前略、同盟ユニオンより。

マスター:のどか

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/02/23 15:00
完成日
2016/04/12 02:34

このシナリオは3日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 その日の朝、ルミを襲ったのは謂れの無い胃もたれだった。
 前日の夜にドカ食いをした記憶も無ければ(本人談)、お腹を壊しそうなものも食べてはいない(本人談)。
 不可解なその感覚に今日一日、きっとただでは終らないという漠然とした悪い予感がひりひりとお腹の方から込み上がって来ていた。
 
 その予感の根源はオフィスへの出所早々に直面する事となる。
 いつもの仕事を始めてわずかばかりの時間が立ったとき、彼女の元を一人の客が訪れたのだ。
 応接室で待っているというその客人の顔を見た途端に大きなため息を吐いたのは言うまでも無い。
「おやおや、何かキミを困らせるような事をした覚えがあったかな」
 決して上等ではない応接室の長椅子に腰掛けた気品ある青年――エヴァルド・ブラマンデ(kz0076)のよそ行きの笑顔を前にして、ルミは返す言葉も無い様子で対面へと腰掛けていた。
「別に良いですけどねー。上客さんですし」
「はは、さっぱりとした割り切り方だ。その意識は実に商人向きだと思うのだけどね」
「煽てたって、ルミちゃんにはこの身以外売るものなんてありませんヨ☆」
 言いながら、ふふんと胸を張って見せたルミ。
 無い胸張って威張るのは、『自分は高い女ですよ』という彼女なりの意思表示だ。
 贔屓にしてくれるのはありがたいが、あまりにその、内容が多岐に渡りすぎて大変な事も多々あった。
 そこはまあ、持ち前の度胸と愛嬌(?)で乗り切りはしてみせたが、こなせるからと言って安請け合いはしないのが女としての価値というものである。
 予防線を張っているのはほかでも無い――きっとまた、何かビジネスの話を持って来たのだろうという直感がビンビンに働いていたからである。
「なら、そのお高いルミさんにうってつけのお仕事です」
 ――ほら見たことか。
 予想通りの展開で内心ほくそ笑んだルミであったが、決して顔には出さず、涼しい表情でエヴァルドに続きを促す。
「魔術師協会からの依頼なのだが……ルミさんは、現在のユニオンハンターの人口分布はご存知かな?」
「えっと……ユニオンに所属しているハンターさん達の分布って事ですか?」
 ルミの問いに、エヴァルドは小さく頷き返した。
 魔術師協会――また大御所から依頼を持って来たもんだとその手の広さに感心こそすれ、まずは彼の質問に首を横に振ってみせるルミ。
「現在、33%ほどのハンターが辺境ユニオン。26%ほどが帝国。23%ほどが王国ユニオンの所属となっている」
「ふむふむ」
 数字は苦手だ。
 適当に聞き流しながらとりあえず相槌だけを打ってみせると、エヴァルドはそれを理解したものと受け取って言葉を続ける。
「そして残りが同盟ユニオン――その数、およそ18パーセント」
「じゅうは――えっ、ダントツ最下位じゃん!」
 思わず地声で反応してしまった。
 その反応に気を良くしたのか、にんまりとした笑みを浮かべで話を続けるエヴァルド。
「ユニオンの所属はハンター個人が決めるもの……それを口出しする事は決してできない。しかしユニオンを預かる魔術師協会としては、この現状を黙ってみている訳にも行かないわけだ」
