ゲスト
(ka0000)
チョコを貰えない?嘆きの泥鬼雑魔、現る!
マスター:星群彩佳

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/02/09 12:00
- 完成日
- 2016/02/20 13:40
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
十歳ながら貴族の仕事をこなしているルサリィ・ウィクトーリア(kz0133)は、仕事部屋で報告書を見て顔をしかめる。
「今年のカカオ豆不足には困ったものね。バレンタインデーが近付くにつれて、女性よりも男性の悲鳴が強く聞こえてくるようだわ」
「ええ。ですが今、ハンターの方達が頑張っておられますから、現状が回復するまで大人しく待ちましょう」
メイドのフェイト・アルテミス(kz0134)はジンジャーアップルティーを淹れたカップを、ルサリィの仕事机の上に静かに置いた。
「まっ、そうね。後は……ああ、パワーストーンのローズクォーツが採集できていた鉱山、とうとう閉めることになったの」
「はい。すでに石が採れなくなってしばらく経ちますし、現場監督が恐らくもうこれ以上は出ないだろうとのことでしたので。二月に向けて、大分採集できましたので充分かと」
「ローズクォーツの石言葉は『恋愛成就』、バレンタインにピッタリなパワーストーンだから、かなり売れるのよね。鉱山はこれから閉めるの?」
己の主であるルサリィの質問に、秘書のフェイトは顔色を悪くする。
「……それがですね、ルサリィお嬢様。大変申し上げにくいことが起きておりまして……」
「へっ?」
今度閉めることになったローズクォーツの鉱山は、昔からとても良質な石がたくさん採れていた。
その地域には東方からの移住者が多く、地元の人々は山の中腹に石を祀る神社を建てた。
大きなローズクォーツをご神体として置き、恋愛成就の神社にしたのだ。
そして恋愛成就を願う人々は神社へお参りに来ては、地元で採れたローズクォーツをお守りとして購入していく。
こうしてその土地は潤ってきたのだが、近年では石不足になってしまい、客足も遠のいている。
本来なら今の季節は女性達が恋愛成就を願って神社に訪れるのだが、今年は「義理でも良いからチョコが欲しい!」と願う男性が多いらしい。
「ふっふーん……。でも別に参拝客の種類が変わっただけで、人々が訪れているなら良いんじゃないの?」
「ところが、です。長年神社の神主をやっていらっしゃる方が、山から異様な気配を感じ取るようになったらしいです」
神社は代々女性が神主を務めており、直感能力が優れている。彼女が言うところによると、異様な気配を感じ取るようになったのは、石が鉱山から採れなくなってきた頃と、バレンタインに切実な願いを持つ男性達が訪れてきた時期が、ほぼ一致するらしい。
「恐らく……ですが、参拝客の中には男性ハンターもいらっしゃったのでしょう。その為、マテリアルが異常な変化を起こしている可能性があるようなのです」
フェイトの説明を聞き、ルサリィは飲みかけたお茶を軽くふき出す。
どうやら『パワーストーンが採れた鉱山を閉める』・『恋愛成就の神社』・『マテリアル』という三拍子が揃ってしまったことにより、事態が悪い方向へ行っている気がする。
「ルサリィお嬢様ぁ、フェイト先輩ぃ! 大変です!」
そこへいきなり平メイドのエルサが、真っ青な顔で部屋に入ってきた。
「ローズクォーツが採れていた山から、雑魔が発生したとの連絡がございました!」
「何ですって!?」
「お嬢様っ、大至急外出の準備をいたします!」
――かつてローズクォーツがたくさん採れていた山には、異形の雑魔が誕生した。
例の三拍子が揃ってしまったことにより誕生した雑魔は、一見はチョコレート色の鬼の形をしている。全長は三メートルほどあり、二つ眼は炎のように赤く輝いていた。
恐ろしい形相と姿をしているものの、大きく開いた口から出る言葉は……。
『うおぉーんっ! カカオ豆不足とはどういうことだぁ! 義理チョコどころか、自分チョコすら買えないとは悲しすぎるぅ!』
――と、情けない男の叫びばかり出てくる。
「……何あの、雑魔」
「バレンタインへの嘆きが、鬼の形として実体化したのでしょうね」
遠くから鬼型の雑魔を見たルサリィとフェイトは、何とも言えない複雑な表情を浮かべる。
しかし言っていることはアレでも、雑魔は雑魔。よりにもよってパワーストーンが採集できた土地の力を身に付けており、その体は主に土でできているようだ。動けばビチャビチャと泥を出し、その泥が地面の土と合わさると別の雑魔が誕生する。
新たに生まれた雑魔は一メートルほどの大きさしかないものの、それでも数はかなり多い。
『こうなれば……このまま店へ行き、チョコレートを強奪してやる!』
「またとんでもなく物騒なことを言い出したわね」
