ゲスト
(ka0000)
【闇光】鋼鉄の魂
マスター:鹿野やいと

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/02/16 19:00
- 完成日
- 2016/02/29 08:26
このシナリオは3日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
帝国領フレーベルニンゲン平原。先の大規模作戦では暴食王ハヴァマールとの熾烈な戦いの舞台となった土地である。多数のCAMや魔動アーマーを投入して辛くもハヴァマールを撃退した連合軍であったが、その代償は非常に大きなものであった。平原は戦闘の後が生々しく残されており、死体の回収・埋葬こそ進んだものの、未だ多くの機体が破棄されたままの状態で転がっている。
それもカム・ラディ遺跡の攻略・調査が進む頃、機体の回収作業はようやく進歩を見せた。道路代わりにと平野の土地を馴らし、道の完成と同時にトラックに載せて少しずつ機体を回収していく。
デュミナスに乗り歩哨任務に付くモーリス・ハストン中尉はその様子をカメラで追っていた。狭い操縦席の中、動くものを目で追いかけることだけが唯一の楽しみだった。
モーリスの視線は僚機のデュミナスに移る。同じく回収に来た者達を追っているようだが、ふと別の可能性が頭をよぎった。回収にあたるハンターには女性も居る。しかも美人だ。となると……。
「ロニー、カメラで女のケツを追うな」
「うぇっ!?」
ロニー・エアハート少尉の機体のマイクが、ガタッと何かにぶつかる音を拾う。余程慌てたのか操作のパネルに腕をぶつけたらしい。
「なんでわかったんだよ!?」
「アホ。適当言ったに決まってるだろ」
苦笑してやると自分の迂闊を悟ったのかロニーは沈黙した。それぐらいはモーリスにはすぐわかった。モーリスとロニーはハイスクールから入隊・訓練・配属とずっと同じだ。家族と過ごすより長い時間を一緒に行動している。
女にだらしないプレイボーイのやる事はだいたいわかった。
「いいじゃねえかよ。戦争終わったってのに男所帯に缶詰だぜ」
「良い訳あるか。ベッドの下の美人で我慢しとけ。お行儀よくしてろ」
「飽きるほど見たよ……」
立場上注意する必要があったが彼の気持ちもわからないでもなかった。ロッソ所属の者達の例に漏れず、彼らの生活は激変してしまっている。
最近はまだマシだが、故郷に帰れないという事実は想像以上にストレスになっており、一時期はロニーも荒れてよく揉め事を起こしていた。最近は酒と女に逃げている。あまり褒められたことではないが、揉め事を起こすよりは遥かにマシと見逃している状況だ。
しかしその酒と女も戦争状態の突入で切らしている。
「おい、モーリス。なんか変じゃねえか?」
物思いから意識を取り戻し、我に返って顔をあげると、外の景色はうっすらと靄が掛かっていた。
霧だった。それも妙に濃い。寒気を感じたモーリスは操縦桿に感触を確かめなおした。
「……あれ?」
「どうしたか?」
「何かがセンサーに反応した。なんだ?」
言われてモーリスはセンサーのログを確認する。特に何も見当たらず、モーリスが作業の中止を本隊に提案しようか迷いだした時、不意に衝突音が響いた。
「うおおお!!?」
「ロニー!!」
ロニー機は霧に紛れた何者かに仰向けに引き倒されていた。すぐさまモーリスはCAM備え付けのライトをそちらに向ける。倒れたロニー機の足を、動かなかったはずの魔導アーマーが押さえつけていた。
なぜ動き出したのか。考えるよりも早くモーリスは引き金を引く。30mmライフルの閃光が走り、魔導アーマーの手足の貫く。しかしあるはずの手ごたえはなく、魔導アーマーは手の力を緩めない。
剥き出しのコクピットには人の気配はなく、代わりその背部に等身大のマネキンのような物がへばりついていた。
「歪虚か!!」
元凶を見つけたモーリスはライフルの照準を人形に向ける。
次の瞬間、モーリス機の腕が後背から振られた刃に切り落とされていた。咄嗟に気づいて回避行動を取らなければ、胴体に致命傷を受けただろう。
状況は一瞬にして悪化した。右腕をやられて30mmライフルを取り落とし、残った武器は左手のスパイクシールドと背中のカタナのみ。
モーリスは機体は反転させつつ、後方に居た歪虚化デュミナスから距離を取り、通信のスイッチを入れた。
「エコー1より、HQ! 緊急事態だ!」
「こちらHQ。エコー1、どうした?」
「歪虚化したCAMと魔導アーマーに襲われている!奇襲でエコー2が戦闘不能した。至急救援をよこしてくれ!」
「HQ、了解。直ちに確認する」
会話する間にも歪虚化デュミナスは接近戦を仕掛けてくる。
モーリスは果敢に盾で応戦しながらも、敵の背部や肩部に同じような人形がへばりついているのを確認した。
