ゲスト
(ka0000)
知追う者、刻令術に興味持つ
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 寸志
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/02/04 19:00
- 完成日
- 2016/02/09 22:54
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●出張?
エトファリカ連邦国、陰陽寮の一角において、プチ腹黒い話が進められていた。
大江 紅葉(kz0163)は上司にその話を聞いた瞬間、渋面を作る。
「出張なら休みにならないんだからいいだろう? おまけに付けたのは松永殿だ。きっとお前の言うことを聞いてちゃんと助言もくれる」
「……」
「まあ、街中だから危険もほぼないだろうけど、場所によってはチンピラに絡まれたり、犯罪に巻き込まれるかもしれないし、お前の場合、珍獣だとか行って駆けだしたりするかもしれない。刻令術自体禁術扱いもされていたんだろう……」
紅葉は恥ずかしさで顔が赤くなるが、上司の心配も理解する。上司であり、紅葉を指導した先生でもあり、父や年の離れた兄のような存在だから。
「武官どもも他国は気になる。かといって武人は出かける機会は限られる」
行こうと思えば行けるが、情報の共有は限られる。
「口実ってのもあるからな」
「……分かりました」
紅葉は折れた。
「で、松永殿って、光頼殿?」
「あ、うん、そうだよ。松永 光頼殿だ」
紅葉はうなずいた。彼には弟もいるらしいし、松永と言う名字の者もいるだろうから重要なことだった。
●手紙
工房で手紙を見たアダム・マンスフィールドは目を上げた。
手紙を出した本人である紅葉はすでに前にいる。椅子に座って待っているが、キラキラとした目できょろきょろしつつ、付添いの青年にたしなめられている。
(手紙が届く前に本人が来る……いや)
届くのに時間がかかり、予定を変えられない本人がやってきたというだけ。
新しい技術に興味を抱き、期待に輝く若い術者。
「それで、刻令術が知りたい、と」
「はい、何もかも! と言いたいところですが、初歩からお願いします。結局、図書館には行けずしまいです」
手紙にそのことは書いてあった。行けば出てこなくなると周りにとめられている、と。
エトファリカ連邦国の汚染された地域に足を延ばすには刻令術が役に立つのではと彼女はいう。
希望に満ちている。
「もちろん、お忙しいでしょうから、無理にはとは言いません。マンスフィールド様が良いとおっしゃって下さるなら」
商品説明なら第六商会で良いのだ。
アダムも推測は付く、彼女が望むのは一歩先。使えるなら自分で作りかえる知識と力。その上で国のためになる道具。
刻令術に関しての技術者も研究者も不足しているのは事実。
ただし、彼女はこの国の人間ではない。古いしきたりを重んじる、頭の固い人間に知られれば、そしられるかもしれないだろうが……教えて構わないだろう。それらは全てヘクス・シャルシェレット(kz0015)が被る形になるだろうから。
「よろしい、ならば講義をさせて頂こう」
その瞬間、彼女が全身で喜ぶ。わっと手を上げるとか声を出したわけではないが、ぱあと明るくなるような雰囲気を散らした。
まぶしい。
「ありがとうございます。松永殿も一緒に?」
「私は門外漢ですよ? おとなしくここで待っています」
光頼は苦笑するが、紅葉に腕をひかれる。
同じ待つなら聞けばいいということらしかった。
説明を聞きながら紅葉は真面目に聞くが笑顔は消えない。
「機導と符術を足して割った感じでしょうか?」
「私は符術を知らんが……そうかね」
符術も別に書くわけではないが、幅広く術は存在する。その中の一角を考えれば似てなくもないのかもしれない。
「なんで禁術と言われたんですか」
「大江殿っ! そのこと、聞いていないんですが」
「え? ふふっ……また変な噂立つって先生が黙っているようにって」
「……はあ」
アダムが答えるよりも二人で会話が進む。
「……禁術に、興味があるのかね」
興味がふとわいた。エトファリカでこの娘も禁術に手を出そうとしたのだろうか、と。
「え? あ、まあ去年なんですが、私の妹が死んで、その絡みで妖怪……歪虚と手を結ぶんじゃないとか、散々、歪虚の力でなら死者は蘇るとか……」
「歪虚のあれは……復活と言うには少々片手落ち、だがね」
「そうですよ? 私だって、歪虚になっちゃえば力を得られるかもしれないけれど、守りたい人が守れるわけではないと思いとどまりましたよ? マンスフィールド様、どうかしましたか?」
紅葉はアダムの様子に気づいて尋ねる。
「いや。少し興味を覚えただけだ。不躾な問い、失礼した。……ところで、これまでの説明で分からなかったことは?」
「いえ、むしろもっと知りたくなりました。ありがとうございました。お忙しい中」
説明が終わった後、頭を深々と下げる紅葉と光頼。
外に出ると二人は外套を羽織る。紅葉の方は耳宛てや襟巻までまかれもこもこスタイルになっている。本人は嫌がっている様子だが、聞こえる言葉からは兄と妹のような関係に思えてほほえましかった。
●融通してもらう
「やっぱり欲しいです」
グラズヘイムは寒いらしいと話を聞いた家臣たちにより、立派な耳宛て、襟巻に手袋、マントを羽織った紅葉は呻く。