「しかも土地の力を使って、どんどん雑魔を増やしております。ここはすぐに、ハンター達に依頼をしましょう」
「そうね。現在残っているチョコレートが泥だらけになったら、それこそ悲惨だし。ハンター達にはこっちのチョコレートも守ってもらいましょう」
「今年のカカオ豆不足には困ったものね。バレンタインデーが近付くにつれて、女性よりも男性の悲鳴が強く聞こえてくるようだわ」
「ええ。ですが今、ハンターの方達が頑張っておられますから、現状が回復するまで大人しく待ちましょう」
メイドのフェイト・アルテミス(kz0134)はジンジャーアップルティーを淹れたカップを、ルサリィの仕事机の上に静かに置いた。
「まっ、そうね。後は……ああ、パワーストーンのローズクォーツが採集できていた鉱山、とうとう閉めることになったの」
「はい。すでに石が採れなくなってしばらく経ちますし、現場監督が恐らくもうこれ以上は出ないだろうとのことでしたので。二月に向けて、大分採集できましたので充分かと」
「ローズクォーツの石言葉は『恋愛成就』、バレンタインにピッタリなパワーストーンだから、かなり売れるのよね。鉱山はこれから閉めるの?」
己の主であるルサリィの質問に、秘書のフェイトは顔色を悪くする。
「……それがですね、ルサリィお嬢様。大変申し上げにくいことが起きておりまして……」
「へっ?」
今度閉めることになったローズクォーツの鉱山は、昔からとても良質な石がたくさん採れていた。
その地域には東方からの移住者が多く、地元の人々は山の中腹に石を祀る神社を建てた。
大きなローズクォーツをご神体として置き、恋愛成就の神社にしたのだ。
そして恋愛成就を願う人々は神社へお参りに来ては、地元で採れたローズクォーツをお守りとして購入していく。
こうしてその土地は潤ってきたのだが、近年では石不足になってしまい、客足も遠のいている。
本来なら今の季節は女性達が恋愛成就を願って神社に訪れるのだが、今年は「義理でも良いからチョコが欲しい!」と願う男性が多いらしい。
「ふっふーん……。でも別に参拝客の種類が変わっただけで、人々が訪れているなら良いんじゃないの?」
「ところが、です。長年神社の神主をやっていらっしゃる方が、山から異様な気配を感じ取るようになったらしいです」
神社は代々女性が神主を務めており、直感能力が優れている。彼女が言うところによると、異様な気配を感じ取るようになったのは、石が鉱山から採れなくなってきた頃と、バレンタインに切実な願いを持つ男性達が訪れてきた時期が、ほぼ一致するらしい。
「恐らく……ですが、参拝客の中には男性ハンターもいらっしゃったのでしょう。その為、マテリアルが異常な変化を起こしている可能性があるようなのです」
フェイトの説明を聞き、ルサリィは飲みかけたお茶を軽くふき出す。
どうやら『パワーストーンが採れた鉱山を閉める』・『恋愛成就の神社』・『マテリアル』という三拍子が揃ってしまったことにより、事態が悪い方向へ行っている気がする。
「ルサリィお嬢様ぁ、フェイト先輩ぃ! 大変です!」
そこへいきなり平メイドのエルサが、真っ青な顔で部屋に入ってきた。
「ローズクォーツが採れていた山から、雑魔が発生したとの連絡がございました!」
「何ですって!?」
「お嬢様っ、大至急外出の準備をいたします!」
――かつてローズクォーツがたくさん採れていた山には、異形の雑魔が誕生した。
例の三拍子が揃ってしまったことにより誕生した雑魔は、一見はチョコレート色の鬼の形をしている。全長は三メートルほどあり、二つ眼は炎のように赤く輝いていた。
恐ろしい形相と姿をしているものの、大きく開いた口から出る言葉は……。
『うおぉーんっ! カカオ豆不足とはどういうことだぁ! 義理チョコどころか、自分チョコすら買えないとは悲しすぎるぅ!』
――と、情けない男の叫びばかり出てくる。
「……何あの、雑魔」
「バレンタインへの嘆きが、鬼の形として実体化したのでしょうね」
遠くから鬼型の雑魔を見たルサリィとフェイトは、何とも言えない複雑な表情を浮かべる。
しかし言っていることはアレでも、雑魔は雑魔。よりにもよってパワーストーンが採集できた土地の力を身に付けており、その体は主に土でできているようだ。動けばビチャビチャと泥を出し、その泥が地面の土と合わさると別の雑魔が誕生する。
新たに生まれた雑魔は一メートルほどの大きさしかないものの、それでも数はかなり多い。
『こうなれば……このまま店へ行き、チョコレートを強奪してやる!』
「またとんでもなく物騒なことを言い出したわね」
「しかも土地の力を使って、どんどん雑魔を増やしております。ここはすぐに、ハンター達に依頼をしましょう」
「そうね。現在残っているチョコレートが泥だらけになったら、それこそ悲惨だし。ハンター達にはこっちのチョコレートも守ってもらいましょう」
リプレイ本文
●ハンターVS泥鬼雑魔!
