魔の水

マスター:水貴透子

シナリオ形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/06/16 12:00
完成日
2014/06/18 21:44

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

そこは、誰も訪れる事がなかった。

人が遠のき、建物は崩れ、自然と廃墟になった場所。

今回、彼らが赴くのはそんな場所だった。

※※※

「今回、皆様に赴いて頂くのは下水道です」

「下水道に雑魔が現れた可能性が高いと、こちらに連絡が届いております」

ハンターオフィスの案内係が、幾つかの資料を彼らに渡す。

資料の中に含まれているのは、地図や写真、など今回の討伐に役立つような、そうでないような、というものばかり。

「写真は町が健在だったころのものですから、今とはきっと変わってしまっているでしょう」

「ですから、それをアテにはしないでくださいね」

にっこりと笑顔で言う彼女に、彼らは苦笑を漏らす。

「自然発生した雑魔ですから、さほどの強さはないと思いますが、油断は禁物です」

「おまけに足場も悪いでしょうから、滑って怪我なんてしないでくださいね?」

心配する割には、具体的過ぎる。

「ちなみに、ハンターオフィスに知らせて下さった方は、もうここにはいないので、色々と現地確認になると思います」

「……え、他に資料は?」

「ないですよ? 私も聞くのを忘れていましたし」

さらりと言われた言葉に、僅かな苛立ちが募る。

悪気がないとわかっているからこそ、余計に苛立つという事もある――と討伐に参加する覚醒者達は心の中で呟く。

「さて、それでは皆さん! 行ってらっしゃい!」

明るすぎる案内人の声に背中を押され、彼らは雑魔を討伐すべく、ハンターオフィスを後にした。


リプレイ本文

■下水道掃除の為に集まった者達

「歪虚との戦いは初めてだから、自分に出来る事をやらないと……」
 那月 蛍人(ka1083)は自分を奮い立たせるように、ギュッと強く拳を握りしめながら呟く。
 その表情からやる気は十分に伺え、戦闘には積極的に行こう、という意志も伝わってくる。
「下水道の雑魔……は良いのですが、うっかり転ばないようにしませんと」
 Celestine(ka0107)は依頼書を見つめながら、ため息混じりに呟く。
「……そういえば、着替えを持って来ていませんわ。雑魔退治が終わったら、すぐお風呂に入りませんと、色々な匂いが染みついてしまうかもしれませんわ」
「雑魔退治に入ったら、匂いだのなんだのと気にする余裕はないかもしれないけどな」
 ツバサ・斉天大聖(ka1818)はからかうような言葉を投げかける。それは、恐らく自分自身にも言った言葉なのだろう。
「初めての依頼は下水道探索、ですね。色々と大変でしょうけど、手を抜く事なくしっかりこなしていきましょう」
 メープル・マラカイト(ka0347)が呟くと、その場に集まったハンター達は強く頷く。
「おいら的にはさっさと終わらせて、美味い飯を食う! ……その前に風呂やけど」
 柿原 瑞姫(ka1229)はニッと笑みながら呟く。
「その言葉には賛成だね、サクッと終わらせてさっさと帰るに越した事はない」
 タディーナ=F=アース(ka0020)が、ぽん、と柿原の肩を叩きながら賛同の意を示す。
「現状だと分からない事が多いですし、最初は依頼人の元へ向かいましょう」
「そうですわね、どんな依頼でも危険は潜んでいるのですから、少しでもリスクは減らしておきたいですわ」
 メープルの言葉に、セレスが頷きながら答える。
「その考えには賛成やな、何も知らんと突っ込んで行ったら痛い目見るだけや」
「俺としては、一気に攻め込むって手もあると思うが……まぁ、念には念を、だな!」
 柿原とツバサが呟き、ハンター達は依頼人の元へと向かい始めた。

