ゲスト
(ka0000)
ハルトフォートの客人と、妖魔戦士
マスター:草なぎ

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~20人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/02/19 19:00
- 完成日
- 2016/02/21 21:59
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
金髪で軍服を着た若者がいた。名をユゼリウスと言った。彼はふと手を止めた。思いもよらない時に人は過去を思い出す。懐かしい彼女の顔。アリア。王立学校で出会った彼女は今頃どうしているだろうか……。夢中で恋をした。好きだった。自分の中の溢れる感情を抑えきれなかったものだ。あれから五年が経った。二十五歳になったユゼリウスは軍人になって王国西方リベルタースに赴任し、前線の砦ハルトフォートにおいてドワーフの司令官ラーズスヴァンの下で将校を務めている。
彼が所属しているのは、ラーズスヴァンの管理下にある魔導砲関連の分室だった。室内では士官と技術者がデスクを挟んでミーティングをしていたり、ある者は書類と睨めっこしたり、書類の束を抱えて歩いていたりする者がいる。デスクの上には兵器の設計図などが雑然と散らかっている。部屋の壁は石造りで、ヴィクトリア朝を思わせる暖炉や調度品なども置かれている。
「将校殿」
ユゼリウスは下士官に呼ばれて客人の来訪を告げられた。王都イルダーナの軍務省からの客人であった。部下が連れて来た客人を見て、ユゼリウスは驚愕した。
「アリア」
軍帽を被った軍服の美女がユゼリウスのデスクの前までやってくる。アリアは長い黒髪を後ろでまとめていた。軍帽を取ると、アリアは敬礼した。
「ユゼリウス様。お久しぶりでございます」
「『様』はいいだろ。軍務省で何をしているんだ?」
アリアは笑った。
「あれやこれやよ。お偉方の手伝いね」
「官僚になったのか。出世したな」
「あなたもね」
しばし旧交を温め合った二人であったが、ユゼリウスが用向きを伝えると、アリアは肩をすくめた。
「ちょっと、例の魔導砲の様子を見に来たんだけど」
「というと?」
「ラーズスヴァンがロマンを抱いている代物。要塞砲のことなんだけど」
「あれはまだ完成はしてないんだが」
「そう。噂じゃかなりのでかぶつ、大きさって聞いてるわ。貴族たちが欲しがってるわよ」
アリアはくすくすと笑った。
「話が広まってるようだな」
「そりゃそうでしょ。国内のお偉方、教会も貴族連も無関心じゃないわよ。仮にそんなものが自分たちの方に向けられたら心穏やかじゃないわよね。というより、そんなものが存在するとしたら、自分たちが所有したいと思うのは当然よね」
「ふむ」
ユゼリウスは指先でデスクを叩いていた。アリアは肩をすくめた。
「設計図はどこ? 見せて頂戴」
「設計図は無い」
「嘘おっしゃい」
「ほんとだ」
「これだけ資料が散らばっていて、設計図が一枚も無いって言うの?」
アリアが室内を見渡すと、ユゼリウスは肩をすくめた。
「ここにあるのは普通の魔導砲の設計図だけだ。まだ野戦砲をベースに改良を施している段階だ」
そこで、室内に割れんばかりの怒号が鳴り響いた。
「よお官僚のお嬢さん! ユゼリウスの言ってることはほんとだぜ!」
アリアは振り返った。室内の全員が立ち上がって敬礼する。
小柄なずんぐりとしたドワーフがいた。髪は青緑がかった黒。瞳は暗い赤。小麦色の肌をして、金の肩章を付けた漆黒の軍服を身に付けている。ひげを蓄えた顔から覗く真紅の瞳は笑っていなかった。西方リベルタース方面軍ハルトフォート司令官のドワーフ、ラーズスヴァンである。
ラーズスヴァンのことを噂程度にしか知らなかったアリアは、小柄なドワーフの身が放つ圧倒的な威風に胸騒ぎを覚えつつ目を細めた。この男がラーズスヴァン……。
ラーズスヴァンは後ろに手を組んで歩み寄ってくると、アリアを頭の先から足の先まで眺めまわした。
「良い女だな。ユゼリウス、知り合いか。隅に置けん奴だ。がっはっは!」
「王立学校時代の学友です」
「そうか。お嬢ちゃん。残念だがここにはまだ普通の魔導砲関連しか無いぞ。要塞砲の設計図は目下ここに入ってる」
ラーズスヴァンは自分の頭を指で叩いた。
「洗脳でもして俺の脳みそを調べ尽くすか? だがまあ、期待はしてもらおう。宮廷のお偉方にはエールをたんまりと送ってよこせと言っておいてくれ」
ラーズスヴァンはアリアの尻をぽんぽんと叩いた。
「上司からは要塞砲の進捗状況に関して、確認するように命令されております。司令官殿」
「そうか! ご苦労なことだな! まあ好きにしてくれ! その辺のデスクを適当に使ってくれて構わんぞ! 働いてくれるなら結構! ユゼリウス! お嬢さんを部屋に案内してやれ! 肝の据わった女は嫌いじゃない! がっはっは!」
ラーズスヴァンは大笑して部屋から出て行った。
アリアはその後ろ姿を見送って吐息した。
「憎めないお人だな」
「気に入られたようだな」
ユゼリウスは苦笑した。こうしてハルトフォートは新たな客人を迎えることになる。
ベリアルが撤退した歪虚の島イスルダ島は歪虚の浸食が進んで風前の灯であった。沿岸地帯には王国軍の野営地があって、二十四時間体制でイスルダ島を監視している。野営地からハルトフォートへ知らせが届いたのは、ある晴れた日のことだった。
アイテルカイトの鋼塊弾が次々と沿岸部に飛来し、爆発した鋼塊弾は炸裂して負のマテリアルをばらまいた。雑魔が発生して王国軍の野営地へ向かって前進し始めた。
「撃て!」
ドウ! ドウ! ドウ! ドウ! ドウ! ドウ! ドウ! ドウ!