「HQよりエコー1、本隊より救援は出せない」
「何故だ!!?」
モーリス機は盾で敵を殴り返すが回避される。
盾の下部についたスパイクは武器として有用だがあくまで緊急用。間合いの短さは補いようがなかった。
「現在、他の地区でも同様の事態が発生している。近隣の部隊はそちらに向かった。その地区の周囲に救援に迎える機体はない。
周辺に展開中のハンターに救援を打診した。なんとか持ちこたえてくれ」
「なんとかって……」
通信はそこで途切れる。モーリスは絶望でくじけそうになる心を必死で叱咤した。通信装置が破壊されたのか、ロニーからの返事は途絶えてしまっている。何かが動いているのは見えるが、霧の為にロニー機の動作までは確認できない。
モーリスは汗ばむ手で操縦桿を握りなおす。指先をほぐし、目の前の敵に意識を集中した。
「くそ。俺はこんなところで死なねえぞ。死んでたまるかってんだ!!」
モーリスは吼える。絶望を打ち砕くことこそが軍人の役目だ。怯えに負けてはいけない。モーリス機はスパイクシールドで機体を隠すように構えると、地を蹴って敵のデュミナスに突撃していった。
●
巨人の咆哮が冷たい霧を震わせる。それは外的を威圧する怒りであり、切なる喪失の恐怖であった。
偶さか近くに居た貴方はその叫びを聞いた。
何が出来るのか、などと考える暇も無い。気づけば貴方は駆け出していた。
衝動だけが貴方を動かした。
それもカム・ラディ遺跡の攻略・調査が進む頃、機体の回収作業はようやく進歩を見せた。道路代わりにと平野の土地を馴らし、道の完成と同時にトラックに載せて少しずつ機体を回収していく。
デュミナスに乗り歩哨任務に付くモーリス・ハストン中尉はその様子をカメラで追っていた。狭い操縦席の中、動くものを目で追いかけることだけが唯一の楽しみだった。
モーリスの視線は僚機のデュミナスに移る。同じく回収に来た者達を追っているようだが、ふと別の可能性が頭をよぎった。回収にあたるハンターには女性も居る。しかも美人だ。となると……。
「ロニー、カメラで女のケツを追うな」
「うぇっ!?」
ロニー・エアハート少尉の機体のマイクが、ガタッと何かにぶつかる音を拾う。余程慌てたのか操作のパネルに腕をぶつけたらしい。
「なんでわかったんだよ!?」
「アホ。適当言ったに決まってるだろ」
苦笑してやると自分の迂闊を悟ったのかロニーは沈黙した。それぐらいはモーリスにはすぐわかった。モーリスとロニーはハイスクールから入隊・訓練・配属とずっと同じだ。家族と過ごすより長い時間を一緒に行動している。
女にだらしないプレイボーイのやる事はだいたいわかった。
「いいじゃねえかよ。戦争終わったってのに男所帯に缶詰だぜ」
「良い訳あるか。ベッドの下の美人で我慢しとけ。お行儀よくしてろ」
「飽きるほど見たよ……」
立場上注意する必要があったが彼の気持ちもわからないでもなかった。ロッソ所属の者達の例に漏れず、彼らの生活は激変してしまっている。
最近はまだマシだが、故郷に帰れないという事実は想像以上にストレスになっており、一時期はロニーも荒れてよく揉め事を起こしていた。最近は酒と女に逃げている。あまり褒められたことではないが、揉め事を起こすよりは遥かにマシと見逃している状況だ。
しかしその酒と女も戦争状態の突入で切らしている。
「おい、モーリス。なんか変じゃねえか?」
物思いから意識を取り戻し、我に返って顔をあげると、外の景色はうっすらと靄が掛かっていた。
霧だった。それも妙に濃い。寒気を感じたモーリスは操縦桿に感触を確かめなおした。
「……あれ?」
「どうしたか?」
「何かがセンサーに反応した。なんだ?」
言われてモーリスはセンサーのログを確認する。特に何も見当たらず、モーリスが作業の中止を本隊に提案しようか迷いだした時、不意に衝突音が響いた。
「うおおお!!?」
「ロニー!!」
ロニー機は霧に紛れた何者かに仰向けに引き倒されていた。すぐさまモーリスはCAM備え付けのライトをそちらに向ける。倒れたロニー機の足を、動かなかったはずの魔導アーマーが押さえつけていた。
なぜ動き出したのか。考えるよりも早くモーリスは引き金を引く。30mmライフルの閃光が走り、魔導アーマーの手足の貫く。しかしあるはずの手ごたえはなく、魔導アーマーは手の力を緩めない。
剥き出しのコクピットには人の気配はなく、代わりその背部に等身大のマネキンのような物がへばりついていた。
「歪虚か!!」
元凶を見つけたモーリスはライフルの照準を人形に向ける。
次の瞬間、モーリス機の腕が後背から振られた刃に切り落とされていた。咄嗟に気づいて回避行動を取らなければ、胴体に致命傷を受けただろう。
状況は一瞬にして悪化した。右腕をやられて30mmライフルを取り落とし、残った武器は左手のスパイクシールドと背中のカタナのみ。
