助げでぐれ!」
蔓は、アーノルドを攫いたいのか吊り上げる力を強くする。
残った商人達とリアンはとにかくアーノルドを助けようとした。
「おじさん達、掴んでいてね」
リアンが鉈を持って近くの木に登ると蔓を切断しようと試みた。
一回、二回と鉈を叩きつける。
木に掴まっているという体勢に無理があるのか、蔓が堅いのかビクともしない。
「いっでぇよぉぉ」
「頑張れ!」
ジェレミーとボリスもアーノルドを励ましながら、連れて行かれないようにしがみつく。
「え、あ、きゃ、なに!?」
リアンが悲鳴を上げる。彼女の体にも白い花の咲いた蔓が絡まった。アーノルドを吊るす蔓とは別の蔓だ。
蔓によってリアンが木から引きはがされると、木から落下し地面に叩きつけられた。
「ぎゃぁ」
「うわわわ」
アーノルドをからめ取っていた蔓も大きくしなるとしがみついていた二人を巻き込んで落下する。
落下の衝撃で身動きが取れないジェレミーとボリスの目の前で、蔓はズッ、ズッ、ズッとアーノルドとリアンを奥へと引きずって行く。
「ジェレミー! ボリス! 助けてくれ!」
アーノルドの悲鳴が遠ざかっていく。
慣れた山道を全力でツアンプは駆け下りる。急がなきゃ! と焦っていたため、麓の街道に出たところで顔から転んでしまった。
鼻を擦りむいてしまったようだが気にしていられない。早く! 早く! と立ち上がりもう一度走る。
走りながら誰か助けてくださいと祈っていた時、街道の向こうに偶然、ハンター達が歩いているのが見えた。
ツアンプは、走り寄って声をかける。
「お願いします! 助けてください!」
リプレイ本文
冬、草も葉も枯れ落ちて木々が茶色い肌を晒している山を見ながら、街道を歩いていた六人のハンターの前に必死に走っている少女が現れた。
「お願いします。助けてください」
ツアンプ・シェノグ(kz0170)と名乗った少女は必死の表情で助けを求め事情を説明する。
「ここで皆さんと出会えたのも何かの縁に違いありません。お願いします」
「なるほど、これは急ぐ必要がありそうですね。手遅れにならないうちに急ぎましょう」
少々露出の高い服装のシスター、アデリシア=R=エルミナゥ(ka0746)が言った。
「事情は分かったよ」
時音 ざくろ(ka1250)は不安を堪えながら六人の反応を見守っているツアンプに視線を合わせて一つ頷いた。大丈夫だよと言い添えてツアンプを安心させる。
「私も駆け出し魔術師ですが、最善を尽くすつもりです」
疲労からふらついているツアンプを支えながら、十野間 忍(ka6018)も頑張りましょうねと声をかける。
「よろしくお願いします」
というツアンプもだいぶ平静を取り戻してきたようだ。
「少しいいかしら、ツアンプさん」
とアルラウネ(ka4841)が声をかける。
「ツアンプさん、最初に襲われたところまで案内をお願いしたいのですが……」
ソナ(ka1352)が言った。
「危険だが、襲われた場所まで案内してもらえるか?」
ヴァイス(ka0364)は言った。
「もちろんです」
とツアンプは快諾したのを聞いてざくろは仲間たちに順番に視線を送る。
「アルラ、アデリシア、みんな急いで助けに行こう!」
「おぉい、ツアンプちゃん」
「ハンター連れてきてくれたのか」
山道をツアンプの指示で登っていくと男性が二人、道の脇に疲れ切った表情で座り込んでいた。
「緊急事態とはいえ、突然すまなかった」
疲労から送れていたツアンプを横抱きに抱えていたヴァイスが丁寧におろしながら謝罪する。その顔は心なしか赤かった。
「い、いえ。ありがとうございました」
ツアンプも赤い顔で礼を口にするが、口の中でごにょごにょと喋っていて上手く言葉になっていなかった。
「あそこが現場かな? そのわりには静かだね」
アルラウネが言った。