前線の高台に備えつけられた野戦砲が火を吹く。前進してくる雑魔は降り注ぐ榴弾で木端微塵になっていく。
「しぶといな」
先日とは打って変わって黒い甲冑に巨大な黒い戦斧を背負ったラーズスヴァンは、望遠鏡で前線を見ていた。
「とりあえず雑魚は火砲で一掃する。退屈しのぎだな」
ラーズスヴァンは望遠鏡を下ろして砲兵たちに砲撃の続行を命じると、自身は野営地に設置したヴィクトリア朝様式の豪奢なテーブルと椅子のセットに居を構え、大好物のエールを飲み始めた。
状況に変化が生じたのは、間断なく降り注ぐ歪虚の鋼塊弾で沿岸地帯の汚染がひどくなり始めた頃だった。雑魔とは明らかに異なる黒鋼の甲冑姿の妖魔戦士が火線を突破し始めたのである。
「仕方ねえなあ……」
ラーズスヴァンはエールを飲み干すと、部下に命じた。
「兵を出せ。ハンターの出番だ。連中を解き放て。あの化け物どもをぶっ潰して来い、とな」
戦の幕が開く。
彼が所属しているのは、ラーズスヴァンの管理下にある魔導砲関連の分室だった。室内では士官と技術者がデスクを挟んでミーティングをしていたり、ある者は書類と睨めっこしたり、書類の束を抱えて歩いていたりする者がいる。デスクの上には兵器の設計図などが雑然と散らかっている。部屋の壁は石造りで、ヴィクトリア朝を思わせる暖炉や調度品なども置かれている。
「将校殿」
ユゼリウスは下士官に呼ばれて客人の来訪を告げられた。王都イルダーナの軍務省からの客人であった。部下が連れて来た客人を見て、ユゼリウスは驚愕した。
「アリア」
軍帽を被った軍服の美女がユゼリウスのデスクの前までやってくる。アリアは長い黒髪を後ろでまとめていた。軍帽を取ると、アリアは敬礼した。
「ユゼリウス様。お久しぶりでございます」
「『様』はいいだろ。軍務省で何をしているんだ?」
アリアは笑った。
「あれやこれやよ。お偉方の手伝いね」
「官僚になったのか。出世したな」
「あなたもね」
しばし旧交を温め合った二人であったが、ユゼリウスが用向きを伝えると、アリアは肩をすくめた。
「ちょっと、例の魔導砲の様子を見に来たんだけど」
「というと?」
「ラーズスヴァンがロマンを抱いている代物。要塞砲のことなんだけど」
「あれはまだ完成はしてないんだが」
「そう。噂じゃかなりのでかぶつ、大きさって聞いてるわ。貴族たちが欲しがってるわよ」
アリアはくすくすと笑った。
「話が広まってるようだな」
「そりゃそうでしょ。国内のお偉方、教会も貴族連も無関心じゃないわよ。仮にそんなものが自分たちの方に向けられたら心穏やかじゃないわよね。というより、そんなものが存在するとしたら、自分たちが所有したいと思うのは当然よね」
「ふむ」
ユゼリウスは指先でデスクを叩いていた。アリアは肩をすくめた。
「設計図はどこ? 見せて頂戴」
「設計図は無い」
「嘘おっしゃい」
「ほんとだ」
「これだけ資料が散らばっていて、設計図が一枚も無いって言うの?」
アリアが室内を見渡すと、ユゼリウスは肩をすくめた。
「ここにあるのは普通の魔導砲の設計図だけだ。まだ野戦砲をベースに改良を施している段階だ」
そこで、室内に割れんばかりの怒号が鳴り響いた。
「よお官僚のお嬢さん! ユゼリウスの言ってることはほんとだぜ!」
アリアは振り返った。室内の全員が立ち上がって敬礼する。
小柄なずんぐりとしたドワーフがいた。髪は青緑がかった黒。瞳は暗い赤。小麦色の肌をして、金の肩章を付けた漆黒の軍服を身に付けている。ひげを蓄えた顔から覗く真紅の瞳は笑っていなかった。西方リベルタース方面軍ハルトフォート司令官のドワーフ、ラーズスヴァンである。
ラーズスヴァンのことを噂程度にしか知らなかったアリアは、小柄なドワーフの身が放つ圧倒的な威風に胸騒ぎを覚えつつ目を細めた。この男がラーズスヴァン……。
ラーズスヴァンは後ろに手を組んで歩み寄ってくると、アリアを頭の先から足の先まで眺めまわした。
「良い女だな。ユゼリウス、知り合いか。隅に置けん奴だ。がっはっは!」
「王立学校時代の学友です」
「そうか。お嬢ちゃん。残念だがここにはまだ普通の魔導砲関連しか無いぞ。要塞砲の設計図は目下ここに入ってる」
ラーズスヴァンは自分の頭を指で叩いた。
「洗脳でもして俺の脳みそを調べ尽くすか? だがまあ、期待はしてもらおう。宮廷のお偉方にはエールをたんまりと送ってよこせと言っておいてくれ」
ラーズスヴァンはアリアの尻をぽんぽんと叩いた。
「上司からは要塞砲の進捗状況に関して、確認するように命令されております。司令官殿」
「そうか! ご苦労なことだな! まあ好きにしてくれ! その辺のデスクを適当に使ってくれて構わんぞ! 働いてくれるなら結構! ユゼリウス! お嬢さんを部屋に案内してやれ! 肝の据わった女は嫌いじゃない! がっはっは!」
ラーズスヴァンは大笑して部屋から出て行った。
アリアはその後ろ姿を見送って吐息した。
「憎めないお人だな」
「気に入られたようだな」
ユゼリウスは苦笑した。こうしてハルトフォートは新たな客人を迎えることになる。
ベリアルが撤退した歪虚の島イスルダ島は歪虚の浸食が進んで風前の灯であった。沿岸地帯には王国軍の野営地があって、二十四時間体制でイスルダ島を監視している。野営地からハルトフォートへ知らせが届いたのは、ある晴れた日のことだった。
アイテルカイトの鋼塊弾が次々と沿岸部に飛来し、爆発した鋼塊弾は炸裂して負のマテリアルをばらまいた。雑魔が発生して王国軍の野営地へ向かって前進し始めた。
「撃て!」
ドウ! ドウ! ドウ! ドウ! ドウ! ドウ! ドウ! ドウ!