■依頼人と下水道の惨状

「あれ? 雑魔退治を依頼したはずなのですが、何故ここに? 雑魔は僕の家じゃなくて、下水道ですよ、げーすーいーどーぉ!」
「……何か、この人のノリって案内人の人に似てる気がするような……」
 テンションの高い依頼人に、那月は苦笑気味に呟く。
「あんたのテンションが高い事は分かったから、状況を教えてくれないかい? 何でもちゃんとした説明をしないまま、ギルドから出て行ったそうじゃないか」
 タディーナの問いかけに「聞かれてませんから」と依頼人はさらっと答える。雑魔退治を依頼した割には、結構な能天気さにハンター達は頭を抱えたくなった。
「……とりあえず、情報を頂けませんか? 大した情報無しでは雑魔退治も出来ませんし」
 淡々とした口調でメープルが問い掛けると、依頼人は家から一枚の地図を取り出した。
「これ、下水道の地図なんですけど僕が発見したのはこの辺でしたね。でもこっち側からも音がしたような……あっ、でもこの辺でも怪しい影を見たんですよね!」
「ありがとうございます、結局大した情報はお持ちではなかったのですね」
 やや引きつった笑みを浮かべながら、セレスがにっこりと笑顔で言葉を返す。
「でも、ひとつだけ確実な情報があっただろ。雑魔が複数いるって事だ」
「その辺は想定内やったけど、もっとほら、こう具体的な情報が欲しかったんやけどなぁ」
 ツバサの言葉に柿原が困ったように呟く。
 だけど、ツバサの言う通り、雑魔が複数いる事が分かっただけでも良かったのかもしれない――……と、ハンター達は思う事にした。
「俺、とりあえずマッピングってやつをやってみるよ。道に迷ったり、一度調べた場所をまた調べるって事がないように……気休めかもしれないけど、まぁ、ないよりマシだろ」
「そうですね、それはいい考えかもしれません。恐らく下水道は真っ暗でしょうし、私もランタンを持って来ていますので、それを使って調べてみましょう」
「皆さん、雑魔退治頑張ってくださいね!」
 依頼人の応援を受け、ハンター達はやや脱力しながら現地へと向かい始めた。

■下水道にて

「……くっせぇ!」
 下水道に入った途端、ツバサが鼻を押さえながら呟く。
「これは……予想以上の匂いですわね、すべてが片付くまで耐えられるでしょうか」
「下水道なんて臭いもんだろうけど、さすがに手入れも何もあったもんじゃないから、普段よりも匂いがキツいんだろうね」
 セレスが鼻を押さえるのを見つめながら、タディーナが苦笑して呟く。
「やっぱりさっさと終わらせるに限る、ここは長い事おったら鼻が曲がってまう!」
「ねぇ、これ見てくれる?」
 柿原が呟いた後、那月がその場にしゃがみ込んで同行したハンター達に話しかけた。那月が指差しているもの、それは緑色のドロドロした液体。おそらく、雑魔が移動した際に着いたものであろう事が伺える。
「よく見たら、あちこちにこのドロドロが付着してるね」
「……ドロドロだけやなくて、下水もめっちゃ濁っとる……まさかとは思うんやけど、こう、水が……どばぁーっとか無いやろな」
「……やめてくれよ、何か、そう来るんじゃないかって思えてくるから」
 柿原の呟きに、那月は引きつりながら言葉を返している。
「さて、まずは依頼達成のためにも、雑魔掃討しなくちゃだな。支流があるみたいだし、本流で待機する人と、支流で捜索する人に別れた方が良さそうだ」
 那月が呟き、ハンター達は以下のようにそれぞれ班を分けた。
 支流・那月、メープル、柿原の3名。
 本流・セレス、ツバサ、タディーナの3名。
「とりあえず本流に誘導してくれば、雑魔達も逃げ場はないはずさ。上手くおびき出してくれたら、あたし達が一気に取り囲んで、逃げ場を封じながらの殲滅って事でいいかい?」
 タディーナの言葉に、ハンター達も頷いて答え、それぞれ行動を開始した。

※本流班

「予想通り暗かったですわね、ハンディLEDライトを持って来ていて正解でしたわ」
「俺も一応持って来てるぜ」
「おや、奇遇だねぇ、あたしも持って来てるよ」
 3人はお互いにハンディLEDライトを見せ合いながら呟く。
「これで戦闘の時も灯りに関して言えば、リスクが少なくなるだろうね。後はどれだけ雑魔がいるかによるけど……どうやら、こちら側にはいなさそうだ」
 タディーナはハンディLEDライトで足元を照らし、周りを警戒しながら呟く。セレス、ツバサの2人も勿論警戒をしていたが、雑魔らしき存在は見当たらない。
「ここにいたって痕跡は残ってんだけどなー、移動した後って事かね」
 ツバサは肩を竦めながら、残念そうに呟く。
「本流側にいないとなると、支流側の皆さんが心配ですわね……雑魔の数も明確になっておりませんし、負担が大きいかもしれませんわ」
 セレスは支流班を心配するように呟くが、これは予めの相談で決めた班分け。どちらに雑魔がいるかなど、相談時には分からないのだから仕方ないと割り切るほかない。
 本流班のハンター達が小さなため息を吐いた時、那月の大きな声が響き渡った。