かつてパワーストーンのローズクォーツの採掘場であった山に、六人のハンター達が集まった。
――が、泥鬼雑魔を見た反応は様々だ。
「……『想いが力になる』と言うのはよく聞く言葉だが、こんな想いが力を得て、形になってどーするよ?」
太刀「鬼斬丸」を手に持つ龍崎・カズマ(ka0178)は、複雑な面持ちで呟く。
太刀「鬼神大王」と太刀「鬼斬丸」を腰に差したヴァイス(ka0364)は、苦笑を浮かべながら肩を竦める。
「まっ、あの雑魔の誕生のきっかけはともかく、増殖するタイプは厄介だ。言っていることとやろうとしていることはアレだが、油断せずに戦おう」
アシェ-ル(ka2983)は持ってきたチョコ餅を手に持ち、雑魔と交互に見た。
「チョコレートを欲しているのならば、このチョコ餅をあげれば落ち着きますかね?」
その言葉を聞いて、ソフィア・フォーサイス(ka5463)は手に持っていた太刀「鬼神大王」を腰に差して、代わりにチョコレートを手に持つ。
「それで倒せるのなら、このチョコレートをあげても良いけど……」
「それは無理だろう。バレンタインにチョコを貰えぬ男達の嘆きは尊いものだが、人々に迷惑をかける行為は見過ごすことはできない。ここはスッパリ倒す方が良いだろう」
太刀「鬼神大王」を鞘から引き抜いた五光 除夜(ka4323)は、スッパリと決断をする。
万歳丸(ka5665)は音撃金棒を肩に担ぎながら、持参したプレミアムチョコレートを見て首を傾げた。
「チョコレートが欲しかったら、自分で買えば良いと思うんだが……。まっ、何はともあれ、雑魔は倒すべきだな」
「それでは後方支援の私がみなさんの武器にアクティブスキルのファイアエンチャントを、身体の方にはウィンドガストをかけますね。ファイアエンチャントは武器に火属性を与えまして、ウィンドガストは回避能力を上昇させます。効果時間は3ラウンドまでですが、戦いやすくなると思いますよ。愛の力ではありませんが、炎の力を与えますね」
アシェールは自分以外の五人に、それぞれアクティブスキルをかけていく。
「では先陣を切る私と万歳丸は、攻撃力を高めるアクティブスキルの攻性強化をかけておこう。本体を倒す前に、子雑魔達と戦わなければならないからな」
除夜は自分と万歳丸にアクティブスキルをかけて、仲間達の前に出る。
「二人とも、気を付けてくれ。何せ周囲には、ヤツの材料がふんだんにあるんだからな」
険しい表情のカズマの眼に映るのは、自然そのままの山の姿だ。
ルサリィが言うには、昔からローズクォーツを馬車で運ぶほどしか道は整備されてなく、いわゆる土道になっている。足場になるのは岩の上か、木の上しかない。
「まあ幸いと言うか、岩はでかいし木もそこら辺にたくさんある。とりあえず出来るだけ、地面に足をつけないようにな」
ヴァイスも周辺を見回しながら、二本の太刀を引き抜く。
「子雑魔達は私達に任せてください。千人斬りのカウントに加える為にも、どんどん斬っちゃいますから」
クスクスと笑いながら、ソフィアも太刀を引き抜いた。
「そんじゃあヤッちまうか! 覇亜亜亜亜ッ!」
万歳丸は勢い良く走り出し、一体の子雑魔に向かって音撃金棒を振り上げる。
「テメェみてぇな軟弱な鬼の子には、コイツだっ! 『鬼に音撃金棒』ってな!」
武器を頭から叩き付けられた子雑魔は、ただの土に戻った。
「ふぅん……、随分とアッサリ倒せるんだな。んじゃ、こっちの攻撃はどうだ?」
万歳丸は音撃金棒を背負うと、バトラー・グローブでアクティブスキルの黄金掌《蒼麒麟》を発動させる。
「吹っ飛びなァ!」
攻撃の直線上にいた子雑魔達は攻撃を受けて何体かは消滅したものの、それでも数体は欠けた身体がすぐに元通りになり復活した。そして万歳丸へ向かって、数多くの泥団子を投げてくる。
「チッ。やっぱ『追儺の儀』のアイテムじゃなきゃ、一気に全滅は無理か」
飛んでくる泥団子を身軽な動きで避けながら、万歳丸は再び音撃金棒を握った。
万歳丸と共に前線で戦う除夜は、子雑魔の多さを見て眼をつり上げる。
「しかしこの雑魔の色……、土と言うより本物のチョコレート色だな。まったく、趣味の悪い……。だが調子に乗るのもここまでだっ!」
子雑魔が口から泥を吐きかけてくる攻撃を避けながらも、確実に太刀で斬っていく。
カズマはアクティブスキルのランアウトで移動力を上げながら太刀で子雑魔を斬っていたが、ふとある事に気付く。
「子雑魔を斬ると、何かキラキラした物が舞っているな。……何だコレは?」
土に戻った子雑魔の残骸を見ていたカズマは、一センチほどの薄いピンク色の石を発見して、指で摘まみ上げた。そして後ろに下がり、アシェールの所へ向かう。
アシェールは大きな岩の上に立ち、主武器のネレイスワンドにアクティブスキルの炎槍をかけて、近付いてきた子雑魔に攻撃する。