モーリスは機体は反転させつつ、後方に居た歪虚化デュミナスから距離を取り、通信のスイッチを入れた。
「エコー1より、HQ! 緊急事態だ!」
「こちらHQ。エコー1、どうした?」
「歪虚化したCAMと魔導アーマーに襲われている!奇襲でエコー2が戦闘不能した。至急救援をよこしてくれ!」
「HQ、了解。直ちに確認する」
会話する間にも歪虚化デュミナスは接近戦を仕掛けてくる。
モーリスは果敢に盾で応戦しながらも、敵の背部や肩部に同じような人形がへばりついているのを確認した。
「HQよりエコー1、本隊より救援は出せない」
「何故だ!!?」
モーリス機は盾で敵を殴り返すが回避される。
盾の下部についたスパイクは武器として有用だがあくまで緊急用。間合いの短さは補いようがなかった。
「現在、他の地区でも同様の事態が発生している。近隣の部隊はそちらに向かった。その地区の周囲に救援に迎える機体はない。
周辺に展開中のハンターに救援を打診した。なんとか持ちこたえてくれ」
「なんとかって……」
通信はそこで途切れる。モーリスは絶望でくじけそうになる心を必死で叱咤した。通信装置が破壊されたのか、ロニーからの返事は途絶えてしまっている。何かが動いているのは見えるが、霧の為にロニー機の動作までは確認できない。
モーリスは汗ばむ手で操縦桿を握りなおす。指先をほぐし、目の前の敵に意識を集中した。
「くそ。俺はこんなところで死なねえぞ。死んでたまるかってんだ!!」
モーリスは吼える。絶望を打ち砕くことこそが軍人の役目だ。怯えに負けてはいけない。モーリス機はスパイクシールドで機体を隠すように構えると、地を蹴って敵のデュミナスに突撃していった。
●
巨人の咆哮が冷たい霧を震わせる。それは外的を威圧する怒りであり、切なる喪失の恐怖であった。
偶さか近くに居た貴方はその叫びを聞いた。
何が出来るのか、などと考える暇も無い。気づけば貴方は駆け出していた。
衝動だけが貴方を動かした。
リプレイ本文
デュミナスは現行の魔導アーマーに対して、ほぼ全ての性能で圧倒している。しかし魔導アーマーにも単純な機構ゆえの利点がある。
パワードアンカーを使用しての格闘戦なら、状況次第でデュミナスを上回るだろう。魔導アーマーと格闘しながら、ロニーはその事を嫌と言うほど思い知った。態勢が悪く機体重量のかかった状況では魔導アーマーを振りほどけない。
「くそったれがぁ!」
吠えてレバーを引いたところで力の差は覆らない。振り上げられた拳が何度も装甲にたたきつけられ、徐々にフレームがゆがんでいく。
刻一刻と迫る死の足音。破滅の音にまじり、魔導アーマーの足音が聞こえる。もはやここまで。新手の出現に絶望したロニーが見たのは、ルーファス(ka5250)の魔導アーマーであった。
棘付きのガントレットが唸りを上げて振り下ろされ、歪虚化した魔導アーマーの肩を砕く。動きを止める敵の機体に、ルーファス機は容赦なく拳を何度も振り下ろした。
「お父さんのCAMを傷つけた大罪……君達、デク人形の死じゃ釣り合わないね」
冷たくつぶやくルーファスの視線の先、壊れた機体からは機体を操っていた人形が何体も這い出していた。逃げた人形は近くにある残骸へと走り寄っていく。だが人形はたどり着く前に、霧の中を走る何者かに背中から切り裂かれた。イェジドの久遠にまたがる月影 夕姫(ka0102)が大鎌で片っ端から狩っているのだ。
突然の変化についていけないロニーは、大声で呼びかけるティリル(ka5672)の声に気づかなかった。
「大丈夫ですか!? お怪我はありませんか!?」
「……あ、ああ。助かったぜ。アンタたちは?」
「助けに来ました。安心してください」
ティリルが胸の前で印を結ぶと、CAMの装甲に加護符がぴたりと吸い付くように飛んで行く。これで不意の一撃にも一度だけなら耐えるだろう。問題は不意の一撃を許してしまう環境が残っていることだ。
霧は思った以上に深刻で、刻一刻と濃くなっていく。動くだけで大きな音のする魔導アーマーはともかく、人形の奇襲は避けられないだろう。手をこまねいてばかりもいられない。
夕姫は周囲を見渡して戦闘が続いていることを確認すると、久遠を伴って濃霧の中へと走りだした。
「夕姫さん、どこへ?」
「私は霧を作ってる歪虚を探す。こんな不自然な霧なら、どこかに居てもおかしくない」
久遠の走りは緩まない。夕姫の背中は会話をしている間にも濃霧の中へと消えていった。追いかけようか迷う2人ではあったが、ずしりと重い足音を聞いて思い返す。足音の数は2体。濃霧の向こうに魔導アーマーの影が見え隠れしていた。
ロニーは引きつった笑みを浮かべながら、それでも体は敵に向けていた。
「あまり、安穏とは出来ないな」
「任せて。私が守るから」
「出来れば俺がそれを言いたかったぜ」