「吊るされている方がいる様には見えませんね」
ソナが周囲を見回す。森は静かで異変が起きているふうはない。
「嫌な予感がしますね」
アデリシアが言った。
ツアンプは、男性たちに歩み寄って状況を確認していた。
「何か動きがあったようですね」
と忍が言う。
ツアンプが話していた状況と現場に差があることから、現状に何かしらの変化が起きたらしいと考えたハンターたちは、残っていた男性たちに詳しく話を聞くことにする。
「何があったのか詳しく教えてもらえないか」
ヴァイスが怯えさせないように慎重に話を聞いた。
商人たちにツアンプが助けを求めて走って行ったあとのことを聞くと蔓によってアーノルドとリアンが引きずられて行ってしまったらしい。
「オレたちも吊り上げられて落っことされてさ、動けなかったんだ」
「追いかけられなくて……。畜生……」
二人は、その時の状況を思い出し消沈した面持ちで言う。
「お二人が無事でよかった」
「そうそう、あとのことは私たちに任せてね」
と忍とアルラウネが慰める。
「人の命が掛かっている状況じゃ、猶予もありません。急ぎましょう」
と忍が歪虚がいるだろう方へ向いて言う。
「ツアンプ、大丈夫だとは思うが万が一の場合もある。連れ去られた二人は必ず助ける、だからこの二人を連れて安全な場所まで避難してくれないか」
とヴァイスが言った。
「安心して、2人は絶対助け出してくるから」
ざくろがアーノルドとリアンの二人が連れ去られたと知って動揺しているツアンプに力強く言って安心させた。
「アーノルドさんとリアンのこと、よろしくお願いします」
みんなの言葉を受けてツアンプは三人で街道まで避難することを約束した。
「追跡開始だね」
アルラウネが森に出来た痕跡を見ながら言った。
二人が引きずられた跡は筋状に落ち葉が乱されているので迷うことはなさそうだった。
「商人の通い路であれば、雑魔は殲滅して安全な空間にしておきたいですね」
ソナは引きずられた跡を追跡しながら言う。
「植物系の雑魔の可能性が高いですね」
忍は、ツアンプたちから聞いた情報から敵の正体について考える。
「そうだね。花粉とか危険かもしれないね」
引きずった跡を確認しながら進むざくろは念のために布を巻いてマスク替わりにすることにした。
「植物なら寒さや炎に弱いでしょうか」
と考えながら忍は戦闘準備を行い敵との遭遇に備える。
「花の香でしょうか、なんだか甘い匂いがしますね」
ソナは布で鼻と口を覆う。
「筋は真っ直ぐ進んでいるな」
ヴァイスが足元を確認しながら進む。筋は時折蛇行しながらもおおむね真っ直ぐに進んでいる様だった。
ソナは耳を澄ませて周囲の音に気を配る。
と、進んでいる奥の方から人の声らしき音が聞えた。
「アーノルドさーん、リアンさーん」
ソナが呼びかける。
「……! ………!」
「聞こえましたか。 生きていらっしゃいますね! よかった」
何と言っているのかは聞き取れなかったが、確かに返事がソナの耳に届いた。
「助けてくれぇ!」
と叫んでいる男性、アーノルドがハンターたちの視界に入って来た。その奥にはシェノグ族の少女、リアンがぐったりと横たわり引きずられていく。
「あれ? 女の子?」
ざくろは呟いた。
そのさらに奥に、白い花と蔓と蜂の群れに囲まれて髪の長い女の子が二人、周囲の騒然とした雰囲気などまるで気にした風もなく座っていた。
「あれ、本物の『アルラウネ』かしら?」
アルラウネが女の子たちを見て感想をもらす。その姿は蕾に一瞬つつまれ、美しい薔薇が開花する。緑がかった色香漂うアルラウネがいた。
「私の事、間違えて攻撃しないでよ?」
女の子たちと似た雰囲気に、アルラウネは仲間に注意を促す。
「あっちは服着てるから、ちゃんと見分けつくもん! ……!」
と言ったところで、ざくろは自分の発言の際どさに気がついて顔を真っ赤にしていた。