前線の高台に備えつけられた野戦砲が火を吹く。前進してくる雑魔は降り注ぐ榴弾で木端微塵になっていく。
「しぶといな」
先日とは打って変わって黒い甲冑に巨大な黒い戦斧を背負ったラーズスヴァンは、望遠鏡で前線を見ていた。
「とりあえず雑魚は火砲で一掃する。退屈しのぎだな」
ラーズスヴァンは望遠鏡を下ろして砲兵たちに砲撃の続行を命じると、自身は野営地に設置したヴィクトリア朝様式の豪奢なテーブルと椅子のセットに居を構え、大好物のエールを飲み始めた。
状況に変化が生じたのは、間断なく降り注ぐ歪虚の鋼塊弾で沿岸地帯の汚染がひどくなり始めた頃だった。雑魔とは明らかに異なる黒鋼の甲冑姿の妖魔戦士が火線を突破し始めたのである。
「仕方ねえなあ……」
ラーズスヴァンはエールを飲み干すと、部下に命じた。
「兵を出せ。ハンターの出番だ。連中を解き放て。あの化け物どもをぶっ潰して来い、とな」
戦の幕が開く。
リプレイ本文
「さーてと! 紳士淑女は礼儀正しくってなあ! おっぱじめるか!」
ヴァイス(ka0364)の盛り上がった筋肉、ギブスを取り付けたむきむきの肉体から紅蓮のオーラが噴き出した。この男、物怖じしないまっすぐな闘士を持つ。金の瞳は冷静に、そして猛る狼のような獰猛さを持っていた。
「全くだ……こっちが礼儀正しくしてやれば、いつまでも暴れ回りやがって。うぞうぞどもが」
柊 真司(ka0705)は魔導拳銃の安全装置を解除すると、金の瞳に闘争心を閃かせた。オールラウンドプレイヤーとして知られるハンターのちょっとした有名人である。ハンター屈指の実力の持ち主であり、その力はこれから実戦で証明されることになる。
「……最近この手合いを見かけるようになりましたねえ。アイテルカイト? 流行っているのでしょうか……それは、さて置き、何か動きでもありましたかね。この場においては考えても詮無き事。今はただ、仕事をこなすのみですが」
マッシュ・アクラシス(ka0771)は言って、戦場を見渡した。無機的な茶色の瞳に、前進してくる歪虚戦士が見える。ただ、その瞳は魔獣装甲「タイラント」の兜の中で見えないが……。レッドコメットの弦の具合を確かめておく。
砲撃が続いている。鳴り響く野戦砲の咆哮とともに、榴弾が頭上を通過していくのが見える。
「……あのドワーフさん、ラーズスヴァンさんでしたっけ。とっても可愛かったです」
ドワーフ愛好家のアルマ・アニムス(ka4901)にとって、ラーズスヴァンはもふりの対象であった。もふもふしたところ、「があーっ! やめんか!」と一喝されてしまったが、それすらもアルマにとっては愛おしく思える。もふもふが駄目ならどうしたらいいんだろう……と悩んでしまう。アルマにとってドワーフは愛である。と言いつつ、覚醒したその姿は凶暴である。幻影の黒衣を纏い、牙は鋭く瞳の紅い吸血鬼じみた姿。義手の関節から炎の幻影が噴き出す。赤い外套を翻せば、黒い幻影が揺らめく。歪虚に情けなど無用、ラーズスヴァンのためにも敵戦士は食い破る。
「フフ、見事に統率の取れた軍勢だな。挫くにはもってこいの連中だ」
不動シオン(ka5395)の瞳は赤く発光している。黒いオーラを含んだ紫焔が全身を纏っている。シオンの闘争心が四枚の悪魔の翼を模した黒い幻影を呼び起こす。銃床に投げ縄細工の象嵌が施されたオートマチックの安全装置を解除する。試作振動刀「オートMURAMASA」のモーターのスイッチを入れて駆動を確認する。指輪「リムニルド」に口づけすると、MURAMASAを一閃した。
央崎 遥華(ka5644)は胸の上で十字架を切った。
「神よ……私に力を……まだ修行中の身なれど……力をお貸し下さい……罪人たちに立ち向かう力を……」
遥華の全身を稲妻の幻影が纏う。
ゴシックドレスを身に付け、エボニースタッフ、Star of Bethlehemを携え、ディヴァイン・スクリプチャーを手にし、ウロボロスリングにホーリーナイトロザリオ、ムーンライトリングをあしらった出で立ちは聖なる神徒の魔術師のようである。
「妖魔騎士の次は妖魔戦士ですか。まったく、彼奴らも忙しないことで。……まあいいでしょう。誰であろうがデュエルフィールドに立つ以上は容赦はしない。デュエルスタンバイ!!」
カードマスターの女性黒耀 (ka5677)の雰囲気ががらりと変わる。今の彼女は何あろうデュエリストである。妖艶なチャイナドレスをまとい、軍用ブーツと護法籠手を身に付けた戦士と化している。白狐の面の下に隠れた艶やかな表情は道行く男たちの鼓動を高鳴らせ半分を振り向かせるほどに美しい。
キリエ(ka5695)は鬼族の傭兵である。今は情勢も落ち着き辺境に流れ着いたが、それまでは東方で歪虚と交戦していた。西方からの援軍が到達するまで、絶望的であったろうが……。真紅の当世具足「赤備」を身に付け、虎皮布で蛮勇を思わせる派手な出で立ち、刀と片鎌槍を身に付けた戦士である。
「歪虚はこれ以上進ませないぜ! いつまでも敵さんに好き勝手させるかよ!」
槍を一閃するキリエ。
八人のハンターたちは加速した。