ロニーの余裕の発言にルーファスは笑みを浮かべた。敵の魔導アーマーの足音が早く、そして近くなる。四本足で器用に走りながら、ルーファスとロニーを押しつぶそうとばかりに接近してくる。伏せ撃ちの姿勢をとったロニー機の射撃で片方の足が潰れ転倒。残り1機が迫り来る。自由に動けるルーファスがこの敵に向かい合った。
「ここは通さない!」
走ってきた魔導アーマーとルーファスの機体は、凄まじい衝撃音を立ててがっちりと組み合う。両者の機体が軋み、金属の歪む音も聞こえた。
ティリルはその足元を走りぬけ、背面に取り付いた人形に風雷符を投げつける。稲妻に焼かれた人形はぼろぼろと崩れ落ち、魔導アーマーの動きは止まった。
「ふう…。これなら私達でもなんとかなるかも」
「これだけならね」
ルーファスの苦い声に背後を振り向くと、別の魔導アーマーが動き出していた。先程足を破壊した魔導アーマーもいつのまにか立ち上がっている。動きが鈍っているにしてもこれは…。
「ボクが派手に動いて注意をひく。ティリルはさっきと同じ要領でお願い」
「わかった。気をつけてね」
魔導アーマーが走りだす。再びルーファスは巨大な敵と向かい合った。
■
モーリスの機体は格闘戦を演じながら、ロニーの機体と離されてしまっていた。ロニーがハンター達に救助された頃、モーリスの側にも同じく友軍が救援に現れる。不利な格闘戦を演じる最中に、唐突な銃声が2機の間を分けた。
「!?」
モーリスは新たな敵襲を警戒して距離を取るが、敵も同じく周囲を警戒している為、そうではないのだと悟った。
「エコー1、助けに来たぞ!」
無線から聞こえる人の声。続いてトラックのエンジン音が徐々に近づいてくる。
「聞こえるかエコー1!」
「聞こえたぞ、どうすればいい!?」
「銃弾の飛ぶ方に走ってくれ。武器を渡す!」
「エコー1、了解!」
やることが分かれば軍人は迷いがない。モーリス機はアクティブスラスターでバックブースト。歪虚化CAMに背を向けて、銃弾の飛ぶ方向に走りだした。銃弾は残骸の山の上から、狙撃銃を構えたウーナ(ka1439)のデュミナスが放ったものだった。
「タダでさえ貴重なCAMになんてことしてくれてんの!」
敵の歪虚化CAMも負けず、濃霧を盾にモーリス機を追いかけ始めた。腕を失いバランスの悪いモーリス機は徐々に距離を詰められる。
「そのまま走って!」
声はモーリス機の足元から聞こえた。モーリスはすれ違う日高・明(ka0476)に、警句の一つも発せられぬままその場をすり抜けた。日高は槍を構え、追いすがる歪虚化CAMに正面から挑みかかる。
「人間なめんな!」
走りこみつつ槍に勢いを載せて突き出す。狙いは足。しかしCAMは余裕を持って後方にかわすと、日高めがけて刀を振り下ろした。日高はぎりぎりのところで巨大な刀を槍の柄で受け止めた。
「うおっ!?」
いくら覚醒者でも腕力ではCAMに叶わない。上段から切り下ろされては尚更だ。間合いも腕力も速度も圧倒的に勝る相手、本来なら命はなかっただろう。それでも日高が助かったのは、ウーナ機の射撃が断続的に続いていたからだ。105mmスナイパーライフルの連続砲撃が歪虚化CAMを追い詰める。
たまらず歪虚化CAMはバックブーストでその場を離れた。
「大丈夫?」
「悪い、助かった!」
日高は態勢を立てなおすと再び歪虚化CAMを追った。槍の一撃をかわしたという事は脅威として見られていると言う事。移動速度の不利を押してでも追撃する価値はある。
その間、ハンター達の稼いだ貴重な時間を使って、モーリス機は藤堂研司(ka0569)のトラックにたどり着いた。魔導アーマーに乗るアルシュナ・ウィンゲーツ(ka5052)が庇うように前に出て、モーリスはようやく人心地つくことができた。
「来たか。荷台にアサルトライフルを積んである。自衛用に積んだ品だ。好きに使ってくれ」
「了解。ありがたく使わせてもらうぜ」
モーリス機はスパイクシールドを荷台に下ろし、片手で器用にライフルを持ち上げた。モーリス機の腰には同一規格の弾倉はまだ残っており、大盾と併用した際に片手で弾倉交換する動作も登録されている。これで逆転だ。藤堂はそう確信したが、霧の中の悪魔はそれを許さない。最初に気づいたのはアルシュナだった。
「何か来る!」
警戒はすんでのところで間に合った。濃霧の中からの銃撃が一行を襲う。アルシュナの機体でカバー出来なかった銃弾がトラックとモーリス機を掠める。モーリス機は素早くその場を転がりトラックの陰に、藤堂も車を降りて敵の姿を探す。
「新手か!?」
「あれは……」
アルシュナは濃霧から現れる敵の姿を見た。歪虚化CAMだ。手には30mmアサルトライフルを構えている。機体の節々には戦闘の傷が生々しく残っており、外見上はまともに動くような破損ではない。それが人形の能力か、何事もなかったかのように歩みを進めてきている。さながらゾンビのように。