「酷いわ……。こんな格好にさせたのはざくろんなのに」
アルラウネはざくろの発言を聞いて口をとがらせる。
ブブブブ……、と羽音を立てて蜂の群れが威嚇を始めた。女の子の周辺を好き勝手に飛び回っていた蜂たちも近づいてきた六人に気が付いたらしい。それ以上近づいたら刺すという意思表示かこちらに向かって針を向けている。
一触即発の現状で奥で座っている女の子たちは相変わらず反応らしい反応を見せていない、ただ髪の毛から続く蔓が微かに動き始めていた。
「くそ、助けてくれ」
アーノルドは今も抵抗を諦めずに、動かせる手で近くの木を掴もうともがいている。ここまで引きずられる間にも抵抗していたのだろう、服は破けて顔や手からは血がにじんでいる。今もズズッ、ズズッ、と引きずられていった。
「おう、今助けるからな」
ヴァイスは、二人の姿を確認すると救出のため直ぐに近寄っていく。
ソナは、アルラウネ、忍とレジストを順番に使用して抵抗力を強化する。
「餌にする気だろうが……させぬ」
状況を確認していたアデリシアは二人を解放するためにワイヤーウィップを振るう。白銀は煌めきながら翻り蔓を切りつけていく。
「あと少し、頑張ってくださいね」
ソナが仕込杖を抜いて蔓を斬っていく。蜂が襲ってくるのを盾を振って追い払っていく。
「アルラ、アデリシア、援護お願い」
蜂の群れや蔓の動きに注意しつつざくろはジェットブーツで大きくジャンプしてリアンへと急接近する。
森の中は蔓ヤ蜂以外にも木の枝でよく見通しが聞かない部分があった。アデリシアは、蜂や蔓だけでなく周辺に生えている邪魔な枝や葉を落として視界を確保していく。
行動を開始した六人を止めるためか、蜂の群れが動く。
一匹一匹はたいしたことはないが、数が多く集団で向かってくるので、とても鬱陶しかった。
「蜂を薙ぎ払ってくれ、頼む」
抜いた刀で蜂を払いのけながらヴァイスが言った。
「任せてよね」
アルラウネは、自ら名前をつけた夜刀流・円の型【長夜】という流れるような体さばきで蜂の攻撃を回避しつつ、剣を何度も振るって広範囲の蜂を切り払っていく。
アデリシアはマイヤワンドに持ち替えるとセイクリッドフラッシュを唱えると放たれた光の波動に当たって蜂たちが落ちていく。
「邪魔しないでほしいな」
ざくろはリアンの側まで来ていたが、蜂の群れに邪魔をされて思うような救出が出来ないでいので、デルタレイで蜂を撃ち落としていく。
蜂の群れは薙ぎ払われれば方々に散ってまた集合してと六人をしつこく襲うが、地道な攻撃にその規模を小さくしていった。
蜂の群れに阻まれている間にも、蔓はアーノルドとリアンの二人を女の子たちの元へと引きずっていた。
アデリシアは、味方から一歩距離をとり周囲を観察し、忍やソナに絡みつこうとする蔓を見つけては優先的に排除する。
「これで動けないでしょう!」
忍は、二人の救出を支援するためにざくろに近い女の子に向かってアイスボルトを放った。
女の子は動く気がないのか避ける様子もなく氷の矢が命中する。女の子たちは攻撃を受けて初めて敵だと認識したのだろうか、六人をはっきりと見た。その顔は無表情で何を考えているのか分からないが、蔓は動きを止めた。
「この隙に救出を」
と忍が叫んだ。
アデリシアが拘束している蔓を切断しようとした時だ。六人の周囲に咲いている白い花から花粉が撒き散らされる。
「くっ、これは……」
忍が口元を抑えて香りを吸い込まないようにする。
花粉が飛び散り、甘い香りがさらに濃くなった。ここまで濃くなると甘さも暴力に思える。
植物の花粉を警戒していたヴァイスは咄嗟に息を止めて一度距離をとる。微かに吸いこんた濃く甘い香りは白い花をやけに可愛らしく思わせた。
「気を付けろ! 吸い込むと魅了されるぞ」
ヴァイスは仲間たちに警告する。