先に動き出したのは歪虚だった。妖魔戦士達はハンター確認すると、咆哮してソニックブームを撃ち込んで来る。衝撃波が大地を切り裂き、岩を薙ぎ払う。妖魔のダイヤモンド隊形が崩れる。後方にいた二体が両翼に回り込み、他の歪虚もソニックブームを放ってくる。しかし攻撃は射程外である。威嚇攻撃か。と、真ん中にいた二体が面甲を開いて熱光線を放った。シャキイイイイイイン! と、熱線が二十メートルから三十メートルに達し、右から左へ、左から右へ、大地を薙いだ。大地は焦げ、煙が立ち上る。しかしこれも射程外である。
「人間だ! 撃って撃って撃ちまくれ!」
真ん中の二体が人語を発し、他の八体を炊きつける。飛び交うソニックブーム。
ハンターたちは散開していた。
「どんなものかな……」
ヴァイスはロングボウを叩き込んだ。矢弾が命中し、人語を発した妖魔戦士をぐらつかせる。
「さて……」
マッシュはレッドコメットを右翼の歪虚に撃ち込む。矢は歪虚を貫いた。
柊とアルマ、シオンは銃で牽制しながら移動する。
遥華と黒耀は戦況を確認しながら、待機する。
「初撃は膠着状態か……」
キリエは言いつつ、遥華と黒耀のガードに付いていた。
ハンターたちは矢と銃で牽制し、この膠着状態を維持した。黒耀は地縛符の準備を整えていた。
妖魔戦士達はこの膠着状態を打破しようと試みる。
「一気に突撃する! 人間どもを食い破れ! 突撃! 前進あるのみだ!」
ダイヤモンド陣形は凸型に変形し、ハンターたちに向かって動き始めた。
「では……トラップカード!」
黒耀の地縛符が炸裂する。妖魔の足が鈍る。妖魔指揮官も巻き込み、歪虚の前進は崩れた。
「参ります……氷の刃! アイスボルト!」
遥華はスタッフを敵に突きつけた。氷の矢弾が歪虚を撃つ。冷気が妖魔の足を止める。
「よし、この辺りが反転の頃合いか!」
ヴァイスは手裏剣を飛ばしながら駆けだした。
「行くぜ! まとめて相手してやるからかかってきやがれ!」
柊も突進した。ファイアスローワーを解放する。アンティキティラの歯車がうにうにと回転し、紅蓮の炎が放射される。妖魔たちが絶叫して燃え盛る。
「では、私もそろそろ行きますか」
マッシュは一気に加速した。敵陣の側面からサーベルを叩き込み、強撃で妖魔を打ち倒す。
「アッハハハハハッ!! さァて、どっちの炎が熱いか試してみますかねェ!?」
アルマは柊と連携して青星の魂を解き放つ。青い炎が歪虚に吹き付けられた。それは星の灯りにも似た青い炎。アルマの魂の色の如く。
シオンはそれに合わせて歪虚の先端に激突した。MURAMASAが紫の炎のオーラに包まれる。
「十字斬!」
歪虚戦士の甲冑が切り裂かれ、内部のマグマがむき出しになる。歪虚は咆哮した。
「均衡はお終いだ! それじゃあこっちも積極果敢に行かせてもらうぜ!」
キリエは片鎌槍を振り回して、遥華が動きを封じた妖魔に渾身撃。槍が歪虚の甲冑を貫く。キリエはそのまま槍を振り回して歪虚を転倒させる。
「強靭滅殺よ! 者ども殺せ!」
歪虚指揮官の怒号が響く。歪虚指揮官はこの至近距離から熱線をばらまいた。二本の熱線が至近にいたハンターたちを焼き尽くす。歪虚戦士達のスマッシュやダブルアタックが飛び交い、ハンターたちは切り裂かれた。
柊は巧みに身を翻し熱線を回避する。
「当たるものかよ。ここじゃな! もう一発行くぜ! 鎧でも溶けるかどうか試してみるか」
続いて範囲を絞ったファイアスローワー。灼熱の炎が歪虚戦士たちの半身をもぎ取った。
「なかなかやるが……俺の中の獣は焼き尽くせんようだ!」
ヴァイスが加速。太刀「鬼神大王」が上段から流れるように歪虚戦士の頭部を叩きつぶした。
マッシュは強打を撃ち込み転倒させた歪虚戦士の肩から腕を切り落とした。
「フフハハ! 痛い! 痛いなあ! それじゃあ見せてあげよう!」
アルマは禁じ手≪蒼断≫で歪虚戦士の首を刎ねた。
「貴様らも戦士なら、全力で私を倒しに来い! 私も全力で貴様らを叩き潰してやる!」
シオンのMURAMASAが紫炎の円月を描く。加速したMURAMASAの刀身は歪虚を両断した。
「よし! まだまだあ!」
キリエは槍を突き出した。歪虚戦士を貫く。
「神光……雷光……参りますわよ! ライトニング!」
遥華は印を結ぶと、腕を突き出した。雷撃が伸びる。歪虚を貫く稲妻の光。ビリビリ! と雷撃は歪虚を貫通する。
「それでは続いてカードスロット! 五色光符陣!」
黒耀の次なる≪デュエルカード≫が歪虚を襲う。閃光が歪虚を焼き払う。
続いて歪虚の反撃が来る。残された戦える歪虚は攻勢を止めない。マグマ弾を発射し、スマッシュ、ソニックブーム、そして歪虚指揮官はもう一度熱光線を照射した。
ハンターたちは人語を話す歪虚指揮官を残して戦士を粉砕すると、妖魔を包囲した。
「諦めろ……何てことは言わんぞ歪虚。止めを刺す」
ヴァイスは太刀を構えた。
「愚かな……終わりなき闇が世界を飲み込む。我々もその勢力の縮図。アイテルカイトも世界も、多くの者も、消えることは無い。世界が存在する限り」