「……デュニクスで使われていますが、まだ販売しているわけではないんでしょう?」
そのあたりは光頼も情報は抑えている。
「でも、実際使っているということはあるはずです」
「第六商会でしたっけ」
「はい、あそこですね」
紅葉は店とはいかない事務所のようなところの戸を叩いた。
「こんにちは、あの……刻令術で動く農具に興味があるんですけど」
中にいた者は突然の来訪にもかかわらず、丁寧に応対をした。
「まだ準備中ということで店はないんですが」
「……これから、エトファリカも農作業の時期を迎えます。そこできっと役に立つのではないかと……」
紅葉と相手の交渉が始まり、光頼はただ冷静にいようとその場で待っていた。
「うぅ、お値段」
「だから、諦めましょう? さすがにそれ、自費でも無理でしょ?」
「……う、ううううう、自分で」
「作るのはなしですよ? 今日の話聞いて仕組みは分かっても、その先は話しが別です。あなたはどこに籍を置く人ですか?」
うめく紅葉に冷静に光頼は返していく。外堀を埋めておかないと、ここに残ってアダムの弟子になると言いかねない。
「……大江様でしたら、融資ということも考えてもよろしいですよ?」
にこやかな職員の言葉に紅葉ははっとした。
「有志!」
「はい、融資です」
「……うん、決めた、頼んでくる」
「はい、契約書を……」
「だって便利だもの、皆に言えばお金ちょっとずつ融通してもらえる……」
この瞬間、職員と光頼は食い違いに気づいた。
「……どれか一台ならきっと!」
職員としては良さが伝わり販売経路が広がればいい。
「どれにしよう……」
実際考えると紅葉は悩んだ。
光頼も一緒に困った。
「いっそのことハンターに相談しませんか? 各地を見ているハンターたちならいい案をくれるかもしれません」
職員も別に異存はない、買う買わないは紅葉が決める事であり、売り込む段階は終わったのだから。
エトファリカ連邦国、陰陽寮の一角において、プチ腹黒い話が進められていた。
大江 紅葉(kz0163)は上司にその話を聞いた瞬間、渋面を作る。
「出張なら休みにならないんだからいいだろう? おまけに付けたのは松永殿だ。きっとお前の言うことを聞いてちゃんと助言もくれる」
「……」
「まあ、街中だから危険もほぼないだろうけど、場所によってはチンピラに絡まれたり、犯罪に巻き込まれるかもしれないし、お前の場合、珍獣だとか行って駆けだしたりするかもしれない。刻令術自体禁術扱いもされていたんだろう……」
紅葉は恥ずかしさで顔が赤くなるが、上司の心配も理解する。上司であり、紅葉を指導した先生でもあり、父や年の離れた兄のような存在だから。
「武官どもも他国は気になる。かといって武人は出かける機会は限られる」
行こうと思えば行けるが、情報の共有は限られる。
「口実ってのもあるからな」
「……分かりました」
紅葉は折れた。
「で、松永殿って、光頼殿?」
「あ、うん、そうだよ。松永 光頼殿だ」
紅葉はうなずいた。彼には弟もいるらしいし、松永と言う名字の者もいるだろうから重要なことだった。
●手紙
工房で手紙を見たアダム・マンスフィールドは目を上げた。
手紙を出した本人である紅葉はすでに前にいる。椅子に座って待っているが、キラキラとした目できょろきょろしつつ、付添いの青年にたしなめられている。
(手紙が届く前に本人が来る……いや)
届くのに時間がかかり、予定を変えられない本人がやってきたというだけ。
新しい技術に興味を抱き、期待に輝く若い術者。
「それで、刻令術が知りたい、と」
「はい、何もかも! と言いたいところですが、初歩からお願いします。結局、図書館には行けずしまいです」
手紙にそのことは書いてあった。行けば出てこなくなると周りにとめられている、と。
エトファリカ連邦国の汚染された地域に足を延ばすには刻令術が役に立つのではと彼女はいう。
希望に満ちている。
「もちろん、お忙しいでしょうから、無理にはとは言いません。マンスフィールド様が良いとおっしゃって下さるなら」
商品説明なら第六商会で良いのだ。
アダムも推測は付く、彼女が望むのは一歩先。使えるなら自分で作りかえる知識と力。その上で国のためになる道具。
刻令術に関しての技術者も研究者も不足しているのは事実。
ただし、彼女はこの国の人間ではない。古いしきたりを重んじる、頭の固い人間に知られれば、そしられるかもしれないだろうが……教えて構わないだろう。それらは全てヘクス・シャルシェレット(kz0015)が被る形になるだろうから。
「よろしい、ならば講義をさせて頂こう」
その瞬間、彼女が全身で喜ぶ。わっと手を上げるとか声を出したわけではないが、ぱあと明るくなるような雰囲気を散らした。
まぶしい。
「ありがとうございます。松永殿も一緒に?」
「私は門外漢ですよ? おとなしくここで待っています」
光頼は苦笑するが、紅葉に腕をひかれる。
同じ待つなら聞けばいいということらしかった。
説明を聞きながら紅葉は真面目に聞くが笑顔は消えない。
「機導と符術を足して割った感じでしょうか?」
「私は符術を知らんが……そうかね」
符術も別に書くわけではないが、幅広く術は存在する。その中の一角を考えれば似てなくもないのかもしれない。
「なんで禁術と言われたんですか」
「大江殿っ! そのこと、聞いていないんですが」
「え? ふふっ……また変な噂立つって先生が黙っているようにって」