「私が戦えないコだと思ったら、大間違いですよ! 泥ごときが私に触れようなどと、思わないことです!」
攻撃が子雑魔の身体を貫くと、ボンッと音を立てながら爆発した。
「ぶはっ!? たっ倒せたのは良いですけど、泥が土になって飛び散るとは思いませんでした~。げほっ、ごほっ」
炎の熱によって泥鬼雑魔の中の水が蒸発した為に、乾いた土となって爆発したようだ。
「アシェール、大丈夫か? ちょっと聞きたいことがあるんだが……」
「あっ、はい。何でしょう?」
カズマは倒した子雑魔から出てきたピンク色の石を、アシェールに渡す。
「コレは倒した子雑魔から出てきた物だ。何だと思う?」
「えぇっと……、かなり色が薄いですけど、多分ローズクォーツだと思います。お店で売られているローズクォーツはもっと色が濃い物が人気のようですし、コレは売り物にならないと判断されて捨てられた石じゃないでしょうか?」
「じゃあコレが子雑魔の中から出てきたということは……」
カズマから受け取ったローズクォーツを見ながら説明していたアシェールは、引きつった笑みを浮かべる。
「恐らくですが、この山の採掘が終わっているということは、残っているローズクォーツは全て廃棄物となります。……もしかしたら、コレが雑魔の核になっているのかもしれませんね」
「んなっ!?」
驚愕の事実を知ったカズマはアシェールに背を向けると、急いで戦っている仲間達の所へ戻った。
「雑魔はローズクォーツを核として存在している! 身体の中にあるローズクォーツを破壊するんだっ!」
「みっ皆さん、頑張ってください!」
カズマとアシェールの言葉を聞いたヴァイスは、困り顔になって思わず気がそれる。
「マジかよ? うおっ、あぶねっ!」
足元の土が突然泥と化した為に、滑って体勢を崩す。しかしすぐに整えて、向かって来た二体の子雑魔をアクティブスキルの二刀流にて斬った。
しかしヴァイスの背後から一体の子雑魔が静かに近付いて来たものの、すぐさまソフィアが駆け付けてアクティブスキルの疾風剣で倒す。
「こんな泥の塊じゃなくて、大きなローズクォーツを見たかったです」
「ありがとさん。まあ男の俺にはパワーストーンと言えど石でしかないが、とりあえず雑魔の中から見つかったモンは使えそうにねーな」
「非常に残念です」
二人は背中を合わせながら、こちらに向かってくる子雑魔達を睨み付ける。
そしてヴァイスはアクティブスキルの旋風を、ソフィアはアクティブスキルの電光石火にて、子雑魔達を倒した。
ソフィアは太刀を見ながら、ふむ……と考える。
「どうやら核がある位置は、子雑魔によって違うようですね。子雑魔の斬り応えが、まちまちです」
「だが『追儺の儀』のアイテムは、核に攻撃を確実に当てられるようだぜ。どんな仕組みなのかは分からねーが、本体の中にある核をぶっ壊さないとな!」
――ハンター達が子雑魔達を倒し続けていくうちに、やがて本体の巨大泥鬼雑魔が敵の存在に気付いた。
『むっ。敵の気配がする』
呟いた本体は地面に手を付くと、自分にそっくりな巨大泥鬼雑魔を二体作り出す。
『だが邪魔はさせん!』
本体と分身二体が突然、ハンター達へ向けて口から大量の泥を吐き出した。
間一髪避けた万歳丸は、忌々しげに巨大泥鬼雑魔達を見上げる。
「……ったく、性根も姿もドロドロしてやがる。俺が叩き崩してやるよ!」
音撃金棒を握り締めて、万歳丸は巨大泥鬼雑魔を一体、攻撃した。
その雑魔は攻撃を受けると身体の形を崩していくも、しかし残りの雑魔達がまだ存在していることから、倒したのは分身の方だったようだ。
「くそっ。本体の核を持つヤツを見つけねェと、キリがねェぜ」
平たい岩の上に着地した万歳丸を狙ってきた子雑魔を、カズマがアクティブスキルのアサルトディスタンスで倒す。
「本体にしかない特徴があれば良いんだがな。俺の眼にはどれも同じに見える」
「同感だ。しかも子雑魔がどんどん増えているぜ。早く本体を見つけないと、こちらの体力が切れる」
ヴァイスはアクティブスキルのカウンターアタックで子雑魔を倒した後、二人と合流する。
しかし三人の男性ハンターがそろった時だった――。
『むむっ! 若い……男達、……イケメンは敵だあああ!』
――と、二体の巨大泥鬼雑魔が突如殺意を膨らませて、三人へ向けて数多くの泥団子を投げてきたのだ。
「おいおいっ!」
「突然何なんだ?」
「男に反応するとは、どういうことだ!」
三人は慌てながらも、雨のように降ってくる泥団子を何とか避けていく。
一方でほったらかしにされた三人の女性ハンターはポカーンとしていたが、除夜がいち早く我に返る。
「ハッ!? 三人には悪いが、今が好機!」
除夜は太刀を鞘に入れて腰に差すと、代わりにナックル「ヴァリアブル・デバイド」を装着した。そしてアクティブスキルのアルケミックパワーを発動させて、一体の巨大泥鬼雑魔に素早く近付くとエレクトリックショックにて攻撃する。