 ユニオンは駆け出しのハンター達のより所となり、その地方での基盤や自立の支援を行う事や情報交換を目的として各国家に打ち立てられた公的機関だ。
 そこに営利目的は一切――いや、あんまり――いや、ほとんど無いとは思うが、そうであるからこそユニオンを預かる側としてはその差をいかんともしがたい眼で見てしまうものである。
「魔術師協会という機関を持ってしても、同盟全体としても、血気あるハンター達の存在は必要不可欠なもの。だからこそ今のこの状況は打破しなければならない」
 身振り手振りを交えて事の重大さを伝えようとするエヴァルド。
 大げさな説明は彼の商法の1つなわけだが、ルミはそれを話半分に聞き及ぶと、単刀直入に一言、斬り返していた。
「で……どーしてその話をあなたが?」
 エヴァルドは一呼吸置いて、改めてルミの正面に向き直る。
「実は広報室に『ハンター誘致キャンペーン』を発足する運びとなってね。私はその出資者に名乗り出たわけだよ」
「『ハンター誘致キャンペーン』?」
 キョトンとして、ルミは聞き返す。
「文字通り、ハンターを同盟ユニオンにお誘いするためのキャンペーンさ。同盟が誇る物品や分野をアピールしてハンターを惹き込み、根を張って頂き、ひいては同盟の経済発展にご協力頂こうと……そういう計画だよ」
「あー、廃れた地方シャッター商店街の町おこし的なアレですね」
 頬杖ついて答えるルミに、エヴァルドはパンと拍子を打って顔を綻ばせる。
「素晴らしい。やはり私の眼に狂いは無いようだ」
「……あの、勝手に納得しないでくださいます?」
 思わず怪訝な表情で睨み返したルミに一寸も怯まずにエヴァルドは椅子に深く座りなおすと、静かに右の手のひらを彼女の方へと差し出して見せた。
「実は貴方に、そのキャンペーンの委員長を務めて頂きたいのですよ」
「いいんちょ……ええっ!?」
 思わず上ずった声に、慌てて咳払いをするルミ。
「ま、待ってよ。なんでルミちゃんが?」
 慌てた様子のルミに対して、エヴァルドは余裕のある態度で静かに言葉を紡ぐ。
「おととしの夏、覚えているかな?」
「えっと……ああ、海開きですか?」
「ええ。あの時からずっと思っていた。あなたはどうやら、こういった宣伝活動がお得意なようだ。それは勿論、決してあなた自身の自力ばかりでは無いかもしれません。それでも、『そういうのに向いている』何かをお持ちだと私は目をつけていたわけです」
「なにそれ、堂々のストーカー宣言ですか?」
 滅相も無い――手を振り軽く言葉をいなし、エヴァルドは再度口を開く。
「私はこのプロジェクトをなんとしても成功させたい。それは同盟ユニオンの、その未来だけでなく、同盟そのものの未来を描く重要なキャンペーンだ。その成功にはルミさん――貴方が必要なのです」
 真摯に語るエヴァルドに、ルミは思わず返しの言葉を言い澱んだ。
 自分しか居ない――ルミのめっぽう弱い言葉である。
 口元に手を当てて、うんと唸る。
 エヴァルドはそれ以上何も口にせず、彼女の答えを待っていた。
「――そう言われちゃ、黙っていられないですね。良いですよ、このルミちゃんが一肌脱ぎましょうっ♪」
 差し出された手を取って、ニッコリと微笑むルミ。
「そうと決まればまずは意見聴取です! アンケート、大事! いや、と言うか普段利用する側の人達も委員会に居た方が良くないですか……?」
「カファロ氏には私から話を通しておくから、近いうちに挨拶に伺って欲しい。ちなみに、ハンター達に意見を仰ぐのは私も賛成だ」
 頷いてみせるエヴァルドにフンと鼻を鳴らすルミ。
 様々な思惑が犇くプロジェクトが、今、始まろうとしていた――