「……はあ」
アダムが答えるよりも二人で会話が進む。
「……禁術に、興味があるのかね」
興味がふとわいた。エトファリカでこの娘も禁術に手を出そうとしたのだろうか、と。
「え? あ、まあ去年なんですが、私の妹が死んで、その絡みで妖怪……歪虚と手を結ぶんじゃないとか、散々、歪虚の力でなら死者は蘇るとか……」
「歪虚のあれは……復活と言うには少々片手落ち、だがね」
「そうですよ? 私だって、歪虚になっちゃえば力を得られるかもしれないけれど、守りたい人が守れるわけではないと思いとどまりましたよ? マンスフィールド様、どうかしましたか?」
紅葉はアダムの様子に気づいて尋ねる。
「いや。少し興味を覚えただけだ。不躾な問い、失礼した。……ところで、これまでの説明で分からなかったことは?」
「いえ、むしろもっと知りたくなりました。ありがとうございました。お忙しい中」
説明が終わった後、頭を深々と下げる紅葉と光頼。
外に出ると二人は外套を羽織る。紅葉の方は耳宛てや襟巻までまかれもこもこスタイルになっている。本人は嫌がっている様子だが、聞こえる言葉からは兄と妹のような関係に思えてほほえましかった。
●融通してもらう
「やっぱり欲しいです」
グラズヘイムは寒いらしいと話を聞いた家臣たちにより、立派な耳宛て、襟巻に手袋、マントを羽織った紅葉は呻く。
「……デュニクスで使われていますが、まだ販売しているわけではないんでしょう?」
そのあたりは光頼も情報は抑えている。
「でも、実際使っているということはあるはずです」
「第六商会でしたっけ」
「はい、あそこですね」
紅葉は店とはいかない事務所のようなところの戸を叩いた。
「こんにちは、あの……刻令術で動く農具に興味があるんですけど」
中にいた者は突然の来訪にもかかわらず、丁寧に応対をした。
「まだ準備中ということで店はないんですが」
「……これから、エトファリカも農作業の時期を迎えます。そこできっと役に立つのではないかと……」
紅葉と相手の交渉が始まり、光頼はただ冷静にいようとその場で待っていた。
「うぅ、お値段」
「だから、諦めましょう? さすがにそれ、自費でも無理でしょ?」
「……う、ううううう、自分で」
「作るのはなしですよ? 今日の話聞いて仕組みは分かっても、その先は話しが別です。あなたはどこに籍を置く人ですか?」
うめく紅葉に冷静に光頼は返していく。外堀を埋めておかないと、ここに残ってアダムの弟子になると言いかねない。
「……大江様でしたら、融資ということも考えてもよろしいですよ?」
にこやかな職員の言葉に紅葉ははっとした。
「有志!」
「はい、融資です」
「……うん、決めた、頼んでくる」
「はい、契約書を……」
「だって便利だもの、皆に言えばお金ちょっとずつ融通してもらえる……」
この瞬間、職員と光頼は食い違いに気づいた。
「……どれか一台ならきっと!」
職員としては良さが伝わり販売経路が広がればいい。
「どれにしよう……」
実際考えると紅葉は悩んだ。
光頼も一緒に困った。
「いっそのことハンターに相談しませんか? 各地を見ているハンターたちならいい案をくれるかもしれません」
職員も別に異存はない、買う買わないは紅葉が決める事であり、売り込む段階は終わったのだから。
リプレイ本文
●集まりつつ
ハンターは集合場所に来た。
「初めまして! ザレムさん以外、全員女性です! あ、光頼さんがいらっしゃいましたね。刻令術の農具についての意見と言うことですよね。農業なら、私の故郷は農村だったので、何か生かせるかもしれないです!」
アシェ-ル(ka2983)はメンバーを見て挨拶をしたあと、明るい心の声が漏れてくる。
「……紅葉さんって東方の方なんですよね……巡り巡って、スメラギ様のためになるっ!」
「アシェ-ルさんはスメラギ様が好きなのですね?」
紅葉はにこにこと尋ねたためアシェ-ルは顔を真っ赤にして、否定するやら肯定するやら忙しいことになった。
「第六商会で実際に見て聞いて徹底的に調べた。技術と魔法をいかに現代に生かすか……刻令術で農具とはなかなか楽しい話題だな」
ザレム・アズール(ka0878)は好奇心と研究の元、本当に楽しそうだ。
「ボクは指定されている三つの機体に関して利点と欠点をまとめたよ」
フラン・レンナルツ(ka0170)が色々書きこんだカタログを見せる。
「紅葉さん、今回もよろしくお願いします。光頼さん、初めまして、エルバッハ・リオン(ka2434)です」
エルバッハは丁寧に頭を下げる。魔術を学ぶ者として好奇心として、刻令術に関する依頼も最近受けたばかりだった。
「刻令術は平和に運用される素晴らしい技術なんですね。CAMやサルヴァトーレ・ロッソもすごいのですが、どうも戦いの雰囲気しかなかったので、農業に生かせる新しい技術は、ちょっと嬉しくなります」
ミオレスカ(ka3496)は目をキラキラとさせる。
「それにしても刻令術、か……。紅葉殿も興味深い物に目をつけられたものだ」
雪継・白亜(ka5403)は耳にした噂や調べたことからふむふむとうなずく。白亜の身近にまだない技術であるが食料の事に絡んでくるとなると、身近な技術になるかもしれないのだ。
「さあ行きましょう」
そわそわした紅葉が先陣を切って歩き出した。
●プレゼン
第六商会の事務所兼展示、仮の販売所に来た。
受付の女性は笑顔で迎え、「何かあれば聞いてほしい」と告げる。