「目に見えぬ異常は確かに脅威だが……対抗策自体が有ればさして恐れるに足らぬ」
アデリシアも香りを吸い込んでしまったが抵抗した。
「きゃっ」
アルラウネは花粉を被ってしまったのだろうか、ボーっと白い花を見つめてしまっていた。
「大丈夫か!」
アデリシアは、ボーっとしてしまっているアルラウネの様子を確認してサルヴェイションを使用し正気を取り戻す。
ざくろも甘い香りに魅了されそうになったが、大切な二人を思って抵抗する。
「ざくろ、愛しい人間に会ってるもん」
ひゅるんと音を立てて蔓が鞭のように振るわれて六人を襲うが、いずれも互いを援護しあう行動に阻まれて届かない。
忍が再び、女の子を狙ってアイスボルトを放つが氷の矢は、今度は蔓によって阻まれたが女の子を庇った蔓は冷気によって凍り付いてしまった。
ヴァイスは疾風のように走り、その勢いで二刀を振るって救出を邪魔する蔓を薙ぎ払っていく。
「お姉さんの方が魅力的じゃない?」
アルラウネは、蔓を切り落としながら敵の注意を引きつけるように行動し救出する仲間の行動を助けていく。
仲間の援護をもらいながら、アデリシアとざくろは二人を拘束している蔓を切断して救出する。
ざくろはぐったりとしているリアンを落とさないようにしっかりと抱きしめてジェットブーツでジャンプして素早く蔓から距離をとる。
「大丈夫か、しっかりしろ」
アデリシアはしつこい蔓からアーノルド守りながら担いで急ぎ移動する。アーノルドは香りを吸い込んでしまったのか反応が鈍かった。
「そうはいくか!」
餌を取り戻したいのだろう二人を狙って動く蔓をヴァイスは、二刀流で持って阻止して安全圏に移動するまで気を配る。
ひとまず安全だろう場所まで移動し、ソナが二人に応急手当とヒーリングスフィアを使用して二人の傷を癒す。柔らかい光が傷を癒していく。
「うっ……」
「もう大丈夫だよ」
意識を取り戻したリアンに向かってざくろがにっこりと笑顔を向けて落ち着かせていた。
「アーノルドさんも大丈夫ですか」
アデリシアがアーノルドに話しかけて意識を確認する。
甘い香りでぼーっとしていたアーノルドにソナがキュアをかける。光に包まれると表情が戻ってきていた。
「安全な場所まで移動しましょう。歩けますか?」
ソナがリアンに確認する。
「だ、大丈夫です」
リアンはそう言うがフラフラしてしまっていて足取りは覚束ない様子だ。
ソナとアデリシアが一人ずつ支えて離れることにする。
来た道を戻ると、元の場所から少し離れた見通しのいい場所でツアンプが心配そうに待っていた。ツアンプに二人を任せるとソナとアデリシアは雑魔と戦っている仲間の元へ戻っていく。
「植物の歪虚のようですから炎が効きそうですね」
忍が、女の子の歪虚と対峙する仲間へ順番にファイアエンチャンとを付与していく。
「これで、気にして戦う必要もないな」
ヴァイスが離脱していく二人を確認して刀を構える。疾走し女の子の歪虚に肉薄すると二刀を振るう。蔓が本体を庇うがそんなことは関係ないとばかりに断ち切っていった。
「アルラ、守るから」
ざくろは二人が安全圏に下がったことを見ると防御の薄いアルラウネの盾となってツルの攻撃から守り、反撃していく。
「せーのっ!」
とざくろに守られながらアルラウネは掛け声と共に呼吸とマテリアルを集中して強力な一撃を女の子の本体へと叩き込んだ。
「魅了で誤魔化してるけど、色香が足りないわね」
と女の子に告げながら刃で切り裂く。
「やはり炎が弱点ですね」
忍はファイアアローを唱える。炎は矢になって女の子に突き刺さる。歪虚は避けようと体を動かすが自身の髪の毛につながる蔓が動きを妨げるので上手く避けることが出来なかった。
「させるか!」
ヴァイスは、忍を狙う蔓を切り落として安全を確保する。
戻って来たソナがまだ動く蔓を刃で切り落として歪虚までの道を作る。