リプレイ本文


 集まったハンター達が会議室のテーブルについた。
 ルミがお茶をすすめながら、いつもの明るい笑顔を向ける。
「今日はよろしくお願いしまーす♪ あ、後ろの人は気にしないでねっ」
 ルミの後ろでは、エヴァルドが静かに立ち上がり会釈した。
「貴重なお時間を割いていただき、ありがとうございます。ルミさんに無理をお願いして、同席させて頂くことになりました」
「というわけで、はじめよっか!」
 エヴァルドの視界を遮るようにルミが前に出た。
 ジャック・エルギン(ka1522)がティーカップを手に、ニヤリと笑う。
「これでも同盟一のハンターを目指してっからな。土台であるユニオンが、まるで寂れた商店街ってのは困るぜ」
 冗談めかして肩をすくめつつ、ルミを見やる。
「あーそっか、ルミが同盟ユニオンの代表になんのか。応援してるぜ?」
「ちがいますよー!!」
 ルミがぷっと頬を膨らませる。それでなくても忙しいのに、これ以上雑用が増えたらたまったものではない、というところか。
「なんだ違うのか。結構やれそうにも思うけどな」
 明るく笑うジャック。だがこれは彼なりに、ルミを気遣ってのことだ。
 先にこの場に集まったハンター同士で少し話し合ってみたのだが、なかなかに波乱含みの内容だったのだ。
(ま、でかい舞台での存在感が薄いってのは本当のことだしな……)
 ジャックは手元のメモを眺め、それから場を見渡した。

 ウーナ(ka1439)はお茶で唇を湿すと、早速切り出す。
「ウーナよ。早々で悪いけど……あたし、他のユニオンに移籍考えてるから」
 きっぱりとそう告げる。
「言いたいことは山ほどあるけどね、まあそれは少し他の人の話を聞いてからにするよ」
 ただ見捨てて出て行くだけならすぐにでも可能だ。それでも今日まで残って来たのには、ウーナなりの想いがある。
 せめてこうであれば良かった、ぐらいはこの機会に吐き出して行こうというのかもしれない。
 アカーシャ・ヘルメース(ka0473)が軽く咳払いして続く。
「同盟と辺境ユニオンに所属してる、副業持ちのアカーシャや。今日はよろしゅうな」
 実家は自由都市同盟の商家、幼いころから見聞を広めるために世界を見てきた。それだけに、いいところも悪いところも良く分かる。
 皆が真剣であるほど、厳しい意見も出るだろう。
 腕組みをしたクロード・N・シックス(ka4741)が首を傾げて唸った。
「イマイチ盛り上がりに欠けるなーとは思ってたんですヨ。同盟ユニオン。……ウーン、ワタシももっと騒がしくしないとダメですかネ?」
 にぱっと笑顔を見せる。

 リアルブルー出身のハンター達が続く。
「考えてみたら、私も同盟ユニオンに関して依頼を受けたことって殆どないのよね」
 ロベリア・李(ka4206)はいつもの癖で火をつけないままの煙草をくわえ、器用に喋る。
(こういった依頼を出すんだから、現状を何とかしようという気はあるのね)
 ならば「なぜ受けたことがなかったのか」という意見も参考になるだろう。
 そう思って参加したが、思い入れの強い者もいるのだと思う。
「ま、いい機会だから。色々と意見交換といきましょうか。どう、何かある?」
 ロベリアはちょこんと椅子に掛けた少女、四十八願 星音(ka6128)が緊張していないかと気遣うように顔を覗き込んだ。
「……うーん、そうですね……」
 ずり落ちそうな眼鏡を支え、小学生は真剣に考える。
「まず、地域の特色をハンター達が感じられていないという点があるように思います」
 同盟ならではの特色。
 海に近い、交易による都市の集合体。各都市は比較的豊かで、気候も温暖だ。
 リゼリオという都市システムも同盟だからこそ独自性を保てるという話もある。
「それだけに、ハンターにはあまり恩恵が感じられない、そう思う人も多いという独自の聞き込みデータがあります。今回の参加者さんもそうではないでしょうか」