「これです、これのどれかを買いたいと思っています!」
紅葉は地に足がついていない。これは冷静な頭が必要だとハンターは知る。
「全部いいと思いますっ!」
アシェ-ルは農業における大変なことを説明する。
「紅葉さんは土を耕したことがありますか?」
「ないです」
恥ずかしそうに紅葉は告げる。
「すでに柔らかくなってる土地でも大変な作業です。鍬を持ち上げ、土をひっくり返すように移動していくのです。畑全部にそれを行います。固くなっている場合は非常に大変なことになります」
「そうですね足腰の鍛錬になります」
光頼はアシェ-ルに同意した。
「それに種まきや苗を植えるのも前かがみです。水やりは水場の近くなら簡単ですが、そうはいっていられません。それに繊細です! いいですか、運ぶに至っても――」
滔々とアシェ-ルがすべての機械を勧める理由を述べ切る。
「農業の大変さがよくわかりました……我が家の庭の菜園など小さい小さいですね」
紅葉は農機具を見る目が重くなる。
「駄目ですからね、全部は!」
光頼が止めに入った。持って帰る大変さを考えていない、転移門だって万能ではないし、幕府に何も言わずに輸入していい物品かという問題がある。
「そう、全部いい! そして、全てに欠点もある」
引き継ぐようにフランは説明を始めた。
「紅葉が気になっているのは運搬機だね。そこから始めるよ。運搬機の利点は操作できれば誰でも同じ重量を運べるし、馬のように休憩が必要ではない点だ」
「ですよね!」
紅葉は激しくうなずく。
「欠点は、馬と比べると運搬速度が劣るし、故障や欠損時には専門の知識が必要という点だ」
運搬速度に関しては物によっても変わってくる。
「改良点としては、積載能力の向上と不整地の土地に対してキャタピラ式の足周りの開発かな。それと荷台部分を土砂を下しやすくする、クレーン等のオプション」
フランは紅葉が硬直していることに気付いたため、キャタピラやクレーン等の説明を追加する。リアルブルーでは当たり前の物もこちらではまだなじみが薄い。
「耕運機は老若男女問わず均一に作業できるが、土壌の状況によっては刃の替えは必要だ――」
フランはそれ以外の商品に対しても簡単に話をした。
紅葉は良い所しか見ていなかったため、欠点を理解できた。
「まずはこれを見てくれ」
レジュメを配るザレム。
「フランが説明したような利点と欠点がある」
レジュメには性能や長所と短所、価格と年間維持費等が記載されている。
紅葉は「ほお」と息を吐く。フランが言っていた事以外で紅葉が考えていなかったことが多く記載されていた。
「俺は運搬機を推す。理由は『汎用性』と『拡張性』だ」
「先ほどフランさんもおっしゃっていた付属品ですね」
「そうだ。荷台部分に牽引型の耕運機や地均し機になるからね。その点に関しては検討されているみたいだけど」
ザレムはレジュメのページを示す。
「そうだ、作業機械の例としてこんなのを持ってきたんだ、耕運機の刃を想像してもらえばいい」
ザレムは両手武器の魔導ドリルを取り出す。CAMや魔導アーマー等のユニットに装備できる全長180センチはある代物だ。
「ためしにこれ持ってみて」
「……えっ」
驚いた紅葉であるが、素直に置かれているそれを持ち上げた。
「うっううう……支給品でクレイモアもらって帰った時以上ですね」
「支給品、紅葉ももらうのか?」
白亜は驚くが、一応ハンターとして彼女が登録していることを考えれば納得できる。支給品にはリアルブルーの物品もあり、紅葉の好奇心をくすぐっているに違いない。
「最近、四匹目の虎猫も」
「……紅葉さん、猫派ですか?」
ミオレスカの問いかけに紅葉は首をかしげる。
「たまたま猫を拾っただけです」
「パルムも可愛いですよ」
ミオレスカの肩のパルムが紅葉に自己主張をした。
「ゴホン……失礼、話がそれたんだが……耕運機も手押しだから運ぶとなると重い。扱いは大変だということだ」
ザレムが一通りのプレゼンを終えた。
白亜が挙手したため、紅葉が指名をする。
「我も運搬機を推す」
「どこが推薦ポイントですか?」
紅葉はきりっと尋ねる。
「以前、紅葉は乗るか悩んだ魔導バイクに比べると四輪ということで安定性がある。二輪と異なり気軽に乗ることができる」
「そうですね。魔導バイクは一人で立ってくれませんが、この運搬機はすでに一人で立っています」
「大型に比べれば積載量は少ないだろうが、馬やバイクに乗せるよりはるかに多い物を載せ、安全に運べる。物資の輸送、肥料や収穫物の運搬、人だって運べる。季節を選ばず手広く使うことができる」
利用法として紅葉が考えていた事でもある。
「もちろん、維持費やメンテナンスを考えると悩ましいと思える部分もあるだろうが、それらをきちんとやっていれば緊急時に力を発揮するだろう」
白亜の言葉に紅葉は再び考える。
「そうなんですよね……ザレムさんの資料を見て気付きましたが、維持費と修繕費を全く考えていなかったんですよ」
「……でしょうね」
「松永殿は気付いていらっしゃたというのですか!」
紅葉は少々怒り気味だ。
「いや、明確ではないですが……武具の手入れというのは武人としての勤め。買ったらそれで終わりではないのですよ」
光頼は淡々と告げた。
「そうですね……符の場合、術で使ったら補充……ですから」
紅葉は納得して怒りを収める。
「符術の札は銃弾に近いね。銃の場合は武器の手入れもいるけど」