「本体は…やはり蔓の根本か」
アデリシアは足元に注意しつつ歪虚へワイヤーウィップを振るって引き倒す。倒れた足元には無数の骨が散乱していた。
「これで終わりです!」
起き上がろうとしている女の子に忍のファイアアローが突き刺さり、もがいていた体の動きが止まった。
「打ちもらしがいたら大変ですね」
アデリシアは、蔓が完全に止まっていること蜂の打ちもらしがないことを確認して回った。
「戻って状況確認をしてツアンプさんも手当てをしてと」
ソナはこの後の行動を考える。薬草に興味があるので、ゆっくり見せてもらえる時間があれば嬉しいと思った。
「お願いします。助けてください」
ツアンプ・シェノグ(kz0170)と名乗った少女は必死の表情で助けを求め事情を説明する。
「ここで皆さんと出会えたのも何かの縁に違いありません。お願いします」
「なるほど、これは急ぐ必要がありそうですね。手遅れにならないうちに急ぎましょう」
少々露出の高い服装のシスター、アデリシア=R=エルミナゥ(ka0746)が言った。
「事情は分かったよ」
時音 ざくろ(ka1250)は不安を堪えながら六人の反応を見守っているツアンプに視線を合わせて一つ頷いた。大丈夫だよと言い添えてツアンプを安心させる。
「私も駆け出し魔術師ですが、最善を尽くすつもりです」
疲労からふらついているツアンプを支えながら、十野間 忍(ka6018)も頑張りましょうねと声をかける。
「よろしくお願いします」
というツアンプもだいぶ平静を取り戻してきたようだ。
「少しいいかしら、ツアンプさん」
とアルラウネ(ka4841)が声をかける。
「ツアンプさん、最初に襲われたところまで案内をお願いしたいのですが……」
ソナ(ka1352)が言った。
「危険だが、襲われた場所まで案内してもらえるか?」
ヴァイス(ka0364)は言った。
「もちろんです」
とツアンプは快諾したのを聞いてざくろは仲間たちに順番に視線を送る。
「アルラ、アデリシア、みんな急いで助けに行こう!」
「おぉい、ツアンプちゃん」
「ハンター連れてきてくれたのか」
山道をツアンプの指示で登っていくと男性が二人、道の脇に疲れ切った表情で座り込んでいた。
「緊急事態とはいえ、突然すまなかった」
疲労から送れていたツアンプを横抱きに抱えていたヴァイスが丁寧におろしながら謝罪する。その顔は心なしか赤かった。
「い、いえ。ありがとうございました」
ツアンプも赤い顔で礼を口にするが、口の中でごにょごにょと喋っていて上手く言葉になっていなかった。
「あそこが現場かな? そのわりには静かだね」
アルラウネが言った。
「吊るされている方がいる様には見えませんね」
ソナが周囲を見回す。森は静かで異変が起きているふうはない。
「嫌な予感がしますね」
アデリシアが言った。
ツアンプは、男性たちに歩み寄って状況を確認していた。
「何か動きがあったようですね」
と忍が言う。
ツアンプが話していた状況と現場に差があることから、現状に何かしらの変化が起きたらしいと考えたハンターたちは、残っていた男性たちに詳しく話を聞くことにする。
「何があったのか詳しく教えてもらえないか」
ヴァイスが怯えさせないように慎重に話を聞いた。
商人たちにツアンプが助けを求めて走って行ったあとのことを聞くと蔓によってアーノルドとリアンが引きずられて行ってしまったらしい。
「オレたちも吊り上げられて落っことされてさ、動けなかったんだ」
「追いかけられなくて……。畜生……」
二人は、その時の状況を思い出し消沈した面持ちで言う。
「お二人が無事でよかった」
「そうそう、あとのことは私たちに任せてね」
と忍とアルラウネが慰める。
「人の命が掛かっている状況じゃ、猶予もありません。急ぎましょう」
と忍が歪虚がいるだろう方へ向いて言う。