「雷の力、受けてみよ!」
巨大泥鬼雑魔の身体に雷の光が走り、轟音が響くものの、焦がしただけで倒すまでにはいかない。
『くははっ! 生温いわっ!』
「――だがテメェの隙はできた」
巨大泥鬼雑魔の視線が三人からそれた瞬間、ヴァイスが二刀流にて焦げた身体を斬り裂いた。
「残りはおまえだけだ」
『ふんっ! こしゃくな!』
カズマはアクティブスキルの斬牙を発動して、残り一体の巨大泥鬼雑魔に斬りかかったが、気付かれてしまったせいで足元の土が泥化してしまう。
「くっ……!」
それでも足に力を込めて飛び上がり、巨大泥鬼雑魔の腹から胸へかけて斜めに斬り上げた。すると斬り裂かれた胸の部分から、大きなピンク色の石の一面が現れる。
「万歳丸っ! 後は頼んだぞ!」
「おうよ! 羅羅羅羅羅ァ!」
万歳丸は地面を強く蹴り上げて、巨大泥鬼雑魔の中にあるローズクォーツへ向けて音撃金棒を振り下げた――。
○戦いは終わり……
『ふっ、ははは……。これで……終わったと、思うなよ。来年、また会おうぞ……』
「うるせぇ」
地面に仰向けに倒れた巨大泥鬼雑魔の頭を、万歳丸は踏みつける。
巨大泥鬼雑魔の核であるローズクォーツは粉々に破壊されて、その身体は塵と化していた。本体を倒したことにより、次々と子雑魔達も消滅していく。
「はわわっ……! 本体の核のローズクォーツが、まさか神社のご神体だったとは……」
除夜は壊れた神社を見て、顔色が真っ青になっていた。
くしくも本体を倒した場所の近くには恋愛成就の神社があったのだが、既に雑魔によって破壊された後だ。
「しかしこの破壊跡を見ると、雑魔が発生したのはここなのだろうか?」
「かもしれねぇな。この山にはいろいろな雑念が膨れ上がっていただろうし」
除夜と同じく神社を見ているカズマとヴァイスは、冷静に今回の一件の原因を分析する。
そして滅びゆく巨大泥鬼雑魔の近くに、アシェールはチョコ餅を、ソフィアはチョコレートをそっ……と供えた。
「バレンタインに女性からチョコレートを貰えないだけで、こんな姿になるなんて……。せめてもの、お供えです」
「とりあえずコレで成仏してください」
『おおぅ……、嬉し、い……。感謝、する……』
巨大泥鬼雑魔は涙を流しながらも嬉しそうに微笑み、完全に消滅する。
二人は両手を合わせた後、立ち上がって仲間達の所へ行く。三人の男性に、アシェールは二箱のチョコ餅を開けて見せて、ソフィアは三枚のチョコレートを差し出す。
「カズマさん、ヴァイスさん、万歳丸さん、どうぞ。あの巨大泥鬼雑魔は『イケメンは敵』と言っていましたが、この世界には『残念イケメン』という言葉がありますからね」
「イケメン全員がチョコを貰えるとは限りませんし。私のチョコレートも、一枚ずつ差し上げます。残り一枚は女性三人で分けて食べるので、じっくり味わってください」
何かが引っかかる言い方をする二人の女性からチョコレートを差し出されて、三人は微妙な顔付きをしながら手を伸ばした。
「……ありがとう」
「まっ、ありがたく頂くぜ」
「オレはチョコレートを食べるのは、生まれてはじめてだ。どれ……むっ!? 口の中に広がる甘さとカカオの香り、そしてほんのり感じる苦味がたまんねぇ! きっとオレが持っているプレミアムチョコレートも美味いんだろうな。ふっ……。チョコレートを欲したアイツの気持ち、少しは理解できたな」
「「それはちょっと意味が違う」」
万歳丸はカズマとヴァイスから冷静にツッコまれたものの、意味が分からず首を傾げる。
その間にソフィアはチョコレートを三つに割り、一つをアシェールに渡して、もう一つを除夜に渡しに行く。しかしソフィアは破壊された神社を再び見て、残念そうにため息を吐いた。
「はあ……。ここのローズクォーツ、欲しかったです。お土産としてお姉ちゃんにあげたら、きっと喜んでくれたでしょう……」
「ああ、ローズクォーツなら麓にあるお店で買えるよ。この神社はあくまでもお参りする所であって、お守りやお土産のローズクォーツは麓のお店で売っていると聞いたから」
「除夜さん、ホントですか? ならそこで、お姉ちゃんとお揃いのを買うことにします♪」
――戦闘後のハンター達の反応もまた、様々だった。
その後、破壊された神社はご神体を失ったことにより、こじんまりとした神社を地元の人々が建てた。
そして六人のハンターには、クリムゾンウェストに残っていたチョコレートを守ってもらった礼として、バレンタインにルサリィ個人からザッハトルテが贈られる。なのでハンター達は、甘いバレンタインデーを過ごすことができた……らしい。
<終わり>
かつてパワーストーンのローズクォーツの採掘場であった山に、六人のハンター達が集まった。
――が、泥鬼雑魔を見た反応は様々だ。
「……『想いが力になる』と言うのはよく聞く言葉だが、こんな想いが力を得て、形になってどーするよ?」