フランに対して猟撃士たちがうなずいた。
●運搬機対耕運機
「私は耕運機を推します」
資料を閉じてきっぱりとエルバッハが告げる。
「どの機械を選んだとしても、まだ研究が必要な段階だと思います」
刻令術による農具の開発については、今始まったばかりと言っても過言ではない。
「耕運機はこの三つの中で一番成果が見えやすいのです。これを使って畑を大きくすることができれば、人力に比べるとこう……と言うように示しやすいでしょう。水を運び撒く、物を運搬することは便利ですが成果は見えにくいでしょう」
紅葉はエルバッハにうなずくが今一つな表情だ。
「運搬機に比べれば使い処は限られていますが、今後、刻令術を研究していくのであれば、上の方々を説得する必要が出てくると思います。そういったときに先ほど申しました目に見える成果があれば、説得の助けになるかと思います」
「研究……成果」
紅葉の目からうろこがコロリと落ちて行く。
「そ、そうですね……エトファリカでも研究してはいけないって法律はないですね」
「法律はないですが、禁術指定の事忘れていませんか」
光頼の心配する言葉に紅葉は半泣きになる。
「その件でしたら!」
ミオレスカが手を挙げる。
「農業に生かせるということを考えると、禁術指定の過去があると言って止めてしまうのは寂しいです。平和にこうやって使えるということはアピールしていいことだと思います。良いものは良いとして生かす方が喜ばしいことです」
この援護に紅葉は嬉しそうにミオレスカを見た。
「そうですよ! 食料事情が良くなることはエトファリカの為ですし、広がればクリムゾンウェスト全体の幸せです」
アシェ-ルが拳を握りしめる。
「私は猟撃士として狩りをすることもありますが、野菜は育てるしかないのです。農業は必要ですし、この機械が生かせれば開拓しやすいです。……動作の理屈をおぼえれば、耕運機と運搬機の機能を併せ持ったモノだってできるかもしれません」
他のハンターたちもうなりながらうなずく。
「使っているうちに構造の術式だって調べられるんじゃないか?」
「仕組みが分からないでやると危険ですよ」
ザレムとエルバッハがこっそり会話をしている、第六商会の中で話すことではないが。
紅葉の耳に届き、その手があったというような表情をして、光頼にたしなめられる。
「私が推すのは耕運機です。暴走という点を考えると、手押し型が小型で何かあっても対処しやすいのかと思います」
「ぼ、暴走ですか?」
ミオレスカの言葉に紅葉が震える。
「機械にはつきものです。あ、紅葉さん、頻繁にならないですから」
「すみません。機械に興味はあってもどこか苦手意識があるんですね……きっと」
「いえ、でも、これから勉強をすればいいんです。私だって刻令術がどんなものかというのはこれからです」
ミオレスカの柔らかい笑顔に紅葉も微笑む。
「紅葉殿は覚える気があるわけでどうにかできるのだろう?」
白亜には紅葉が農作業をしているイメージが湧かないが、あれこれ弄繰り回しているイメージはある。研究と言う名のもとに。
「さて、ボクたちのプレゼンは終わった……気付けばそうなっていたが……さて、紅葉はどうする?」
「どれもお勧めです! 農業をやるには重要です」
フランは指し示し、アシェ-ルは両手を広げ決断を促す。
職員がそろりそろりと近寄ってくる、契約の時がやってきたのだと悟ったのだった。
●うめく
「決まりませんっ!」
紅葉は叫んだ。
ハンターたちは顔を見合わせ、職員がこけた。
「水やり器はいりません」
広大というほどの土地ではなく、水やりは比較的しやすい。理由ははっきりしている。
「選択肢は減りましたよ?」
アシェ-ルは後一息と言う。
「……技術者になればっ」
「だから、それは駄目だって言っているしょう!」
光頼が紅葉をしかりつつ、なだめる。現実を考えれば、素質がありそうな誰かを派遣するべきであるのだ。
「……リースって言う手もあるはずだ」
ザレムはリースについての説明をした。使用料を払い、相手がメンテナンス等をチェックに来る、簡単に言うとそうなる。そして、新しいモデルが出た場合、交換も早い。
職員は「それも一つの手です」と認めた。
紅葉は「買う」しか頭になかったので選択肢が広がってしまった。
「エトファリカの大地を耕す、第六商会の刻令術の農具……グラズヘイムとは異なる地形も多そうだが?」
「そうなると大きな実験になるんですよね? もし、ここで紅葉さんがリースなり買い上げをした場合、第六商会にいい面も多いのでは?」
フランとエルバッハは紅葉への決断を迫るよりも、職員への「おまけしてくれるとこの人、二つ買って行ったり借りて行くよ」という響きとなる。
「東方で紅葉さんのおうちが使えば、デモンストレーションと実証実験にもなりますよ? エトファリカの大地で開墾が進み、復興も進む……欲しがる人が増えるかもしれません」
アシェ-ルも第六商会の職員にぐぐっと迫った。
「実証実験とはいっても、別に第六商会がつきっきりでなくとも、紅葉殿に頼めばきんとしたレポートがくるはずだ」
白亜の視線に紅葉はうなずく。
ハンターたちの言葉を要約すると「モニターをするからまけてよ」ということ。
ここで足りないのは紅葉の熱意なのである。まだ迷っている、買うかリースかどっちにするか。
「……運搬機の空の荷台に耕運機乗せれば移動が楽ではありませんか?」