「俺達は忙しいんでな。今は北にも強欲との前線基地が出来ている。いずれ……お前たちはぶっ潰す」
柊は言って、銃口を歪虚に向けた。
「人間は無に帰す。つまりは歪虚に取り込んでくれよう」
歪虚指揮官は剣を構えた。
「それでは、幕引きと参りましょうか」
マッシュはサーベルを構えた。
ヴァイス、シオン、マッシュ、キリエ、アルマは加速した。柊は支援銃撃を行い、遥華はアイスボルトとライトニングボルトで、黒耀は五色光符陣で支援する。
ヴァイスは斬を繰り出す。反撃の一撃にさらにカウンターを乗せる。歪虚の面甲を貫いた。シオンの渾身撃が歪虚の甲冑にめり込み、マッシュの強打が甲冑を破壊する。キリエも渾身撃で指揮官歪虚を突き刺す。アルマは蒼断と攻性防壁で歪虚を吹き飛ばす。
「おのれ……!」
歪虚指揮官は立ち上がり突進してくる。
「撃て!」
柊、黒耀、遥華がそれぞれ魔法で歪虚指揮官を打ち倒した。歪虚指揮官は倒れて闇に崩壊していく。
最後の歪虚指揮官が突撃してくる。
「終わりだ歪虚!」
「これ以上は好きにはさせん!」
ヴァイス、シオン、マッシュ、キリエ、アルマが集中攻撃。
ザン! ザン! ザン! ザン! 刀身が歪虚指揮官を貫く。
「おのれ……いずれ……!」
歪虚指揮官は崩れ落ちた。闇に還っていく。
「ふう……」
ヴァイスは吐息した。
あちこちで歪虚の残骸が消滅していく。
ハンターたちはいったん野営地に帰還した。
ラーズスヴァンはエールを飲んで士官とチェスに興じていた。
「戻ったか!」
小柄なドワーフはハンターたちに歩み寄ってきた。
「疲れたぜ。飯を食わせてくれ」
キリエはドワーフに言った。
「ご苦労だったな! こんなに早く終わったんじゃ物足りんだろう! 一休みして雑魔の掃討戦に加わってくれ!」
ラーズスヴァンは大笑した。
「人使いの荒いおっさんだな」
ヴァイスは肩をすくめた。
「ラーズスヴァンさん、沢山やっつけたからもふもふしていいですか?」
アルマが言うと、ラーズスヴァンは後ずさった。
「それは待て」
「いいじゃないですか」
アルマが目をきらきらさせていると、ラーズスヴァンは他のハンターたちに口を向けた。
「おいお前ら。こいつを何とかしろ」
「知らんがな。おい、飯食いに行こうぜ」
柊は仲間たちに言って輜重隊のところへ向かった。
「それにしても……」
黒耀は炊事兵が作ったシチューを口許に運びながら口を開いた。
「……敵の鉄塊弾は、なんのための存在なのでしょうね。負のマテリアルをばらまくだけの存在……この戦場に、そこまでして汚染を広げなければならない意味があるのでしょうか? まあ、いずれ分かることでしょうかね」
イスルダ島にはベリアルが撤退したとはいえ、王国西方リベルタースはグラズヘイムの中でも最も歪虚の攻撃が激しい場所であった。
「まあ、敵さんも黒祀でやられたとはいえ、イスルダ島があの状態じゃな……」
ヴァイスはパンをむしり取って口に運んだ。
「何とも懐かしい感じだな……戦場食か。とは言え、ここは恵まれているようだ」
シオンは言ってサラダを突いていた。
「確かに贅沢な戦場食だ」
柊はローストビーフを口に押し込み、キリエは鶏肉の丸焼を切り分けてぱくついていた。
「マッシュ、そっちのパンくれ」
キリエが言うと、マッシュは苦笑してキリエにパンを手渡した。
「良く食うな」
「中々お上手ですね。炊事兵の方と言っても料理がお上手」
遥華はシチューの味にびっくりしていた。
「ラーズスヴァンさんはきちんとここを治められているようですねえ。兵の栄養も行きわたっているようです」
アルマは言ってにこにこしていた。
小休止を挟んだハンターたちは、立ち上がった。
「さて、と」
柊は言った。
「あとは雑魔の掃討戦か。そいつを片づけて、お終いだな」
ハンターたちは戦場に戻っていった。
雑魔の兵隊は革鎧とショートソード並みの軽装歩兵のようなものばかりであった。肉体は無く、闇の塊であった。戦闘能力は一般人でも対処できるレベルであろう。しかし数は厄介であった。火砲で打ち破られていても、あちらこちらに点在していて、放置することは出来なかった。
「討ち漏らすわけにはいかんからな」
ヴァイスは雑魔を狩り取って行く。
栄養を補給したキリエもここはもうひと踏ん張り。徘徊している雑魔を撃破していく。
柊、シオン、アルマ、マッシュらも最後の後片付けである。次々と掃討していく。
黒耀と遥華も持ってきた残りのスキルを使って、雑魔を片付けていく。
「どうやら……この辺で終わりそうでしょうか?」
遥華は黒耀に歩み寄った。黒耀は面を外した。吐息する。
「そのようですね。恐らくは……」
友軍のハルトフォートの騎士たちもハンターと合流する。
「お疲れさん! 終わったな!」
キリエは槍を担いでやって来た。
「ひとまず方は着いたようですね……」
マッシュは吐息して、イスルダ島の方を見やる。鋼塊弾の姿は気配もない。
聖職者たちが一帯に次々と法陣を張って滞留した負のマテリアルを浄化していく。
ハンターたちはマテリアルの浄化の光を見やりながら、雑談に興じ戦闘終了後の疲労感に身を委ねていた。リゼリオに帰れば我が家で疲労も癒されることだろう。そして、また次なる戦いに備えなければならない。