「CAM、あんなことになって……。守るための力、これ以上悪用なんてさせない!」
アルシュナは魔導アーマーを走らせる。足の速さから不利は明らかだが、戦わないという選択肢はなかった。
30mmを手にしたモーリス機からの支援を受けつつ、正面からの銃弾は腕に取り付けた盾でかわす。
アルシュナは加速も加えてグレイブを振るうが、歪虚化CAMが一枚上手であった。
「あ!」
歪虚化CAMはアクティブスラスターでアルシュナ機をかわすと、そのままの速度で後方の敵を目指す。
腕を失ったモーリス機では近接戦闘の不利は明らかだ。覚悟を決めて前に出ようとしたモーリスだが、それをウーナ機が遮った。
アクティブスラスターからの接近、腕部に備え付けた魔導鉤を飛ばして歪虚化CAMの体を縛り付ける。
動きを止める歪虚化CAM。今度こそアルシュナの機体が追いつき、グレイブがCAMの足を切り裂いた。
横転するCAM。こうなればもはや、人形の排除は容易かった。
ウーナ機のプラズマカッターが1体ずつ着実に人形を排除する。
人形を排除すると、CAMはまたモノ言わぬただの残骸に戻っていった。
「これで残り1機、やるよ!」
「はい!」
ウーナとアルシュナの2人は砲撃支援を失い苦戦する日高の元に急いだ
■
戦闘は続いているが幸いにもパイロット2人に怪我はない。急ぎ救助すべき対象が居ないのならと、サクラ・エルフリード(ka2598)は霧の発生源を探していた。ウーナが最初に提示した予測では霧のより濃い方向且つ未だ運搬されていない残骸の中、ということであったが早々簡単に物事は運ばなかった。
(思ったよりも霧が濃いですね……)
右を見ても左を見ても物の陰しか見えなかった。これでは残骸を一つ一つ調べるのも手間だし、もし残骸から残骸に移るように移動したら、気配に気づくこともできない。そして何より、ただ調査に専念するというわけにも行かなかった。
「!」
気配を感じて槍を旋回させる。飛び込んできた人形が穂先に触れて真っ二つになった。更に振り向きざまに槍を突き出し、もう1体を仕留める。
襲撃を難なく退けたサクラだが気は重いままだった。付近にはまだ数体以上気配がある。いくら弱い相手でもこれだけの数をこの状況で対峙するのは厳しい。下手をすれば同士討ちということもありえる。
ほんの少し前、サクラは霧の中から現れた夕姫に槍を突き付けてしまうという事件もあった。
イェジドの吠える声が聴こえる。その事件以後、夕姫は味方へ近寄る時に久遠に合図をさせていた。
「どう、何か見つかった?」
「何も。人形は結構居るみたいだけど……」
その人形が動かせる機体を発見したら状況は悪化する。なるべく早く仕留めておきたい。サクラの気持ちは焦るばかりだった。
夕姫も随分走り回ったが、成果は出ていない。
「久遠、何か感じない? 匂いとか音とか……戦場の気配以外で」
夕姫は久遠の首を撫でる。少し迷う風だった久遠は一声鳴くと、瓦礫の一つ走り寄った。驚きながらも久遠の行くままに任せると、明らかに色の違う人形が瓦礫の陰にうずくまっていた。
「……でかした」
夕姫は会心の笑みで大鎌を振りかぶる。人形は慌ててその場から逃げ出すが、イェジドの足からは逃れることができない。大鎌は狙い違わず人形を真っ二つに切り裂く。
夕姫が人形を撃破してから数分後、ハンター達を悩ませていた霧は何事もなかったかのように消え失せていた。
■
霧が晴れれば一方的な戦いになった。敵が見えない為にどんなに優勢な状況でも深追いできなかったハンター達だが、敵の総数と位置さえ見えてしまえば怖いものはない。朧げにしか見えなかった人形も今なら取り付いた箇所がはっきりわかる。
歪虚に操られたCAMと魔導アーマーはCAM3機の一斉射撃を受けて足止めされ、その隙に近寄った者達に一つ一つ人形を撃破されていった。取り付いた人形がなくなると、どの機体も糸の切れた人形のようにその場に倒れ伏す。
「みんな無事かな?」
サクラが集まった仲間を一人一人確認していく。CAMに肉弾戦という無茶をやった日高が派手に汚れていたが、幸いにも誰も後に引くような怪我はなかった。
CAMは2機とも無事で片方は自力で母艦に戻るだけの力も残っている。ロニーの機体のみ運搬する必要があるが、状況は落ち着いたので急ぐ必要もないだろう。
周囲の喧騒は掻き消え、歪虚の気配はどこにもない。動いていた残骸はまたただの残骸に戻り、屍のようにその体を晒している。ティリルは骸となった機体の前で手を合わせた。
「付喪神というわけではないですけど、今度は正しいマテリアルに導かれて活躍して下さいね」
一方でそんな感傷も何のそのと働きまくる男もいた。
「歪虚のおかげで集める手間が省けたな! さ、積みこむぞ!」
「はいはい」