 異世界から来たハンター達の意見に耳を傾け、ジュード・エアハート(ka0410)は寂しく思う。
 自身はポルトワール出身であり、同盟の存在感が薄いと言われるのは残念でたまらない。
 だからやれることはなんだってやる覚悟を持っている。
 ただ今は、もう少し外の人が語る同盟の印象に、辛抱強く耳を傾ける。
「個人的に、『同盟』ユニオンは……良い所、なんですけれど……ね」
 天央 観智(ka0896)はゆっくりと、静かに語る。
「食事も他と比べて、比較的に美味しいし……割と、騒動が少ないから……安心して暮らせますし、研究等もし易い……ですしね」
 彼はロッソ以前に転移しており、二つの世界がダイナミックにまじりあって行く様を見てきた。
 騒動の中、「存在感が薄い」「ハンターの活躍の場が少ない」というのはつまり、それだけ同盟が暮らしやすい場所であるという意味だ。
 だがハンターは平穏を喜んでばかりもいられない。皆が皆、厄介事を期待しているという訳ではないだろうが、それでも「飯の種」である。やはり平穏すぎる場所よりも、もっと自分達の力を必要としてくれる場所に心が傾くのも道理だ。
 それに今後も平安とは限らない。いや、今後も平穏であるためにも、今のうちにやるべきことがあるだろう。
「賑やかさの基準……としては、やはり同盟ユニオンの所属ハンターが、他との比較として……多少なりとも増える……といいと思います」
 観智の意見に、誰も異存はない。


 では、どうすればハンターが集まるのか。
「同盟ユニオンに『興味』『関心』、そして何よりも『期待感』をもってもらわないとね」
 ジュードは今の同盟にはこれという売りがないのが現状だと思う。
「俺は『看板』がないのも問題なんじゃねえかって思うぜ」
 ジャックが軽く手を上げて発言した。
「例えば王国じゃ王女が北方にまでに赴いているのに、同盟じゃ印象に残る『看板』が顔出してねえしな。これじゃハンターには同盟の存在感薄いぜ?」
 王国の象徴たる王女が頑張っているところを見れば、やはり王国は頑張っている、という印象を持つ。
 実際の軍事力の多寡以上に、戦場でのアピールポイントになるのだ。

 新しいお茶を入れたカップを手にし、観智は思考をめぐらした。
「ただ、一枚板でないのは、同盟も辺境も同じ……だろうけれど、同盟は危機感が薄い……のかな」
「今の同盟ユニオン、あってもなくても同じってレベルなんだよ」
 ウーナがきっぱりと言い切る。
「一番ダメなのは『このユニオンは何も変わらない』って思われちゃってるってこと。だからまず世界レベルに繋げる結果を出さないと。それもできるだけ派手に、皆に覚えてもらえるようにね」
 これはウーナの願望でもあったのだろう。寂しくなるユニオンの様子に本当に無関心であれば、心も動かない。
「やっぱり顔がね、必要だと思うわよ」
 ロベリアが勢いよく椅子の背中に身体を預ける。
「総司令選挙に出馬した同盟軍元帥だっけ? どうにも世界の危機に、同盟の将が見えないのよね。やっぱり前に立つ人には興味を持つし、そういう人と顔を合わせて、繋ぎを作りたいって思うのは自然なことでしょ」
 星音が頷きながら、ぽつりと漏らす。
「同盟の代表はともかく、ユニオンの名前にある魔術師協会の、ハンターとの関わりが少ない、あるいはそう感じさせてしまっている現状があるようです」
「それは思いマス!」
 クロードが身を乗り出していた。

「マァ、ワタシは魔法なんて欠片も分からないノデ、魔術がどれくらいすごいのかはよくわかりませんガ?」
 軽く言ってのけつつ、手をひらひらさせる。
 なるべく場の空気が重くならないように立ちまわる癖があるらしい。
「ホラ、『魔術師協会広報室』って、そのまますぎるというか、味気ないというか。こういう名前だと、魔術師以外の人たちが集まりにくい点デス! それなら、「魔術を応用すればこんなこともできる! 他のクラスにも役立ちます!」って方向で宣伝するのはどうですかネ!」
 クロード自身が所属していても、よくわからない組織という印象しかないのが本音だ。
「もっとOpenに!! もっとActiveに!! そういう感じに変わっていかなきゃダメだと思いマス!!」
 ジュードがその言葉に便乗するように、拳を握る。
「うん、オープンに。商業だって、ハンターには制限が多いんだよね、同盟は商業がとっても盛んなのに」
「あー、それは1商人として同意やな」
 アカーシャも頷いた。
「商人の依頼でも、売り子ぐらいしかさせてもらえんしな。ちゃんと商売やらせてーなってのは、ずっと思ってるんや」
 そうぼやきつつ、手元のメモを覗き込んだ。
「あとな、ユニットなんかの貸与権関連や、此処が他国と比べて一番出遅れとると思う。なんか期待感を持たせるようネタはないんかって思わん?」
 アカーシャは一同を見渡しながら、自分の考えを述べる。
「例えば……魔術アピールやったら、精霊力で作った、どーんと大きな使い魔が召喚できんか研究するとか。あと、商工会は、小型でもええんで、ユニットの代わりに船舶貸与権を売買してくれるとかな。これだけでも期待感は大分変わるで?」