ミオレスカがつつぶやく。荷台まで高さはあるが、丈夫な板を斜めに掛ければ押して載せられないこともない。
「あっ……」
紅葉が目を輝かせた。
光頼の目が「なぜ、それを言ってしまったのですか」とミオレスカに言っているようだった。すでに手遅れなのは紅葉の様子から明らかである。
さて、交渉のカードは出そろった。
紅葉と職員は勝負に出る。
「耕運機と運搬機をリースしますっ! それと、これがエトファリカにおける実験になるというなら、場所の提供、協力者探しなど協力いたします。ぜひ、おまけもください」
すがすがしいくらい直球だった。
職員は黙った、二瞬考える。紅葉の味方に付いているハンターの視線も突き刺さる。適正な判断だをしないと第六商会の名が廃る。
「決定権がある上司と相談……いえ、分かりましたっ、細かな条件は詰めましょう、こちらへ」
職員と紅葉はがっしりと手を握った。
「紅葉さん、よろしければおつきあいしましょうか?」
エルバッハの言葉に紅葉はうなずいた。
そして、互いに条件を付き合わせ、ハンターの立会いの下契約はなった。
その後、機械の使い方の説明を受け、実際に触ってみる。
後日、大江家は第六商会からの荷物を受け取った、耕運機と運搬機を。
猫の額程度の大江家の菜園では耕運機だけで良かったようだが、他の畑に行くのには両方役に立つ。
光頼の日記はそっけないが、紅葉の笑顔がまぶしかったと記されていた。
ハンターは集合場所に来た。
「初めまして! ザレムさん以外、全員女性です! あ、光頼さんがいらっしゃいましたね。刻令術の農具についての意見と言うことですよね。農業なら、私の故郷は農村だったので、何か生かせるかもしれないです!」
アシェ-ル(ka2983)はメンバーを見て挨拶をしたあと、明るい心の声が漏れてくる。
「……紅葉さんって東方の方なんですよね……巡り巡って、スメラギ様のためになるっ!」
「アシェ-ルさんはスメラギ様が好きなのですね?」
紅葉はにこにこと尋ねたためアシェ-ルは顔を真っ赤にして、否定するやら肯定するやら忙しいことになった。
「第六商会で実際に見て聞いて徹底的に調べた。技術と魔法をいかに現代に生かすか……刻令術で農具とはなかなか楽しい話題だな」
ザレム・アズール(ka0878)は好奇心と研究の元、本当に楽しそうだ。
「ボクは指定されている三つの機体に関して利点と欠点をまとめたよ」
フラン・レンナルツ(ka0170)が色々書きこんだカタログを見せる。
「紅葉さん、今回もよろしくお願いします。光頼さん、初めまして、エルバッハ・リオン(ka2434)です」
エルバッハは丁寧に頭を下げる。魔術を学ぶ者として好奇心として、刻令術に関する依頼も最近受けたばかりだった。
「刻令術は平和に運用される素晴らしい技術なんですね。CAMやサルヴァトーレ・ロッソもすごいのですが、どうも戦いの雰囲気しかなかったので、農業に生かせる新しい技術は、ちょっと嬉しくなります」
ミオレスカ(ka3496)は目をキラキラとさせる。
「それにしても刻令術、か……。紅葉殿も興味深い物に目をつけられたものだ」
雪継・白亜(ka5403)は耳にした噂や調べたことからふむふむとうなずく。白亜の身近にまだない技術であるが食料の事に絡んでくるとなると、身近な技術になるかもしれないのだ。
「さあ行きましょう」
そわそわした紅葉が先陣を切って歩き出した。
●プレゼン
第六商会の事務所兼展示、仮の販売所に来た。
受付の女性は笑顔で迎え、「何かあれば聞いてほしい」と告げる。
「これです、これのどれかを買いたいと思っています!」
紅葉は地に足がついていない。これは冷静な頭が必要だとハンターは知る。
「全部いいと思いますっ!」
アシェ-ルは農業における大変なことを説明する。
「紅葉さんは土を耕したことがありますか?」
「ないです」
恥ずかしそうに紅葉は告げる。
「すでに柔らかくなってる土地でも大変な作業です。鍬を持ち上げ、土をひっくり返すように移動していくのです。畑全部にそれを行います。固くなっている場合は非常に大変なことになります」
「そうですね足腰の鍛錬になります」
光頼はアシェ-ルに同意した。
「それに種まきや苗を植えるのも前かがみです。水やりは水場の近くなら簡単ですが、そうはいっていられません。それに繊細です! いいですか、運ぶに至っても――」
滔々とアシェ-ルがすべての機械を勧める理由を述べ切る。
「農業の大変さがよくわかりました……我が家の庭の菜園など小さい小さいですね」
紅葉は農機具を見る目が重くなる。
「駄目ですからね、全部は!」
光頼が止めに入った。持って帰る大変さを考えていない、転移門だって万能ではないし、幕府に何も言わずに輸入していい物品かという問題がある。
「そう、全部いい! そして、全てに欠点もある」
引き継ぐようにフランは説明を始めた。
「紅葉が気になっているのは運搬機だね。そこから始めるよ。運搬機の利点は操作できれば誰でも同じ重量を運べるし、馬のように休憩が必要ではない点だ」
「ですよね!」
紅葉は激しくうなずく。
「欠点は、馬と比べると運搬速度が劣るし、故障や欠損時には専門の知識が必要という点だ」
運搬速度に関しては物によっても変わってくる。
「改良点としては、積載能力の向上と不整地の土地に対してキャタピラ式の足周りの開発かな。それと荷台部分を土砂を下しやすくする、クレーン等のオプション」