太刀「鬼斬丸」を手に持つ龍崎・カズマ(ka0178)は、複雑な面持ちで呟く。
太刀「鬼神大王」と太刀「鬼斬丸」を腰に差したヴァイス(ka0364)は、苦笑を浮かべながら肩を竦める。
「まっ、あの雑魔の誕生のきっかけはともかく、増殖するタイプは厄介だ。言っていることとやろうとしていることはアレだが、油断せずに戦おう」
アシェ-ル(ka2983)は持ってきたチョコ餅を手に持ち、雑魔と交互に見た。
「チョコレートを欲しているのならば、このチョコ餅をあげれば落ち着きますかね?」
その言葉を聞いて、ソフィア・フォーサイス(ka5463)は手に持っていた太刀「鬼神大王」を腰に差して、代わりにチョコレートを手に持つ。
「それで倒せるのなら、このチョコレートをあげても良いけど……」
「それは無理だろう。バレンタインにチョコを貰えぬ男達の嘆きは尊いものだが、人々に迷惑をかける行為は見過ごすことはできない。ここはスッパリ倒す方が良いだろう」
太刀「鬼神大王」を鞘から引き抜いた五光 除夜(ka4323)は、スッパリと決断をする。
万歳丸(ka5665)は音撃金棒を肩に担ぎながら、持参したプレミアムチョコレートを見て首を傾げた。
「チョコレートが欲しかったら、自分で買えば良いと思うんだが……。まっ、何はともあれ、雑魔は倒すべきだな」
「それでは後方支援の私がみなさんの武器にアクティブスキルのファイアエンチャントを、身体の方にはウィンドガストをかけますね。ファイアエンチャントは武器に火属性を与えまして、ウィンドガストは回避能力を上昇させます。効果時間は3ラウンドまでですが、戦いやすくなると思いますよ。愛の力ではありませんが、炎の力を与えますね」
アシェールは自分以外の五人に、それぞれアクティブスキルをかけていく。
「では先陣を切る私と万歳丸は、攻撃力を高めるアクティブスキルの攻性強化をかけておこう。本体を倒す前に、子雑魔達と戦わなければならないからな」
除夜は自分と万歳丸にアクティブスキルをかけて、仲間達の前に出る。
「二人とも、気を付けてくれ。何せ周囲には、ヤツの材料がふんだんにあるんだからな」
険しい表情のカズマの眼に映るのは、自然そのままの山の姿だ。
ルサリィが言うには、昔からローズクォーツを馬車で運ぶほどしか道は整備されてなく、いわゆる土道になっている。足場になるのは岩の上か、木の上しかない。
「まあ幸いと言うか、岩はでかいし木もそこら辺にたくさんある。とりあえず出来るだけ、地面に足をつけないようにな」
ヴァイスも周辺を見回しながら、二本の太刀を引き抜く。
「子雑魔達は私達に任せてください。千人斬りのカウントに加える為にも、どんどん斬っちゃいますから」
クスクスと笑いながら、ソフィアも太刀を引き抜いた。
「そんじゃあヤッちまうか! 覇亜亜亜亜ッ!」
万歳丸は勢い良く走り出し、一体の子雑魔に向かって音撃金棒を振り上げる。
「テメェみてぇな軟弱な鬼の子には、コイツだっ! 『鬼に音撃金棒』ってな!」
武器を頭から叩き付けられた子雑魔は、ただの土に戻った。
「ふぅん……、随分とアッサリ倒せるんだな。んじゃ、こっちの攻撃はどうだ?」
万歳丸は音撃金棒を背負うと、バトラー・グローブでアクティブスキルの黄金掌《蒼麒麟》を発動させる。
「吹っ飛びなァ!」
攻撃の直線上にいた子雑魔達は攻撃を受けて何体かは消滅したものの、それでも数体は欠けた身体がすぐに元通りになり復活した。そして万歳丸へ向かって、数多くの泥団子を投げてくる。
「チッ。やっぱ『追儺の儀』のアイテムじゃなきゃ、一気に全滅は無理か」
飛んでくる泥団子を身軽な動きで避けながら、万歳丸は再び音撃金棒を握った。
万歳丸と共に前線で戦う除夜は、子雑魔の多さを見て眼をつり上げる。
「しかしこの雑魔の色……、土と言うより本物のチョコレート色だな。まったく、趣味の悪い……。だが調子に乗るのもここまでだっ!」
子雑魔が口から泥を吐きかけてくる攻撃を避けながらも、確実に太刀で斬っていく。
カズマはアクティブスキルのランアウトで移動力を上げながら太刀で子雑魔を斬っていたが、ふとある事に気付く。
「子雑魔を斬ると、何かキラキラした物が舞っているな。……何だコレは?」
土に戻った子雑魔の残骸を見ていたカズマは、一センチほどの薄いピンク色の石を発見して、指で摘まみ上げた。そして後ろに下がり、アシェールの所へ向かう。
アシェールは大きな岩の上に立ち、主武器のネレイスワンドにアクティブスキルの炎槍をかけて、近付いてきた子雑魔に攻撃する。
「私が戦えないコだと思ったら、大間違いですよ! 泥ごときが私に触れようなどと、思わないことです!」
攻撃が子雑魔の身体を貫くと、ボンッと音を立てながら爆発した。
「ぶはっ!? たっ倒せたのは良いですけど、泥が土になって飛び散るとは思いませんでした~。げほっ、ごほっ」