 皆の視線がルミに集まっていた。
「ええっと、……」
 一生懸命書きとめた熱い意見。けれど、これは一受付嬢の手には余るものだった。
 ルミ自身、転移者である。同盟が今の形になるまでのことは、知識でしか知りようがない。それもここ数年の。
 どう答えたものかと思案していると、背後のエヴァルドが静かな、だが良く通る声で切り出した。
「皆さんのご意見は大変興味深いですね」
 視線がルミを外れ、エヴァルドに集まる。
「私自身、現在の硬直した体制を何とか変革していきたいと思っているひとりです。ですが、いくつか現状の整理が必要かと思いましたので、差し出口ですがご容赦いただけましたらと」
 エヴァルドはお茶を一口含み、ゆっくりと語り始めた。
「まず同盟は寄り合い所帯です。各都市はそれぞれ思惑があって同盟を形作っていますが、他の都市の下につく気は皆無です。ですので、評議会議長のラウロ氏はいわば同盟の顔ですが、敢えて表に出過ぎないようにしているのだと思います」
 評議会は本来、調整機関である。でしゃばり過ぎれば、いざというときに協力を得るのが難しくなるという訳だ。
「それから同盟軍ですね。これは現在、大規模な戦闘の最前線が大陸北方にあるため、南方の同盟が大軍を動かすのは現実的ではないという実情があります」
 物資の手配、通過される他国の感情、そういった面でも同盟軍が動かせる部隊の規模は他国に比べて控え目になる。
 エヴァルドは更に、資金面でも、また不在中の治安維持の面でも、と付け加えた。
 これは商人達の本音だろう。
 ユニットや魔術によるアクションに関しては、出資者であり同盟の中で一大勢力である商人達が納得しなければ、軍にせよ魔術師協会にせよ強行できないことは想像に難くない。
「そして商業ですね。これは私も頭を悩ませていることですが、考えの古い方々が多いのです。この点は寧ろ、異世界の事情などをご存じの皆様から新しい制度についてご教授いただきたいものです」
 古い商人達も、新しい商人達も、個人の能力で競い合うことができれば、もっと同盟は発展する。
 少なくともエヴァルドはそう信じている。


 半ばあきらめの溜息をつき、ウーナが言った。
「できればユニオン名を変更してトップの首もすげ変えてほしいところだけど。まあ、どうせそれは無理だと思ってたしね。他ユニオンの二番煎じじゃ意味もないし……で発想転換。冒険は諦めて現実路線で」
 切り替えは早いらしい。
「今必要とされてて不足してるものってさ、娯楽だと思うんだよね。他国はどこも大ピンチの連続。そういう空気を紛らわす何か娯楽を追求することに特化してみたらどうかな」
 ニヤリと笑って、ウーナがルミを横目で見る。
「あたしルミと組んでもいーよ? ご当地アイドルとか萌え路線なら、ダメ元でも他のキャンペーン案とも並行できるでしょ」
「……!」
 ルミが目を見張る。
 皆を元気づけられる歌や音楽やダンスの力。それが生かせるなら、頑張れる。
 ジュードが思わず表情を緩めた。
「娯楽はいいと思うよ。今までも料理大会とか競馬とかやってきたけど、もう少し大きな規模でハンター同士が競い合うような大会やイベントを開催するのはどう? ハンターは切磋琢磨するの好きだしね、商売のチャンスでもあると思うんだ」
 あとは、と自分の思考を探るような目で、ジュードが続ける。
「ホープのような新都市開発はどう? 大きなことに関わりたいハンターは多いからね。資金は娯楽イベントで稼ぐこともできるんじゃないかな」
「それ、いいと思うわ」
 ロベリアがすぐに賛成した。
「いわば『第二のリゼリオ』に、東方、他国、ううんそれだけじゃなくてリアルブルーも。とにかく人材と知識を集めるのよ。関わったハンター自身の努力や結果が目に見えて反映されるとモチベーションも上がると思うの」
 そういう場でなら、自分のようなリアルブルー出身の技術者も活動し易い。そこに魔術が加わればもっと面白いことになるだろう。