藤堂は元気だった。巻き込まれた日高は不承不承、積み荷にワイヤーをかけていく。こんな時ぐらいゆっくりしておけばいいのにと思うが、女性に力仕事をさせるわけにもいかない。本当はまだ一人男性が居たのだが、外見のこともありすっかり忘却の彼方にあった。
この仕事も無駄ではない。CAMの数は有限だ。使い捨てにしていい装備では決して無い。
「元気ですね……」
だがしかしアルシュナは少し呆れ気味だった。概ね女性陣は待ちの姿勢で、母艦からトラックがつくまで動く気はなかった。
霧が晴れていい天気になったのだから、何かをするのは勿体無い。夕姫も寝そべる久遠に背中を預けながら、時間がすぎるのを待っていた。
「久遠もお疲れさま。酷い油汚れよね。戻ったら洗ってあげるわ」
夕姫が久遠の背中を撫でると、久遠は欠伸のような声をあげてそのまま微睡みの中に落ちていった。
パワードアンカーを使用しての格闘戦なら、状況次第でデュミナスを上回るだろう。魔導アーマーと格闘しながら、ロニーはその事を嫌と言うほど思い知った。態勢が悪く機体重量のかかった状況では魔導アーマーを振りほどけない。
「くそったれがぁ!」
吠えてレバーを引いたところで力の差は覆らない。振り上げられた拳が何度も装甲にたたきつけられ、徐々にフレームがゆがんでいく。
刻一刻と迫る死の足音。破滅の音にまじり、魔導アーマーの足音が聞こえる。もはやここまで。新手の出現に絶望したロニーが見たのは、ルーファス(ka5250)の魔導アーマーであった。
棘付きのガントレットが唸りを上げて振り下ろされ、歪虚化した魔導アーマーの肩を砕く。動きを止める敵の機体に、ルーファス機は容赦なく拳を何度も振り下ろした。
「お父さんのCAMを傷つけた大罪……君達、デク人形の死じゃ釣り合わないね」
冷たくつぶやくルーファスの視線の先、壊れた機体からは機体を操っていた人形が何体も這い出していた。逃げた人形は近くにある残骸へと走り寄っていく。だが人形はたどり着く前に、霧の中を走る何者かに背中から切り裂かれた。イェジドの久遠にまたがる月影 夕姫(ka0102)が大鎌で片っ端から狩っているのだ。
突然の変化についていけないロニーは、大声で呼びかけるティリル(ka5672)の声に気づかなかった。
「大丈夫ですか!? お怪我はありませんか!?」
「……あ、ああ。助かったぜ。アンタたちは?」
「助けに来ました。安心してください」
ティリルが胸の前で印を結ぶと、CAMの装甲に加護符がぴたりと吸い付くように飛んで行く。これで不意の一撃にも一度だけなら耐えるだろう。問題は不意の一撃を許してしまう環境が残っていることだ。
霧は思った以上に深刻で、刻一刻と濃くなっていく。動くだけで大きな音のする魔導アーマーはともかく、人形の奇襲は避けられないだろう。手をこまねいてばかりもいられない。
夕姫は周囲を見渡して戦闘が続いていることを確認すると、久遠を伴って濃霧の中へと走りだした。
「夕姫さん、どこへ?」
「私は霧を作ってる歪虚を探す。こんな不自然な霧なら、どこかに居てもおかしくない」
久遠の走りは緩まない。夕姫の背中は会話をしている間にも濃霧の中へと消えていった。追いかけようか迷う2人ではあったが、ずしりと重い足音を聞いて思い返す。足音の数は2体。濃霧の向こうに魔導アーマーの影が見え隠れしていた。
ロニーは引きつった笑みを浮かべながら、それでも体は敵に向けていた。
「あまり、安穏とは出来ないな」
「任せて。私が守るから」
「出来れば俺がそれを言いたかったぜ」
ロニーの余裕の発言にルーファスは笑みを浮かべた。敵の魔導アーマーの足音が早く、そして近くなる。四本足で器用に走りながら、ルーファスとロニーを押しつぶそうとばかりに接近してくる。伏せ撃ちの姿勢をとったロニー機の射撃で片方の足が潰れ転倒。残り1機が迫り来る。自由に動けるルーファスがこの敵に向かい合った。
「ここは通さない!」
走ってきた魔導アーマーとルーファスの機体は、凄まじい衝撃音を立ててがっちりと組み合う。両者の機体が軋み、金属の歪む音も聞こえた。
ティリルはその足元を走りぬけ、背面に取り付いた人形に風雷符を投げつける。稲妻に焼かれた人形はぼろぼろと崩れ落ち、魔導アーマーの動きは止まった。
「ふう…。これなら私達でもなんとかなるかも」
「これだけならね」
ルーファスの苦い声に背後を振り向くと、別の魔導アーマーが動き出していた。先程足を破壊した魔導アーマーもいつのまにか立ち上がっている。動きが鈍っているにしてもこれは…。
「ボクが派手に動いて注意をひく。ティリルはさっきと同じ要領でお願い」
「わかった。気をつけてね」
魔導アーマーが走りだす。再びルーファスは巨大な敵と向かい合った。
■
モーリスの機体は格闘戦を演じながら、ロニーの機体と離されてしまっていた。ロニーがハンター達に救助された頃、モーリスの側にも同じく友軍が救援に現れる。不利な格闘戦を演じる最中に、唐突な銃声が2機の間を分けた。