炎の熱によって泥鬼雑魔の中の水が蒸発した為に、乾いた土となって爆発したようだ。
「アシェール、大丈夫か? ちょっと聞きたいことがあるんだが……」
「あっ、はい。何でしょう?」
カズマは倒した子雑魔から出てきたピンク色の石を、アシェールに渡す。
「コレは倒した子雑魔から出てきた物だ。何だと思う?」
「えぇっと……、かなり色が薄いですけど、多分ローズクォーツだと思います。お店で売られているローズクォーツはもっと色が濃い物が人気のようですし、コレは売り物にならないと判断されて捨てられた石じゃないでしょうか?」
「じゃあコレが子雑魔の中から出てきたということは……」
カズマから受け取ったローズクォーツを見ながら説明していたアシェールは、引きつった笑みを浮かべる。
「恐らくですが、この山の採掘が終わっているということは、残っているローズクォーツは全て廃棄物となります。……もしかしたら、コレが雑魔の核になっているのかもしれませんね」
「んなっ!?」
驚愕の事実を知ったカズマはアシェールに背を向けると、急いで戦っている仲間達の所へ戻った。
「雑魔はローズクォーツを核として存在している! 身体の中にあるローズクォーツを破壊するんだっ!」
「みっ皆さん、頑張ってください!」
カズマとアシェールの言葉を聞いたヴァイスは、困り顔になって思わず気がそれる。
「マジかよ? うおっ、あぶねっ!」
足元の土が突然泥と化した為に、滑って体勢を崩す。しかしすぐに整えて、向かって来た二体の子雑魔をアクティブスキルの二刀流にて斬った。
しかしヴァイスの背後から一体の子雑魔が静かに近付いて来たものの、すぐさまソフィアが駆け付けてアクティブスキルの疾風剣で倒す。
「こんな泥の塊じゃなくて、大きなローズクォーツを見たかったです」
「ありがとさん。まあ男の俺にはパワーストーンと言えど石でしかないが、とりあえず雑魔の中から見つかったモンは使えそうにねーな」
「非常に残念です」
二人は背中を合わせながら、こちらに向かってくる子雑魔達を睨み付ける。
そしてヴァイスはアクティブスキルの旋風を、ソフィアはアクティブスキルの電光石火にて、子雑魔達を倒した。
ソフィアは太刀を見ながら、ふむ……と考える。
「どうやら核がある位置は、子雑魔によって違うようですね。子雑魔の斬り応えが、まちまちです」
「だが『追儺の儀』のアイテムは、核に攻撃を確実に当てられるようだぜ。どんな仕組みなのかは分からねーが、本体の中にある核をぶっ壊さないとな!」
――ハンター達が子雑魔達を倒し続けていくうちに、やがて本体の巨大泥鬼雑魔が敵の存在に気付いた。
『むっ。敵の気配がする』
呟いた本体は地面に手を付くと、自分にそっくりな巨大泥鬼雑魔を二体作り出す。
『だが邪魔はさせん!』
本体と分身二体が突然、ハンター達へ向けて口から大量の泥を吐き出した。
間一髪避けた万歳丸は、忌々しげに巨大泥鬼雑魔達を見上げる。
「……ったく、性根も姿もドロドロしてやがる。俺が叩き崩してやるよ!」
音撃金棒を握り締めて、万歳丸は巨大泥鬼雑魔を一体、攻撃した。
その雑魔は攻撃を受けると身体の形を崩していくも、しかし残りの雑魔達がまだ存在していることから、倒したのは分身の方だったようだ。
「くそっ。本体の核を持つヤツを見つけねェと、キリがねェぜ」
平たい岩の上に着地した万歳丸を狙ってきた子雑魔を、カズマがアクティブスキルのアサルトディスタンスで倒す。
「本体にしかない特徴があれば良いんだがな。俺の眼にはどれも同じに見える」
「同感だ。しかも子雑魔がどんどん増えているぜ。早く本体を見つけないと、こちらの体力が切れる」
ヴァイスはアクティブスキルのカウンターアタックで子雑魔を倒した後、二人と合流する。
しかし三人の男性ハンターがそろった時だった――。
『むむっ! 若い……男達、……イケメンは敵だあああ!』
――と、二体の巨大泥鬼雑魔が突如殺意を膨らませて、三人へ向けて数多くの泥団子を投げてきたのだ。
「おいおいっ!」
「突然何なんだ?」
「男に反応するとは、どういうことだ!」
三人は慌てながらも、雨のように降ってくる泥団子を何とか避けていく。
一方でほったらかしにされた三人の女性ハンターはポカーンとしていたが、除夜がいち早く我に返る。
「ハッ!? 三人には悪いが、今が好機!」
除夜は太刀を鞘に入れて腰に差すと、代わりにナックル「ヴァリアブル・デバイド」を装着した。そしてアクティブスキルのアルケミックパワーを発動させて、一体の巨大泥鬼雑魔に素早く近付くとエレクトリックショックにて攻撃する。
「雷の力、受けてみよ!」
巨大泥鬼雑魔の身体に雷の光が走り、轟音が響くものの、焦がしただけで倒すまでにはいかない。
『くははっ! 生温いわっ!』
「――だがテメェの隙はできた」
巨大泥鬼雑魔の視線が三人からそれた瞬間、ヴァイスが二刀流にて焦げた身体を斬り裂いた。