いまだ歪虚の攻撃は止むことなく続いている。ハンターたちにとって、まだ休息の日が来るのは先になりそうである。
ヴァイス(ka0364)の盛り上がった筋肉、ギブスを取り付けたむきむきの肉体から紅蓮のオーラが噴き出した。この男、物怖じしないまっすぐな闘士を持つ。金の瞳は冷静に、そして猛る狼のような獰猛さを持っていた。
「全くだ……こっちが礼儀正しくしてやれば、いつまでも暴れ回りやがって。うぞうぞどもが」
柊 真司(ka0705)は魔導拳銃の安全装置を解除すると、金の瞳に闘争心を閃かせた。オールラウンドプレイヤーとして知られるハンターのちょっとした有名人である。ハンター屈指の実力の持ち主であり、その力はこれから実戦で証明されることになる。
「……最近この手合いを見かけるようになりましたねえ。アイテルカイト? 流行っているのでしょうか……それは、さて置き、何か動きでもありましたかね。この場においては考えても詮無き事。今はただ、仕事をこなすのみですが」
マッシュ・アクラシス(ka0771)は言って、戦場を見渡した。無機的な茶色の瞳に、前進してくる歪虚戦士が見える。ただ、その瞳は魔獣装甲「タイラント」の兜の中で見えないが……。レッドコメットの弦の具合を確かめておく。
砲撃が続いている。鳴り響く野戦砲の咆哮とともに、榴弾が頭上を通過していくのが見える。
「……あのドワーフさん、ラーズスヴァンさんでしたっけ。とっても可愛かったです」
ドワーフ愛好家のアルマ・アニムス(ka4901)にとって、ラーズスヴァンはもふりの対象であった。もふもふしたところ、「があーっ! やめんか!」と一喝されてしまったが、それすらもアルマにとっては愛おしく思える。もふもふが駄目ならどうしたらいいんだろう……と悩んでしまう。アルマにとってドワーフは愛である。と言いつつ、覚醒したその姿は凶暴である。幻影の黒衣を纏い、牙は鋭く瞳の紅い吸血鬼じみた姿。義手の関節から炎の幻影が噴き出す。赤い外套を翻せば、黒い幻影が揺らめく。歪虚に情けなど無用、ラーズスヴァンのためにも敵戦士は食い破る。
「フフ、見事に統率の取れた軍勢だな。挫くにはもってこいの連中だ」
不動シオン(ka5395)の瞳は赤く発光している。黒いオーラを含んだ紫焔が全身を纏っている。シオンの闘争心が四枚の悪魔の翼を模した黒い幻影を呼び起こす。銃床に投げ縄細工の象嵌が施されたオートマチックの安全装置を解除する。試作振動刀「オートMURAMASA」のモーターのスイッチを入れて駆動を確認する。指輪「リムニルド」に口づけすると、MURAMASAを一閃した。
央崎 遥華(ka5644)は胸の上で十字架を切った。
「神よ……私に力を……まだ修行中の身なれど……力をお貸し下さい……罪人たちに立ち向かう力を……」
遥華の全身を稲妻の幻影が纏う。
ゴシックドレスを身に付け、エボニースタッフ、Star of Bethlehemを携え、ディヴァイン・スクリプチャーを手にし、ウロボロスリングにホーリーナイトロザリオ、ムーンライトリングをあしらった出で立ちは聖なる神徒の魔術師のようである。
「妖魔騎士の次は妖魔戦士ですか。まったく、彼奴らも忙しないことで。……まあいいでしょう。誰であろうがデュエルフィールドに立つ以上は容赦はしない。デュエルスタンバイ!!」
カードマスターの女性黒耀 (ka5677)の雰囲気ががらりと変わる。今の彼女は何あろうデュエリストである。妖艶なチャイナドレスをまとい、軍用ブーツと護法籠手を身に付けた戦士と化している。白狐の面の下に隠れた艶やかな表情は道行く男たちの鼓動を高鳴らせ半分を振り向かせるほどに美しい。
キリエ(ka5695)は鬼族の傭兵である。今は情勢も落ち着き辺境に流れ着いたが、それまでは東方で歪虚と交戦していた。西方からの援軍が到達するまで、絶望的であったろうが……。真紅の当世具足「赤備」を身に付け、虎皮布で蛮勇を思わせる派手な出で立ち、刀と片鎌槍を身に付けた戦士である。
「歪虚はこれ以上進ませないぜ! いつまでも敵さんに好き勝手させるかよ!」
槍を一閃するキリエ。
八人のハンターたちは加速した。
先に動き出したのは歪虚だった。妖魔戦士達はハンター確認すると、咆哮してソニックブームを撃ち込んで来る。衝撃波が大地を切り裂き、岩を薙ぎ払う。妖魔のダイヤモンド隊形が崩れる。後方にいた二体が両翼に回り込み、他の歪虚もソニックブームを放ってくる。しかし攻撃は射程外である。威嚇攻撃か。と、真ん中にいた二体が面甲を開いて熱光線を放った。シャキイイイイイイン! と、熱線が二十メートルから三十メートルに達し、右から左へ、左から右へ、大地を薙いだ。大地は焦げ、煙が立ち上る。しかしこれも射程外である。
「人間だ! 撃って撃って撃ちまくれ!」
真ん中の二体が人語を発し、他の八体を炊きつける。飛び交うソニックブーム。
ハンターたちは散開していた。
「どんなものかな……」