※支流班

「唯一良かったって思えるのは、地形が入り組んでなかったって所くらいやな」
 ハンディLEDライトで足元を照らしながら、柿原が呟く。
 那月もハンディLEDライトを所持しており、メープルはランタンを持って来ている。それぞれが下水道は暗いという予想から光源を所持していて、雑魔捜索が多少楽になっている。
「……はぁ――ってうぉあっ!」
 柿原がため息を呟いた時、雑魔のドロドロに足を滑らせ、汚水の中に足を突っ込んでしまう。
中途半端に足を突っ込むよりも、いっその事思いきり転んだ方がマシ、と思えるのは何故だろう……と柿原は先ほどよりも深いため息を吐きながら心の中で呟いていた。
「柿原さんは災難でしたけど、この辺を見る限り、こちら側が『当たり』のようですね」
 真新しいドロドロを見つめながら、メープルが呟く。
「確かにー。このドロドロ、さっき通りましたー的な感じで新しいもんなぁ」
 柿原が呟いた時、ズル……ズル……と水音に近い音が耳に聞こえてくる。
「あらら、実は誘導されたのってこっちだったり……?」
 那月が引きつった笑みを浮かべながら呟くと「……好都合だと思います」とメープルが言葉を返す。
「纏まっていてくれたのなら、それはそれで誘導がしやすいだけですから」
「確かに。さて、それじゃ行くかな」
 大きく息を吸い込み、那月は本流班に分かるように大きな声をあげ、合流すべく一定の速度で走り始めた。

■合流、戦闘開始――……。

「あら? それは何でしょうか?」
「煙草だよ。あたしにとっての集中は、これが必要でね。どうせこんなに臭い所なんだ、ヤニの匂いなんざどうって事ないだろ?」
 セレスの言葉に、タディーナは白い煙を吐きながら答える。
「それぞれのやり方というものがありますからね、私は反対などしませんわ……という事で、私も行かせて頂きます! げ、下水の精霊さん! 居たら力を貸して下さいまし!」
 セレスは呟いた後『集中』を使って、魔法命中と魔法威力を上昇させ、那月達が誘導してきた雑魔に向けて『マジックアロー』を使用する。
「下水の精霊ねぇ、あたしのイメージだとあの雑魔と大して変わらない姿に思えるのは、気のせいだろうかね」
 苦笑しながらタディーナはセレスと同じように『集中』を使用して、能力を上昇させた後『マジックアロー』をお見舞いする。
「ようやく俺の出番って所か、行くぜぇっ!」
 ツバサは『闘心昂揚』を使用して、身体能力を上昇させた後、スピアで一気に突く。スライムという形状のため、効果は薄いかと思われたが、ツバサの威力の方が強く、スライムは真っ二つに裂かれた。
「おおっと、当たんねぇよ!」
 別の雑魔がツバサを攻撃しようとしたが『地を駆けるもの』を使用して、素早さを上昇させ、器用に避けた。
「……核のような物は見当たらないか、だが――」
 那月は『メイスファイティング』を使用して、戦闘能力を上昇させた後、ウォーハンマーで思いきり雑魔を攻撃する。
「どれだけの相手だろうと、すべて潰してしまえば問題ない」
 ぶん、と風切り音を響かせながら、那月は再び襲い来る雑魔へ攻撃を行う。この時、那月は雑魔が逃走しないように――と、水場を背にして、雑魔の逃走経路を邪魔していた。
 そのため、数匹の雑魔が逃げられない位置にいる事を、今の那月はまだ気づかない。
 そして、ハンター達が有利に戦えていたのは、もう一人、メープルのおかげでもある。彼女は雑魔から離れた位置に立ち、ランタンの光源が皆に行き届くようにしていた。
 他のハンター達はハンディLEDライトを所持しているが、万が一のために、と彼女だけは敵から距離を取り『マジックアロー』で攻撃をしながらも、光源を確保する事を最優先に考えていたのだ。
「……っ!」
 だが、雑魔がメープルの気づかぬうちに背後へと回り、攻撃を仕掛けた。幸いにも深い傷には到っていないが、背後の敵に気づかなかった自分に苛立ち、唇を噛む。
「背後から攻撃なんて、卑怯モンのする事やで! まぁ、雑魔の存在自体卑怯みたいなモンやから、おいらの言葉が理解出来るか分かんないんやけどな」
 ジャンクガンを構え『遠射』を使用して、メープルの背後にいた雑魔を、柿原が倒す。
「助かりました、次は油断しないように気をつけます」
 メープルは淡々とした口調でお礼を言い、再び『マジックアロー』を唱えた。