フランは紅葉が硬直していることに気付いたため、キャタピラやクレーン等の説明を追加する。リアルブルーでは当たり前の物もこちらではまだなじみが薄い。
「耕運機は老若男女問わず均一に作業できるが、土壌の状況によっては刃の替えは必要だ――」
フランはそれ以外の商品に対しても簡単に話をした。
紅葉は良い所しか見ていなかったため、欠点を理解できた。
「まずはこれを見てくれ」
レジュメを配るザレム。
「フランが説明したような利点と欠点がある」
レジュメには性能や長所と短所、価格と年間維持費等が記載されている。
紅葉は「ほお」と息を吐く。フランが言っていた事以外で紅葉が考えていなかったことが多く記載されていた。
「俺は運搬機を推す。理由は『汎用性』と『拡張性』だ」
「先ほどフランさんもおっしゃっていた付属品ですね」
「そうだ。荷台部分に牽引型の耕運機や地均し機になるからね。その点に関しては検討されているみたいだけど」
ザレムはレジュメのページを示す。
「そうだ、作業機械の例としてこんなのを持ってきたんだ、耕運機の刃を想像してもらえばいい」
ザレムは両手武器の魔導ドリルを取り出す。CAMや魔導アーマー等のユニットに装備できる全長180センチはある代物だ。
「ためしにこれ持ってみて」
「……えっ」
驚いた紅葉であるが、素直に置かれているそれを持ち上げた。
「うっううう……支給品でクレイモアもらって帰った時以上ですね」
「支給品、紅葉ももらうのか?」
白亜は驚くが、一応ハンターとして彼女が登録していることを考えれば納得できる。支給品にはリアルブルーの物品もあり、紅葉の好奇心をくすぐっているに違いない。
「最近、四匹目の虎猫も」
「……紅葉さん、猫派ですか?」
ミオレスカの問いかけに紅葉は首をかしげる。
「たまたま猫を拾っただけです」
「パルムも可愛いですよ」
ミオレスカの肩のパルムが紅葉に自己主張をした。
「ゴホン……失礼、話がそれたんだが……耕運機も手押しだから運ぶとなると重い。扱いは大変だということだ」
ザレムが一通りのプレゼンを終えた。
白亜が挙手したため、紅葉が指名をする。
「我も運搬機を推す」
「どこが推薦ポイントですか?」
紅葉はきりっと尋ねる。
「以前、紅葉は乗るか悩んだ魔導バイクに比べると四輪ということで安定性がある。二輪と異なり気軽に乗ることができる」
「そうですね。魔導バイクは一人で立ってくれませんが、この運搬機はすでに一人で立っています」
「大型に比べれば積載量は少ないだろうが、馬やバイクに乗せるよりはるかに多い物を載せ、安全に運べる。物資の輸送、肥料や収穫物の運搬、人だって運べる。季節を選ばず手広く使うことができる」
利用法として紅葉が考えていた事でもある。
「もちろん、維持費やメンテナンスを考えると悩ましいと思える部分もあるだろうが、それらをきちんとやっていれば緊急時に力を発揮するだろう」
白亜の言葉に紅葉は再び考える。
「そうなんですよね……ザレムさんの資料を見て気付きましたが、維持費と修繕費を全く考えていなかったんですよ」
「……でしょうね」
「松永殿は気付いていらっしゃたというのですか!」
紅葉は少々怒り気味だ。
「いや、明確ではないですが……武具の手入れというのは武人としての勤め。買ったらそれで終わりではないのですよ」
光頼は淡々と告げた。
「そうですね……符の場合、術で使ったら補充……ですから」
紅葉は納得して怒りを収める。
「符術の札は銃弾に近いね。銃の場合は武器の手入れもいるけど」
フランに対して猟撃士たちがうなずいた。
●運搬機対耕運機
「私は耕運機を推します」
資料を閉じてきっぱりとエルバッハが告げる。
「どの機械を選んだとしても、まだ研究が必要な段階だと思います」
刻令術による農具の開発については、今始まったばかりと言っても過言ではない。
「耕運機はこの三つの中で一番成果が見えやすいのです。これを使って畑を大きくすることができれば、人力に比べるとこう……と言うように示しやすいでしょう。水を運び撒く、物を運搬することは便利ですが成果は見えにくいでしょう」
紅葉はエルバッハにうなずくが今一つな表情だ。
「運搬機に比べれば使い処は限られていますが、今後、刻令術を研究していくのであれば、上の方々を説得する必要が出てくると思います。そういったときに先ほど申しました目に見える成果があれば、説得の助けになるかと思います」
「研究……成果」
紅葉の目からうろこがコロリと落ちて行く。
「そ、そうですね……エトファリカでも研究してはいけないって法律はないですね」
「法律はないですが、禁術指定の事忘れていませんか」
光頼の心配する言葉に紅葉は半泣きになる。
「その件でしたら!」
ミオレスカが手を挙げる。
「農業に生かせるということを考えると、禁術指定の過去があると言って止めてしまうのは寂しいです。平和にこうやって使えるということはアピールしていいことだと思います。良いものは良いとして生かす方が喜ばしいことです」
この援護に紅葉は嬉しそうにミオレスカを見た。
「そうですよ! 食料事情が良くなることはエトファリカの為ですし、広がればクリムゾンウェスト全体の幸せです」
アシェ-ルが拳を握りしめる。
「私は猟撃士として狩りをすることもありますが、野菜は育てるしかないのです。農業は必要ですし、この機械が生かせれば開拓しやすいです。……動作の理屈をおぼえれば、耕運機と運搬機の機能を併せ持ったモノだってできるかもしれません」