「ツアンプ、大丈夫だとは思うが万が一の場合もある。連れ去られた二人は必ず助ける、だからこの二人を連れて安全な場所まで避難してくれないか」
とヴァイスが言った。
「安心して、2人は絶対助け出してくるから」
ざくろがアーノルドとリアンの二人が連れ去られたと知って動揺しているツアンプに力強く言って安心させた。
「アーノルドさんとリアンのこと、よろしくお願いします」
みんなの言葉を受けてツアンプは三人で街道まで避難することを約束した。
「追跡開始だね」
アルラウネが森に出来た痕跡を見ながら言った。
二人が引きずられた跡は筋状に落ち葉が乱されているので迷うことはなさそうだった。
「商人の通い路であれば、雑魔は殲滅して安全な空間にしておきたいですね」
ソナは引きずられた跡を追跡しながら言う。
「植物系の雑魔の可能性が高いですね」
忍は、ツアンプたちから聞いた情報から敵の正体について考える。
「そうだね。花粉とか危険かもしれないね」
引きずった跡を確認しながら進むざくろは念のために布を巻いてマスク替わりにすることにした。
「植物なら寒さや炎に弱いでしょうか」
と考えながら忍は戦闘準備を行い敵との遭遇に備える。
「花の香でしょうか、なんだか甘い匂いがしますね」
ソナは布で鼻と口を覆う。
「筋は真っ直ぐ進んでいるな」
ヴァイスが足元を確認しながら進む。筋は時折蛇行しながらもおおむね真っ直ぐに進んでいる様だった。
ソナは耳を澄ませて周囲の音に気を配る。
と、進んでいる奥の方から人の声らしき音が聞えた。
「アーノルドさーん、リアンさーん」
ソナが呼びかける。
「……! ………!」
「聞こえましたか。 生きていらっしゃいますね! よかった」
何と言っているのかは聞き取れなかったが、確かに返事がソナの耳に届いた。
「助けてくれぇ!」
と叫んでいる男性、アーノルドがハンターたちの視界に入って来た。その奥にはシェノグ族の少女、リアンがぐったりと横たわり引きずられていく。
「あれ? 女の子?」
ざくろは呟いた。
そのさらに奥に、白い花と蔓と蜂の群れに囲まれて髪の長い女の子が二人、周囲の騒然とした雰囲気などまるで気にした風もなく座っていた。
「あれ、本物の『アルラウネ』かしら?」
アルラウネが女の子たちを見て感想をもらす。その姿は蕾に一瞬つつまれ、美しい薔薇が開花する。緑がかった色香漂うアルラウネがいた。
「私の事、間違えて攻撃しないでよ?」
女の子たちと似た雰囲気に、アルラウネは仲間に注意を促す。
「あっちは服着てるから、ちゃんと見分けつくもん! ……!」
と言ったところで、ざくろは自分の発言の際どさに気がついて顔を真っ赤にしていた。
「酷いわ……。こんな格好にさせたのはざくろんなのに」
アルラウネはざくろの発言を聞いて口をとがらせる。
ブブブブ……、と羽音を立てて蜂の群れが威嚇を始めた。女の子の周辺を好き勝手に飛び回っていた蜂たちも近づいてきた六人に気が付いたらしい。それ以上近づいたら刺すという意思表示かこちらに向かって針を向けている。
一触即発の現状で奥で座っている女の子たちは相変わらず反応らしい反応を見せていない、ただ髪の毛から続く蔓が微かに動き始めていた。
「くそ、助けてくれ」
アーノルドは今も抵抗を諦めずに、動かせる手で近くの木を掴もうともがいている。ここまで引きずられる間にも抵抗していたのだろう、服は破けて顔や手からは血がにじんでいる。今もズズッ、ズズッ、と引きずられていった。
「おう、今助けるからな」
ヴァイスは、二人の姿を確認すると救出のため直ぐに近寄っていく。
ソナは、アルラウネ、忍とレジストを順番に使用して抵抗力を強化する。
「餌にする気だろうが……させぬ」
状況を確認していたアデリシアは二人を解放するためにワイヤーウィップを振るう。白銀は煌めきながら翻り蔓を切りつけていく。