ヴァイスはロングボウを叩き込んだ。矢弾が命中し、人語を発した妖魔戦士をぐらつかせる。
「さて……」
マッシュはレッドコメットを右翼の歪虚に撃ち込む。矢は歪虚を貫いた。
柊とアルマ、シオンは銃で牽制しながら移動する。
遥華と黒耀は戦況を確認しながら、待機する。
「初撃は膠着状態か……」
キリエは言いつつ、遥華と黒耀のガードに付いていた。
ハンターたちは矢と銃で牽制し、この膠着状態を維持した。黒耀は地縛符の準備を整えていた。
妖魔戦士達はこの膠着状態を打破しようと試みる。
「一気に突撃する! 人間どもを食い破れ! 突撃! 前進あるのみだ!」
ダイヤモンド陣形は凸型に変形し、ハンターたちに向かって動き始めた。
「では……トラップカード!」
黒耀の地縛符が炸裂する。妖魔の足が鈍る。妖魔指揮官も巻き込み、歪虚の前進は崩れた。
「参ります……氷の刃! アイスボルト!」
遥華はスタッフを敵に突きつけた。氷の矢弾が歪虚を撃つ。冷気が妖魔の足を止める。
「よし、この辺りが反転の頃合いか!」
ヴァイスは手裏剣を飛ばしながら駆けだした。
「行くぜ! まとめて相手してやるからかかってきやがれ!」
柊も突進した。ファイアスローワーを解放する。アンティキティラの歯車がうにうにと回転し、紅蓮の炎が放射される。妖魔たちが絶叫して燃え盛る。
「では、私もそろそろ行きますか」
マッシュは一気に加速した。敵陣の側面からサーベルを叩き込み、強撃で妖魔を打ち倒す。
「アッハハハハハッ!! さァて、どっちの炎が熱いか試してみますかねェ!?」
アルマは柊と連携して青星の魂を解き放つ。青い炎が歪虚に吹き付けられた。それは星の灯りにも似た青い炎。アルマの魂の色の如く。
シオンはそれに合わせて歪虚の先端に激突した。MURAMASAが紫の炎のオーラに包まれる。
「十字斬!」
歪虚戦士の甲冑が切り裂かれ、内部のマグマがむき出しになる。歪虚は咆哮した。
「均衡はお終いだ! それじゃあこっちも積極果敢に行かせてもらうぜ!」
キリエは片鎌槍を振り回して、遥華が動きを封じた妖魔に渾身撃。槍が歪虚の甲冑を貫く。キリエはそのまま槍を振り回して歪虚を転倒させる。
「強靭滅殺よ! 者ども殺せ!」
歪虚指揮官の怒号が響く。歪虚指揮官はこの至近距離から熱線をばらまいた。二本の熱線が至近にいたハンターたちを焼き尽くす。歪虚戦士達のスマッシュやダブルアタックが飛び交い、ハンターたちは切り裂かれた。
柊は巧みに身を翻し熱線を回避する。
「当たるものかよ。ここじゃな! もう一発行くぜ! 鎧でも溶けるかどうか試してみるか」
続いて範囲を絞ったファイアスローワー。灼熱の炎が歪虚戦士たちの半身をもぎ取った。
「なかなかやるが……俺の中の獣は焼き尽くせんようだ!」
ヴァイスが加速。太刀「鬼神大王」が上段から流れるように歪虚戦士の頭部を叩きつぶした。
マッシュは強打を撃ち込み転倒させた歪虚戦士の肩から腕を切り落とした。
「フフハハ! 痛い! 痛いなあ! それじゃあ見せてあげよう!」
アルマは禁じ手≪蒼断≫で歪虚戦士の首を刎ねた。
「貴様らも戦士なら、全力で私を倒しに来い! 私も全力で貴様らを叩き潰してやる!」
シオンのMURAMASAが紫炎の円月を描く。加速したMURAMASAの刀身は歪虚を両断した。
「よし! まだまだあ!」
キリエは槍を突き出した。歪虚戦士を貫く。
「神光……雷光……参りますわよ! ライトニング!」
遥華は印を結ぶと、腕を突き出した。雷撃が伸びる。歪虚を貫く稲妻の光。ビリビリ! と雷撃は歪虚を貫通する。
「それでは続いてカードスロット! 五色光符陣!」
黒耀の次なる≪デュエルカード≫が歪虚を襲う。閃光が歪虚を焼き払う。
続いて歪虚の反撃が来る。残された戦える歪虚は攻勢を止めない。マグマ弾を発射し、スマッシュ、ソニックブーム、そして歪虚指揮官はもう一度熱光線を照射した。
ハンターたちは人語を話す歪虚指揮官を残して戦士を粉砕すると、妖魔を包囲した。
「諦めろ……何てことは言わんぞ歪虚。止めを刺す」
ヴァイスは太刀を構えた。
「愚かな……終わりなき闇が世界を飲み込む。我々もその勢力の縮図。アイテルカイトも世界も、多くの者も、消えることは無い。世界が存在する限り」
「俺達は忙しいんでな。今は北にも強欲との前線基地が出来ている。いずれ……お前たちはぶっ潰す」
柊は言って、銃口を歪虚に向けた。
「人間は無に帰す。つまりは歪虚に取り込んでくれよう」
歪虚指揮官は剣を構えた。
「それでは、幕引きと参りましょうか」
マッシュはサーベルを構えた。
ヴァイス、シオン、マッシュ、キリエ、アルマは加速した。柊は支援銃撃を行い、遥華はアイスボルトとライトニングボルトで、黒耀は五色光符陣で支援する。
ヴァイスは斬を繰り出す。反撃の一撃にさらにカウンターを乗せる。歪虚の面甲を貫いた。シオンの渾身撃が歪虚の甲冑にめり込み、マッシュの強打が甲冑を破壊する。キリエも渾身撃で指揮官歪虚を突き刺す。アルマは蒼断と攻性防壁で歪虚を吹き飛ばす。
「おのれ……!」
歪虚指揮官は立ち上がり突進してくる。