 ジャックは続けて、先に出た船舶の貸与権にも触れる。
「ハンターにそういうのがあれば、陸が平和でも海に出て海賊取締まったり、未踏の島の開拓とかもできるんじゃね?」
「海賊討伐の依頼はときどき入っていますしね!」
 ルミがうんうんと頷く。

「あとは……魔術師協会の、ことですね……」
 星音はずっと考え続けていたようだ。クロードが溜息をついた。
「うーん……問題はそっちのAppealの方法ですカ……」
 だがこれは、ルミやエヴァルドには答えようがないだろう。
「とりあえず『広報』って名前がついてるわけデスし、今回の案が実現したら、同盟いいヨーって大々的に宣伝してもらうのも良いかもネ! 後は、各都市の皆が連携できる体制が作れれば安泰そうですケド……いきなりは難しいカナ?」
「でも手をつけないと始まらないですよね!」
 ルミがぐっと拳に力を籠めた。アイドルという言葉で、かなり元気が出たようだ。
「それから、今回頂いたキャンペーンの案も、ちゃんと伝えておきますので」
 ハンターはキャンペーンの名称も提案してくれた。
 手軽に判り易く、募集の報せで『募報』。
 同盟所属ハンターに見て、すぐに分かってもらえるだろう『同盟振興会』。
 吹く風が光って見えるような素敵なユニオンを目指す『風光キャンペーン』。
 今この場でルミが決めることはできないが、どれも大事に持ち帰ろうと思う。
「今日は本当に有難う! できること、できないことがあると思うけど、またいろいろ教えてね。お願いします!」
 熱く思えるほどの貴重な議事録を宝物のように抱き締めて、ルミは深く頭を下げたのだった。

<了>

(代筆:樹シロカ)

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参加者一覧

  • 空を引き裂く射手
    ジュード・エアハート(ka0410
    人間(紅)|18才|男性|猟撃士
  • 星の慧守
    アカーシャ・ヘルメース(ka0473
    人間(紅)|16才|女性|霊闘士
  • 止まらぬ探求者
    天央 観智(ka0896
    人間(蒼)|25才|男性|魔術師
  • 青竜紅刃流師範
    ウーナ(ka1439
    人間(蒼)|16才|女性|猟撃士
  • 未来を示す羅針儀
    ジャック・エルギン(ka1522
    人間(紅)|20才|男性|闘狩人
  • 軌跡を辿った今に笑む
    ロベリア・李(ka4206
    人間(蒼)|38才|女性|機導師
  • 双棍の士
    葉桐 舞矢(ka4741
    人間(紅)|20才|女性|闘狩人
  • 竜潰
    四十八願 星音(ka6128
    人間(蒼)|10才|女性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 会議室(相談卓)
ジュード・エアハート(ka0410
人間(クリムゾンウェスト)|18才|男性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2016/02/23 07:19:32
アイコン 質問卓
ジュード・エアハート(ka0410
人間(クリムゾンウェスト)|18才|男性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2016/02/19 14:47:45
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/02/18 23:55:31