「残りはおまえだけだ」
『ふんっ! こしゃくな!』
カズマはアクティブスキルの斬牙を発動して、残り一体の巨大泥鬼雑魔に斬りかかったが、気付かれてしまったせいで足元の土が泥化してしまう。
「くっ……!」
それでも足に力を込めて飛び上がり、巨大泥鬼雑魔の腹から胸へかけて斜めに斬り上げた。すると斬り裂かれた胸の部分から、大きなピンク色の石の一面が現れる。
「万歳丸っ! 後は頼んだぞ!」
「おうよ! 羅羅羅羅羅ァ!」
万歳丸は地面を強く蹴り上げて、巨大泥鬼雑魔の中にあるローズクォーツへ向けて音撃金棒を振り下げた――。
○戦いは終わり……
『ふっ、ははは……。これで……終わったと、思うなよ。来年、また会おうぞ……』
「うるせぇ」
地面に仰向けに倒れた巨大泥鬼雑魔の頭を、万歳丸は踏みつける。
巨大泥鬼雑魔の核であるローズクォーツは粉々に破壊されて、その身体は塵と化していた。本体を倒したことにより、次々と子雑魔達も消滅していく。
「はわわっ……! 本体の核のローズクォーツが、まさか神社のご神体だったとは……」
除夜は壊れた神社を見て、顔色が真っ青になっていた。
くしくも本体を倒した場所の近くには恋愛成就の神社があったのだが、既に雑魔によって破壊された後だ。
「しかしこの破壊跡を見ると、雑魔が発生したのはここなのだろうか?」
「かもしれねぇな。この山にはいろいろな雑念が膨れ上がっていただろうし」
除夜と同じく神社を見ているカズマとヴァイスは、冷静に今回の一件の原因を分析する。
そして滅びゆく巨大泥鬼雑魔の近くに、アシェールはチョコ餅を、ソフィアはチョコレートをそっ……と供えた。
「バレンタインに女性からチョコレートを貰えないだけで、こんな姿になるなんて……。せめてもの、お供えです」
「とりあえずコレで成仏してください」
『おおぅ……、嬉し、い……。感謝、する……』
巨大泥鬼雑魔は涙を流しながらも嬉しそうに微笑み、完全に消滅する。
二人は両手を合わせた後、立ち上がって仲間達の所へ行く。三人の男性に、アシェールは二箱のチョコ餅を開けて見せて、ソフィアは三枚のチョコレートを差し出す。
「カズマさん、ヴァイスさん、万歳丸さん、どうぞ。あの巨大泥鬼雑魔は『イケメンは敵』と言っていましたが、この世界には『残念イケメン』という言葉がありますからね」
「イケメン全員がチョコを貰えるとは限りませんし。私のチョコレートも、一枚ずつ差し上げます。残り一枚は女性三人で分けて食べるので、じっくり味わってください」
何かが引っかかる言い方をする二人の女性からチョコレートを差し出されて、三人は微妙な顔付きをしながら手を伸ばした。
「……ありがとう」
「まっ、ありがたく頂くぜ」
「オレはチョコレートを食べるのは、生まれてはじめてだ。どれ……むっ!? 口の中に広がる甘さとカカオの香り、そしてほんのり感じる苦味がたまんねぇ! きっとオレが持っているプレミアムチョコレートも美味いんだろうな。ふっ……。チョコレートを欲したアイツの気持ち、少しは理解できたな」
「「それはちょっと意味が違う」」
万歳丸はカズマとヴァイスから冷静にツッコまれたものの、意味が分からず首を傾げる。
その間にソフィアはチョコレートを三つに割り、一つをアシェールに渡して、もう一つを除夜に渡しに行く。しかしソフィアは破壊された神社を再び見て、残念そうにため息を吐いた。
「はあ……。ここのローズクォーツ、欲しかったです。お土産としてお姉ちゃんにあげたら、きっと喜んでくれたでしょう……」
「ああ、ローズクォーツなら麓にあるお店で買えるよ。この神社はあくまでもお参りする所であって、お守りやお土産のローズクォーツは麓のお店で売っていると聞いたから」
「除夜さん、ホントですか? ならそこで、お姉ちゃんとお揃いのを買うことにします♪」
――戦闘後のハンター達の反応もまた、様々だった。
その後、破壊された神社はご神体を失ったことにより、こじんまりとした神社を地元の人々が建てた。
そして六人のハンターには、クリムゾンウェストに残っていたチョコレートを守ってもらった礼として、バレンタインにルサリィ個人からザッハトルテが贈られる。なのでハンター達は、甘いバレンタインデーを過ごすことができた……らしい。
<終わり>
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/02/07 07:47:08 |
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【相談】 龍崎・カズマ(ka0178) 人間(リアルブルー)|20才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2016/02/08 21:04:27 |