■掃討終了、そして帰還

「……とりあえず、これで下水道の雑魔は討伐出来たか」
 肩で息をしながら、那月が呟く。
 今回の任務、大きな怪我を負った者はいなかったが、数が多かったせいかハンター達の疲弊度は予想よりも上回っていた。
「無傷ってわけにはいかなかったけど、初戦でこれは上々だと思うけどね」
 煙草の吸殻を雑魔の躯の上に放り投げ、それをタディーナが忌々しげに踏み潰す。
「討伐記念にお酒でも酌み交わしたいですけど、まずはお風呂に入るのが先でしょうね。ここにそれなり長くいましたから、鼻も慣れてきましたけど、きっと凄い匂いですよ」
 メープルの言葉に「そうですわ」とセレスが言葉を返す。
「出来れば、報告に行く前にお風呂に入らせて頂きたいです……途中で転んでしまって、もう雑魔のドロドロ塗れですの、衣服の下にまでドロドロが……気持ち悪いですわ」
「さ、災難だったな……なんて言うか、他に掛ける言葉が見つからねぇよ」
 セレスの姿を見て、ツバサも言葉に困って、ありふれた言葉しか言えなかった。
「気を遣って頂きありがとうございます、いいんですの、自分でも酷い格好だという事くらい分かっていますから……」
 がっくりと肩を落としながら、セレスが呟く。
「おいらなんて、どさくさに紛れて合流したけど、実は途中で迷ったんや……ほぼ一本道で迷うなんて、どんだけおいら方向音痴なんやろ」
 脇道に逸れたくなる性格なのか、柿原もセレス同様にがっくりとうなだれている。
「で、でも大きな怪我がないのが一番だよな。ある程度の傷は『マテリアルヒーリング』で治せたんだし……まぁ、今回の歪虚は弱い方に入るんだろうけど、それでも俺達にとっては大きな一歩を踏み出した事に変わりはないんだからさ、素直に喜ぼう」
 那月の言葉に「そうですわね」とセレスも頷いて答える。
「これで、しばらくはこの場所も安全になるのでしょうか……場所が場所だけに、雑魔が発生しやすいのかもしれませんけど」
「また雑魔が出たら、その度に倒せばいいんだよ。倒して倒して、出なくなるまで倒せば、いつか雑魔の方が諦めるだろ、多分!」
「せやなぁ、現れたら倒せばええ、確かに簡単なことやな」
 ツバサの言葉に柿原も笑いながら答える。言うのは簡単だが、実行するのは果てしなく難しい事だと当人達も分かっている――……いや、分かっているからこそ言うのだろう。自分達にはそれくらいの気合いがある、という事を言葉で示すために。
「雑魔を倒した余韻に浸るのもいいけどさ、とりあえず下水道から出ないかい? あたしも色々と余韻に浸りたいけど、やっぱりこの臭い場所じゃねぇ……」
 タディーナが苦笑気味に呟くと「確かに」とハンター達は笑って答えた。

 こうして、ハンター達の初めての戦いは終わった。
 まだ始まりに過ぎない事だと分かりながらも、那月の言うように大きな一歩になる事を信じて、己の心を奮い立たせながら、ハンター達は帰路に着いたのだった。


END

依頼結果

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重体一覧

参加者一覧

  • 素っ気ない節介焼き
    タディーナ=F=アース(ka0020
    人間(蒼)|24才|女性|魔術師
  • 暁風の出資者
    Celestine(ka0107
    エルフ|21才|女性|魔術師
  • Pun Pun ぷー
    メープル・マラカイト(ka0347
    エルフ|25才|女性|魔術師
  • ガーディアン
    那月 蛍人(ka1083
    人間(蒼)|25才|男性|聖導士

  • 柿原 瑞姫(ka1229
    人間(蒼)|25才|女性|猟撃士
  • 下水道掃除人
    ツバサ・斉天大聖(ka1818
    人間(紅)|18才|男性|霊闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 作戦相談卓
タディーナ=F=アース(ka0020
人間(リアルブルー)|24才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2014/06/16 02:29:22
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/06/12 15:06:38