「撃て!」
柊、黒耀、遥華がそれぞれ魔法で歪虚指揮官を打ち倒した。歪虚指揮官は倒れて闇に崩壊していく。
最後の歪虚指揮官が突撃してくる。
「終わりだ歪虚!」
「これ以上は好きにはさせん!」
ヴァイス、シオン、マッシュ、キリエ、アルマが集中攻撃。
ザン! ザン! ザン! ザン! 刀身が歪虚指揮官を貫く。
「おのれ……いずれ……!」
歪虚指揮官は崩れ落ちた。闇に還っていく。
「ふう……」
ヴァイスは吐息した。
あちこちで歪虚の残骸が消滅していく。
ハンターたちはいったん野営地に帰還した。
ラーズスヴァンはエールを飲んで士官とチェスに興じていた。
「戻ったか!」
小柄なドワーフはハンターたちに歩み寄ってきた。
「疲れたぜ。飯を食わせてくれ」
キリエはドワーフに言った。
「ご苦労だったな! こんなに早く終わったんじゃ物足りんだろう! 一休みして雑魔の掃討戦に加わってくれ!」
ラーズスヴァンは大笑した。
「人使いの荒いおっさんだな」
ヴァイスは肩をすくめた。
「ラーズスヴァンさん、沢山やっつけたからもふもふしていいですか?」
アルマが言うと、ラーズスヴァンは後ずさった。
「それは待て」
「いいじゃないですか」
アルマが目をきらきらさせていると、ラーズスヴァンは他のハンターたちに口を向けた。
「おいお前ら。こいつを何とかしろ」
「知らんがな。おい、飯食いに行こうぜ」
柊は仲間たちに言って輜重隊のところへ向かった。
「それにしても……」
黒耀は炊事兵が作ったシチューを口許に運びながら口を開いた。
「……敵の鉄塊弾は、なんのための存在なのでしょうね。負のマテリアルをばらまくだけの存在……この戦場に、そこまでして汚染を広げなければならない意味があるのでしょうか? まあ、いずれ分かることでしょうかね」
イスルダ島にはベリアルが撤退したとはいえ、王国西方リベルタースはグラズヘイムの中でも最も歪虚の攻撃が激しい場所であった。
「まあ、敵さんも黒祀でやられたとはいえ、イスルダ島があの状態じゃな……」
ヴァイスはパンをむしり取って口に運んだ。
「何とも懐かしい感じだな……戦場食か。とは言え、ここは恵まれているようだ」
シオンは言ってサラダを突いていた。
「確かに贅沢な戦場食だ」
柊はローストビーフを口に押し込み、キリエは鶏肉の丸焼を切り分けてぱくついていた。
「マッシュ、そっちのパンくれ」
キリエが言うと、マッシュは苦笑してキリエにパンを手渡した。
「良く食うな」
「中々お上手ですね。炊事兵の方と言っても料理がお上手」
遥華はシチューの味にびっくりしていた。
「ラーズスヴァンさんはきちんとここを治められているようですねえ。兵の栄養も行きわたっているようです」
アルマは言ってにこにこしていた。
小休止を挟んだハンターたちは、立ち上がった。
「さて、と」
柊は言った。
「あとは雑魔の掃討戦か。そいつを片づけて、お終いだな」
ハンターたちは戦場に戻っていった。
雑魔の兵隊は革鎧とショートソード並みの軽装歩兵のようなものばかりであった。肉体は無く、闇の塊であった。戦闘能力は一般人でも対処できるレベルであろう。しかし数は厄介であった。火砲で打ち破られていても、あちらこちらに点在していて、放置することは出来なかった。
「討ち漏らすわけにはいかんからな」
ヴァイスは雑魔を狩り取って行く。
栄養を補給したキリエもここはもうひと踏ん張り。徘徊している雑魔を撃破していく。
柊、シオン、アルマ、マッシュらも最後の後片付けである。次々と掃討していく。
黒耀と遥華も持ってきた残りのスキルを使って、雑魔を片付けていく。
「どうやら……この辺で終わりそうでしょうか?」
遥華は黒耀に歩み寄った。黒耀は面を外した。吐息する。
「そのようですね。恐らくは……」
友軍のハルトフォートの騎士たちもハンターと合流する。
「お疲れさん! 終わったな!」
キリエは槍を担いでやって来た。
「ひとまず方は着いたようですね……」
マッシュは吐息して、イスルダ島の方を見やる。鋼塊弾の姿は気配もない。
聖職者たちが一帯に次々と法陣を張って滞留した負のマテリアルを浄化していく。
ハンターたちはマテリアルの浄化の光を見やりながら、雑談に興じ戦闘終了後の疲労感に身を委ねていた。リゼリオに帰れば我が家で疲労も癒されることだろう。そして、また次なる戦いに備えなければならない。
いまだ歪虚の攻撃は止むことなく続いている。ハンターたちにとって、まだ休息の日が来るのは先になりそうである。
依頼結果
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作戦相談卓 不動 シオン(ka5395) 人間(リアルブルー)|27才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2016/02/19 01:46:31 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/02/17 01:01:39 |