「!?」
モーリスは新たな敵襲を警戒して距離を取るが、敵も同じく周囲を警戒している為、そうではないのだと悟った。
「エコー1、助けに来たぞ!」
無線から聞こえる人の声。続いてトラックのエンジン音が徐々に近づいてくる。
「聞こえるかエコー1!」
「聞こえたぞ、どうすればいい!?」
「銃弾の飛ぶ方に走ってくれ。武器を渡す!」
「エコー1、了解!」
やることが分かれば軍人は迷いがない。モーリス機はアクティブスラスターでバックブースト。歪虚化CAMに背を向けて、銃弾の飛ぶ方向に走りだした。銃弾は残骸の山の上から、狙撃銃を構えたウーナ(ka1439)のデュミナスが放ったものだった。
「タダでさえ貴重なCAMになんてことしてくれてんの!」
敵の歪虚化CAMも負けず、濃霧を盾にモーリス機を追いかけ始めた。腕を失いバランスの悪いモーリス機は徐々に距離を詰められる。
「そのまま走って!」
声はモーリス機の足元から聞こえた。モーリスはすれ違う日高・明(ka0476)に、警句の一つも発せられぬままその場をすり抜けた。日高は槍を構え、追いすがる歪虚化CAMに正面から挑みかかる。
「人間なめんな!」
走りこみつつ槍に勢いを載せて突き出す。狙いは足。しかしCAMは余裕を持って後方にかわすと、日高めがけて刀を振り下ろした。日高はぎりぎりのところで巨大な刀を槍の柄で受け止めた。
「うおっ!?」
いくら覚醒者でも腕力ではCAMに叶わない。上段から切り下ろされては尚更だ。間合いも腕力も速度も圧倒的に勝る相手、本来なら命はなかっただろう。それでも日高が助かったのは、ウーナ機の射撃が断続的に続いていたからだ。105mmスナイパーライフルの連続砲撃が歪虚化CAMを追い詰める。
たまらず歪虚化CAMはバックブーストでその場を離れた。
「大丈夫?」
「悪い、助かった!」
日高は態勢を立てなおすと再び歪虚化CAMを追った。槍の一撃をかわしたという事は脅威として見られていると言う事。移動速度の不利を押してでも追撃する価値はある。
その間、ハンター達の稼いだ貴重な時間を使って、モーリス機は藤堂研司(ka0569)のトラックにたどり着いた。魔導アーマーに乗るアルシュナ・ウィンゲーツ(ka5052)が庇うように前に出て、モーリスはようやく人心地つくことができた。
「来たか。荷台にアサルトライフルを積んである。自衛用に積んだ品だ。好きに使ってくれ」
「了解。ありがたく使わせてもらうぜ」
モーリス機はスパイクシールドを荷台に下ろし、片手で器用にライフルを持ち上げた。モーリス機の腰には同一規格の弾倉はまだ残っており、大盾と併用した際に片手で弾倉交換する動作も登録されている。これで逆転だ。藤堂はそう確信したが、霧の中の悪魔はそれを許さない。最初に気づいたのはアルシュナだった。
「何か来る!」
警戒はすんでのところで間に合った。濃霧の中からの銃撃が一行を襲う。アルシュナの機体でカバー出来なかった銃弾がトラックとモーリス機を掠める。モーリス機は素早くその場を転がりトラックの陰に、藤堂も車を降りて敵の姿を探す。
「新手か!?」
「あれは……」
アルシュナは濃霧から現れる敵の姿を見た。歪虚化CAMだ。手には30mmアサルトライフルを構えている。機体の節々には戦闘の傷が生々しく残っており、外見上はまともに動くような破損ではない。それが人形の能力か、何事もなかったかのように歩みを進めてきている。さながらゾンビのように。
「CAM、あんなことになって……。守るための力、これ以上悪用なんてさせない!」
アルシュナは魔導アーマーを走らせる。足の速さから不利は明らかだが、戦わないという選択肢はなかった。
30mmを手にしたモーリス機からの支援を受けつつ、正面からの銃弾は腕に取り付けた盾でかわす。
アルシュナは加速も加えてグレイブを振るうが、歪虚化CAMが一枚上手であった。
「あ!」
歪虚化CAMはアクティブスラスターでアルシュナ機をかわすと、そのままの速度で後方の敵を目指す。
腕を失ったモーリス機では近接戦闘の不利は明らかだ。覚悟を決めて前に出ようとしたモーリスだが、それをウーナ機が遮った。
アクティブスラスターからの接近、腕部に備え付けた魔導鉤を飛ばして歪虚化CAMの体を縛り付ける。
動きを止める歪虚化CAM。今度こそアルシュナの機体が追いつき、グレイブがCAMの足を切り裂いた。
横転するCAM。こうなればもはや、人形の排除は容易かった。
ウーナ機のプラズマカッターが1体ずつ着実に人形を排除する。
人形を排除すると、CAMはまたモノ言わぬただの残骸に戻っていった。
「これで残り1機、やるよ!」
「はい!」
ウーナとアルシュナの2人は砲撃支援を失い苦戦する日高の元に急いだ
■