「あと少し、頑張ってくださいね」
ソナが仕込杖を抜いて蔓を斬っていく。蜂が襲ってくるのを盾を振って追い払っていく。
「アルラ、アデリシア、援護お願い」
蜂の群れや蔓の動きに注意しつつざくろはジェットブーツで大きくジャンプしてリアンへと急接近する。
森の中は蔓ヤ蜂以外にも木の枝でよく見通しが聞かない部分があった。アデリシアは、蜂や蔓だけでなく周辺に生えている邪魔な枝や葉を落として視界を確保していく。
行動を開始した六人を止めるためか、蜂の群れが動く。
一匹一匹はたいしたことはないが、数が多く集団で向かってくるので、とても鬱陶しかった。
「蜂を薙ぎ払ってくれ、頼む」
抜いた刀で蜂を払いのけながらヴァイスが言った。
「任せてよね」
アルラウネは、自ら名前をつけた夜刀流・円の型【長夜】という流れるような体さばきで蜂の攻撃を回避しつつ、剣を何度も振るって広範囲の蜂を切り払っていく。
アデリシアはマイヤワンドに持ち替えるとセイクリッドフラッシュを唱えると放たれた光の波動に当たって蜂たちが落ちていく。
「邪魔しないでほしいな」
ざくろはリアンの側まで来ていたが、蜂の群れに邪魔をされて思うような救出が出来ないでいので、デルタレイで蜂を撃ち落としていく。
蜂の群れは薙ぎ払われれば方々に散ってまた集合してと六人をしつこく襲うが、地道な攻撃にその規模を小さくしていった。
蜂の群れに阻まれている間にも、蔓はアーノルドとリアンの二人を女の子たちの元へと引きずっていた。
アデリシアは、味方から一歩距離をとり周囲を観察し、忍やソナに絡みつこうとする蔓を見つけては優先的に排除する。
「これで動けないでしょう!」
忍は、二人の救出を支援するためにざくろに近い女の子に向かってアイスボルトを放った。
女の子は動く気がないのか避ける様子もなく氷の矢が命中する。女の子たちは攻撃を受けて初めて敵だと認識したのだろうか、六人をはっきりと見た。その顔は無表情で何を考えているのか分からないが、蔓は動きを止めた。
「この隙に救出を」
と忍が叫んだ。
アデリシアが拘束している蔓を切断しようとした時だ。六人の周囲に咲いている白い花から花粉が撒き散らされる。
「くっ、これは……」
忍が口元を抑えて香りを吸い込まないようにする。
花粉が飛び散り、甘い香りがさらに濃くなった。ここまで濃くなると甘さも暴力に思える。
植物の花粉を警戒していたヴァイスは咄嗟に息を止めて一度距離をとる。微かに吸いこんた濃く甘い香りは白い花をやけに可愛らしく思わせた。
「気を付けろ! 吸い込むと魅了されるぞ」
ヴァイスは仲間たちに警告する。
「目に見えぬ異常は確かに脅威だが……対抗策自体が有ればさして恐れるに足らぬ」
アデリシアも香りを吸い込んでしまったが抵抗した。
「きゃっ」
アルラウネは花粉を被ってしまったのだろうか、ボーっと白い花を見つめてしまっていた。
「大丈夫か!」
アデリシアは、ボーっとしてしまっているアルラウネの様子を確認してサルヴェイションを使用し正気を取り戻す。
ざくろも甘い香りに魅了されそうになったが、大切な二人を思って抵抗する。
「ざくろ、愛しい人間に会ってるもん」
ひゅるんと音を立てて蔓が鞭のように振るわれて六人を襲うが、いずれも互いを援護しあう行動に阻まれて届かない。
忍が再び、女の子を狙ってアイスボルトを放つが氷の矢は、今度は蔓によって阻まれたが女の子を庇った蔓は冷気によって凍り付いてしまった。
ヴァイスは疾風のように走り、その勢いで二刀を振るって救出を邪魔する蔓を薙ぎ払っていく。
「お姉さんの方が魅力的じゃない?」
アルラウネは、蔓を切り落としながら敵の注意を引きつけるように行動し救出する仲間の行動を助けていく。
仲間の援護をもらいながら、アデリシアとざくろは二人を拘束している蔓を切断して救出する。