他のハンターたちもうなりながらうなずく。
「使っているうちに構造の術式だって調べられるんじゃないか?」
「仕組みが分からないでやると危険ですよ」
ザレムとエルバッハがこっそり会話をしている、第六商会の中で話すことではないが。
紅葉の耳に届き、その手があったというような表情をして、光頼にたしなめられる。
「私が推すのは耕運機です。暴走という点を考えると、手押し型が小型で何かあっても対処しやすいのかと思います」
「ぼ、暴走ですか?」
ミオレスカの言葉に紅葉が震える。
「機械にはつきものです。あ、紅葉さん、頻繁にならないですから」
「すみません。機械に興味はあってもどこか苦手意識があるんですね……きっと」
「いえ、でも、これから勉強をすればいいんです。私だって刻令術がどんなものかというのはこれからです」
ミオレスカの柔らかい笑顔に紅葉も微笑む。
「紅葉殿は覚える気があるわけでどうにかできるのだろう?」
白亜には紅葉が農作業をしているイメージが湧かないが、あれこれ弄繰り回しているイメージはある。研究と言う名のもとに。
「さて、ボクたちのプレゼンは終わった……気付けばそうなっていたが……さて、紅葉はどうする?」
「どれもお勧めです! 農業をやるには重要です」
フランは指し示し、アシェ-ルは両手を広げ決断を促す。
職員がそろりそろりと近寄ってくる、契約の時がやってきたのだと悟ったのだった。
●うめく
「決まりませんっ!」
紅葉は叫んだ。
ハンターたちは顔を見合わせ、職員がこけた。
「水やり器はいりません」
広大というほどの土地ではなく、水やりは比較的しやすい。理由ははっきりしている。
「選択肢は減りましたよ?」
アシェ-ルは後一息と言う。
「……技術者になればっ」
「だから、それは駄目だって言っているしょう!」
光頼が紅葉をしかりつつ、なだめる。現実を考えれば、素質がありそうな誰かを派遣するべきであるのだ。
「……リースって言う手もあるはずだ」
ザレムはリースについての説明をした。使用料を払い、相手がメンテナンス等をチェックに来る、簡単に言うとそうなる。そして、新しいモデルが出た場合、交換も早い。
職員は「それも一つの手です」と認めた。
紅葉は「買う」しか頭になかったので選択肢が広がってしまった。
「エトファリカの大地を耕す、第六商会の刻令術の農具……グラズヘイムとは異なる地形も多そうだが?」
「そうなると大きな実験になるんですよね? もし、ここで紅葉さんがリースなり買い上げをした場合、第六商会にいい面も多いのでは?」
フランとエルバッハは紅葉への決断を迫るよりも、職員への「おまけしてくれるとこの人、二つ買って行ったり借りて行くよ」という響きとなる。
「東方で紅葉さんのおうちが使えば、デモンストレーションと実証実験にもなりますよ? エトファリカの大地で開墾が進み、復興も進む……欲しがる人が増えるかもしれません」
アシェ-ルも第六商会の職員にぐぐっと迫った。
「実証実験とはいっても、別に第六商会がつきっきりでなくとも、紅葉殿に頼めばきんとしたレポートがくるはずだ」
白亜の視線に紅葉はうなずく。
ハンターたちの言葉を要約すると「モニターをするからまけてよ」ということ。
ここで足りないのは紅葉の熱意なのである。まだ迷っている、買うかリースかどっちにするか。
「……運搬機の空の荷台に耕運機乗せれば移動が楽ではありませんか?」
ミオレスカがつつぶやく。荷台まで高さはあるが、丈夫な板を斜めに掛ければ押して載せられないこともない。
「あっ……」
紅葉が目を輝かせた。
光頼の目が「なぜ、それを言ってしまったのですか」とミオレスカに言っているようだった。すでに手遅れなのは紅葉の様子から明らかである。
さて、交渉のカードは出そろった。
紅葉と職員は勝負に出る。
「耕運機と運搬機をリースしますっ! それと、これがエトファリカにおける実験になるというなら、場所の提供、協力者探しなど協力いたします。ぜひ、おまけもください」
すがすがしいくらい直球だった。
職員は黙った、二瞬考える。紅葉の味方に付いているハンターの視線も突き刺さる。適正な判断だをしないと第六商会の名が廃る。
「決定権がある上司と相談……いえ、分かりましたっ、細かな条件は詰めましょう、こちらへ」
職員と紅葉はがっしりと手を握った。
「紅葉さん、よろしければおつきあいしましょうか?」
エルバッハの言葉に紅葉はうなずいた。
そして、互いに条件を付き合わせ、ハンターの立会いの下契約はなった。
その後、機械の使い方の説明を受け、実際に触ってみる。
後日、大江家は第六商会からの荷物を受け取った、耕運機と運搬機を。
猫の額程度の大江家の菜園では耕運機だけで良かったようだが、他の畑に行くのには両方役に立つ。
光頼の日記はそっけないが、紅葉の笑顔がまぶしかったと記されていた。
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相談卓 フラン・レンナルツ(ka0170) 人間(リアルブルー)|23才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2016/02/04 05:33:53 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/02/04 05:31:56 |