戦闘は続いているが幸いにもパイロット2人に怪我はない。急ぎ救助すべき対象が居ないのならと、サクラ・エルフリード(ka2598)は霧の発生源を探していた。ウーナが最初に提示した予測では霧のより濃い方向且つ未だ運搬されていない残骸の中、ということであったが早々簡単に物事は運ばなかった。
(思ったよりも霧が濃いですね……)
右を見ても左を見ても物の陰しか見えなかった。これでは残骸を一つ一つ調べるのも手間だし、もし残骸から残骸に移るように移動したら、気配に気づくこともできない。そして何より、ただ調査に専念するというわけにも行かなかった。
「!」
気配を感じて槍を旋回させる。飛び込んできた人形が穂先に触れて真っ二つになった。更に振り向きざまに槍を突き出し、もう1体を仕留める。
襲撃を難なく退けたサクラだが気は重いままだった。付近にはまだ数体以上気配がある。いくら弱い相手でもこれだけの数をこの状況で対峙するのは厳しい。下手をすれば同士討ちということもありえる。
ほんの少し前、サクラは霧の中から現れた夕姫に槍を突き付けてしまうという事件もあった。
イェジドの吠える声が聴こえる。その事件以後、夕姫は味方へ近寄る時に久遠に合図をさせていた。
「どう、何か見つかった?」
「何も。人形は結構居るみたいだけど……」
その人形が動かせる機体を発見したら状況は悪化する。なるべく早く仕留めておきたい。サクラの気持ちは焦るばかりだった。
夕姫も随分走り回ったが、成果は出ていない。
「久遠、何か感じない? 匂いとか音とか……戦場の気配以外で」
夕姫は久遠の首を撫でる。少し迷う風だった久遠は一声鳴くと、瓦礫の一つ走り寄った。驚きながらも久遠の行くままに任せると、明らかに色の違う人形が瓦礫の陰にうずくまっていた。
「……でかした」
夕姫は会心の笑みで大鎌を振りかぶる。人形は慌ててその場から逃げ出すが、イェジドの足からは逃れることができない。大鎌は狙い違わず人形を真っ二つに切り裂く。
夕姫が人形を撃破してから数分後、ハンター達を悩ませていた霧は何事もなかったかのように消え失せていた。
■
霧が晴れれば一方的な戦いになった。敵が見えない為にどんなに優勢な状況でも深追いできなかったハンター達だが、敵の総数と位置さえ見えてしまえば怖いものはない。朧げにしか見えなかった人形も今なら取り付いた箇所がはっきりわかる。
歪虚に操られたCAMと魔導アーマーはCAM3機の一斉射撃を受けて足止めされ、その隙に近寄った者達に一つ一つ人形を撃破されていった。取り付いた人形がなくなると、どの機体も糸の切れた人形のようにその場に倒れ伏す。
「みんな無事かな?」
サクラが集まった仲間を一人一人確認していく。CAMに肉弾戦という無茶をやった日高が派手に汚れていたが、幸いにも誰も後に引くような怪我はなかった。
CAMは2機とも無事で片方は自力で母艦に戻るだけの力も残っている。ロニーの機体のみ運搬する必要があるが、状況は落ち着いたので急ぐ必要もないだろう。
周囲の喧騒は掻き消え、歪虚の気配はどこにもない。動いていた残骸はまたただの残骸に戻り、屍のようにその体を晒している。ティリルは骸となった機体の前で手を合わせた。
「付喪神というわけではないですけど、今度は正しいマテリアルに導かれて活躍して下さいね」
一方でそんな感傷も何のそのと働きまくる男もいた。
「歪虚のおかげで集める手間が省けたな! さ、積みこむぞ!」
「はいはい」
藤堂は元気だった。巻き込まれた日高は不承不承、積み荷にワイヤーをかけていく。こんな時ぐらいゆっくりしておけばいいのにと思うが、女性に力仕事をさせるわけにもいかない。本当はまだ一人男性が居たのだが、外見のこともありすっかり忘却の彼方にあった。
この仕事も無駄ではない。CAMの数は有限だ。使い捨てにしていい装備では決して無い。
「元気ですね……」
だがしかしアルシュナは少し呆れ気味だった。概ね女性陣は待ちの姿勢で、母艦からトラックがつくまで動く気はなかった。
霧が晴れていい天気になったのだから、何かをするのは勿体無い。夕姫も寝そべる久遠に背中を預けながら、時間がすぎるのを待っていた。
「久遠もお疲れさま。酷い油汚れよね。戻ったら洗ってあげるわ」
夕姫が久遠の背中を撫でると、久遠は欠伸のような声をあげてそのまま微睡みの中に落ちていった。
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デュミナス救出作戦相談! 藤堂研司(ka0569) 人間(リアルブルー)|26才|男性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2016/02/16 10:22:51 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/02/14 23:21:06 |