ざくろはぐったりとしているリアンを落とさないようにしっかりと抱きしめてジェットブーツでジャンプして素早く蔓から距離をとる。
「大丈夫か、しっかりしろ」
アデリシアはしつこい蔓からアーノルド守りながら担いで急ぎ移動する。アーノルドは香りを吸い込んでしまったのか反応が鈍かった。
「そうはいくか!」
餌を取り戻したいのだろう二人を狙って動く蔓をヴァイスは、二刀流で持って阻止して安全圏に移動するまで気を配る。
ひとまず安全だろう場所まで移動し、ソナが二人に応急手当とヒーリングスフィアを使用して二人の傷を癒す。柔らかい光が傷を癒していく。
「うっ……」
「もう大丈夫だよ」
意識を取り戻したリアンに向かってざくろがにっこりと笑顔を向けて落ち着かせていた。
「アーノルドさんも大丈夫ですか」
アデリシアがアーノルドに話しかけて意識を確認する。
甘い香りでぼーっとしていたアーノルドにソナがキュアをかける。光に包まれると表情が戻ってきていた。
「安全な場所まで移動しましょう。歩けますか?」
ソナがリアンに確認する。
「だ、大丈夫です」
リアンはそう言うがフラフラしてしまっていて足取りは覚束ない様子だ。
ソナとアデリシアが一人ずつ支えて離れることにする。
来た道を戻ると、元の場所から少し離れた見通しのいい場所でツアンプが心配そうに待っていた。ツアンプに二人を任せるとソナとアデリシアは雑魔と戦っている仲間の元へ戻っていく。
「植物の歪虚のようですから炎が効きそうですね」
忍が、女の子の歪虚と対峙する仲間へ順番にファイアエンチャンとを付与していく。
「これで、気にして戦う必要もないな」
ヴァイスが離脱していく二人を確認して刀を構える。疾走し女の子の歪虚に肉薄すると二刀を振るう。蔓が本体を庇うがそんなことは関係ないとばかりに断ち切っていった。
「アルラ、守るから」
ざくろは二人が安全圏に下がったことを見ると防御の薄いアルラウネの盾となってツルの攻撃から守り、反撃していく。
「せーのっ!」
とざくろに守られながらアルラウネは掛け声と共に呼吸とマテリアルを集中して強力な一撃を女の子の本体へと叩き込んだ。
「魅了で誤魔化してるけど、色香が足りないわね」
と女の子に告げながら刃で切り裂く。
「やはり炎が弱点ですね」
忍はファイアアローを唱える。炎は矢になって女の子に突き刺さる。歪虚は避けようと体を動かすが自身の髪の毛につながる蔓が動きを妨げるので上手く避けることが出来なかった。
「させるか!」
ヴァイスは、忍を狙う蔓を切り落として安全を確保する。
戻って来たソナがまだ動く蔓を刃で切り落として歪虚までの道を作る。
「本体は…やはり蔓の根本か」
アデリシアは足元に注意しつつ歪虚へワイヤーウィップを振るって引き倒す。倒れた足元には無数の骨が散乱していた。
「これで終わりです!」
起き上がろうとしている女の子に忍のファイアアローが突き刺さり、もがいていた体の動きが止まった。
「打ちもらしがいたら大変ですね」
アデリシアは、蔓が完全に止まっていること蜂の打ちもらしがないことを確認して回った。
「戻って状況確認をしてツアンプさんも手当てをしてと」
ソナはこの後の行動を考える。薬草に興味があるので、ゆっくり見せてもらえる時間があれば嬉しいと思った。
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/02/01 16:41:30 |
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【相談卓】アルラウネ退治? アルラウネ(ka4841) エルフ|24才|女性|舞刀士(ソードダンサー) |
最終発言 2016/02/04 07:19:37 |